(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873798
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】フィルム外装電池の製造方法およびフィルム外装電池
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20210510BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20210510BHJP
【FI】
B23K20/10
H01M2/26 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-78588(P2017-78588)
(22)【出願日】2017年4月12日
(65)【公開番号】特開2018-176215(P2018-176215A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】土井 悠平
(72)【発明者】
【氏名】金 泰元
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−243760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
H01M 50/531
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に裁断された正・負の電極がセパレータを介して複数積層され、かつこれら電極の金属箔からなる集電体の端部に、相対的に厚い金属板からなる電極タブが接合されてなる電極積層体と、
この電極積層体を電解液とともに収容するとともに、上記電極タブが接合面から引き出されたラミネートフィルムからなる外装体と、
を備えたフィルム外装電池の製造方法であって、
上記の複数の集電体の端部と上記電極タブとを重ね合わせるとともに、最外面の集電体の上に、耐熱性繊維強化樹脂シートを重ね、
これらの複数の集電体と電極タブと耐熱性繊維強化樹脂シートとを積層した状態で、超音波接合装置のホーンとアンビルとの間で加圧しつつ超音波振動を加えて接合し、
上記外装体のラミネートフィルムの内側面が上記耐熱性繊維強化樹脂シートに対し露出した状態で上記電極積層体を上記外装体に収容する、ことを特徴とするフィルム外装電池の製造方法。
【請求項2】
上記耐熱性繊維強化樹脂シートは、繊維による凹凸を表面に有する、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項3】
上記耐熱性繊維強化樹脂シートは、ガラス繊維の織物に耐熱性合成樹脂をコーティングした構成を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項4】
上記耐熱性繊維強化樹脂シートは、合成樹脂としてフッ素樹脂を用いている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項5】
上記ホーンおよび上記アンビルの少なくとも一方の加工面には、ピラミッド状の複数の凸部が並んで設けられている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項6】
シート状に裁断された正・負の電極がセパレータを介して複数積層され、かつこれら電極の金属箔からなる集電体の端部に、相対的に厚い金属板からなる電極タブが接合されてなる電極積層体と、
この電極積層体を電解液とともに収容するとともに、上記電極タブが接合面から引き出されたラミネートフィルムからなる外装体と、
を備えたフィルム外装電池において、
上記集電体の端部と上記電極タブとは、複数の集電体の端部が電極タブとともに重ね合わされているとともに、最外面の集電体の上に耐熱性繊維強化樹脂シートを備え、これらが電極タブの厚さ方向に一体化されており、
上記外装体のラミネートフィルムの内側層は上記耐熱性繊維強化樹脂シートに対し露出している、ことを特徴とするフィルム外装電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の金属箔と相対的に厚い金属板とを積層して互いに超音波接合する超音波接合方法の改良に関し、さらには、この超音波接合方法を利用して製造されるフィルム外装電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばリチウムイオン二次電池として、複数の正極および負極をセパレータを介して積層してなる電極積層体(発電要素とも呼ばれる)が、熱融着層を備えたラミネートフィルムからなる外装体の中に電解液とともに収容された偏平形状をなすフィルム外装電池が知られている。この種のフィルム外装電池にあっては、正極や負極の集電体を構成する金属箔の端部が活物質層から舌片状に突出しており、この舌片状部分を複数枚重ね合わせた上で、相対的に厚い金属板からなる電極タブの上に超音波接合した構成が一般的である。
【0003】
ここで、薄い金属箔は、超音波接合によって亀裂や穴空きが生じやすいため、特許文献1では、多数枚重ねた金属箔の上に、厚さが50μm〜200μm程度の同種金属からなる保護用の金属板を配して、ホーンとアンビルとの間で超音波接合を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−244380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の保護用の金属板は、例えば細長い長方形に裁断されて金属箔の上に重ねられるが、裁断した金属板をそのまま用いると、角や周縁に鋭利なバリやエッジが存在する。そのため、このバリやエッジによる新たな課題が発生し、これらに対する対策が必要となる。
【0006】
例えば、上述したフィルム外装電池にあっては、電極タブの超音波接合部の上にラミネートフィルムが重なるので、保護用の金属板のバリやエッジによってラミネートフィルムの内側面の樹脂層(通常は熱融着層である)が傷付き、ラミネートフィルム内部の金属層が電解液に触れて腐食が生じる虞がある。そのため、例えば、ラミネートフィルムの対応する部分に、ラミネートフィルム保護用の樹脂テープを局部的に貼着する、などの対策が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、多数の金属箔と相対的に厚い金属板とを積層して超音波接合するに際して、最外層の金属箔の上に金属板に代えて耐熱性繊維強化樹脂シートを重ねて超音波接合を行うようにした。
【0008】
このように耐熱性繊維強化樹脂シートを重ねて超音波接合することで、従来の保護用の金属板と同様に、超音波接合の際の金属箔の亀裂や穴空きを防止できる。そして、耐熱性繊維強化樹脂シートにあっては、従来の保護用の金属板に比較して遙かに柔軟なものとなるので、角や端縁によって他の部材を傷付けるようなことがない。
【0009】
本発明の超音波接合方法は、例えば、電極積層体とラミネートフィルム製の外装体とを備えたフィルム外装電池の電極タブの接合に適用できる。この場合、電極タブの接合部において金属箔の上に重ねられた耐熱性繊維強化樹脂シートがラミネートフィルムの内側層を傷付ける虞がないので、ラミネートフィルム保護用の樹脂テープは不要であり、ラミネートフィルムの内側層が耐熱性繊維強化樹脂シートに対し露出した構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、超音波接合部の金属箔の保護のために、従来の保護用金属板に代えて耐熱性繊維強化樹脂シートを用いるようにしたので、保護用金属板のバリやエッジによる新たな課題の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】集電体の端部と電極タブとの接合部を示した電極積層体の要部の斜視図。
【
図5】超音波接合装置を用いた接合工程を概略的に示した説明図。
【
図6】接合部の金属組織の状態を示した図面代用写真。
【
図7】電極タブの両側にそれぞれ集電体が配置された変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の接合方法をフィルム外装電池の電極タブの接合に適用した一実施例について説明する。
【0013】
図1は、この発明が適用されるフィルム外装電池を示している。このフィルム外装電池は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両駆動用電源パックを構成する偏平形状をなすフィルム外装型リチウムイオン二次電池である。一実施例のフィルム外装電池は、特開2013−140782号公報や特開2015−37047号公報等に記載のものと基本的に同様の構成を有しており、矩形のシート状に構成した正極および負極をセパレータを介して複数積層して電極積層体1を構成し、この電極積層体1を、ラミネートフィルムからなる袋状の外装体2の中に電解液とともに収容したものである。電極積層体1は、一対の電極タブつまり正極タブ3と負極タブ4とを有し、この一対の電極タブ3,4は、外装体2を構成するラミネートフィルムの接合面から外部へ引き出されている。
【0014】
図2は、フィルム外装電池の分解斜視図、
図3は、要部の断面図である。
図3に示すように、電極積層体1においては、正極11と負極12とがセパレータ13を介して交互に積層されている。正極11は、集電体14となる金属箔具体的にはアルミニウム箔の両面に正極活物質をバインダを含むスラリとして塗布し、乾燥かつ圧延して所定の厚みの活物質層を形成したものである。負極12は、同様に、集電体15(
図3には図示されていない)となる金属箔具体的には銅箔の両面に負極活物質をバインダを含むスラリとして塗布し、乾燥かつ圧延して所定の厚みの活物質層を形成したものである。セパレータ13は、正極11と負極12との間の短絡を防止すると同時に電解液を保持する機能を有するものであって、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の熱可塑性合成樹脂の微多孔性膜あるいは不織布からなる。
【0015】
正極11の集電体14の一端部には、正極タブ3との溶接部となる舌片部14aが設けられている。この舌片部14aは、活物質層を具備せずに露出している。同様に、負極12の集電体15の一端部には、負極タブ4との溶接部となる舌片部15aが設けられている。この舌片部15aは、活物質層を具備せずに露出している。正極11側の舌片部14aと負極12側の舌片部15aは、
図2に示すように、電極積層体1の一つの辺において、互いに重ならないようにそれぞれ片寄って配置されている。
【0016】
そして、互いに重なる位置にある複数の舌片部14aは、正極タブ3の上に積層され、超音波接合により正極タブ3の厚さ方向に一体に接合されている。この超音波接合の際に、薄い金属箔からなる舌片部14aの上には、金属箔の亀裂や穴空きを防止するために、細長い長方形をなす耐熱性繊維強化樹脂シート5が重ねられており、この耐熱性繊維強化樹脂シート5と複数の舌片部14aと正極タブ3とが一体に超音波接合されている。負極12側についても同様であり、互いに重なる位置にある複数の舌片部15aが、負極タブ4の上に積層され、かつ最上部に細長い長方形をなす耐熱性繊維強化樹脂シート5を重ねた上で、超音波接合により負極タブ4の厚さ方向に一体に接合されている。
【0017】
正極タブ3は、薄いアルミニウム板からなり、負極タブ4は、薄い銅板からなる。つまり、それぞれ集電体14,15と同種の金属から構成されている。これらの正極タブ3および負極タブ4は、金属箔からなる集電体14,15に比較して相対的に厚い。例えば、正極11側の集電体14となるアルミニウム箔は、15μm程度の厚さを有し、負極12側の集電体15となる銅箔は、8μm程度の厚さを有する。これに対し、アルミニウム板からなる正極タブ3は、400μm程度の厚さを有し、銅板からなる負極タブ4は、200μm程度の厚さを有する。
【0018】
外装体2は、
図2に示すように、上下2枚のシート状のラミネートフィルム6,7から構成されており、周縁の四辺を加熱融着することで袋状に構成される。より詳しくは、電極積層体1を収容した状態で一辺の注液口を残す形で3辺の加熱シールが行われ、注液後に注液口が封止される。
図2に示した例では、電極積層体1の外形に対応した凹部が予めラミネートフィルム6,7にカップ成形されている。なお、1枚の大きなラミネートフィルムを用い、これを2つ折りとして3辺を加熱溶着するようにしてもよい。外装体2となるラミネートフィルム6,7は、例えば、アルミニウム箔の内側にポリプロピレンからなる熱融着層をラミネートするとともに、外側にポリアミド樹脂層およびポリエチレンテレフタレート樹脂層を保護層としてラミネートしてなる四層構造を有している。
【0019】
図2に示すように、正極タブ3および負極タブ4が接する下側のラミネートフィルム7の対応部位には、これら正極タブ3および負極タブ4の鋭利なエッジから熱融着層を保護するために、ポリアミド樹脂等の比較的強度の高い樹脂からなる保護テープ17が貼着されている。
【0020】
また、ラミネートフィルム6,7の接合面に挟み込まれる電極タブ3,4の表面には、加熱シール時のシール線が横切る部分に対応して、「先付け樹脂」と呼ばれる合成樹脂層18が予め帯状に設けられている。ラミネートフィルム6,7の周縁が電極タブ3,4と交差する部位では、この合成樹脂層18の上にラミネートフィルム6,7の熱融着層が接合されている。例えば、2枚の帯状のポリプロピレンフィルムを電極タブ3,4の両面に貼着することで、電極タブ3,4を挟み込むような形に合成樹脂層18が形成されている。
【0021】
なお、
図3は、正極タブ3の部分における断面の構成を模式的に示している。負極タブ4の部分においても基本的に同様の構成となる。この
図3においては、各部の寸法関係や正極11および負極12の数、等は必ずしも正確なものではない。例えば一例においては、20枚程度の正極11と20枚程度の負極12とが交互に積層されている。
【0022】
図4は、超音波接合により集電体14,15の舌片部14a,15aに接合された正極タブ3および負極タブ4の接合部分を示している。符号21で示す細長い長方形部分が超音波接合による溶接部であり、電極タブ3,4の幅方向に沿ってそれぞれ3個の溶接部21が間隔を置いて一直線上に配置されている。耐熱性繊維強化樹脂シート5は、3個の溶接部21の全体を覆いうる長さを有する細長い長方形に裁断されている。
【0023】
図5は、超音波接合を行う超音波接合装置25の一例を示している。超音波接合装置25は、溶接部21の下面側に配置されるアンビル26と、図示せぬ加振装置に連結されたホーン27と、を備え、ホーン27の先端には、超音波接合用工具つまりチップ28が設けられている。ホーン27は、略水平方向に延びた丸棒状をなし、その長手方向(図の左右方向)に沿って図示せぬ加振装置により加振される。そして、ホーン27の振動の腹となる位置に、ワークと接触する実質的な加工部となるチップ28が配置されている。
図5では、ホーン27とアンビル26とが互いに開いた位置で描かれているが、加工時には、アンビル26が所定の高さ位置まで上昇し、かつホーン27が図示せぬ加圧機構によりアンビル26へ向かって所定の荷重でもって加圧される。つまり、超音波接合装置25は、ワークをホーン27とアンビル26との間で加圧しながら超音波振動を与える。
【0024】
また、超音波接合装置25は、ワークとなる電極タブ3,4と複数の集電体14,15(舌片部14a,15a)と耐熱性繊維強化樹脂シート5とを互いに積層した状態で保持するクランプ機構29を備えている。このクランプ機構29は、アンビル26およびホーン27と干渉しない位置でワークを保持している。
【0025】
一実施例においては、アンビル26の上に電極タブ3,4が位置し、ホーン27が接する最上部に耐熱性繊維強化樹脂シート5が配置される。なお、ホーン27が電極タブ3,4に接するように逆に配置し、集電体14,15とアンビル26との間に耐熱性繊維強化樹脂シート5を配置するようにしてもよい。
【0026】
チップ28は、個々の溶接部21の大きさに対応した細長い長方形の板状をなしている。チップ28は、例えば、工具鋼等を用いてホーン27とは別の部品として形成し、ホーン27に取り付けて用いることができる。あるいは、ホーン27の一部として、ホーン27に直接に形成するようにしてもよい。
図5の例では、ホーン27の振動方向は、チップ28の幅方向(チップ28の長手方向と直交する方向)に沿ったものとなる。
【0027】
チップ28の加工面は、図示は省略するが、規則的に配列された複数のピラミッド状(つまり四角錐形状)の凸部を備えており、いわゆるローレット状の構成となっている。一つの実施例では、各々の凸部は、四角錐の底辺がチップ28の長辺および短辺と平行をなすように、縦横に配列されている。四角錐の底辺がチップ28の長辺および短辺に対し45°程度で傾斜した配置としてもよい。
【0028】
また、アンビル26の加工面は、一実施例においては、チップ28の加工面と同様に、規則的に配列された複数のピラミッド状(つまり四角錐形状)の凸部を備えている。アンビル26は、平坦な加工面を有するものであってもよい。
【0029】
集電体14,15とホーン27との間に配置される耐熱性繊維強化樹脂シート5は、耐熱性に優れた合成樹脂例えばフッ素樹脂の層の中に、強化用の繊維としてガラス繊維やセラミックス繊維を含み、薄いシート状に構成されたものである。合成樹脂としては、フッ素樹脂以外の耐熱性樹脂を用いてもよい。好ましい実施例においては、ガラス繊維が適宜な大きさの目を有する格子状の織布(換言すれば平織りの織布)として構成されており、この織布の両面ないし片面に、耐熱性樹脂としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がコーティングされている。このシート5の厚さは、一例では、75μm程度であり、耐熱性樹脂が比較的薄くコーティングされていることから、平織り状のガラス繊維による凹凸がシート5の表面に出現している。つまり、シート5の表面は平滑面ではなく粗面となっている。格子状をなす目の大きさは、例えば、数十μm〜数百μm程度に設定される。
【0030】
なお、耐熱性繊維強化樹脂シート5としては、上記の織布の形態のもののほか、繊維をそのままあるいは糸状とした上で合成樹脂層内に不規則に配合した構成のものであってもよい。
【0031】
このような耐熱性繊維強化樹脂シート5をアンビル26との間に配置して超音波接合を行うと、超音波振動によりチップ28の加工面から加えられるエネルギによってシート5の合成樹脂部分が局部的に軟化ないし溶融するが、シート5に含まれる繊維層が軟化溶融した合成樹脂とともに金属箔(集電体14,15)を保護し、金属箔の亀裂や穴空きが抑制される。また、耐熱性繊維強化樹脂シート5は、下層の金属箔への振動エネルギの伝達を損なうことがなく、従来技術における保護用の金属板を重ねる場合と同様の供給エネルギおよび加工時間でもって超音波接合が可能である。シート5の表面の凹凸は、シート5表面での滑りを抑制し、チップ28から下層の金属箔への振動エネルギの効率のよい伝達に寄与する。
【0032】
図6は、実際の超音波接合による溶接部21を耐熱性繊維強化樹脂シート5側から見た写真である。この例は、厚さ15μmのアルミニウム箔からなる正極11側の集電体14を20枚積層し、厚さ400μmの正極タブ3の上に重ね、集電体14の最上部に上述した例の耐熱性繊維強化樹脂シート5を配して、超音波接合を行ったものである。超音波接合の加工条件としては、加圧力を700N、振幅を45μm、供給エネルギを100J、とした。図示するように、ホーン27のチップ28が備えるピラミッド状の凸部に対応してピラミッド状に窪んだ圧痕が生じているが、個々の圧痕の周囲にもガラス繊維が合成樹脂とともに存在する。集電体14には、亀裂や穴空きは認められない。
【0033】
なお、発明者の実験によれば、繊維層を含まない合成樹脂シートであると、超音波エネルギによって樹脂が軟化溶融して拡がってしまい、金属箔を保護する作用は得られなかった。また、逆に、合成樹脂を含まないガラス繊維の織布であると、超音波エネルギによって繊維が粉となって拡散するに過ぎず、やはり金属箔を保護する作用は得られなかった。
【0034】
このように、超音波接合時の集電体14,15の保護のために耐熱性繊維強化樹脂シート5を用いる本発明によれば、特許文献1に開示された従来の保護用金属板と同様に集電体14,15の亀裂や穴空きの抑制が達成できる。
【0035】
そして、耐熱性繊維強化樹脂シート5においては、特許文献に開示された保護用金属板に比較して遙かに柔軟であるため、周囲の端縁や角によって他の部材を傷付けることがない。より具体的には、電極タブ3,4の溶接部21に重なるラミネートフィルム6の内側層つまり熱融着層を傷付ける虞がない。そのため、熱融着層の保護のためにラミネートフィルム6の内側面に保護テープを貼着する必要がない。
図3に示すように、電極積層体1が外装体2内に収容された状態では、ラミネートフィルム6の内側面(熱融着層)は耐熱性繊維強化樹脂シート5に対し露出している。
【0036】
また、上記の耐熱性繊維強化樹脂シート5においては、超音波接合装置25による加工時に粉塵の発生が抑制される。すなわち、金属箔などの金属製のワークに対しチップ28が超音波振動を加えると、微細な金属粉が発生し飛散する。この金属粉がフィルム外装電池内に侵入することは好ましくなく、何らかの手段で除去する必要が生じる。これに対し、耐熱性繊維強化樹脂シート5を金属箔の上に重ねた上記実施例においては、加工時に溶融した合成樹脂がチップ28と金属面との接触点付近に介在するので、金属粉の発生自体が少なくなるとともに、仮に発生しても溶融樹脂に包み込まれて飛散しないため、粉塵の発生が抑制される。
【0037】
さらに、自動化したラインにおいて、超音波接合後に耐熱性繊維強化樹脂シート5の位置を画像検査により確認する場合に、耐熱性繊維強化樹脂シート5は周囲の金属箔や電極タブ3,4と反射率が大きく異なることから、位置検出が確実かつ容易であり、誤検出が少ない。例えば特許文献1に開示されるように集電体となる金属箔や電極タブと同種の金属からなる保護用金属板を用いた場合には、保護用金属板と周囲との反射率の差や色の差がないので、画像検査による保護用金属板の位置検出に際し、誤検出が生じやすい。
【0038】
以上、この発明の一実施例を説明したが
、ホーンやアンビルの加工面が平坦である場合にも、本発明は適用が可能であり、上述した実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
また、
図7に例示するように、相対的に厚い金属板51の両側に多数の金属箔52を積層して金属板51の厚さ方向に一体に超音波接合する場合にも、本発明は適用が可能である。この場合は、ホーン側およびアンビル側の双方に耐熱性繊維強化樹脂シート53が重ねられることとなる。
【符号の説明】
【0040】
1…電極積層体
2…外装体
3,4…電極タブ
5…耐熱性繊維強化樹脂シート
11…正極
12…負極
13…セパレータ
14,15…集電体
21…溶接部
25…超音波接合装置
26…アンビル
27…ホーン
51…金属板
52…金属箔
53…耐熱性繊維強化樹脂シート