特許第6873662号(P6873662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873662周回シールド掘削機および周回トンネル掘削方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873662
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】周回シールド掘削機および周回トンネル掘削方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20210510BHJP
   E21D 11/40 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   E21D9/06 301D
   E21D11/40 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-231410(P2016-231410)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-87456(P2018-87456A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 隆志
(72)【発明者】
【氏名】小田 誠
(72)【発明者】
【氏名】酒井 義雄
(72)【発明者】
【氏名】久木原 勇和
(72)【発明者】
【氏名】岸本 公輝
(72)【発明者】
【氏名】立石 光助
(72)【発明者】
【氏名】串田 慎二
(72)【発明者】
【氏名】米沢 実
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−084395(JP,A)
【文献】 特開2004−068319(JP,A)
【文献】 特開平06−221089(JP,A)
【文献】 特開2002−106298(JP,A)
【文献】 実公昭43−024774(JP,Y1)
【文献】 特開2006−307582(JP,A)
【文献】 特開昭59−228600(JP,A)
【文献】 特開2002−129884(JP,A)
【文献】 特開昭61−146996(JP,A)
【文献】 米国特許第04647256(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−9/14
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に設けられた発進基地から推進する掘削機本体と、
前記発進基地における前記掘削機本体の推進方向と反対側の後方壁面に取り付けられた、複数のセグメントを組み立ててセグメントリングを生成するエレクタ装置と、
前記後方壁面に取り付けられた、前記エレクタ装置によって生成されたセグメントリングを前記掘削機本体に向かって押し出す複数の元押しジャッキと、
を備える、シールド掘削機。
【請求項2】
前記掘削機本体は、カッターヘッドと、前記カッターヘッドを支持する前胴と、前記前胴とスライド可能な後胴と、前記後胴に対して前記前胴を前進させるとともに前記前胴に対して前記後胴を引き寄せる複数のシールドジャッキと、を含む、請求項1に記載のシールド掘削機。
【請求項3】
前記エレクタ装置は、中心軸回りに回転する筒状の旋回シャフトと、セグメント把持部と、前記エレクタ把持部をスライドさせる、前記旋回シャフトの外周面に取り付けられたスライド機構と、を含む、請求項1または2に記載のシールド掘削機。
【請求項4】
前記エレクタ装置は、前記旋回シャフトを回転可能に支持する筒状の旋回台を含み、
前記旋回シャフトは、前記旋回台と共に連続した内部空間を形成するように延びている、請求項3に記載のシールド掘削機。
【請求項5】
前記シールド掘削機は、前記掘削機本体が前記発進基地から周方向に推進する周回シールド掘削機であり、
前記発進基地は既設トンネルから横向きに広がり、前記発進基地の後方壁面は上面である、請求項1〜4の何れか一項に記載のシールド掘削機。
【請求項6】
前記エレクタ装置は、セグメント把持部と、前記セグメント把持部をリフトさせるリフト機構と、前記セグメント把持部をヨーイングさせるヨーイング機構を含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のシールド掘進機。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載のシールド掘削機を用いてトンネルを掘削するトンネル掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周回シールド掘削機および周回トンネル掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、既設トンネルを取り巻くような周回トンネルを掘削する際に用いられる周回シールド掘削機が知られている。例えば、特許文献1には、バケット掘削式の周回シールド掘削機が開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1に開示された周回シールド掘削機は、周回方向に推進する、バケット駆動機構およびシールドジャッキを有する掘削機本体と、この掘削機本体にワイヤを介して牽引されたエレクタ装置を含む。掘削機本体は、シールドジャッキを伸長させることによって、組み立てられたセグメントに反力をとって推進する。エレクタ装置は、シールドジャッキを短縮させたときの掘削機本体内スペースでセグメントを組み立てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−106593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された周回シールド掘削機では、エレクタ装置が掘削機本体に牽引されているために、エレクタ装置がセグメントを組み立てる位置が常に変化する。従って、セグメント組立時のエレクタ装置の操作およびセグメント同士の締結作業を、掘削機本体の推進位置に応じて作業員が異なる姿勢で行わなければならない。また、既に掘削された周回トンネルの一部を通って掘削機本体近くまでセグメントを周回方向に搬送する必要があり、セグメントの搬送に多大な労力を要する。
【0006】
そこで、本発明は、セグメント組立時のエレクタ装置の操作およびセグメント同士の締結作業ならびにセグメントの搬送作業を簡素化できる周回シールド掘削機、およびこの周回シールド掘削機を用いた周回トンネル掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の周回シールド掘削機は、地中に設けられた発進基地から周回方向に推進する掘削機本体と、前記発進基地における前記掘削機本体の推進方向と反対側の後方壁面に取り付けられた、複数のセグメントを組み立ててセグメントリングを生成するエレクタ装置と、前記後方壁面に取り付けられた、前記エレクタ装置によって生成されたセグメントリングを前記掘削機本体に向かって押し出す複数の元押しジャッキと、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、発進基地の後方壁面に取り付けられたエレクタ装置によって生成されたセグメントリングが元押しジャッキによって掘削機本体に向かって押し出されるので、セグメント組立時のエレクタ装置の操作およびセグメント同士の締結作業を発進基地内で行うことができる。しかも、セグメントを既に掘削された周回トンネルの一部を通って搬送する必要もない。従って、セグメント組立時のエレクタ装置の操作およびセグメント同士の締結作業ならびにセグメントの搬送作業を簡素化することができる。
【0009】
前記掘削機本体は、カッターヘッドと、前記カッターヘッドを支持する前胴と、前記前胴とスライド可能な後胴と、前記後胴に対して前記前胴を前進させるとともに前記前胴に対して前記後胴を引き寄せる複数のシールドジャッキと、を含んでもよい。特許文献1に開示された周回シールド掘削機では、掘削機本体が上向きに推進する際に、シールドジャッキの推力がエレクタ装置の重量を負担する必要がある。これに対し、本構成によれば、シールドジャッキの推力がエレクタ装置の重力を負担する必要がない。従って、シールドジャッキに必要な推力を低減することができる。
【0010】
前記エレクタ装置は、中心軸回りに回転する筒状の旋回シャフトと、セグメント把持部と、前記エレクタ把持部をスライドさせる、前記旋回シャフトの外周面に取り付けられたスライド機構と、を含み、前記発信基地は、既設トンネルから広がるように設けられており、前記エレクタ装置の旋回シャフトの内部を通って、前記既設トンネル内または前記発進基地内に配置された油圧ポンプユニットから前記掘削機本体に油圧配管が接続されていてもよい。この構成によれば、中空のエレクタ装置の内部を利用して油圧配管を配索することができる。しかも、圧力源である油圧ポンプユニットは既設トンネル内または発進基地内に配置されるので、油圧ポンプユニットを容易にメンテナンスすることができる。
【0011】
例えば、前記エレクタ装置は、前記旋回シャフトを回転可能に支持する筒状の旋回台を含み、前記旋回シャフトは、前記旋回台と共に連続した内部空間を形成するように延びていてもよい。
【0012】
また、本発明の周回トンネル掘削方法は、上記の周回シールド掘削機を用いて周回トンネルを掘削することを特徴とする。この構成によれば、周回トンネルの掘削をスムーズに進行させることができる。
【0013】
前記掘削機本体が前記後方壁面を貫通する前に、前記エレクタ装置および前記複数の元押しジャッキを前記後方壁面から取り外して前記発進基地の中間位置に移設し、前記後方壁面に前記掘削機本体が通過可能なガイド筒を取り付けるとともに、前記ガイド筒内に流動化処理土を充填してもよい。この構成によれば、掘削機本体が発進基地の後方壁面を貫通するときの止水を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セグメント組立時のエレクタ装置の操作およびセグメント同士の締結作業ならびにセグメントの搬送作業を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る周回シールド掘削機の概略構成図である。
図2】エレクタ装置の側面図である。
図3図2のIII−III線に沿った断面図である。
図4図2のIV−IV線に沿った断面図である。
図5】既設トンネルと周回トンネルとの関係を示す図である。
図6】周回トンネル掘削方法を説明するための図であり、周回シールド掘削機を設置する前の状態を示す。
図7図6のVII−VII線に沿った断面図である。
図8】周回トンネル掘削方法を説明するための図であり、周回シールド掘削機の掘削機本体が少しだけ推進した状態を示す。
図9】周回トンネル掘削方法を説明するための図であり、周回シールド掘削機の掘削機本体が発進基地の後方壁面を通過する前の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る周回シールド掘削機1を示す。この周回シールド掘削機1は、図5に示すように、既設トンネル81を取り巻くような周回トンネル83を掘削する周回トンネル掘削方法に用いられる。
【0017】
図5では、周回トンネル83が円形状であるが、周回トンネル83は楕円状などの他の形状であってもよい。また、図5図9では、一例として、既設トンネル81と別の既設トンネル82との分岐合流部を構築する場合を示すが、周回シールド掘削機1を用いた周回トンネル掘削方法は、1本の既設トンネル81を拡大する場合にも有用である。
【0018】
図6に示すように、周回シールド掘削機1が用いられる場合、まず地中に既設トンネル81から広がる発進基地11が設けられ、その後に発進基地11内に周回シールド掘削機1が設置される。図6では、発進基地11が既設トンネル81から横向きに広がっているが、発進基地11は、既設トンネル81から上向きまたは下向きに広がっていてもよい。
【0019】
発進基地11は、図6および図7に示すように、コンクリート壁12によって囲まれており、縦断面でも横断面でも既設トンネル81の中心に向かって開口する略コ字状をなしている。また、発進基地11の開口には、中央にコンクリート柱13も立設されている。
【0020】
本実施形態では、周回トンネル83の断面は、図7に示すように既設トンネル81の延在方向に長い矩形状である。ただし、周回トンネル83の断面は、これに限定されるものではなく、例えば、楕円状や円形状であってもよい。
【0021】
図1に示すように、周回シールド掘削機1は、掘削機本体2およびエレクタ装置4を含む。掘削機本体2は、発進基地11から既設トンネル81を取り巻くように周回方向に推進する。エレクタ装置4は、発進基地11における掘削機本体2の推進方向と反対側の後方壁面14(本実施形態では上面)に取り付けられている。
【0022】
本実施形態では、エレクタ装置4が架台6を介して発進基地11の後方壁面14に取り付けられている。架台6は、図7に示すように、後方壁面14に沿って既設トンネル81の延在方向に並ぶ複数の梁63と、梁63の既設トンネル81側の端部を支持する第1受桁61と、梁63の既設トンネル81と反対側の端部を支持する第2受桁62を含む。ただし、エレクタ装置4は、発進基地11の後方壁面14に直接取り付けられてもよい。
【0023】
図1に戻って、掘削機本体2は、カッターヘッド21、前胴22および後胴26を含む。前胴22は、カッターヘッド21を回転可能に支持し、後胴26は、前胴22とスライド可能である。
【0024】
具体的に、前胴22は、周回トンネル83と同曲率で屈曲する筒状の前方ケーシング23と、前方ケーシング23の前側開口を閉塞する前壁24を含む。後胴26は、前胴22の前方ケーシング23内に嵌まり込む、周回トンネル83と同曲率で屈曲する筒状の後方ケーシング27と、後方ケーシング27の後端部と接合された環状の構造体28を含む。
【0025】
さらに、掘削機本体2は、前胴22および後胴26内に複数のシールドジャッキ29を含む。シールドジャッキ29は、前方ケーシング23および後方ケーシング27の内周面に沿って所定のピッチで配置されている(シールドジャッキ29の数は、例えば、20〜40本である)。各シールドジャッキ29の一端部は、前胴22の前壁24または前方ケーシング23の内周面に取り付けられたブラケット25に連結されており、他端部は、後胴26の構造体28に連結されている。シールドジャッキ29は、後胴26に対して前胴22を前進させるとともに、前胴22に対して後胴26を引き寄せる。
【0026】
エレクタ装置4は、複数のセグメント3を組み立ててセグメントリング30を生成する。具体的に、エレクタ装置4は、図2図4に示すように、筒状の旋回台41および筒状の旋回シャフト43を含む。旋回台41は架台6から下向きに延びており、旋回シャフト43は旋回台41と共に連続した内部空間を形成するように旋回台41から下向きに延びている。本実施形態では、旋回シャフト43の中心軸が旋回台41の中心軸と一致している。
【0027】
旋回シャフト43は、旋回ベアリング42を介して旋回台41に旋回可能に支持されている。本実施形態では、旋回ベアリング42が、旋回台41に締結された内輪と、旋回シャフト43に締結された、外歯が形成された外輪を含む。そして、旋回ベアリング42の外輪の外歯にはモータ(図示せず)に取り付けられた駆動ギヤ40が噛み合っており、そのモータによって旋回シャフト43がその中心軸回りに回転させられる。
【0028】
さらに、エレクタ装置4は、旋回シャフト43の外周面に取り付けられたスライド機構44と、スライド機構44によってスライドされるセグメント把持部47を含む。本実施形態では、スライド機構44とセグメント把持部47の間に、リフト機構45およびヨーイング機構46も設けられている。リフト機構45は、油圧シリンダ45aを含み、セグメント把持部47を図2中の矢印Aで示すようにリフトさせる。ヨーイング機構46は、油圧シリンダ46aを含み、セグメント把持部47を図3中の矢印Bで示すようにヨーイングさせる。
【0029】
スライド機構44は、旋回シャフト43と一体的に形成された中空の本体部44aと、本体部44aを貫通するスライド部材44bと、ヘッドが本体部44aに連結され、ロッドの先端がスライド部材44bに連結された油圧シリンダ44cを含む。
【0030】
上述した掘削機本体2の前胴22内には、カッターヘッド21を回転させる油圧モータなどが配置される。このため、掘削機本体2には、図1に示すように、エレクタ装置4の旋回台41および旋回シャフト43の内部を通って、既設トンネル81内または発進基地11内に配置された油圧ポンプユニット(図示せず)から油圧配管7が接続されている。
【0031】
また、掘削機本体2の前胴22内には、掘削された泥を後方へ送り出すためのスクリューコンベヤ(図示せず)などが配置されており、このスクリューコンベヤから延びる排泥管もエレクタ装置4の旋回台41および旋回シャフト43の内部を通って延びている。さらに、既設トンネル81内または発進基地11内には、複数の電気盤が配置され、これらの電気盤と掘削機本体2とを接続する各種の電気ケーブルもエレクタ装置4の旋回台41および旋回シャフト43の内部を通って延びている。
【0032】
発進基地11の後方壁面14には、複数の元押しジャッキ5が直接取り付けられている。ただし、元押しジャッキ5は、架台6を介して後方壁面14に取り付けられてもよい。元押しジャッキ5は、エレクタ装置4によって生成されたセグメントリング30を掘削機本体2に向かって押し出す。元押しジャッキ5は、セグメントリング30に沿って所定のピッチで配置されている(元押しジャッキ5の数は、例えば、50〜80本である)。
【0033】
次に、図6図9を参照して、周回シールド掘削機1を用いた周回トンネル掘削方法を説明する。
【0034】
図6および図7に示すように、発進基地11の完成後、発進基地11の後方壁面14に架台6を取り付ける。また、発進基地11における掘削機本体2の推進方向側の前方壁面(本実施形態では下面)には、掘削機本体2用のエントランスを、コンクリート壁84および鋼管85により形成する。鋼管85の内周面には、掘削機本体2またはセグメントリング30と鋼管85との間をシールする複数のブラシ86が取り付けられる。
【0035】
ついで、発進基地11内で、分割搬入された掘削機本体2を組み立て、組み立てられた掘削機本体2を鋼管85内に挿入する。また、発進基地11の後方壁面14には、エレクタ装置4を架台6を介して取り付ける。さらに、後方壁面14には、元押しジャッキ5を取り付ける。
【0036】
その後、図8に示すように、エレクタ装置4によるセグメントリング30の作成、掘削機本体2の1リング分の推進および元押しジャッキ5によるセグメントリング30全体の押圧を繰り返す。これにより、周回トンネル83の掘削をスムーズに進行させることができる。
【0037】
図9に示すように、掘削機本体2がある程度推進した後、すなわち掘削機本体2が発進基地11の後方壁面14を貫通する前に、エレクタ装置4および元押しジャッキ5を発進基地11の後方壁面14から取り外し、それらを架台91を利用して発進基地11の中間位置に移設する。ついで、発進基地11の後方壁面14に掘削機本体2が通過可能なガイド筒92を取り付けるとともに、ガイド筒92内に流動化処理土93を充填する。これにより、掘削機本体2が発進基地11の後方壁面14を貫通するときの止水を図ることができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の周回シールド掘削機1では、発進基地11の後方壁面14に取り付けられたエレクタ装置4によって生成されたセグメントリング30が元押しジャッキ5によって掘削機本体2に向かって押し出されるので、セグメント組立時のエレクタ装置4の操作およびセグメント3同士の締結作業を発進基地11内で行うことができる。しかも、セグメント3を既に掘削された周回トンネルの一部を通って搬送する必要もない。従って、セグメント組立時のエレクタ装置4の操作およびセグメント3同士の締結作業ならびにセグメント3の搬送作業を簡素化することができる。
【0039】
ところで、特許文献1に開示された周回シールド掘削機では、エレクタ装置が掘削機本体に牽引されているために、掘削機本体が上向きに推進する際に、シールドジャッキの推力がエレクタ装置の重量を負担する必要がある。これに対し、本実施形態の周回シールド掘削機1では、シールドジャッキ29の推力がエレクタ装置4の重力を負担する必要がない。従って、シールドジャッキ29に必要な推力を低減することができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、エレクタ装置4が筒状の旋回台41と筒状の旋回シャフト43を含んでいるので、中空のエレクタ装置4の内部を利用して油圧配管7および各種の電気ケーブルを配索することができるとともに、エレクタ装置4を貫通するように排泥管を設置することができる。しかも、動力源である油圧ポンプユニットおよび複数の電気盤は既設トンネル81内または発進基地11内に配置されるので、油圧ポンプユニットおよび複数の電気盤を容易にメンテナンスすることができる。
【0041】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0042】
例えば、掘削機本体2は、カッターヘッド21を含まずに、特許文献1に開示された周回シールド掘削機と同様にバケット掘削式であってもよい。
【0043】
また、シールドジャッキ29は必ずしも設けられている必要はなく、省略可能である。この場合、元押しジャッキ5がセグメントリング30を介して掘削機本体2を押圧することで、掘削機本体2が推進する。
【0044】
また、シールドジャッキ29と元押しジャッキ5の併用は、周回シールド掘削機1以外にも、直線的にまたは大きな曲率半径で推進する通常のシールド掘削機に対しても有用である。
【0045】
また、エレクタ装置4が旋回台41を含まずに、架台6が、旋回ベアリング42の内輪を支持するように構成されていてもよい。つまり、油圧配管7、各種の電気ケーブルおよび排泥管は、エレクタ装置4の旋回シャフト43の内部のみを通っていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 周回シールド掘削機
11 発進基地
14 後方壁面
2 掘削機本体
21 カッターヘッド
22 前胴
26 後胴
29 シールドジャッキ
3 セグメント
30 セグメントリング
4 エレクタ装置
41 旋回台
43 旋回シャフト
44 スライド機構
47 セグメント把持部
5 元押しジャッキ
7 油圧配管
92 ガイド筒
96 流動化処理土
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9