(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873795
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】液化ガス受入装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
F17C13/02 302
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-75911(P2017-75911)
(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公開番号】特開2018-179059(P2018-179059A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】内田 優幸
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−119893(JP,A)
【文献】
特開2002−013962(JP,A)
【文献】
米国特許第04625553(US,A)
【文献】
特開2008−170292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/02
F17C 6/00
F17C 13/00
G01F 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯留するタンクに接続される受入配管を備える液化ガス受入設備であって、
前記受入配管内部の前記液化ガスの液面高さを算出する液面算出手段と、
前記受入配管に貯留される前記液化ガスの液相の密度を取得する密度取得手段と、
密度取得手段により取得された前記液化ガスの密度に基づいて前記液面高さを補正する液面補正手段と
を備え、
前記密度取得手段は、
前記受入配管に取り付けられ、前記液化ガスの液相の圧力を計測する第1圧力計と、
前記第1圧力計とは鉛直方向の位置が異なるように前記受入配管に取り付けられ、前記液化ガスの液相の圧力を計測する第2圧力計と、
前記第1圧力計及び前記第2圧力計から取得した液相の圧力の差に基づいて前記液化ガスの密度を算出する密度算出部と
を備える
ことを特徴とする液化ガス受入設備。
【請求項2】
前記液面算出手段は、前記受入配管内部の気相の圧力を計測する気相圧力計と、前記液化ガスの液相の圧力を計測する液相圧力計とを備え、
前記液相圧力計は、前記第1圧力計または前記第2圧力計と兼用される
ことを特徴とする請求項1記載の液化ガス受入設備。
【請求項3】
前記液面補正手段により補正された前記液面高さに基づいて前記液面高さを調整する液面調整手段を備え、
前記液面調整手段は、前記受入配管と接続されて前記受入配管への前記液化ガスの流入量を調整するバルブと、前記液面補正手段により補正された前記液面高さを取得して前記バルブを開閉弁することにより前記受入配管の液面高さを調整する制御部とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の液化ガス受入設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス受入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液化ガスを貯留するタンクを含む受入設備には、定期的にタンカから液化ガスが供給されている。このため、受入設備は、タンカ及びタンクと接続される受入配管を有している。この受入配管は、タンカより液化ガスが供給されていない間も、内部を液化ガスで満たされることにより冷却されている。このような受入配管においては、内部の液化ガスの液面高さを監視し、液面高さを調整することで冷却性能を保持している。
【0003】
例えば、特許文献1には、貯槽(タンク)と接続される受入配管の立ち上がり部において、立ち上がり部における液レベル(液面高さ)を検出する液レベル検出器が設けられる構成が開示されている。このような液レベル検出器の検出結果に基づいて、液レベルコントローラにより立ち上がり部の液レベルを調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−119893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
受入配管の液面高さを検出する検出器は、一般的に液面より上の気相圧力を検出する気相圧力計と液面より下の液相圧力を検出する液相圧力計とを有しており、予め定められた液化ガスの密度と、気相圧力及び液相圧力から液面高さを算出している。しかしながら、液化ガスは、時間が経過することで、含有成分のうち比重の軽いものが液面まで浮上して先に気化し、液相が濃縮する。この際、液化ガスの気化物が液面近傍に滞留することにより、液面高さを検出する検出器においては液面高さに変化が現れないものの、実際には液化ガスの濃縮により液面が低下している場合がある。受入配管における液化ガスの液面高さが正確に保持できないと、受入配管を適切に冷却することができない。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、受入設備において、受入配管の冷却を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、本発明では、第1の手段として、液化ガスを貯留するタンクに接続される受入配管を備える液化ガス受入設備であって、上記受入配管内部の上記液化ガスの液面高さを算出する液面算出手段と、上記受入配管に貯留される上記液化ガスの液相の密度を取得する密度取得手段と、密度取得手段により取得された上記液化ガスの密度に基づいて上記液面高さを補正する液面補正手段とを備える、という構成を採用する。
【0008】
第2の手段として、上記第1の手段において、上記密度取得手段は、上記液化ガスの液相の差圧に基づいて密度を算出する、という構成を採用する。
【0009】
第3の手段として、上記第2の手段において、上記密度取得手段は、上記液化ガスの液相の圧力を計測する第1圧力計と、上記第1圧力計と鉛直方向において異なる位置に設けられると共に上記液化ガスの液相の圧力を計測する第2圧力計と、上記第1圧力計及び上記第2圧力計から取得した液相の圧力に基づいて上記液化ガスの密度を算出する密度算出部とを備える、という構成を採用する。
【0010】
第4の手段として、上記第3の手段において、上記液面算出手段は、上記受入配管内部の気相の圧力を計測する気相圧力計と、上記液化ガスの液相の圧力を計測する液相圧力計とを備え、上記液相圧力計は、上記第1圧力計または上記第2圧力計と兼用される、という構成を採用する。
【0011】
第5の手段として、上記第1〜第4のいずれかの手段において、上記液面補正手段により補正された上記液面高さに基づいて上記液面高さを調整する液面調整手段を備え、上記液面調整手段は、上記受入配管と接続されて上記受入配管への上記液化ガスの流入量を調整するバルブと、上記液面補正手段により補正された上記液面高さを取得して上記バルブを開閉弁することにより上記受入配管の液面高さを調整する制御部とを備える、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、密度取得手段により、受入配管に貯留される液化ガスの密度を取得している。これにより、液相の液化ガスの正確な密度を取得できる。さらに、液面補正手段により、算出された液面高さを密度取得手段が取得した密度により補正することで、正確な液面高さに補正することができる。したがって、受入配管における正確な液面高さを取得することができ、受入配管を適切に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における受入設備の全体を含む模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態における受入設備が備える垂直配管部を含む拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る液化ガス受入設備の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1は、本実施形態における受入設備1の全体を含む模式図である。また、
図2は、本実施形態における受入設備1が備える垂直配管部2cを含む拡大模式図である。
受入設備1は、液化天然ガスXを積載して輸送するLNGタンカ100にジョイント110を介して接続される払い出し管120に接続される設備である。このような受入設備1は、
図1及び
図2に示すように受入配管2と、貯蔵タンク3と、液面算出部4(液面算出手段)と、密度取得部5(密度取得手段)と、液面補正部6(液面補正手段)と、液面調整部7(液面調整手段)とを備えている。
【0016】
受入配管2は、払い出し管120と接続されると共に貯蔵タンク3と接続される配管である。受入配管2は、貯蔵タンク3側の端部が液相X1が流入する受入本管2aと気相X2が流入する受入支管2bとに分かれており、受入本管2aと受入支管2bのそれぞれが貯蔵タンク3の上面に接続される。また、受入配管2は、受入本管2aと受入支管2bよりも上流側の垂直配管部2cが貯蔵タンク3の上面まで鉛直方向に沿って配置される。なお、本発明における鉛直方向とは、地面に対して直角である場合に限らず、地面に対して斜めに傾斜している場合も含む。垂直配管部2cには、液相X1が上端近傍まで貯留されており、液相X1により配管部材を冷却している。さらに、受入配管2は、垂直配管部2cよりも上流側においてバルブ2dを有しており、バルブ2dよりも下流側における液化天然ガスXの流量が調節される。
【0017】
貯蔵タンク3は、タンカ100から受入配管2を介して液化天然ガスXを受け入れるタンクである。このような貯蔵タンク3は、例えば、内槽と外槽との間に保冷材が充填された二重殻構造の円筒型とされ、外周面をコンクリート3aにより覆われたタンク部3bを有している。
【0018】
液面算出部4は、
図2に示すように、気相圧力計4aと、液相圧力計4bと、算出部4cとを有している。気相圧力計4aは、垂直配管部2cの上端に設けられ、垂直配管部2cの上端に滞留する気体の圧力を計測する。液相圧力計4bは、垂直配管部2cの下端に設けられ、垂直配管部2cに貯留される液相X1の圧力を計測する。算出部4cは、液化天然ガスXの密度を予め記憶しており、気相圧力計4a及び液相圧力計4bからそれぞれ圧力値を取得し、気相の圧力値と液相の圧力値とから垂直配管部2cにおける液相X1の液面高さを算出する。
【0019】
密度取得部5は、第1圧力計5aと、第2圧力計5bと、密度算出部5cとを有している。第1圧力計5a及び第2圧力計5bは、気相圧力計4aと液相圧力計4bとの間に配置され、液相X1の圧力を計測する。第2圧力計5bは、鉛直方向において第1圧力計5aよりも下側に配置されている。また、第1圧力計5aと第2圧力計5bとの間の鉛直方向における距離が既知とされている。密度算出部5cは、第1圧力計5a及び第2圧力計5bのそれぞれの圧力値を取得し、その圧力差から液相X1の密度を算出する。
【0020】
液面補正部6は、液面算出部4から液面高さを取得し、さらに密度取得部5から取得した液相X1の密度に基づいて、上記液面高さを補正する。液面調整部7は、ポンプ7aと、調整バルブ7bと、制御部7cとを有している。ポンプ7aは、
図1に示すように、貯蔵タンク3のタンク部3bに収容されており、タンク部3bに貯蔵された液相X1を、配管を通じて垂直配管部2cへと圧送する。調整バルブ7bは、垂直配管部2cとポンプ7aとの間に設けられている。制御部7cは、液面補正部6から取得した補正された液面高さに基づいて、ポンプ7a及び調整バルブ7bを制御し、垂直配管部2cの液面高さを調整する。
【0021】
LNGタンカ100がジョイント110に接続され、払い出し管120を介して受入設備1にLNGタンカ100から液化天然ガスXが供給されると、バルブ2dが開弁され、受入配管2を介して貯蔵タンク3へと液化天然ガスXが貯留される。貯蔵タンク3に所定量の液化天然ガスXが貯留されると、バルブ2dが閉弁される。これにより、受入配管2において垂直配管部2cよりも下流側の液化天然ガスXが貯蔵タンク3へと流入し、垂直配管部2cには、液化天然ガスXが残留した状態となる。
【0022】
垂直配管部2cには、液化天然ガスXが残留した状態で、垂直配管部2cに液化天然ガスXが長期間(数日から数か月程度)貯留されると、液化天然ガスXに含まれる比重の軽い成分が気化し、液相X1と、気相X2とに分離する。このため、液相X1は元の液化天然ガスXの体積よりも小さくなり、垂直配管部2cにおける液相X1の液面高さが低下する。また、気相X2は、垂直配管部2cの上部に滞留する。
【0023】
このような受入設備1において、液面算出部4は、垂直配管部2cの気相圧力計4aにより垂直配管部2cの気相の圧力を計測し、液相圧力計4bにより液相X1の圧力を計測する。液面算出部4は、算出部4cにより、気相X2の圧力値、液相X1の圧力値及び、予め与えられたLNGタンカ100から供給された液化天然ガスXの密度に基づいて液面高さを算出する。
【0024】
また、密度取得部5は、第1圧力計5aと第2圧力計5bとが液相X1の圧力が計測する。そして、密度取得部5は、密度算出部5cが、第1圧力計5a及び第2圧力計5bにより計測された圧力値と、第1圧力計5aと第2圧力計5bとの鉛直方向における距離とに基づいて、液相X1の密度を算出する。さらに、液面補正部6は、密度取得部5により算出された密度に基づいて、液面算出部4から取得した液面高さを補正する。
【0025】
続いて、液面調整部7は、制御部7cが液面補正部6から補正された液面高さを取得し、該液面高さが所定値よりも下回っている場合には、ポンプ7aを駆動させ、調整バルブ7bを開弁する。これにより、貯蔵タンク3内に貯蔵されている液相X1が垂直配管部2cに流入し、垂直配管部2cの液面高さが上昇する。液面調整部7は、制御部7cが垂直配管部2cにおける液相X1の液面高さが所定の高さとなると、ポンプ7aを停止させると共に調整バルブ7bを閉弁する。
【0026】
このような本実施形態の受入設備1は、密度取得部5により、液相X1の密度を取得し、さらに取得した密度に基づいて液面補正部6により液面高さの補正が行われる。これにより、液面算出部4により算出された液面高さに含まれる密度分布に基づく誤差を排除することができ、垂直配管部2cにおける正確な液面高さを取得することができる。したがって、垂直配管部2cにおける液面高さを適切に調節でき、受入配管2を適切に冷却することができる。
【0027】
また、本実施形態の受入設備1は、密度取得部5が垂直配管部2cにおける鉛直方向の差圧を算出することにより、垂直配管部2cにおける液相X1の密度を算出している。したがって、既存の垂直配管部2cに対して圧力計を取り付けることにより垂直配管部2cにおける液相の密度を取得できるため、液相の密度を取得することが容易である。
【0028】
また、本実施形態の受入設備1は、液面補正部6により補正された液面高さに基づいて液面調整部7により垂直配管部2cにおける液相X1の液面高さを調整することができる。これにより、正確な液面高さに基づいて、受入配管2を適切に冷却することができる。
【0029】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0030】
上記実施形態においては、液面算出部4が気相圧力計4a及び液相圧力計4bを有し、密度取得部5が第1圧力計5a及び第2圧力計5bを有する構成を採用したが、本発明はこれに限定されない。液相圧力計4bと、第2圧力計5bとを兼用する兼用圧力計を備えるものとしてもよい。この場合、この場合、算出部4cは、兼用圧力計から圧力値を取得する。また、同様に、密度算出部5cは、兼用圧力計から圧力値を取得する。垂直配管部2cに設置する圧力計の数を減らすことができるため、取付がさらに容易となる。
【0031】
また、上記実施形態においては、密度取得部5は、鉛直方向において異なる位置の圧力の差分を算出することにより密度を算出する構成を採用したが、本発明はこれに限定されない。密度取得部5は、コリオリ式の密度計とすることも可能である。
【0032】
また、密度取得部5は、差圧計を用いることも可能である。この場合、上記実施形態の密度取得部5と同様に、差圧から密度を算出する密度算出部5cを有する。
【符号の説明】
【0033】
1 受入設備
2 受入配管
2a 受入本管
2b 受入支管
2c 垂直配管部
2d バルブ
3 貯蔵タンク
3a コンクリート
3b タンク部
4 液面算出部
4a 気相圧力計
4b 液相圧力計
4c 算出部
5 密度取得部
5a 第1圧力計
5b 第2圧力計
5c 密度算出部
6 液面補正部
7 液面調整部
7a ポンプ
7b 調整バルブ
7c 制御部
100 タンカ