(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)シラノール基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物、(B)ヒドロシリル基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物、(C)白金族金属触媒、並びに、(D)有機カルボン酸金属塩を含有し、
前記(B)の化合物が有するヒドロシリル基の合計と、前記(A)の化合物が有するシラノール基の合計と、のモル比SiH/SiOHが1〜20であり、前記(D)の化合物における金属の含有量が、(A)の化合物と(B)の化合物の合計重量に対し1ppm以上であることを特徴とする硬化性ポリシロキサン組成物。
前記(D)の化合物が有機カルボン酸金属塩を含み、該有機カルボン酸金属塩と有機カルボン酸とを組成物中で共存させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性ポリシロキサン組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は本明細書に明示的又は黙示的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<1.(A)シラノール基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物>
本実施形態においては、(A)成分として、シラノール基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物を用いる。
シラノール基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物とは、ヒドロシリル基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物と脱水素縮合反応により組成物を硬化させる主剤として作用するものであり、1分子中に少なくとも2個以上のシラノール基を有する直鎖状、分岐状、3次元ネット状のオルガノポリシロキサンである。
【0017】
3次元ネット状のオルガノポリシロキサンにはM単位ケイ素とQ単位ケイ素からなるMQレジンやD単位ケイ素とT単位ケイ素からなるDTレジン等も含まれる。このシロキサン化合物の置換基としては後述のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと同様の置換基を用いることが出来るが、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものが良い。中でも一般式(1)で表される化合物を好ましく用いることが出来る。
【0019】
一般式(1)中、Rは、互いに同一でも異なっていてもよい、非置換または置換の一価の炭化水素基及び水酸基からなる群から選択される。一価の炭化水素として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル、デシルのようなアルキル基、ビニル、アリルのようなアルケニル基、フェニルのようなアリール基、2−フェニルエチルのようなアラルキル基などが挙げられる。さらに、これらの炭化水素基中の水素原子の一部が他の原子又は置換基で置換されたもの、すなわち、クロロメチルのようなハロゲン化アルキル基、クロロフェニルのようなハロゲン化アリール基、3−メトキシプロピルのようなアルコキシアルキル基、3−シアノプロピルのようなシアノアルキル基などの置換炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、好ましいものとしては、フェニル基、メチル基等が挙げられる。上記式中Rのうちの6
5%程度以上がメチル基であることが好ましく、上記式中Rのうちの80%以上がメチル基であることがより好ましい。特に耐UV性が要求される場合には、水酸基を除く全有機基中99%以上がメチル基であることがより好ましい。
【0020】
具体的には、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、これらシラノール基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物は市販のものを使用することができる。例えば、Momentive Performance Materials社製ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンC96−723、XF3905、YF3057、YF3800、YF3802、YF3807、YF3897などが挙げられる。
【0021】
前記シラノール基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常500以上、好ましくは1000以上、さらに好ましくは5000以上、また、通常150000以下、好ましくは100000以下、さらに好ましくは80000以下である。この範囲を下回ると、硬化物が固く脆くなる可能性がある。また、この範囲を上回ると組成物が硬化しづらくなる可能性がある。
【0022】
前記シラノール基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また(A)成分と(B)成分の合計重量に対する(A)成分の重量比の上限は、通常99%、好ましくは97%、より好ましくは95%であり、下限は通常20%、好ましくは40%、より好ましくは、60%である。(A)成分の(A)成分と(B)成分の合計重量に対する重量比が大きすぎると、組成物の硬化が遅くなったり、硬化物の硬度が低く機械強度が小さくなるおそれがあり、(A)成分の(A)成分と(B)成分の合計重量に対する重量比が小さすぎると、硬化物が脆くなる傾向にある。
【0023】
<2.(B)ヒドロシリル基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物>
本実施形態において(B)成分として使用されるヒドロシリル基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物とは、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のSiH結合を有するオルガノハイドロジェンシラン又は直鎖状、分岐状、3次元ネット状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。なかでもオルガノハイドロジェンポリシロキサンが硬化時に揮発しにくく好ましい。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの置換基としては後述の基を用いることが出来るが、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものが良い。
【0024】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、ケイ素原子に結合した置換又は非置換の一価炭化水素基としては、通常、炭素数1〜12、好ましくは1〜8程度のものが挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。また、3wt%以内の炭素数1〜3のアルコキシ基が含まれていてもよい。
【0025】
上記オルガノハイドロジェンシラン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、(CH
3)SiH
3、(CH
3)
2SiH
2、(C
6H
5)SiH
3、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン
、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
中でも前記一般式(2)で表される化合物を好ましく用いることが出来る。
【0027】
一般式(2)中、R
1〜R
3およびR
5〜R
8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、およびR
10R
11R
12Siから選ばれる基を示す。R
4、R
9〜R
12は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、およびアリール基から選ばれる基を示す。lは、2以上の整数を示す。mは、0以上の整数を示す。
R
1〜R
12のうち、少なくとも80mol%以上、好ましくは95mol%以上、さらに好ましくは99mol%以上がメチル基であることが好ましい。
【0028】
前記ヒドロシリル基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常300以上、好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上、また、通常50000以下、好ましくは20000以下、さらに好ましくは10000以下である。この範囲を下回ると、組成物の硬化物が固く脆くなるという可能性がある。また、この範囲を上回ると、組成物全体が均一に硬化しづらくなる可能性がある。
前記ヒドロシリル基を一分子中に2個以上含有するシロキサン化合物中のヒドロシリル基含有量の上限は、通常20mmol/g、好ましくは15mmol/g、より好ましくは10mmol/g、下限は通常0.1mmol/g、好ましくは1mmol/g、より好ましくは、3mmol/gである。
【0029】
また(A)成分と(B)成分の合計重量に対する(B)成分の重量比の上限は、通常70%、好ましくは50%、より好ましくは30%であり、下限は通常0.5%、好ましくは1%、より好ましくは、3%である。大きすぎると、硬化物が脆くなる傾向にあり、小さすぎると組成物の硬化が遅くなったり、硬化が不十分になり硬化物の機械強度が小さくなるおそれがある。
そして(B)成分の化合物が有するヒドロシリル基の合計と、前記(A)成分の化合物の有するシラノール基と、の合計のモル比SiH/SiOHが1〜20である。モル比の下限は、好ましくは、1.5、より好ましくは2、上限は好ましくは15、より好ましくは10、更に好ましくは5である。モル比が1より小さくても、20より大きくても、組成物の硬化が不十分になる傾向にあり、残存するシラノール基やヒドロシリル基が多くなるため硬化物の耐熱性、耐光性、耐クラック性が低下する場合がある。
【0030】
<3.(C)脱水素縮合反応触媒(硬化触媒ともいう)>
本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物は、脱水素縮合反応触媒として、(C)白金族金属触媒を含有する。白金族金属触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。具体例としては、例えば、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体などを好適に用いることができる。
【0031】
なお、この(C)白金族金属触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(A)成分および(B)成分の合計重量に対して通常0.5ppm以上、好ましくは1ppm以上であり、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下である。これにより触媒活性を高いものとすることができる。
【0032】
前記白金族金属触媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。 また任意の反応促進剤や反応抑制剤と併用してもよい。
また、前記白金族金属触媒とは異なるシロキサン化合物脱水素縮合反応触媒を併用してもよく、錫、チタン、アルミニウム等、白金族金属以外の金属錯体、ヒドロキシルアミンを含有するアミノキシ化合物、などが挙げられる。
なお、前記の硬化触媒の含有率は、ICP分析により測定できる。
【0033】
<4.(D)有機カルボン酸金属塩、又はセリウム化合物>
本実施形態の(D)成分は、有機カルボン酸金属塩、及びセリウム化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である。
(D)成分として用いられる有機カルボン酸金属塩の金属としては、特に限定されないが、亜鉛、ジルコニウム、鉄、インジウム、ニッケル、マンガン、ランタン、サマリウム、プラセオジム、ネオジム、セリウムなどが挙げられる。好ましい金属としては、ランタン、サマリウム、プラセオジム、ネオジム、セリウム等の希土類金属とジルコニウム、インジウム、亜鉛であり、特に好ましくはセリウムである。
【0034】
また有機カルボン酸金属塩の有機カルボン酸としては、特に限定されないが、炭素数4−10の直鎖、分岐又は環状のカルボン酸などがあげられ、好ましくは、2−エチルヘキサン酸もしくはオクチル酸である。そしてこれが、上述の金属に2から4個結合しているものが好ましく、より好ましくは金属との結合数は3、つまり3価の金属であるものがより好ましい。そして最も好ましい有機カルボン酸金属塩は、2−エチルヘキサン酸セリウムである。
【0035】
本実施形態において、シリコーンとの相溶性を上げる等の目的で、有機カルボン酸金属塩と有機カルボン酸とを組成物中で共存させることが好ましい。組成物中で共存させる有機カルボン酸は、有機カルボン酸金属塩と同種の有機カルボン酸であっても、異種の有機カルボン酸であってもよいが、2−エチルヘキサン酸もしくはオクチル酸がポリシロキサンとの相溶性の観点で好ましい。有機カルボン酸の添加量は、有機カルボン酸塩の添加量を100(重量換算)として概ね10から1000程度である。
【0036】
有機カルボン酸金属塩の金属は、本実施形態の(A)および(B)成分の合計重量に対し、下限値としては1ppmであり、より好ましくは10ppmである。1ppm未満では十分な効果が発現しない可能性が有る。また、上限値としては100ppmが好ましく、100ppm以下とすると、高い透明性を維持することができて好ましい。
【0037】
また、本実施形態の(D)成分として用いられるセリウム化合物としては、シロキサン組成物に添加可能なものであれば特に限定されないが、例えば、酸化セリウムなどの酸化物、3価又は4価のセリウムの、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩などの有機酸塩、3価又は4価のセリウムイオンを中心金属とし、アルコールやジケトンを配位子とするセリウム錯体、が挙げられる。中でも、有機カルボン酸塩とジケトン錯体が好ましく、具体的には、トリス(アセチルアセトナト)セリウム、オクチル酸セリウム、2−エチルヘキサン酸セリウムなどが挙げられる。なお、上記有機カルボン酸金属塩と重複する化合物も例示される。
【0038】
セリウム化合物がシリコーンに溶解しない場合、セリウム化合物の平均粒子径は小さい方が、高い効果が得られやすいので、好ましい。また、硬化性ポリシロキサン組成物の透明性を維持する観点からは、セリウム化合物の一次粒子径は100nm以下が好ましく、セリウム化合物を分散媒に分散したゾルの状態でポリシロキサン組成物へ添加してもよい。セリウム化合物の添加量は、シリコーンへのセリウム化合物の溶解性や、不溶性の場合はセリウム化合物の粒子径によって、最適な範囲が異なってくるため、セリウム化合物の種類や形状、粒子径、ゾルの場合は分散状態、などに応じて適宜選択すればよい。
【0039】
セリウム化合物のセリウム量は、本実施形態の(A)および(B)成分の合計重量に対し、下限値としては1ppmであり、より好ましくは10ppmである。上限値としては通常10000ppmであり、それより大きいとポリシロキサン硬化物の透明性が著しく低下するおそれがある。
【0040】
本実施形態において、(D)成分は、ポリシロキサン硬化物の透明性を大きく損なうことなく、耐熱性、耐光性、耐クラック性等を著しく向上させる効果があり、また、(C)白金族金属触媒と併用することで、白金族金属触媒の働きを穏やかにし、硬化反応で副生する水素ガスによる発泡をコントロールする効果や、脱水縮合反応の触媒として作用し、残存シラノール基間の縮合を進める効果が期待できる。
【0041】
<5.(E)反応抑制剤>
本実施形態において、硬化性ポリシロキサン組成物の常温での使用可能時間を延長する、脱水素反応の反応温度を高めに制御する、水素ガスの発生温度や発生速度を制御する、硬化物中の気泡の残存を抑制する、等の目的で反応抑制剤を添加することが好ましい。
本実施形態において(E)成分として使用される反応抑制剤としては、例えば脂肪族不飽和結合を含有する化合物が挙げられ、脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が例示される。脂肪族不飽和結合を含有する化合物の中でも、三重結合を有する化合物が好ましい。
【0042】
反応抑制剤の添加量は種々設定できるが、使用する(C)硬化触媒1molに対する好ましい添加量の下限は10
−1モル、より好ましくは1モルであり、好ましい添加量の上限は10
3モル、より好ましくは10
2モルである。また、これらの反応抑制剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0043】
<6.その他の成分>
その他の成分として、耐熱向上剤としての金属酸化物、難燃助剤、導電付与剤、帯電防止剤、加工助剤などを用いることができる。
また、アルコキシシリル基を含有するアルコキシシラン系化合物、シランカップリング剤、チタン系やジルコニウム系等のシロキサン化合物脱水縮合触媒などを架橋補助剤とし
て配合することもできる。
本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物を、半導体発光装置用封止材として用いる場合などにおいては、蛍光体や無機粒子などを含有させてもよい。
【0044】
<7.無機粒子(フィラー)の併用>
本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物を少なくとも備えることを特徴とした光学部材を、半導体発光装置に使用する場合などにおいては、光学的特性や作業性を向上させるため、また、以下の<1>〜<5>の何れかの効果を得ることを目的として、更に無機粒子を含有させてもよい。
<1>硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物に光散乱物質として無機粒子を混入し、半導体発光装置の光を散乱させることにより、蛍光体に当たる半導体発光素子の光量を増加させ、波長変換効率を向上させると共に、半導体発光装置から外部に放出される光の指向角を広げる。
<2>硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物に結合剤として無機粒子を配合することにより、クラックの発生を防止する。
<3>硬化性ポリシロキサン組成物に、粘度調整剤として無機粒子を配合することにより、当該組成物液の粘度を高くする。
<4>硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物に無機粒子を配合することにより、その収縮を低減する。
<5>硬化性ポリシロキサン組成物の硬化物に無機粒子を配合することにより、その屈折率を調整して、光取り出し効率を向上させる。
この場合は、硬化性ポリシロキサン組成物に、蛍光体の粉末と同様に、無機粒子を目的に応じて適量混合すればよい。
【0045】
無機粒子としては、シリカ微粒子、溶融球状シリカ、破砕状シリカ、アモルファスシリカ、石英ビーズ、ガラスビーズ、シリコーン粒子、などが挙げられる。中でも、シリカ微粒子を粘度調整剤として好適に使用することができ、特に限定されるものではないが、BET法による比表面積が、通常50m
2/g以上、好ましくは80m
2/g以上、さらに好ましくは100m
2/g以上である。また、通常300m
2/g以下、好ましくは200m
2/g以下である。比表面積が小さすぎるとシリカ微粒子の添加効果が認められず、大きすぎると樹脂中への分散処理が困難になる傾向にある。シリカ微粒子は、例えば親水性のシリカ微粒子の表面に存在するシラノール基と表面改質剤を反応させることにより表面を疎水化したものを使用してもよい。
【0046】
表面改質剤としては、アルキルシラン類の化合物が挙げられ、具体例としてジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン、ジメチルシリコーンオイルなどが挙げられる。
【0047】
シリカ微粒子としては、例えばフュームドシリカを挙げることができる。フュームドシリカは、H
2とO
2との混合ガスを燃焼させた1100〜1400℃の炎でSiCl
4ガスを酸化、加水分解させることにより作製される。フュームドシリカの一次粒子は、平均粒径が5〜50nm程度の非晶質の二酸化ケイ素(SiO
2)を主成分とする球状の超微粒子であり、この一次粒子がそれぞれ凝集し、粒径が数百nmである二次粒子を形成する。
【0048】
フュームドシリカは、超微粒子であるとともに、急冷によって作製されるため、表面の構造が化学的に活性な状態となっている。
具体的には、例えば日本アエロジル株式会社製「アエロジル」(登録商標)が挙げられ、親水性アエロジル(登録商標)の例としては、「90」、「130」、「150」、「200」、「300」、疎水性アエロジル(登録商標)の例としては、「R8200」、「R972」、「R972V」、「R972CF」、「R974」、「R202」、「R
805」、「R812」、「R812S」、「RY200」、「RY200S」「RX200」が挙げられる。
本実施形態のポリシロキサン硬化物における無機粒子の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、その適用形態により自由に選定できる。例えば、無機粒子を光散乱剤として用いる場合は、その含有率は組成物全体の0.01〜10重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いる場合は、その含有率は1〜80重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チキソ剤)として用いる場合は、その含有率は0.1〜20重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いる場合は、その含有率は10〜80重量%が好適である。無機粒子の量が少なすぎると所望の効果が得られなくなる可能性があり、多すぎると硬化物の密着性、透明性、硬度等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0049】
<8.硬化性ポリシロキサン組成物の製造方法>
本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物は、上記した各成分を均一に混合することによって得ることができる。その混合方法は特に限定されない。
この混合には一般のシリコーンゴム調製に使用される混合機を用いることができ、例えば、万能混練機、プラネタリミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ゲートミキサー、品川ミキサー、加圧ニーダー、三本ロール、二本ロールを用いることができる。
【0050】
<9.硬化性ポリシロキサン組成物の屈折率について>
本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物の屈折率は、該硬化性ポリシロキサン組成物の温度が20℃における波長589nmの光の屈折率が、通常1.56以下、好ましくは1.45以下、更に好ましくは1.42以下であり、通常1.35以上、好ましくは1.40以上である。光学部材に応用する場合には一般的な発光デバイスの屈折率が約2.5以下であるが、樹脂の光安定性の観点からも比較的屈折率の低いものを選択することが好ましい。
【0051】
本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物は、含有するシロキサン化合物のケイ素原子に結合した全置換基のうち、ヒドリド基とシラノール基を除く置換基の80mol%以上、好ましくは95mol%以上、さらに好ましくは99mol%以上がアルキル基であることが好ましい。また、アルキル基は、メチル基であることが好ましい。
本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物の屈折率は、通常屈折計により測定することができる。具体的には、Abbe屈折計(ナトリウムD線(589nm)使用)を用いることができる。
【0052】
<10.硬化性ポリシロキサン組成物の特性>
本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物の粘度に制限は無いが、液温25℃において、通常20mPa・s以上、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上、また、通常20000mPa・s以下、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは5000mPa・s以下である。なお、前記粘度はRV型粘度計(例えばブルックフィールド社製RV型粘度計「RVDV−II+Pro」により測定できる。
【0053】
<11.他の部材との組み合わせ>
本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物は単独で用いてもよいが、粘度、硬化速度、硬化物の硬度、塗布しやすさの向上などの性状の調整を目的として、他の液状媒体と混合してもよい。使用される液状媒体としては無機系材料および/または有機系材料が使用できる。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、また
はこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
有機系材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。特に照明など大出力の発光装置が必要な場合、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用することが好ましい。
【0054】
珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等のシリコーン系材料、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする重合体をいい、例えば一般組成式(3)で表される化合物及び/またはそれらの混合物が挙げられる。
(R
21R
22R
23SiO
1/2)
M(R
24R
25SiO
2/2)
D(R
26SiO
3/2)
T(SiO
4/2)
Q・・・式(3)
ここで、R
21からR
26は同じであっても異なってもよく、有機官能基、シリル基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。またM、D、T及びQは0から1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。
【0055】
<12.硬化条件について>
本実施形態のポリシロキサン硬化物を製造する方法は、本実施形態の硬化性ポリシロキサン組成物を硬化させる工程を有していれば制限されない。なお、重縮合物が溶媒を含有している場合には、乾燥させる前に事前に溶媒を留去するようにしてもよい。
本実施形態のポリシロキサン硬化物は、通常、空気中で、150℃にて6時間以内で硬化するが、好ましい硬化条件を以下に詳述する。硬化処理は、常圧で実施する場合、通常15℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下の範囲で行なう。加圧下で液相を維持することでより高い温度で行なうことも可能である。
硬化時間は反応温度により異なるが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは0.8時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは20時間以下、更に好ましくは15時間以下の範囲で実施される。
【0056】
以上の硬化条件において、時間が短くなったり温度が低すぎたりすると、重合が不十分なため硬化物の強度が不十分となる可能性がある。また、時間が長くなったり温度が高すぎたりすると、硬化性ポリシロキサン組成物の分子量が高くなり、硬化が早すぎて硬化物の構造が不均一となり、クラックを生じやすくなる。
また、硬化温度をステップ昇温とすると発泡を抑制することができる。硬化物中の気泡の残存を極力抑えた本実施形態のポリシロキサン硬化物の25℃での密度は概ね0.95g/cm
3以上となる。
【0057】
<13.半導体発光装置の実施形態>
本実施形態のポリシロキサン硬化物を少なくとも備えてなる光学部材の例として、半導体発光装置を例に挙げて、実施形態を用いて説明する。なお、以下の各実施形態では、本実施形態の半導体発光装置を適宜「発光装置」と略称することがある。
さらに、本実施形態の半導体発光装置に用いる光学部材は、半導体発光装置用部材と呼ぶこととする。これらの実施形態はあくまでも説明の便宜のために用いるものであって、
本実施形態の光学部材を少なくとも備えてなる半導体発光装置の例は、これらの実施形態に限られるものではない。
【0058】
[基本概念]
本実施形態に係る半導体発光装置用部材を用いた半導体発光装置は、例えば、以下のA)、B)の適用例がある。本実施形態に係る半導体発光装置用部材は、何れの適用例においても、従来の半導体発光装置用の光学部材と比較して、優れた光耐久性及び熱耐久性を示し、クラックや剥離が起きにくく、輝度の低下が少ない。したがって、本実施形態に係る半導体発光装置用部材は、長期にわたって信頼性の高い部材である。
A)発光素子の発光色をそのまま利用する半導体発光装置。
B)発光素子の近傍に蛍光体部を配設し、発光素子からの光により蛍光体部中の蛍光体や蛍光体成分を励起させ、蛍光を利用して所望の波長の光を発光する半導体発光装置。
【0059】
A)の適用例においては、本実施形態に係る半導体発光装置用部材の高い耐久性、透明性および封止材性能を生かし、単独使用にて高耐久封止材、光取り出し膜、各種機能性成分保持材として用いることができる。特に、半導体発光装置用部材を上記無機粒子等を保持する機能性成分保持材として用い、半導体発光装置用部材に透明高屈折成分を保持させた場合には、半導体発光装置用部材を発光素子の出光面と密着させて使用し、かつ、発光素子に近い屈折率にすることで、発光素子の出光面での反射を低減し、より高い光取り出し効率を得ることが可能となる。
【0060】
また、B)の適用例においても、本実施形態に係る半導体発光装置用部材は、上記のA)の適用例と同様の優れた性能を発揮することができ、かつ、蛍光体や蛍光体成分を保持することにより高耐久性で光取り出し効率の高い蛍光体部を形成することができる。さらに、半導体発光装置用部材に、蛍光体や蛍光体成分に加えて透明高屈折成分を併せて保持させた場合、半導体発光装置用部材の屈折率を発光素子や蛍光体の屈折率近傍にすることで、界面反射を低減し、より高い光取り出し効率を得ることができる。
【0061】
[A.蛍光を利用しない実施形態]
〔実施形態A〕
本実施形態の発光装置1Aは、
図1に示すように、プリント配線17が施された絶縁基板16上に発光素子2が表面実装されている。この発光素子2は発光層部21のp形半導体層(図示せず)及びn形半導体層(図示せず)それぞれが、導電ワイヤ15,15を介してプリント配線17,17に電気的に接続されている。なお、導電ワイヤ15,15は、発光素子2から放射される光を妨げないように、断面積の小さいものが用いられている。
ここにおいて、発光素子2としては、紫外〜赤外域までどのような波長の光を発するものを用いてもよいが、ここでは、窒化ガリウム系のLEDチップを用いているものとする。また、この発光素子2は、
図1における下面側にn形半導体層(図示せず)、上面側にp形半導体層(図示せず)が形成されており、p形半導体層側から光出力を取り出すから
図1の上方を前方として説明する。
【0062】
また、絶縁基板16上には発光素子2を囲む枠状の枠材18が固着されており、枠材18の内側には発光素子2を封止・保護する封止部19を設けてある。この封止部19は、本発明の半導体発光デバイス用部材である透明部材3Aにより形成されたもので、上記の硬化性ポリシロキサン組成物でポッティングを行なうことにより形成できる。
しかして、本実施形態の発光装置1Aは、発光素子2と、透明部材3Aとを備えているため、発光装置1Aの耐光性、耐熱性を向上させることができる。また、封止部3Aにクラックや剥離が起きにくいため、封止部3Aの透明性を高めることが可能となる。
【0063】
さらに、従来に比べて光色むらや光色ばらつきを少なくすることができるとともに、外部への光の取り出し効率を高めることができる。すなわち、封止部3Aを、曇りや濁りがなく透明性が高いものとすることができるため、光色の均一性に優れ、発光装置1A間の光色ばらつきもほとんどなく、発光素子2の光の外部への取り出し効率を従来に比べて高めることができる。また、発光物質の耐候性を高めることができ、従来に比べて発光装置1Aの長寿命化を図ることが可能となる。
【0064】
[B.蛍光を利用する実施形態]
〔実施形態B〕
実施形態Bは、封止部3Aに適宜蛍光体を添加して蛍光体部を形成する以外は、実施形態Aに準じた構成とすることができる。封止部3Aに添加する蛍光体の種類、量は、半導体発光装置に要求される出射光のスペクトルにより適宜選択される。なお、蛍光体部は発光装置1Aの上部に積層するように配置してもよい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、それらは本発明の説明を目的とするものであって、本発明をこれらの態様に限定することを意図したものではない。
[実施例1]
(A)両末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(Si−OH:0.13mmol/g)100重量部、(B)両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたメチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体(粘度20mm
2/s、Si−H:7.5mmol/g)7.23重量部、(C)白金錯体触媒としてモメンティブ製XC86−250 0.23重量部、(D−1)2−エチルヘキサン酸セリウム49% in 2−エチルヘキサン酸、Ce12%(和光純薬工業株式会社)0.003重量部、(E)1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.006重量部、を秤量、混合し、硬化性ポリシロキサン組成物を得た。
硬化性ポリシロキサン組成物2.2gを直径5cmのポリテトラフルオロエチレン製シャーレに入れ、真空デシケーター内で数分間脱気した後、恒温器中、100℃にて1時間、150℃にて5時間保持し、厚さ約1mmのエラストマー状硬化物を得た。
【0066】
[実施例2〜
6、参考例1、比較例1〜4]
D成分として、以下の化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す組成の硬化性ポリシロキサン組成物と、厚さ約1mmのエラストマー状硬化物を得た。
(D−1)2-エチルヘキサン酸セリウム49% in 2-エチルヘキサン酸、Ce12%(和光純薬工業株式会社)
(D−2)8%オクチル酸インジウム(新興化学工業株式会社)
(D−3)Zirconyl 2−ethylhexanoate in mineral spirits(〜6%Zr)(STREM CHEMICALS)
(D−4)2−エチルヘキサン酸亜鉛ミネラルスピリット溶液(Zn:15%)(和光純薬工業株式会社)
(D−5)NanoTek Powder CeO
2(シーアイ化成株式会社)
(D−6)UEP酸化ジルコニウム ZrO
2(第一稀元素化学工業株式会社)
【0067】
表1に示す各試験方法は次の通りである。
[ショアA硬度]
厚さ約1mmのエラストマー状硬化物を中心から放射線状に6等分したピースを6枚重ね、ショアA硬度を測定した。測定後のピースをテフロン(登録商標)板の上に円形に並べて230℃の恒温器で500時間保持した後、ピースを6枚重ね、ショアA硬度を測定した。
[重量変化]
厚さ約1mmのエラストマー状硬化物を230℃の恒温器で500時間保持した後、重量を測定し、初期値と比較した。
[クラック試験]
厚さ約1mmのエラストマー状硬化物を中心から放射線状に6等分した1/6のピースをアルミ板にのせ、260℃の電気炉で24時間保持し、室温に冷ました後、クラックの有無を目視観察した。
【0068】
【表1】
【0069】
比較例では、230℃500時間経過後の硬度変化と重量変化が共に大きく、クラック試験で概ねNGであった。酸化ジルコニウムの添加量が多い比較例4は、クラック試験では問題無かったものの硬化物が不透明であった。
Ceを有効量添加した組成物は、230℃500時間経過後の重量変化が顕著に小さい。