(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
(全体構成)
図1は本発明に係る作業車両の操舵表示装置をフォークリフトに実装した実施の形態を説明するブロック図である。以下、実施の形態の装置をタイヤ切れ角表示装置と呼ぶ。実施の形態のフォークリフトは、エンジンや電動装置を搭載した車両本体(車体)と、オペレータのハンドル操作により車両を左右に旋回する内輪、外輪を含むタイヤ(操舵輪)と、タイヤ切れ角表示装置とを備えている。
【0009】
本明細書では、ハンドルを操作することを車両の操舵と呼び、ハンドルの操舵によりタイヤが回動することをタイヤの操舵と呼ぶ。したがって、タイヤの回動量を検出する検出器を操舵検出器と呼ぶ。また、操舵量は、車両前方方向の中心線を基準(0度)とするタイヤの回動方向(操舵方向)、操舵角を含む物理量である。
【0010】
(タイヤ切れ角表示装置)
図1において、タイヤ切れ角表示装置10は、コントローラ11と、前後進指示操作部材、たとえば前後進レバー(F/Rレバー)の操作状態を検出する前後進検出器12と、車速を検出する車速検出器13と、たとえばハンドルなどの操舵操作部材によるタイヤの回動量(操舵方向、操舵量を含む)を検出する操舵検出器14と、車速、操舵に関する情報などを含む車両情報を表示する表示器15と、表示器15に表示する画像を生成する画像生成部16とを備えている。操舵検出器14はたとえば角度センサである。
【0011】
図示はしないが、フォークリフトは、アクセルペダルのような走行指令操作部材と、走行指令に基づく走行駆動力を出力するエンジンや電動モータなどの走行駆動装置と、フォークリフトを制動するブレーキペダルのような制動部材と、制動部材からの制動指令に基づく制動力を得る制動力発生装置と、荷役レバーのような荷役指令部材と、荷役指令に基づきフォークを昇降する昇降装置と、チルトレバーのようなチルト指令部材と、チルト指令に基づきフォークを傾動する傾動装置などを備えている。
【0012】
実施の形態の表示器15の一例を
図2に示す。
表示器15は、表示パネル18の中央部に設けられた液晶表示器である。表示器中央部に車速表示部15aが設けられ、右上隅に操舵に関する情報を表示する操舵情報表示部15bが設けられている。操舵情報表示部15bの下方には、前後進操作情報表示部15cが設けられている。表示器15の下辺には左から、燃料表示部15d、水温表示部15e、トルクコンバータ油温表示部15fが設けられている。
表示パネル18の左辺には、警告表示群18aが、右辺上側には操作スイッチ群18bが、下側にも操作スイッチ群18cがそれぞれ設けられている。
【0013】
操舵表示部15bに表示される操舵に関する情報について
図3〜
図8を参照して説明する。
図3は、ハンドルを左方向に操舵したときの車体に対するタイヤの操舵角、すなわちタイヤ切れ角を示す図である。(a)はハンドルが操作されていない中立時の車体に対するタイヤ切れ角(=0度)を示す。左右のタイヤは車体と平行であり、車体車幅からはみ出していない。
(b)は左操舵時に内輪側タイヤが車体幅からはみ出す直前の内輪車体幅一杯の状態を示す。タイヤは操舵量に応じた角度だけ車体に対して傾いているが、左右のタイヤは車体車幅からはみ出していない。
(c)は左操舵時に外輪側タイヤが車体幅からはみ出す直前の外輪車体幅一杯の状態を示す。タイヤは操舵量に応じた角度だけ車体に対して傾いており、内輪側タイヤは車体車幅からはみ出し、外輪側タイヤは車体車幅からはみ出していない。
(d)は左操舵時にタイヤの操舵角が最大となった時の車体に対するタイヤ切れ角を示す。左右のタイヤはいずれも車体車幅からはみ出している。
【0014】
図4は、ハンドルを右方向に操舵したときの車体に対するタイヤ切れ角を示す図である。(a)はハンドルが操作されていない中立時の車体に対するタイヤ切れ角を示す。
(b)は右操舵時に内輪側タイヤが車体幅からはみ出す直前の内輪車体幅一杯の状態を示す。タイヤは操舵量に応じた角度だけ車体に対して傾いているが、左右のタイヤは車体車幅からはみ出していない。
(c)は右操舵時に外輪側タイヤが車体幅からはみ出す直前の外輪車体幅一杯の状態を示す。タイヤは操舵量に応じた角度だけ車体に対して傾いており、右のタイヤは車体車幅からはみ出し、左のタイヤは車体車幅からはみ出していない。
(d)は右操舵時にタイヤの操舵角が最大となった時の車体に対するタイヤ切れ角を示す。
【0015】
−操舵情報表示アイコン
図5は、操舵情報表示部15bのタイヤと車体を模擬的に示す説明する図である。実施の形態の操舵情報表示アイコン(以下、操舵アイコン)150は、車体形状を模した矩形枠(車幅表示)151と、矩形枠151内に回動可能に表示されるタイヤを模した菱形の指針(操舵輪表示)152とで構成されている。
(操舵量に応じた表示形態)
指針152は、菱形中心を回動軸152AXとして時計回転方向(CW)、反時計方向(CCW)に回転する。回転方向と回転角は、ハンドル操舵によるタイヤの操舵方向と操舵角に基づいて決定される。タイヤ操舵方向と操舵角は操舵検出器14で検出される。操舵アイコン150の画像は、操舵検出器14から出力される操舵方向と操舵角に基づいて画像生成部16で生成される。
【0016】
(前後進中立に応じた表示形態)
指針152はまた、前後進レバーの操作位置、すなわち前進位置、後進位置、中立位置に応じた3つの表示形態をとる。前後進レバーの操作位置は前後進検出器12から出力されるレバー操作位置信号により検出される。このレバー操作位置信号はコントローラ11に入力される。コントローラ11は、レバー操作位置信号を画像生成部16に送る。画像生成部16は、入力されたレバー操操作位置信号に基づき
図6に示す3通りの表示形態、すなわち、(a)中立表示形態、(b)前進表示形態、(c)後進表示形態の指針画像を生成する。生成された指針画像を受信した表示器15は、
図6(a)〜(c)に示す中立表示指針152N、前進表示指針152F、後進表示指針152Rのいずれかを表示する。
【0017】
前進表示指針152Fは、前後進レバーが前進位置に操作されると表示される。したがって、前進表示指針152Fは、前進走行中および前進走行中にブレーキ操作により停止しているときも表示される。この前進表示指針152Fは、前進方向に対応する指針前領域152FCを、車両後進方向に対応する指針後領域152RCに比べて強調して表示されるアイコンである(
図6(b)参照)。後進表示指針152Rは、前後進レバーが後進位置に操作されると表示される。したがって、後進表示指針152Rは、後進走行中および後進走行中にブレーキ操作により停止しているときも表示される。この後進表示指針152Rは、車両後進方向に対応する指針後領域152RCを車両前進方向に対応する指針前領域152FCに比べて強調して表示されるアイコンである(
図6(c)参照)。中立表示指針152Nは、前後進レバーが中立位置に操作されると表示される。したがって、中立表示指針152Nは、慣性走行中および車両が停止しているときも表示される。この中立表示指針152Nは、指針前領域152FCと指針後領域152RCが同じ強調度で表示されるアイコンである(
図6(a)参照)。
なお、車両が前進、あるいは後進しているときに前後進レバーが中立位置に操作されると車両は慣性走行する。このときハンドルを操作する場合には、操舵アイコン150は、中立表示指針152Nを操舵角に応じて回転させて表示する。前後進レバーが中立位置に操作されて車両が停止しているときのハンドル操作でも中立表示指針152Nは操舵角に応じて回転表示する。
【0018】
前後進を示す強調表示は、たとえば、指針前領域152FCと指針後領域152RCのそれぞれを異なる色とし、前進および後進を意味する色により強調することもできる。
【0019】
(車速に応じた表示形態)
さらに指針152は車速に応じた表示形態でも表示される。車速が所定値以下の低速時は点滅し、車速が所定値を超えると点灯する。すなわち、
図6(a)、(b)、(c)の中立、前進、後進の各表示指針152N、152F、152Rが点滅または点灯する。
【0020】
(矩形枠の表示形態)
図7は、ハンドル左操舵時の操舵アイコン150の表示形態の遷移を示す図である。
上述したとおり、操舵アイコン150は、矩形枠151と、矩形枠151の内側に回動軸152AXを有する指針152とで構成されている。後述するように、矩形枠151の幅は操舵角に基づいて変化する。実施の形態では中立時の狭い幅と、操舵開始後の広い幅の2種類である。指針152は、タイヤの操舵量と、車両の前後進中立と、車両の速度を含む車両運転状況で定義される複数の表示形態で表示される。
【0021】
(タイヤ角に応じた指針の表示形態)
図7(a)〜(f)は、指針152が矩形枠151内で回動軸152AXを中心に回動する6種類の表示形態を示している。(a)〜(f)に示すように、タイヤ切れ角である操舵角θがθLT1(0度)、θLT2、θLT3、θLT4、θLT5、θLT6に対応して、指針152は、θLS1(0度)、θLS2、θLS3、θLS4、θLS5、θLS6の傾き角度で表示されている。
たとえば、操舵角が0度のとき指針152は
図7(a)に示す回動角θLS2の中立表示形態で表示される。操舵角が0度からθLT2に増加する場合、操舵角がθLT2となるまでは指針152は
図7(b)に示す回動角θLS2の表示形態で表示される。操舵角がθLT2となった後はθLT3になるまでは
図7(c)に示す回動角θLS3の表示形態で表示される。操舵角がθLT3となった後はθLT4になるまでは
図7(d)に示す回動角θLS4の表示形態で表示される。操舵角がθLT4となった後はθLT5になるまでは
図7(e)に示す回動角θLS5の表示形態で表示される。操舵角がθLT5となった後はθLT6になるまでは
図7(f)に示す回動角θLS6の表示形態で表示される。このように、操舵角がθLT1〜θLT6と遷移する場合に指針152の表示形態が切り換わる。
【0022】
(タイヤ操舵に応じた矩形枠の表示形態)
操舵時の矩形枠151Sの幅は次のようにして決定することができる。左操舵について説明する。
(左操舵時の車体枠の拡縮)
図7(a)に示すように、中立時の矩形枠151Nの中心に指針152の回動軸152AXを設定し、矩形枠の幅は、菱形の最大幅と同一、もしくは指針がはみ出さない程度の略同一幅とする。中立時は操舵角θがθLT1(0度)である。このとき、矩形枠151Nの左右幅は指針152の中央部の横幅と一致している。
図7(a)において矩形枠151の幅寸法は符号X10で示している。ハンドルが操舵されてタイヤ操舵角θが0を超えてθLT2になるまでは、
図7(b)に示すように、矩形枠151は中立時の矩形枠151Nの幅よりも広い矩形枠151Sとなる。
図7(b)において矩形枠151の幅寸法は符号X20で示している。
図7(c)〜(f)に示すように、操舵角θがθLT2を超えてθLT6まで変化する間も同じ幅の広い矩形枠151Sである。実施の形態では、矩形枠151は、中立時の矩形枠151Nと、操舵時の矩形枠151Sの2つの表示形態で表示される。
【0023】
なお、
図7(f)の符号X30は、指針152の幅寸法を示している。
図7(f)において、内輪側のはみ出し量はX30/2−X21であり、外輪側のはみ出し量はX30/2−X22である。X22>X21であるから、実施の形態のフォークリフトでは内輪のはみ出し量が大きい。
【0024】
操舵時の
図7(b)の矩形枠151の幅寸法X20は、回動軸152AXの左側の寸法がX21、右側の寸法がX22として表している。すなわち、操舵が開始されると車幅表示である矩形枠151は回動軸152AXを通過する線分に対して非対称となる。この非対称性は、車両本体の車幅、操舵輪がはみ出し始める操舵角、内輪、外輪のいずれからはみ出し始めるのかなど、車両本体の操舵装置の仕様に依存している。実施の形態の操舵表示装置が搭載されるフォークリフトでは、内輪が先にはみ出すので、
図7(b)に示すように矩形枠151を外輪側に拡大する。すなわち、内外輪のうち先にはみ出す内外輪のいずれかが位置する方向とは逆方向に矩形枠151を拡大すればよい。
【0025】
図7(a)〜(b)に示すように、ハンドルの左操舵が開始されると、軸152AXと外輪側(右側)車幅線151Rの間の寸法(距離)を大きくする。ハンドルの右操舵が開始されると、軸152AXと外輪側(左側)幅線151Lの間の寸法(距離)を大きくする。
【0026】
図3(b)に示すように、左操舵時に内輪が車体幅からはみ出す直前の内輪車体幅一杯の状態では、表示器15には、
図7(c)で示す操舵アイコン150が表示される。
図3(c)に示すように、左操舵時に外輪が車体幅からはみ出す直前の外輪車体幅一杯の状態では、表示器15には、
図7(d)で示す操舵アイコン150が表示される。
図7(c)では、
図8(a)の拡大図に示すように、指針後領域152RCの先端152RTが左車幅線151Lと一致している。
図7(d)では、
図8(b)の拡大図に示すように、指針前領域152FCの先端152FTが矩形枠151の右車幅線151Rと一致している。矩形枠151の幅寸法は、
図7(c)と
図7(d)の表示形態のいずれにおいても指針152が矩形枠151からはみ出さないように決定される。
【0027】
(前後進レバーが前進位置)
図7(a)〜(f)には、前後進レバーが前進位置に操作されて前進する場合において左操舵された時に表示される操舵アイコン150の6つの表示形態を示している。操舵アイコン150は第1〜第6表示形態で遷移する。第1表示形態は、前進かつ中立の表示形態である。第2表示形態は、前進かつ操舵角がθLT1(0度)より大きくθLT2以下の表示形態である。第3表示形態は、前進かつ操舵角がθLT2より大きくθLT3以下の表示形態である。第4表示形態は、前進かつ操舵角がθLT3より大きくθLT4以下の表示形態である。第5表示形態は、前進かつ操舵角がθLT4より大きくθLT5以下の表示形態である。第6表示形態は、前進かつ操舵角がθLT5より大きくθLT6以上の表示形態である。なお、上述したとおり、前進の操舵アイコン150は、指針152の指針前領域152FCが
図6(b)に示されるように強調表示される。
【0028】
前後進レバーが前進位置に操作されて前進する場合において右操舵された時に表示される操舵アイコン150は5つの表示形態である。したがって、前進位置では左右操舵の表示形態は11通りである。
【0029】
(前後進レバーが後進位置)
前後進レバーが後進位置に操作されて後進する場合において左操舵された時に表示される操舵アイコン150も同様に、以下で説明する第7〜第12表示形態で遷移する。なお、上述したとおり、後進位置における操舵アイコン150は、指針152の指針後領域152RCが
図6(c)に示されるように強調表示される。
第7表示形態は、後進かつ中立の表示形態である。第8表示形態は、後進かつ操舵角がθLT1(0度)より大きくθLT2以下の表示形態である。第9表示形態は、後進かつ操舵角がθLT2より大きくθLT3以下の表示形態である。第10表示形態は、後進かつ操舵角がθLT3より大きくθLT4以下の表示形態である。第11表示形態は、後進かつ操舵角がθLT4より大きくθLT5以下の表示形態である。第12表示形態は、後進かつ操舵角がθLT5より大きくθLT6以上の表示形態である。
【0030】
前後進レバーが後進位置に操作されて後進する場合において右操舵された時に表示される操舵アイコン150は5つ表示形態である。したがって、後進位置でも左右操舵の表示形態は11通りである。
【0031】
(前後進レバーが中立位置)
前後進レバーが中立のとき車両は慣性走行する。このときハンドルを操作する場合には、操舵アイコン150は、中立表示指針152Nを操舵角に応じて回転させて表示する。すなわち、前後進レバーが中立位置に操作され、慣性で前進走行している場合に左操舵された時、操舵アイコン150は、上述した第1〜第7表示形態や第8〜第12表示形態と同様に、第13(操舵角ゼロ=中立)〜第18(最大切れ角)表示形態の6つの表示形態の間を操舵角に応じて切り換わる。なお、上述したとおり、中立操舵アイコン152Nは、指針152の指針前後領域152FC、152RCの両方が
図6(a)に示されるように強調表示される。
【0032】
前後進レバーが中立位置に操作され、慣性で後進走行している場合に右操舵された時に表示される操舵アイコン150は5つ表示形態である。したがって、中立位置でも左右操舵の表示形態は11通りである。
【0033】
これら左右操舵時の前後進レバーの操作位置に応じた操舵アイコン150の33通りの表示形態を
図9〜
図14に示す。33通りの表示形態は、車速によってさらに2種類の表示形態をとる。すなわち、低速時の点灯と高速時の点滅である。したがって、実施の形態の表示装置は、66通りの表示形態をとる。
【0034】
なお、以上では
図7に示すように、中立から最大操舵角を、中立時の
図7(a)の表示に加えて、
図7(a)〜(b)、(b)〜(c)、(c)〜(d)、(d)〜(e)、(e)〜(f)の5段階の操舵角範囲に区画し、操舵アイコン150は段階的な操舵角で切換え表示するようにした。連続的に検出する操舵角に応じて指針152を連続的に回転させてもよい。
【0035】
以上のような操舵情報を表す操舵アイコン150の表示形態制御について
図15のフローチャートを用いて説明する。
図15のフローチャートは
図1のコントローラ11内のCPUなどが実行するプログラムによる処理手順を示す。このプログラムは、図示しないキースイッチがオンされると動作を開始する。ステップS1において、前後進検出器12と操舵検出器14からの信号に基づき前後進レバーの操作状態と、ハンドルの操舵によるタイヤの操舵状態との組み合わせが判断される。その組み合わせは上述した33通りである。
【0036】
ステップS2に進むと、画像生成部16は、ステップS1で判断された表示形態の操舵アイコン150の画像を生成してステップS3に進む。ステップS3では、ステップS2で生成された操舵アイコン150の描画データを表示器15に表示する。ステップS4では、CPUは車速検出器13からの車速信号が所定速度以上か否かを判定し、所定速度以上であればステップS5に進む。ステップS5では表示器15の照明装置を点灯する。ステップS4で車速が所定速度未満と判定されるとステップS6に進み、表示器15の照明装置を点滅する。したがって、操舵アイコン150は、66種類の表示形態でタイヤ切れ角を表示する。ステップS5またはステップS6の処理を実行するとプログラムは所定のルーチンへリターンする。
【0037】
このような処理手順により、ハンドルが中立時および左右の操舵時において、表示器15には操舵アイコン150が、前後進中立情報、操舵情報の組み合わせで定義された33通りの表示形態で表示され、さらに、車速に基づいてそれら33通りの操舵アイコン150が点灯または点滅表示される。したがって、実施の形態の操舵表示装置は66通りの操舵アイコン150が運転状態に基づき切換え表示される。
【0038】
以上説明した実施の形態の操舵表示装置は次のような作用効果を奏することができる。
(1)タイヤの操舵状況を視覚的に表示する実施の形態の作業車両の操舵表示装置10は、車両の車幅を表す車幅表示(矩形枠)151、およびタイヤの操舵の状況を表す操舵輪表示(指針)152を図形の情報である操舵アイコン150として表示する表示器15と、操舵輪表示152を回動軸152AXを中心に操舵輪の操舵角に基づいて回転させ、車幅表示151を操舵輪の操舵に基づいて拡縮する画像生成部16とを備える。画像生成部16は、操舵角が所定値θLT4以上の操舵角では、操舵輪表示152の一部が車幅表示151からはみ出すように、操舵輪表示152と車幅表示151を生成する。
実施の形態の操舵表示装置10ではとくに、画像生成部16により操舵アイコン150は次のように表示される。
図7(a)〜(b)に示すように、操舵された時の車幅表示151の車幅寸法X20は、中立の時の車幅寸法X10より広くなる。換言すると、車幅表示151の車幅寸法は操舵角に基づいて変更され、中立時の車幅表示151Nの幅寸法X10は、操舵時の車幅表示151Sの幅寸法X20に比べて小さい。また、操舵輪表示152の回動軸AXは、車幅表示151の内側に設定されている。
【0039】
そして、タイヤが車体からはみ出し始める直前の第1操舵角θLT3(
図7(c))までは、操舵輪表示152は車幅表示151の内側に位置する。
図7(c)〜(d)に示すように、第1操舵角θLT3を超えて第2操舵角θLT4になると、操舵輪表示152の一部、実施の形態では
図8(b)に示すように指針152の内輪側先端152RTが車幅表示151の左側車幅線151Lの外側に位置する。指針152の前領域152FCの先端152Tは右側車幅線151Rに一致している。
また、
図7(e)に示すように、第3操舵角θLT5を超えると操舵輪表示である指針152の外輪側先端152FTが車幅表示151の右側車幅線151Rの外側に位置する。
【0040】
このように構成した操舵表示装置によれば、オペレータがフォークリフトなどの作業車両から降車することなく、タイヤの切れ角と、車両側面からのタイヤのはみ出しとを視覚的に確認することができる。とくに、狭隘な構内でフォークリフトなどの作業車両を操舵する場合、車両側方から外輪がはみ出しているのか、内輪がはみ出しているのか、あるいは、外輪も内輪もはみ出しているのかを正確に図形情報として表示することができる。
【0041】
(2)操舵アイコン150は、車両表示の少なくとも左右の車幅を表す対向する一対の線分151L,151Rを有する。一対の線分151L,151Rと操舵輪表示152の回動軸AXとの距離は、左操舵でも右操舵でも、回動軸AXと外輪側車幅線分151Rとの間の距離が大きくなる。
実施の形態の画像生成部16は、指針152の回動角と車幅表示151の拡縮とを組合わせて操舵アイコン150を生成する。したがって、車幅表示151の車幅寸法を一定とし、操舵角に応じて指針152を回転させる表示方式に比べて、操舵時に車幅からはみ出す内外輪のタイヤのはみ出し状況、たとえばはみ出し量を車種に応じてきめ細かく設計することができる。
【0042】
(3)車両前後進情報は、操舵輪表示の指針152の前進側または後進側を強調表示して表示される。低速時は操舵輪表示の指針152を点滅させ、高速時は操舵輪表示の指針152を点灯させる。少ない種類のアイコンを利用して操舵に関する多くの運転情報を併せて表示できる。その結果、表示器15,ひいては表示パネル18を小型化できる
【0043】
(4)実施の形態の操舵表示装置では、たとえば前後進レバーが前進位置に操作されている場合に左操舵されるときは、
図7(a)の中立に加えて、
図7(a)〜(b)、(b)〜(c)、(c)〜(d)、(d)〜(e)、(e)〜(f)の5段階に操舵アイコン150が表示され、また右操舵されるときはさらに5段階に切換え表示される。すなわちタイヤ中立と、操舵時の10段階の操舵角範囲を区画し、操舵アイコン150は段階的な操舵角で11通りの表示形態で切換え表示されるようにした。したがって、連続的に変化する操舵角にリアルタイムで回転させる処理に比べて、コントローラ11のCPUや画像生成部16の負荷を抑制することができる。
【0044】
以上説明した操舵表示装置は次のように変形して実施することもできる。
−変形例1−
指針形状は菱形に限定されない。指針形状に代えてタイヤを模した長方形形状を採用し、前後進表示は長手方向一端を前進方向、他端を後進方向と定義して表示形態を変更すればよい。
両端に矢印を有する両矢印アイコンを用いてもよい。中立では両方の矢印を同じ表示形態で表示し、前進時は前進側の矢印を強調表示し、後進時は後進側の矢印を強調表示する。
片方の端部に矢印を有する片矢印アイコンを用いてもよい。前進時は前進側の矢印を表示し、後進時は後進側の矢印を表示する。
【0045】
−変形例2−
車幅を示すアイコンも矩形枠に限定されない。左右の車幅線のみからなる一対の線分で車幅を表示してもよい。車幅に対応する寸法は、中立時と操舵時で狭い幅と広い幅の2種類で示したが、3種類以上の幅寸法で示してもよい。
-変形例3−
中立時の幅寸法が最小、操舵により幅寸法を大きくし、所定の操舵角を超えると操舵輪表示の先端が車幅アイコンの外側にはみ出すようにしたが、その逆でもよい。すなわち、所定の操舵角を超えるまでは車幅寸法を大きくしておき、所定の操舵角を超えると車幅寸法を小さくすることにより操舵輪表示である指針の先端が車幅表示からはみ出すようにしてもよい。
【0046】
−変形例4−
タイヤ操舵方向とタイヤ操舵角によってタイヤが車体側面からはみ出すことを表示するだけの表示形態でアイコン表示を制御してもよい。すなわち、前後進中立に応じた表示形態、車速に応じた表示形態を組み合わせない表示制御も本発明に含まれる。また、タイヤはみ出し報知表示と前後進中立報知表示の組み合わせ、タイヤはみ出し報知表示と車速報知表示の組み合わせも本発明に含まれる。
【0047】
−変形例5−
変形例5の操舵表示装置は、操舵アイコン150が前後進の情報、車速の情報を表示せず、操舵輪(タイヤ)が操舵車幅表示(矩形枠)151からはみ出すことを報知する表示装置である。変形例5の操舵表示装置は、操舵操作部材の操舵により操舵される操舵輪を有し、操舵によって操舵輪の内輪および/または外輪が車体からはみ出す作業車両に搭載され、操舵輪の操舵状況を視覚的に表示する操舵表示装置である。操舵アイコン150は、車両の車幅を表す車幅表示151、および操舵輪の操舵状況を表す操舵輪表示152を図形の情報として表示する表示器15と、操舵輪表示152を操舵輪の操舵角に基づいて回転させ、内輪および/または外輪が車体からはみ出す操舵角に対応して、操舵角が所定値を超えると操舵輪表示152の一部が車幅表示151からはみ出すように、操舵輪表示152と車幅表示151を図形情報として生成する画像生成部16とを備える。
【0048】
−変形例6−
変形例6の操舵表示装置は、操舵輪(タイヤ)が操舵車幅表示(矩形枠)151からはみ出すことを報知する表示装置ではなく、操舵情報と前後進情報と車速情報を一つの操舵アイコンで報知するものである。すなわち、変形例6の操舵表示装置は、操舵輪の操舵角情報と車両の前後進情報と車両の車速情報を入力する入力部(
図2の検出器12〜14からの検出信号を受信するインターフェース)と、入力された情報に基づいて、次の3通りの操舵情報表示形態のいずれか一つを操舵アイコン150として生成する画像生成部16とを有する。
一つ目の操舵情報表示アイコン150は、操舵輪の操舵状況を示す操舵輪表示152と車両の前後進情報を示す前後進表示152N,152R(
図6(a)〜(c))の表示形態である。
二つ目の操舵情報表示アイコン150は、操舵輪の操舵状況を示す操舵輪表示152と車両の車速情報を示す車速情報の表示形態である。
三つ目の操舵情報表示アイコン150は、操舵輪の操舵状況を示す操舵輪表示152と車両の前後進情報を示す前後進表示152N,152Rと車両の車速情報を示す車速情報の表示形態である。
変形例6の表示装置は車幅表示(矩形枠)151を省略した実施の形態でも適用可能である。変形例6の発明には車幅表示(矩形枠)151が必須ではない。
【0049】
また、上記操舵表示装置は、操舵アイコン150を作業車両の前進方向と後進方向を指し示す前表示部と後表示部とを含むように構成できる。すなわち、画像生成部16は、入力部から入力された情報に基づいて、作業車両が前進しているときは前表示部152FCを強調表示し、作業車両が後進しているときは後表示部152RCを強調表示し、これら前表示部152FCと後表示部152RCとを、作業車両の車速が低速時の表示形態と高速時の表示形態で切替えて表示するように、操舵アイコン150を生成する。
【0050】
以上では、フォークリフトを一例として説明したが、タイヤを操舵輪とし、操舵角によって車両側面からはみ出す作業車両であればフォークリフトに限定されない。
【0051】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施の形態、変形例の構成を適宜組合わせて実施する操舵表示装置も本発明に含まれる。