特許第6873701号(P6873701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873701FcRn結合特性が改変されているFc領域変異体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873701
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】FcRn結合特性が改変されているFc領域変異体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20210510BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210510BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20210510BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   C07K16/46
   C07K16/12ZNA
   A61K39/395 N
   A61P27/02
   A61P43/00 111
   !C12N15/13
   !C07K19/00
【請求項の数】16
【全頁数】130
(21)【出願番号】特願2016-546942(P2016-546942)
(86)(22)【出願日】2015年1月12日
(65)【公表番号】特表2017-505768(P2017-505768A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】EP2015050425
(87)【国際公開番号】WO2015107025
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2017年12月27日
(31)【優先権主張番号】14151319.2
(32)【優先日】2014年1月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14165922.7
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】シュロットハウアー,ティルマン
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/006217(WO,A1)
【文献】 特表2012−524528(JP,A)
【文献】 米国特許第06277375(US,B1)
【文献】 国際公開第2013/004842(WO,A1)
【文献】 The Journal of Biological Chemistry,2001年,Vol.276, No.9,p.6591-6604
【文献】 The Journal of Immunology,1997年,Vol.158, No.5,p.2211-2217
【文献】 European Journal of Immunology,1999年,Vol.29,p.2819-2825
【文献】 Molecular Cell,2001年,Vol.7,p.867-877
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/46
C12N 15/13
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドであって、
第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは各々、N末端からC末端の方向に、1個以上のシステイン残基を含む、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部、免疫グロブリンCH2ドメイン及び免疫グロブリンCH3ドメインを含み、
i)該第1及び第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含み、
ここで、ポリペプチドは、二重特異性抗体であり、
ポリペプチドは、ヒトFcRnと特異的に結合せず、ブドウ球菌プロテインAと特異的に結合する、
ポリペプチド。
【請求項2】
ヘテロ二量体ポリペプチドである、請求項項記載のポリペプチド。
【請求項3】
i)前記第1のポリペプチドが、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異S354C及びT366Wを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドが、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異Y349C及びT366Wを含む、請求項1または2記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインが、ヒトIgG1サブクラスのものである、請求項1〜のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、突然変異L234A及びL235Aを更に含む、請求項1〜のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインが、ヒトIgG2サブクラスのものである、請求項1〜のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインが、ヒトIgG4サブクラスのものである、請求項1〜のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、突然変異S228P及びL235Eを更に含む、請求項1〜及びのいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、突然変異P329Gを更に含む、請求項1〜のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項10】
第1のポリペプチドが、S354C及びT366Wを含み、そして第2のポリペプチドが、Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含む、請求項1〜のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項11】
硝子体内適用のための、請求項1〜10のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項12】
眼血管疾患処置用の、請求項1〜10のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項記載のポリペプチド及び場合により薬学的に許容し得る担体を含む医薬処方物。
【請求項14】
眼疾患の処置に使用するための、請求項1〜10のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項15】
可溶性のレセプターリガンドの、血液−眼関門を抜けて眼から血液循環への輸送に使用するための、請求項1〜10のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項16】
1種以上の可溶性のレセプターリガンドの眼からの除去に使用するための、請求項1〜10のいずれか1項記載のポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書においては、その精製特性を損なうことなく、Fc−レセプター結合に関して改変されているIgGFc領域が報告される。
【0002】
発明の背景
費用効率の高い製造プロセスに対する需要が、1つ以上のアフィニティークロマトグラフィー工程を含む下流側の精製の最適化の必要性につながっていた。処理すべきものの体積がより大きいことと、定置洗浄(CIP)プロトコールについての要件がより厳しいことが、解決を要する特性のうちのいくつかである(Hober, S., J. Chrom. B. 848 (2007) 40-47)。
【0003】
Fc領域に親和性のある選択的なリガンドによるモノクローナル抗体の精製は、治療用モノクローナル抗体の大量生産のための最も有望な方法論である。実際、この手順は、抗体の抗原特異的な部分、即ちFabドメインとの何らかの相互作用を確立する必要がなく、よって、同ドメインは不変のままであり、その特性を保持することができる(Salvalaglio, M., et al., J. Chrom. A 1216 (2009) 8678-8686を参照)。
【0004】
アフィニティー精製工程は、その選択性故に、一連の精製操作の初期に用いられ、これにより、それに続く単位操作の数を減らすことができる(前記Hober;MacLennan, J., Biotechnol. 13 (1995) 1180; Harakas, N.K., Bioprocess Technol. 18 (1994) 259を参照)。
【0005】
選択的にIgGと結合させるのに最も採用されるリガンドは、ブドウ球菌プロテインA及びプロテインGであり、これらは多くのIgGのFc領域と、「コンセンサス結合部位」(CBS)(DeLano, W.L., et al., Science 287 (2000) 1279)として知られる領域(Fc領域のCH2ドメインとCH3ドメインの間のヒンジ領域に位置する)内において、高度に選択的な相互作用を確立することができる。
【0006】
ブドウ球菌プロテインA(SPA)は、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌の表面に露出している、細胞壁関連タンパク質ドメインである。SPAは、様々な種に由来するIgG、例えばヒト、ウサギ及びモルモットIgGと高い親和性を有するが、ウシ及びマウスIgGとは弱い相互作用しか持たない(下記表を参照)(前記Hober; Duhamel, R.C., et al., J. Immunol. Methods 31 (1979) 211; Bjork, L. and Kronvall, G., Immunol. J. 133 (1984) 969; Richman, D.D., et al., J. Immunol. 128 (1982) 2300; Amersham Pharmacia Biotech, Handbook, Antibody Purification (2000)を参照)。
【0007】
【表1】
【0008】
IgGのCH2ドメインとCH3ドメインの間の重鎖ヒンジ領域は、プロテインA以外に、新生児Fcレセプター(FcRn)といった数種のタンパク質と結合することができる(前記DeLano及びSalvalaglioを参照)。
【0009】
SPA CBSは、抗体表面の疎水性ポケットを含む。IgG CBSを構成する残基は、Ile253、Ser254、Met252、Met423、Tyr326、His435、Asn434、His433、Arg255及びGlu380である(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるIgG重鎖残基のナンバリング)。荷電アミノ酸(Arg255、Glu380)が、Ile253及びSer254で形成される疎水性ノブの周囲に位置している。このことが、極性及び親水性相互作用の確立をもたらしている(可能性がある)(前記Salvalaglioを参照)。
【0010】
一般に、プロテインA−IgG相互作用は、2つの主要な結合部位を用いて記載することができる:第1は、重鎖CH2ドメイン内に位置し、Phe132、Leu136、Ile150(プロテインAの)と、Ile253及びSer254で構成されるIgG疎水性ノブの間の疎水性相互作用と、Lys154(プロテインA)とThr256(IgG)の間の一つの静電的相互作用により特徴付けられる。第2の部位は、重鎖CH3ドメイン内に位置し、Gln129及びTyr133(プロテインA)と、His433、Asn434及びHis435(IgG)の間の静電的相互作用を特徴とする(前記Salvalaglioを参照)。
【0011】
Lindhofer, H., et al. (J. Immunol. 155 (1995) 219-225)には、ラット/マウスクアドローマ(quadromas)における、優先的な、種に制限された重鎖/軽鎖ペアリングが報告されている。
【0012】
Jedenberg, L., et al. (J. Immunol. Meth. 201 (1997) 25-34)には、2種のFc変異体(Fc13及びFc31、各々の他のアイソタイプからのアイソタイプジペプチド置換を各々含む)のSPA−結合解析が、Fc1及びFc31はSPAと相互作用するが、Fc3及びFc13では検出可能なSPA結合がないことを示したことが報告されている。もたらされたFc領域変異体Fc31のSPA結合は、導入されたジペプチド置換R435H及びF436Yによるものであると結論付けられている。
【0013】
今日では、治療用モノクローナル抗体に関する焦点は、2種以上の標的(抗原)と特異的に結合する二重特異性又は多重特異性抗体の生成及び使用にある。
【0014】
一つの発現細胞株において、4種の抗体鎖(2種の異なる重鎖及び2種の異なる軽鎖)から、多重特異性ヘテロ二量体IgG抗体を生成させることにおける基本的な課題は、いわゆる鎖会合問題である(Klein, C., et al., mAbs 4 (2012) 653-663を参照)。多重特異性抗体の左腕及び右腕として異なる鎖を用いる必要があることが、1種の細胞内での発現により抗体混合物をもたらす:2種の重鎖は、(理論的には)4つの異なる組み合わせ(このうちの2つは同じもの)で会合することができ、これらが各々確率的様式で軽鎖と会合することができ、2(=合計16)の理論的に可能な鎖の組み合わせをもたらす。この理論的に可能な16の組み合わせのうち、実際に見出すことができるのは10だが、このうち所望の機能的二重特異性抗体に該当するものは1つしかない(De Lau, W.B., et al., J. Immunol. 146 (1991) 906-914)。複合体混合物からこの所望の二重特異性抗体を単離することにおける困難さと、理論的最大値でも12.5%という本来的に乏しい収率が、一つの発現細胞株において二重特異性抗体を製造することを極めて厳しい(challenging)ものにしている。
【0015】
鎖会合問題を解決し、2種の異なる重鎖の正しい会合を強めるため、1990年代後半、GenentechのCarterらは、「ノブズ−イントゥ−ホールズ」(KiH)と名付けられたアプローチを発明した(Carter, P., J. Immunol. Meth. 248 (2001) 7-15; Merchant, A.M., et al., Nat. Biotechnol. 16 (1998) 677-681; Zhu, Z., et al., Prot. Sci. 6 (1997) 781-788; Ridgway, J.B., et al., Prot. Eng. 9 (1996) 617-621; Atwell, S., et al., J. Mol. Biol. 270(1997) 26-35;及び米国特許第7183076号を参照)。基本的に、この概念は、最も相互作用が起こる、抗体の2つの重鎖の2つのCH3ドメイン間の界面の改変に依存している。一方の抗体重鎖のCH3ドメインに嵩高い残基を導入し、これが鍵(「ノブ」)に類似した挙動を示す。他方の重鎖には「ホール」を形成し、これはこの嵩高い残基を収容することができ、錠を模倣する。得られたヘテロ二量体Fc領域は、人工ジスルフィド架橋の導入/形成により更に安定化させることができる。注目すべきは、全てのKiH突然変異はCH3ドメイン内に埋没し、免疫系内において「可視」でないということである。加えて、(熱)安定性、FcγR結合及びエフェクター機能(例えば、ADCC、FcRn結合)といった、KiH突然変異を有する抗体の特性及び薬物動力学的(PK)挙動は、影響を受けない。
【0016】
ヘテロ二量体化を伴う正しい重鎖の会合の97%を超える収率は、6つの突然変異、「ノブ」重鎖におけるS354C、T366W及び「ホール」重鎖におけるY349C、T366S、L368A、Y407Vを導入することにより達成することができる(前記Carterを参照;Kabat EUインデックスナンバリングシステムによる残基のナンバリング)。ホール−ホールホモ二量体は生じうるが、ノブ−ノブホモ二量体は、典型的には観測されない。ホール−ホールホモ二量体は、選択的精製手順により、又は以下に要約する手順により欠失させることができる。
【0017】
ランダム重鎖会合の問題には対処がなされたが、正しい軽鎖会合もまた確実にされなければならない。KiH CH3ドメインアプローチと同様に、最終的に完全な二重特異性IgGをもたらしうる非対称軽鎖−重鎖相互作用を調査する努力がなされている。
【0018】
Roche社は近年、KiH技術と組み合わせると、二重特異性ヘテロ二量体IgG抗体における正しい軽鎖ペアリングを強める可能性として、CrossMabアプローチを開発した(前記Klein; Schaefer. W., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108 (2011) 11187-11192; Cain, C., SciBX 4 (2011) 1-4を参照)。これは、二重特異性又は多重特異性抗体の生成を一般的な様式で可能にするものである。この形式では、意図する二重特異性抗体の一方の腕は手つかずのままである。第2の腕においては、Fab領域全体、又はVH−VLドメイン又はCH1−CLドメインを、重鎖と軽鎖の間のドメインクロスオーバーと交換する。結果として、新たに形成された「交差」軽鎖は、(通常、即ち非交差の)二重特異性抗体の他の腕の重鎖Fab領域とは、もはや関連がない。よって、ドメイン配置におけるこの最小限の変化により、正しい「軽鎖」会合を強めることができる(前記Schaeferを参照)。
【0019】
Zhuらは、ダイアボディ(diabody)変異体の2箇所のVL/VH界面に、ジスルフィド架橋と共に、いくつかの立体的に相補的な突然変異を導入した。抗p185HER2のVL/VH界面に、突然変異VL Y87A/F98M及びVH V37F/L45Wを導入すると、総収率及び親ダイアボディと比較した親和性を維持しつつ、ヘテロ二量体ダイアボディが90%超の収率で回収された(前記Zhuを参照)。
【0020】
中外の研究者らは、正しい軽鎖会合を促進するためのVH−VL界面への突然変異の導入(主として、VH中のQ39及びVL中のQ38の荷電残基への変換)により、二重特異性ダイアボディを同様に設計した(国際公開公報第2006/106905号;Igawa, T., et al., Prot. Eng. Des. Sel. 23 (2010) 667-677)。
【0021】
国際公開公報第2011097603号には、共通軽鎖マウスが報告されている。
【0022】
国際公開公報第2010151792号には、単離の容易さを提供する二重特異性抗体の様式が提供されている。この様式は、CH3ドメインにおいて別個に改変されている(即ち、ヘテロ二量体である)免疫グロブリン重鎖可変ドメインを含み、前記別個の改変は、前記CH3改変に関し非免疫原性であるか、又は実質的に非免疫原性であり、前記改変の少なくとも1つは、前記二重特異性抗体についての、プロテインAのような親和性試薬に関する別個の親和性をもたらすものであり、前記二重特異性抗体は、プロテインAに関する親和性に基づき、破壊された細胞、培地又は抗体の混合物より単離可能である。
【0023】
新生児Fc−レセプター(FcRn)は、インビボにおけるIgGクラスの抗体の代謝運命に関して重要である。FcRnは、IgGをリソゾーム分解経路から救出するように機能し、クリアランスの減少と半減期の延長をもたらす。これは、2種のポリペプチド:50kDaのクラスI主要組織適合遺伝子複合体様タンパク質(α−FcRn)及び15kDaのβ2−ミクログロブリン(β2m)からなるヘテロ二量体タンパク質である。FcRnは、クラスIgGの抗体のFc領域のCH2−CH3部と高い親和性をもって結合する。クラスIgGの抗体とFcRnの間の相互作用はpH依存性であり、1:2の化学量論において生じる、即ち、1個のIgG抗体分子は、その2本の重鎖Fc領域ポリペプチドを介して、2個のFcRn分子と相互作用することができる(例えば、Huber, A.H., et al., J. Mol. Biol. 230 (1993) 1077-1083を参照)。
【0024】
よって、IgGのインビトロFcRn結合特性(properties/characteristics)は、その血液循環中でのインビボ薬物動力学的特性を示唆するものである。
【0025】
FcRnとIgGクラスの抗体のFc領域の間の相互作用には、重鎖CH2及びCH3ドメインの種々のアミノ酸残基が関与している。
【0026】
FcRn結合に影響を及ぼす種々の突然変異及びそれに伴う血液循環中での半減期が知られている。マウスFc領域−マウスFcRn相互作用に対して決定的なFc領域残基が、部位特異的突然変異誘発により同定されている(例えば、Dall’Acqua, W.F., et al. J. Immunol 169 (2002) 5171-5180を参照)。残基I253、H310、H433、N434及びH435(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)が、前記相互作用に関与している(Medesan, C., et al., Eur. J. Immunol. 26 (1996) 2533-2536; Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993-1002; Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 24 (1994) 542-548)。残基I253、H310及びH435が、ヒトFc領域のマウスFcRnとの前記相互作用に対して決定的であることが見出された(Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2819-2885)。
【0027】
Fc領域内の種々のアミノ酸残基:Thr250、Met252、Ser254、Thr256、Thr307、Glu380、Met428、His433及びAsn434を突然変異させることにより、Fc領域(同様にしてIgGも)のFcRnとの結合を増加させる方法が行われている(Kuo, T.T., et al., J. Clin. Immunol. 30 (2010) 777-789; Ropeenian, D.C., et al., Nat. Rev. Immunol. 7 (2007) 715-725を参照)。
【0028】
タンパク質−タンパク質相互作用研究により、突然変異M252Y、S254T、T256Eの組み合わせがFcRn結合を向上させると、Dall'Acquaらにより記載されている(Dall'Acqua, W.F., et al. J. Biol. Chem. 281 (2006) 23514-23524)。ヒトFc領域−ヒトFcRn複合体の研究により、残基I253、S254、H435及びY436が前記相互作用に対して決定的であることが示された(Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993-1002; Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604)。Yeung, Y.A., et al. (J. Immunol. 182 (2009) 7667-7671)には、残基248〜259、301〜317、376〜382及び424〜437の種々の突然変異体が報告及び調査されている。
【0029】
国際公開公報第2014/006217号には、三重突然変異を伴う二量体タンパク質が報告されている。pH依存性結合の機構に関連して、FcRn/ヘテロ二量体Fc複合体の2.8オングストロームにおける結晶構造が、Martin, W.らにより報告されている(Mol. Cell. 7 (2001) 867-877)。米国特許第6277375号には、半減期が延長された免疫グロブリン様ドメインが、国際公開公報第2013/004842号において報告されている。Shields, R. L.らは、FcガンマRI、FcガンマRII、FcガンマRIII及びFcRnについてのヒトIgG1上の結合部位の高分解能マッピング及びFcガンマRとの結合が向上したIgG1変異体の設計を報告している(Biochem. Mol. Biol. 276 (2001) 6591-6604)。マウスIgG1のトランスサイトーシス及び異化に関与するアミノ酸残基の説明(delineation)が、Medesan, C.らにより報告されている(J. Immunol. 158 (1997) 2211-2217)。米国公開公報第2010/0272720号には、FcRn結合部位が改変された抗体融合タンパク質が報告されている。国際公開公報第2013/060867号には、ヘテロ二量体タンパク質の製造が報告されている。Qiao, S.-W.らは、抗体介在性抗原提示のFcRn依存を報告している(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105 (2008) 9337-9342)。
【0030】
発明の概要
本明細書においては、ブドウ球菌プロテインAと特異的に結合し、ヒトFcRnと結合しない変異Fc領域が報告される。これらの変異Fc領域は、CH2及びCH3ドメイン中に特定のアミノ酸突然変異を含む。これらの突然変異は、ヘテロ二量体Fc領域のホール鎖又はノブ鎖中で用いると、ヘテロ二量体Fc領域の精製、即ちヘテロ二量体Fc領域のホモ二量体Fc領域からの分離を可能にすることが見出された。
【0031】
本明細書において報告される一つの態様は、(二量体)ポリペプチドであって、
N末端からC末端の方向に、1個以上のシステイン残基を含む、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部、免疫グロブリンCH2ドメイン及び免疫グロブリンCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、及び、N末端からC末端の方向に、1個以上のシステイン残基を含む、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部、免疫グロブリンCH2ドメイン及び免疫グロブリンCH3ドメインを含む第2のポリペプチドを含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含み(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)、
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドは、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部内の1つ以上のジスルフィド架橋により連結している、
ポリペプチドである。
【0032】
一つの実施態様において、前記(二量体)ポリペプチドは、ヒトFcRnと特異的に結合せず、ブドウ球菌プロテインAと特異的に結合する。
【0033】
一つの実施態様において、前記(二量体)ポリペプチドは、ホモ二量体ポリペプチドである。
【0034】
一つの実施態様において、前記(二量体)ポリペプチドは、ヘテロ二量体ポリペプチドである。
【0035】
一つの実施態様において、前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407V(「ホール」)を更に含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C及びT366W(「ノブ」)を更に含む。
【0036】
一つの実施態様において、前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407V(「ホール」)を更に含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366W(「ノブ」)を更に含む。
【0037】
一つの実施態様において、前記第1及び第2のポリペプチドの前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインは、ヒトIgG1サブクラスのものである。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異L234A及びL235Aを更に含む。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異P329Gを更に含む。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異L234A、L235A及びP329Gを更に含む。
【0038】
一つの実施態様において、前記第1及び第2のポリペプチドの前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインは、ヒトIgG4サブクラスのものである。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異S228P及びL235Eを更に含む。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異P329Gを更に含む。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異S228P、L235E及びP329Gを更に含む。
【0039】
一つの実施態様において、前記第1及び第2のポリペプチドの前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインは、ヒトIgG2サブクラスのものである。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異H268Q、V309L、A330S及びP331Sを更に含む。
【0040】
一つの実施態様において、前記第1及び第2のポリペプチドの前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインは、ヒトIgG2サブクラスのものである。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S及びP331Sを更に含む。
【0041】
一つの実施態様において、前記第1及び第2のポリペプチドの前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインは、ヒトIgG4サブクラスのものである。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異S228P、L234A及びL235Aを更に含む。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異P329Gを更に含む。一つの実施態様において、前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異S228P、L234A、L235A及びP329Gを更に含む。
【0042】
一つの実施態様において、前記第1及び前記第2のポリペプチドは、突然変異Y436Aを含む。
【0043】
一つの実施態様において、前記(二量体)ポリペプチドは、Fc領域融合ポリペプチドである。
【0044】
一つの実施態様において、前記(二量体)ポリペプチドは、(全長)抗体である。
【0045】
一つの実施態様において、前記(全長)抗体は、単一特異性抗体である。一つの実施態様において、前記単一特異性抗体は、一価単一特異性抗体である。一つの実施態様において、前記単一特異性抗体は、二価単一特異性抗体である。
【0046】
一つの実施態様において、前記(全長)抗体は、二重特異性抗体である。一つの実施態様において、前記二重特異性抗体は、二価二重特異性抗体である。一つの実施態様において、前記二重特異性抗体は、四価二重特異性抗体である。
【0047】
一つの実施態様において、前記(全長)抗体は、三重特異性抗体である。一つの実施態様において、前記三重特異性抗体は、三価三重特異性抗体である。一つの実施態様において、前記三重特異性抗体は、四価三重特異性抗体である。
【0048】
本明細書において報告される一つの態様は、免疫グロブリンFc領域を含む(二量体)ポリペプチドのプロテインAとの結合を増加させるための、突然変異Y436Aの使用である。
【0049】
本明細書において報告される一つの態様は、(二量体)ポリペプチドであって、
N末端からC末端の方向に、1個以上のシステイン残基を含む、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部、免疫グロブリンCH2ドメイン及び免疫グロブリンCH3ドメインを含む第1のポリペプチド、及び、N末端からC末端の方向に、1個以上のシステイン残基を含む、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部、免疫グロブリンCH2ドメイン及び免疫グロブリンCH3ドメインを含む第2のポリペプチドを含み、
前記第1、前記第2又は前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異Y436Aを含み(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)、
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドは、1つ以上のジスルフィド架橋により連結している、
ポリペプチドである。
【0050】
一つの実施態様において、前記第1及び前記第2のポリペプチドは、突然変異Y436Aを含む。
【0051】
本明細書において報告される一つの態様は、抗体であって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、
前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第2の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407V、L234A、L235A及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C、T366W、L234A、L235A及びP329Gを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A、Y407V、L234A、L235A及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366W、L234A、L235A及びP329Gを含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異H310A、H433A及びY436Aを更に含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251D、L314D及びL432Dを更に含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251S、L314S及びL432Sを更に含み(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)、
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドは、前記ヒンジ領域内の1つ以上のジスルフィド架橋により連結している、
抗体である。
【0052】
本明細書において報告される一つの態様は、抗体であって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、
前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第2の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407V、L234A、L235A及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C、T366W、L234A、L235A及びP329Gを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A、Y407V、L234A、L235A及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366W、L234A、L235A及びP329Gを含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異H310A、H433A及びY436Aを更に含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251D、L314D及びL432Dを更に含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251S、L314S及びL432Sを更に含み(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)、
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドは、前記ヒンジ領域内の1つ以上のジスルフィド架橋により連結している、
抗体である。
【0053】
本明細書において報告される一つの態様は、抗体であって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド、
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、
前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第2の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407V、S228P、L235E及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C、T366W、S228P、L235E及びP329Gを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A、Y407V、S228P、L235E及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366W、S228P、L235E及びP329Gを含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異H310A、H433A及びY436Aを更に含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251D、L314D及びL432Dを更に含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251S、L314S及びL432Sを更に含み(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)、
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドは、前記ヒンジ領域内の1つ以上のジスルフィド架橋により連結している、
抗体である。
【0054】
本明細書において報告される一つの態様は、抗体であって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH1ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、
前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第2の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407V、S228P、L235E及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C、T366W、S228P、L235E及びP329Gを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A、Y407V、S228P、L235E及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366W、S228P、L235E及びP329Gを含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異H310A、H433A及びY436Aを更に含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251D、L314D及びL432Dを更に含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251S、L314S及びL432Sを更に含み(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)、
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドは、前記ヒンジ領域内の1つ以上のジスルフィド架橋により連結している、
抗体である。
【0055】
本明細書において報告される一つの態様は、抗体であって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメイン、ペプチド性リンカー及び第1のscFvを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメイン、ペプチド性リンカー及び第2のscFvを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド、
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、前記第1のscFv及び前記第2のscFvは、第2の抗原と特異的に結合し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407V、L234A、L235A及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C、T366W、L234A、L235A及びP329Gを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A、Y407V、L234A、L235A及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366W、L234A、L235A及びP329Gを含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異H310A、H433A及びY436Aを更に含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251D、L314D及びL432Dを更に含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251S、L314S及びL432Sを更に含み(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)、
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドは、前記ヒンジ領域内の1つ以上のジスルフィド架橋により連結している、
抗体である。
【0056】
本明細書において報告される一つの態様は、抗体であって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメイン、ペプチド性リンカー及び第1のscFvを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメイン、ペプチド性リンカー及び第2のscFvを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド、
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、前記第1のscFv及び前記第2のscFvは、第2の抗原と特異的に結合し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407V、L234A、L235A及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C、T366W、L234A、L235A及びP329Gを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A、Y407V、L234A、L235A及びP329Gを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366W、L234A、L235A及びP329Gを含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異H310A、H433A及びY436Aを更に含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251D、L314D及びL432Dを更に含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは各々、突然変異L251S、L314S及びL432Sを更に含み(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)、
前記第1のポリペプチドと前記第2のポリペプチドは、前記ヒンジ領域内の1つ以上のジスルフィド架橋により連結している、
抗体である。
【0057】
本明細書において報告される一つの態様は、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチドを製造する方法であって、下記工程:
a)前記(二量体)ポリペプチドをコードする1種以上の核酸を含む哺乳類細胞を培養する工程、
b)前記(二量体)ポリペプチドを培養培地から回収する工程、及び
c)前記(二量体)ポリペプチドをプロテインAアフィニティークロマトグラフィーで精製して、前記(二量体)ポリペプチドを製造する工程
を含む方法である。
【0058】
本明細書において報告される一つの態様は、ホモ二量体ポリペプチドからヘテロ二量体ポリペプチドを分離するための、突然変異H310A、H433A及びY436Aの組み合わせの使用である。
【0059】
本明細書において報告される一つの態様は、ホモ二量体ポリペプチドからヘテロ二量体ポリペプチドを分離するための、突然変異L251D、L314D及びL432Dの組み合わせの使用である。
【0060】
本明細書において報告される一つの態様は、ホモ二量体ポリペプチドからヘテロ二量体ポリペプチドを分離するための、突然変異L251S、L314S及びL432Sの組み合わせの使用である。
【0061】
本明細書において報告される一つの態様は、眼血管疾患の患者の処置方法であって、そのような処置を必要とする患者に対し、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体を投与することによる方法である。
【0062】
本明細書において報告される一つの態様は、硝子体内適用のための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体である。
【0063】
本明細書において報告される一つの態様は、医薬として使用するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体である。
【0064】
本明細書において報告される一つの態様は、眼血管疾患処置用の、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体である。
【0065】
本明細書において報告される一つの態様は、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体及び場合により薬学的に許容し得る担体を含む医薬処方物である。
【0066】
眼内のみならず、体のその他の部分にも存在する抗原を標的とする/と結合する抗体を用いるためには、全身性副作用を回避するため、眼から血中への血液−眼関門の通過後の全身半減期が短いことが有益である。
【0067】
加えて、レセプターのリガンドと特異的に結合する抗体は、抗体−抗原複合体が眼から除去される場合、即ち、その抗体がレセプターリガンドの眼外への輸送媒体として機能し、そのことによりレセプターのシグナル伝達を阻害する場合のみ、眼疾患の処置において有効である。
【0068】
ヒト新生児Fc−レセプターと結合しないFc領域を含む抗体、即ち、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチドが、血液−眼関門を超えて輸送されることが、本発明者らにより見出された。血液−眼関門を超えた輸送にはFcRnへの結合が必要と考えられているが、前記抗体はヒトFcRnと結合しないので、これは驚くべきことである。
【0069】
本明細書において報告される一つの態様は、可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて眼から血液循環に輸送するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体の使用である。
【0070】
本明細書において報告される一つの態様は、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを眼から除去するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体の使用である。
【0071】
本明細書において報告される一つの態様は、眼疾患、特に眼血管疾患を処置するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体の使用である。
【0072】
本明細書において報告される一つの態様は、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを硝子体内空間から血液循環に輸送するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体の使用である。
【0073】
本明細書において報告される一つの態様は、眼疾患の処置に使用するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体である。
【0074】
本明細書において報告される一つの態様は、可溶性のレセプターリガンドの、血液−眼関門を抜けての眼から血液循環への輸送に使用するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体である。
【0075】
本明細書において報告される一つの態様は、1種以上の可溶性のレセプターリガンドの眼からの除去に使用するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体である。
【0076】
本明細書において報告される一つの態様は、眼疾患、特に眼血管疾患を処置するのに使用するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体である。
【0077】
本明細書において報告される一つの態様は、1種以上の可溶性のレセプターリガンドの、硝子体内空間から血液循環への輸送に使用するための、本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体である。
【0078】
本明細書において報告される一つの態様は、眼血管疾患を有する個体を処置する方法であって、前記個体に、有効量の本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体を投与する工程を含む方法である。
【0079】
本明細書において報告される一つの態様は、個体において、可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて眼から血液循環に輸送する方法であって、前記個体に、有効量の本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体を投与して、可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて眼から血液循環に輸送する工程を含む方法である。
【0080】
本明細書において報告される一つの態様は、個体において、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを眼から除去する方法であって、前記個体に、有効量の本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体を投与して、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを眼から除去する工程を含む方法である。
【0081】
本明細書において報告される一つの態様は、個体において、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを硝子体内空間から血液循環に輸送する方法であって、前記個体に、有効量の本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体を投与して、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを硝子体内空間から血液循環に輸送する工程を含む方法である。
【0082】
本明細書において報告される一つの態様は、個体において、可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて硝子体内空間又は眼から血液循環に輸送する方法であって、前記個体に、有効量の本明細書において報告される(二量体)ポリペプチド又は抗体を投与して、可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて眼から血液循環に輸送する工程を含む方法である。
【0083】
一つの実施態様において、前記(二量体)ポリペプチドは、二重特異性抗体である。一つの実施態様において、前記二重特異性抗体は、二価二重特異性抗体である。一つの実施態様において、前記二重特異性抗体は、四価二重特異性抗体である。
【0084】
一つの実施態様において、前記(二量体)ポリペプチドは、三重特異性抗体である。一つの実施態様において、前記三重特異性抗体は、三価三重特異性抗体である。一つの実施態様において、前記三重特異性抗体は、四価三重特異性抗体である。
【0085】
一つの実施態様において、前記(二量体)ポリペプチドは、CrossMabである。
【0086】
一つの実施態様において、前記(二量体)ポリペプチドは、Fc領域融合ポリペプチドである。
【0087】
一つの実施態様において、前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wを更に含む。
【0088】
一つの実施態様において、前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wを更に含む。
【0089】
一つの実施態様において、前記抗体又は前記Fc領域融合ポリペプチドは、サブクラスIgG1のものである。一つの実施態様において、前記抗体又は前記Fc領域融合ポリペプチドは、突然変異L234A及びL235Aを更に含む。一つの実施態様において、前記抗体又は前記Fc領域融合ポリペプチドは、突然変異P329Gを更に含む。
【0090】
一つの実施態様において、前記抗体又は前記Fc領域融合ポリペプチドは、サブクラスIgG2のものである。一つの実施態様において、前記抗体又は前記Fc領域融合ポリペプチドは、突然変異V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S及びP331Sを更に含む。
【0091】
一つの実施態様において、前記抗体又は前記Fc領域融合ポリペプチドは、サブクラスIgG4のものである。一つの実施態様において、前記抗体又は前記Fc領域融合ポリペプチドは、突然変異S228P及びL235Eを更に含む。一つの実施態様において、前記抗体又は前記Fc領域融合ポリペプチドは、突然変異P329Gを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】IHH−AAA突然変異(突然変異I253A、H310A及びH435Aの組み合わせ(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング))を伴うIgG1又はIgG4サブクラスの抗VEGF/ANG2抗体の概念及び利点を示す模式図。
図2】小スケールDLSベース粘度測定:200mM アルギニン/スクシナート緩衝液(pH5.5)中、150mg/mLにおける外挿粘度(抗VEGF/ANG2抗体VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)の、参照抗体VEGF/ANG2-0015(そのようなIHH−AAA突然変異なし)との比較)。
図3】20mM ヒスチジン緩衝液、140mM NaCl(pH6.0)中における、温度(DLS凝集開始温度を含む)に依存するDLS凝集(本明細書において報告される抗VEGF/ANG2抗体VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)の、参照抗体VEGF/ANG2-0015(そのようなIHH−AAA突然変異なし)との比較)。
図4】40℃、100mg/mLでの7日間保管(メインピークの減少及び高分子量分(HMW)の増加)(より少ない凝集を示した、本明細書において報告される抗VEGF/ANG2抗体VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)の、参照抗体VEGF/ANG2-0015(そのようなIHH−AAA突然変異なし)との比較)。
図5A】VEGF/ANG2-0015(IHH−AAA突然変異なし)の定常状態FcRn親和性。
図5B】VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)の定常状態FcRn親和性。
図6】IHH−AAA突然変異なしのVEGF/ANG2-0015及びIHH−AAA突然変異を伴うVEGF/ANG2-0016(いずれもIgG1サブクラスでP329G LALA突然変異を伴う;対照として、IgG1サブクラスの抗ジゴキシゲニン(抗Dig抗体)及びIgG4ベースの抗体を用いた)のFcガンマRIIIa相互作用測定。
図7A】血清及び全眼球溶解物中の抗VEGF/ANG2抗体濃度測定のための薬物動力学的(PK)ELISAアッセイの概略の原理。
図7B】静脈内(i.v.)適用後の血清中濃度:IHH−AAA突然変異なしのVEGF/ANG2-0015と、IHH−AAA突然変異を伴うVEGF/ANG2-0016の比較。
図7C】硝子体内適用後の血清中濃度:IHH−AAA突然変異なしのVEGF/ANG2-0015と、IHH−AAA突然変異を伴うVEGF/ANG2-0016の比較。
図7D】右眼及び左眼におけるVEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)の眼球溶解物中濃度(右眼のみに硝子体内適用後、静脈内適用と比較):有意な濃度が硝子体内適用後の右眼のみで検出できた;静脈内適用後では、VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)の血清中半減期が短いために、眼球溶解物中に濃度が検出できなかった。
図7E】右眼及び左眼におけるVEGF/ANG2-0015(IHH−AAA突然変異なし)の眼球溶解物中濃度(右眼のみに硝子体内適用後、静脈内適用と比較):硝子体内適用後の右眼において(左眼でもある程度)、VEGF/ANG2-0015の濃度が検出できた;このことは、右眼から血清、更にそこから左眼への拡散を示すものであり、これはVEGF/ANG2-0015(IHH−AAA突然変異なし)の長い半減期によって説明される;静脈内適用後でも、血清に対して安定なVEGF/ANG2-0015(IHH−AAA突然変異なし)の眼への拡散により、両眼の眼球溶解物において有意な濃度が検出できた。
図8】FcRnとの結合能に関して操作された抗体は、SPR分析において、参照の野生型(wt)抗体に比して、延長(YTE突然変異)又は短縮(IHH−AAA突然変異)されたインビボ半減期、増強(YTE突然変異)又は減少した結合(IHH−AAA突然変異)を示し、またFcRnカラムクロマトグラフィーにおいて、延長又は減少した保持時間を示す;a)huFcRnトランスジェニック雄性C57BL/6Jマウス+/−276への10mg/kgの単回i.v.ボーラス適用後のPKデータ:wt IgG、またYTE及びIHH−AAA Fc領域改変IgGについてのAUCデータ;b)BIAcoreセンサーグラム;c)FcRnアフィニティーカラム溶出;野生型抗IGF−1R抗体(参照)、抗IGF−1R抗体のYTE−突然変異体、抗IGF−1R抗体のIHH−AAA−突然変異体。
図9】Fc領域に導入された突然変異の数に依存する、FcRnアフィニティークロマトグラフィーにおける保持時間の変化。
図10】Fc領域に導入された突然変異の非対称分布に依存する、FcRn結合の変化。
図11】両重鎖に突然変異H310A、H433A及び436Aの組み合わせを伴う二重特異性抗VEGF/ANG2抗体(VEGF/ANG2-0121)の、2本の連続したプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出クロマトグラム。
図12】両重鎖に突然変異H310A、H433A及びY436Aを伴う抗IGF−1R抗体(IGF-1R-0045)の、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出クロマトグラム。
図13】CM5チップに固定されたプロテインAへの、IgG Fc領域改変抗VEGF/ANG2抗体の結合。
図14】種々の抗VEGF/ANG2抗体の、FcRnアフィニティーカラムにおける溶出クロマトグラム。
図15】種々の融合ポリペプチドの、ブドウ球菌プロテインA(SPR)との結合。
図16】種々の抗VEGF/ANG2抗体及び抗IGF−1R抗体突然変異体の、固定されたプロテインA(SPR)との結合。
図17】抗体IGF-1R 0033、0035及び0045の静脈内適用後の血清中濃度の比較
図18】抗体IGF-1R 0033の硝子体内及び静脈内適用後の眼球溶解物中濃度の比較。
図19】抗体IGF-1R 0035の硝子体内及び静脈内適用後の眼球溶解物中濃度の比較。
図20】抗体IGF-1R 0045の硝子体内及び静脈内適用後の眼球溶解物中濃度の比較。
【0093】
発明の実施態様の詳細な説明
I.定義
用語「約」は、その後に続く数値の+/−20%の範囲を意味する。一つの実施態様において、用語約は、その後に続く数値の+/−10%の範囲を意味する。一つの実施態様において、用語約は、その後に続く数値の+/−5%の範囲を意味する。
【0094】
本明細書における目的のため、「アクセプターヒトフレームワーク」は、下記に定義するヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク由来の軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含有するフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含んでいてもよく、アミノ酸配列変化を含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
【0095】
「親和性成熟」抗体は、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の変化を有する(そのような変化を持たない親抗体に比して)抗体であって、そのような変化が、抗原に対する抗体の親和性の向上をもたらしているものを指す。
【0096】
用語「変化」は、改変抗体又は融合ポリペプチドを得るための、親抗体又は融合ポリペプチド、例えば、Fc領域のFcRn結合部位を少なくとも含む融合ポリペプチド中の、1個以上のアミノ酸残基の突然変異(置換)、挿入(付加)又は欠失を意味する。用語「突然変異」は、特定されたアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基で置換されることを意味する。例えば、突然変異L234Aは、抗体Fc領域(ポリペプチド)中234位のアミノ酸残基リシンが、アミノ酸残基アラニンで置換される(リシンのアラニンによる置換)(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)ことを意味する。
【0097】
本明細書で使用する場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインについて、アミノ酸位置は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載され、本明細書においては「Kabatによるナンバリング」と称する、Kabat インデックスナンバリングシステムによりナンバリングする。具体的には、κ及びλアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLについては、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のKabatナンバリングシステム(第647−660頁を参照)を用い、定常重鎖ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3)については、Kabat EUインデックスナンバリングシステム(第661−723頁を参照)を用いる。
【0098】
「天然に存在するアミノ酸残基」は、アラニン(3文字コード:Ala、1文字コード:A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リシン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)及びバリン(Val、V)からなる群よりのアミノ酸残基を意味する。
【0099】
用語「アミノ酸突然変異」は、少なくとも1個の既存のアミノ酸残基の、他の異なるアミノ酸残基(=置換用(replacing)アミノ酸残基)による置換を意味する。置換用アミノ酸残基は、「天然に存在するアミノ酸残基」であってよく、アラニン(3文字コード:Ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リシン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)からなる群より選択される。置換用アミノ酸残基は、「天然に存在しないアミノ酸残基」であってもよい。例えば、米国特許第6586207号、国際公開公報第98/48032号、国際公開公報第03/073238号、米国公開公報第2004/0214988号、国際公開公報第2005/35727号、国際公開公報第2005/74524号、Chin, J.W., et al., J. Am. Chem. Soc. 124 (2002) 9026-9027; Chin, J.W. and Schultz, P.G., ChemBioChem 11 (2002) 1135-1137; Chin, J.W., et al., PICAS United States of America 99 (2002) 11020-11024; 及びWang, L. and Schultz, P.G., Chem. (2002) 1-10(いずれも全体が参照により本明細書に組み入れられる)を参照。
【0100】
用語「アミノ酸挿入」は、アミノ酸配列中の所定の位置における、少なくとも1個のアミノ酸残基の(付加的な)組み入れを意味する。一つの実施態様において、挿入は、1個又は2個のアミノ酸残基の挿入である。挿入されるアミノ酸残基は、天然に存在する、又は天然に存在しないあらゆるアミノ酸残基でありうる。
【0101】
用語「アミノ酸欠失」は、アミノ酸配列中の所定の位置における少なくとも1個のアミノ酸残基の除去を意味する。
【0102】
本明細書において使用する用語「ANG−2」は、例えばMaisonpierre, P.C., et al, Science 277 (1997) 55-60及びCheung, A.H., et al., Genomics 48 (1998) 389-91に記載されているヒトアンジオポエチン2(ANG−2)(或いは、ANGPT2又はANG2と略される)(配列番号31)を指す。アンジオポエチン1(配列番号32)及び2は、Ties(血管内皮細胞内で選択的に発現されるチロシンキナーゼのファミリー)のリガンドとして発見された(Yancopoulos, G.D., et al., Nature 407 (2000) 242-48)。アンジオポエチンファミリーの明確なメンバーは現在4つである。アンジオポエチン3及び4(Ang−3及びAng−4)は、マウス及びヒトにおける同じ遺伝子座の広く分岐した対応物(widely diverged counterparts)を表しうる(Kim, I., et al., FEBS Let, 443 (1999) 353-356; Kim, I., et al., J. Biol. Chem. 274 (1999) 26523-26528)。ANG−1及びANG−2は本来、組織培養実験において各々アゴニスト及びアンタゴニストと同定された(ANG−1については、Davis, S., et al., Cell 87 (1996) 1161-1169;ANG−2については、Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60を参照)。公知のアンジオポエチンはいずれも、主としてTie2(配列番号33)と結合し、Ang−1及び−2の両者は、3nM(Kd)の親和性で、Tie2と結合する(Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60)。
【0103】
本明細書において、用語「抗体」は最も広い意味で使用され、所望の抗原−、及び/又はプロテインA及び/又はFcRn−結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、三重特異性抗体)及び抗体フラグメントを初めとする(これらに限定されない)、さまざまな抗体構造を包含する。
【0104】
用語「非対称なFc領域」は、Kabat EUインデックスナンバリングシステムによる対応する位置において異なるアミノ酸残基を有する、一対のFc領域ポリペプチドを意味する。
【0105】
用語「FcRn結合に関する非対称なFc領域」は、対応する位置(この位置はKabat EUインデックスナンバリングシステムにより決定される)において異なるアミノ酸残基を有する2本のポリペプチド鎖からなり、その異なる位置が、Fc領域のヒト新生児Fc−レセプター(FcRn)との結合に影響するFc領域を意味する。本明細書における目的のため、「FcRn結合に関する非対称なFc領域」におけるFc領域の2本のポリペプチド鎖の間の差は、ヘテロ二量体Fc領域の形成を促進するために導入された差(例えば、二重特異性抗体の製造のための)を含まない。これらの差もまた非対称であり得る、即ち、2本の鎖がKabat EUインデックスナンバリングシステムによる対応しないアミノ酸残基において差がある。これらの差はヘテロ二量体化を促進し、ホモ二量体化を減少させる。そのような差の例は、いわゆる「ノブズ イントゥ ホールズ」置換である(例えば、米国特許第7695936号及び米国公開公報第2003/0078385号を参照)。サブクラスIgG1のIgG抗体のFc領域の、個々のポリペプチド鎖における以下のノブとホールの置換は、ヘテロ二量体形成を増加させることが見出されている:1)一方の鎖においてY407T、他方の鎖においてT366Y;2)一方の鎖においてY407A、他方の鎖においてT366W;3)一方の鎖においてF405A、他方の鎖においてT394W;4)一方の鎖においてF405W、他方の鎖においてT394S;5)一方の鎖においてY407T、他方の鎖においてT366Y;6)一方の鎖においてT366Y及びF405A、他方の鎖においてT394W及びY407T;7)一方の鎖においてT366W及びF405W、他方の鎖においてT394S及びY407A;8)一方の鎖においてF405W及びY407A、他方の鎖においてT366W及びT394S;並びに9)一方の鎖においてT366W、他方の鎖においてT366S、L368A及びY407V、このうち、最後に挙げたものが特に適している。加えて、2本のFc領域ポリペプチド鎖の間に新たなジスルフィド架橋を作る変化は、ヘテロ二量体形成を促進する(例えば、米国公開公報第2003/0078385号を参照)。サブクラスIgG1のIgG抗体のFc領域の、個々のポリペプチド鎖における新たな鎖内ジスルフィド結合形成のための、適度に間隔を開けたシステイン残基をもたらす以下の置換は、ヘテロ二量体形成を増加させることが見出されている:一方の鎖においてY349C、他方においてS354C;一方の鎖においてY349C、他方においてE356C;一方の鎖においてY349C、他方においてE357C;一方の鎖においてL351C、他方においてS354C;一方の鎖においてT394C、他方においてE397C;又は一方の鎖においてD399C、他方においてK392C。ヘテロ二量体化を促進するアミノ酸変化の更なる例は、いわゆる「電荷対置換」である(例えば、国際公開公報第2009/089004号を参照)。サブクラスIgG1のIgG抗体のFc領域の、個々のポリペプチド鎖における以下の電荷対置換は、ヘテロ二量体形成を増加させることが見出されている:1)一方の鎖においてK409D又はK409E、他方の鎖においてD399K又はD399R;2)一方の鎖においてK392D又はK392E、他方の鎖においてD399K又はD399R;3)一方の鎖においてK439D又はK439E、他方の鎖においてE356K又はE356R;4)一方の鎖においてK370D又はK370E、他方の鎖においてE357K又はE357R;5)一方の鎖においてK409D及びK360D、かつ他方の鎖においてD399K及びE356K;6)一方の鎖においてK409D及びK370D、かつ他方の鎖においてD399K及びE357K;7)一方の鎖においてK409D及びK392D、かつ他方の鎖においてD399K、E356K及びE357K;8)一方の鎖においてK409D及びK392D、他方の鎖においてD399K;9)一方の鎖においてK409D及びK392D、他方の鎖においてD399K及びE356K;10)一方の鎖においてK409D及びK392D、他方の鎖においてD399K及びD357K;11)一方の鎖においてK409D及びK370D、他方の鎖においてD399K及びD357K;12)一方の鎖においてD399K、他方の鎖においてK409D及びK360D;並びに13)一方の鎖においてK409D及びK439D、他方においてD399K及びE356K。
【0106】
用語「結合(抗原との)」は、インビトロアッセイ、一つの実施態様においては、抗体が表面に結合し、抗原の抗体との結合を表面プラズモン共鳴(SPR)で測定する結合アッセイにおける、抗体のその抗原との結合を意味する。結合は、10−8M以下、いくつかの実施態様においては、10−13〜10−8M、いくつかの実施態様においては、10−13〜10−9Mの結合親和性(K)を意味する。
【0107】
結合は、BIAcoreアッセイ(GE Healthcare Biosensor AB, Uppsala, Sweden)により調べることができる。結合の親和性は、項k(抗体/抗原複合体からの抗体の会合についての速度定数)、k(解離定数)及びK(k/k)により定義される。
【0108】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部がある特定の供給源又は種に由来するが、重鎖及び/又は軽鎖の残りの部分が異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0109】
用語「CH2ドメイン」は、およそEU位置231からEU位置340(KabatによるEUナンバリングシステム)まで伸びる、抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。一つの態様において、CH2ドメインは、配列番号09:APELLGG PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVWDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQ E STYRWSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKのアミノ酸配列を有する。
【0110】
用語「CH3ドメイン」は、およそEU位置341からEU位置446まで伸びる、抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。一つの態様において、CH3ドメインは、配列番号10:GQPREPQ VYTLPPSRDE LTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPGのアミノ酸配列を有する。
【0111】
抗体の「クラス」は、その重鎖が有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要なクラス、即ちIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgAに更に分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、各々α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0112】
用語「匹敵する長さ」は、2種のポリペプチドが、同数のアミノ酸残基を含むか、又は1個以上、かつ最大で10個のアミノ酸残基分、長さが異なるものでありうることを意味する。一つの実施態様において、(Fc領域)ポリペプチドは、同数のアミノ酸残基を含むか、又は1〜10アミノ酸残基だけ、数が異なる。一つの実施態様において、(Fc領域)ポリペプチドは、同数のアミノ酸残基を含むか、又は1〜5アミノ酸残基だけ、数が異なる。一つの実施態様において、(Fc領域)ポリペプチドは、同数のアミノ酸残基を含むか、又は1〜3アミノ酸残基だけ、数が異なる。
【0113】
「エフェクター機能」は、抗体のクラスによって変わる、抗体のFc領域に起因し得る生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害(CDC);Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);食作用;細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター)の下方調節;並びにB細胞活性化が含まれる。
【0114】
薬剤、例えば医薬処方物の「有効量」は、必要な投与量及び期間において、所望の治療的又は予防的結果を達成するのに有効な量を指す。
【0115】
用語「Fc−融合ポリペプチド」は、結合ドメイン(例えば、一本鎖抗体のような抗原結合ドメイン、又はレセプターのリガンドのようなポリペプチド)の、所望の標的、プロテインA−及びFcRn−結合活性を示す抗体Fc領域との融合物を意味する。
【0116】
用語「ヒト起源のFc領域」は、ヒンジ領域の少なくとも一部、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含有する、ヒト起源の免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。一つの実施態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までにわたる。一つの実施態様において、Fc領域は、配列番号60のアミノ酸配列を有する。ただし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在してもしなくてもよい。
【0117】
用語「FcRn」は、ヒト新生児Fc−レセプターを意味する。FcRnは、リソソーム分解経路からIgGを救助する機能を果たし、クリアランスの減少と、延長された半減期をもたらす。FcRnは、2種のポリペプチド:50kDaのクラスI主要組織適合遺伝子複合体様タンパク質(α−FcRn)及び15kDaのβ2−ミクログロブリン(β2m)からなるヘテロ二量体タンパク質である。FcRnは、IgGのFc領域のCH2−CH3部分と高い親和性で結合する。IgGとFcRnの間の相互作用は、pHに厳密に依存しており、1:2の化学量論比で起こり、1個のIgGが、2本の重鎖を介して2個のFcRn分子に結合する(Huber, A.H., et al., J. Mol. Biol. 230 (1993) 1077-1083)。酸性pH(pH<6.5)では、FcRn結合がエンドソーム内で起こり、中性の細胞表面(pH約7.4)では、IgGは遊離する。相互作用のpH感受性の性質が、エンドソームの酸性環境内におけるレセプターへの結合によって、細胞中へ飲作用されるIgGの、細胞内分解からのFcRnを介した保護を容易にする。次いで、FcRnは、細胞表面へのIgGの再循環と、これに続く、FcRn−IgG複合体が細胞外の中性pH環境に曝露された際の血流中への放出を促進する。
【0118】
用語「Fc領域のFcRn結合部分」は、およそEU位置243からEU位置261、及びおよそEU位置275からEU位置293、及びおよそEU位置302からEU位置319、及びおよそEU位置336からEU位置348、及びおよそEU位置367からEU位置393とEU位置408、及びおよそEU位置424からEU位置440まで伸びる、抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。一つの実施態様において、KabatのEUナンバリングによる次のアミノ酸残基のうち1つ以上が変化している:F243、P244、P245P、K246、P247、K248、D249、T250、L251、M252、I253、S254、R255、T256、P257、E258、V259、T260、C261、F275、N276、W277、Y278、V279、D280、V282、E283、V284、H285、N286、A287、K288、T289、K290、P291、R292、E293、V302、V303、S304、V305、L306、T307、V308、L309、H310、Q311、D312、W313、L314、N315、G316、K317、E318、Y319、I336、S337、K338、A339、K340、G341、Q342、P343、R344、E345、P346、Q347、V348、C367、V369、F372、Y373、P374、S375、D376、I377、A378、V379、E380、W381、E382、S383、N384、G385、Q386、P387、E388、N389、Y391、T393、S408、S424、C425、S426、V427、M428、H429、E430、A431、L432、H433、N434、H435、Y436、T437、Q438、K439及びS440(EUナンバリング)。
【0119】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的には、4つのFRドメイン、FR1、FR2、FR3及びFR4からなる。従って、HVR配列及びFR配列は、一般的には、VH(又はVL)中に、次の順序で見いだされる:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4。
【0120】
用語「全長抗体」は、4本のポリペプチドを含むネイティブ抗体構造に実質的に同様の構造を有するか、又は本明細書において定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体を意味する。全長抗体は、全長抗体の鎖の1本以上とコンジュゲートしたscFv又はscFabのような、更なるドメインを含んでいてよい。これらのコンジュゲートもまた、用語、全長抗体に包含される。
【0121】
用語「二量体ポリペプチド」は、共有結合で会合した少なくとも2本のポリペプチドを含む複合体を意味する。この複合体は、他のポリペプチドとこれも共有結合で、又は共有結合なしで会合した更なるポリペプチドを含んでいてよい。一つの実施態様において、二量体ポリペプチドは2本又は4本のポリペプチドを含む。
【0122】
用語「ヘテロ二量体」又は「ヘテロ二量体の」は、2本のポリペプチド(例えば、匹敵する長さの)を含む分子であって、前記2本のポリペプチドは、対応する位置における異なるアミノ酸残基を少なくとも1個有するアミノ酸配列を有し、対応する位置は、Kabat EUインデックスナンバリングシステムにより決定される分子を意味する。
【0123】
用語「ホモ二量体」及び「ホモ二量体の」は、匹敵する長さの2本のポリペプチドを含む分子であって、前記2本のポリペプチドは、対応する位置において同一であるアミノ酸配列を有し、対応する位置は、Kabat EUインデックスナンバリングシステムにより決定される分子を意味する。
【0124】
本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、ホモ二量体でもヘテロ二量体でもありえ、これは 焦点を合わせた突然変異又は特性に関して決定される。例えば、FcRn及び/又はプロテインA結合(即ち、特性に焦点を合わせている)に関し、二量体ポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436A(二量体ポリペプチドのFcRn及び/又はプロテインA結合特性に関し、これらの突然変異に焦点が合わせられている)についてはホモ二量体である(即ち、二量体ポリペプチドの両方のポリペプチドがこれらの突然変異を含む)が、同時に、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407V(これらの突然変異は、FcRn/プロテインA結合特性ではなく、二量体ポリペプチドのヘテロ二量体化に向けたものなので、これらの突然変異には焦点が合わせられていない)と、突然変異S354C及びT366W(第1のセットは第1のポリペプチドのみに含まれるが、第2のセットは第2のポリペプチドのみに含まれる)のそれぞれについてのヘテロ二量体でもある。更に、例えば、本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、突然変異I253A、H310A、H433A、H435A及びY436Aに関してヘテロ二量体である(即ち、これらの突然変異はいずれも、二量体ポリペプチドのFcRn及び/又はプロテインA結合特性に向けたものである)、即ち、1本のポリペプチドは突然変異I253A、H310A及びH435Aを含むが、他方のポリペプチドは突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むことがあり得る。
【0125】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は互換可能に使用され、外来核酸が導入された細胞を、そのような細胞の子孫を含めて指す。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、初代形質転換細胞及びそれに由来する子孫が、継代の回数に関わらず含まれる。子孫の核酸内容は親細胞と完全に同一でなくてもよく、突然変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたのと同じ機能又は生物活性を有する突然変異体の子孫は、本明細書に含まれる。
【0126】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞によって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列、又は、ヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列を利用した非ヒト供給源に由来する抗体に対応するアミノ酸配列を持つものである。ヒト抗体のこの定義からは、非ヒト抗原結合性残基を含むヒト化抗体は、特異的に除外される。
【0127】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択に際して最もよく見いだされるアミノ酸残基を示すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからなされる。一般に、配列のサブグループは、Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Bethesda MD (1991), NIH Publication 91-3242, Vols.1-3に記載のサブグループである。一つの実施態様において、VLについては、サブグループは、前記Kabat et al.に記載のサブグループ・カッパIである。一つの実施態様において、VHについては、サブグループは、前記Kabat et al.に記載のサブグループIIIである。
【0128】
用語「由来の」は、あるアミノ酸配列を、少なくとも一つの位置において変化を導入することにより、親のアミノ酸配列に由来するものとすることを意味する。よって、由来アミノ酸配列は、少なくとも一つの対応する位置(抗体Fc領域についてのKabat EUインデックスによるナンバリング)において、対応する親のアミノ酸配列とは異なる。一つの実施態様において、ある親のアミノ酸配列由来のあるアミノ酸配列は、対応する位置において、1〜15個のアミノ酸残基が異なる。一つの実施態様において、ある親のアミノ酸配列由来のあるアミノ酸配列は、対応する位置において、1〜10個のアミノ酸残基が異なる。一つの実施態様において、ある親のアミノ酸配列由来のあるアミノ酸配列は、対応する位置において、1〜6個のアミノ酸残基が異なる。同様に、由来アミノ酸配列は、その親のアミノ酸配列に対し、高いアミノ酸配列同一性を有する。一つの実施態様において、ある親のアミノ酸配列由来のあるアミノ酸配列は、80%以上のアミノ酸配列同一性を有する。一つの実施態様において、ある親のアミノ酸配列由来のあるアミノ酸配列は、90%以上のアミノ酸配列同一性を有する。一つの実施態様において、ある親のアミノ酸配列由来のあるアミノ酸配列は、95%以上のアミノ酸配列同一性を有する。
【0129】
用語「ヒトFc領域ポリペプチド」は、「ネイティブ」又は「野生型」ヒトFc領域ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を意味する。用語「変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチド」は、少なくとも一つの「アミノ酸変化」による、「ネイティブ」又は「野生型」ヒトFc領域ポリペプチド由来のアミノ酸配列を意味する。「ヒトFc領域」は、2本のヒトFc領域ポリペプチドからなる。「変異体(ヒト)Fc領域」は、2本のヒトFc領域ポリペプチドからなるので、その両方が変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドであることも可能であり、又は、一方がヒトFc領域ポリペプチドであり、他方が変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドである。
【0130】
一つの実施態様において、ヒトFc領域ポリペプチドは、本明細書において報告される突然変異を伴う、配列番号60のヒトIgG1Fc領域ポリペプチドの、又は、配列番号61のヒトIgG2Fc領域ポリペプチドの、又は、配列番号63のヒトIgG4Fc領域ポリペプチドのアミノ酸配列を有する。一つの実施態様において、変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドは、配列番号60、又は61、又は63のFc領域ポリペプチド由来のものであり、配列番号60、又は61、又は63のFc領域ポリペプチドに比して、少なくとも一つのアミノ酸突然変異を有する。変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドは、一つの実施態様において、約1〜約10のアミノ酸突然変異、一つの実施態様において、約1〜約5のアミノ酸突然変異を含む/有する。一つの実施態様において、変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドは、配列番号60、又は61、又は63のヒトFc領域ポリペプチドに対し、少なくとも約80%の相同率を有する。一つの実施態様において、変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドは、配列番号60、又は61、又は63のヒトFc領域ポリペプチドに対し、少なくとも約90%の相同率を有する。一つの実施態様において、変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドは、配列番号60、又は61、又は63のヒトFc領域ポリペプチドに対し、少なくとも約95%の相同率を有する。
【0131】
配列番号60、又は61、又は63のヒトFc領域ポリペプチド由来の変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドは、含まれるアミノ酸変化により定義される。よって、例えば、用語P329Gは、配列番号60、又は61、又は63のヒトFc領域ポリペプチドに対し、アミノ酸329位における、プロリンからグリシンへの突然変異を伴う、ヒトFc領域ポリペプチド由来変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドを意味する。
【0132】
本発明において検討される全ての位置に関し、ナンバリングはKabat EUインデックスナンバリングシステムによるものである。
【0133】
ヒトIgG1Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号60)
【0134】
突然変異L234A、L235Aを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号64)
【0135】
突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号65)
【0136】
突然変異S354C、T366Wを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号66)
【0137】
突然変異L234A、L235A及び突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号67)
【0138】
突然変異L234A、L235A及びS354C、T366Wを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号68)
【0139】
突然変異P329Gを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号69)
【0140】
突然変異L234A、L235A及び突然変異P329Gを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号70)
【0141】
突然変異P239G及び突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号71)
【0142】
突然変異P329G及び突然変異S354C、T366Wを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号72)
【0143】
突然変異L234A、L235A、P329G及びY349C、T366S、L368A、Y407Vを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号73)
【0144】
突然変異L234A、L235A、P329G及び突然変異S354C、T366Wを伴うヒトIgG1Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号74)
【0145】
ヒトIgG4Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号63)
【0146】
突然変異S228P及びL235Eを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号75)
【0147】
突然変異S228P、L235E及び突然変異P329Gを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号76)
【0148】
突然変異S354C、T366Wを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCQEEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号77)
【0149】
突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSQEEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号78)
【0150】
突然変異S228P、L235E及びS354C、T366Wを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCQEEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号79)
【0151】
突然変異S228P、L235E及びY349C、T366S、L368A、Y407Vを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSQEEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号80)
【0152】
突然変異P329Gを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号81)
【0153】
突然変異P239G及びY349C、T366S、L368A、Y407Vを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSQEEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号82)
【0154】
突然変異P329G及びS354C、T366Wを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCQEEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号83)
【0155】
突然変異S228P、L235E、P329G及びY349C、T366S、L368A、Y407Vを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSQEEMTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号84)
【0156】
突然変異S228P、L235E、P329G及びS354C、T366Wを伴うヒトIgG4Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLGSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCQEEMTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号85)
【0157】
種々のヒトFc領域のアライメントを以下に示す(Kabat EUインデックスナンバリングシステム):
【表2】
【0158】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRに由来するアミノ酸残基及びヒトFRに由来するアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施態様において、ヒト化抗体は、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに対応する、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は場合により、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでよい。ある抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0159】
本明細書で使用する用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列が超可変性であり(「相補性決定領域」又は「CDR」)、かつ、構造的に明確なループ(「超可変ループ」)を形成する、及び/又は抗原接触残基(「抗原接点」)を含む、抗体可変ドメインの各領域を指す。一般に、抗体は6個のHVRを含む;3個はVH中にあり(H1、H2、H3)、3個はVL中にある(L1、L2、L3)。本明細書において意味するHVRは、以下のものを含む:
(a)アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)及び96〜101(H3)に現れる超可変ループ(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917);
(b)アミノ酸残基24〜34(L1)、50〜56(L2)89〜97(L3)、31〜35B(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3)に現れるCDR(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242.);
(c)アミノ酸残基27c−36(L1)、46−55(L2)、89−96(L3)、30−35b(H1)、47−58(H2)及び93−101(H3)に現れる抗原接点(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));並びに
(d)HVRアミノ酸残基46−56(L2)、47−56(L2)、48−56(L2)、49−56(L2)、26−35(H1)、26−35b(H1)、49−65(H2)、93−102(H3)及び94−102(H3)を含む、(a)、(b)及び/又は(c)の組み合わせ
【0160】
特に断りのない限り、本明細書においては、可変ドメイン中のHVR残基及びその他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat EUインデックスナンバリングシステム(前記Kabat et al.)に従ってナンバリングする。
【0161】
本明細書で使用する用語「IGF−1R」は、特に断りのない限り、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)といった哺乳動物を初めとする、何らかの脊椎動物起源からの何らかのネイティブIGF−1Rを指す。この用語は、「全長」、即ち未処理IGF−1R、また細胞内での処理によって生じるあらゆる形態のIGF−1Rを包含する。この用語はまた、IGF−1Rの天然に存在する変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体を包含する。ヒトIGF−1Rのアミノ酸配列を配列番号11に示す。
【0162】
「個体」又は「被験者」は哺乳動物である。哺乳動物には、飼い慣らされた動物(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルのような非ヒト霊長類)、ウサギ及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、それらに限定されない。特定の実施態様において、個体又は被験者はヒトである。
【0163】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施態様では、抗体を、95%又は99%を上回る純度(例えば、電気泳動(例えばSDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えばサイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換又は逆相HPLC)などにより決定)まで精製する。抗体純度の評価方法を概観するには、例えばFlatman, S. et al., J. Chrom. B 848 (2007) 79-87を参照されたい。
【0164】
「単離された」核酸は、その自然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸には、以下のような細胞に含有される核酸分子も含まれる:通常その核酸分子を含有するが、当該核酸分子が、染色体外、又はその自然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在している。
【0165】
「抗IGF−1R抗体をコードする単離された核酸」は、抗体重鎖及び軽鎖(又はそのフラグメント)をコードする1種以上の核酸分子(単一のベクター又は別個のベクター中のそのような核酸分子及び宿主細胞中の1つ以上の位置に存在するそのような核酸分子を含む)を指す。
【0166】
本明細書において使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。即ち、この集団を構成する個々の抗体は、同一であり、及び/又は同じエピトープと結合する(可能性のある変異体抗体、例えば、天然に存在する変異を含有するもの、又はモノクローナル抗体調製物の製造中に生じるもの(一般に、そのような変異体が微量に存在する)を除く)。典型的には、異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体が含まれるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を指向する。よって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、何らかの特定の方法による抗体の製造を要すると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法及びヒト免疫グロブリン座位の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法(これらに限定されない)を初めとする、さまざまな技法によって製造することができ、モノクローナル抗体を製造するためのそのような方法及び他の例示的方法を、本明細書に記載する。
【0167】
「ネイティブ抗体」は、さまざまな構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、ネイティブIgG抗体は、ジスルフィド結合した2本の同一の軽鎖及び2本の同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各重鎖は、N末端からC末端に向かって、可変領域(VH)(可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、それに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様に、各軽鎖は、N末端からC末端に向かって、可変領域(VL)(可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、それに続く定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの1つに帰属することができる。
【0168】
用語「添付文書」は、治療用製品の市販用梱包物に通例含まれていて、適応症、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌及び/又は当該治療用製品の使用上の注意に関する情報が掲載されている、説明書を指すために使用される。
【0169】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントが得られるよう、配列を整列し、必要であればギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の百分率(保存的置換を配列同一性の一部と見なさない)と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当技術分野の技能の範囲内にあるさまざまな方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアといった、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使って、達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要なあらゆるアルゴリズムを含む、配列を整列するための適当なパラメータを決定することができる。ただし、本明細書における目的のため、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使って、アミノ酸配列同一性%値を生成させる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech, Inc.によって作成されたものであり、ソースコードが米国著作権局(Washington D.C., 20559)に利用者向け文書と共に登録申請され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaから公的に入手することができ、又は、ソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、digital UNIX V4.0Dを初めとするUNIXオペレーティングシステム上で使用するためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータはALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
【0170】
アミノ酸配列比較にALIGN-2を使用する場合、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、又は所与のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(これは、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、又は所与のアミノ酸配列Bに対する、あるアミノ酸配列同一性%を有する、又は含む、所与のアミノ酸配列A、と言い換えることもできる)は、次のように計算される。
分率X/Y×100
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2が、そのプログラムによるAとBのアライメントにおいて、完全一致(identical match)と採点したアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Aの、Bへのアミノ酸配列同一性%が、Bの、Aへのアミノ酸配列同一性%と等しくないことは、理解されるであろう。別途具体的に明言しない限り、本明細書において使用するアミノ酸配列同一性%値は全て、直前の段落に記載したように、ALIGN-2コンピュータプログラムを使って得る。
【0171】
用語「医薬処方物」は、調製物であって、それに含有される活性成分の生物学的活性が有効でありうるような形態にあり、その処方物を投与される被験者にとって許容できないほど毒性の追加成分を含有しない調製物を指す。
【0172】
「薬学的に許容し得る担体」は、被験者にとって無毒な、医薬処方物中の有効成分以外の成分を指す。薬学的に許容し得る担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤又は保存剤などが含まれるが、それらに限定されない。
【0173】
本明細書で使用する用語「ペプチド性リンカー」は、一つの実施態様において、合成起源であるアミノ酸配列を有するペプチドを意味する。ペプチド性リンカーは、一つの実施態様において、少なくとも30アミノ酸の長さ、一つの実施態様において、32〜50アミノ酸の長さのアミノ酸配列を有するペプチドである。一つの実施態様において、ペプチド性リンカーは、32〜40アミノ酸の長さのアミノ酸配列を有するペプチドである。一つの実施態様において、ペプチド性リンカーは、(GxS)n(G=グリシン、S=セリン、(x=3、n=8,9又は10)若しくは(x=4及びn=6,7又は8)のものであり、一つの実施態様において、x=4、n=6又は7であり、一つの実施態様においてx=4、n=7である。一つの実施態様において、ペプチド性リンカーは、(GS)である。
【0174】
本明細書で使用する用語「リコンビナント抗体」は、リコンビナント手段により調製され、発現され、生成され又は単離された全ての抗体(キメラ、ヒト化及びヒト)を意味する。これは、NS0又はCHO細胞といった宿主細胞、又はヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体、若しくは宿主細胞にトランスフェクトされたリコンビナント発現ベクターを用いて発現された抗体を含む。そのようなリコンビナント抗体は、可変及び定常領域を再配列された形態で有する。リコンビナント抗体を、インビボ体細胞超突然変異に付すことができる。よって、リコンビナント抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VH及びVL配列由来の、またこれに関連する配列ではあるが、インビボのヒト抗体生殖細胞系レパートリーに天然には存在しない可能性がある配列である。
【0175】
本明細書で使用する「処置」(及び「処置する」又は「処置すること」といったその文法的異形)は、処置される個体の自然経過を変化させようとする臨床的介入を指し、予防のために行うことも、臨床病理の過程において行うこともできる。処置の望ましい効果には、疾患の出現又は再発を防止すること、症状の軽減、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を防止すること、疾患進行の速度を減じること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善などが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施態様では、本明細書において報告される抗体又はFc領域融合ポリペプチドが、疾患の発生を遅延させ、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0176】
本出願で使用される用語「価」は、(抗体)分子における特定数の結合部位の存在を意味する。このようなものとして、用語「二価」、「四価」及び「六価」は各々、(抗体)分子における2つの結合部位、4つの結合部位及び6つの結合部位の存在を意味する。本明細書において報告される二重特異性抗体は、「二価」という一つの好ましい実施態様にある。
【0177】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体のその抗原への結合に関与する、抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に類似する構造を有し、各ドメインは、4つのフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む(例えば、Kindt, T.J. et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), page 91を参照)。抗原結合特異性を付与するには、単一のVH又はVLドメインで十分でありうる。更に、特定の抗原と結合する抗体は、その抗原と結合する抗体からのVH又はVLドメインを使って、相補的なVL又はVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングすることによって、単離することができる(例えば、Portolano, S. et al., J. Immunol. 150 (1993) 880-887; Clackson, T. et al., Nature 352 (1991) 624-628を参照)。
【0178】
用語「眼血管疾患」は、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、網膜血管腫増殖症、黄斑毛細血管拡張症、虚血性網膜症、虹彩血管新生、眼内血管新生、角膜血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生及び網膜変性症(例えば、Garner, A., Vascular diseases, In: Pathobiology of ocular disease, A dynamic approach, Garner, A., and Klintworth, G.K., (eds.), 2nd edition, Marcel Dekker, New York (1994), pp.1625-1710を参照)といった、眼内新生血管症候群を含むが、これらに限定されない。
【0179】
本明細書において使用する用語「ベクター」は、それに連結された別の核酸を増殖させる能力を有する核酸分子を指す。この用語には、自己複製する核酸構造としてのベクターも、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターも含まれる。一定のベクターは、それらが作動的に連結されている核酸の発現を指示する能力を有する。そのようなベクターを、本明細書では「発現ベクター」と称する。
【0180】
本明細書で使用する用語「VEGF」は、ヒト血管内皮成長因子(VEGF/VEGF−A)、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子(ヒトVEGF165の前駆体配列のアミノ酸27−191:配列番号30;アミノ酸1−26は、シグナルペプチドを表す)及び関連する121、189及び206血管内皮細胞成長因子アイソフォーム(Leung, D.W., et al., Science 246 (1989) 1306-1309; Houck et al., Mol. Endocrin. 5 (1991) 1806-1814; Keck, P.J., et al., Science 246 (1989) 1309-1312及びConnolly, D.T., et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 20017-20024に記載)を;それらの成長因子の天然に存在する対立遺伝子型及びプロセシングされた形態と共に指す。VEGFは、腫瘍及び眼内障害に関連する正常及び異常な血管形成及び血管新生の調節に関与する(Ferrara, N., et al., Endocrin. Rev. 18 (1997) 4-25; Berkman, R.A., et al., J. Clin. Invest. 91 (1993) 153-159; Brown, L.F., et al., Human Pathol. 26 (1995)86-91; Brown, L.F., et al., Cancer Res. 53 (1993) 4727-4735; Mattern, J., et al., Brit. J. Cancer . 73 (1996) 931-934; 及びDvorak, H.F., et al., Am. J. Pathol. 146 (1995) 1029-1039)。VEGFは、いくつかの起源から単離され、いくつかのアイソフォームを含む、ホモ二量体糖タンパク質である。VEGFは、内皮細胞について高度に特異的な分裂促進活性を示す。
【0181】
本明細書で使用する用語「突然変異IHH−AAAを伴う」は、突然変異I253A(Ile253Ala)、H310A(His310Ala)及びH435A(His435Ala)の組み合わせを指し、本明細書で使用する用語「突然変異HHY−AAAを伴う」は、突然変異H310A(His310Ala)、H433A(His433Ala)及びY436A(Tyr436Ala)の組み合わせを指し、本明細書で使用する用語「突然変異YTEを伴う」は、突然変異M252Y(Met252Tyr)、S254T(Ser254Thr)及びT256E(Thr256Glu)の組み合わせを指し(IgG1又はIgG4サブクラスの定常重鎖領域内のもの)、ここで、ナンバリングはKabat EUインデックスナンバリングシステムによるものである。
【0182】
本明細書で使用する用語「突然変異P329GLALAを伴う」は、IgG1サブクラスの定常重鎖領域における突然変異L234A(Leu235Ala)、L235A(Leu234Ala)及びP329G(Pro329Gly)の組み合わせを指し、ここで、ナンバリングはKabat EUインデックスナンバリングシステムによるものである。本明細書で使用する用語「突然変異SPLEを伴う」は、IgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異S228P(Ser228Pro)及びL235E(Leu235Glu)の組み合わせを指し、ここで、ナンバリングはKabat EUインデックスナンバリングシステムによるものである。本明細書で使用する用語「突然変異SPLE及びP329Gを伴う」は、IgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異S228P(Ser228Pro)、L235E(Leu235Glu)及びP329G(Pro329Gly)の組み合わせを指し、ここで、ナンバリングはKabat EUインデックスナンバリングシステムによるものである。
【0183】
II.組成物及び方法
一つの態様において、本発明は、一部において、免疫グロブリンFc領域の、新生児Fc−レセプター(FcRn)との結合に影響を及ぼす、即ち、Fc領域のFcRnとの結合を減少させ、又は消失させもする、特定の突然変異又は突然変異の組み合わせが、同時にFc領域のブドウ球菌プロテインAとの結合をも消失させるものではないとの発見に基づくものである。このことは、採用しうる精製方法に対し重大な影響を及ぼすものであり、これは例えば、特異的で、種が制限されたアフィニティークロマトグラフィー材料(例えば、カッパ軽鎖を含む抗体のみと結合するKappaSelectのような)を必要としないことによる。よって、本明細書において報告される突然変異の組み合わせにより、ブドウ球菌プロテインAとの結合を維持しつつ、同時にFcRnとの結合を減少させ、又は消失させることさえも可能である。
【0184】
一つの態様において、本発明は、一部において、各重鎖のFc領域における種々の突然変異を用いることにより、例えば、二重特異性抗体のような、一方ではFcRnとの結合が減少し、又は消失してさえもおり、しかし他方では、ブドウ球菌プロテインAとの結合能を維持するヘテロ二量体分子を提供し得るとの発見に基づくものである。このブドウ球菌プロテインAとの結合は、ホモ二量体副生物からヘテロ二量体分子を分離するのに用いることができる。例えば、ノブズ−イントゥ−ホールアプローチを用いて、一方の重鎖Fc領域における突然変異I253A、H310A及びH435Aを、他方の重鎖Fc領域における突然変異H310A、H433A及びY436Aと組み合わせることにより、一方で、FcRnとは結合しない(両セットの突然変異は、ヒトFcRnに関して影響しない(silent))が、ブドウ球菌プロテインAとの結合は維持している(突然変異I253A、H310A及びH435Aを伴う重鎖Fc領域は、FcRnと結合せず、ブドウ球菌プロテインAとも結合しないが、突然変異H310A、H433A及びY436Aを伴う重鎖Fc領域は、FcRnとは結合しないが、ブドウ球菌プロテインAとは依然として結合する)ヘテロ二量体Fc領を得ることができる。よって、ホモ二量体ホール-ホール副生物はもはやブドウ球菌プロテインAとは結合しないので、これを標準的なプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて除去することができる。よって、ノブズ−イントゥ−ホールズアプローチを、ホール鎖中の突然変異I253A、H310A及びH435A並びにノブ鎖中の突然変異H310A、H433A及びY436Aと組み合わせることにより、ホモ二量体ホール−ホール副生物からのヘテロ二量体ノブズ−イントゥ−ホールズ生成物の精製/分離を促進することができる。
【0185】
一つの態様において、本発明は、一部において、FcRn−結合を有さない硝子体内適用用抗体は有益であり、それは、これらの抗体は、血液−眼関門を越えることができ、眼内において実質的に延長又は短縮された半減期を有さず、また血液循環から迅速に除去され、そのため眼外において全く、又は極めて限られた全身性副作用しかもたらさないことによるとの発見に基づくものである。本発明の抗体は、例えば、眼血管疾患の診断又は処置に有用である。
【0186】
本発明は、少なくとも一部において、Fc領域の各々のFc領域ポリペプチド内の種々の突然変異を用いることにより、例えば二重特異性抗体のような、テーラーメイドのFcRn−結合を有するヘテロ二量体分子を提供でき、そしてそのことにより、テーラーメイドの全身半減期を有する抗体を提供し得るとの発見に基づくものである。
【0187】
突然変異I253A、H310A、H435A、又はL251D、L314D、L432D、又はL251S、L314S、L432Sの組み合わせは、プロテインAとの結合の消失をもたらすが、突然変異I253A、H310A、H435A、又はH310A、H433A、Y436A、又はL251D、L314D、L432Dの組み合わせは、ヒト新生児Fcレセプターとの結合の消失をもたらす。
【0188】
下記表は、相互作用に関与する、又は変化させて相互作用を改変したFc領域内のアミノ酸残基の例示的な概観を示す。
【0189】
【表3】
【0190】
本明細書において報告される改変は、ヒトFcRnのような1種以上のFcレセプターについての結合特異性を変化させる。同時に、ヒトFcRnとの結合を変化させる突然変異のいくつかは、ブドウ球菌プロテインAとの結合を変化させない。
【0191】
一つの実施態様において、本明細書において報告される突然変異の組み合わせは、二量体ポリペプチドの血清半減期を、この突然変異の組み合わせを欠く対応する二量体ポリペプチドに比して変化させるか、又は実質的に変化させる。一つの実施態様において、前記突然変異の組み合わせは、前記二量体ポリペプチドのブドウ球菌プロテインAとの結合を、この突然変異の組み合わせを欠く対応する二量体ポリペプチドに比して、更に変化させ、又は実質的に変化させることはない。
【0192】
A.新生児Fc−レセプター(FcRn)
新生児Fc−レセプター(FcRn)は、インビボにおけるIgGクラスの抗体の代謝運命に関して重要である。FcRnは、野生型IgGをリソゾーム分解経路から救出するように機能し、クリアランスの減少と半減期の延長をもたらす。これは、2種のポリペプチド:50kDaのクラスI主要組織適合遺伝子複合体様タンパク質(α−FcRn)及び15kDaのβ2−ミクログロブリン(β2m)からなるヘテロ二量体タンパク質である。FcRnは、クラスIgGの抗体のFc領域のCH2−CH3部と高い親和性をもって結合する。クラスIgGの抗体とFcRnの間の相互作用はpH依存性であり、1:2の化学量論において生じる、即ち、1個のIgG抗体分子は、その2本の重鎖Fc領域ポリペプチドを介して、2個のFcRn分子と相互作用することができる(例えば、Huber, A.H., et al., J. Mol. Biol. 230 (1993) 1077-1083を参照)。
【0193】
よって、IgGのインビトロFcRn結合特性は、その血液循環中でのインビボ薬物動力学的特性を示唆するものである。
【0194】
FcRnとIgGクラスの抗体のFc領域の間の相互作用には、重鎖CH2及びCH3ドメインの種々のアミノ酸残基が関与している。FcRnと相互作用するアミノ酸残基は、およそEU位置243とEU位置261の間、およそEU位置275とEU位置293の間、およそEU位置302とEU位置319の間、およそEU位置336とEU位置348の間、およそEU位置367とEU位置393の間、EU位置408及びおよそEU位置424とEU位置440の間に位置している。更に具体的には、Fc領域とFcRnの間の相互作用には、KabatのEUナンバリングによる次のアミノ酸残基:F243、P244、P245P、K246、P247、K248、D249、T250、L251、M252、I253、S254、R255、T256、P257、E258、V259、T260、C261、F275、N276、W277、Y278、V279、D280、V282、E283、V284、H285、N286、A287、K288、T289、K290、P291、R292、E293、V302、V303、S304、V305、L306、T307、V308、L309、H310、Q311、D312、W313、L314、N315、G316、K317、E318、Y319、I336、S337、K338、A339、K340、G341、Q342、P343、R344、E345、P346、Q347、V348、C367、V369、F372、Y373、P374、S375、D376、I377、A378、V379、E380、W381、E382、S383、N384、G385、Q386、P387、E388、N389、Y391、T393、S408、S424、C425、S426、V427、M428、H429、E430、A431、L432、H433、N434、H435、Y436、T437、Q438、K439及びS440が関与している。
【0195】
部位特異的突然変異誘発研究により、IgGのFc領域における決定的な結合部位が、ヒスチジン310、ヒスチジン435及びイソロイシン253、更に、それらより程度は低いがヒスチジン433及びチロシン436であることが示されている(例えば、Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2819-2825; Raghavan, M., et al., Biochem. 34 (1995) 14649-14657; Medesan, C., et al., J Immunol. 158 (1997) 2211-2217を参照)。
【0196】
種々のアミノ酸残基:スレオニン250、メチオニン252、セリン254、スレオニン256、スレオニン307、グルタミン酸380、メチオニン428、ヒスチジン433及びアスパラギン434において、IgGを突然変異させることにより、IgGのFcRnとの結合を増加させる方法が行われている(Kuo, T.T., et al., J. Clin. Immunol. 30 (2010) 777-789を参照)。
【0197】
ある場合には、血液循環中での半減期が短い抗体が望まれる。例えば、硝子体内適用用医薬品は、患者における眼内での半減期は長く、血液循環内での半減期は短いものであるべきである。そのような抗体はまた、疾患部位、例えば眼内における曝露の増加という利点を有する。
【0198】
FcRn結合に影響を及ぼす種々の突然変異及びそれに伴う血液循環中での半減期が知られている。マウスFc領域−マウスFcRn相互作用に対して決定的なFc領域残基が、部位特異的突然変異誘発により同定されている(例えば、Dall’Acqua, W.F., et al. J. Immunol 169 (2002) 5171-5180を参照)。残基I253、H310、H433、N434及びH435(KabatによるEUナンバリング)が、前記相互作用に関与している(Medesan, C., et al., Eur. J. Immunol. 26 (1996) 2533-2536; Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993-1002; Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 24 (1994) 542-548)。残基I253、H310及びH435が、ヒトFcのマウスFcRnとの前記相互作用に対して決定的であることが見出された(Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2819-2885)。タンパク質−タンパク質相互作用研究により、残基M252Y、S254T、T256EがFcRn結合を向上させると、Dall'Acquaらにより記載されている(Dall'Acqua, W.F., et al. J. Biol. Chem. 281 (2006) 23514-23524)。ヒトFc−ヒトFcRn複合体の研究により、残基I253、S254、H435及びY436が前記相互作用に対して決定的であることが示された(Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993-1002; Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604)。Yeung, Y.A., et al. (J. Immunol. 182 (2009) 7667-7671)には、残基248〜259、301〜317、376〜382及び424〜437の種々の突然変異体が報告及び調査されている。例示的な突然変異及びFcRn結合に対するそれらの影響を下記表に列挙する。
【0199】
【表4】
【0200】
一つのFc領域ポリペプチドにおける一方だけの一つの突然変異が、有意に結合を弱めるのに十分であることが見出された。Fc領域に突然変異がより多く導入されるほど、FcRnとの結合は弱くなる。しかし、一方だけの非対称突然変異は、FcRn結合を完全に阻害するには十分でない。FcRn結合を完全に阻害するには、両方の突然変異が必要である。
【0201】
FcRn結合に影響を及ぼすIgG1 Fc領域の対称操作の結果を下記表に示す(突然変異及びFcRn−アフィニティークロマトグラフィーカラム上での保持時間の整列)。
【0202】
【表5】
【0203】
3分間未満の保持時間は、結合なしに相当するが、これは物質が素通り画分(ボイドピーク)中に存在することによる。
【0204】
単独の突然変異H310Aは、何らかのFcRn結合を削除するのに最も影響しない対称突然変異である。
【0205】
対称単独突然変異I253A及びH435Aは、0.3〜0.4分間の相対的な保持時間の変化をもたらす。これは一般に、検出不可能な結合と認識される。
【0206】
単独突然変異Y436Aは、FcRnアフィニティーカラムに対し、検出可能な相互作用強度をもたらす。この理論にとらわれはしないが、この突然変異は、インビボのFcRn媒介半減期に、突然変異I253A、H310A及びH435Aの組み合わせ(IHH−AAA突然変異)のようなゼロ相互作用と区別し得る影響を及ぼし得る。
【0207】
対称改変抗HER2抗体について得られた結果を下記表に示す(参考としては、国際公開公報第2006/031370号を参照)。
【0208】
【表6】
【0209】
Fc領域における、FcRn結合に影響を及ぼす非対称突然変異導入の効果が、ノブズ−イントゥ−ホールズ技術を用いて組み立てられた二重特異性抗体について例示されている(例えば、米国特許第7695936号、米国公開公報第2003/0078385号を参照;「ホール鎖」突然変異:S354C/T366W、「ノブ鎖」突然変異:Y349C/T366S/L368A/Y407V)。非対称に導入された突然変異のFcRn結合に対する影響は、FcRnアフィニティークロマトグラフィー法を用いて容易に測定することができる(図9及び下記表を参照)。FcRnアフィニティーカラムからの溶出がより後である、即ち、FcRnアフィニティーカラム上での保持時間がより長い抗体は、インビボ半減期がより長く、その逆もあてはまる。
【0210】
【表7】
【0211】
Fc領域における、FcRn結合に影響を及ぼす非対称突然変異導入の効果が、非対称突然変異導入を可能にするためのノブズ−イントゥ−ホールズ技術を用いて組み立てられた単一特異性抗IGF−1R抗体について更に例示されている(例えば、米国特許第7695936号、米国公開公報第2003/0078385号を参照;「ホール鎖」突然変異:S354C/T366W、「ノブ鎖」突然変異:Y349C/T366S/L368A/Y407V)。非対称に導入された突然変異のFcRn結合に対する影響は、FcRnアフィニティークロマトグラフィー法を用いて容易に測定することができる(下記表を参照)。FcRnアフィニティーカラムからの溶出がより後である、即ち、FcRnアフィニティーカラム上での保持時間がより長い抗体は、インビボ半減期がより長く、その逆もあてはまる。
【0212】
【表8】
【0213】
非対称IHH−AAA及びLLL−DDD突然変異(LLL−DDD−突然変異=突然変異L251D、L314D及びL432Dの組み合わせ)は、対応する親又は野生型抗体よりも弱い結合を示す。
【0214】
非対称HHY−AAA突然変異(=突然変異H310A、H433A及びY436Aの組み合わせ)は、ヒトFcRnとはもはや結合しないが、プロテインAとの結合は維持されているFc領域をもたらす(図11、12、13及び14を参照)。
【0215】
Fc領域における、FcRn結合に影響を及ぼす非対称突然変異導入の効果が、非対称突然変異導入を可能にするためのノブズ−イントゥ−ホールズ技術を用いて組み立てられた単一特異性抗IGF−1R抗体、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体(VEGF/ANG2)及び両重鎖のC−末端との融合を伴う全長抗体(fusion)について更に例示されている(例えば、米国特許第7695936号、米国公開公報第2003/0078385号を参照;「ホール鎖」突然変異:S354C/T366W、「ノブ鎖」突然変異:Y349C/T366S/L368A/Y407V)。導入された突然変異のFcRn結合及びプロテインA結合に対する影響は、FcRnアフィニティークロマトグラフィー法、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー法及びSPRベースの方法を用いて容易に測定することができる(下記表を参照)。
【0216】
【表9】
【0217】
本明細書において報告される一つの態様は、本明細書において報告される変異体ヒトIgGクラスFc領域を含む抗体又はFc領域融合ポリペプチドである。
【0218】
本明細書において報告されるFc領域(二量体ポリペプチド)は、Fc領域融合ポリペプチド又は全長抗体に含まれている場合、その分子に前記特徴を与える。融合パートナーは、生物活性を有し、そのインビボ半減期が短縮又は延長され得る、即ち、そのインビボ半減期が明確に定義され、意図する用途のためにテーラーメイドされる、いかなる分子でもありうる。
【0219】
Fc領域融合ポリペプチドは、例えば、TNFR−Fc領域融合ポリペプチド(TNFR=ヒト腫瘍壊死因子レセプター)、又はIL−1R−Fc領域融合ポリペプチド(IL−1R=ヒトインターロイキン−1レセプター)、又はVEGFR−Fc領域融合ポリペプチド(VEGFR=ヒト血管内皮成長因子レセプター)、又はANG2R−Fc領域融合ポリペプチド(ANG2R=ヒトアンジオポエチン2レセプター)のように、例えば、本明細書において報告される変異体(ヒト)IgGクラスFc領域及びリガンドを初めとする標的と結合するレセプタータンパク質を含んでいてよい。
【0220】
Fc領域融合ポリペプチドは、例えば、本明細書において報告される変異体(ヒト)IgGクラスFc領域及び、例えば、抗体Fabフラグメント、scFvs(例えば、Nat. Biotechnol. 23 (2005) 1126-1136を参照)又はドメイン抗体(dAbs)(例えば、国際公開公報第2004/058821号、国際公開公報第2003/002609号を参照)といったものを初めとする、標的と結合する抗体フラグメントを含んでいてよい。
【0221】
Fc領域融合ポリペプチドは、例えば、本明細書において報告される変異体(ヒト)ヒトIgGクラスFc領域及びレセプターリガンド(天然に存在するもの又は人工のもののいずれも)を含んでいてよい。
【0222】
抗体、例えば全長抗体又はCrossMabsは、本明細書において報告される変異体(ヒト)ヒトIgGクラスFc領域を含むものであり得る。
【0223】
B.眼血管疾患
眼血管障害は、眼組織(網膜又は角膜など)の構造への、新たな血管の変化した又は調節されない増殖及び侵入により特徴付けられる、あらゆる病理学的状態である。
【0224】
一つの実施態様において、眼血管疾患は、以下からなる群より選択される:滲出型加齢黄斑変性症(滲出型AMD)、乾燥型加齢黄斑変性症(乾燥型AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)、増殖性糖尿病網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、血管炎(例えば網膜中心静脈閉塞症)、乳頭浮腫、網膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎、脈絡膜炎、多巣性脈絡膜炎、眼ヒストプラスマ、眼瞼炎、ドライアイ(シェーグレン病)及び他の眼疾患(眼疾患又は障害は、眼血管新生、血管漏出及び/又は網膜浮腫と関連するものである)。
【0225】
本明細書において報告される二量体ポリペプチドを含む抗体は、滲出型AMD、乾燥型AMD、CME、DME、NPDR、PDR、眼瞼炎、ドライアイ及びブドウ膜炎、一つの好ましい実施態様においては、滲出型AMD、乾燥型AMD、眼瞼炎、及びドライアイ、また、一つの好ましい実施態様においては、CME、DME、NPDR、及びPDR、また、一つの好ましい実施態様においては、眼瞼炎、及びドライアイ、特に、滲出型AMD及び乾燥型AMD、また、特に、滲出型AMDの防止及び処置において有用である。
【0226】
いくつかの実施態様において、眼血管疾患は、滲出型加齢黄斑変性症(滲出型AMD)、黄斑浮腫、網膜静脈閉塞、未熟児網膜症及び糖尿病性網膜症からなる群より選択される。
【0227】
角膜血管新生に関連する他の疾患には、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの過剰装着、アトピー性角膜炎、上輪部角角膜炎、翼状片角膜炎乾性角、シェーグレン病、酒さ性ざ瘡、フィレクテヌローシス、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状疱疹感染、原虫感染、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角質溶解、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発外傷、ウェゲナーサルコイドーシス、強膜炎、スティーブンジョンソン病、類天疱瘡放射状角膜切開及び角膜移植拒絶が含まれるが、これらに限定されない。
【0228】
網膜/脈絡膜新生血管形成に関連する疾患には、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頸動脈閉塞性疾患、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、網膜色素変性、網膜浮腫(黄斑浮腫を含む)、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎又は脈絡膜炎を起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、ベスト病、近視、視神経ピット、シュタルガルト病、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラズマ症、外傷、及びレーザー後合併症が含まれるが、これらに限定されない。
【0229】
他の疾患には、ルベオーシス(角の新生血管形成)に関連付けられる疾患及び線維血管組織又は繊維組織の異常増殖(増殖性硝子体網膜症の全ての形態を含む)により起こされる疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0230】
未熟児の網膜症(ROP)は、早期に生まれた乳児に影響する、眼の疾患である。それは、瘢痕及び網膜剥離をもたらしうる、網膜血管の無秩序な成長により起こされると考えられる。ROPは、軽度であり、自然発生的に消散しうるが、深刻な場合において失明に導きうる。そのようなものとして、全ての早産乳児には、ROPについてのリスクがあり、非常に低い出生体重は、追加のリスク因子である。酸素毒性及び相対低酸素症の両方が、ROPの発生に寄与しうる。
【0231】
黄斑変性症は、高齢者において主に見出される医学的状態であり、ここで、眼の内部裏打ちの中心(網膜の黄斑領域として公知である)が、菲薄化、萎縮、及び、一部の場合において、出血を被る。これは、中心視野の喪失を招きうるが、それは、細かい詳細を見る、読む、又は顔を認識することの不能を伴う。米国眼科学会に従い、それは、50歳を上回る人々での、今日の米国での中心視野喪失(失明)の主要な原因である。若年者に影響する一部の黄斑ジストロフィーは、時々、黄斑変性症と呼ばれているが、この用語は、一般的に、加齢性黄斑変性症(AMD又はARMD)を指す。
【0232】
加齢黄斑変性は、網膜色素上皮とその下の脈絡膜の間のドルーゼンと呼ばれる黄斑(詳細な中心視野を提供する網膜の中央領域で、中心窩と呼ばれる)における、特徴的な黄色沈着から始まる。これらの初期の変化(加齢性黄斑変性症とも呼ばれる)を伴う大半の人々が、良い視力を有する。ドルーゼンを伴う人々は、進み、進行性AMDを発生しうる。このリスクは、ドルーゼンが大きく、多数であり、黄斑下の色素性細胞層における乱れに関連付けられる場合、相当により高い。大きく、柔らかいドルーゼンは、上昇したコレステロール沈着に関連しており、コレステロール低下薬剤又はRheo手順に応答しうる。
【0233】
進行性AMDは、深刻な失明に関与し、乾燥型及び滲出型の2つの形態を有する。中央の地理的な萎縮は、進行性AMDの乾燥形態であり、網膜下の網膜色素上皮層への萎縮から生じ、それは、眼の中央部分において光受容体(桿体及び錐体)の喪失を通じて視力喪失を起こす。この状態についての利用可能な処置方法はないが、国立眼研究所その他により、高用量の酸化防止剤、ルテイン及びゼアキサンチンを伴うビタミンサプリメントが、乾燥黄斑変性の進行を遅らせ、一部の患者において、視力を改善することが実証されている。
【0234】
網膜色素変性症(RP)は、一群の眼の遺伝的状態である。RPについての症状の進行において、一般的に、トンネル視を数年又は数十年先行して夜盲が起こる。RPを伴う多くの人が、彼らの40代又は50代まで法定盲人とはならず、一部の視力を終生保持する。他は、一部の場合には小児期という早期に、RPから完全な盲目に行く。RPの進行は、各々の場合において異なる。RPは、遺伝性網膜ジストロフィーの型であり、網膜の光受容体(桿体及び錐体)又は網膜色素上皮(RPE)の異常が進行性の視力喪失を起こす、一群の遺伝性障害である。罹患した個人は、最初に、欠陥のある暗順応又は夜盲症(夜盲)を経験し、疾患の経過における後期に、周辺視野の減少(トンネル視として公知である)及び、時々、中心視野の喪失が続く。
【0235】
黄斑浮腫は、液体及びタンパク質の堆積物が眼の黄斑(網膜の黄色中央領域)の上下に集まると発生し、黄斑を厚くし、膨潤させる。この膨潤が、ヒトの中心視野を歪めうる。なぜなら、黄斑は、眼球の後ろの、網膜の中心近くにあるからである。この領域は、ヒトが、直接的に視線中にある形態、色及び詳細を見ることを可能にする、シャープで明確な中心視野を提供する緊密に詰められた錐体を保持する。嚢胞様黄斑浮腫は、嚢胞形成を含む黄斑浮腫の型である。
【0236】
C.ブドウ球菌プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いる抗体精製
一つの態様において、二量体ポリペプチドであって、
各々、N末端からC末端の方向に、1個以上のシステイン残基を含む、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部、免疫グロブリンCH2ドメイン及び免疫グロブリンCH3ドメインを含む第1のポリペプチド及び第2のポリペプチド
を含み、
i)前記第1及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び前記第2のポリペプチドは各々、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含むか、又は
iv)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
v)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
vi)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含む、
ポリペプチドが提供される。
【0237】
これらの二量体ポリペプチドは、突然変異のため、ヒトFcRnとは結合しないが、ブドウ球菌プロテインAとの結合は維持されているという特性を有する。
【0238】
よって、これらの抗体は、MabSelectSureのような、従来のプロテインAアフィニティー材料を用いることにより、精製する、即ち、望まない副生物から分離することができる。例えば、カッパサブクラスの軽鎖を含む抗体にしか使えないKappaSelectのような、高度に洗練されているが種が制限されたアフィニティー材料を用いる必要はない。加えて、軽鎖サブクラスの改変/交換がなされても、精製方法を導入(adopt)する必要はない(各々図11及び12を参照)。
【0239】
本明細書において報告される一つの態様は、本明細書において報告される二量体ポリペプチドを製造する方法であって、下記工程:
a)前記二量体ポリペプチドをコードする1種以上の核酸を含む哺乳類細胞を培養する工程、
b)前記二量体ポリペプチドを培養培地から回収する工程、及び
c)前記二量体ポリペプチドをプロテインAアフィニティークロマトグラフィーで精製して、前記二量体ポリペプチドを製造する工程
を含む方法である。
【0240】
本明細書において報告される一つの態様は、ホモ二量体ポリペプチドからヘテロ二量体ポリペプチドを分離するための、突然変異H310A、H433A及びY436Aの使用である。
【0241】
本明細書において報告される一つの態様は、ホモ二量体ポリペプチドからヘテロ二量体ポリペプチドを分離するための、突然変異L251D、L314D及びL432Dの使用である。
【0242】
本明細書において報告される一つの態様は、ホモ二量体ポリペプチドからヘテロ二量体ポリペプチドを分離するための、突然変異L251S、L314S及びL432S使用である。
【0243】
本明細書において報告される一つの態様は、第1のFc領域ポリペプチド内の突然変異I253A、H310A及びH435Aの、第2のFc領域ポリペプチド内の突然変異H310A、H433A及びY436Aと組み合わせての、前記第1及び第2のFc領域ポリペプチドを含むヘテロ二量体Fc領域を、ホモ二量体Fc領域から分離するための使用である。
【0244】
本明細書において報告される一つの態様は、第1のFc領域ポリペプチド内の突然変異I253A、H310A及びH435Aの、第2のFc領域ポリペプチド内の突然変異L251D、L314D及びL432Dと組み合わせての、前記第1及び第2のFc領域ポリペプチドを含むヘテロ二量体Fc領域を、ホモ二量体Fc領域から分離するための使用である。
【0245】
本明細書において報告される一つの態様は、第1のFc領域ポリペプチド内の突然変異I253A、H310A及びH435Aの、第2のFc領域ポリペプチド内の突然変異L251S、L314S及びL432Sと組み合わせての、前記第1及び第2のFc領域ポリペプチドを含むヘテロ二量体Fc領域を、ホモ二量体Fc領域から分離するための使用である。
【0246】
先の三態様の一つの実施態様において、前記第1のFc領域ポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wを更に含む。
【0247】
先の三態様の一つの実施態様において、前記第1のFc領域ポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wを更に含む。
【0248】
本明細書において報告される一つの態様は、二量体Fc領域ポリペプチドのプロテインAとの結合を増加させるための、突然変異Y436Aの使用である。
【0249】
突然変異Y436Aを導入することにより、Fc領域のブドウ球菌プロテインA(SPA)との結合を増加させることができることが見出された。このことは、例えば、SPAとの結合を減少させる更なる突然変異(例えば、I253A及びH310A、又はH310A及びH435Aのような)を導入する場合に有利である(図15を参照)。
【0250】
本明細書において報告される一つの態様は、二量体ポリペプチドであって、
各々、N末端からC末端の方向に、1個以上のシステイン残基を含む、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部、免疫グロブリンCH2ドメイン及び免疫グロブリンCH3ドメインを含む第1のポリペプチド及び第2のポリペプチド
を含み、
前記第1の、前記第2の又は前記第1及び前記第2のポリペプチドは、突然変異Y436A(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)を含む、
ポリペプチドである。
【0251】
一つの実施態様において、前記第1及び前記第2のポリペプチドが、突然変異Y436Aを含む。
【0252】
本明細書において報告される一つの態様は、単離/精製の容易さを提供する二重特異性抗体であって、別個に改変された免疫グロブリン重鎖Fc領域を含み、前記改変の少なくとも1つは、i)前記二重特異性抗体の、プロテインAに関する別個の親和性、及びii)前記二重特異性抗体の、ヒトFcRnに関する別個の親和性をもたらし、かつ前記二重特異性抗体は、プロテインAに関する親和性に基づき、破壊された細胞、培地又は抗体の混合物より単離可能である、二重特異性抗体である。
【0253】
一つの実施態様において、前記二重特異性抗体は、pH4.0超のpH値において溶出する。
【0254】
一つの実施態様において、二重特異性抗体を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー及びpH勾配又はpH段階を用いて単離し、前記pH勾配又はpH段階は、塩の添加を含む。一つの具体的な実施態様において、塩は、約0.5M〜約1Mの濃度で存在する。一つの実施態様において、塩は、リチウム、ナトリウム及びカリウムの酢酸塩;ナトリウム及びカリウムの炭酸水素塩;リチウム、ナトリウム及びカリウムの炭酸塩;リチウム、ナトリウム、カリウム及びマグネシウムの塩化物;ナトリウム及びカリウムのフッ化物;ナトリウム、カリウム及びカルシウムの硝酸塩;ナトリウム及びカリウムのリン酸塩;並びにカルシウム及びマグネシウムの硫酸塩からなる群より選択される。一つの実施態様において、塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物塩である。一つの好ましい実施態様において、塩は塩化ナトリウムである。
【0255】
一つの態様において、前記二量体ポリペプチドは、ヘテロ二量体ポリペプチドを形成するように、本明細書において報告される改変された第1のポリペプチド及びプロテインA及びFcRn結合に関して改変されていない第2のポリペプチドを含み、前記別個の改変は、前記別個の改変のない対応する二量体ポリペプチドに比して、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.3又は1.4pH単位だけ高いpHでプロテインAアフィニティー材料から溶出する二量体ポリペプチドをもたらす。一つの実施態様において、前記別個に改変された二量体ポリペプチドは、pH4以上において溶出し、前記改変されていない二量体ポリペプチドは、pH3.5以下において溶出する。一つの実施態様において、前記別個に改変された二量体ポリペプチドは、約pH4において溶出し、前記改変されていない二量体ポリペプチドは、約pH2.8〜3.5、2.8〜3.2又は2.8〜3において溶出する。これらの実施態様において、両方のポリペプチドにおいて、「改変されていない」は、改変H310A、H433A及びY436A(Kabat EUインデックスナンバリングシステム)がないことを指す。
【0256】
クロマトグラフィーの実行について(For chromatographic runs)、特にヒトIgG1サブクラス由来の場合、0.5M〜1Mの塩(例えば、NaCl)の添加が、ホモ二量体ポリペプチドとヘテロ二量体ポリペプチドの分離を改善する場合がある。pH値を増加させるような溶出溶液への塩の添加は、例えば、段階的pH勾配が2つの種をうまく分離するように、溶出のためのpH範囲を拡大する可能性がある。
【0257】
従って、一つの実施態様において、一方の鎖が、本明細書において報告される突然変異を含む、ヘテロ二量体IgGFc領域を含む二重特異性抗体を分離する方法は、塩の存在下にpH勾配を採用する工程を含む。一つの実施態様において、塩は、IgGFc領域ホモ二量体とIgGFc領域ヘテロ二量体の間の、プロテインAクロマトグラフィー材料からの溶出のpH差を最大化するのに十分な濃度で存在する。一つの実施態様において、塩は、約0.5M〜約1Mの濃度で存在する。一つの実施態様において、塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属及びハロゲンの塩である。一つの実施態様において、塩は、例えば、NaCl、KCl、LiCl、CaCl又はMgClのような、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物塩である。一つの実施態様において、pH勾配は、約pH4〜約pH5である。一つの実施態様において、勾配は直線勾配である。一つの実施態様において、pH勾配は段階的勾配である。一つの実施態様において、前記方法は、約pH4の溶液を、平衡化したプロテインAアフィニティーカラムにかける工程を含む。一つの実施態様において、本明細書において報告される改変に関するヘテロ二量体IgGFc領域を含む二重特異性抗体は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー材料から、ヘテロ二量体でない二重特異性抗体を実質的に含まない一つ以上の画分に溶出する。
【0258】
本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、リコンビナント手段により製造される。よって、本発明の一つの態様は、本明細書において報告される二量体ポリペプチドをコードする核酸であり、更なる態様は、本明細書において報告される二量体ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞である。リコンビナント製造の方法は、技術水準において広く知られており、原核及び真核細胞におけるタンパク(質)発現と、それに続く二量体ポリペプチドの単離及び通常は薬学的に許容し得る純度への精製を含む。宿主細胞における前記のような二量体ポリペプチドの発現のためには、第1及び第2のポリペプチドを各々コードする核酸を、標準的方法により発現ベクターに挿入する。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、PER.C6細胞、酵母又はE.coli細胞のような、適切な原核又は真核宿主細胞において行い、前記細胞(培養上清又は溶解後の細胞)から二量体ポリペプチドを回収する。
【0259】
抗体のリコンビナント製造の一般法は、技術水準において周知であり、例えば、総説Makrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse, S., et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-160; Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880に記載されている。
【0260】
従って、本明細書において報告される一つの態様は、本明細書において報告される二量体ポリペプチドを製造する方法であって、
a)本明細書において報告される二量体ポリペプチドをコードする核酸分子を含む1種以上のベクターで、宿主細胞を形質転換する工程、
b)前記宿主細胞を、前記二量体ポリペプチドの製造を可能にする条件下で培養する工程、及び
c)前記二量体ポリペプチドを培養物から回収して、前記二量体ポリペプチドを製造する工程
を含む方法である。
【0261】
一つの実施態様において、c)の前記回収工程は、免疫グロブリンFc領域に特異的な捕捉試薬の使用を含む。一つの実施態様において、このFc領域特異的な捕捉試薬は、結合→溶出モード(bind-and-elute-mode)で用いる。そのようなFc領域特異的な捕捉試薬の例は、例えば、大スケールでの高い流速及び低い背圧を可能にする高度に硬質のアガロースベース母材を基にした、ブドウ球菌プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーカラムである。それらは、二量体ポリペプチド、即ちそのFc領域と結合するリガンドを特徴とする。リガンドは、それを標的分子との結合に容易に使用できるようにするための長い親水性スペーサーアームを介して母材に取り付けられている。
【0262】
本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーといった、従来の免疫グロブリン精製手順により、培養培地から適切に分離される。B細胞又はハイブリドーマ細胞が、二量体ポリペプチドをコードするDNA及びRNAの起源として役立つものであり得る。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、従来の手順を用いて容易に単離及び配列決定される。単離すれば、DNAは、発現ベクターに挿入でき、次いでこれをHEK293細胞、CHO細胞又はミエローマ細胞といった(このようにしなければ二量体ポリペプチドを産生しない)宿主細胞にトランスフェクションして、宿主細胞におけるリコンビナントモノクローナル二量体ポリペプチドを合成する。
【0263】
抗体の精製は、細胞成分又は他の混入物、例えば他の細胞性核酸又はタンパク質を排除するために、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動その他当技術分野において周知のものを含む標準的な技術により行う(Ausubel, F., et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照)。種々の方法が十分に確立され、タンパク質精製に広範に使用されている。例えば、微生物タンパク質を用いたアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン交換(カルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)及び混合モード交換)、チオフィリック吸着(例えば、β−メルカプトエタノールその他のSHリガンドによるもの)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニル−セファロース、アザ−アレノフィリック樹脂又はm−アミノフェニルボロン酸によるもの)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Ni(II)及びCu(II)アフィニティー材料)、サイズ排除クロマトグラフィー及び電気泳動方法(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動のような)(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102)。
【0264】
本発明の一つの態様は、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は抗体を含む医薬処方物である。本発明の他の一つの態様は、医薬処方物の製造のための、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は抗体の使用である。本発明の更なる態様は、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は抗体を含む医薬処方物を製造する方法である。他の一つの態様において、本発明は、薬学的担体と共に処方された本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は抗体を含む処方物、例えば医薬処方物を提供する。
【0265】
本明細書において報告される処方物は、当技術分野において公知の種々の方法により投与することができる。当業者にはわかることであろうが、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変わる。本発明の化合物をある投与経路で投与するためには、前記化合物を、その不活性化を防ぐ物質でコーティングする、又はその物質と同時に投与することが必要な可能性がある。例えば、前記化合物を、適切な担体中,例えば、リポソーム又は希釈剤中で被験者に投与してもよい。薬学的に許容し得る希釈剤には、食塩水及び水性緩衝溶液が含まれる。薬学的担体には、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質用のそのような媒体及び試薬の使用は、当技術分野において公知である。
【0266】
送達の多くの可能な様式を使用することができ、これには眼内適用又は局所適用が含まれるが、これらに限定されない。一つの実施態様において、適用は眼内であり、これには結膜下注射、前房内注射、側頭縁(termporai limbus)を介した前房への注射、基質内注射、角膜内注射、網膜下注射、眼房水注射、テノン嚢下注射又は持続送達装置、硝子体内注射(例えば、前、中又は後硝子体内注射)が含まれるが、これらに限定されない。一実施態様において、適用は局所であり、これには角膜への点眼が含まれるが、これに限定されない。
【0267】
一つの実施態様において、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は本明細書において報告される医薬処方物は、硝子体内適用を介して、例えば、硝子体内注射を介して投与される。これは、当技術分野において公知の標準的な手順に従って実施することができる(例えば、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116 (2006) 3266-3276; Russelakis-Carneiro et al., Neuropathol. Appl. Neurobiol. 25 (1999) 196-206;及びWray et al., Arch. Neurol. 33 (1976) 183-185を参照)。
【0268】
いくつかの実施態様において、本発明の治療的キットは、本明細書に記載の医薬処方物中に存在する1つ以上の投与量の本明細書において報告される二量体ポリペプチド、前記医薬処方物の硝子体内注射に適する装置、並びに適した被験者を詳述する指示書及び注射を行うためのプロトコールを含みうる。これらの実施態様において、前記処方物は、典型的には、処置を必要とする被験者に、硝子体内注射を介して投与される。これは、当技術分野において公知の標準的な手順に従って実施することができる。例えば、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116 (2006) 3266-3276; Russelakis-Carneiro et al., Neuropathol. Appl. Neurobiol. 25 (1999) 196-206;及びWray et al., Arch. Neurol. 33 (1976) 183-185を参照。
【0269】
前記処方物はまた、アジュバント(例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤など)を含んでもよい。微生物の存在の防止は、滅菌手順(上記)により、並びに、種々の抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等)の包含により、確実にされうる。また、等張剤(例えば糖、塩化ナトリウム等)を前記処方物中に含むことが望ましいであろう。また、注射可能な医薬形態の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど)の包含によりもたらされうる。
【0270】
選択された投与経路にかかわらず、本明細書において報告される化合物(それは、適した水和形態において使用してもよい)及び/又は本明細書において報告される医薬処方物は、当業者に公知の従来の方法により、薬学的に許容し得る投与形態に処方される。
【0271】
本明細書において報告される医薬処方物における有効成分の実際の投与量レベルを変動させてもよく、患者にとって毒性となることを伴わずに、特定の患者、組成及び投与様式についての所望の治療的応答を達成するために効果的である有効成分の量を得るようにする。選択される投与量レベルは、種々の薬物動態学的因子(用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いられている特定の化合物の排出速度、処置の持続期間、他の薬物、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される化合物及び/又は材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態及び以前の病歴、並びに医学分野において周知の同様の因子を含む)に依存しうる。
【0272】
処方物は、滅菌であり、また処方物がシリンジにより送達可能な程度に流動性でなければならない。水に加えて、担体は、好ましい実施態様において、等張緩衝生理食塩水である。
【0273】
適切な流動性は、例えば、コーティング(レシチンのような)の使用により、分散液の場合は、要求される粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール(マンニトール又はソルビトールのような)及び塩化ナトリウムなどを組成物中に含むことが好ましい。
【0274】
処方物は、結膜下投与のための活性薬剤を含む眼科用デポー処方物を含むことができる。眼科用デポー処方物は、本質的に純粋な活性薬剤、例えば、本明細書において報告される二量体ポリペプチドの微粒子を含む。本明細書において報告される二量体ポリペプチドを含む微粒子は、生体適合性の薬学的に許容し得るポリマー又は脂質封入薬剤中に埋め込むことができる。デポー処方物を、長期間にわたり、実質的に全ての活性物質の全てを放出するように適応してもよい。ポリマー又は脂質マトリクスは、存在する場合、全て又は実質的に全ての活性薬剤の放出後に、十分に分解され、投与部位から輸送されるように適応してもよい。デポー処方物は、薬学的に許容し得るポリマー及び溶解又は分散した活性薬剤を含む、液体製剤でありうる。注射時、ポリマーは、例えば、ゲル化又は沈殿により、注射部位でデポーを形成する。
【0275】
本発明の他の一つの態様は、眼血管疾患の処置に使用するための、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は抗体である。
【0276】
本発明の一つの実施態様は、眼血管疾患の処置に使用するための、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は抗体である。
【0277】
本発明の他の一つの態様は、眼血管疾患の処置に使用するための医薬処方物である。
【0278】
本発明の他の一つの態様は、眼血管疾患処置用の医薬を製造するための、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は抗体の使用である。
【0279】
本発明の他の一つの態様は、眼血管疾患の患者の処置方法であって、そのような処置を必要とする患者に対し、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は抗体を投与することによる方法である。
【0280】
本明細書で使用する用語「を含む」は、用語「からなる」を包含することをここに明示する。よって、用語「を含む」を含有する全ての態様及び実施態様は、用語「からなる」を用いて同様に開示される。
【0281】
D.改変
更なる一つの態様において、前記実施態様のいずれかによる二量体ポリペプチドは、下記セクション1−6に記載されているようにして、単独又は組み合わせで、あらゆる特徴を組み入れ得る:
【0282】
1.抗体親和性
一つの実施態様においては、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて、Kdを測定する。例えば、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(GE Healthcare Inc., Piscataway, NJ)を用い、約10応答単位(RU)で結合パートナーが固定されたCM5チップにより25℃でアッセイを行う。一つの実施態様においては、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, GE Healthcare Inc.)を、供給者の指示に従い、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。結合パートナーを10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(約0.2μM)に希釈してから、5μl/分の流速で注入して、およそ10応答単位(RU)の結合パートナーのカップリングを達成する。結合パートナーの注入に続いて、未反応基を保護するために1Mエタノールアミンを注入する。速度論的測定のために、二量体ポリペプチド含有融合ポリペプチド又は抗体の2倍段階希釈液(0.78nM〜500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)中、25℃、およそ25μL/分の流速で注入する。単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェア・バージョン3.2)を用い、会合と解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって、会合速度(kon)及び解離速度(koff)を計算する。平衡解離定数(Kd)を、比koff/konとして計算する(例えば、Chen, Y. et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 865-881参照)。上記の表面プラズモン共鳴アッセイで、オン速度が10M−1s−1を上回る場合は、抗原の濃度を増加させつつ、ストップフロー付き分光測光器(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光測光器(ThermoSpectronic)のような分光計で測定される、PBS(pH7.2)中、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の、25℃における蛍光発光強度(励起=295nm;蛍光=340nm、帯域幅16nm)の増減を測定する蛍光消光技術を使って、オン速度を決定することができる。
【0283】
2.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある実施態様では、本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、キメラ抗体である。あるキメラ抗体が、例えば、米国特許第4816567号及びMorrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855)に記載されている。一例では、キメラ抗体が、非ヒト可変領域(例えばマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルのような非ヒト霊長類由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体が、クラス又はサブクラスが親抗体のものから変化している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合フラグメントが含まれる。
【0284】
ある実施態様では、キメラ抗体がヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化するのは、典型的には、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保ったまま、ヒトに対する免疫原性を低減するためである。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、場合により、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基が、例えば抗体の特異性又は親和性を復活させ又は改良するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0285】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法については、例えばAlmagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633に総説があり、例えば、Riechmann, I., et al., Nature 332 (1988) 323-329; Queen, C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 10029-10033; 米国特許第5821337号、米国特許第7527791号、米国特許第6982321号及び米国特許第7087409号; Kashmiri, S.V., et al., Methods 36 (2005) 25-34(特異性決定領域(SDR)移植につき記載); Padlan, E.A., Mol. Immunol. 28 (1991) 489-498 (「リサーフェイシング(resurfacing)」につき記載); Dall’Acqua, W.F. et al., Methods 36 (2005) 43-60 (「FRシャフリング」につき記載); Osbourn, J. et al., Methods 36 (2005) 61-68; and Klimka, A. et al., Br. J. Cancer 83 (2000) 252-260 (FRシャフリングのための「誘導選択(guided selection)」アプローチにつき記載)に、更に説明されている。
【0286】
ヒト化に使用することができるヒトフレームワーク領域には、次に挙げるものがあるが、それらに限定されない:「ベストフィット(best-fit)」法を用いて選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims, M.J., et al., J. Immunol. 151 (1993) 2296-2308を参照);軽鎖又は重鎖可変領域の特定サブグループのヒト抗体のコンセンサス配列由来のフレームワーク領域(例えば、Carter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289及びPresta, L.G., et al., J. Immunol. 151 (1993) 2623-2632を参照);ヒト成熟(体細胞性変異型)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633を参照);及びスクリーニングFRライブラリー由来のフレームワーク領域(例えば、Baca, M. et al., J. Biol. Chem. 272 (1997) 10678-10684 and Rosok, M.J. et al., J. Biol. Chem. 271 (19969 22611-22618を参照)。
【0287】
3.ヒト抗体
ある実施態様では、本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野において公知の様々な技術を用いて製造できる。ヒト抗体は、van Dijk, M.A. and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Pharmacol. 5 (2001) 368-374及びLonberg, N., Curr. Opin. Immunol. 20 (2008) 450-459に全般的に記載されている。
【0288】
ヒト抗体は、抗原接種に反応して、インタクトなヒト抗体、又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することにより調製してもよい。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わるか、染色体外に存在するか、又は動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含む。このようなトランスジェニックマウスにおいては、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、概して不活化されてきた。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の概説については、Lonberg, N., Nat. Biotech. 23 (2005) 1117-1125を参照。また、例えば、米国特許第6075181号及び米国特許第6150584号(XENOMOUSE(商標)技術を記載);米国特許第5770429号(HUMAB(登録商標)技術を記載);米国特許第7041870号(K-M MOUSE(登録商標)技術を記載)並びに米国公開公報第2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載)も参照。このような動物によって生成されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域を、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせて、更に改変してもよい。
【0289】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法により製造することもできる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株が記載されている(例えば、Kozbor, D., J. Immunol.133 (1984) 3001-3005; Brodeur, B.R., et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York (1987), pp. 51-63;及びBoerner, P., et al., J. Immunol. 147 (1991) 86-95を参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li, J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103 (2006) 3557-3562に記載されている。更なる方法には、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)及びNi, J., Xiandai Mianyixue 26 (2006) 265-268(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載)に記載されているものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers, H.P. and Brandlein, S., Histology and Histopathology 20 (2005) 927-937及びVollmers, H.P. and Brandlein, S., Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27 (2005) 185-191に記載されている。
【0290】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージ提示ライブラリーより選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。その後、このような可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと組み合わせてもよい。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択する技術を以下に記載する。
【0291】
4.ライブラリー由来抗体
特定の実施態様において、本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、ライブラリー由来抗体である。ライブラリー由来抗体は、コンビナトリアルライブラリーを所望の活性を有する抗体についてスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージ提示ライブラリーを生成し、このようなライブラリーを、所望の結合特徴を有する抗体についてスクリーニングするための多種多様な方法が、当技術分野において公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboom, H.R. et al., Methods in Molecular Biology 178 (2001) 1-37において概説されており、また、例えばMcCafferty, J. et al., Nature 348 (1990) 552-554; Clackson, T. et al., Nature 352 (1991) 624-628; Marks, J.D. et al., J. Mol. Biol. 222 (1992) 581-597; Marks, J.D. and Bradbury, A., Methods in Molecular Biology 248 (2003) 161-175; Sidhu, S.S. et al., J. Mol. Biol. 338 (2004) 299-310; Lee, C.V. et al., J. Mol. Biol. 340 (2004) 1073-1093; Fellouse, F.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (2004) 12467-12472;及びLee, C.V. et al., J. Immunol. Methods 284 (2004) 119-132に更に記載されている。
【0292】
あるファージ提示法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリーにおいてランダムに組み換えられ、これをその後、Winter, G., et al., Ann. Rev. Immunol. 12 (1994) 433-455に記載されているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、抗体フラグメントを、一本鎖Fv(scFv)フラグメント又はFabフラグメントのいずれかとして提示する。免疫された供給源由来のライブラリーは、ハイブリドーマを構築することを必要とせずに、免疫原に対して親和性の高い抗体を提供する。或いは、Griffiths, A.D., et al., EMBO J. 12 (1993) 725-734に記載されるようにして、ナイーブレパートリーを(例えばヒトから)クローニングし、いかなる免疫付与も無しに、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対する、単一供給源の抗体を提供できる。最後に、Hoogenboom, H.R. and Winter, G., J. Mol. Biol. 227 (1992) 381-388に記載されるように、幹細胞由来の再構成されていないV遺伝子セグメントをクローニングして、高度可変CDR3領域をコードし、インビトロでの再構成を達成するランダム配列を含むPCRプライマーを使用することによって、ナイーブライブラリーを合成的に製造することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載している特許公報には、例えば、米国特許第5750373号、並びに米国公開公報第2005/0079574号、米国公開公報第2005/0119455号、米国公開公報第2005/0266000号、米国公開公報第2007/0117126号、米国公開公報第2007/0160598号、米国公開公報第2007/0237764号、米国公開公報第2007/0292936号及び米国公開公報第2009/0002360号が含まれる。
【0293】
本明細書において、ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体フラグメントは、ヒト抗体又はヒト抗体フラグメントとみなす。
【0294】
5.多重特異性抗体
ある実施態様では、本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある実施態様では、結合特異性の一方が第1の抗原に対するものであり、他方が別の第2の抗原に対するものである。ある実施態様では、二重特異性抗体が、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合しうる。二重特異性抗体はまた、前記抗原の少なくとも1つを発現する細胞に細胞毒性物質を局在化するためにも使用することができる。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体フラグメントとして調製することができる。
【0295】
多重特異性抗体を製造するための技術には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対のリコンビナント同時発現(Milstein, C. and Cuello, A.C., Nature 305 (1983) 537-540, 国際公開公報第93/08829号及びTraunecker, A., et al., EMBO J. 10 (1991) 3655-3659を参照)、及び「ノブ−イン−ホール」操作(例えば、米国特許第5731168号を参照)などが含まれるが、それらに限定されない。多重特異性抗体はまた、抗体Fc−ヘテロ二量体分子を作製するために静電的ステアリング効果(electrostatic steering effect)を操作すること(国際公開公報第2009/089004号);2つ以上の抗体又はフラグメントを架橋すること(例えば、米国特許第4676980号及びBrennan, M. et al., Science 229 (1985) 81-83を参照);ロイシンジッパーを使って二重特異性抗体を製造すること(例えば、Kostelny, S.A., et al., J. Immunol. 148 (1992) 1547-1553を参照);二重特異性抗体フラグメントを作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Holliger, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 6444-6448を参照);及び単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber, M et al., J. Immunol. 152 (1994) 5368-5374を参照);及び、例えばTutt, A. et al., J. Immunol. 147 (1991) 60-69に記載されているようにして、三重特異性抗体を調製することによって製造することもできる。
【0296】
「オクトパス抗体(Octopus antibody)」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する改変抗体(engineered antibody)も、これに含まれる(例えば、米国公開公報第2006/0025576号を参照)。
【0297】
本明細書における抗体又はフラグメントには、「二重作用性Fab(Dual Acting Fab)」又は「DAF」も含まれる(例えば、米国公開公報第2008/0069820号を参照)。
【0298】
本明細書における抗体又はフラグメントには、国際公開公報第2009/080251号、国際公開公報第2009/080252号、国際公開公報第2009/080253号、国際公開公報第2009/080254号、国際公開公報第2010/112193号、国際公開公報第2010/115589号、国際公開公報第2010/136172号、国際公開公報第2010/145792号及び国際公開公報第2010/145793号に記載の多重特異性抗体も含まれる。
【0299】
6.抗体変異体
ある実施態様では、本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、抗体である。更なる実施態様では、本明細書において提供する抗体のアミノ酸配列改変体が意図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入するか、又はペプチド合成によって調製し得る。そのような改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列内における残基の欠失、及び/又は挿入、及び/又は置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合)を有する限り、最終構築物に到達するために、欠失、挿入及び置換のいかなる組み合わせをも行うことができる。
【0300】
a)置換、挿入及び欠失変異体
ある実施態様では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異体を提供する。置換突然変異誘発のための関心ある部位には、HVR及びFRが含まれる。下記表では、保存的置換を「好ましい置換」という見出しの下に示す。より実質的な変化は、下記表の「例示的な置換」という見出しの下に示し、これはアミノ酸側鎖クラスに関連して以下に更に記載する通りである。アミノ酸置換を関心ある抗体に導入し、生成物を所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、低減した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDCについて、スクリーニングすることができる。
【0301】
【表10】
【0302】
アミノ酸は、側鎖の共通する特性に従って分類することができる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0303】
非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0304】
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる研究のために選択される得られた変異体は、ある生物学的特性(例えば、増加した親和性、低減した免疫原性)において、親抗体に比して改変(例えば、改善)されているか、及び/又は、親抗体のある生物学的特性が実質的に保持されている。例示的な置換型改変体は、例えば、本明細書に記載するようなファージ提示に基づく親和性成熟技術を用いて簡便に生成され得る親和性成熟抗体である。簡単に言うと、1つ以上のHVR残基を突然変異させ、ファージ上で変異体抗体を提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0305】
変化(例えば置換)を、例えば抗体親和性を改善するために、HVRにおいて起こさせてもよい。そのような変化を、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟過程の間に高頻度に突然変異を起こすコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, P.S., Methods Mol. Biol. 207 (2008) 179-196を参照)及び/又は抗原と接触する残基において起こさせてもよく、得られた変異体VH又はVLを結合親和性について試験する。二次ライブラリーを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom, H.R. et al. in Methods in Molecular Biology 178 (2002) 1-37に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施態様では、多種多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング又はオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択された可変遺伝子に多様性を導入する。次いで、二次ライブラリーを作製する。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有するあらゆる抗体変異体を同定する。多様性を導入するための別の方法は、数個のHVR残基(例えば、一度に4〜6残基)をランダム化するHVR特異的なアプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデル化を用いて具体的に同定され得る。特に、CDR−H3及びCDR−L3は標的とされることが多い。
【0306】
ある実施態様では、置換、挿入又は欠失が、1つ以上のHVR内で生じてもよい(そのような変更が、抗体が抗原に結合する能力を実質的に低減させない範囲で)。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的変化(例えば、本明細書に規定する保存的置換)を、HVR内で起こさせてもよい。そのような変化は、例えば、HVR内の、抗原接触残基外であってもよい。先に規定した変異体VH及びVL配列のある実施態様では、各HVRは変化していないか、1つ以下、2つ以下又は3つ以下のアミノ酸置換しか含まない。
【0307】
突然変異誘発のための標的とし得る抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham, B.C. and Wells, J.A., Science 244 (1989) 1081-1085に記載されるように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基又は一群の標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGluのような荷電残基)を同定し、それを中性又は負電荷を持つアミノ酸(例えばアラニン又はポリアラニン)で置換して、抗体の、抗原との相互作用が影響を受けるか否かを決定する。最初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置に、更なる置換を導入してもよい。或いは、又は更に、抗体と抗原の間の接触点を同定するために、抗原−抗体複合体の結晶構造を用いることができる。このような接触残基及びその隣接残基を、置換の候補として標的にしても、排除してもよい。変異体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含むか否かを決定してもよい。
【0308】
アミノ酸配列挿入には、1残基から、100残基又はそれ以上を含有するポリペプチドまでに及ぶ長さのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合も、単一又は複数アミノ酸残基の配列内挿入も含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体のN末端又はC末端への、酵素(例えばADEPTの場合)、又は抗体の血清中半減期を増加させるポリペプチドの融合が含まれる。
【0309】
b)グリコシル化変異体
ある実施態様では、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるために、本明細書に規定する抗体を変化させる。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作出又は除去されるようにアミノ酸配列を変化させることによって、簡便に達成することができる。
【0310】
抗体がFc領域を含む場合、そこに取り付けられる糖質を変化させてもよい。哺乳類細胞によって産生されるネイティブ抗体は、典型的には、分岐したバイアンテナ型オリゴ糖を含み、これは一般的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって取り付けられる。例えば、Wright, A. and Morrison, S.L., TIBTECH 15 (1997) 26-32を参照。オリゴ糖は、さまざまな糖質、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、並びにバイアンテナ型オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに取り付けられたフコースを含みうる。いくつかの実施態様では、ある改良された特性を有する抗体変異体を作出するために、本発明の抗体中のオリゴ糖の改変を行ってもよい。
【0311】
一つの実施態様においては、Fc領域に(直接又は間接的に)取り付けられたフコースを欠く糖質構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%又は20%〜40%であってよい。フコースの量は、例えば国際公開公報第2008/077546号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に取り付けられた全ての糖構造(例えば複合型、混成型及び高マンノース型構造)の合計に比しての、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEUナンバリング)に位置するアスパラギン残基を指すが、抗体における軽微な配列変異のため、Asn297は、297位の上流側又は下流側約±3アミノ酸、即ち294位と300位の間に位置する場合もありうる。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有しうる。例えば、米国公開公報第2003/0157108号;米国公開公報第2004/0093621号を参照。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例には、米国公開公報第2003/0157108号;国際公開公報第2000/61739号;国際公開公報第2001/29246号;米国公開公報第2003/0115614号;米国公開公報第2002/0164328号;米国公開公報第2004/0093621号;米国公開公報第2004/0132140号;米国公開公報第2004/0110704号;米国公開公報第2004/0110282号;米国公開公報第2004/0109865号;国際公開公報第2003/085119号;国際公開公報第2003/084570号;国際公開公報第2005/035586号;国際公開公報第2005/035778号;国際公開公報第2005/053742号;国際公開公報第2002/031140号;Okazaki, A. et al., J. Mol. Biol. 336 (2004) 1239-1249;Yamane-Ohnuki, N. et al., Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622が含まれる。脱フコシル化抗体を産生する能力を有する細胞株の例には、タンパク質フコシル化欠損性のLec13 CHO細胞(Ripka, J., et al., Arch. Biochem. Biophys. 249 (1986) 533-545;米国公開公報第2003/0157108号;及び国際公開公報第2004/056312号、特に実施例11)及び、α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞のようなノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki, N., et al., Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622;Kanda, Y., et al., Biotechnol. Bioeng. 94 (2006) 680-688;及び国際公開公報第2003/085107号を参照)が含まれる。
【0312】
例えば、抗体のFc領域に取り付けられたバイアンテナ型オリゴ糖がGlcNAcによってバイセクト(bisect)されている、バイセクト型(bisected)オリゴ糖を有する抗体変異体が、更に提供される。そのような抗体変異体は、低減したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有しうる。そのような抗体変異体の例は、例えば、国際公開公報第2003/011878号;米国特許第6602684号;及び米国公開公報第2005/0123546号に記載されている。Fc領域に取り付けられたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有しうる。そのような抗体変異体は、例えば、国際公開公報第1997/30087号;国際公開公報第1998/58964号;及び国際公開公報第1999/22764号に記載されている。
【0313】
c)Fc領域変異体
ある実施態様では、本明細書において報告される二量体ポリペプチドに1つ以上の更なるアミノ酸改変を導入することにより、Fc領域変異体を生成させてもよい。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば置換/突然変異)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4Fc領域)を含みうる。
【0314】
ある実施態様では、本発明では、全部ではなく一部のエフェクター機能を有する二量体ポリペプチドが意図される。これは、その二量体ポリペプチドを、インビボでの二量体ポリペプチドの半減期は重要であるが、あるエフェクター機能(CDC及びADCCのような)は不必要又は有害であるような用途のための望ましい候補にする。CDC及び/又はADCC活性の低減/欠乏を確認するために、インビトロ及び/又はインビボ細胞毒性アッセイを行うことができる。例えば、二量体ポリペプチド抗体がFcγR結合を欠く(それゆえにおそらくADCC活性を欠く)が、FcRn結合能は保持していることを保証するために、Fcレセプター(FcR)結合アッセイを行うことができる。ADCCを媒介するための主要細胞であるNK細胞が、FcγRIIIだけを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492の464頁の表3に要約されている。関心ある分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5500362号(例えば、Hellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83 (1986) 7059-7063;及びHellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 (1985) 1499-1502を参照);米国特許第5821337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361を参照)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA)及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega, Madison, WI)を参照)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。これに代えて、又はこれに加えて、関心ある分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 (1998) 652-656に開示されているような動物モデルで、評価することもできる。二量体ポリペプチドがC1qに結合することができず、従ってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合アッセイを行ってもよい。例えば、国際公開公報第2006/029879号及び国際公開公報第2005/100402号の、C1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro, H. et al., J. Immunol. Methods 202 (1996) 163-171; Cragg, M.S. et al., Blood 101 (2003) 1045-1052及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103 (2004) 2738-2743を参照)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定も、当技術分野において公知の方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova, S.B. et al., Int. Immunol. 18 (2006) 1759-1769を参照)。
【0315】
エフェクター機能が低減している二量体ポリペプチドには、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6737056号)。そのようなFc領域変異体には、265位、269位、270位、297位及び327位のアミノ酸のうち2つ以上に置換を有するFc領域(残基265及び297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc領域突然変異体(米国特許第7332581号)を含む)が含まれる。
【0316】
FcRとの結合が改善又は減縮されているある抗体変異体は記載されている(例えば、米国特許第6737056号;国際公開公報第2004/056312号及びShields, R.L. et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604を参照)。
【0317】
ある実施態様では、二量体ポリペプチド変異体が、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位及び/又は334位(残基のEUナンバリング)における置換を有するFc領域を含む。
【0318】
いくつかの実施態様では、例えば、米国特許第6194551号、国際公開公報第99/51642号及びIdusogie, E.E. et al., J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184に記載されているような、C1q結合及び/又は補体依存性細胞毒性(CDC)の変化(即ち、改善又は減縮)をもたらす変化を、Fc領域に起こさせる。
【0319】
半減期が増加し、胎児への母体IgGの移行の原因となる新生児Fcレセプター(FcRn)(Guyer, R.L. et al., J. Immunol. 117 (1976) 587-593及びKim, J.K. et al., J. Immunol. 24 (1994) 2429-2434)への結合が改善されている抗体が、米国公開公報第2005/0014934号に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つ以上の置換がそこに含まれているFc領域を含む。そのようなFc領域変異体には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の1つ以上に置換を有するもの、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが含まれる(米国特許第7371826号)。
【0320】
Fc領域変異体の他の例に関しては、Duncan, A.R. and Winter, G., Nature 322 (1988) 738-740;米国特許第5648260号;米国特許第5624821号;及び国際公開公報第94/29351号も参照。
【0321】
d)システイン操作抗体変異体
ある実施態様では、例えば、「チオMAb(thioMAb)」と同様に、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作(cysteine engineered)二量体ポリペプチドを作出することが望ましい可能性がある。特定の実施態様では、置換残基が二量体ポリペプチドの接近可能部位に見いだされる。それらの残基をシステインで置換することにより、二量体ポリペプチドの接近可能部位に反応性のチオール基が置かれることになり、本明細書において更に説明するように、それを使って、二量体ポリペプチドを他の部分、例えば薬物部分又はリンカー−薬物部分にコンジュゲートすることで、イムノコンジュゲートを作出することができる。ある実施態様では、以下の残基のいずれか1つ以上をシステインで置換してよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作二量体ポリペプチドは、例えば、米国特許第7521541号に記載されているようにして生成させてよい。
【0322】
e)誘導体
ある実施態様では、本明細書において報告される二量体ポリペプチドを、当技術分野において公知であり、容易に入手することができる追加の非タンパク質部分を含有するように、更に改変してよい。二量体ポリペプチドの誘導体化に適した部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、それらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれも)、及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(propropylene glycol)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド(prolypropylene oxide)/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール及びそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性ゆえに、製造時に有利でありうる。ポリマーは任意の分子量であってよく、分岐型であっても非分岐型であってもよい。二量体ポリペプチドに取り付けられるポリマーの数はさまざまであってよく、2つ以上のポリマーが取り付けられる場合、それらは同じ分子又は異なる分子であることができる。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、例えば、改善しようとする二量体ポリペプチドの特定の特性又は機能、二量体ポリペプチド誘導体が所定の条件下で治療に使用されるか否かを初めとする考慮事項(これらに限定されない)に基づいて決定することができる。
【0323】
もう一つの実施態様において、本明細書において報告される二量体ポリペプチドと、放射線への曝露によって選択的に加熱し得る非タンパク質部分のコンジュゲートが提供される。一つの実施態様において、前記非タンパク質部分はカーボンナノチューブである(Kam, N.W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (2005) 11600-11605)。放射線は任意の波長であってよく、通常の細胞を傷つけることはないが、二量体ポリペプチド−非タンパク質部分近傍の細胞が死滅する温度まで、前記非タンパク質部分を加熱する波長が含まれるが、これに限定されない。
【0324】
f)ヘテロ二量体化
ヘテロ二量体化を強めるためのCH3改変には、いくつかのアプローチが存在し、それらは例えば、国際公開公報第96/27011号、国際公開公報第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開公報第2007/110205号、国際公開公報第2007/147901号、国際公開公報第2009/089004号、国際公開公報第2010/129304号、国際公開公報第2011/90754号、国際公開公報第2011/143545号、国際公開公報第2012058768号、国際公開公報第2013157954号、国際公開公報第2013096291号に十分に記載されている。典型的には、そのようなアプローチ全てにおいて、第1のCH3ドメイン及び第2のCH3ドメインの両者を相補的な様式で操作し、各CH3ドメイン(又はそれを含む重鎖)が、それ自身とのホモ二量体化はもはやできず、相補的に操作された他のCH3ドメインとヘテロ二量体化することを余儀なくされるようにする(そうすることにより、前記第1及び第2のCH3ドメインはヘテロ二量体化し、2本の前記第1の、又は2本の第2のCH3ドメインの間でのホモ二量体は、形成されない)。改善された重鎖ヘテロ二量体化のためのこれら種々のアプローチは、誤対合してベンスージョーンズ型副生物となる軽鎖を減少させる、本発明による多重特異性抗体における重鎖ー軽鎖改変(一方の結合腕におけるVH及びVL交換/置換及びCH1/CL界面における、電荷が逆の荷電アミノ酸による置換の導入)と組み合わされる、種々の選択肢として意図される。
【0325】
本発明の一つの好ましい実施態様(多重特異性抗体が、重鎖中にCH3ドメインを含む場合)において、本発明による前記多重特異性抗体のCH3ドメインを、例えば、国際公開公報第96/027011号、Ridgway, J.B., et al., Protein Eng. 9 (1996) 617-621;及びMerchant, A.M., et al., Nat. Biotechnol. 16 (1998) 677-681;国際公開公報第98/050431号において、いくつかの例を用いて詳細に記載されている「ノブ−イントゥ−ホールズ」技術により変化させることができる。この方法においては、2つのCH3ドメインの相互作用表面を変化させて、これら2つのCH3ドメインを含む両重鎖のヘテロ二量体化を増加させる。2つのCH3ドメインそれぞれ(2本の重鎖の)は「ノブ」でありうるが、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入が、ヘテロ二量体を更に安定化させ(Merchant, A.M., et al., Nature Biotech. 16 (1998) 677-681; Atwell, S., et al., J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収率を増加させる。
【0326】
よって、本発明の一つの実施態様において、前記多重特異性抗体は、(各重鎖中にCH3ドメインを含み、かつ)更に、
前記抗体の前記第1の重鎖の前記第1のCH3ドメイン(a)とする)(under a))及び前記抗体の前記第2の重鎖の前記第2のCH3ドメイン(b)とする)(under b))が各々、前記抗体CH3ドメインの間の元の界面を含む界面において接触し(meet)、
前記界面が、多重特異性抗体の形成を促進するように変化しており、前記変化が、
i)一方の重鎖のCH3ドメインが変化しており、
そのことにより、前記多重特異性抗体における、他方の重鎖のCH3ドメインの元の界面と接触する、一方の重鎖のCH3ドメインの元の界面内において、
アミノ酸残基が、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換され、このことにより、前記一方の重鎖のCH3ドメインの界面内に、前記他方の重鎖のCH3ドメインの界面内の空洞内に配置され得る突起が生成し、かつ
ii)他方の重鎖のCH3ドメインが変化しており、
そのことにより、前記多重特異性抗体における、前記第1のCH3ドメインの元の界面と接触する、前記第2のCH3ドメインの元の界面内において、
アミノ酸残基が、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換され、このことにより、前記第2のCH3ドメインの界面内に空洞が生成し、その中に、前記第1のCH3ドメインの界面内の突起が配置され得る
ことを特徴とする。
【0327】
好ましくは、前記より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)からなる群より選択される。
【0328】
好ましくは、前記より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)からなる群より選択される。
【0329】
本発明の一つの態様において、両CH3ドメインが、各CH3ドメインの対応位置のアミノ酸としてのシステイン(C)の導入により更に変化しており、そのことにより、両CH3ドメインの間にジスルフィド架橋が形成され得る。
【0330】
一つの好ましい実施態様において、前記多重特異性抗体は、「ノブ鎖」の前記第1のCH3ドメインにおけるアミノ酸T366W突然変異及び「ホール鎖」の前記第2のCH3ドメインにおけるアミノ酸T366S、L368A、Y407V突然変異を含む。前記CH3ドメインの間の更なる鎖間ジスルフィド架橋も、例えば、「ホール鎖」のCH3ドメインへアミノ酸Y349C突然変異、そして「ノブ鎖」のCH3ドメインへアミノ酸E356C突然変異又はアミノ酸S354C突然変異を導入することにより、用いることができる(Merchant, A.M., et al., Nature Biotech. 16 (1998) 677-681)。
【0331】
一つの好ましい実施態様において、前記多重特異性抗体(各重鎖中にCH3ドメインを含む)は、前記2つのCH3ドメインのうちの一方におけるアミノ酸S354C、T366W突然変異及び前記2つのCH3ドメインのうちの他方におけるアミノ酸Y349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を含む(一方のCH3ドメインにおける追加のアミノ酸S354C突然変異及び他方のCH3ドメインにおける追加のアミノ酸Y349C突然変異が、鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(Kabatによるナンバリング)。
【0332】
ヘテロ二量体化を強めるためのCH3改変のその他の技術が、本発明の選択肢として意図されており、例えば、国際公開公報第96/27011号、国際公開公報第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開公報第2007/110205号、国際公開公報第2007/147901号、国際公開公報第2009/089004号、国際公開公報第2010/129304号、国際公開公報第2011/90754号、国際公開公報第2011/143545号、国際公開公報第2012/058768号、国際公開公報第2013/157954号、国際公開公報第2013/096291号に記載されている。
【0333】
一つの実施態様において、欧州公開公報第1870459A1号に記載のヘテロ二量体化アプローチを代わりに用いることができる。このアプローチは、両重鎖間のCH3/CH3ドメイン界面内の特定のアミノ酸位置における、電荷が逆の荷電アミノ酸での置換/突然変異の導入を基にしたものである。前記多重特異性抗体についての一つの好ましい実施態様は、(多重特異性抗体の)前記第1のCH3ドメイン内のアミノ酸R409D;K370E突然変異及び多重特異性抗体の前記第2のCH3ドメイン内のアミノ酸D399K;E357K突然変異(Kabatによるナンバリング)である。
【0334】
もう一つの実施態様において、前記多重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメイン内のアミノ酸T366W突然変異及び「ホール鎖」のCH3ドメイン内のアミノ酸T366S、L368A、Y407V突然変異及び「ノブ鎖」のCH3ドメイン内の追加のアミノ酸R409D;K370E突然変異及び「ホール鎖」のCH3ドメイン内のアミノ酸D399K;E357K突然変異を含む。
【0335】
もう一つの実施態様において、前記多重特異性抗体は、2つのうちの一方のCH3ドメイン内のアミノ酸S354C、T366W突然変異及び2つのうちの他方のCH3ドメイン内のアミノ酸Y349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を含むか、又は、前記多重特異性抗体は、2つのうちの一方のCH3ドメイン内のアミノ酸Y349C、T366W突然変異及び2つのうちの他方のCH3ドメイン内のアミノ酸S354C、T366S、L368A、Y407V突然変異及び「ノブ鎖」のCH3ドメイン内の追加のアミノ酸R409D;K370E突然変異及び「ホール鎖」のCH3ドメイン内のアミノ酸D399K;E357K突然変異を含む。
【0336】
一つの実施態様において、国際公開公報第2013/157953号に記載のヘテロ二量体化アプローチを代わりに用いることができる。一つの実施態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸T366K突然変異を含み、第2のCH3ドメインポリペプチドは、アミノ酸L351D突然変異を含む。更なる一つの実施態様において、前記第1のCH3ドメインは、更なるアミノ酸L351K突然変異を含む。更なる一つの実施態様において、前記第2のCH3ドメインは、Y349E、Y349D及びL368E(好ましくはL368E)より選択される更なるアミノ酸突然変異を含む。
【0337】
一つの実施態様において、国際公開公報第2012/058768号に記載のヘテロ二量体化アプローチを代わりに用いることができる。一つの実施態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸L351Y、Y407A突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸T366A、K409F突然変異を含む。更なる一つの実施態様において、前記第2のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390、又はK392に、例えば、a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E又はT411W、b)D399R、D399W、D399Y又はD399K、c)S400E、S400D、S400R、又はS400K F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W N390R、N390K又はN390D K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392Eより選択される更なるアミノ酸突然変異を含む。更なる一つの実施態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸L351Y、Y407A突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸T366V、K409F突然変異を含む。更なる一つの実施態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸Y407A突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸T366A、K409F突然変異を含む。更なる一つの実施態様において、前記第2のCH3ドメインは、更なるアミノ酸K392E、T411E、D399R及びS400R突然変異を含む。
【0338】
一つの実施態様において、例えば、368及び409からなる群より選択される位置におけるアミノ酸改変による、国際公開公報第2011/143545号に記載のヘテロ二量体化アプローチを代わりに用いることができる。
【0339】
一つの実施態様において、これも前記ノブズ−イントゥ−ホールズ 技術を用いる、国際公開公報第2011/090762号に記載のヘテロ二量体化アプローチを代わりに用いることができる。一つの実施態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸T366W突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸Y407A突然変異を含む。一つの実施態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸T366Y突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸Y407T突然変異を含む。
【0340】
一つの実施態様において、前記多重特異性抗体は、IgG2アイソタイプのものであり、国際公開公報第2010/129304号に記載のヘテロ二量体化アプローチを代わりに用いることができる。
【0341】
一つの実施態様において、国際公開公報第2009/089004号に記載のヘテロ二量体化アプローチを代わりに用いることができる。一つの実施態様において、第1のCH3ドメインは、K392又はN392の、負電荷を持つアミノ酸でのアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK392D又はN392D)を含み、第2のCH3ドメインは、D399、E356、D356、又はE357の、正電荷を持つアミノ酸でのアミノ酸置換(例えば、リシン(K)又はアルギニン(R)、好ましくはD399K、E356K、D356K又はE357K、より好ましくはD399K及びE356K)を含む。更なる一つの実施態様において、前記第1のCH3ドメインは、K409又はR409の、負電荷を持つアミノ酸でのアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK409D又はR409D)を更に含む。更なる一つの実施態様において、前記第1のCH3ドメインは、更に又は代わりに、K439及び/又はK370の、負電荷を持つアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D))でのアミノ酸置換を含む。
【0342】
一つの実施態様において、国際公開公報第2007/147901号に記載のヘテロ二量体化アプローチを代わりに用いることができる。一つの実施態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸K253E、D282K及びK322D突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸D239K、E240K及びK292D突然変異を含む。
【0343】
一つの実施態様において、国際公開公報第2007/110205号に記載のヘテロ二量体化アプローチを代わりに用いることができる。
【0344】
E.リコンビナント方法及びリコンビナント組成物
抗体は、例えば米国特許第4816567号に記載されているようなリコンビナント方法及びリコンビナント組成物を使って製造することができる。一つの実施態様において、本明細書において報告される二量体ポリペプチドをコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、前記二量体ポリペプチドの前記第1のポリペプチドを含むアミノ酸配列及び/又は前記第2のポリペプチドを含むアミノ酸配列をコードするものでありうる。更なる一つの実施態様において、そのような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば発現ベクター)が提供される。更なる一つの実施態様において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような実施態様の一つでは、宿主細胞が、下記(1)又は(2)を含む(例えば、それにより形質転換されている):(1)二量体ポリペプチドの前記第1のポリペプチドを含むアミノ酸配列及び二量体ポリペプチドの前記第2のポリペプチドを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、(2)二量体ポリペプチドの前記第1のポリペプチドを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び二量体ポリペプチドの前記第2のポリペプチドを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。一つの実施態様において、宿主細胞は真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ球系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一つの実施態様において、本明細書において報告される二量体ポリペプチドを製造するする方法であって、先に規定した二量体ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を、二量体ポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程、及び場合により、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収する工程を含む方法が提供される。
【0345】
本明細書において報告される二量体ポリペプチドのリコンビナント製造のために、二量体ポリペプチドをコードする核酸を、例えば前記のように、単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために、1種以上のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順(例えば、変異体Fc領域ポリペプチド 並びに抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合する能力を有するオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)を使って、容易に単離及び配列決定し得る。
【0346】
二量体ポリペプチドをコードするベクターのクローニング又は発現に適切な宿主細胞には、本明細書に記載の原核細胞又は真核細胞が含まれる。例えば、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない場合は、二量体ポリペプチドを細菌中で製造してもよい。細菌における抗体フラグメント及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5648237号、米国特許第5789199号及び米国特許第5840523号を参照(E. coli.における抗体フラグメントの発現を記載している、Charlton, K.A., In: Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2003), pp. 245-254も参照)。発現後に、二量体ポリペプチドを細菌細胞ペーストから可溶性画分中に単離して、更に精製してもよい。
【0347】
原核生物に加え、糸状菌や酵母のような真核微生物(グリコシル化経路が「ヒト化」されていて、部分的又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有する二量体ポリペプチドの製造をもたらす真菌株及び酵母株を含む)も、二量体ポリペプチドをコードするベクターのための適切なクローニング宿主又は発現宿主である。Gerngross, T.U., Nat. Biotech. 22 (2004) 1409-1414及びLi, H. et al., Nat. Biotech. 24 (2006) 210-215を参照。
【0348】
グリコシル化二量体ポリペプチド発現用の適切な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎生物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎生物細胞の例には、植物細胞及び昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と一緒に使用することができ、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションに使用することができる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
【0349】
植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5959177号、米国特許第6040498号、米国特許第6420548号、米国特許第7125978号及び米国特許第6417429号を参照(トランスジェニック植物中で抗体を製造するためのPLANTIBODIES(商標)技術が記載されている)。
【0350】
脊椎動物細胞もまた、宿主として利用することができる。例えば、懸濁液中での成長に適応させた哺乳類細胞株は有用な場合がある。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胎児腎臓株(例えば、raham, F.L., et al., J. Gen Virol. 36 (1977) 59-74に記載のHEK293又は293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252に記載のTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳癌(MMT 060562)、例えばMather, J.P. et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68に記載のTRI細胞、MRC 5細胞及びFS4細胞である。他の有用な哺乳類宿主細胞株には、DHFR- CHO細胞(Urlaub, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、並びにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体製造に適したある哺乳類宿主細胞株の総説は、例えば、Yazaki, P. and Wu, A.M., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2004), pp. 255-268を参照。
【0351】
F.組み合わせ処置
ある実施態様では、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は本明細書において報告される医薬処方物を、本明細書に記載の1つ以上の眼血管疾患の処置のために、単独で(追加の治療的薬剤を伴わない)投与する。
【0352】
他の実施態様では、本明細書において報告される二量体ポリペプチド抗体又は医薬処方物を、本明細書に記載の1つ以上の眼血管疾患の処置のために、1つ以上の追加の治療剤又は処置方法との組み合わせにおいて投与する。
【0353】
他の実施態様では、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は医薬処方物を、1つ以上の追加の治療剤との組み合わせにおいて処方し、本明細書に記載の1つ以上の眼血管疾患の処置のために投与する。
【0354】
ある実施態様では、本明細書において提供する組み合わせ処置は、本明細書に記載の1つ以上の眼血管疾患の処置のために、本明細書において報告される二量体ポリペプチド抗体又は医薬処方物を、1つ以上の追加の治療剤と共に、順次投与することを含む。
【0355】
追加の治療的薬剤には、トリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)、EyeOOl(抗VEGF PEG化アプタマー)、スクアラミン、RETAANE(商標)(デポー懸濁液用の酢酸アネコルタブ;Alcon, Inc.)、コンブレタスタチンA4プロドラッグ(CA4P)、MACUGEN(商標)、MIFEPREX(商標)(ミフェプリストン−ru486)、サブテノントリアムシノロンアセトニド、硝子体内結晶トリアムシノロンアセトニド、プリノマスタット(AG3340合成マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、Pfizer)、フルオシノロンアセトニド(フルオシノン眼内インプラントを含む、Bausch & Lomb/Control Delivery Systems)、VEGFR阻害剤(Sugen)、VEGF−Trap(Regeneron/Aventis)、VEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤、例えば4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(l−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)、4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン−1−イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171)、バタラニブ(PTK787)及びSU11248(スニチニブ)、リノマイド、並びにインテグリンv.ベータ.3機能及びアンジオスタチンの阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0356】
本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は医薬処方物 との組み合わせにおいて使用し得る他の薬学的治療には、非熱レーザーを用いたVISUDYNE(商標)、PKC412、Endovion(NeuroSearch A/S)、神経栄養因子(例として、グリア由来の神経栄養因子及び毛様体神経栄養因子を含む)、ジアタゼム、ドルゾラミド、フォトトロプ、9−シス−レチナール、目薬(エコー治療を含む)(ヨウ化ホスホリン又はエコチオフェート又は炭酸脱水酵素阻害剤を含む)、AE−941(AEterna Laboratories, Inc.)、Sirna-027(Sima Therapeutics, Inc.)、ペガプタニブ(NeXstar Pharmaceuticals/Gilead Sciences)、ニューロトロフィン(例として、NT−4/5、Genentechを含む)、Cand5(Acuity Pharmaceuticals)、INS−37217(Inspire Pharmaceuticals)、インテグリンアンタゴニスト(Jerini AG及びAbbott Laboratoriesからのものを含む)、EG−3306(Ark Therapeutics Ltd.)、BDM−E(BioDiem Ltd.)、サリドマイド(例えば、EntreMed, Inc.により使用される通り)、カルジオトロフィン1(Genentech)、2−メトキシエストラジオール(Allergan/Oculex)、DL−8234(Toray Industries)、NTC−200(Neurotech)、テトラチオモリブデート(ミシガン大学)、LYN−002(Lynkeus Biotech)、微細藻類化合物(Aquasearch/Albany, Mera Pharmaceuticals)、D−9120(Celltech Group plc.)、ATX−S10(Hamamatsu Photonics)、TGF−β2(Genzyme/Celtrix)、チロシンキナーゼ阻害剤(Allergan, SUGEN, Pfizer)、NX−278−L(NeXstar Pharmaceuticals/Gilead Sciences)、OPT−24(OPTIS France SA)、網膜細胞神経節神経保護剤(Cogent Neurosciences)、N−ニトロピラゾール誘導体(Texas A&M University System)、KP−102(Krenitsky Pharmaceuticals)、シクロスポリンA、Timited網膜転座、光線力学治療(例として、レセプターを標的とするPDT、Bristol-Myers Squibb, Co.;PDTを用いた注射用のポルフィマーナトリウム;ベルテポルフィン、QLT Inc.;PDTを伴うロスタポルフィン、Miravent Medical Technologies;PDTを伴うタラポルフィンナトリウム、Nippon Petroleum;モテキサフィンルテチウム、Pharmacyclics, Inc.)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例として、Novagali Pharma SAによりテストされた産物及びISIS−13650、Isis Pharmaceuticalsを含む)、レーザー光凝固、ドルーゼンレーザー加工、黄斑円孔手術、黄斑転座手術、移植可能ミニチュアテレスコープ、ファイモーション血管造影(また、マイクロレーザー治療及びフィーダーベッセル処置として公知である)、陽子線治療、微小刺激治療、網膜剥離及び硝子体手術、強膜バックル、黄斑下手術、経瞳孔温熱治療、光化学系I治療、RNA干渉(RNAi)の使用、体外レオフェレシス(また、膜差濾過及びRheotherapyとして公知である)、マイクロチップ移植、幹細胞治療、遺伝子交換治療、リボザイム遺伝子治療(低酸素応答エレメント用の遺伝子治療を含む、Oxford Biomedica;Lentipak、GENETIX;PDEF遺伝子治療、GenVec)、光受容体/網膜細胞移植(移植可能な網膜上皮細胞、Diacrin, Inc.;網膜細胞移植、Cell Genesys, Inc.を含む)、及び鍼が含まれるが、これらに限定されない。
【0357】
任意の抗血管形成剤(Carmeliet and Jain, 2000, Nature 407: 249-257により列挙されるものが含まれるが、これらに限定されない)を、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は医薬処方物との組み合わせにおいて使用することができる。ある実施態様では、抗血管形成薬剤は、別のVEGFアンタゴニスト又はVEGFレセプターアンタゴニスト、例えば、VEGF変異体、可溶性VEGFレセプターフラグメント、VEGF又はVEGFRを遮断することが可能であるアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの低分子量阻害剤及びそれらの任意の組み合わせであり、これらは、抗VEGFアプタマー(例えば、ペガプタニブ)、可溶性リコンビナントデコイレセプター(例えば、VEGFトラップ)を含む。ある実施態様では、抗血管形成薬剤は、コルチコステロイド、血管形成抑制ステロイド、酢酸アネコルタブ、アンジオスタチン、エンドスタチン、VEGFR又はVEGFリガンドの発現を減少させる低分子干渉RNA、チロシンキナーゼ阻害剤を用いたVEGFR後の遮断、MMP阻害剤、IGFBP3、SDF−1遮断薬、PEDF、ガンマ−セクレターゼ、デルタ様リガンド4、インテグリンアンタゴニスト、HIF−1アルファ遮断、プロテインキナーゼCK2遮断、及び血管内皮カドヘリン(CD−144)及び間質由来因子(SDF)−I抗体を使用した血管新生部位への幹細胞(即ち、内皮前駆細胞)ホーミングの阻害を含む。VEGFレセプター(PTK787を含む)を標的とする小分子RTK阻害剤を使用することもできる。必ずしも抗VEGF化合物ではないが、血管新生に対して活性を有する薬剤も使用することができ、これには抗炎症薬物、m−Tor阻害剤、ラパマイシン、エベロリムス、テムシロリムス、シクロスポリン、抗TNF剤、抗補体剤及び非ステロイド性抗炎症剤が含まれる。神経保護的であり、潜在的に乾燥型黄斑変性症の進行を低下させうる薬剤(「神経ステロイド」と呼ばれる薬物のクラスなど)も使用することができる。これらには、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)(ブランド名:Prastera(登録商標)及びFidelin(登録商標))、硫酸デヒドロエピアンドロステロン及び硫酸プレグネノロンといった薬物が含まれる。任意のAMD(加齢性黄斑変性症)治療用薬剤を、本明細書において報告される二量体ポリペプチド又は医薬処方物との組み合わせにおいて使用することができ、これには、PDTとの組み合わせにおけるベルテポルフィン、ペガプタニブナトリウム、亜鉛又は酸化防止剤(単独又は組み合わせ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0358】
G.医薬処方物
本明細書において報告される二量体ポリペプチドの医薬処方物は、所望の純度を有するそのような二量体ポリペプチドを、1つ以上の場合による薬学的に許容し得る担体(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A.(ed.) (1980))と混合することにより、凍結乾燥処方物又は水溶液の形態に調製される。薬学的に許容し得る担体は一般に、使用される投薬量及び濃度において、受容者にとって無毒性であり、これには、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチルパラベン又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン);アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖、二糖その他の糖質、例えばグルコース、マンノース又はデキストリン;キレート化剤、例えばEDTA;糖類、例えばショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn−タンパク質複合体);及び/又は非イオン界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書における、例示的な薬学的に許容し得る担体には更に、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)のような、間質薬物分散剤、例えば、rhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)のような、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が含まれる。rhuPH20を初めとするある例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許公報第2005/0260186号並びに同第2006/0104968号に記載されている。一つの態様において、sHASEGPが、1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼ、例えばコンドロイチナーゼと併用される。
【0359】
例示的な凍結乾燥抗体処方物は、米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体処方物には、米国特許第6171586号及び国際公開公報第2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の処方物はヒスチジン−酢酸緩衝液を含む。
【0360】
本明細書における処方物は、処置される特定適応症の必要に応じて、2つ以上の有効成分、好ましくは、互いに有害な影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有しうる。そのような有効成分は、適宜、意図した目的に有効な量で組み合わされて存在する。
【0361】
有効成分は、マイクロカプセル(例えば、各々コアセルベーション技術又は界面重合によって調製された、例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)に、又はマクロエマルションに封入されていてよい。そのような技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) (1980)に開示されている。
【0362】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスであって、マトリックスがフィルム又はマイクロカプセルなどの成形体の形態にあるものが含まれる。
【0363】
インビボ投与に使用される処方物は一般に滅菌されている。滅菌性は、例えば滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成することができる。
【0364】
H.治療方法及び治療組成物
本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、いずれも治療方法に使用することができる。
【0365】
一つの態様において、医薬として使用するための、本明細書において報告される二量体ポリペプチドが提供される。更なる態様では、眼疾患の処置に使用するための二量体ポリペプチドが提供される。ある実施態様では、処置方法において使用するための二量体ポリペプチドが提供される。ある実施態様では、本発明は、眼血管疾患を有する個体を処置する方法であって、前記個体に、有効量の本明細書において報告される二量体ポリペプチドを投与する工程を含む方法において使用するための二量体ポリペプチドを提供する。そのような実施態様の一つにおいて、前記方法は、前記個体に、有効量の少なくとも1種の追加の治療剤(例えば、セクションDで前記したようなもの)を投与する工程を更に含む。更なる実施態様では、本発明は、眼における血管形成の阻害に使用するための二量体ポリペプチドを提供する。ある実施態様では、本発明は、個体における血管形成を阻害する方法であって、前記個体に、血管形成を阻害するのに有効な量の二量体ポリペプチドを投与する工程を含む方法に使用するための二量体ポリペプチドを提供する。前記実施態様のいずれかによる「個体」は、一つの好ましい実施態様において、ヒトである。
【0366】
更なる一つの態様において、本発明は、医薬の製造又は調製における、二量体ポリペプチドの使用を提供する。一つの実施態様において、前記医薬は、眼血管疾患処置用のものである。更なる一つの実施態様において、前記医薬は、眼血管疾患を処置する方法であって、眼血管疾患を有する個体に、有効量の前記医薬を投与する工程を含む方法に使用するためのものである。そのような実施態様の一つにおいて、前記方法は、前記個体に、有効量の少なくとも1種の追加の治療剤(例えば、前記のようなもの)を投与する工程を更に含む。更なる一つの実施態様において、前記医薬は、血管形成を阻害するためのものである。更なる一つの実施態様において、前記医薬は、個体における血管形成を阻害する方法であって、前記個体に、血管形成を阻害するのに有効な量の前記医薬を投与する工程を含む方法に使用するためのものである。前記実施態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであってよい。
【0367】
更なる一つの態様において、本発明は、眼血管疾患を処置する方法を提供する。一つの実施態様において、前記方法は、そのような眼血管疾患を有する個体に、有効量の本明細書において報告される二量体ポリペプチドを投与する工程を含む。そのような実施態様の一つにおいて、前記方法は、前記個体に、有効量の少なくとも1種の下記のような追加の治療剤を投与する工程を更に含む。前記実施態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであってよい。
【0368】
更なる一つの態様において、本発明は、個体において、眼における血管形成を阻害する方法を提供する。一つの実施態様において、前記方法は、前記個体に、血管形成を阻害するのに有効な量の本明細書において報告される二量体ポリペプチドを投与する工程を含む。一つの実施態様において、「個体」はヒトである。
【0369】
更なる一つの態様において、本発明は、例えば、前記いずれかの治療方法に使用するための、本明細書において報告されるいずれかの二量体ポリペプチドを含む医薬処方物を提供する。一つの実施態様において、医薬処方物は、本明細書において報告されるいずれかの二量体ポリペプチド及び薬学的に許容し得る担体を含む。もう一つの実施態様において、医薬処方物は、本明細書において報告されるいずれかの二量体ポリペプチド及び少なくとも1種の、例えば下記のような追加の治療剤を含む。
【0370】
本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、単独で、又は他の作用物質と組み合わせて、治療に使用することができる。例えば、本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、少なくとも1種の追加の治療剤と同時投与することができる。
【0371】
本明細書において報告される二量体ポリペプチド(及び任意の追加治療剤)は、非経口投与、肺内投与、及び鼻腔内投与、そして局所処置にとって望ましい場合は、病巣内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短期間であるか慢性的であるかにも一部依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内注射又は皮下注射のような注射によるものでありうる。単回投与、又はさまざまな時点にわたる複数投与、ボーラス投与及びパルス注入を含む(これらに限定されない)種々の投薬日程が、本明細書においては意図される。
【0372】
本明細書において報告される二量体ポリペプチドは、適正医療基準(good medical practice)に合致する方法で、処方され、投薬され、投与される。この文脈において考慮すべき因子には、処置される特定障害、処置される特定哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与の方法、投与の日程計画及び医療従事者に公知の他の因子が含まれる。二量体ポリペプチドは、問題の障害を予防又は処置するために現在使用されている1つ以上の作用物質と共に処方する必要はないが、場合によりそのようにする。そのような他の作用物質の有効量は、処方物中に存在する二量体ポリペプチドの量、障害又は処置のタイプ及び先に述べた他の因子に依存する。これらは一般に、同じ投薬量及び本明細書に記載の投与経路で、又は本明細書に記載の投薬量の約1〜99%で、又は実験的/臨床的に適当であると決定された、任意の投薬量及び任意の経路で、使用される。
【0373】
疾患の予防又は処置に関して、本明細書において報告される二量体ポリペプチドの適当な投薬量(単独で使用する場合、又は1つ以上の他の追加の治療剤と併用する場合)は、処置すべき疾患のタイプ、二量体ポリペプチドのタイプ、疾患の重症度及び経過、二量体ポリペプチドを予防のために投与するか治療のために投与するか、治療歴、患者の病歴及び二量体ポリペプチドに対する応答、並びに担当医の裁量に依存する。二量体ポリペプチドは、1回又は一連の処置で、患者に適切に投与される。疾患のタイプ及び重症度に依存して、例えば、1回以上の独立した投与によるか、持続注入によるかを問わず、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.5mg/kg〜10mg/kg)の二量体ポリペプチドを、患者への投与のための初回候補投薬量とすることができる。典型的な1日投与量は、前記の因子に依存して、約1μg/kgから100mg/kg、又はそれ以上に及びうる。数日又はそれ以上にわたる反復投与の場合、状態に依存して、処置は一般に、疾患症状の所望の抑制が起こるまで、維持される。二量体ポリペプチドの例示的投薬量の一つは、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲にある。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の用量を1回以上、患者に投与することができる。そのような用量を間欠的に、例えば毎週又は3週間ごとに(例えば、患者が二量体ポリペプチドの投与を約2回から約20回、例えば約6回受けるように)投与してもよい。最初に高用量の初回負荷量を投与した後、低用量で1回以上投与してもよい。この治療法の進行は、従来の技法及びアッセイで容易にモニターされる。
【0374】
III.製造品
本発明の他の一つの態様において、前記障害の処置、予防及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。製造品は、容器、及び容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書を含む。適切な容器には、例えば瓶、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなど、種々の材料で形成されうる。容器は、単独で、又は別の組成物との組み合わせで、前記状態を処置、予防及び/又は診断するのに有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ、又は皮下注射針で突き刺すことができる栓を有するバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性物質は、本明細書において報告される二量体ポリペプチドである。前記ラベル又は添付文書は、その組成物が選択された状態の処置に使用されることを示す。更に、前記製造品は、(a)本明細書において報告される二量体ポリペプチドを含む組成物が入っている第1の容器、及び(b)更なる細胞毒性物質又は他の治療剤を含む組成物が入っている第2の容器を含んでいてよい。本発明のこの実施態様の製造品は、特定の状態を処置するためにその組成物を使用できることを示す添付文書を更に含みうる。これに代えて、又はこれに加えて、製造品は、静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液のような、薬学的に許容し得る緩衝液を含む第2(又は第3)の容器を更に含みうる。商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料、例えば、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針及びシリンジを、更に含みうる。
【0375】
上記の製造品はいずれも、本明細書において報告される二量体ポリペプチドの代わりに、又はそれに加えて、本明細書において報告されるイムノコンジュゲートを含みうると理解される。
【0376】
IV.具体的な実施態様
1.二量体ポリペプチドであって、
第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含み、前記第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは各々、N末端からC末端の方向に、1個以上のシステイン残基を含む、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部、免疫グロブリンCH2ドメイン及び免疫グロブリンCH3ドメインを含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含むか、又は
iv)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
v)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
vi)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含む、
二量体ポリペプチド。
【0377】
2.ヒトFcRnと特異的に結合せず、ブドウ球菌プロテインAと特異的に結合する、項1記載の二量体ポリペプチド。
【0378】
3.ホモ二量体ポリペプチドである、項1〜2のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0379】
4.ヘテロ二量体ポリペプチドである、項1〜2のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0380】
5.i)前記第1のポリペプチドが、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異S354C及びT366Wを含むか、ii)前記第1のポリペプチドが、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異Y349C及びT366Wを含む、項1〜4のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0381】
6.前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインが、ヒトIgG1サブクラスのものである、項1〜5のいずれか1項記載のポリペプチド。
【0382】
7.前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、突然変異L234A及びL235Aを更に含む、項1〜6のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0383】
8.前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインが、ヒトIgG2サブクラスのものであり、場合により突然変異V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S及びP331Sを伴う、項1〜5のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0384】
9.前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインが、ヒトIgG4サブクラスのものである、項1〜5のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0385】
10.前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、突然変異S228P及びL235Eを更に含む、項1〜5及び9のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0386】
11.前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、突然変異P329Gを更に含む、項1〜10のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0387】
12.Fc領域融合ポリペプチドである、項1〜11のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0388】
13.(全長)抗体である、項1〜11のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0389】
14.前記(全長)抗体が単一特異性抗体である、項1〜11及び13のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0390】
15.前記単一特異性抗体が一価単一特異性抗体である、項1〜11及び13〜14のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0391】
16.前記単一特異性抗体が二価単一特異性抗体である、項1〜11及び13〜15のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0392】
17.前記(全長)抗体が二重特異性抗体である、項1〜11及び13のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0393】
18.前記二重特異性抗体が二価二重特異性抗体である、項1〜11及び13及び17のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0394】
19.前記二重特異性抗体が四価二重特異性抗体である、項1〜11及び13及び17〜18のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0395】
20.前記(全長)抗体が三重特異性抗体である、項1〜11及び13のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0396】
21.前記三重特異性抗体が三価三重特異性抗体である、項1〜11及び13及び20のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0397】
22.前記三重特異性抗体が四価三重特異性抗体である、項1〜11及び13及び20〜21のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0398】
23.二量体ポリペプチドであって、
第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含み、前記第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドは各々、N末端からC末端の方向に、1個以上のシステイン残基を含む、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部、免疫グロブリンCH2ドメイン及び免疫グロブリンCH3ドメインを含み、
前記第1の、前記第2の又は前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異Y436A(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)を含む、
二量体ポリペプチド。
【0399】
24.前記第1及び第2のポリペプチドが、突然変異Y436Aを含む、項23記載の二量体ポリペプチド。
【0400】
25.ヒトFcRnと特異的に結合せず、ブドウ球菌プロテインAと特異的に結合する、項23〜24のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0401】
26.ホモ二量体ポリペプチドである、項23〜25のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0402】
27.ヘテロ二量体ポリペプチドである、項23〜25のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0403】
28.a)前記第1のポリペプチドが、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異S354C及びT366Wを含むか、又は
前記第1のポリペプチドが、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異Y349C及びT366Wを含み、かつ/又は
b)i)前記第1及び第2のポリペプチドが、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドが、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドが、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含むか、又は
iv)前記第1のポリペプチドが、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
v)前記第1のポリペプチドが、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
vi)前記第1のポリペプチドが、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含む、
項23〜27のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0404】
29.前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインが、ヒトIgG1サブクラスのものである項23〜28のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0405】
30.前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、突然変異L234A及びL235Aを更に含む、項23〜29のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0406】
31.前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインが、ヒトIgG2サブクラスのものであり、場合により突然変異V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S及びP331Sを伴う、項23〜28のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0407】
32.前記免疫グロブリンヒンジ領域、前記免疫グロブリンCH2ドメイン及び前記免疫グロブリンCH3ドメインが、ヒトIgG4サブクラスのものである、項23〜28のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0408】
33.前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、突然変異S228P及びL235Eを更に含む、項23〜28及び32のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0409】
34.前記第1のポリペプチド及び前記第2のポリペプチドが、突然変異P329Gを更に含む、項23〜33のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0410】
35.Fc領域融合ポリペプチドである、項23〜34のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0411】
36.(全長)抗体である、項23〜34のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0412】
37.前記(全長)抗体が単一特異性抗体である、項23〜34及び36のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0413】
38.前記単一特異性抗体が一価単一特異性抗体である、項23〜34及び36〜37のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0414】
39.前記単一特異性抗体が二価単一特異性抗体である、項23〜34及び36〜38のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0415】
40.前記(全長)抗体が二重特異性抗体である、項23〜34及び36のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0416】
41.前記二重特異性抗体が二価二重特異性抗体である、項23〜34及び36及び40のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0417】
42.前記二重特異性抗体が四価二重特異性抗体である、項23〜34及び36及び40〜41のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0418】
43.前記(全長)抗体が三重特異性抗体である、項23〜34及び36のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0419】
44.前記三重特異性抗体が三価三重特異性抗体である、項23〜34及び36及び43のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0420】
45.前記三重特異性抗体が四価三重特異性抗体である、項23〜34及び36及び43〜44のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0421】
46.二量体ポリペプチドであって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、
前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第2の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wを含み、
前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L234A、L235A及びP329Gを更に含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含むか、又は
iv)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
v)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
vi)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含む、
二量体ポリペプチド。
【0422】
47.二量体ポリペプチドであって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、
前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第2の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wを含み、
前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L234A、L235A及びP329Gを更に含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含むか、又は
iv)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
v)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
vi)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含む、
二量体ポリペプチド。
【0423】
48.二量体ポリペプチドであって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、
前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第2の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wを含み、
前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異S228P、L235E及びP329Gを更に含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含むか、又は
iv)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
v)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
vi)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含む、
二量体ポリペプチド。
【0424】
49.二量体ポリペプチドであって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG4の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG4の免疫グロブリンCH2ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及びサブクラスIgG4の免疫グロブリンCH1ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、
前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第2の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wを含み、
前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異S228P、L235E及びP329Gを更に含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含むか、又は
iv)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
v)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
vi)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含む、
二量体ポリペプチド。
【0425】
50.二量体ポリペプチドであって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメイン、ペプチド性リンカー及び第1のscFvを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメイン、ペプチド性リンカー及び第2のscFvを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド、
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、前記第1及び前記第2のscFvは、第2の抗原と特異的に結合し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wを含み、
前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L234A、L235A及びP329Gを更に含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含むか、又は
iv)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
v)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
vi)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含む、
二量体ポリペプチド。
【0426】
51.二量体ポリペプチドであって、
N末端からC末端の方向に、第1の重鎖可変ドメイン、免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメイン、ペプチド性リンカー及び第1のscFvを含む、第1のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の重鎖可変ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンヒンジ領域、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH2ドメイン、サブクラスIgG1の免疫グロブリンCH3ドメイン、ペプチド性リンカー及び第2のscFvを含む、第2のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第1の軽鎖可変ドメイン及びサブクラスIgG1の免疫グロブリンCH1ドメインを含む、第3のポリペプチド、
N末端からC末端の方向に、第2の軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む、第4のポリペプチド、
を含み、
前記第1の重鎖可変ドメインと前記第1の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第1の結合部位を形成し、前記第2の重鎖可変ドメインと前記第2の軽鎖可変ドメインは、第1の抗原と特異的に結合する第2の結合部位を形成し、前記第1及び前記第2のscFvは、第2の抗原と特異的に結合し、
i)前記第1のポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wを含むか、又はii)前記第1のポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wを含み、
前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L234A、L235A及びP329Gを更に含み、
i)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
ii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iii)前記第1及び第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含むか、又は
iv)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
v)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
vi)前記第1のポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、前記第2のポリペプチドは、突然変異L251S、L314S及びL432Sを含む、
二量体ポリペプチド。
【0427】
52.項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドを製造する方法であって、下記工程:
a)項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドをコードする1種以上の核酸を含む哺乳類細胞を培養する工程、
b)前記二量体ポリペプチドを培養培地から回収する工程、及び
c)前記二量体ポリペプチドをプロテインAアフィニティークロマトグラフィーで精製する工程
を含む方法。
【0428】
53.二量体ポリペプチドのプロテインAとの結合を増加させるための、突然変異Y436Aの使用。
【0429】
54.ホモ二量体ポリペプチドからヘテロ二量体ポリペプチドを分離するための、突然変異H310A、H433A及びY436Aの使用。
【0430】
55.ホモ二量体ポリペプチドからヘテロ二量体ポリペプチドを分離するための、突然変異L251D、L314D、L432D又は突然変異L251S、L314S、L432Sの使用。
【0431】
56.第1のポリペプチド内の突然変異I253A、H310A及びH435Aの、第2のポリペプチド内の突然変異H310A、H433A及びY436Aと組み合わせての、前記第1及び第2のポリペプチドを含むヘテロ二量体ポリペプチドを、ホモ二量体ポリペプチドから分離するための使用。
【0432】
57.第1のポリペプチド内の突然変異I253A、H310A及びH435Aの、第2のポリペプチド内の突然変異L251D、L314D、L432D又は突然変異L251S、L314S、L432Sと組み合わせての、前記第1及び第2のポリペプチドを含むヘテロ二量体ポリペプチドを、ホモ二量体ポリペプチドから分離するための使用。
【0433】
58.前記第1のポリペプチドが、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vを更に含み、前記第2のポリペプチドが、突然変異S354C及びT366Wを含む、項53〜57のいずれか1項記載の使用。
【0434】
59.眼血管疾患の患者の処置方法であって、そのような処置を必要とする患者に対し、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドを投与することによる方法。
【0435】
60.硝子体内適用のための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0436】
61.眼血管疾患処置用の、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0437】
62.項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド及び場合により薬学的に許容し得る担体を含む医薬処方物。
【0438】
63.可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて眼から血液循環に輸送するための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドの使用。
【0439】
64.1種以上の可溶性のレセプターリガンドを眼から除去するための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドの使用。
【0440】
65.眼疾患、特に眼血管疾患を処置するための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドの使用。
【0441】
66.1種以上の可溶性のレセプターリガンドを硝子体内空間から血液循環に輸送するための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドの使用。
【0442】
67.眼疾患を処置するのに使用するための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0443】
68.可溶性のレセプターリガンドの、血液−眼関門を抜けての眼から血液循環への輸送に使用するための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0444】
69.1種以上の可溶性のレセプターリガンドの眼からの除去に使用するための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0445】
70.眼疾患、特に眼血管疾患を処置するのに使用するための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0446】
71.1種以上の可溶性のレセプターリガンドの、硝子体内空間から血液循環への輸送に使用するための、項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチド。
【0447】
72.眼血管疾患を有する個体を処置する方法であって、前記個体に、有効量の項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドを投与する工程を含む方法。
【0448】
73.個体において、可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて眼から血液循環に輸送する方法であって、前記個体に、有効量の項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドを投与して、可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて眼から血液循環に輸送する工程を含む方法。
【0449】
74.個体において、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを眼から除去する方法であって、前記個体に、有効量の項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドを投与して、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを眼から除去する工程を含む方法。
【0450】
75.個体において、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを硝子体内空間から血液循環に輸送する方法であって、前記個体に、有効量の項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドを投与して、1種以上の可溶性のレセプターリガンドを硝子体内空間から血液循環に輸送する工程を含む方法。
【0451】
76.個体において、可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて硝子体内空間又は眼から血液循環に輸送する方法であって、前記個体に、有効量の項1〜51のいずれか1項記載の二量体ポリペプチドを投与して、可溶性のレセプターリガンドを、血液−眼関門を抜けて眼から血液循環に輸送する工程を含む方法。
【実施例】
【0452】
V.実施例
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上記一般的記載に基づいて、その他様々な実施態様を実施し得ることが理解されよう。
【0453】
上記発明は、理解を明確にするために説明及び例によっていくらか詳細に記載してきたが、その説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきものではない。本明細書において引用する全ての特許及び科学的文献の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に組み入れられる。
【0454】
方法
エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)
N−グリカナーゼplus(Roche)0.5μL及びリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7.1)を添加し、最終試料体積115μLを得ることによって、タンパク質アリコート(50μg)を脱グリコシル化した。この混合物を37℃で18時間インキュベートした。その後、還元及び変性のために、4M 塩酸グアニジン(Pierce)に溶かした0.5M TCEP(Pierce)60μL及び8M 塩酸グアニジン50μLを添加した。この混合物を37℃で30分間インキュベートした。サイズ排除クロマトグラフィー(セファロースG−25、アイソクラティック、2%ギ酸を含む40%アセトニトリル)によって試料を脱塩した。ナノESI供給源(TriVersa NanoMate、Advion)を装備されたQ−TOF機器(maXis、Bruker)を用いて、ESI質量スペクトル(+ve)を記録した。MSパラメータ設定は次のとおりであった:移動:ファンネルRF、400Vpp;ISCIDエネルギー、0eV;多重極RF、400Vpp;四重極:イオンエネルギー、4.0eV;低質量、600m/z;供給源:乾燥ガス、8L/分;乾燥ガスの温度、160℃;コリジョンセル:衝突エネルギー、10eV;衝突RF:2000Vpp;イオンクーラー:イオンクーラーRF、300Vpp;移動時間:120μ秒;プレパルス蓄積、10μ秒;スキャン範囲m/z600〜2000。データを評価するために、施設内で開発したソフトウェア(MassAnalyzer)を使用した。
【0455】
FcRn表面プラズモン共鳴(SPR)解析
FcRnに対する野生型抗体及び変異体の結合特性を、BIAcore T100機器(BIAcore AB, Uppsala, Sweden)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって解析した。この方式は、分子相互作用の研究のために十分に確立されている。これにより、リガンド/分析物結合を連続的にリアルタイムでモニタリングし、従って、様々なアッセイ法設定において動態パラメータを測定することが可能になる。SPR技術は、金でコーティングされたバイオセンサーチップの表面近くでの屈折率の測定に基づいている。屈折率の変化から、固定化されたリガンドと溶液中に注入された分析物の相互作用によって引き起こされる表面の質量変化が示唆される。分子が、表面の固定化されたリガンドに結合する場合、質量は増加し、解離する場合は質量が減少する。本アッセイ法においては、400応答単位(RU)のレベルまで、アミンカップリングによってFcRnレセプターをBIAcore CM5バイオセンサーチップ(GE Healthcare Bioscience, Uppsala, Sweden)上に固定化した。アッセイ法は、PBS、0.05%Tween20 pH6.0(GE Healthcare Bioscience)をランニング(running)バッファー及び希釈用緩衝液として用いて室温で実施した。200nMの試料を室温、流速50μL/分で注入した。結合時間は180秒であった。解離相は360秒に及んだ。HBS−P、pH8.0を短時間注入することにより、チップ表面の再生を達成した。注入後180秒及び注入後300秒における生物学的応答シグナルの高さを比較することによって、SPRデータの評価を行った。対応するパラメータは、RU最大レベル(注入後180秒)及び後期の安定性(注入終了後300秒)である。
【0456】
プロテインA表面プラズモン共鳴(SPR)分析
本アッセイは、表面プラズモン共鳴分光法に基づくものである。SPRバイオセンサーの表面に、プロテインAを固定する。SPR分光計のフローセルに試料を注入することにより、それが固定されたプロテインAと複合体を形成し、このことが、センサーチップ表面上における増加する質量をもたらし、従ってより高い応答に至る(1RUは1pg/mm2と定義されているので)。その後、試料−プロテインA複合体を解離することにより、センサーチップを再生させる。次いで、得られた応答を、応答単位(RU)の高い信号及び解離挙動に関して評価する。
【0457】
GE Healthcareのアミンカップリングキットを用いることにより、3500応答単位(RU)程度(20μg/mL)のプロテインAを、CM5チップ(GE Healthcare)上にpH4.0でカップリングさせた。
【0458】
試料及びシステム緩衝液は、HBS−P+(0.01M HEPES、0.15M NaCl、0.005%界面活性剤P20、滅菌濾過、pH7.4)であった。フローセル温度は25℃、試料コンパートメント温度は12℃に設定した。ランニングバッファーでシステムを準備した。次いで、5nM 試料構成体溶液を、流速30μL/分で120秒間注入し、その後300秒の解離相とした。次いで、流速30μL/分で30秒間のグリシン−HCl(pH1.5)注入2回により、センサーチップ表面を再生させた。各試料を3回測定した。
【0459】
【表11】
【0460】
本明細書で使用する用語「突然変異IHH−AAAを伴う」は、IgG1又はIgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異I253A(Ile253Ala)、H310A(His310Ala)及びH435A(His435Ala)の組み合わせ(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)を指し、本明細書で使用する用語「突然変異HHY−AAAを伴う」は、IgG1又はIgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異H310A(His310Ala)、H433A(His433Ala)及びY436A(Tyr436Ala)の組み合わせ(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)を指し、本明細書で使用する用語「突然変異P329GLALAを伴う」は、IgG1サブクラスの定常重鎖領域における突然変異L234A(Leu234Ala)、L235A(Leu235Ala)及びP329G(Pro329Gly)の組み合わせ(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)を指し、本明細書で使用する用語「突然変異SPLEを伴う」は、IgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異S228P(Ser228Pro)及びL235E(Leu235Glu)の組み合わせ(Kabat EUインデックスナンバリングシステムによるナンバリング)を指す。
【0461】
【表12】
【0462】
一般
ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報が、以下において与えられる:Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)。抗体鎖のアミノ酸残基は、EUナンバリングに従ってナンバリングし、参照する(Edelman, G. M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 63 (1969) 78-85; Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, (1991))。
【0463】
リコンビナントDNA技術
Sambrook, J., et al., Molecular cloning: A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, (1989)に記載のようにして、標準的方法を用いてDNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造業者の指示に従って使用した。
【0464】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントを、Geneart(Regensburg, Germany)での所与の仕様に従って注文した。
【0465】
DNA配列決定
DNA配列は、MediGenomix GmbH(Martinsried, Germany)又はSequiserve GmbH(Vaterstetten, Germany)で実施した二本鎖配列決定により決定した。
【0466】
DNA及びタンパク質配列分析並びに配列データ管理
GCGの(Genetics Computer Group, Madison, Wisconsin)ソフトウェアパッケージバージョン10.2及びInfomaxのVector NT1 Advance suite version 8.0を、配列の作成、マッピング、分析、注釈及び図示のために使用した。
【0467】
発現ベクター
記載する抗体の発現のために、CMV−イントロンAプロモーターを伴う、若しくは伴わないcDNA組織化、又はCMVプロモーターを伴うゲノム組織化のいずれかに基づく、一過性発現(例えば、HEK293−Fにおける)のための発現プラスミドを用いた。
【0468】
前記ベクターは、抗体発現カセットの他に、以下を含んだ:
− E. coliにおけるこのプラスミドの複製を可能にする複製の起点、
− E. coliにおけるアンピシリン耐性を付与するβラクタマーゼ遺伝子、及び
− 真核細胞における選択可能なマーカーとしての、ハツカネズミからのジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子。
【0469】
抗体遺伝子の転写単位は、以下の要素で構成された:
−5’末端の固有の制限部位、
−ヒトサイトメガロウイルスからの前初期エンハンサー及びプロモーター、
−cDNA組織化の場合、イントロンA配列が続く、
−ヒト抗体遺伝子の5’非翻訳領域、
−免疫グロブリン重鎖シグナル配列をコードする核酸、
−免疫グロブリンエクソン−イントロン組織化を伴う、cDNAとしての、又はゲノム組織化におけるヒト抗体鎖(野生型、又はドメイン交換を伴うもの)をコードする核酸、
−ポリアデニル化シグナル配列を伴う3’非翻訳領域、及び
−3’末端の固有の制限部位。
【0470】
抗体鎖をコードする核酸を、PCR及び/又は遺伝子合成により生成し、公知のリコンビナント方法及び一致した核酸セグメントの接続により(例えば、それぞれのベクターにおける固有の制限部位を使用し)、組み立てた。サブクローン化した核酸配列を、DNA配列決定により検証した。一過性トランスフェクションのために、より多量のベクターを、形質転換されたE. coli培養物(Nucleobond AX, Macherey-Nagel)からのベクター調製により調製した。
【0471】
細胞培養技術
標準的な細胞培養技術を、Current Protocols in Cell Biology (2000), Bonifacino, J.S., Dasso, M., Harford, J.B., Lippincott-Schwartz, J. and Yamada, K.M. (eds.), John Wiley & Sons, Inc.に記載される通りに使用した。
【0472】
二重特異性抗体は、下記の懸濁液中で成長するHEK29−F細胞中でのそれぞれの発現ベクターの一過性同時トランスフェクションにより発現させた。
【0473】
実施例1
発現及び精製
HEK293−Fシステムにおける一過性トランスフェクション
単一特異性及び二重特異性抗体を、製造者の指示に従ってHEK293−Fシステム(Invitrogen)を用いて、それぞれのベクター(例えば、重鎖及び改変重鎖、並びに対応する軽鎖及び改変軽鎖をコードする)での一過性トランスフェクションにより生成した。簡単には、振盪フラスコ中又は撹拌発酵槽中のいずれかで、無血清FreeStyle(商標)293発現培地(Invitrogen)中、懸濁液中で成長するHEK293−F細胞(Invitrogen)を、それぞれの発現ベクターと、293フェクチン(商標)又はフェクチン(Invitrogen)の混合物を用いてトランスフェクトした。2L振盪フラスコ(Corning)では、HEK293−F細胞を、600mL中、1×10個細胞/mLの密度で播種し、120rpm、8%COでインキュベートした。翌日、細胞を、A)重鎖又は改変重鎖のそれぞれ及び等モル比の対応する軽鎖をコードする600μgの全ベクターDNA(1μg/mL)を含むOpti-MEM(Invitrogen) 20mLと、B)293フェクチン又はフェクチン(2μl/mL) 1.2mLを含むOpti-MEM 20mLの混合物約42mLを用いて、約1.5×10個細胞/mLの細胞密度でトランスフェクトした。グルコース消費に従い、発酵の過程の間にグルコース溶液を加えた。分泌された抗体を含む上清を、5−10日後に採取し、抗体を上清から直接精製するか、又は上清を凍結及び保存した。
【0474】
精製
二重特異性抗体を、細胞培養上清から、MabSelectSure-セファロース(商標)(非IHH−AAA突然変異体用)(GE Healthcare, Sweden)又はkappaSelect-アガロース(IHH−AAA突然変異体用)(GE Healthcare, Sweden)を用いるアフィニティークロマトグラフィー、ブチルセファロース(GE Healthcare, Sweden)を用いる疎水性相互作用クロマトグラフィー及びスーパーデックス200サイズ排除(GE Healthcare, Sweden)クロマトグラフィーにより精製した。
【0475】
簡単には、滅菌濾過した細胞培養上清を、PBS緩衝液(10mM NaHPO、1mM KHPO、137mM NaCl及び2.7mM KCl、pH7.4)で平衡化したMabSelectSuRe樹脂(非IHH−AAA突然変異及び野生型抗体)に捕捉し、平衡緩衝液で洗浄し、pH3.0の25mM クエン酸ナトリウムで溶出した。IHH−AAA突然変異体を、25mM トリス、50mM NaCl、pH7.2を用いて平衡化したkappaSelect樹脂に捕捉し、平衡緩衝液で洗浄し、pH2.9の25mMクエン酸ナトリウムで溶出した。溶出した抗体画分をプールし、2M Tris、pH9.0で中和した。抗体プールは、疎水性相互作用クロマトグラフィー用に、1.6M 硫酸アンモニウム溶液を加えることにより硫酸アンモニウムの最終濃度0.8Mに調製し、酢酸を用いてpHをpH5.0に調整した。35mM 酢酸ナトリウム、0.8M 硫酸アンモニウム、pH5.0でブチルセファロース樹脂を平衡化した後、抗体を樹脂にかけ、平衡緩衝液を用いて洗浄し、35mM 酢酸ナトリウム、pH5.0までの直線勾配を用いて溶出した。抗体(単一特異性又は二重特異性)含有画分をプールし、20mM ヒスチジン、140mM NaCl、pH6.0で平衡化したスーパーデックス200 26/60 GL(GE Healthcare, Sweden)カラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより、更に精製した。抗体(単一特異性又は二重特異性)含有画分をプールし、Vivaspin限外濾過装置(Sartorius Stedim Biotech S.A., France)を用いて必要な濃度まで濃縮し、−80℃で保存した。
【0476】
【表13】
【0477】
純度及び抗体の完全性を、各精製工程後に、マイクロ流体Labchip技術(Caliper Life Science, USA)を使用し、CE−SDSにより分析した。5μlのタンパク質溶液を、製造者の指示に従い、HT Protein Express Reagent Kitを使用してCE−SDS分析用に調製し、HT Protein Express Chipを用いるLabChip GXIIシステムで分析した。データを、LabChip GX Softwareを用いて分析した。
【0478】
【表14】
【0479】
抗体試料の凝集体含量を、2×PBS(20mM NaHPO、2mM KHPO、274mM NaCl及び5.4mM KCl、pH7.4)ランニングバッファー中、スーパーデックス200分析用サイズ排除カラム(GE Healthcare, Sweden)を使用し、高性能SECにより、25℃で分析した。タンパク質25μgを、流速0.75ml/分でカラムに注入し、50分間にわたりアイソクラティックで溶出した。
【0480】
同様にして、抗VEGF/ANG2抗体のVEGF/ANG2-0012及びVEGF/ANG2-0201を調製及び精製し、収量は以下の通りであった:
【0481】
【表15】
【0482】
また、抗VEGF/ANG2二重特異性抗体である、IHH−AAA突然変異を伴い、かつSPLE突然変異を伴う抗VEGF/ANG2 CrossMAb IgG4(配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45)、IHH−AAA突然変異を伴う抗VEGF/ANG2 OAscFab IgG1(配列番号46、配列番号47、配列番号48)、IHH−AAA突然変異及びSPLE突然変異を伴う抗VEGF/ANG2 OAscFab IgG4(配列番号49、配列番号50、配列番号51)、HHY−AAA突然変異及びP329G LALA突然変異を伴う抗VEGF/ANG2 CrossMab IgG1(配列番号90、配列番号91、配列番号40、配列番号41)、HHY−AAA突然変異及びSPLE突然変異を伴う抗VEGF/ANG2 CrossMab IgG4(配列番号92、配列番号93、配列番号44、配列番号45)、HHY−AAA突然変異を伴う抗VEGF/ANG2 OAscFab IgG1(配列番号94、配列番号95、配列番号48)、及びHHY−AAA突然変異及びSPLE突然変異を伴う抗VEGF/ANG2 OAscFab IgG4(配列番号96、配列番号97、配列番号51)、並びに抗IGF-1R単一特異性抗体である、野生型抗IGF-1R(配列番号88、配列番号89)、IHH−AAA突然変異を伴う抗IGF-1R IgG1(配列番号88、配列番号90)、YTE突然変異を伴う抗IGF-1R IgG1(配列番号88、配列番号91)、KiH突然変異を伴う野生型抗IGF-1R IgG1(配列番号88、配列番号92、配列番号93)、KiH突然変異及びホール鎖にIHH−AAA突然変異を伴う抗IGF-1R IgG1(配列番号88、配列番号94、配列番号95)、KiH突然変異及びホール鎖にHHY−AAA突然変異を伴う抗IGF-1R IgG1(配列番号88、配列番号96、配列番号97)、KiH突然変異及びYTE突然変異を伴う抗IGF-1R IgG1(配列番号88、配列番号98、配列番号99)、KiH突然変異及びDDD突然変異を伴う抗IGF-1R IgG1(配列番号88、配列番号100、配列番号101)、及びHHY−AAA突然変異を伴う抗IGF-1R IgG1(配列番号88、配列番号112)を、同様に調製及び精製することができる。
【0483】
実施例2
分析&現像性
小規模DLSベース粘度測定
粘度測定は本質的に、(He, F. et al., Analytical Biochemistry 399 (2009) 141-143)に記載されるようにして実施した。簡単には、試料を、200mMコハク酸アルギニン、pH5.5中の種々のタンパク質濃度に濃縮し、その後、ポリスチレンラテックスビーズ(直径300nm)及びポリソルベート20(0.02%v/v)を添加する。試料を、0.4μmフィルタープレートを通した遠心分離により、光学的384ウェルプレートに移し、パラフィンオイルで覆う。ラテックスビーズの見かけ上の直径を、25℃での動的光散乱により決定する。溶液の粘度を、η=η0(rh/rh、0)(η:粘度;η0:水の粘度;rh:ラテックスビーズの見かけの流体力学的半径;rh、0:水中でのラテックスビーズの流体力学半径)として算出することができる。
【0484】
種々の試料を同じ濃度で比較できるようにするため、ムーニー等式(式1)(Mooney, Colloid Sci, 1951; Monkos, Biochem.Biophys.Acta 1997)を用いて粘度−濃度データをフィッティングし、適宜データを内挿した。
【数1】

(S:タンパク質の流体力学的相互作用パラメータ;K:自己込み合い因子;Φ:溶解したタンパク質の体積分率)
【0485】
結果を図2に示す:Fc領域にIHH−AAA突然変異を伴うVEGF/ANG2-0016は、全ての測定された温度で、Fc部分にIHH−AAA突然変異のないVEGF/ANG2-0015に比して、低い粘度を示す。
【0486】
DLS凝集開始温度
試料は、20mM ヒスチジン/塩酸ヒスチジン、140mM NaCl、pH6.0中、濃度1mg/mLで調製し、0.4μmフィルタープレートを通した遠心分離により光学的384ウェルプレートに移し、パラフィンオイルで覆う。試料を、0.05℃/分の速度で、25℃から80℃まで加熱しつつ、流体力学半径を、動的光散乱により繰り返し測定する。凝集開始温度を、流体力学的半径が増加し始める温度と定義する。結果を図3に示す。Fc部分にIHH−AAA突然変異を伴うVEGF/ANG2-0016に対する、IHH−AAA突然変異のないVEGF/ANG2-0015の凝集を、図3に示す。VEGF/ANG2-0016は、61℃の凝集開始温度を示したのに対し、IHH−AAA突然変異のないVEGF/ANG2-0015は、60℃の開始温度を示した。
【0487】
DLS時間経過
試料は、20mM ヒスチジン/塩酸ヒスチジン、140mM NaCl、pH6.0中、濃度1mg/mLで調製し、0.4μmフィルタープレートを通した遠心分離により光学的384ウェルプレートに移し、パラフィンオイルで覆う。試料を145時間まで50℃の一定温度に保持しつつ、流体力学半径を、動的光散乱により繰り返し測定する。この実験において、高温度でのネイティブな、アンフォールドタンパク質の凝集傾向は、経時的に、平均粒径の増加をもたらしうる。このDLSベースの方法は、凝集物について非常に鋭敏である。なぜなら、凝集物が過剰比例的に散乱光強度に寄与するためである。50℃(凝集開始温度に近い温度、前記を参照)では、145時間後でさえ、VEGF/ANG2-0015及びVEGF/ANG2-0016の両方について、見出された平均粒径の増加はわずかに0.5nm未満であった。
【0488】
100mg/mLにて40℃で7日間保存
試料を、200mM コハク酸アルギニン、pH5.5中、100mg/mLの最終濃度まで濃縮し、滅菌濾過し、静止状態で7日間にわたり40℃で保存する。保存の前と後に、高分子量及び低分子量種(それぞれHMW及びLMW)の含量を、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定する。保存した試料と調製直後に測定した試料の間の、HMW及びLMW含量における差を、それぞれ「HMW増加」及び「LMW増加」として報告する。結果を下記表及び図4に示すが、それらは、VEGF/ANG2-0015(IHH−AAA突然変異なし)が、VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)に比して、主ピークのより高い低下及びより高いHMW増加を示すことを示している。驚くべきことに、VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)は、VEGF/ANG2-0015(IHH−AAA突然変異なし)に比して低い凝集傾向を示した。
【0489】
【表16】
【0490】
抗VEGF/ANG2二重特異性抗体の機能分析は、BIAcore(登録商標)T100又はT200機器(GE Healthcare)を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)により25℃で評価した。BIAcore(登録商標)システムは、分子相互作用の試験のために十分に確立されている。SPR技術は、金コーティングバイオセンサーチップの表面近くでの屈折率の測定に基づく。屈折率の変化は、固定化リガンドと、溶液に注入された分析物の相互作用により起こる、表面上での質量変化を示す。表面に固定化されたリガンドに分子が結合すると、質量が増加し、逆に、固定化リガンドからの分析物の解離(複合体の解離を反映する)の場合、質量は減少する。SPRは、リガンド/分析物の結合の継続的リアルタイムモニタリング及び、よって、会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)及び平衡定数(KD)の決定を可能にする。
【0491】
実施例3
VEGF、ANG2、FcガンマR及びFcRnとの結合
種交差反応性の評価を含む、VEGFアイソフォームの動力学的親和性
約12000共鳴単位(RU)の捕捉システム(10μg/mlヤギ抗ヒトF(ab)’;オーダーコード:28958325;GE Healthcare Bio-Sciences AB, Sweden)を、GE Healthcareにより供給されるアミンカップリングキットを用いて、pH5.0で、CM5チップ(GE Healthcare BR−1005−30)上にカップリングさせた。試料及びシステム緩衝液は、PBS−T(0.05%Tween20を含む10mM リン酸緩衝生理食塩水)pH7.4であった。フローセルを25℃に設定し、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニングバッファー2回で準備した。二重特異性抗体を、5μL/分の流量で、30秒間にわたり50nM 溶液を注入することにより捕捉した。溶液中の種々の濃度(300nMで開始し、1:3希釈)のヒトhVEGF121、マウスmVEGF120又はラットrVEGF164を、30μL/分の流量で、300秒間にわたり注入することにより、会合を測定した。解離相を1200秒間までモニターし、試料溶液からランニングバッファーへの切り替えにより誘発した。流速30μL/分でのグリシンpH2.1溶液による60秒間の洗浄により、表面を再生した。バルク屈折率の差を、ヤギ抗ヒトF(ab’)表面から得られた応答を減算することにより補正した。ブランク注入も減算する(=二重参照)。見かけのKDその他の動力学的パラメータの算出のために、ラングミュア1:1モデルを使用した。結果を以下に示す。
【0492】
種交差反応性の評価を含むANG2溶液親和性
溶液親和性は、平衡混合物中の遊離の相互作用パートナーの濃度を決定することにより、相互作用の親和性を測定する。溶液親和性アッセイは、抗VEGF/ANG2抗体(一定濃度に保つ)の、種々の濃度のリガンド(=ANG2)との混合を含む。最大の可能な共鳴単位(例えば、17000共鳴単位(RU))の抗体を、GE Healthcareにより供給されるアミンカップリングキットを用い、pH5.0で、CM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)表面に固定化した。試料及びシステム緩衝液は、HBS−P pH7.4であった。フローセルを25℃に、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニングバッファー2回で準備した。検量線を作成するために、ANG2を、濃度を増加させて、固定化抗VEGF/ANG2抗体を含むBIAcoreフローセルに注入した。結合したANG2の量を共鳴単位(RU)で決定し、濃度に対してプロットした。各リガンド溶液(抗VEGF/ANG2抗体について、0〜200nMまでの11濃度)を、10nM ANG2と共にインキュベートし、室温で平衡に到達させた。既知量のANG2を含む溶液の応答を測定する前後に生成した遊離のANG2濃度を、検量線から決定した。4パラメータ適合を、遊離ANG2濃度をy軸、阻害のために使用した抗体の濃度をx軸として用いるモデル201を用い、XLfit4(IDBS Software)を用いて設定した。親和性は、この曲線の変曲点を決定することにより算出した。0.85%HPO溶液による、流速30μL/分で30秒間の洗浄1回により、表面を再生した。バルク屈折率の差を、ブランクカップリング表面から得られた応答を、減算することにより補正した。結果を以下に示す。
【0493】
FcRnの定常状態の親和性
FcRn測定のために、定常状態の親和性を用いて、二重特異性抗体を互いに比較した。ヒトFcRnをカップリング緩衝液(10μg/ml、酢酸Na、pH5.0)中に希釈し、BIAcore wizardを用いる標的固定化手順により、最終応答200RUとなるよう、C1-Chip(GE Healthcare BR-1005-35)上に固定化した。フローセルを25℃に、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニングバッファー2回で準備した。試料及びシステム緩衝液は、PBS−T(0.05%Tween20を含む10mM リン酸緩衝生理食塩水)pH6.0であった。各抗体について異なるIgG濃度を評価するために、濃度62.5nM、125nM、250nM及び500nMを調製した。流速を30μL/分に設定し、種々の試料をチップ表面に連続的に注入し、180秒の会合時間を選んだ。流速30μL/分で60秒間にわたり注入したPBS−T pH8により、表面を再生した。バルク屈折率の差は、ブランク表面から得られた応答を、減算することにより補正した。緩衝液注入も減算する(=二重参照)。定常状態の親和性を算出するために、BIA-Evaluation softwareからの方法を使用した。簡単には、RU値を分析された濃度に対してプロットし、用量反応曲線を生成した。2パラメトリック適合に基づき、上部漸近線を算出し、最大半量RU値、そして親和性の決定を可能にする。結果を図5及び下記表に示す。同様に、カニクイザル、マウス及びウサギFcRnとの親和性を決定することができる。
【0494】
FcガンマRIIIa測定
FcガンマRIIIa測定のために、直接結合アッセイを使用した。約3000共鳴単位(RU)の捕捉システム(1μg/ml Penta-His;Quiagen)を、GE Healthcareにより供給されるアミンカップリングキットを用いることにより、pH5.0で、CM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)上にカップリングさせた。試料及びシステム緩衝液は、HBS−P+ pH7.4であった。フローセルを25℃に、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニングバッファー2回で準備した。FcガンマRIIIa−His−レセプターを、流量5μL/分で60秒間にわたり、100nM溶液を注入することにより捕捉した。100nMの、二重特異性抗体又は単一特異性対照抗体(IgG1サブクラス及びIgG4サブクラス抗体に対し、抗ジゴキシゲニン抗体)の流量30μL/分での180秒にわたる注入により、結合を測定した。流速30μL/分でのグリシンpH2.5溶液による120秒間の洗浄により、表面を再生した。FcガンマRIIIa結合は、ラングミュア1:1モデルと異なるため、結合/無結合だけを、このアッセイを用いて決定した。同様の様式において、FcガンマRIa及びFcガンマRIIa結合を決定することができる。結果を図6に示し、そこでは、変異P329G LALAの導入により、FcガンマRIIIaへの結合がそれ以上検出できなかった、という結果になっている。
【0495】
抗VEGF/ANG2抗体との独立したVEGF及びANG2結合の評価
約3500共鳴単位(RU)の捕捉システム(10μg/mLヤギ抗ヒトIgG;GE Healthcare Bio-Sciences AB, Sweden)を、GE Healthcareにより供給されるアミンカップリングキットを用いることにより、pH5.0で、CM4チップ(GE Healthcare BR-1005-34)上にカップリングさせた。試料及びシステム緩衝液は、PBS−T(0.05%Tween20を含む10mM リン酸緩衝生理食塩水)pH7.4であった。フローセルの温度を25℃に、サンプルブロックの温度を12℃に設定した。捕捉前に、フローセルを、ランニングバッファー2回で準備した。
【0496】
二重特異性抗体を、流量5μL/分で60秒間にわたり10nM溶液を注入することにより捕捉した。二重特異性抗体との各リガンドの独立した結合を、順次又は同時に加えた(30μL/分の流量)、各リガンドについての活性な結合能力を決定することにより分析した:
1.180秒間にわたる濃度200nMのヒトVEGFの注入(抗原の単独結合を同定する)。
2.180秒間にわたる濃度100nMのヒトANG2の注入(抗原の単独結合を同定する)。
3.180秒間にわたる濃度200nMのヒトVEGFの注入と、それに続く180秒間にわたる濃度100nMのヒトANG2の追加注入(VEGFの存在下でのANG2の結合を同定する)。
4.180秒間にわたる濃度100nMのヒトANG2の注入と、それに続く濃度200nMのヒトVEGFの追加注入(ANG2の存在下におけるVEGFの結合を同定する)。
5.180秒間にわたる、濃度200nMのヒトVEGF及び濃度100nMのヒトANG2の同時注入(VEGF及びANG2の結合を同時に同定する)。
【0497】
流速30μL/分での3M MgCl溶液による60秒間の洗浄により、表面を再生した。バルク屈折率の差を、ヤギ抗ヒトIgG表面から得られた応答を減算することにより補正した。
【0498】
アプローチ3、4及び5の結果として得られた最終シグナルが、アプローチ1及び2の個々の最終シグナルの和と等しい又はそれと同様である場合、二重特異性抗体は、両方の抗原と互いに独立に結合することができる。結果を下記表において示し、そこでは、抗体VEGF/ANG2-0016、VEGF/ANG2-0012の両者が、VEGF及びANG2に互いに独立に結合することができることが示されている。
【0499】
抗VEGF/ANG2抗体とのVEGF及びANG2の同時結合の評価
第1に、約1600共鳴単位(RU)のVEGF(20μg/ml)を、GE Healthcareにより供給されるアミンカップリングキットを使用することにより、pH5.0で、CM4チップ(GE Healthcare BR-1005-34)上にカップリングさせた。試料及びシステム緩衝液は、PBS−T(0.05%Tween20を含む10mM リン酸緩衝生理食塩水)pH7.4であった。フローセルを25℃に、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニングバッファー2回で準備した。第2に、二重特異性抗体の50nM溶液を、流量30μL/分で180秒間にわたり注入した。第3に、hANG2を、流量30μL/分で180秒間にわたり注入した。hANG2の結合応答は、VEGFと結合した二重特異性抗体の量に依存し、同時結合を示す。流速30μL/分での0.85%HPO溶液による60秒間の洗浄により、表面を再生した。先にVEGFと結合した抗VEGF/ANG2抗体への、hANG2の追加の特異的な結合のシグナルにより、同時結合が示される。二重特異性抗体VEGF/ANG2-0015及びVEGF/ANG2-0016の両者について、抗VEGF/ANG2抗体へのVEGF及びANG2の同時結合を検出することができた(データは示されていない)。
【0500】
【表17】
【0501】
【表18】
【0502】
【表19】
【0503】
【表20】
【0504】
【表21】
【0505】
実施例4
質量分析法
このセクションでは、正確な組み立てに重点を置き、抗VEGF/ANG2抗体の特徴付けを記載する。予想される一次構造を、脱グリコシル化された、インタクトな又はIdeS消化された(S. pyogenesのIgG分解酵素)抗VEGF/ANG2抗体のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)により確認した。IdeS消化は、精製抗体 100μgを用い、これをIdeSプロテアーゼ(Fabricator) 2μg(100mmol/L NaHPO/NaHPO、pH7.1中)と共に、37℃で5時間インキュベートして行った。その後、抗体を、1mg/mLのタンパク質濃度で、N−グリコシダーゼF、ノイラミニダーゼ及びO−グリコシダーゼ(100mmol/L NaHPO/NaHPO、pH7.1中)(Roche)を用い、37℃で16時間まで脱グリコシル化し、その後、セファデックス G25カラム(GE Healthcare)上でのHPLCにより脱塩した。全質量を、TriVersa NanoMateソース(Advion)を備えたmaXis 4G UHR-QTOF MSシステム(Bruker Daltonik)上で、ESI−MSにより決定した。
【0506】
IdeS消化して脱グリコシル化した(下記表)、又はインタクトで脱グリコシル化した(表下記)分子について得られた質量は、2つの異なる軽鎖LCANG2及びLCLucentis、並びに2つの異なる重鎖HCANG2及びHCLucentisからなる抗VEGF/ANG2抗体についてのアミノ酸配列から推定される予測質量に対応する。
【0507】
【表22】
【0508】
【表23】
【0509】
実施例5
Fc−Rnクロマトグラフィー
ストレプトアビジンセファロースとのカップリング:
ビオチン化し、透析したレセプターに、ストレプトアビジンセファロース(GE Healthcare) 1gを添加し、振盪しつつ2時間インキュベートした。レセプター誘導化セファロースを、1mL XKカラム(GE Healthcare)に充填した。
【0510】
FcRnアフィニティーカラムを用いるクロマトグラフィー:
条件:
カラム寸法:50mm×5mm
ベッド高さ:5cm
負荷:試料50μg
平衡緩衝液:150mM NaClを含む20mM MES、pH5.5に調整
溶出緩衝液:150mM NaClを含む20mM トリス/HCl、pH8.8に調整
溶出:7.5CV平衡緩衝液から(30CV)、100%溶出緩衝液へ(10CV溶出緩衝液)
【0511】
ヒトFcRnアフィニティーカラムクロマトグラフィー
ヒトFcRnを含むアフィニティーカラム上での抗VEGF/ANG2抗体の保持時間を下記表に示す。データは前記条件下で得た。
【0512】
【表24】
【0513】
実施例6
IHH−AAA突然変異を伴う抗体の薬物動力学的(PK)特性
ヒトFcRnについてトランスジェニックなFc−Rnマウスを用いたPKデータ
生存中相:
研究対象には、マウスFcRn欠損であるが、ヒトFcRn(huFcRn、系統276−/tg)についてはヘミ接合性トランスジェニックである、雌性C57BL/6Jマウス(バックグラウンド)を含めた。
【0514】
パート1:
全てのマウスに対し、2μL/動物の適切な溶液(即ち、21μg化合物/動物(VEGF/ANG2-0015(IHH−AAA突然変異なし))、又は23.6μg化合物/動物(VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う))を用いて、右眼中に1回、硝子体内に注入した。
【0515】
マウスを、各6匹ずつ2群に割り振った。血液試料を、投与後、群1からは2、24及び96時間目に、群2からは7、48及び168時間目に採取する。
【0516】
マウス右眼の硝子体内への注入は、ナノリットル注入用NanoFil Microsyringeシステム(World Precision Instruments, Inc., Berlin, Germany)を用いて実施した。2.5%イソフルランでマウスを麻酔し、マウス眼球の視覚化のために、Leica MZFL3顕微鏡(倍率40倍、Leica KL2500 LCDによる照明(lightning)のリングライト併用)を使用した。その後、2μLの化合物を、35ゲージ針を使用して注入した。
【0517】
血清中の化合物レベルの測定のために、各々の動物から、反対の眼の球後静脈叢を介して血液を採取した。
【0518】
室温で1時間置いた後の血液から、少なくとも50μLの血清試料を、4℃で3分間の遠心分離(9300xg)により得た。血清試料を、遠心分離の直後に凍結し、分析まで−80℃で凍結保存した。処理した眼球を、群1の動物では処理後96時間目に、群2の動物では処理後168時間目に単離した。試料を、分析まで−80℃で凍結保存した。
【0519】
パート2:
全てのマウスに対し、200μL/動物の適切な溶液(即ち、21μg化合物/動物(VEGF/ANG2-0015(IHH−AAA突然変異なし))、又は23.6μg化合物/動物(VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う))を用いて、尾静脈を介して1回、静脈内に注入した。
【0520】
マウスを、各5匹ずつ2群に割り振った。血液試料を、投与後、群1からは1、24及び96時間目に、群2からは7、48及び168時間目に採取する。血清中の化合物レベルの測定のために、各々の動物から、球後静脈叢を介して血液を採取した。
【0521】
室温で1時間置いた後の血液から、少なくとも50μLの血清試料を、4℃で3分間の遠心分離(9300xg)により得た。血清試料を、遠心分離の直後に凍結し、分析まで−80℃で凍結保存した。
【0522】
全眼球溶解物(マウス)の調製
実験動物からの眼球全体の物理化学的分解により、眼球溶解物を得た。機械的破壊のために、各々の眼球を、底が円錐形の1.5mLマイクロバイアルに移した。凍結及び解凍後、細胞洗浄緩衝液(Bio-Rad, Bio-Plex Cell Lysis Kit, Cat. No. 171-304011) 1mLを用いて、眼球を1回洗浄した。次工程において、新たに調製した細胞溶解緩衝液 500μLを添加し、1.5mL組織破砕用乳棒(Kimble Chase, 1.5 mL pestle, Art. No. 749521-1500)を用いて眼球を破砕した。次いで、混合物を5回凍結及び解凍し、再度粉砕した。残存組織から溶解物を分離するため、試料を、4500×gで4分間遠心分離した。遠心分離後、上清を回収し、定量ELISAにおける更なる分析まで、−20℃で保存した。
【0523】
分析
マウス血清及び眼球溶解物中の抗VEGF/ANG2抗体の濃度を、固相酵素免疫検定法(ELISA)を用いて決定した。
【0524】
マウス血清試料及び眼球溶解物中の抗VEGF/ANG2抗体の定量のため、捕捉抗体及び検出抗体としてビオチン化及びジゴキシゲニン化モノクローナル抗体を用いた、標準的な固相シリアルサンドイッチイムノアッセイを実施した。分析物の二重特異性の完全性を検証するため、ビオチン化捕獲抗体が、VEGF結合部位を認識するのに対し、ジゴキシゲニン化検出抗体は、分析物のANG2結合部位に結合しうる。ストレプトアビジンコーティングしたマイクロタイタープレート(SA−MTP)の固相上の、捕捉抗体、分析物及び検出抗体の結合免疫複合体を、次に、抗ジゴキシゲニン抗体とカップリングさせた西洋ワサビペルオキシダーゼを用いて検出する。SA−MTPからの非結合物質を洗浄し、ABTS基質を添加した後、得られたシグナルは、SA−MTPの固相上に結合した分析物の量に比例している。次に、試料の測定シグナルを、並列で分析したキャリブレータを参照して濃度に変換することにより、定量を行う。
【0525】
第1工程において、SA−MTPを、100μL/ウェルの、濃度1μg/mLのビオチン化捕捉抗体溶液(mAb<Id<VEGF>>M-2.45.51-IgG-Bi(DDS)、抗イディオタイプ抗体)により、MTPシェイカー上で1時間、500rpmでコーティングした。その間に、キャリブレータ、QC−試料及び試料を調製した。キャリブレータ及びQC−試料は、2%血清マトリクスに希釈する;試料を、シグナルがキャリブレータの直線範囲内になるまで希釈した。
【0526】
捕捉抗体でSA−MTPをコーティングした後、洗浄緩衝液で、プレートを300μL/ウェルで3回洗浄した。その後、100μL/ウェルのキャリブレータ、QC−試料及び試料を、SA−MTP上でピペッティングし、500rpmで1時間再びインキュベートした。かくして、分析物は、その抗VEGF結合部位により、捕捉抗体を介してSA−MTPの固相に結合した。インキュベート及び洗浄による非結合分析物の除去後、100μL/ウェルの第1検出抗体(mAb<Id-<ANG2>>M-2.6.81-IgG-Dig(XOSu)、抗イディオタイプ抗体)(濃度250ng/mL)をSA−MTPに添加した。プレートを、シェイカー上で500rpmで1時間再度インキュベートした。洗浄後、100μL/ウェルの第2検出抗体(pAb<ジゴキシゲニン>S-Fab-POD(ポリ))(濃度50mU/mL)を、SA−MTPのウェルに加え、プレートを、500rpmで1時間再度インキュベートした。過剰の検出抗体を除去するための最終洗浄工程後、100μL/ウェルの基質(ABTS)を加える。抗体−酵素コンジュゲートは、ABTS(登録商標)基質の呈色反応を触媒する。次いで、ELISAリーダーにより、波長405nm(参照波長:490nm([405/490]nm))でシグナルを測定した。
【0527】
薬物動力学的評価
薬物動力学的評価プログラムWinNonlin(商標)(Pharsight)、バージョン5.2.1を用いて、非コンパートメント分析により薬物動態学的パラメータを算出した。
【0528】
結果:
A)血清中濃度
血清中濃度についての結果を、下記表及び図7B〜7Cに示す。
【0529】
【表25】
【0530】
【表26】
【0531】
【表27】
【0532】
【表28】
【0533】
結果:
B)左眼及び右眼の眼球溶解物中の濃度
眼球溶解物中の濃度についての結果を、下記表及び図7D〜7Eに示す。
【0534】
【表29】
【0535】
【表30】
【0536】
【表31】
【0537】
【表32】
【0538】
結果の要約:
硝子体内適用後、本明細書において報告される二重特異性抗VEGF/ANG2抗体VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)は、IHH−AAA突然変異のない二重特異性抗VEGF/ANG2抗体であるVEGF/ANG2-0015に比して、同様の眼球溶解物中の濃度(96及び168時間後)を示す。
【0539】
また、加えて、硝子体内適用後、本明細書において報告される二重特異性抗VEGF/ANG2抗体VEGF/ANG2-0016(IHH−AAA突然変異を伴う)は、IHH−AAA突然変異のない二重特異性抗VEGF/ANG2抗体であるVEGF/ANG2-0015に比して、血清中でのより速いクリアランス及びより短い半減期を示す。
【0540】
実施例7
マウス角膜マイクロポケット血管形成アッセイ
各々、配列番号20及び21のVEGF結合性VH及びVL、並びに配列番号28及び29のANG2結合性VH及びVLを有する、二重特異性抗VEGF/ANG2抗体の、インビボVEGF誘導血管形成に対する抗血管形成効果を試験するために、マウス角膜血管形成アッセイを実施した。このアッセイにおいては、VEGFを浸したNylafloディスクを、角膜縁血管までの距離を一定にして、無血管角膜のポケット内に埋め込んだ。血管は直ちに、角膜内の方に、発生中のVEGF勾配に向かって成長する。8〜10週齢の雌性Balb/cマウスを、Charles River(Sulzfeld, Germany)から購入した。プロトコールは、Rogers, M.S., et al., Nat. Protoc. 2 (2007) 2545-2550により記載された方法に従って改変する。簡単には、幅約500μmのマイクロポケットを、麻酔したマウスにおいて、外科用ブレード及び鋭利なピンセットを用い、角膜縁から約1mmの位置に、角膜上部に向かって、顕微鏡下で調製する。直径0.6mmのディスク(Nylaflo(登録商標), Pall Corporation, Michigan)を埋め込み、埋め込んだ領域の表面を平滑化した。ディスクを、対応する成長因子又は賦形剤中で、少なくとも30分間インキュベートする。3、5及び7日後(又は、これに替えて、3、5又は7日後だけ)、眼の写真を撮影し、血管応答を測定する。角膜の全面積当たりの、新たな血管の面積のパーセンテージを算出することにより、アッセイを数値化する。
【0541】
ディスクに300ngのVEGF、又は対照としてのPBSを含ませ、7日間埋め込む。角膜縁からディスクまでの血管の伸長を、3、5及び/又は7日目に経時的にモニターする。ディスク埋め込みの1日前、10mg/kgの用量で抗体を静脈内投与し、VEGF誘導性血管形成に対する抗血管形成効果をインビボで試験する(静脈内適用であるため、血清中で安定なVEGF/ANG2-0015(IHH−AAA突然変異なし)(VEGF/ANG2-0016とは、IHH−AAA突然変異だけが異なり、効力を媒介する同じVEGF及びANG2結合性VH及びVLを有する)を、代用物として使用する)。対照群における動物は、賦形剤を受ける。適用容積は10mL/kgである。
【0542】
実施例8
HHY−AAA突然変異を伴う抗体の薬物動力学的(PK)特性
ヒトFcRnについてトランスジェニックなFc−Rnマウスを用いたPKデータ
生存中相:
研究対象には、マウスFcRn欠損であるが、ヒトFcRn(huFcRn、系統276−/tg)についてはヘミ接合性トランスジェニックである、雌性C57BL/6Jマウス(バックグラウンド)を含めた。
【0543】
パート1:
全てのマウスに対し、IGF-1R 0033、IGF-1R 0035、IGF-1R 0045の適切な溶液(即ち、22.2μg化合物/動物のIGF-1R 0033、24.4μg化合物/動物のIGF-1R 0035、32.0μg化合物/動物のIGF-1R及び32.0μg化合物/動物のIGF-1R 0045)を用いて、右眼中に1回、硝子体内に注入した。
【0544】
マウス13匹を、各々6匹と7匹の2群に割り振った。血液試料を、投与後、群1からは2、24及び96時間目に、群2からは7、48及び168時間目に採取する。
【0545】
マウス右眼の硝子体内への注入は、ナノリットル注入用NanoFil Microsyringeシステム(World Precision Instruments, Inc., Berlin, Germany)を用いて実施した。2.5%イソフルランでマウスを麻酔し、マウス眼球の視覚化のために、Leica MZFL3顕微鏡(倍率40倍、Leica KL2500 LCDによる照明(lightning)のリングライト併用)を使用した。その後、2μLの化合物を、35ゲージ針を使用して注入した。
【0546】
血清中の化合物レベルの測定のために、各々の動物から、反対の眼の球後静脈叢を介して血液を採取した。
【0547】
室温で1時間置いた後の血液から、少なくとも50μLの血清試料を、4℃で3分間の遠心分離(9300xg)により得た。血清試料を、遠心分離の直後に凍結し、分析まで−80℃で凍結保存した。処理した眼球を、群1の動物では処理後96時間目に、群2の動物では処理後168時間目に単離した。試料を、分析まで−80℃で凍結保存した。
【0548】
パート2:
全てのマウスに対し、IGF-1R 0033、IGF-1R 0035、IGF-1R 0045の適切な溶液(即ち、22.2μg化合物/動物のIGF-1R 0033、24.4μg化合物/動物のIGF-1R 0035、32.0μg化合物/動物のIGF-1R及び32.0μg化合物/動物のIGF-1R 0045)を用いて、尾静脈を介して1回、静脈内に注入した。
【0549】
マウス12匹を、各6匹ずつ2群に割り振った。血液試料を、投与後、群1からは1、24及び96時間目に、群2からは7、48及び168時間目に採取する。血清中の化合物レベルの測定のために、各々の動物から、球後静脈叢を介して血液を採取した。
【0550】
室温で1時間置いた後の血液から、少なくとも50μLの血清試料を、4℃で3分間の遠心分離(9300xg)により得た。血清試料を、遠心分離の直後に凍結し、分析まで−80℃で凍結保存した。
【0551】
細胞溶解緩衝液の調製
factor 1 100μL、factor 2 50μL及び細胞溶解緩衝液 24.73mL(いずれもBio-Rad, Bio-Plex Cell Lysis Kit, Cat. No. 171-304011)を注意深く混合し、PMSF溶液(フェニルメチルスルホニルフルオリド 174.4mg、2.0mL DMSO中に希釈) 125μLを添加する。
【0552】
全眼球溶解物(マウス)の調製
実験動物からの眼球全体の物理化学的分解により、眼球溶解物を得た。機械的破壊のために、各々の眼球を、底が円錐形の1.5mLマイクロバイアルに移した。解凍後、細胞洗浄緩衝液(Bio-Rad, Bio-Plex Cell Lysis Kit, Cat. No. 171-304011) 1mLを用いて、眼球を1回洗浄した。次工程において、新たに調製した細胞溶解緩衝液 500μLを添加し、1.5mL組織破砕用乳棒(VWR Int., Art. No. 431-0098)を用いて眼球を破砕した。次いで、混合物を5回凍結及び解凍し、再度粉砕した。残存組織から溶解物を分離するため、試料を、4500×gで4分間遠心分離した。遠心分離後、上清を回収し、定量ELISAにおける更なる分析まで、−20℃で保存した。
【0553】
分析(血清)
マウス血清試料中の抗体の定量のため、捕捉抗体及び検出抗体としてビオチン化及びジゴキシゲニン化モノクローナル抗体を用いた、標準的な固相シリアルサンドイッチイムノアッセイを実施した。血清は、全血液試料体積の約50%を占める。
【0554】
より詳細には、マウス血清試料中の抗体の濃度を、ヒト−IgG(Fab)特異的な固相酵素免疫検定法を用いて決定した。ストレプトアビジンコーティングしたマイクロタイタープレートを、捕捉抗体としての、アッセイ緩衝液で希釈したビオチン化抗ヒトFab(kappa)モノクローナル抗体M−1.7.10−IgGと共に、撹拌しつつ室温で1時間インキュベートした。リン酸緩衝生理食塩水−ポリソルベート20(Tween20)で3回洗浄後、種々の希釈度の血清試料を添加し、次いで第2のインキュベーションを室温で1時間行った。繰り返して3回洗浄後、これに続く、ジゴキシゲニンとコンジュゲートした抗ヒトFab(CH1)モノクローナル抗体M−1.19.31−IgG、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした抗ジゴキシゲニン抗体とのインキュベーションにより、結合した抗体を検出した。HRPの基質としてABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸);Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を用い、呈色反応生成物を形成した。得られた反応生成物の吸光度を、405nm(ABTS;参照波長:490nm)で読み取った。
【0555】
全ての試料、陽性及び陰性対照試料は反復して分析し、提供された抗体標準品に対して校正した。
【0556】
分析(眼球溶解物)
マウス眼球溶解物試料における分析物の濃度は、非GLP条件下での、ELECSYS(登録商標)機器プラットフォーム(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に基づく適格(qualified)電気化学発光免疫測定法(ECLIA)を用いて決定した。
【0557】
希釈していない上清(眼球溶解物)を、捕捉及び検出分子と共に37℃で9分間インキュベートした。ビオチン化抗ヒト−Fab(kappa)モノクローナル抗体M−1.7.10−IgGを捕捉分子として用い、ルテニウム(II)トリス(ビスピリジル)2+ラベル化抗ヒト−Fab(CH1)モノクローナル抗体M−1.19.31−IgGを検出に用いた。ストレプトアビジンコーティングした磁性微粒子を加え、37℃で9分間更にインキュベートして、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用により、先に形成された免疫複合体を結合させた。微粒子を電極上に磁気的に捕捉し、共反応剤のトリプロピルアミン(TPA)を用いて化学発光シグナルを発生させた。得られたシグナルを、光電子倍増管検出器により測定した。
【0558】
【表33】
【0559】
【表34】
【0560】
【表35】
【0561】
結果:
A)血清中濃度
血清中濃度についての結果を下記表及び図17に示す。
【0562】
【表36】
【0563】
【表37】
【0564】
【表38】
【0565】
【表39】
【0566】
結果:
B)左眼及び右眼の眼球溶解物中の濃度
眼球溶解物中の濃度についての結果を、下記表及び図18〜20に示す。
【0567】
【表40】
【0568】
【表41】
【0569】
【表42】
【0570】
【表43】
【0571】
【表44】
【0572】
【表45】
【0573】
【表46】
【0574】
結果の要約:
硝子体内適用後、本明細書において報告される抗IGF−1R抗体0035及び0045(一方又は両方にHHY−AAA突然変異を伴う)は、HHY−AAA突然変異のない抗IGF−1R抗体(IGF-1R 0033)に比して、同様の眼球溶解物中の濃度(96及び168時間後)を示す。
【0575】
また、加えて、硝子体内適用後、本明細書において報告される抗IGF−1R抗体0035及び0045(一方又は両方にHHY−AAA突然変異を伴う)は、HHY−AAA突然変異のない抗IGF−1R抗体(IGF-1R 0033)に比して、血清中でのより速いクリアランス及びより短い半減期を示す。
【0576】
上記発明は、理解を明確にするために説明及び例によっていくらか詳細に記載してきたが、その説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきものではない。本明細書において引用する全ての特許及び科学的文献の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]