(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定手段は、抜針状態であると判定した場合、前記動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針の何れが抜針状態であるか判定可能とされたことを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
前記動脈側血液回路の先端部において気泡の流通を検知し得る気泡検知手段が取り付けられるとともに、前記判定手段は、当該気泡検知手段による気泡の検知によって前記動脈側穿刺針の抜針を判定し得ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
前記判定手段は、前記動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜針状態の判定に加え、穿刺状態が不安定であるか否か、または前記電極が不安定に接触している若しくは外れているか否かを判定可能とされたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置。
前記判定手段で前記動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜針状態が判定されたことを条件として、当該抜針状態を報知する報知手段を具備したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、体表に密着して取り付けられた心電図用の電極(体表側電極)が外れた場合、穿刺針の抜針状態を判定することができなくなってしまうことから、安全上の観点から血液浄化治療を中断せざるを得なくなってしまう虞があった。すなわち、体表側電極が患者から外れても、血液浄化治療を即刻中断させる必要がないのであるが、同時に穿刺針の抜針状態の判定を行えなくなってしまうことから、安全上、血液浄化治療を中断して安全を確認する作業が必要となってしまうのである。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、体表側電極が患者から外れても動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜針状態を継続して判定することができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、患者に穿刺可能な動脈側穿刺針が先端に取り付けられた動脈側血液回路と、患者に穿刺可能な静脈側穿刺針が先端に取り付けられた静脈側血液回路と、前記動脈側血液回路の基端及び静脈側血液回路の基端に接続され、当該動脈側血液回路及び静脈側血液回路で体外循環する患者の血液を浄化可能な血液浄化手段とを有する血液浄化装置において、前記動脈側血液回路を流れる血液に電圧を印加し得る動脈側電極と、前記静脈側血液回路を流れる血液に電圧を印加し得る静脈側電極と、前記動脈側電極と静脈側電極との間で電圧を印加して、患者に穿刺された前記動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を介して電流を流し得る電源と、患者の体表に密着して取り付けられ、その患者の体内からの電気信号を検出し得る体表側電極と、前記体表側電極で検出された電気信号に基づいて患者の体内におけるインピーダンスの変化を検出することにより所定の生体パラメータを取得し得る検出手段と、前記動脈側電極又は静脈側電極を流れる電流、及び前記検出手段で検出された患者の体内におけるインピーダンスの変化をリアルタイムに監視し得る監視手段と、前記監視手段の監視対象であるインピーダンスの変化に基づいて、前記動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から離脱した抜針状態を判定可能な判定手段とを具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記判定手段は、抜針状態であると判定した場合、前記動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針の何れが抜針状態であるか判定可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記検出手段によりインピーダンスの変化を検出するための他方の電極として前記動脈側電極又は静脈側電極を兼用させたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記動脈側血液回路の先端部において気泡の流通を検知し得る気泡検知手段が取り付けられるとともに、前記判定手段は、当該気泡検知手段による気泡の検知によって前記動脈側穿刺針の抜針を判定し得ることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記判定手段は、前記動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜針状態の判定に加え、穿刺状態が不安定であるか否か、または前記電極が不安定に接触している若しくは外れているか否かを判定可能とされたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記判定手段で前記動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜針状態が判定されたことを条件として、当該抜針状態を報知する報知手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、動脈側電極と静脈側電極との間で電圧を印加して、患者に穿刺された動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を介して電流を流し得る電源を具備したので、体表側電極が患者から外れても動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜針状態を継続して判定することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、判定手段は、抜針状態であると判定した場合、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針の何れが抜針状態であるか判定可能とされたので、抜針による処置を正確且つ円滑に行わせることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、検出手段によりインピーダンスの変化を検出するための他方の電極として動脈側電極又は静脈側電極を兼用させたので、血液浄化治療時に取り付けるべき電極の数を低減させることができ、作業性を向上させることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、動脈側血液回路の先端部において気泡の流通を検知し得る気泡検知手段が取り付けられるとともに、判定手段は、当該気泡検知手段による気泡の検知によって動脈側穿刺針の抜針を判定し得るので、抜針状態と判定された際、動脈側穿刺針の抜針状態と静脈側穿刺針の抜針状態とをより精度よく判別することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、判定手段は、動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜針状態の判定に加え、穿刺状態が不安定であるか否か、または前記電極が不安定に接触している若しくは外れているか否かを判定可能とされたので、抜針状態となる前或いは電極(動脈側電極、静脈側電極又は体表側電極)が外れる前に対処を行わせることができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、判定手段で動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜針状態が判定されたことを条件として、当該抜針状態を報知する報知手段を具備したので、抜針状態を素早く周囲の医療従事者等に把握させることができ、その対処のための作業を素早く行わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させつつ血液透析治療及び除水を行うための血液透析装置から成り、
図1に示すように、血液回路1と、血液回路1に接続された血液浄化手段としてのダイアライザ2と、装置本体Bに配設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2と、動脈側電極D1、静脈側電極D2及び体表側電極D3と、電源8と、検出手段9と、監視手段10と、判定手段11と、報知手段12とを有して構成されている。
【0022】
血液回路1は、血液等の液体を流通させ得る可撓性チューブから成り、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bを有して構成されている。動脈(脱血または採血)側血液回路1aには、その先端に動脈側穿刺針a(
図1、2参照)が接続可能とされているとともに、途中にしごき型の血液ポンプ3が配設される。一方、静脈(返血)側血液回路1bには、その先端に静脈側穿刺針b(
図1、2参照)が接続されているとともに、途中に除泡用のエアトラップチャンバ4が接続されている。なお、本明細書においては、血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「動脈側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「静脈側」と称しており、「動脈側」及び「静脈側」とは、穿刺の対象となる血管が動脈及び静脈の何れかによって定義されるものではない。
【0023】
本実施形態に係る動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bは、患者に穿刺可能な穿刺針(アクセス手段)を構成するもので、
図2に示すように、硬質樹脂等から成る先端部fに取り付けられたカニューレ(血管内留置針)から成る。また、先端部fは、鉗子用可撓性チューブgを介して硬質樹脂等から成る接手cが連結されており、同図(a)に示すように、これら先端部f、鉗子用可撓性チューブg及び接手cが一体化されている。
【0024】
一方、動脈側血液回路1aの先端及び静脈側血液回路1bの先端には、それぞれ硬質樹脂等から成る接手dが形成されており、同図(b)に示すように、当該接手dに穿刺針側の接手cを嵌合させた状態で、ロックリングRにてネジ止めすることにより嵌合状態をロック可能とされている。なお、鉗子用可撓性チューブgを鉗子にて挟持することにより、動脈側穿刺針a又は静脈側穿刺針bと動脈側血液回路1a又は静脈側血液回路1bとの間の流路を遮断し得るようになっている。
【0025】
そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ3を駆動させると、動脈側穿刺針aから採取された患者の血液は、動脈側血液回路1aを通ってダイアライザ2に至り、該ダイアライザ2によって血液浄化が施された後、エアトラップチャンバ4で除泡がなされつつ静脈側血液回路1bを通り、静脈側穿刺針bを介して患者の体内に戻る。これにより、患者の血液を血液回路1にて体外循環させつつダイアライザ2にて浄化することができる。
【0026】
ダイアライザ2は、その筐体部に、血液導入ポート2a、血液導出ポート2b、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dが形成されており、このうち血液導入ポート2aには動脈側血液回路1aの基端が、血液導出ポート2bには静脈側血液回路1bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dは、装置本体Bから延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0027】
ダイアライザ2の筐体部内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0028】
装置本体Bには、
図1に示すように、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って形成された複式ポンプ7と、透析液排出ラインL2において複式ポンプ7を迂回するバイパスラインに接続された除水ポンプ6とを有して構成されている。そして、透析液導入ラインL1の一端がダイアライザ2(透析液導入ポート2c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ラインL2の一端は、ダイアライザ2(透析液導出ポート2d)に接続されるとともに、他端が排液手段(不図示)と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ラインL1を通ってダイアライザ2に至った後、透析液排出ラインL2を通って排液手段に送られるようになっている。
【0029】
除水ポンプ6は、ダイアライザ2中を流れる患者の血液から水分を除去するためのものである。すなわち、除水ポンプ6を駆動させると、透析液導入ラインL1から導入される透析液量よりも透析液排出ラインL2から排出される液体の容量が多くなり、その多い容量分だけ血液中から水分が除去されるのである。なお、複式ポンプ7以外の手段(例えば所謂バランシングチャンバ等を利用するもの)にて患者の血液から水分を除去するようにしてもよい。
【0030】
気泡検出手段5は、動脈側血液回路1aを構成する可撓性チューブを流れる気泡(エア)を検出可能なセンサから成り、例えば圧電素子から成る超音波振動素子と、圧電素子から成る超音波受信素子とを具備している。そして、動脈側血液回路1aを構成する可撓性チューブに向けて超音波振動素子から超音波を照射させ得るとともに、その振動を超音波受信素子にて受け得るようになっている。
【0031】
かかる超音波受信素子は、その受信した振動に応じて電圧が変化するよう構成されており、検出される電圧が所定の閾値を超えたことにより気泡が流動したことを検出し得るよう構成されている。すなわち、血液や置換液に比べ気泡の方が超音波の減衰率が高いので、液体を透過した超音波を検出することで、検出された電圧が所定の閾値を超えたことにより、気泡(気体)が流動したことが検出されるのである。
【0032】
本実施形態においては、動脈側電極D1、静脈側電極D2及び体表側電極D3を具備している。このうち、動脈側電極D1は、動脈側血液回路1a(血液ポンプ3の配設位置と動脈側穿刺針aとの間の部位)に取り付けられた電極から成り、当該動脈側血液回路1aを流れる血液に電圧を印加し得るものである。また、静脈側電極D2は、静脈側血液回路1b(エアトラップチャンバ4の接続位置と静脈側穿刺針bとの間の部位)に取り付けられた電極から成り、当該静脈側血液回路1bを流れる血液に電圧を印加し得るものである。
【0033】
これら動脈側電極D1及び静脈側電極D2は、
図3に示すように、可撓性チューブに接続された導電体から成り、電源8に対してワニ口クリップ等の接続手段によって電気的に接続され、内部を流れる血液に対して所定の電圧が印加可能とされている。なお、動脈側電極D1及び静脈側電極D2は、
図3に示すようなものに限らず、動脈側血液回路1aを流れる血液及び静脈側血液回路1bを流れる血液に対して、電源8の電圧を印加し得るものであれば、他の形態のもの(血液に直接触れない形態のもの含む)としてもよい。
【0034】
電源8は、高周波数(数kHz〜数10kHz)の微弱電流(1mA以下)となる電圧を動脈側電極D1と静脈側電極D2との間で印加し得るもので、かかる印加によって、患者に穿刺された動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを介して電流が流されるようになっている。すなわち、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bにて体外循環する血液は、電流を流し得る導体であることから、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bが正常に穿刺されていれば、電源8により電圧を印加すれば、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを介して電流が流れるよう構成されているのである。
【0035】
体表側電極D3は、患者の体表(皮膚)に密着して取り付けられ、その患者の体内からの電気信号を検出し得るもので、本実施形態においては、その患者の心電図(生体情報)を測定し得るものとされている。かかる体表側電極D3は、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bの穿刺部に対して、心臓を挟んだ位置に密着して取り付けられる電極で構成されるとともに、検出手段9に電気的に接続されている。
【0036】
しかるに、本実施形態においては、
図4に示すように、動脈側電極D1及び静脈側電極D2が差動増幅器13に接続されるとともに、静脈側電極D2は、インピーダンス調整手段15にも接続されている。また、体表側電極D3及びインピーダンス調整手段15は、差動増幅器16に接続されており、差動増幅器13に入力される測定電圧と、差動増幅器16に入力される測定電圧におけるインピーダンスが調整されている。
【0037】
すなわち、体表側電極D3及び静脈側電極D2を用いて得られる「体液のインピーダンス及び皮膚のインピーダンス」と、動脈側電極D1及び静脈側電極D2を用いて得られる「血液のインピーダンス」との間には差があるため、この差をインピーダンス調整手段15にて調整し得るよう構成されているのである。かかるインピーダンス調整手段15は、負荷抵抗を可変抵抗などで調整するもの、或いは心拍成分を抽出できるようにオートゲインコントロール(AGC)を用いて調整を行うもの等が好ましい。
【0038】
さらに、差動増幅器13は、整流回路14を介して監視手段10と接続されるとともに、差動増幅器16は、高域遮断フィルタ17を介して検出手段9に接続されている。しかして、差動増幅器16にて生成された電気信号は、電源8にて印加された高周波数成分が高域遮断フィルタ17にて取り除かれた後、検出手段9に入力されることとなる。これにより、電源8にて付与された高周波数成分ノイズを除去して検出手段9にてインピーダンスの変化を検出させることができ、生体パラメータを高精度に検出することができる。
【0039】
検出手段9は、体表側電極D3で検出された電気信号に基づいて患者の体内におけるインピーダンスの変化を検出することにより所定の生体パラメータ(本実施形態においては心電図)を取得し得るものである。すなわち、本実施形態においては、静脈側電極D2と、体表側電極D3とが一対となって患者の体内からの電気信号を検出し得るよう構成されており、かかる検出された電気信号に基づいて、検出手段9にて生体パラメータとしての心電図をリアルタイムに取得し得るようになっている。このように、本実施形態においては、検出手段9によりインピーダンスの変化を検出するための他方の電極として静脈側電極D2を兼用させているのである。
【0040】
監視手段10は、静脈側電極D2及び検出手段9とそれぞれ電気的に接続されるとともに、当該静脈側電極D2を流れる電流、及び検出手段9で検出された患者の体内におけるインピーダンスの変化をリアルタイムに監視し得るものである。なお、本実施形態に係る監視手段10は、静脈側電極D2と接続されているが、これに代えて動脈側電極D1と電気的に接続され、当該動脈側電極D1を流れる電流、及び検出手段9で検出された患者の体内におけるインピーダンスの変化をリアルタイムに監視し得るものとしてもよい。
【0041】
判定手段11は、検出手段9及び監視手段10と電気的にそれぞれ接続されるとともに、監視手段10の監視対象である電流値及びインピーダンスの変化に基づいて、動脈側穿刺針a又は静脈側穿刺針bが患者から離脱した抜針状態を判定可能とされたものである。すなわち
、静脈側穿刺針bが患者から離脱して抜針状態となると、電源8からの電流が静脈側電極D2まで至らなくなり、監視手段10で監視される電流値が検出されなくなるとともに、
図6に示すように、検出手段9で検出される検出値(波形)が途切れることとなる。しかして、このような状態となったことを条件として、判定手段11は
、静脈側穿刺針bが患者から離脱した抜針状態を判定することができるのである。
【0042】
また、本実施形態に係る判定手段11は、動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜針状態の判定に加え、穿刺状態が不安定であるか否かを判定可能とされている。例えば、動脈側穿刺針aの穿刺が不安定(穿刺針が血管から抜けかかっている状態)になると、
図8(a)に示すように、抜針判定のための電気信号にノイズが多くなる(
図5参照)とともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)は、正常に検出される。また、動脈側穿刺針aが抜針状態となると、同図に示すように、抜針判定が行われるとともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)は、正常に検出される。
【0043】
一方、静脈側穿刺針bの穿刺が不安定(穿刺針が血管から抜けかかっている状態)になると、
図8(b)に示すように、抜針判定のための電気信号にノイズが多くなる(
図5参照)とともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)も、同様にノイズが多くなる。また、動脈側穿刺針bが抜針状態となると、同図に示すように、抜針判定が行われるとともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)が検出されなくなる(
図6参照)。
【0044】
ここで、本実施形態に係る判定手段11は、抜針状態であると判定した場合、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bの何れが抜針状態であるか判定可能とされている。すなわち、動脈側穿刺針aが抜針状態となると、
図8(a)で示すように、抜針判定に加えて心拍(インピーダンスの変化)を正常に検出するとともに、静脈側穿刺針bが抜針状態となると、同図に示すように、抜針判定に加えて心拍(インピーダンスの変化)が検出されなくなるので、この差を検出することにより、抜針状態であると判定した場合に、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bの何れが抜針状態であるか判定可能とされているのである。
【0045】
さらに、本実施形態においては、体表側電極D3、動脈側電極D1及び静脈側電極D2が不安定に接触している、或いは外れていることが判定可能とされている。例えば、体表側電極D3が不安定に接触(接触はしているものの外れる可能性が高い状態)になると、
図7(a)に示すように、抜針判定は正常に行われるとともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)は、ノイズが多い状態となる。また、体表側電極D3が外れていると、同図に示すように、抜針判定が正常に行われるとともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)は、検出されなくなる。このような検出状態のとき、判定手段11は、体表側電極D3が不安定に接触或いは外れていると判定することができる。
【0046】
また、動脈側電極D1が不安定に接触(接触はしているものの外れる可能性が高い状態)になると、
図7(b)に示すように、抜針判定においてノイズが多い状態となるとともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)は、正常に検出される。また、動脈側電極D1が外れていると、同図に示すように、抜針判定が行われる(この場合、誤判定となる)とともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)は、正常に検出される。このような検出状態のとき、判定手段11は、動脈側電極D1が不安定に接触或いは外れていると判定することができる。
【0047】
またさらに、静脈側電極D2が不安定に接触(接触はしているものの外れる可能性が高い状態)になると、
図7(c)に示すように、抜針判定においてノイズが多い状態となるとともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)もノイズが多い状態となる。また、静脈側電極D2が外れていると、同図に示すように、抜針判定が行われる(この場合、誤判定となる)とともに、検出手段9で検出される心拍(インピーダンスの変化)が検出されなくなる。このような検出状態のとき、判定手段11は、静脈側電極D2が不安定に接触或いは外れていると判定することができる。
【0048】
また、上記に加え、判定手段11は、気泡検知手段5による気泡の検知によって動脈側穿刺針aの抜針を判定し得るよう構成してもよい。すなわち、血液ポンプ3が駆動して血液回路1にて血液が体外循環している際、動脈側穿刺針aが患者から離脱して抜針状態となると、そこから空気を吸い込むことになるので、その空気を気泡検出手段5にて検出すれば、動脈側穿刺針aの抜針状態を判定することができるのである。
【0049】
報知手段12は、判定手段11と電気的に接続されたもので、当該判定手段11で動脈側穿刺針a又は静脈側穿刺針bの抜針状態が判定されたことを条件として、当該抜針状態を報知するよう構成されている。かかる報知手段12は、所定の報知(例えば、モニタ等の表示手段への表示、音声や効果音の出力、警告灯の点灯又は点滅等)を行って周囲の医療従事者に対し、動脈側穿刺針a又は静脈側穿刺針bの抜針状態が判定(検出)されたことを把握させるようになっている。
【0050】
上記実施形態によれば、動脈側電極D1と静脈側電極D2との間で電圧を印加して、患者に穿刺された動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを介して電流を流し得る電源8を具備したので、体表側電極D3が患者から外れても動脈側穿刺針a又は静脈側穿刺針bの抜針状態を継続して判定することができる。特に、本実施形態に係る判定手段11は、抜針状態であると判定した場合、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bの何れが抜針状態であるか判定可能とされたので、抜針による処置を正確且つ円滑に行わせることができる。
【0051】
また、検出手段9によりインピーダンスの変化を検出するための他方の電極として動脈側電極D1又は静脈側電極D2を兼用させたので、血液浄化治療時に取り付けるべき電極の数を低減させることができ、作業性を向上させることができる。なお、動脈側血液回路1aの先端部において気泡の流通を検知し得る気泡検知手段5が取り付けられるとともに、判定手段11は、当該気泡検知手段5による気泡の検知によって動脈側穿刺針aの抜針を判定し得るよう構成されば、抜針状態と判定された際、動脈側穿刺針aの抜針状態と静脈側穿刺針bの抜針状態とをより精度よく判別することができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る判定手段11は、動脈側穿刺針a又は静脈側穿刺針bの抜針状態の判定に加え、穿刺状態が不安定であるか否か、または電極(動脈側電極D1、静脈側電極D2又は体表側電極D3)が不安定に接触している若しくは外れているか否かを判定可能とされたので、抜針状態となる前或いは動脈側電極D1、静脈側電極D2又は体表側電極D3が外れる前に対処を行わせることができる。またさらに、判定手段11で動脈側穿刺針a又は静脈側穿刺針bの抜針状態が判定されたことを条件として、当該抜針状態を報知する報知手段12を具備したので、抜針状態を素早く周囲の医療従事者等に把握させることができ、その対処のための作業を素早く行わせることができる。
【0053】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、検出手段9で検出される心拍(心電図)は、他の所定の生体パラメータであってもよく、例えば体表側電極D3にて検出されたインピーダンスの変化に基づいて患者の体液量や筋肉量などを測定し得る体組成計、或いは筋電図としてもよい。体組成計とした場合、体表側電極は、患者の足首近傍とするのが好ましく、体組成計で体水分量を測定することにより、適正な透析治療を行わせることができる。また、筋電図とした場合、患者の異常な震え等を検知することができ、安全性をより向上させることができる。
【0054】
さらに、本実施形態においては、検出手段9、監視手段10及び判定手段11が装置本体B内に配設されているが、装置本体Bとは別個の装置(パーソナルコンピュータ等を含む)内に配設されるものとしてもよい。またさらに、適用される血液浄化装置は、血液透析装置に限らず、他の血液浄化治療を施す装置であってもよい。