特許第6873784号(P6873784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873784分岐糖アルコールを用いたアントシアニン系色素の退色抑制用組成物及び退色抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873784
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】分岐糖アルコールを用いたアントシアニン系色素の退色抑制用組成物及び退色抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/43 20160101AFI20210510BHJP
【FI】
   A23L5/43
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-68345(P2017-68345)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-166476(P2018-166476A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(74)【代理人】
【識別番号】100141575
【弁理士】
【氏名又は名称】慶田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】大木 詩帆
(72)【発明者】
【氏名】本永 麻衣子
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−171348(JP,A)
【文献】 特開2000−336354(JP,A)
【文献】 特開2000−189101(JP,A)
【文献】 国際公開第01/048091(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−5/49
A23G 1/00−3/56
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソマルチトール、パニトール、イソマルトトリイトールから選択される二種以上であるα−1,6結合を有する2糖以上の分岐糖アルコールを有効成分として含有することを特徴とする、アントシアニン系色素の退色抑制用組成物。
【請求項2】
前記分岐糖アルコールの含有量が、退色抑制用組成物の25重量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のアントシアニン系色素の退色抑制用組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然色素、特にアントシアニン系色素の退色抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品の着色には、合成色素や天然色素が用いられているが、近年、合成色素はその安全性が懸念され、特に天然色素が多く用いられるようになっている。
【0003】
しかしながら、天然色素の中でも特にアントシアニン系色素は、光・酸素・熱等の影響を受けて退色、変色しやすいため、アントシアニン系色素を添加した飲食物は経時的に商品価値が著しく低下していくという問題があった。特にペットボトル飲料のような透明容器詰め飲料は、容器が透明であることが消費者に好感を得て普及の要因となったが、容器が透明ゆえに光の影響を受けやすく、明るい売り場などの退色しやすい環境下に商品陳列によって長く置かれることから、色素の退色現象を抑制する技術が求められていた。
【0004】
このような求めに応じ、鉄イオン並びに、羅布麻抽出物や藤茶抽出物などのフラボノイドで退色を抑制する技術が知られている(特許文献1〜3)。しかしながら、これらの成分は、添加した飲食品において、異味となることがあった。また、このほかにも、ニゲロオリゴ糖やマルトオリゴ糖、パノースなどの糖類を用いた退色抑制の技術があるが(特許文献4〜5)、ニゲロオリゴ糖は、加熱により褐色への着色が起こりやすいし、これらの糖は還元糖であり、熱や酸によって分解されやすく、加熱する飲食品や低pHの飲食品では使用できない場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−136187号公報
【特許文献2】特開2005−087147号公報
【特許文献3】特開2002−065201号公報
【特許文献4】特開2000−336354号公報
【特許文献5】特開2000−189101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、飲食品へ添加しても、異味を生じず、また、加熱や酸性下でも安定なアントシアニン系色素の退色抑制用組成物及び退色抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明者らは、分岐糖アルコール含有退色抑制用組成物を用いることで、加熱や酸性下でも安定であり、異味を生じずアントシアニン系色素の退色を抑制しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は第一に、α−1,6結合を有する2糖以上の分岐糖アルコールを有効成分として含有することを特徴とする、アントシアニン系色素の退色抑制用組成物である。
第二に、前記分岐糖アルコールが、イソマルチトール、パニトール、イソマルトトリイトールから選択される一種以上であることを特徴とする、上記第一に記載のアントシアニン系色素の退色抑制用組成物である。
第三に、前記分岐糖アルコールの含有量が、退色抑制用組成物の25重量%以上であることを特徴とする、上記第一又は第二に記載のアントシアニン系色素の退色抑制用組成物である。
第四に、α−1,6結合を有する2糖以上の分岐糖アルコールを添加することを特徴とする、アントシアニン系色素を含む飲食品の退色抑制方法である。
【0009】
以下に本発明について、詳細に説明する。
【0010】
本発明の退色抑制用組成物は、成分として分岐糖アルコールを含有していればよいが、特に、分岐糖アルコールが、α−1,6結合を有する2糖以上の糖アルコールが好ましい。具体的には、イソマルチトール、パニトール、イソマルトトリイトールなどが好適な成分であり、さらに好適には、分岐糖アルコールとして、イソマルチトールおよび/またはパニトールを含有することがよい。また、本発明の退色抑制用組成物は、分岐糖アルコールに加えて、ソルビトール、マルチトール、マルトトリイトールのようなα−1,4結合を有する糖アルコールなどを含んでいてもよい。
【0011】
イソマルチトールはイソマルトースを水素還元し、精製を経てシロップ化や粉末化することで得ることが出来る。また、パニトールはパノースを水素還元し、精製を経てシロップ化や粉末化することで得ることが出来る。それぞれ、簡便には、イソマルチトール含有糖アルコール製品や、パニトール含有糖アルコール製品を入手することで得ることができる。
【0012】
退色抑制用組成物に含まれる分岐糖アルコールは、その成分によらず、合計で25重量%(以下、特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する)以上であれば好ましく、50重量%以上であるとさらに好ましい。さらに、好ましくは、イソマルチトールが5%以上またはパニトールが10%以上であるとよい。なお、ここでいう%は退色抑制用組成物の固形分における、各成分の固形分を重量パーセントで示したものである。
【0013】
本発明における退色抑制とは、本発明の退色抑制用組成物ではない糖類を含有する場合に比べアントシアニン系色素の主な色である赤色の退色の程度が少なくなることを言う。
【0014】
本発明におけるアントシアニン系色素とは、例えば、ブドウ果皮色素、紫イモ色素、紫トウモロコシ色素、赤キャベツ色素、赤ダイコン色素、エルダーベリー色素、シソ色素、ブドウ果汁色素、ブラックカラント色素、ブルーベリー色素、ボイセンベリー色素などが挙げられる。この中でも、本発明の好適対象として、紫イモ色素、紫キャベツ色素が挙げられる。
【0015】
飲食品としては、糖類を含有するものであって、かつ、アントシアニン系色素を添加した飲食品でもいいし、原料が含有しているアントシアニン色素を含む飲食品でもよい。例えば、飲料ではブドウ味などの炭酸飲料、食品ではピーチ味などのゼリー、イチゴ味やピーチ味などのグミキャンデー等が挙げられる。さらには、ブルーベリージュース、ブドウジュースなどの天然飲料でもよい。
【0016】
また、本発明の退色抑制用組成物の添加量は、飲食品の種類に応じて適宜決めればよいが、分岐糖アルコールが飲食品に対して5%以上であれば好ましい。少なすぎると退色抑制効果は、測定上はあらわれるが目視で確認できる程度にならない場合がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、異味がなく、加熱や酸性下でも安定な分岐糖アルコールを含有する退色抑制用組成物を添加することで、アントシアニン系色素含有飲食品の退色が抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0019】
なお、実施例で用いた本発明に係る分岐糖アルコールを含有する退色抑制用組成物は、三菱商事フードテック社製の還元水飴PO−500と還元水飴PO−300であり、PO−500は固形分中に、イソマルチトールが17%、パニトールが11%であって、分岐糖アルコールが合計で52%、PO−300は固形分中に、イソマルチトールが9%、パニトールが32%であって、分岐糖アルコールが合計で67%である。また、これらは、加熱による褐色への着色が起こり難い組成物である。
【0020】
また、比較例で用いた異性化糖は日本食品化工社製のH−100である。砂糖は市販のグラニュー糖を用いた。
【0021】
[試験1]
アントシアニン系色素で着色した希釈糖液の退色を、目視で観察した。使用した色素は、ぶどう果皮色素(三栄源エフエフアイ社製のサンレッドGR)、紫コーン色素(三栄源エフエフアイ社製のサンレッドNo.5A)、紫イモ色素(癸巳化成社製のNC−バイオレッドMU)、紫キャベツ色素(三栄源エフエフアイ社製のサンレッドRCAU)であり、色素濃度は、すべて0.1%とした。希釈糖液における糖は、実施例として退色抑制用組成物である還元水飴PO−500および還元水飴PO−300、比較例として砂糖、異性化糖を用いた。糖の固形分濃度は45%とし、それぞれの溶液を0.1%クエン酸溶液でpH3.4に調整し、透明プラスチックボトルで、8000ルクスの光照射下、40℃で7日間保存し、保存後の色調について、保存前の色調からどの程度退色したか、目視で確認した。
【0022】
結果を、表1に示す。「◎:ほとんど退色していない」、「○:わずかに退色している」、「△:退色が認められる」、「×:かなり退色している」として評価した。
【0023】
【表1】
【0024】
[試験2(1)]
アントシアニン系色素で着色した希釈糖液の退色を、色差計(日本分光社製V−660)で測定した。使用した色素は紫イモ色素であり、試験1と同様の条件で添加した。希釈糖液における糖は、実施例として退色抑制用組成物である還元水飴PO−500および還元水飴PO−300、比較例として砂糖、異性化糖を用いた。糖の固形分濃度は55%とし、pHについては、試験1と同様に調整した。保存はねじ口付試験管で、8000ルクスの光照射下、40℃で7日間保存した。保存前の希釈糖液及び保存後の希釈糖液をそれぞれ色差計にて測定し、アントシアニン系色素の主な色である赤色について、a値で評価した。
【0025】
値の数値が高いほど赤色を帯びていることを示すため、保存前のa値に対し、保存後のa値がどの程度残存しているかを算出した。結果を、表2(1)に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
[試験2(2)]
希釈糖液で用いた糖を、実施例として退色抑制用組成物である還元水飴PO−500、比較例として異性化糖を用い、糖の固形分濃度を45%とした以外は試験2(1)と同様の方法で、アントシアニン系色素で着色した希釈糖液の退色を評価した。結果を、表2(2)に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
[試験2(3)]
糖の固形分濃度を30%とした以外は試験2(2)と同様の方法で、アントシアニン系色素で着色した希釈糖液の退色を評価した。結果を、表2(3)に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
[試験3]
アントシアニン系色素として、紫キャベツ色素を用い、試験2(1)と同様の条件で希釈糖液の退色を、色差計で測定した。希釈糖液における糖は、実施例として退色抑制用組成物である還元水飴PO−500、比較例として砂糖、異性化糖を用い、糖の固形分濃度を45%とした以外の条件は試験2(1)と同様とした。評価結果を、表3に示す。
【0032】
【表5】
【0033】
以上の試験1〜3から、本発明に係る退色抑制用組成物によって、酸性下で保存しても安定してアントシアニン系色素の退色が抑制できることが示された。