(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873664
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】小型脱臭器
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20210510BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20210510BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20210510BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
A61L9/00 C
A61L9/20
B01J35/02 J
B01D53/86 110
B01D53/86 228
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-233874(P2016-233874)
(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公開番号】特開2018-89063(P2018-89063A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153409
【氏名又は名称】株式会社日本理工医学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100068308
【弁理士】
【氏名又は名称】後田 春紀
(72)【発明者】
【氏名】内田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】外山 勤
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−070416(JP,A)
【文献】
特開2004−166996(JP,A)
【文献】
特開2011−152497(JP,A)
【文献】
特開2013−094736(JP,A)
【文献】
特開2006−026239(JP,A)
【文献】
特開2000−167353(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/100303(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L9/00−9/22
B01D53/73,53/86−53/90,53/94,53/96
B01J21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上・下端を開口した長方形状筒体より成るエアガイドに、光触媒が施されたフィルターを挿着する挿着部を設け、且つ該挿着部の上方側を小径に絞って小径の脱臭空気の通気部を連設し、且つ該通気部の下流側、あるいは前記挿着部の上流側のいずれか一方に、ファンを設置するファン設置部が連設されて形成されると共に、紫外線LEDを前記挿着部の両側部において、それぞれ上・下に位置をずらして、前記光触媒が施されたフィルター面に対して傾斜して取付け、前記一方の紫外線LEDによる紫外線を、該光触媒が施されたフィルターの上面部および一方側の側面部全面を照射できるようにする一方、他方の紫外線LEDによる紫外線を、前記光触媒が施されたフィルターの他方側の側面部全面を照射できるようにして照射面を広げるようにして設置し、前記通気部によるベンチュリ効果により、該光触媒が施されたフィルターを通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を高め、脱臭効果を高めるようにしたことを特徴とする小型脱臭器。
【請求項2】
請求項1記載の小型脱臭器において、前記挿着部の上方側を小径に絞った小径の脱臭空気の通気部の外側壁面とケーシングの内側壁面間に広い空間部を形成し、該空間部に脱臭器の部品を配置するようにして、脱臭器の小型化を図るようにしたことを特徴とする小型脱臭器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
光触媒が施されたフィルターを挿着する挿着部の両側部において、紫外線LEDを、それぞれ
上・下に位置をずらして、前記フィルター面に対して傾斜して取付け、前記紫外線LEDによる紫外線を、該光触媒が施されたフィルターの上面部および両側面部に広く照射できるようにして、紫外線の照射面を広げる一方、小径に絞った通気部によるベンチュリ効果により、該光触媒が施されたフィルターを通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を高めて脱臭効果を高め、更に前記小径に絞った通気部の外側壁面とケーシング内側壁面間に空間部を形成し、該空間部に脱臭器の部品を配設できるようにして、脱臭器の小型化を図るようにした小型脱臭器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、
図4に示すように、光触媒が施されたフィルター、ファン、紫外線LED、エアガイド(反応容器)を備えた小型脱臭器は広く市販されており周知の技術となっている。また、小型脱臭器に関する先行技術につき、過去の特許文献を遡及検索したところ、下記の特許文献に示す「小型脱臭装置」が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013‐202232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記一般に市販されている小型脱臭器は、
図4に示すような構成より成るものである。すなわち、
図4は従来実用に供されている小型脱臭器の概略説明図であり、光触媒が施されたフィルター21、ファン22、紫外線LED23a・23b、エアガイド(反応容器)24を備えて形成されている。前記エアガイド24において、前記光触媒が施されたフィルター21を挿着する挿着部25の上方の循環空気の通気部26は前記挿着部25と同径に形成され、前記エアガイド24には、ベンチュリ効果により前記光触媒が施されたフィルター21を通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を高めるための小径に絞った通気部が備えられていないので、室内の脱臭効率が悪いという課題があった。
【0005】
また、前記一般に市販されている小型脱臭器のエアガイド24は、前記したようにベンチュリ効果により光触媒が施されたフィルター21を通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を高めるための小径に絞った通気部を備えておらず、そのため該通気部の外側壁面とケーシング27の内側壁面間に広い空間部が形成できないので、脱臭器の部品28を配設するスペースが確保できず、脱臭器を小型化できないという課題があった。なお、
図3において、29はファン設置部、30は基板である。
【0006】
更に、前記一般に市販されている小型脱臭器においては、光触媒が施されたフィルター21への紫外線照射は、紫外線LED23a・23bを前記光触媒が施されたフィルター21の面に対して横方向から照射するという構成であり、紫外線LED23a・23bを前記挿着部25の上方に斜めに取付けるという構成が存在しないため、前記光触媒が施されたフィルター21の上面部もしくは下面部への照射ができず、紫外線照射面を充分確保できないので、LEDによる紫外線の照射効率が悪いという課題があった。
【0007】
また、前記特許文献記載の「小型脱臭装置」のエアガイドは、前記したようにベンチュリ効果により光触媒が施されたフィルターを通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を高めるための小径に絞った通気部を備えておらず、そのため該通気部の外側壁面とケーシングの内側壁面間に広い空間部が形成できないので、脱臭器の部品を配設するスペースが確保できず、脱臭器を小型化できないという課題があった。
【0008】
更に、前記特許文献記載の「小型脱臭装置」においては、光触媒が施されたフィルターへの紫外線照射面を確保するため、紫外線LEDを前記光触媒が施されたフィルターの面に対して斜めに取付けるという構成が存在しないため、前記光触媒が施されたフィルターへの紫外線照射面を充分確保できないので、LEDによる紫外線の照射効率が悪いという課題があった。
【0009】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたもので、上・下端を開口した長方形状筒体より成るエアガイドの下方側に、光触媒が施されたフィルターを挿着する挿着部を設けると共に、該挿着部の上方側を小径に絞って小径の脱臭された空気の通気部を連設して形成する一方、前記通気部の下流側にファンを設置するか、あるいは前記挿着部の上流側にファンを設置し、紫外線LEDを前記エアガイドの挿着部の両側部において、それぞれ上・下に位置をずらし、前記光触媒が施されたフィルター面に対して傾斜して取付け、紫外線LEDによる紫外線を、前記光触媒が施されたフィルターの上面部および側面部全面を照射できるように照射面を広げる一方、前記小径とした通気部によるベンチュリ効果により、該光触媒が施されたフィルターを通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を高め、更に、前記小径に絞った通気部の外側壁面とケーシングの内側壁面間に広い空間部を形成し、該空間部に脱臭器の部品を配置するようにして、脱臭器の小型化を図るようにした小型脱臭器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、
上・下端を開口した長方形状筒体より成るエアガイドに、光触媒が施されたフィルターを挿着する挿着部を設け、且つ該挿着部の上方側を小径に絞って小径の脱臭空気の通気部を連設し、且つ該通気部の下流側、あるいは前記挿着部の上流側のいずれか一方に、ファンを設置するファン設置部が連設されて形成されると共に、紫外線LEDを前記挿着部
の両側部において、それぞれ上・下に位置をずらして、前記光触媒が施されたフィルター面に対して傾斜して取付け、前記一方の紫外線LEDによる紫外線を、該光触媒が施されたフィルターの上面部および一方側の側面部全面を照射できるようにする一方、他方の紫外線LEDによる紫外線を、前記光触媒が施されたフィルターの他方側の側面部全面を照射できるようにして照射面を広げるようにして設置し、前記通気部によるベンチュリ効果により、該光触媒が施されたフィルターを通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を高め、脱臭効果を高めるようにしたことを特徴とする
請求項1記載の小型脱臭器が提供され、
または、
請求項1記載の小型脱臭器において、前記挿着部の上方側を小径に絞った
小径の脱臭空気の通気部の外側壁面とケーシングの内側壁面間に広い空間部を形成し、該空間部に脱臭器の部品を配置するようにして、脱臭器の小型化を図るようにしたことを特徴とする請求項
2記載の小型脱臭器が提供され
る。
【発明の効果】
【0011】
前記構成より成る本発明によれば、
紫外線LEDを光触媒が施されたフィルターを挿着した挿着部の両側部において、それぞれ上・下に位置をずらして、前記フィルター面に対して傾斜して取付け、前記紫外線LEDによる紫外線を、該フィルターの上面部および両側面部に広く照射できるようにして、紫外線の照射面を広げる一方、小径に絞ったエアガイドの通気部によるベンチュリ効果により、循環空気が、光触媒が施されたフィルターに対しては減速・圧力高の状態で、フィルタリング効果を高め、前記光触媒が施されたフィルターを通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を向上させることにより、脱臭効果を高めることができるのである。更に、光触媒が施されたフィルターへの紫外線照射面を確保しつつ、
前記挿着部の上方側において、その外径を絞って小径とした通気部を連設して、前記通気部の外側壁面とケーシングの内側壁面間に広い空間部を形成して、該空間部に脱臭器の部品を配置できるようにしたので、製品の小型化が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明小型脱臭器の第1の実施例を示す概略説明図である。
【
図2】本発明小型脱臭器の第2の実施例を示す概略説明図である。
【
図3】本発明小型脱臭器とオゾン方式脱臭器、および本発明の脱臭装置を使用しない状態(所謂、空試験)でのアンモニアの消臭効果試験結果を示す図である。
【
図4】従来実用に供されている小型脱臭器の概略説明図である。
【実施例】
【0013】
本発明は、従来一般に広く実用に供されている小型脱臭器と同様に、光触媒が施されたフィルター1、ファン2、紫外線LED3a・3bおよびエアガイド(反応容器)4を備えて形成されている。本発明で使用する光触媒が施されたフィルター1は、特に限定する必要はないが、既に広く実用に供されている、例えば、酸化チタンを担持したセラミックフィルターを使用し、該光触媒が施されたフィルター1に紫外線LED3a・3bによる紫外線を照射することによって起こる酸化・還元反応を利用して室内等の悪臭を脱臭するものである。
【0014】
本発明においては、光触媒が施されたフィルター1を挿着するエアガイド4の構成が、第1の実施例と第2の実施例ではそれぞれ異なる。以下、第1の実施例と第2の実施例に分けて、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
先ず、第1の実施例におけるエアガイド4は、
図1に示すように、上・下端に開口部5・6を備えた長方形状筒体により形成され、且つ該エアガイド4には、前記光触媒が施されたフィルター1を挿着する挿着部7が形成されると共に、該挿着部7の上方側には、その外径を絞って小径とした通気部8を連設して、前記通気部8の外側壁面とケーシング9の内側壁面間に広い空間部10が形成され、更に、前記通気部8の下流側にはファン2を設置するファン設置部11が連設されて形成されている。
【0016】
そして、前記紫外線LED3a・3bを、前記エアガイド4の空間部10の前記挿着部7の両側上方位置において、前記ケーシング9の内側壁面に設けられた各基板12に、それぞれ上・下に位置をずらして、前記光触媒が施されたフィルター1の面に対して傾斜して取付け、前記一方の紫外線LED3aによる紫外線を、該光触媒が施されたフィルター1の上面部および一方側の側面部全面を照射できるようにする(
図1の点線部分)と共に、他方の紫外線LED3bによる紫外線を、前記光触媒が施されたフィルター1の他方側の側面部全面を照射できるよう(
図1の点線部分)にして紫外線の照射面を広げる一方、前記小径とした通気部8によるベンチュリ効果により、該光触媒が施されたフィルター1を通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を高めて脱臭効果を高め、更に、前記空間部10に、前記基板12等の脱臭器の部品13を配設できるようにして、脱臭器の小型化を図るようにしたものである。
【0017】
次に、第2の実施例を
図2に基づいて詳細に説明する。第2の実施例と第1の実施例における構成部材は同一であるので、同一符号を用いて説明する。
図2に示すように、第2の実施例におけるエアガイド4は、上・下端に開口部5・6を備えた長方形状筒
体により形成され、且つ該エアガイド4には、前記光触媒が施されたフィルター1を挿着する挿着部7が形成されると共に、該挿着部7の上方側には、その外径を絞って小径とした通気部8を連設して、前記通気部8の外側壁面とケーシング9の内側壁面間に広い空間部10が形成され、更に、前記挿着部7の上流側にはファン2を設置するファン設置部11が連設されて形成されている。すなわち、第2の実施例と第1の実施例とは、ファン2の位置が上下を逆にして設置されている
【0018】
そして、第2実施例において、紫外線LED3a・3bを、前記エアガイド4の空間部10の前記挿着部7の両側上方位置において、前記ケーシング9の内側壁面に設けられた各基板12に、それぞれ上・下に位置をずらして、前記光触媒が施されたフィルター1の面に対して傾斜して取付け、前記一方の紫外線LED3aによる紫外線を、該光触媒が施されたフィルター1の上面部および一方側の側面部全面を照射できるようにする(
図2の点線部分)と共に、他方の紫外線LED3bによる紫外線を、前記光触媒が施されたフィルター1の他方側の側面部全面を照射できるよう(
図2の点線部分)にして紫外線の照射面を広げる一方、前記小径として通気部8によるベンチュリ効果により、該光触媒が施されたフィルター1を通過する空気の圧力を高めてフィルターへの接触効率を高めて脱臭効果を高め、更に、前記空間部10に、前記基板12等の脱臭器の部品13を配設できるようにして、脱臭器の小型化を図るようにしたものである。
【0019】
前記構成より成る本発明の作用について説明する。本発明において、エアガイド4の通気部8の形状を一部絞って小径にした結果、ベンチュリ効果により、光触媒が施されたフィルター1に対して循環空気が減速・圧力高の状態で、フィルタリング効果を高めて、室内の脱臭効果を高めることができる。
【0020】
また、本発明小型脱臭器は、光触媒が施されたフィルター1への紫外線照射面を確保しつつ、製品を小型化するため、空間部10において、紫外線LED3a・3bを前記光触媒が施されたフィルター1の面に対して傾斜して取付けることで、空間部10を広げ、該空間部10に脱臭器の部品13を配設することにより、製品の小型化およびコスト削減が可能となった。
【0021】
本特許出願人は、本発明小型脱臭器と現在実用に供されているオゾン方式脱臭器、および本発明の脱臭装置を使用しない状態(所謂、空試験)でのアンモニアの消臭効果テストを一般財団法人日本食品分析センターに依頼したところ、
図3に示すような試験結果が得られた。すなわち、
図3に示すように、本発明小型脱臭器の脱臭効果が優れていることを確認した。なお、
図3において、Aは、本発明小型脱臭器の脱臭効果を示すグラフ、Bは、現在実用に供されているオゾン方式脱臭器の脱臭効果を示すグラフ、Cは、本発明で小型脱臭器の脱臭装置を使用しない状態での脱臭効果を示すグラである。
【符号の説明】
【0022】
1 光触媒が施されたフィルター
2 ファン
3a・3b 紫外線LED
4 エアガイド
5・6 開口部
7 挿着部
8 通気部
9 ケーシング
10 空間部
11 ファン設置部
12 基板
13 部品