特許第6873698号(P6873698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873698
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】4環性化合物の新規結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   C07D401/04CSP
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-515222(P2016-515222)
(86)(22)【出願日】2015年4月24日
(86)【国際出願番号】JP2015062516
(87)【国際公開番号】WO2015163447
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年4月5日
【審判番号】不服2019-16257(P2019-16257/J1)
【審判請求日】2019年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-92102(P2014-92102)
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕太
(72)【発明者】
【氏名】植戸 隆充
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 冨永 保
【審判官】 安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4588121(JP,B1)
【文献】 特開2012−126711(JP,A)
【文献】 特許第4918630(JP,B1)
【文献】 国際公開第2014/050781(WO,A1)
【文献】 Pharmaceutical Research,(1995),Vol.12,No.7,pp.945−954
【文献】 PHARM STAGE,(2007),Vol.6,No.10,pp.20−25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D401/04,A61K31/5377
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折パターンにおいて、9.2°±0.2°、10.2°±0.2°、16.2°±0.2°、20.5°±0.2°、および21.6°±0.2°の回折角(2θ)にピークを有する、式(I)で表される化合物の一塩酸塩一水和物の結晶。
【化1】
【請求項2】
粉末X線回折パターンにおいて、9.2°±0.2°、10.2°±0.2°、16.2°±0.2°、17.5°±0.2°、19.5°±0.2°、20.5°±0.2°、21.6°±0.2°、および22.8°±0.2°の回折角(2θ)にピークを有する、請求項1に記載の結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4環性化合物またはその塩もしくは水和物の新規な結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
Anaplastic Lymphoma Kinase (ALK) はインスリン受容体ファミリ−に属する受容体型チロシンキナーゼの一つである(非特許文献1、非特許文献2)。ALKの遺伝子異常は他の遺伝子と融合した異常キナーゼの生成を引き起こすことが報告されている。
ALKの異常を伴う疾患として、例えばがんおよびがん転移(非特許文献1、特許文献1、)、うつ、認知機能障害(非特許文献2)等が知られており、ALK阻害剤の提供はそれらの疾患の有効な治療および予防薬を提供する。
ALK阻害作用を有する化合物として、式(I)により表わされる化合物(化合物名:9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル)等が知られている(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
【化1】

しかしながら、これまで、式(I)の結晶形態については報告されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP2009100783(A)
【特許文献2】特開2008−280352号
【特許文献3】特許4588121号
【特許文献4】特許4918630号
【特許文献5】特開2012−126711
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nature、第448巻、第561−566頁、2007年
【非特許文献2】Neuropsychopharmacology、第33巻、第685−700頁、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、式(I)で表わされる化合物はALK阻害活性を有することが知られているが、製薬上有用足り得る新規結晶が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、式(I)で表される化合物の新規結晶形(II型結晶、III型結晶)を見出した。
すなわち、本発明の1つの側面によれば、以下の(1)〜(5)の結晶が提供される。
(1)粉末X線回折パターンにおいて、9.2°±0.2°、10.2°±0.2°、16.2°±0.2°、20.5°±0.2°、および21.6°±0.2°の回折角(2θ)にピークを有する、式(I)で表される化合物の一塩酸塩の結晶。
【化2】

(2)粉末X線回折パターンにおいて、9.2°±0.2°、10.2°±0.2°、16.2°±0.2°、17.5°±0.2°、19.5°±0.2°、20.5°±0.2°、21.6°±0.2°、および22.8°±0.2°の回折角(2θ)にピークを有する(1)に記載の結晶。
(3)1水和物結晶である、(1)または(2)に記載の結晶。
(4)粉末X線回折パターンにおいて、12.7°±0.2°、14.3°±0.2°、15.0°±0.2°、18.5°±0.2°および25.7°±0.2°の回折角(2θ)にピークを有する、式(I)で表される化合物の一塩酸塩の結晶。
(5)粉末X線回折パターンにおいて、7.5°±0.2°、12.7°±0.2°、14.3°±0.2°、15.0°±0.2°、18.5°±0.2°、20.3°±0.2°、21.0°±0.2°および25.7°±0.2°の回折角(2θ)にピークを有する、(4)に記載の結晶。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る新規な結晶は、製薬上有用足り得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】II型結晶の粉末X線回折の測定結果のグラフである。
図2】III型結晶の粉末X線回折の測定結果のグラフである。
図3】I型結晶の粉末X線回折の測定結果のグラフである。
図4】II型結晶の低湿度保管後の粉末X線回折の測定結果のグラフである。
図5】相対湿度70%RHで保管後のII型結晶の粉末X線回折の測定結果のグラフである。
図6】相対湿度0%RHから90%RHまで温度環境におけるII型結晶の重量変化率(%)測定結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る式(I)の化合物の一塩酸塩のII型結晶は、後述するIII型結晶を約40℃で減圧乾燥することにより取得することができる。
II型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、9.2°、10.2°、16.2°、20.5°および21.6°の回折角(2θ)に、より具体的には、9.2°、10.2°、16.2°、17.5°、19.5°、20.5°、21.6°および22.8°の回折角(2θ)にピークを有することを特徴とする。II型結晶の粉末X線回折の測定結果の一例を図1に示し、粉末X線回折パターンにおけるピークの一例を表1に示す。
【0010】
【表1】
【0011】
本発明の1つの態様において、II型結晶は1水和物である。ここで、1水和物とは、医薬品が通常保存・使用される環境下(温度、相対湿度など)で、安定して約1当量の水分を保持する結晶であれば特に限定されない。
本発明に係る式(I)の化合物の一塩酸塩のIII型結晶は、式(I)の化合物を含む溶液を、エタノールおよび塩酸の混合液(式(I)の化合物に対し1当量以上の塩酸を含む)へ、混合液温度を15℃付近に保ちながら滴下することにより取得することができる。
III型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて12.7°、14.3°、15.0°、18.5°および25.7°の回折角(2θ)に、より具体的には、7.5°、12.7°、14.3°、15.0°、18.5°、20.3°、21.0°および25.7°の回折角(2θ)にピークを有することを特徴とする。III型結晶の粉末X線回折の測定結果の一例を図2に示し、粉末X線回折パターンにおけるピークの一例を表2に示す。
【0012】
【表2】
【0013】
本発明において、粉末X線回折による分析は、例えば、日本薬局方(第十五改正)に記載されている「粉末X線回折測定法」などの常法に従って行うことができる。また、日本薬局方によれば、同一結晶形では通例、回折角2θは±0.2度の範囲内で一致すると説明されている。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角が±0.2度程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0014】
粉末X線回折分析の測定条件の一例を以下に示す:
測定装置:X’Pert−Pro MPD(PANalytical製)
対陰極:Cu
管電圧:45kV
管電流:40mA
ステップ幅:0.02
走査軸:2θ
ステップあたりのサンプリング時間:43秒
走査範囲:3〜40°
【0015】
結晶の水分量は常法により、例えば動的水分吸着温装置、カールフィッシャー法により測定することができる。
動的水分吸着温装置の測定条件の一例を以下に示す:
動的水分吸着等温装置:DVS−1(Surface Mesurement Systems)
温度:25℃付近の一定温度
雰囲気ガス:乾燥窒素
雰囲気ガスの流量:200sccm(mL/min)
最小待ち時間:10min
最大待ち時間:1200min

カールフィッシャー分析装置を用いた水分測定法の測定条件の一例を以下に示す:
分析法:電量滴定法、
KF分析装置:微量水分測定装置 型式KF−100(三菱化学社製)
陽極液:アクアミクロンAX(三菱化学製)
陰極液:アクアミクロンCXU(三菱化学製)。
【0016】
本発明者らは、さらに、II型結晶およびIII型結晶と異なる、上記式()の化合物の結晶(以下、I型結晶と称する)を特定した。I型結晶は、式(I)の化合物を含む溶液を、エタノールおよび塩酸の混合液(式(I)の化合物に対し1モル当量以上の塩酸を含む)へ、混合液温度を約35℃以上に保ちながら滴下することにより取得することができる。I型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、8.4°、14.0°、16.7°、18.8°、23.3°の回折角(2θ)にピークを有することを特徴とする。I型結晶の粉末X線回折の測定結果の一例を図3に示し、粉末X線回折パターンにおけるピークの一例を表3に示す。
【0017】
【表3】
【0018】
式(I)で表わされる化合物及びその塩酸塩は特許文献3〜5に記載の方法に従って製造することができるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
[実施例1]
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル一塩酸塩のI型結晶
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル400gをメチルエチルケトン4.8L、酢酸1.44Lおよび蒸留水1.68Lの混合溶媒に室温にて溶解しこの溶液をエタノール12Lおよび2N塩酸0.8Lの混合物中に60℃で滴下した。析出した固体を濾取しエタノール2Lで洗浄乾燥し標題の化合物の一塩酸塩のI型結晶357gを得た。
【0021】
[実施例2]
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル一塩酸塩のIII型結晶
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル(9.00g)をメチルエチルケトン(90ml)、蒸留水(31.5ml),および酢酸(27.0ml)の混合溶媒に溶解した。この溶液を、15℃にて撹拌したエタノール(90ml),および2N塩酸(18.00ml)の混合液へ、混合液温度を15℃に保ちながら滴下した。つづいて,メチルエチルケトン(18.00ml)、蒸留水(6.30ml),および酢酸(5.40ml)の混合溶媒にて洗いこみをした後,15℃にて攪拌した。析出した固体を濾取し,標題の化合物の一塩酸塩のIII型結晶を得た。
【0022】
[実施例3]
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル一塩酸塩のII型結晶
実施例2にて得られたIII型結晶を,エタノール(90ml)で洗浄した後に,40℃で約16時間減圧乾燥し、標題の化合物の一塩酸塩のII型結晶を得た。
【0023】
[実施例4]
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル一塩酸塩のII型結晶
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル(4.00g)をメチルエチルケトン(40ml)、蒸留水(14ml),および酢酸(12ml)の混合溶媒に加え,35℃にて溶解した。この溶液を、エタノール(40ml),および2N塩酸(8.00ml)の混合液(15℃にて撹拌)へ、混合液温度を15℃に保ちながら滴下した。この混合液に、さらにメチルエチルケトン(8.00ml)、蒸留水(2.80ml),および酢酸(2.40ml)の混合溶媒を,混合液温度を15℃に保ちながら滴下した。つづいて,混合液を15℃にて攪拌した。析出した固体を濾取し,エタノール(40ml)で洗浄した後に,40℃で減圧乾燥し、標題の化合物の一塩酸塩のII型結晶(2.4805g)を得た。
【0024】
[実施例5]
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル一塩酸塩のIII型結晶
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル(4.00g)をメチルエチルケトン(40ml)、蒸留水(14ml),および酢酸(12ml)の混合溶媒に加え,35℃にて溶解した。この溶液を、エタノール(40ml),および2N塩酸(8.00ml)の混合液(15℃にて撹拌)へ、混合液温度を15℃に保ちながら滴下した。メチルエチルケトン(8.00ml)、蒸留水(2.80ml),および酢酸(2.40ml)の混合溶媒を,混合液温度を15℃に保ちながら滴下した。つづいて,混合液を15℃にて攪拌した。析出した固体を濾取し,標題の化合物の一塩酸塩のIII型結晶(7.8435g)を得た。
【0025】
[試験例1]粉末X線回折分析
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル一塩酸塩のI型、II型、III型結晶について粉末X線回折を以下の条件により測定した。II型結晶、III型結晶、I型結晶の測定結果を図1、2、3に示す。
測定装置:X’Pert−Pro MPD(PANalytical製)
対陰極:Cu
管電圧:45kV
管電流:40mA
ステップ幅:0.02
走査軸:2θ
ステップあたりのサンプリング時間:43秒
走査範囲:3〜40°
【0026】
[試験例2]II型結晶の湿度による結晶形転移の確認
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル一塩酸塩のII型結晶について湿度による結晶形転移の確認のために以下の湿度条件に試料を設置し、粉末X線回折を用いて結晶形の変化を確認した。
【0027】
試験条件1(II型結晶の低湿度下での結晶形の転移確認)
試料量:約17mg
温度:25℃付近の一定温度
雰囲気ガス:乾燥窒素
雰囲気ガスの流量:200sccm(mL/min)
質量変化率:0.002dm/dt(%/min)
相対湿度:0%RHの相対湿度下に試料を設置した。
最小待ち時間:10min
最大待ち時間:1200min
【0028】
試験条件2(II型結晶の高湿度下での結晶形の転移確認)
試料量:約16mg
温度:25℃付近の一定温度
雰囲気ガス:乾燥窒素
雰囲気ガスの流量:200sccm(mL/min)
質量変化率:0.002dm/dt(%/min)
相対湿度:70%RHの相対湿度下に試料を設置した。
最小待ち時間:10min
最大待ち時間:1200min
【0029】
粉末X線回折の結果により、II型結晶を低湿度下に保管すると別の結晶形へ転移することが明らかになった(図4)。空気中に放置すると1時間以内に、急速に元のII型結晶の結晶形へ戻った。このことから、II型結晶は低湿度環境(相対湿度15%RH以下)では脱水し、無水和物になる可能性が考えられる。また、II型結晶は結晶水を持つことが明らかになった。
II型結晶を70%RHで保管したところ、II型結晶の粉末X線回折パターンとは異なる粉末X線回折パターン(図5)を示したことから、II型結晶を高湿度下に保管すると別の結晶形へ転移することが明らかとなった。この結晶を空気中に放置し、経時的に粉末X線回折を測定したところ、4時間後の測定では元のII型結晶へ戻った。このことから、II型結晶は高湿度環境(相対湿度65%RH以上)では吸湿し、結晶水を持つ別の結晶形になると考える。
【0030】
[試験例3]II型結晶の水分吸着等温線の測定
9−エチル−6,6−ジメチル−8−(4−モルホリン−4−イル−ピペリジン−1−イル)−11−オキソ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[b]カルバゾール−3−カルボニトリル一塩酸塩のII型結晶(約5mg)について、動的水分吸着等温装置:DVS−1(Surface Mesurement Systems)を用いて水分吸着等温線を以下の条件で測定した。
試験条件
温度:25℃付近の一定温度
雰囲気ガス:乾燥窒素
雰囲気ガスの流量:200sccm(mL/min)
最小待ち時間:10min
最大待ち時間:1200min
質量変化率:0.002dm/dt(%min)、ただし、5,10,15,55,60,65%RHでは0.001dm/dt(%min)
【0031】
相対湿度:0,5,10,15,20,30,40,50,55,60,65,70,80,90,80,70,65,60,55,50,40,30,20,15,10,5,0%RHの順に相対湿度を変化させた。これを1サイクルとし3サイクル行った。測定結果を図6に示す。II型結晶の重量変化率(%)は、25℃付近において相対湿度0%RHから90%RHまで温度環境を変化させたとき、相対湿度0%RHから15%RHの範囲で3.7%、相対湿度15%RHから55%RHの範囲で0.05%、相対湿度55%RHから65%RHの範囲で11%、相対湿度65%RHから90%RHの範囲で0.04%であった。
II型結晶を式(I)の化合物の1塩酸塩1水和物と仮定すると、分子量は537.0928となる。分子量及び質量変化率(%)から、II型結晶は1塩酸塩1水和物であり、0%RH雰囲気下に保存すると脱水し1塩酸塩に転移すると考える。また、II型結晶は、湿度65%RH以上の高湿度環境では吸湿し、1塩酸塩4水和物に転移すると考える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6