(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の方法では、FPC製品を金型で打ち抜く外形加工を行う前に、微粘着フィルムに基板シートを貼り合わせている。そして、上述した検査工程および外形加工を行った後に、基板シートのうちFPC製品以外の余分な部分(スクラップ部分)は、微粘着フィルムから剥がすようにしている。また、不良品についても、微粘着フィルムから剥がすようにしている。
【0007】
しかしながら、現状では、スクラップ部分や不良品を微粘着フィルムから剥がす作業は、人手を介して行っている。したがって、スクラップ部分を剥がす工程に加えて、不良品を剥がす工程が必要となり、工数が多くなる、という問題がある。
【0008】
また、作業者が、不良品と良品とを取り違えるヒューマンエラーが生じる場合もある。その場合、不良品が誤って出荷されてしまい、信頼性の低下を招いてしまう。このような問題は、特許文献1に特許文献2を組み合わせても、解決することは困難である。
【0009】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、不良品を剥がす手間を低減可能であると共に、不良品を確実に廃棄することが可能なフレキシブルプリント基板の製造方法およびフレキシブルプリント基板の製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、基板シートから複数の製品部分となるフレキシブルプリント基板を製造するフレキシブルプリント基板の製造方法であって、基板シートに複数の回路パターンを形成して製品部分を形成する回路形成工程と、回路形成後に、基板シートのうち廃棄するスクラップ部分から接続部を除いて製品部分を切り離す外形切り離し工程と、製品部分に対して所定の検査を行い、製品部分が異常のない良品であるか異常のある不良品であるか否かを検査する検査工程と、検査工程において良品であると判定された製品部分の接続部をレーザ光を用いて切断する一方、検査工程において不良と判定された不良品の接続部は切断せずに接続された状態とするレーザ切断工程と、を具備
し、レーザ切断工程に先立って、基板シートに対して微粘着フィルムを貼り合わせてフィルム接合体を形成する貼り合わせ工程を行うと共に、レーザ切断工程後に、少なくともスクラップ部分を微粘着フィルムから剥がす剥がし工程を行い、スクラップ部分を基板シートから剥がすと、不良品も基板シートから剥がされ、微粘着フィルムには、良品であると判断された製品部分が残存する、ことを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法が提供される。
【0012】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、検査工程は、それぞれの製品部分に対して、電気的な導通不良が存在しないか否かを電気検査装置を用いて検査する電気検査工程である、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、電気検査工程では、電気検査装置での電気検査において少なくとも不良と判定された製品部分に関する位置情報が、レーザ切断工程で用いられるレーザ加工装置に送信される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、不良品を剥がす手間を低減可能であると共に、不良品を確実に廃棄することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係るフレキシブルプリント基板の製造方法およびフレキシブルプリント基板の製造システム10について、以下に説明する。
【0018】
<基板シートおよびフィルム接合体について>
最初に、製品となるフレキシブルプリント基板(FPC製品30)が形成されている基板シート20およびフィルム接合体50について説明する。
図1は、複数のFPC製品30が形成された基板シート20およびフィルム接合体50を示す平面図である。
【0019】
ポリイミドと銅箔を接着した基板素材に対して、エッチング等の通常のフォトファブリケーション手法を行い、その他穴開け加工やメッキ処理等を経ることで、基板シート20には複数のFPC製品30が形成される。このとき、基板シート20には、複数のFPC製品30の他に、後に廃棄されるスクラップ部分21と、スクラップ部分21とそれぞれのFPC製品30を接続する接続部22とが設けられている。接続部22は、本実施の形態では、レーザ加工装置を用いて切断される部分である。この接続部22が切断されると、基板シート20からFPC製品30を取り出すことが可能となる。
【0020】
また、所定の検査に合格する良品としてのFPC製品30の他に、たとえば電流の導通などに問題があり、不良と判定されるFPC製品30(以下の説明では、不良と判定されるFPC製品30については、不良品31と称呼する)も形成される場合がある。
図1では、良品のFPC製品30の他に、不良品31も形成された状態が示されている。
【0021】
また、
図1に示す基板シート20には、微粘着フィルム40が貼り付けられて、フィルム接合体50を構成している。微粘着フィルム40は、たとえばPET(polyethylene terephthalate)のような基材の表面に、微粘着剤が塗布されたものであり、基板シート20に粘着される。また、微粘着フィルム40から基板シート20のスクラップ部分21やFPC製品30等を容易に剥がすこともできる。
【0022】
図2は、
図1に示すフィルム接合体50からスクラップ部分21を剥がした状態を示す平面図である。
図1に示すフィルム接合体50に対して、たとえば、レーザ加工によって接続部22を切断し、スクラップ部分21を剥がして廃棄すると、
図2に示す状態となる。このとき、FPC製品30は微粘着フィルム40に保持された状態とすることができる。なお、上記のような微粘着フィルム40を用いずに、FPC製品30を製造しても良い。
【0023】
<フレキシブルプリント基板の製造方法について>
次に、フレキシブルプリント基板の製造方法について、以下に説明する。
図3は、フレキシブルプリント基板の製造方法のイメージを示すフロー図である。
【0024】
(1)ステップS1:回路形成工程の実施
図3に示すように、フレキシブルプリント基板を製造する場合、未加工の基板シート20に対し、上述したようなエッチング等の通常のフォトファブリケーション手法を行い、その他穴開け加工やめっき処理等を経る回路形成工程を実施する。このとき、個々のFPC製品30に対応する部分毎に、回路パターンやめっき部分が形成される。
【0025】
(2)ステップS2:外形切離し工程の実施
この回路形成工程の後に、外形切り離し工程を実施する。外形切り離し工程では、金型を用いて、FPC製品30の外形を打ち抜くように形成する。この外形切り離し工程では、接続部22を除いたFPC製品30の周囲が打ち抜かれる。それにより、FPC製品30の外形が形成されるが、FPC製品30は、接続部22を介してスクラップ部分21に接続されている。なお、外形切り離し工程では、金型での打ち抜きに代えて、レーザ光を用いて、FPC製品30の周囲をスクラップ部分21から切り離すようにしても良い。
【0026】
なお、ステップS2の外形切り離し工程は、金型を用いて1回のみ打ち抜くようにしても良いが、複数回打ち抜くようにしても良い。
【0027】
(3)ステップS3:電気検査工程の実施
次に、電気検査工程を実施する。この電気検査工程では、電気検査装置を用いて、電気検査を実施する。なお、電気検査工程は、検査工程に対応する。この電気検査では、それぞれのFPC製品30に対して導通不良が存在しないか等を確認する。
図4は、本実施の形態に係るフレキシブルプリント基板の製造システム10の概略を示す図である。なお、
図4に示すフレキシブルプリント基板の製造システム10は、ステップS3からステップS5に関するものである。
【0028】
電気検査工程を実施する場合、
図4に示すような電気検査装置110を用いて行う。この電気検査装置110は、検査対象となる基板シート20が固定された状態で載置される載置台部を備え、その載置台部に載置された基板シート20のFPC製品30の所定部位に接触して電気信号を導通させる検査プローブを備えている。また、電気検査装置110は、ホストコンピュータ200との間で、FPC製品30の検査結果を通信可能な状態で接続されている。
【0029】
かかる電気検査装置110での電気検査により、FPC製品30の電流の導通に問題がなければ良品と判定される。一方、電気検査装置110での電気検査により、FPC製品30の電流の導通に関して、電流が導通しないなどの問題があれば不良と判定される。以下では、不良と判定されたFPC製品30については、不良品31と称呼する)。この電気検査工程では、電気検査装置110は、特定の基板シート20内における不良品31の位置に関する情報を、ホストコンピュータ200に送信する。
【0030】
(4)ステップS4:貼り合わせ工程の実施
続いて、貼り合わせ工程を実施する。この貼り合わせ工程では、基板シート20に微粘着フィルム40を貼り合わせる。それにより、スクラップ部分21を除去した後に、FPC製品30が微粘着フィルム40に貼り合わせた状態とすることができる。この貼り合わせ工程は、基板シート20と微粘着フィルム40を貼り合わせることが可能な貼り合わせ装置120を用いて実施される。なお、貼り合わせ工程を行わずに省略するようにしても良い。
【0031】
(5)ステップS5:レーザ光を用いた切断工程の実施
次に、レーザ光を用いて、FPC製品30とスクラップ部分21を接続している接続部22を切断する切断工程を実施する。この切断工程では、レーザ加工装置130を用いる。レーザ加工装置130は、たとえば波長が532nm付近のグリーンレーザを照射可能なレーザヘッドと、レーザヘッドから照射されるレーザ光を走査可能な走査部とを備えている。そして、レーザヘッドからのレーザ光の照射により接続部22を切断している。
【0032】
なお、走査部は、たとえばミラーを揺動させる機構等のようにレーザヘッド内に内蔵されていても良く、レーザヘッドの外部に存在していても良い。レーザヘッドの外部に走査部が存在する場合、レーザヘッドを移動させる構成でも良く、基板シート20を移動させる構成でも良い。
【0033】
また、レーザ加工装置130のレーザヘッドは、波長が1064nm付近の赤外線レーザ(CO
2 レーザ、YAGレーザ、YVO
4 レーザなど)、波長が355nm付近の紫外線レーザなど、グリーンレーザ以外のレーザ光を用いても良い。
【0034】
ここで、レーザ加工装置130は、ホストコンピュータ200から、特定の基板シート20内における不良品31の位置に関する情報に基づいて、基板シート20のそれぞれの接続部22に対してレーザ光を走査する。このとき、レーザ加工装置130では、不良品31については、その接続部22に対してレーザ光を照射しない。したがって、不良品31のレーザ加工をスキップできるので、そのようなスキップを行わない場合と比較して、切断工程における生産効率を向上させることができる。
【0035】
なお、不良品31が存在する場合、レーザ加工装置130においてレーザ光を走査するための走査情報は、レーザ加工装置130で形成しても良く、ホストコンピュータ200で形成しても良い。また、上述の走査情報においては、不良品31とスクラップ部分21を接続する接続部22を通過しないように、次にレーザ光で切断を行うFPC製品30の接続部22まで、移動するようにレーザヘッドの経路を変更するものである場合には、移動時間の短縮が図れるので好ましい。しかしながら、上述の走査情報においては、ミラーやXYテーブルなどの機械的な移動経路を変更せずに、単にレーザ光を照射するタイミングを変更して、不良品31の接続部22に対してレーザ光を照射しないようにしても良い。
【0036】
なお、それぞれの接続部22を走査して切断する場合、同一の箇所を複数回走査することで切断しても良く、同一の箇所を1回のみ走査して切断しても良い。
【0037】
(6)ステップS6:スクラップ部分の剥がし工程の実施
次に、基板シート20からスクラップ部分21を剥がす剥がし工程を実施する。この剥がし工程は、作業者が行うようにしても良く、専用の剥がし装置を用いて自動的に行うようにしても良い。この剥がし工程においては、基板シート20からスクラップ部分21を剥がすようにする。そして、スクラップ部分21を剥がした後に、専用の廃棄箇所へスクラップ部分21を廃棄するようにする。
【0038】
このとき、不良品31においては、接続部22を介してスクラップ部分21と接続されていて、切り離されていない。したがって、スクラップ部分21を基板シート20から剥がすと、不良品31も基板シート20から剥がされる。したがって、微粘着フィルム40には、良品であるFPC製品30が残存する。なお、スクラップ部分21と不良品31が除去されて、これらが専用の廃棄箇所に廃棄される。
【0039】
なお、ステップS3の電気検査工程においては、次のようにしても良い。すなわち、基板シート20のある特定の箇所において、不良の頻度が多い場合(たとえば連続して不良が生じる等)、ステップS1のエッチング等のフォトファブリケーション手法やめっき処理に問題がある場合がある。その場合、同じマスク等を用いたフォトファブリケーション手法や同じ装置を用いてめっき処理等を行う限り、問題は解消されずに、ステップS3の電気検査工程で不良品31と判定され続ける、と考えることができる。したがって、この場合には、ステップS3の電気検査工程において、その特定の箇所の電気検査を省略することで電気検査工程での時間短縮を図り、更なる生産効率の向上を図るようにしても良い。
【0040】
また、上述の各工程のうち、ステップS3の電気検査工程とステップS4の貼り合わせ工程を逆に実施するようにしても良い。また、ステップS2の外形切離し工程に先立って、ステップS4の貼り合わせ工程を行うようにしても良い。
【0041】
また、ステップS4の貼り合わせ工程を実行しない場合、ステップS6の剥がし工程を実行しないことになる。この場合、ステップS5のレーザ光を用いた切断工程を実施すれば、個々のFPC製品30が、スクラップ部分21および不良品31から分離された状態となる。
【0042】
<効果について>
以上のような構成のフレキシブルプリント基板の製造方法およびフレキシブルプリント基板の製造システム10によると、次のような効果が生じる。
【0043】
すなわち、基板シート20に複数の回路パターンを形成して製品部分(FPC製品30)を形成する回路形成工程(ステップS1)を実施し、その回路形成後に、基板シート20のうち廃棄するスクラップ部分21から接続部22を除いて製品部分(FPC製品30)を切り離す外形切り離し工程(ステップS2)を実施する。また、製品部分(FPC製品30)に対して所定の検査を行い、製品部分(FPC製品30)が異常のない良品であるか異常のある不良品31であるか否かを検査する検査工程(ステップS3)を実施する。また、検査工程(ステップS3)において良品であると判定された製品部分(FPC製品30)の接続部22をレーザ光を用いて切断する一方、検査工程(ステップS3)において不良と判定された不良品31の接続部22は切断せずに接続された状態とするレーザ切断工程(ステップS5)を実施する。
【0044】
このため、不良品31は、接続部22を介してスクラップ部分21と接続されたままの状態となり、レーザ切断工程後にスクラップ部分21を廃棄する場合に、不良品31も伴う状態で廃棄することができる。したがって、不良品31をスクラップ部分21から切断した後に、その不良品31を廃棄する場合と比べると、工数を削減することが可能となる。
【0045】
また、レーザ切断工程後に、接続部22を介して接続された不良品31を伴う状態でスクラップ部分21を廃棄することができるので、良品である製品部分(FPC製品30)と不良品31とを取り違えるようなヒューマンエラーを防ぐことができる。したがって、不良品31が誤って出荷されてしまい、製品に対する信頼性が低下してしまうのを防ぐことが可能となる。
【0046】
また、本実施の形態では、レーザ切断工程(ステップS5)に先立って、基板シート20に対して微粘着フィルム40を貼り合わせてフィルム接合体50を形成する貼り合わせ工程(ステップS4)を実施している。また、レーザ切断工程(ステップS5)の後に、少なくともスクラップ部分21を微粘着フィルム40から剥がす剥がし工程(ステップS6)を実施している。
【0047】
このため、スクラップ部分21を微粘着フィルム40から剥がす際に、不良品31もスクラップ部分21に伴う状態で剥がすことが可能となる。したがって、微粘着フィルム40には良品であるFPC製品30のみが残存する状態とすることができる。このため、不良品31を微粘着フィルム40から確実に除去することができ、不良品31が誤って出荷されてしまうのを防ぐことが可能となる。
【0048】
さらに、本実施の形態では、検査工程は、それぞれの製品部分(FPC製品30)に対して、電気的な導通不良が存在しないか否かを電気検査装置110を用いて検査する電気検査工程(ステップS3)である。このため、電気的な導通において不良の生じた不良品31を確実に除去することができ、導通不良のないFPC製品30を出荷することが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態においては、電気検査工程(ステップS3)では、電気検査装置110での電気検査において、少なくとも不良と判定された製品部分(不良品31)に関する位置情報が、レーザ切断工程(ステップS5)で用いられるレーザ加工装置130に送信される。
【0050】
このため、不良と判定された製品部分(不良品31)に関する正確な位置情報がレーザ加工装置130に送信されるので、不良品31の接続部22をレーザ光で切断するのを確実に防止することが可能となる。そのため、スクラップ部分21と共に不良品31を確実に廃棄することが可能となり、導通不良のないFPC製品30を出荷することが可能となる。
【0051】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0052】
上述の実施の形態においては、検査工程として、ステップS3の電気検査工程を行うものとしている。しかしながら、検査工程は、電気検査工程以外の工程であっても良い。そのような工程としては、たとえば、FPC製品30の外観に異常がないか否かを、撮影手段(たとえばCCDカメラ)等を用いて検査する外観検査工程が挙げられる。また、検査工程では、電気検査工程と共に、外観検査工程のような他の検査工程を実施するようにしても良い。