(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1基板は、第1配線と、前記第1配線を覆う第1絶縁膜と、前記第1配線よりも上側にある第2配線と、前記第2配線を覆う第2絶縁膜と、前記第2配線よりも上側にある第3配線と、前記第3配線を覆う第3絶縁膜とを備え、前記シール部と前記第3絶縁膜との間に、前記配向膜があることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、アミン系シランカップリング剤を含む光配向膜用ワニスから形成された光配向膜が液晶表示装置における液晶の電圧保持率の低下、並びに焼付きの発生の原因について検討した結果、アミン系シランカップリング剤が有する第一級アミノ基または第二級アミノ基由来の物質が液晶中に溶出するためであると推察した。さらに研究を進めた結果、アミン系シランカップリング剤ではなく、第一級アミノ基および第二級アミノ基を含まないアルコキシシランをポリイミドの前駆体であるポリアミド酸またはポリアミド酸エステルに配合した光配向膜用ワニスから形成した配向膜では、液晶の電圧保持率の低下並びに焼付きの発生が防止または抑制できることを見いだした。アルコキシシランは、ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルのイミド化反応の際に、ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルと反応し、生成したポリイミド末端にアルコキシシラン基として導入される。従って、ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルが末端に第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有している場合でも、反応生成物であるポリイミド化合物は、第一級アミノ基および第二級アミノ基を持たないものとなる。
【0015】
以下、いくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、先行する図に関して説明したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0016】
<液晶表示装置>
まず、実施形態に係る液晶表示装置を、
図1、
図2、および
図3を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る液晶表示装置DSPの斜視図、
図2は、
図1のii−ii線に沿った一部破断概略断面を拡大して示す図、
図3は、
図1のiii−iii線に沿った一部破断概略断面を拡大して示す図である。
【0017】
本実施形態においては、液晶表示装置DSPの短辺に平行な方向を第1方向Xとし、表示装置DSPの長辺に平行な方向を第2方向Yとし、第1方向Xおよび第2方向Yに垂直な方向を第3方向Zとしている。なお、第1方向Xおよび第2方向Yは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。また、本実施形態においては、第3方向Zの正の向きを上または上方と定義し、第3方向Zの負の向きを下または下方と定義する。
【0018】
液晶表示装置DSPは、対面して配置された第1基板SUB1および第2基板SUB2を有する。第1基板SUB1は、第1領域RG1と第2領域RG2を有する。第2基板SUB2は、第1基板SUB1の第1領域RG1に対向しているが、第1基板SUB1の第2領域RG2には対向してはいない。言い換えると、第1基板SUB1の第2領域RG2は、第2基板SUB2の端縁よりも外側に延出している。第1基板SUB1の第1領域RG1の平面サイズは、第2基板SUB1の平面サイズと同じである。
【0019】
第1基板SUB1の第1領域RG1には、画素電極および薄膜トランジスタ等が設けられている。第2基板SUB2には、カラーフィルタCF、遮光膜BM等が設けられている。第1基板SUB1の第2領域RG2には、外部回路EXCが設けられている。
【0020】
第1基板SUB1と第2基板SUB2とは、それらの間に一定のセルギャップを規定しており、第1基板SUB1の第1領域RG1の周縁部と第2基板SUB2の周縁部とは、枠状に形成されたシール部SPにより接着されている。シール部SPの内側には、液晶が封入され、液晶層LCを形成している。枠状のシール部SPと遮光膜BMとは、額縁領域NDAを規定している。額縁領域NDAは、その内側に画像表示領域DAを規定している。画像表示領域DAは、例えば、矩形状であり、m×n個(但し、mおよびnは正の整数である)のマトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成されている。
【0021】
第1基板SUB1に対し第2基板SUB2の反対側に配置された光照射部LIは、第1基板SUB1側から画像表示部を照明する、いわゆるバックライトユニットに相当する。第1基板SUB1の第2領域RG2には、外部回路EXCよりも先端側にフレキシブル回路基板FPC1が設けられ、第1基板SUB1と制御モジュールCMとを電気的に接続している。制御モジュールCMには、フレキシブル回路基板FPC2が設けられ、制御モジュールCMと光照射部LIとを電気的に接続している。フレキシブル回路基板FPC1およびFPC2は、制御モジュールCMの駆動信号をそれぞれ第1基板SUB1および光照射部LIに伝送する。
【0022】
このような構成の液晶表示装置DSPは、光照射部LIから第1基板SUB1、液晶層LCおよび第2基板SUB2に入射する光を各画素PXで選択的に透過することによって画像を表示する透過表示機能を備えた、いわゆる透過型の液晶表示装置に相当する。
【0023】
図2によく示されるように、第1基板SUB1は、第1下地基板S1を有する。第1下地基板S1は、光透過性の絶縁性基板、例えばガラス基板である。
【0024】
第1下地基板S1の液晶層LC側の表面には、第1絶縁膜IL1が設けられている。第1絶縁膜IL1は、アクリル樹脂等の有機材料で形成することができる。第1絶縁膜IL1の液晶層LC側の表面には、第2絶縁膜IL2が設けられている。第2絶縁膜IL2は、例えばシリコン酸化物、シリコン窒化物等の無機材料によって形成することができる。
【0025】
第2絶縁膜IL2の液晶層LC側の表面には、走査引き出し線SLが設けられている。走査引き出し線SLには、例えば、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、Al(アルミニウム)等の単層の金属の配線、またはTi(チタン)/Al/Ti、Mo/Al/Mo、Mo/InOx(インジウム酸化物)、Cr/InOx等の積層膜の配線を用いることができる。
【0026】
走査引き出し線SLの液晶層LC側の表面には、有機パッシベーション膜OPが設けられている。有機パッシベーション膜OPは、走査引き出し線SLを全体的に覆うとともに、第2絶縁膜IL2の部分的な露出表面を覆う。さらに、有機パッシベーション膜OPは、その端部にスリットSTが設けられている。スリットSTは、第2絶縁膜IL2の表面を部分的に露出させている。有機パッシベーション膜OPの液晶層LC側の表面は、凹凸形状を有する。有機パッシベーション膜OPは、例えばアクリル等の樹脂によって形成することができる。なお、有機パッシベーション膜OPは、その端部にスリットSTが設けられているため、端部側の有機パッシベーション膜OPから浸入してきた水分を遮断することができる。
【0027】
有機パッシベーション膜OPの液晶層LC側の表面には、有機パッシベーション膜の凹凸形状の表面に沿うようにして、第3絶縁膜IL3が設けられている。第3絶縁膜IL3は、例えばシリコン酸化物、シリコン窒化物、これらの積層膜である無機絶縁膜の無機材料によって形成することができる。第3絶縁膜IL3は、画像表示領域DA全体に面状に形成される共通電極(図示せず)とスリットを有する画素電極(図示せず)の層間(電極間)の絶縁膜である。例えば、画素電極は、第3絶縁膜IL3の液晶層LC側の表面に形成され、共通電極は、第3絶縁膜IL3と有機パッシベーション膜OPとの間に形成される。共通電極および画素電極は、例えばインジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium Zinc Oxide)等の光透過性の導電性材料、Ag、Al、Al合金等を含む光反射型の導電性材料等によって形成することができる。
【0028】
第1基板SUB1の液晶層LC側表面には、第1配向膜AL1が配置されている。第1配向膜AL1は、第3絶縁膜IL3および画素電極(例えばITO)を覆っている。
【0029】
第2基板SUB2は、第2下地基板S2を有する。第2下地基板S2は、光透過性の絶縁性基板、例えばガラス基板である。
【0030】
第2下地基板S2の液晶層LC側の表面には、遮光膜BMが設けられている。遮光膜BMは、額縁領域NDAを規定している。また、画像表示領域DAにおいて、第2下地基板S2の液晶層LC側の表面には、カラーフィルタ(図示せず)が設けられている。カラーフィルタは、それぞれ赤、緑、青のフィルターセグメントが周期的に配置されている。これら3色のサブピクセルは1組として、1画素を構成している。遮光膜BMは、各フィルターセグメントの間にも設けられている。遮光膜BMは、隣接するフィルターセグメント同士の混色を防いでいる。遮光膜BMは、例えば黒色の樹脂、低反射性の金属等である。
【0031】
遮光膜BMの液晶層LC側の表面には、オーバーコート層OCが形成されている。オーバーコート層OCは、遮光膜BMおよびカラーフィルタを覆っている。オーバーコート層OCの液晶層LC側表面は、凹凸形状を有する。
【0032】
オーバーコート層OCの液晶層LC側の表面の凸部には、第1柱状スペーサPS1が形成されている。第1柱状スペーサPS1は、一端がオーバーコート層OCの凸部と接し、他端が第1配向膜AL1の液晶層LC側の表面の凹凸形状の凸部と接するようにして設けられている。第1柱状スペーサPS1は、シール部SPにおける第1基板SUB1と第2基板SUB2との間隔を規定する役割を有する。
【0033】
オーバーコート層OCの液晶層LC側の表面の凹部には、壁状スペーサWSが形成されている。壁状スペーサWSは、第1柱状スペーサPS1の半分程度の長さを有する。
【0034】
オーバーコート層OCの液晶層LC側の表面には、オーバーコート層OCの表面の凹凸に沿うようにして、第2配向膜AL2が設けられている。第2配向膜AL2は、壁状スペーサWSによって外形が区切られている。
【0035】
第2配向膜AL2の液晶層LC側の表面の、第1柱状スペーサPS1よりも画像表示領域DA側には、第2柱状スペーサPS2が設けられている。第2柱状スペーサPS2は、第1柱状スペーサPS1よりも短くして設けられている。そのため、第2柱状スペーサPS2は、一端が第2配向膜AL2に接しているが、第1基板SUB1側に向かう他端は、第1配向膜AL1に接していない。第2柱状スペーサPS2は、第2基板SUB2に外部から圧力が加わった場合、第1基板SUB1と第2基板SUB2の間隔が過度に小さくなることを防止する役割を有する。
【0036】
第1配向膜AL1と第2配向膜AL2およびオーバーコート層OCとの間には、シール部SPが設けられている。シール部SPは、
図1によく示されるように、第1基板SUB1の第1領域RG1の周縁部と第2基板SUB2の周縁部とを枠状に接着している。シール部SPは、例えば、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等のシール材料によって形成され、ディスペンサ等を用いて始点から終点まで連続的に描画する方式で形成することができる。また、シール部SPの端部には、土手状スペーサBSが形成されている。シール部SPは、第1配向膜AL1の表面の凹凸形状と、第2配向膜AL2およびオーバーコート表面の凹凸形状とを埋めるように設けられているため、配向膜との接着表面積が増加し、接着力がより一層増加する。液晶層LCは、第1配向膜AL1および第2配向膜AL2の間にある。
【0037】
図3に示されるように、第2領域RG2には、外部回路EXCやフレキシブル回路基板FPC1と電気的に接続されている、第1配線WL1と第2配線WL2と第3配線WL3がある。そして、第1基板SUB1は、第1配線WL1と、第1配線WL1を覆う第1絶縁膜IL1と、第1配線WL1よりも上側にある第2配線WL2と、第2配線WL2を覆う第2絶縁膜IL2と、第2配線WL2よりも上側にある第3配線WL3と、第3配線WL3を覆う第3絶縁膜IL3とを備えている。第1〜第3絶縁膜IL1〜IL3は、第1〜第3配線WL1〜WL3をそれぞれ電気的に絶縁し、これら配線を保護する保護膜でもある。第1〜第3配線WL1〜WL3は、第2領域RG2にある外部回路EXCやフレキシブル回路基板FPC1と、第1領域RG1にある走査引き出し線SLや第2領域RG2にある信号引き出し線等と電気的に接続して、駆動信号を伝送する。また、第3絶縁膜IL3の上には第1配向膜AL1が設けられ、第1配向膜AL1はシール部SPと第3絶縁膜IL3との間にある。なお、第3絶縁膜IL3の上に有機絶縁膜等をさらに設けてもよい。
【0038】
なお、
図3では、第1配線WL1が、第2配線WL2と第3配線WL3の下側に配置されているが、別の箇所では、例えば、第1配線WL1が、第2配線WL2または第3配線WL3と入れ替わり、第2絶縁膜IL2または第3絶縁膜IL3の層に配置されている。すなわち、第1〜第3配線WL1〜WL3は、別の配線と入れ替わりながら、異なる層を経由するようにして第2領域RG2にある外部回路EXCと、第1領域RG1にある走査引き出し線SL、第2領域RG2にある信号引き出し線等と電気的に接続している。このようにすることで、第1〜第3配線WL1〜WL3を第2領域RG2や、狭額縁化によって狭くした額縁領域NDAに効率よく設けることができる。一方で、
図3の通り、第3配線WL3は、第1配向膜AL1との距離が近いため、第1配向膜AL1によって腐食されやすい。しかし、本発明の光配向膜用ワニスは、後述するアルコキシシランを含むため、カップリング反応により架橋構造を形成し、配向膜の強度が向上する。また、画素電極のITO、第3絶縁膜IL3等の無機材料(SiN)膜およびシール部と、配向膜との接着力を確保出来る。この結果、配向膜の材料が絶縁膜IL3を透過して第3配線WL3を腐食する不具合を抑制できる。
【0039】
<光配向膜用ワニス>
実施形態に係る配向膜(第1配向膜AL1および第2配向膜AL2)は、光配向膜用ワニスを基板上に塗布し、加熱してポリイミド膜に変換し、ポリイミド膜に配向制御能を付与することによって設けられる。
【0040】
本発明の第1の側面に係る光配向膜用ワニスは、有機溶媒中に、アルコキシシランと、ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルである第1ポリアミド酸系化合物とを含み、アルコキシシランは、第一級アミノ基および第二級アミノ基を含まない。
【0041】
<アルコキシシラン>
アルコキシシランは、シランカップリング剤であるので画素電極のITO、第3絶縁膜等の無機材料(SiN)膜およびシール部と、配向膜との接着力を確保する。すなわち、アルコキシシランは、加熱により加水分解してシラノールとなり、画素電極、第3絶縁膜およびシール部の表面にある極性を有する置換基や官能基と水素結合または共有結合を形成し、接着力が発揮される。アルコキシシランは、上に記載したように、第一級アミノ基および第二級アミノ基を含まない。また、アルコキシシランは、例えば0.5wt%〜2.0wt%の割合で光配向膜用ワニス中に含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態において、アルコキシシランは、エポキシ骨格または酸無水物骨格を有する。
いくつかの実施形態において、アルコキシシランは、下記式(1):
【0043】
【化1】
(式(1)中、J
1は、単結合または炭素数1〜4の2価の有機基であり、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基であり、少なくとも1つはアルコキシ基である)で表されるアルコキシシラン、または
下記式(2):
【0044】
【化2】
(式(2)中、Kは、炭素数1〜6の3価の有機基であり、J
2は、単結合または炭素数1〜4の2価の有機基であり、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基であり、少なくとも1つはアルコキシ基である)で表されるアルコキシシランである。
【0045】
いくつかの実施形態において、J
1は、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等である。J
2は、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等である。Kは脂環式基、例えば置換または無置換のシクロブタン基である。また、Kは、ベンゼン環またはベンゼン環を含む基であり、ベンゼン環は、アルキル基等によって置換されていてもよい。Kは、脂環式基であることが好ましい。
【0046】
アルコキシシランには、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、およびモノアルコキシシランが含まれるが、より多くのシロキサン結合を形成して接着力を向上させるために、トリアルコキシシランが好ましい。また、アルコキシシランの置換基(R
1、R
2、R
3、R
5、R
6およびR
7)は、シロキサン結合を形成するために立体障害の小さい置換基が好ましい。アルコキシシランの置換基は、例えばメトキシ基、エトキシ基であることが好ましい。
【0047】
エポキシ骨格を有するアルコキシシランの例は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等である。
【0048】
酸無水物骨格を有するアルコキシシランの例は、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、4−(3−トリメトキシシリルプロピル)シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(3−トリエトキシシリルプロピル)シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(3−トリメトキシシリルプロピル)フタル酸無水物、4−(3−トリエトキシシリルプロピル)フタル酸無水物、3−ジメチルメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−ジメチルエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、4−(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(3−ジメチルエトキシシリルプロピル)シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)フタル酸無水物若しくは4−(3−ジメチルエトキシシリルプロピル)フタル酸無水物等である。
【0049】
<第1ポリアミド酸系化合物>
いくつかの実施形態において、第1ポリアミド酸系化合物は、下記式(3):
【0050】
【化3】
(式(3)中、Xは、環式基であり、R
8およびR
9は、それぞれ独立に、−COOHまたは−COOR(ここで、Rは、アルキル基である)であり、Y
1は、有機基である)で表される構造単位を有する。
【0051】
一つの実施形態において、Xは、脂環式基、例えば置換または無置換のシクロブタン基である。別の実施形態において、Xは、ベンゼン環またはベンゼン環を含む基であり、ベンゼン環は、アルキル基等によって置換されていてもよい。Xは、脂環式基であることが好ましい。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1ポリアミド酸系化合物は、下記式(4)で示されるジアミン骨格を有する。
【0053】
【化4】
式(4)において、Lは、有機基であり、例えば環式基を含む基である。いくつかの実施形態において、Lは、Ar
0またはAr
1−Z−Ar
2であり、ここで、Ar
0は、芳香族基であり、Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立に、芳香族基であり、Zは、第一級アミノ基および第二級アミノ基を含有しない有機基である。Ar
0、Ar
1またはAr
2によって表される芳香族基の例は、ベンゼン環またはベンゼン環を含む基である。Zは、例えば、酸素、窒素、硫黄、炭素および水素、またはそれら2つ以上の組合せから構成される。Zは、ヒドロキシル基、チオール基および第三級を除くアミノ基(−NHまたは>NH)を有しない。
【0054】
<第1ポリアミド酸系化合物の末端骨格>
いくつかの実施形態において、第1ポリアミド酸系化合物の末端骨格は、それぞれ、下記式(5):
【0055】
【化5】
(式(5)中、J
1は、式(1)に関して定義した通りであり、mは、1または2の整数であり、R
1、R
2およびR
3は、式(1)に関して定義した通りである)で表されるか、または下記式(6):
【0056】
【化6】
(式(6)中、Kは、式(2)に関して定義した通りであり、J
2は、式(2)に関して定義した通りであり、R
4は、−COOHまたは−COOR(ここで、Rは、アルキル基である)であり、R
5、R
6およびR
7は、式(2)に関して定義した通りである)で表される。
【0057】
上記式(5)および(6)のような第1ポリアミド酸系化合物の末端骨格は、末端に第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有しているポリアミド酸またはポリアミド酸エステルのような第1ポリアミド酸系化合物と上記式(1)および(2)のようなアルコキシシランを反応させることによって形成することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、第1ポリアミド酸系化合物は、上記式(1)または(2)に示すアルコキシシランを分子末端に有する。
【0059】
いくつかの実施形態において、第1ポリアミド酸系化合物の末端骨格は、イミド骨格、アミド骨格、ウレア骨格、第三級アミノ骨格、アゾ結合またはカルボキシル基を有する。
【0060】
いくつかの実施形態において、第1ポリアミド酸系化合物の末端骨格は、それぞれ、下記式(7):
【0061】
【化7】
(式(7)中、Y
2は、H、Sまたは有機基であり、かつY
3は、脂肪族基または芳香族基であり、またはY
2およびY
3は、互いに結合して環式基(例えばイミド)を形成している)で表されるか、下記式(8):
【0062】
【化8】
(式(8)中、Y
4は、有機基である)で表されるか、または下記式(9):
【0063】
【化9】
(式(9)中、Xは、式(3)に関して定義した通りであり、R
10およびR
11は、互いに独立に、水素またはアルキル基である)で表される。
【0064】
<有機溶媒>
いくつかの実施形態において、光配向膜用ワニスは、ポリアミド酸系化合物を溶解または分散させる有機溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、および4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンが使用できる。
【0065】
<第1ポリアミド酸系化合物の合成>
ポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを常法により反応させることによって製造することができる。
テトラカルボン酸二無水物は、下記式(A)で示すことができる。
【0066】
【化10】
式(A)において、Xは、式(3)に関して定義した通りである。
Xとして置換または無置換のシクロブタン基を有するテトラカルボン酸二無水物は、下記式(B)で示すことができる。
【0067】
【化11】
式(B)において、各R
bは、それぞれ独立に、水素またはアルキル基である。アルキル基の例は、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基としては、メチル基が特に好ましい。
【0068】
Xとしてベンゼン環を有するテトラカルボン酸二無水物の例は、ピロメリット酸である。
【0069】
テトラカルボン酸二無水物としては、式(B)で示されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0070】
上記テトラカルボン酸二無水物と反応させるジアミンは、2個の第一級アミノ基を有する有機化合物である。ジアミンは、下記式(C)で示すことができる。
【0071】
【化12】
式(C)において、Lは、式(4)に関して定義した通りである。
式(C)で示されるジアミンには、脂環式ジアミン、複素環式ジアミン、脂肪族ジアミンおよび芳香族ジアミンが含まれる。代表例は芳香族ジアミンである。
【0072】
芳香族ジアミンの例は、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、2,5−ジアミノ−p−キシレン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビベンジル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’―ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビベンジル、2,2−ビス[(4−アミノフェノキシ)メチル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、α、α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,4−ジアミノジフェニルアミン、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,3−ジアミノピレン、1,6−ジアミノピレン、1,8―ジアミノピレン、2,7−ジアミノフルオレン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェニル)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェニル)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェニル)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェニル)デカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカン、ジ(4−アミノフェニル)プロパン−1,3−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ブタン−1,4−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ペンタン−1,5−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘキサン−1,6−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘプタン−1,7−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)オクタン−1,8−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ノナン−1,9−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)デカン−1,10−ジオエート、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕プロパン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ブタン、1,5−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ペンタン、1,6−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘキサン、1,7−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘプタン、1,8−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]オクタン、1,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ノナン、1,10−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]デカン等である。さらに、芳香族ジアミンの例を以下に示す(以下の例において、nは、1〜10の整数である)。
【0074】
【化14】
上記芳香族ジアミンは、下記式(D)または式(E)で表すことができる。
【0076】
【化16】
式(D)および(E)において、Ar
0、Ar
1およびAr
2、並びにZは、式(3)に関して定義した通りである。式(D)に示されるアミンによって生成された配向膜は光配向性が高く、第2ポリアミド酸系化合物の生成に用いると好ましい。また式(E)で示されるアミンによって生成された配向膜は、チオール基およびヒドロキシル基がないため水素結合の影響が小さく高抵抗になりやすい。また、このアミンは、Z内に第三級を除くアミノ基(−NHまたは>NH)を有していないため、第1ポリアミド酸系化合物の生成に用いることが好ましい。なお、アミド結合は、第二級アミノ基とは化学性質が異なるため区別されている。つまり、Z内にアミド結合を有するアミンは除かれていない。
【0077】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応において、ジアミンをテトラカルボン酸二無水物よりもやや過剰に(例えば、テトラカルボン酸二無水物の1.1〜1.5倍モル量)用いると、第一級アミノ基を両末端に有するポリアミド酸系化合物が、いいかえると末端骨格として第一級アミンを有するポリアミド酸系化合物が、生成する。
【0078】
ポリアミド酸エステルは、以上説明したポリアミド酸に、例えばN,N−ジメチルホルムアミドジアルキルアセタールを反応させることによって製造することができる。あるいは、ポリアミド酸エステルは、特開2000−273172号公報に記載された方法によっても製造することができる。
【0079】
両末端に第一級アミノ基を有するポリアミド酸またはポリアミド酸エステルの両末端第一級アミノ基を化学修飾することによって、第1ポリアミド酸系化合物を得ることができる。この化学修飾は、第一級アミノ基の封止である。
【0080】
末端第一級アミノ基を化学修飾する方法として、アミド化がある。このための封止剤(アミド化剤)として、1分子中に1個のハロゲン化カルボニル基を有する化合物、すなわち一官能酸ハライドを用いることができる。ハライドは、クロリド、ブロミド、フルオリドが含まれる。一官能酸ハライドの例は、ベンゾイルクロリド、アセチルクロリド、プロピオニルクロリド、アクリロイルクロリド、メタクリロイルクロリド、トシルクロリド等を含む。
【0081】
また、アミド化する別の封止材として、1分子中に1個の酸無水物を有する化合物、すなわち一官能酸無水物を用いてもよい。一官能酸無水物の例は、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、イタコン酸無水物、トリメリット酸無水物、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等である。これらの化合物で末端第一級アミノ基を化学修飾した場合、通常配向膜用ワニスとしては、末端部位はポリアミド酸系化合物の状態となる。その後にこの化合物を製膜して焼成する際にイミド化する。
【0082】
また、アミド化する別の方法として、アミド酸エステルにしてもよい。末端をアミド酸エステル化させるためには、カルボキシル基や酸ハライド(ハロゲン化したカルボキシル基)のようなアミン反応性基と、エステル骨格を有する公知の芳香族化合物を封止剤として用いればよい。また、末端を上述の方法でアミド酸の状態にした化合物を、例えばN,N−ジメチルホルムアミドジアルキルアセタールを反応させることによってもアミド酸エステルにすることができる。これらの化合物で末端第一級アミノ基を化学修飾させた場合、通常、配向膜用ワニスとしては、末端部位はポリアミド酸エステルの状態となる。そして、その後、末端部位は製膜して焼成する際にイミド化する。
【0083】
また、配向膜用ワニスとして末端がイミド化された状態であってもよい。イミド化された末端を得る場合は、アミド酸またはアミド酸エステルにして封止した化合物を、加熱して脱水縮合させればよい。
【0084】
なお、アミド化、イミド化以外の方法での化学修飾であってもよく、例えばアゾ化、ウレア化、第三級アミノ化でもよい。
【0085】
アゾ化には、封止剤(アゾ化剤)の例として、ジアゾニウム塩系のジアゾカップリング剤が挙げられる。ウレア化には、封止剤として、イソシアナート系の材料を用いることができる。イソシアナートの例は、フェニルイソシアナート、ナフチルイソシアナート等である。第三級アミノ化には、封止剤(第三級アミノ化剤)として、ハロゲン基(特に塩素)またはヒドロキシル基を有する化合物を用いることができる。なお、上記に記載をした封止剤以外の材料で、アゾ化、ウレア化、第三級アミノ化してもよい。
【0086】
他の実施形態において、第一級アミノ基を含まない末端骨格を有するポリアミド酸系化合物は、上記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応において、テトラカルボン酸二無水物をジアミンよりも多く(例えば、ジアミンの1.1〜1.5倍モル量)用いることによって製造することができる。この反応によって、カルボキシル基を両末端に有するポリアミド酸系化合物が生成する。
【0087】
以上の説明から明らかなように、両末端に第一級アミノ基以外の基を有する第1ポリアミド酸系化合物は、下記式(10)で示される酸骨格を有し得る。
【0088】
【化17】
式(10)において、Xは、式(3)に関して定義した通りであ
【0089】
式(10)で示される酸骨格は、下記式(10−1)および下記式(10−2)で示される酸骨格を含む。
【0091】
【化19】
式(10−1)において、R
aは、アルキル基(例えば、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基)であり、R
bは、式(B)に関して定義したとおり、水素またはアルキル基である。
【0092】
アミン骨格は、上に記載したとおりである。
また、上記記載から明らかなように、第1ポリアミド酸系化合物は、前記式(3)で示される構造単位(繰り返し単位)を有し得、その末端骨格は、イミド骨格、アミド骨格、ウレア骨格、第三級アミノ骨格、アゾ結合またはカルボキシル基を有し得る。式(3)で示される構造単位は、下記式(3−1)または下記式(3−2)で示される構造単位を含む。
【0094】
【化21】
式(3−1)および式(3−2)において、Arは、前記式(4)に関して定義したAr
0、またはAr
1-Z−Ar
2である。式(3−1)において、R
aおよびR
bは、前記式(10−1)に関して定義したとおりである。Zは式(4)で定義した通りである。
【0095】
<第2ポリアミド酸系化合物をさらに含む光配向膜用ワニス>
別の実施形態において、光配向膜用ワニスは、ポリアミド酸系化合物として、第1ポリアミド酸系化合物に加えて、ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルである第2ポリアミド酸系化合物をさらに含む。その場合、第1ポリアミド酸系化合物は、第2ポリアミド酸系化合物よりも高い極性(大きな表面エネルギー)を有する。したがって、第1ポリアミド酸系化合物と第2ポリアミド酸系化合物とを共存させた場合、両者は相分離する。この場合、第1ポリアミド酸系化合物の方が、液晶表示装置における画素電極を形成するITOまたはシリコン酸化物、シリコン窒化物等の無機材料膜または有機樹脂を用いた有機パッシベーション膜との親和性が高いので、第1ポリアミド酸系化合物が下層となる。通常、ポリアミド酸エステルとポリアミド酸が共存する場合、ポリアミド酸エステルが上層を形成し、ポリアミド酸が下層を形成する。また、2種のポリアミド酸が共存する場合であって、一方のポリアミド酸のジアミン骨格に酸素またはフッ素が存在し、他方のポリアミド酸のジアミン骨格に酸素およびフッ素のいずれも存在しない場合、上記一方のポリアミド酸が下層を形成し、上記他方のポリアミド酸が上層を形成する。また、上記他方のポリアミド酸に酸素またはフッ素が存在していてもその量が上記一方のポリアミド酸のジアミン骨格における酸素またはフッ素の量よりも少ない場合も、上記一方のポリアミド酸が下層を形成し、上記他方のポリアミド酸が上層を形成する。
【0096】
いうまでもなく、配向膜が単層である場合、ポリアミド酸系化合物として、上記第1ポリアミド酸系化合物を用いる。
【0097】
第2ポリアミド酸系化合物は、上記第1ポリアミド酸系化合物として掲げた化合物の中から選ぶことができる。また上記第1のポリアミド酸系化合物生成するための両末端第一級アミノ基の封止前のポリアミド酸系化合物、すなわち、両末端に第一級アミノ基を有するポリアミド酸またはポリアミド酸エステルの中から選ぶこともできる。しかしながら、第2ポリアミド酸系化合物も、第1ポリアミド酸系化合物と同様、両末端に第一級アミノ基を持たないことが好ましい。また、配向膜が単層であるか、二層構造であるかにかかわらず、第1ポリアミド酸系化合物も、第2ポリアミド酸系化合物も、第二級アミノ基(アミドを形成している第二級アミノ基を除く)を持たないことが好ましい。
【0098】
上の説明から明らかなように、二層構造の配向膜について、下層とは、適用対象(例えば、ITO膜や無機材料膜や有機パッシベーション膜)に直接接触する層をいい、上層とは、下層と接する層をいう。
【0099】
二層構造の配向膜の場合、極性が高い第1ポリアミド酸系化合物は、下層に含まれ画素電極と接する。焼付きを抑制するためには、下層膜のフォトチャージによる電荷の蓄積を避けなければならないため、少なくとも下層膜に含まれる第1ポリアミド酸系化合物は、両末端に第一級アミノ基を有しないことが好ましい。
【0100】
<配向膜>
本発明のワニスは、これを塗布対象に塗布し、200℃程度の温度で加熱することによってイミド化する。より具体的には、ポリアミド酸系化合物として第1ポリアミド酸系化合物のみを含むワニスの場合には、第1ポリアミド酸系化合物が、イミド化する。ポリアミド酸系化合物として第1ポリアミド酸系化合物および第2ポリアミド酸系化合物を含むワニスの場合には、塗布後二層に相分離し、加熱により第1ポリアミド酸系化合物および第2ポリアミド酸系化合物の両方がイミド化する。
【0101】
イミド化後の膜に、光配向処理を行って、配向膜を提供する。光配向処理は、波長254nmまたは365nmの短波長紫外光を膜に照射することによって行うことができる。
いくつかの実施形態において、ポリイミド化合物は、下記式(11):
【0102】
【化22】
(式(11)中、J
1、並びにR
1、R
2およびR
3は、式(1)に関して定義した通りである)で表される末端骨格、
下記式(12)
【0103】
【化23】
(式(12)中、J
1、並びにR
1、R
2およびR
3は、式(1)に関して定義した通りである)で表される末端骨格、
下記式(13):
【0104】
【化24】
(式(13)中、J
1、並びにR
1、R
2およびR
3は、式(1)に関して定義した通りである)で表される末端骨格、または
下記式(14):
【0105】
【化25】
(式(14)中、K、J
2並びにR
5、R
6およびR
7は、式(2)に関して定義した通りである)で表される末端骨格を有する。
【0106】
上記式(11)〜(14)のような末端骨格を有するポリイミド化合物は、上記式(4)および(5)のような末端骨格を有する第1ポリアミド酸系化合物を加熱してイミド化することによって形成することができる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例により説明するが、初めに、ポリアミド酸系化合物の合成例を記載する。
【0108】
ポリアミド酸系化合物の合成例
1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物100モル部のNMP溶液と、p−フェニレンジアミン90モル部のNMP溶液とを混合し、室温で8時間反応させて、ポリアミド酸を生成させた。未反応のモノマー、低分子量成分を除去して、固形分濃度15質量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0109】
上述した合成例で合成したポリアミド酸系化合物の酸骨格、ジアミン骨格、各末端骨格を下記表1に示す。表1において、酸骨格に付されている「※」印は、ジアミン骨格との結合部位を示し、ジアミン骨格に付されている「※」印は、酸骨格との結合部位を示し、末端骨格における「※」印は、末端骨格がアミドを有する場合は、酸骨格との結合部位を示し、末端骨格がカルボキシル基を有する場合は、ジアミン骨格との結合部位を示す。
【0110】
【表1】
【0111】
実施例1〜3および比較例1,2
上記表1の ポリアミド酸系化合物には、下記表2に示すようなアルコキシシランをそれぞれ加え(加えない場合もある)、均一になるように撹拌して各塗布液を調製した。
図1および
図2に示す構造の液晶表示装置の第1基板SUB1上の第1配向膜AL1、および第2基板SUB2上の第2配向膜AL2を塗布すべき領域に各塗布液を塗布し、200℃に加熱してイミド化を行った。イミド化率は、いずれも80%であった。各イミド化膜に対し、短波長の紫外光を用いて光配向処理を行った。各配向膜を洗浄した後、こうして第1配向膜AL1を形成した第1基板SUB1、および第2配向膜AL2を形成した第2基板SUB2を用いて常法により
図1に示す構造の液晶表示装置を作製した。液晶としては、誘電異方性がΔεが負でその値が−4.1(1kHz,20℃)であり、屈折率異方性Δnが0.0821(波長590nm,20℃)のネマチック液晶材料(メルク社製MLC−2039)を用いた。
【0112】
最初に、作製した比較例1および比較例2の液晶表示装置を温度60℃、フレーム周波数1Hz、印加電圧5Vの条件下で駆動させ、液晶表示装置に含まれる液晶の電圧保持率へのアミン系シランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)の影響を検討した。その結果を
図4に示す。
【0113】
図4から明らかなように、アミン系シランカップリング剤を含む比較例2(
図4中の(ii))は、アルコキシシランを含まない比較例1(
図4中の(i))と比較して、電圧印加1秒後の電圧が低下している、すなわち電圧保持率が低下していることがわかる。
【0114】
次に、実施例1〜3および比較例1,2の液晶表示装置に、
図5に示す白と黒(図中斜線で示す)のチェッカーフラグパターンを60℃で1時間表示させた。各チェッカーパターンは、一辺5mmの正方形であった。白は最大輝度(256/256階調)であり、黒は最少輝度(0/256階調)である。その後、画面全体に31/256階調のグレー表示をさせると、1時間表示時の白表示部と黒表示部で輝度が異なる現象(焼付き)が観察された。両表示部の輝度変化率:
{(a−b)/b}×100
(式中、aは、白表示部の輝度であり、bは、黒表示部の輝度である)を残像強度とした。この数値が1%以上あると、人間の目には残像として認識される。
【0115】
上記チェッカーフラグパターンを60℃で1時間連続点灯した後のグレー表示における焼付きの発生の有無を目視によって観測し、以下の3段階で評価した。
A:グレー表示において焼付きは視認されなかった。
B:グレー表示において焼付きが視認されたが許容範囲(斜めから見たらかろうじて見える焼付き)であった。
C:グレー表示において焼付きが視認された。
【0116】
また、窒化ケイ素膜(SiN)を備えるガラス基板の当該SiN上に上記表2の各塗布液を塗布し、200℃に加熱してイミド化を行った。イミド化率は、いずれも80%であった。各イミド化膜に対し、短波長の紫外光を用いて光配向処理を行った。各配向膜を洗浄した後、同じ構成の基板同士を、シール剤を介して貼り合せた後に接着し、基板同士の密着性を以下の3段階で評価した。
A:基板を手で剥がすことができなかった。
B:基板を手で剥がすことができた。
C:基板を手で容易に剥がすことができた。
結果を表2に併記する。
【0117】
【表2】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜3の光配向膜用ワニスを含む配向膜を備える液晶表示装置は、焼付きが抑制または防止され、シール部との接着力を確保できる。
【0118】
以上の実施形態では、液晶表示装置の例として、透過型の液晶表示装置について説明したが、液晶表示装置DSPは、例えば、外部から入射する外光を各画素PXで選択的に反射することによって画像を表示する反射表示機能を兼ね備えた、いわゆる半透過型の液晶表示装置であってもよい。半透過型の液晶表示装置については、光源として、液晶表示パネルPNLの観察者側に、フロントライトユニットが配置されていてもよい。
【0119】
また、液晶表示装置の例として、IPS(In−Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モードなどの主として横電界を利用するモードの液晶表示装置について説明したが、本発明は他のモード、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、VA(Vertical Aligned)モードなどの主として縦電界を利用するモードの液晶表示装置にも適用することができる。
【0120】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 有機溶媒中に、アルコキシシランと、ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルである第1ポリアミド酸系化合物とを含み、
前記アルコキシシランは、第一級アミノ基および第二級アミノ基を含まないことを特徴とする光配向膜用ワニス。
[2] 前記アルコキシシランが、エポキシ骨格または酸無水物骨格を有することを特徴とする[1]に記載の光配向膜用ワニス。
[3] 前記第1ポリアミド酸系化合物が、下記式(1):
【化26】
(式(1)中、J1は、単結合または炭素数1〜4の2価の有機基であり、mは、1または2の整数であり、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基であり、少なくとも1つはアルコキシ基である)で表される末端骨格、または下記式(2):
【化27】
(式(2)中、Kは、炭素数1〜6の3価の有機基であり、J2は、単結合または炭素数1〜4の2価の有機基であり、R4は、−COOHまたは−COOR(ここで、Rは、アルキル基である)であり、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基であり、少なくとも1つはアルコキシ基である)で表される末端骨格を有することを特徴とする[1]または[2]に記載の光配向膜用ワニス。
[4] 前記アルコキシシランは、下記式(3):
【化28】
(式(3)中、Kは、炭素数1〜6の3価の有機基であり、J2は、単結合または炭素数1〜4の2価の有機基であり、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基であり、少なくとも1つはアルコキシ基である)で表されることを特徴とする[1]から[3]までのいずれか一つに記載の光配向膜用ワニス。
[5] 前記第1ポリアミド酸系化合物が、下記式(4):
【化29】
(式(4)中、Xは、環式基であり、R8およびR9は、それぞれ独立に、−COOHまたは−COOR(ここで、Rは、アルキル基である)であり、Y1は、有機基である)で表される構造単位を有することを特徴とする[1]から[4]までのいずれか一つに記載の光配向膜用ワニス。
[6] 前記第1ポリアミド酸系化合物は、下記式(5):
【化30】
(式(5)中、Lは、Ar0、またはAr1−Z−Ar2であり、Ar0、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基であり、Zは、第一級アミノ基および第二級アミノ基を含有しない有機基である)で示されるジアミン骨格を有することを特徴とする[1]から[5]までのいずれか一つに記載の光配向膜用ワニス。
[7] 前記Zが、酸素、窒素、硫黄、炭素、水素またはそれら2つ以上の組合せから構成され、当該Zは、ヒドロキシル基、チオール基および第三級を除くアミノ基(−NHまたは>NH)を有しないことを特徴とする[6]に記載の光配向膜用ワニス。
[8] ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルである第2ポリアミド酸系化合物をさらに含み、前記第1ポリアミド酸系化合物は、前記第2ポリアミド酸系化合物よりも高い極性を有することを特徴とする[1]から[7]までのいずれか一つに記載の光配向膜用ワニス。
[9] 第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを接着するシール部と、
前記第1基板と前記第2基板と前記シール部との間にある液晶層と、
前記第1基板にあり前記液晶層と接する配向膜とを備え、
前記配向膜は、末端骨格が、第一級アミノ基および第二級アミノ基を有さず、アルコキシシラン基を有するポリイミド化合物を含むことを特徴とする液晶表示装置。
[10] 前記ポリイミド化合物が、下記式(6):
【化31】
(式(6)中、J1は、単結合または炭素数1〜4の2価の有機基であり、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基であり、少なくとも1つはアルコキシ基である)で表される末端骨格、下記式(7):
【化32】
(式(7)中、J1は、単結合または炭素数1〜4の2価の有機基であり、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基であり、少なくとも1つはアルコキシ基である)で表される末端骨格、下記式(8):
【化33】
(式(8)中、J1は、単結合または炭素数1〜4の2価の有機基であり、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基であり、少なくとも1つはアルコキシ基である)で表される末端骨格、または下記式(9):
【化34】
(式(9)中、Kは、炭素数1〜6の3価の有機基であり、J2は、単結合または炭素数1〜4の2価の有機基であり、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、アルキル基またはアルコキシ基であり、少なくとも1つはアルコキシ基である)で表される末端骨格を有することを特徴とする[9]に記載の液晶表示装置。
[11] 前記第1基板は、前記液晶層側に絶縁膜を備え、前記シール部と前記絶縁膜との間に、前記配向膜があることを特徴とする[9]または[10]に記載の液晶表示装置。
[12] 前記第1基板は、第1配線と、前記第1配線を覆う第1絶縁膜と、前記第1配線よりも上側にある第2配線と、前記第2配線を覆う第2絶縁膜と、前記第2配線よりも上側にある第3配線と、前記第3配線を覆う第3絶縁膜とを備え、前記シール部と前記第3絶縁膜との間に、前記配向膜があることを特徴とする[9]から[11]までのいずれか一つに記載の液晶表示装置。