特許第6873819号(P6873819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873819
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】クランクワッシャ
(51)【国際特許分類】
   F16C 9/04 20060101AFI20210510BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20210510BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20210510BHJP
   F16C 7/02 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F16C9/04
   F16C17/04 Z
   F16C33/10 Z
   F16C7/02
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-102740(P2017-102740)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-197590(P2018-197590A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2019年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147810
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 浩
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 大
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−177968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 9/04, 7/02,17/04,33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の軸方向の力を受ける摺動面を有する半円環形状のワッシャであって、
外周面と前記摺動面との間に形成され、内周面と当該摺動面との間とは非対称な形状の第1傾斜面
を備えるクランクワッシャ。
【請求項2】
前記第1傾斜面は、周方向の全体に設けられている
請求項1に記載のクランクワッシャ。
【請求項3】
周方向の部分にのみ前記第1傾斜面が設けられている
請求項1に記載のクランクワッシャ。
【請求項4】
前記内周面と前記摺動面との間に形成された第2傾斜面を備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクランクワッシャ。
【請求項5】
前記内周面と前記摺動面との間には傾斜面を有さない
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクランクワッシャ。
【請求項6】
前記第1傾斜面の深さが、前記回転軸の周方向において異なっている
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のクランクワッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクワッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
スラストワッシャの表面に保持される潤滑油の量を増加させる発明として、例えば特許文献1に開示されたスラストワッシャがある。このスラストワッシャは、上下方向に沿った油溝を有し、規則性のある凹凸部によって形成されたヘリングボーン形状のテクスチャが軸方向外側に設けられている。このテクスチャにより、スラストワッシャの表面に保持される潤滑油の量が増加して油膜圧力が発生するため、クランクシャフトのスラスト面とスラストワッシャとの接触を防止し、焼付きを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−169293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クランクシャフトにたわみが生じた場合、クランクシャフトにおいてスラストワッシャに接するスラスト面がスラストワッシャの外周側に片寄って当たり、焼付きが発生する虞がある。
【0005】
本発明は、クランクシャフトがクランクワッシャに対して片寄って当たっても、焼付きを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転軸の軸方向の力を受ける摺動面を有する半円環形状のクランクワッシャであって、外周面と前記摺動面との間に形成された第1傾斜面を備えるクランクワッシャを提供する。
【0007】
本発明においては、前記第1傾斜面は、周方向の全体に設けられている構成であってもよい。
【0008】
また、本発明においては、周方向の所定部分に前記第1傾斜面が設けられている構成であってもよい。
【0009】
また、本発明においては、内周面と前記摺動面との間に形成された第2傾斜面を備える構成であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クランクシャフトがクランクワッシャに対して片寄って当たっても、焼付きを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】内燃機関におけるクランクシャフト1を例示する図。
図2】クランクワッシャ30の正面図および断面図。
図3】変形例に係るクランクワッシャ30Aの正面図。
図4】変形例に係るクランクワッシャ30Bの正面図。
図5】変形例に係るクランクワッシャ30Cの正面図。
図6】変形例に係るクランクワッシャ30Dの正面図。
図7】クランクワッシャ30Dの断面図。
図8】変形例に係るクランクワッシャ30Eの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
図1は、内燃機関におけるクランクシャフト1を例示する図である。回転軸の一例であるクランクシャフト1においては、主軸受10、コンロッド軸受20、およびクランクワッシャ30が用いられる。主軸受10は、シリンダブロック(図示略)のハウジング(図示略)に装着してクランクシャフト1のジャーナルを把持し、クランクシャフト1を支える軸受である。コンロッド軸受20は、コネクティングロッド2に装着してクランクシャフト1のピンを把持し、コネクティングロッド2を支える軸受である。本発明に係るスラストワッシャの一例であるクランクワッシャ30は、主軸受10と組み合わせて使用され、クランクシャフト1の軸方向の力を支える軸受である。クランクワッシャ30は、クランクシャフト1およびシリンダブロックの軸方向の位置決めをする機能も有する。
【0013】
図2の(a)は、クランクワッシャ30の正面図であり、図2の(b)は、図2の(a)のA−A線断面図である。図においては、直交するx軸、y軸およびz軸で方向を示し、クランクシャフト1の回転方向を矢印aで示している。図において座標系を表す記号のうち、円の中に交差する2本線が描かれた記号は、紙面手前側から奥側に向かう矢印を表し、円の中に黒の円が描かれた記号は、紙面奥側から手前に向かう矢印を表す。また、図面の座標系においては、x軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を−x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、−y方向、z軸方向、+z方向、−z方向と定義する。
【0014】
クランクワッシャ30は、半円環形状で平板の上部ワッシャ31と、同じく半円環形状で平板の下部ワッシャ32で構成されている。上部ワッシャ31および下部ワッシャ32は、本発明に係るクランクワッシャの一例である。クランクワッシャ30は2枚で一組であり、後述する摺動面310および摺動面320の反対側の面同士を向かい合わせ、これらの間に図示しないハウジングを挟んで組付けられる。なお、クランクワッシャ30は、下部ワッシャ32を含まず、上部ワッシャ31のみであってもよい。
【0015】
上部ワッシャ31は、摺動面310、油溝317、切欠き312および傾斜面316を有する。油溝317は、上部ワッシャ31の−y方向の端面において、z軸方向に沿って所定の幅および深さで設けられた溝である。なお、切欠き312は、+x方向および−x方向にそれぞれ減肉されて設けられていてもよく、また、+y方向にも減肉されて設けられていてもよい。摺動面310は、クランクシャフト1と摺動する面であり、スラスト荷重を受けてクランクシャフト1を支持する部位である。
【0016】
本発明に係る第1傾斜面の一例である傾斜面316は、上部ワッシャ31の−y方向の端面の外周面315側に形成された傾斜面である。傾斜面316は、+y方向に見ると、径方向の幅が予め定められた幅wとなっている。また、傾斜面316は、内周面314側から外周面315側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。
【0017】
下部ワッシャ32は、回り止め321、油溝327、摺動面320、切欠き322および傾斜面326を有する。油溝327は、上部ワッシャ31の−y方向の端面において、z軸方向に沿って所定の幅および深さで設けられた溝である。回り止め321は、図示しないハウジングに設けられた回り止め溝に掛かり、下部ワッシャ32がクランクシャフト1の回転に伴って回ることを防ぐ。また、回り止め321がハウジングの回り止め溝に掛かって下部ワッシャ32の回転が抑制されることで、上部ワッシャ31の回転も抑制される。なお、回り止め321の根元には回り止め溝との干渉を防止するための「逃がし」が設けられていてもよい。
【0018】
切欠き322は、+x方向および−x方向にそれぞれ減肉されて設けられていてもよく、また、+y方向にも減肉されて設けられていてもよい。摺動面320は、クランクシャフト1と摺動する面であり、スラスト荷重を受けてクランクシャフト1を支持する部位である。
【0019】
本発明に係る第1傾斜面の一例である傾斜面326は、下部ワッシャ32の−y方向の端面の外周面325側に形成された傾斜面である。傾斜面326は、+y方向に見ると、径方向の幅が予め定められた幅wとなっている。また、傾斜面326は、内周面324側から外周面325側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。
【0020】
上部ワッシャ31および下部ワッシャ32の製造方法としては、複数の方法が適用可能である。例えば、上部ワッシャ31および下部ワッシャ32の素材が金属である場合、上部ワッシャ31および下部ワッシャ32は、板状の金属に対してプレス加工または切削加工を行うことにより得られる。なお、上部ワッシャ31および下部ワッシャ32の素材が金属である場合、傾斜面316および傾斜面326は、プレス加工を行う際の金型または切削により形成される。また、上部ワッシャ31および下部ワッシャ32の素材が樹脂である場合、上部ワッシャ31および下部ワッシャ32は、射出成型または圧縮成形により得られる。なお、上部ワッシャ31および下部ワッシャ32の素材が樹脂である場合、傾斜面316および傾斜面326は、射出成型または圧縮成形の金型により形成される。
【0021】
本実施形態によれば、クランクシャフト1のたわみによってクランクシャフト1のスラスト面が摺動面310や摺動面320に対して傾いたとしても、傾いたスラスト面に傾斜面316や傾斜面326の表面が当たるため、傾斜面316および傾斜面326がない場合と比較すると、クランクワッシャ30に対するスラスト面の当たりが緩和され、焼付きの発生を抑えることができる。
【0022】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態および以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0023】
(変形例1)
図3は、本発明の変形例に係るクランクワッシャ30Aの正面図である。クランクワッシャ30Aは、半円環形状で平板の上部ワッシャ31Aと、同じく半円環形状で平板の下部ワッシャ32Aで構成されている。上部ワッシャ31Aは、傾斜面316に替えて傾斜面316Aを有し、下部ワッシャ32Aは、傾斜面326に替えて傾斜面326Aを有する。なお、以下の説明においては、上部ワッシャ31Aにおいて上部ワッシャ31と同じ構成、および下部ワッシャ32Aにおいて下部ワッシャ32と同じ構成については、図面において同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
傾斜面316Aは、上部ワッシャ31Aの−y方向の端面の外周面315側で周方向の一部(所定部分)に形成された傾斜面である。傾斜面316Aにおいては、内周面314側から外周面315側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。上部ワッシャ31Aを+y方向に見たとき、傾斜面316Aは、x軸方向の中央部に設けられている。
【0025】
傾斜面326Aは、下部ワッシャ32Aの−y方向の端面の外周面325側で周方向の一部(所定部分)に形成された傾斜面である。傾斜面326Aにおいては、内周面324側から外周面325側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。上部ワッシャ31Aを+y方向に見たとき、傾斜面326Aは、x軸方向の中央部に設けられている。
【0026】
クランクシャフト1のスラスト面は、エンジンの種類によっては、傾いてクランクワッシャのx軸方向の中央付近に片当たりするが、クランクワッシャ30Aにおいては、x軸方向の中央付近に傾斜面316Aと傾斜面326Aが設けられているため、スラスト面の当たりが緩和され、焼付きの発生を抑えることができる。
【0027】
なお、クランクワッシャにおいて傾いたスラスト面が片当たりする位置は、エンジンの種類によって異なる。このため、エンジンの種類に応じて、傾斜面の位置を図4図5に示した位置に設けてもよい。
【0028】
図4は、本発明の変形例に係るクランクワッシャ30Bの正面図である。クランクワッシャ30Bは、半円環形状で平板の上部ワッシャ31Bと、同じく半円環形状で平板の下部ワッシャ32Bで構成されている。上部ワッシャ31Bは、傾斜面316に替えて傾斜面316B−1と傾斜面316B−2を有し、下部ワッシャ32Bは、傾斜面326に替えて傾斜面326B−1と傾斜面326B−2を有する。なお、以下の説明においては、上部ワッシャ31Bにおいて上部ワッシャ31と同じ構成、および下部ワッシャ32Bにおいて下部ワッシャ32と同じ構成については、図面において同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
傾斜面316B−1および傾斜面316B−2は、上部ワッシャ31Bの−y方向の端面の外周面315側で周方向の一部(所定部分)に形成された傾斜面である。傾斜面316B−1および傾斜面316B−2においては、内周面314側から外周面315側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。上部ワッシャ31Bを+y方向に見たとき、傾斜面316B−1は、クランクシャフト1の回転方向上流側の合わせ面から周方向に沿って予め定められた範囲に設けられている。また、傾斜面316B−2は、クランクシャフト1の回転方向下流側の合わせ面から周方向に沿って予め定められた範囲に設けられている。
【0030】
傾斜面326B−1および傾斜面326B−2は、下部ワッシャ32Bの−y方向の端面の外周面325側で周方向の一部(所定部分)に形成された傾斜面である。傾斜面326B−1および傾斜面326B−2においては、内周面324側から外周面325側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。下部ワッシャ32Bを+y方向に見たとき、傾斜面326B−1は、クランクシャフト1の回転方向下流側の合わせ面から周方向に沿って予め定められた範囲に設けられている。また、傾斜面326B−2は、クランクシャフト1の回転方向上流側の合わせ面から周方向に沿って予め定められた範囲に設けられている。
【0031】
図5は、本発明の変形例に係るクランクワッシャ30Cの正面図である。クランクワッシャ30Cは、半円環形状で平板の上部ワッシャ31Cと、同じく半円環形状で平板の下部ワッシャ32Cで構成されている。上部ワッシャ31Cは、傾斜面316に替えて傾斜面316Cを有し、下部ワッシャ32Cは、傾斜面326に替えて傾斜面326Cを有する。なお、以下の説明においては、上部ワッシャ31Cにおいて上部ワッシャ31と同じ構成、および下部ワッシャ32Cにおいて下部ワッシャ32と同じ構成については、図面において同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
傾斜面316Cは、上部ワッシャ31Cの−y方向の端面の外周面315側で周方向の一部(所定部分)に形成された傾斜面である。傾斜面316Cにおいては、内周面314側から外周面315側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。上部ワッシャ31Cを+y方向に見たとき、傾斜面316Cは、クランクシャフト1の回転方向下流側の合わせ面とx軸方向の中央部との間において、周方向に沿って予め定められた範囲に設けられている。
【0033】
傾斜面326Cは、下部ワッシャ32Bの−y方向の端面の外周面325側で周方向の一部(所定部分)に形成された傾斜面である。傾斜面326Cにおいては、内周面324側から外周面325側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。下部ワッシャ32Cを+y方向に見たとき、傾斜面326Cは、クランクシャフト1の回転方向下流側の合わせ面とx軸方向の中央部との間において、周方向に沿って予め定められた範囲に設けられている。
【0034】
(変形例2)
図6は、本発明の変形例に係るクランクワッシャ30Dの正面図である。また、図7は、図6のB−B線断面図、C−C線断面図、D−D線断面図、E−E線断面図、F−F線断面図およびG−G線断面図である。クランクワッシャ30Dは、半円環形状で平板の上部ワッシャ31Dと、同じく半円環形状で平板の下部ワッシャ32Dで構成されている。上部ワッシャ31Dは、傾斜面316に替えて傾斜面316Dを有し、下部ワッシャ32Dは、傾斜面326に替えて傾斜面326Dを有する。なお、以下の説明においては、上部ワッシャ31Dにおいて上部ワッシャ31と同じ構成、および下部ワッシャ32Dにおいて下部ワッシャ32と同じ構成については、図面において同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
傾斜面316Dは、上部ワッシャ31Dの−y方向の端面の外周面315側に形成された傾斜面である。傾斜面316Dは、y軸方向で見ると、径方向の幅が予め定められた幅wとなっている。また、傾斜面316Dは、内周面314側から外周面315側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。
【0036】
また、外周面315の位置における傾斜面316Dの+y方向の深さを見ると、図6のB−B線の位置、即ち、クランクシャフト1の回転方向上流側の合わせ面側の位置では、図7の(a)に示したようにd1の深さであり、図6のC−C線の位置、即ち、x軸方向の中央部では、図7の(b)に示したようにd2の深さであり、図6のD−D線の位置、即ち、クランクシャフト1の回転方向下流側の合わせ面側の位置では、図7の(c)に示したようにd3の深さとなっている。d1、d2およびd3の関係は、d1>d2>d3となっており、傾斜面316Dは、クランクシャフト1の回転方向上流側の合わせ面側から下流側の合わせ面側に向かうにつれて深さが浅くなっている。換言すると、傾斜面316Dの表面は、クランクシャフト1の回転方向上流側の合わせ面側から下流側の合わせ面側に向かうにつれて摺動面310とのなす角度が小さくなっている。
【0037】
傾斜面326Dは、下部ワッシャ32Dの−y方向の端面の外周面325側に形成された傾斜面である。傾斜面326Dは、y軸方向で見ると、径方向の幅が予め定められた幅wとなっている。また、傾斜面326Dは、内周面324側から外周面325側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。
【0038】
また、外周面325の位置における傾斜面326Dの+y方向の深さを見ると、図6のG−G線の位置、即ち、クランクシャフト1の回転方向上流側の合わせ面側の位置では、図7の(d)に示したようにd1の深さであり、図6のF−F線の位置、即ち、x軸方向の中央部では、図7の(e)に示したようにd2の深さであり、図6のE−E線の位置、即ち、クランクシャフト1の回転方向下流側の合わせ面側の位置では、図7の(f)に示したようにd3の深さとなっている。つまり、傾斜面326Dは、傾斜面316Dと同じく、クランクシャフト1の回転方向上流側の合わせ面側から下流側の合わせ面側に向かうにつれて深さが浅くなっている。換言すると、傾斜面326Dの表面は、クランクシャフト1の回転方向上流側の合わせ面側から下流側の合わせ面側に向かうにつれて摺動面320とのなす角度が小さくなっている。
【0039】
クランクシャフト1のスラスト面は、エンジンの種類によっては、傾いてクランクワッシャに強く当たるが、クランクワッシャ30Dのように、傾斜面316Dおよび傾斜面326Dについて、スラスト面の傾きが大きくなる部分の深さを深くすれば、スラスト面の当たりが緩和され、焼付きの発生を抑えることができる。
【0040】
(変形例3)
図8は、本発明の変形例に係るクランクワッシャ30Eの正面図である。クランクワッシャ30Eは、半円環形状で平板の上部ワッシャ31Eと、同じく半円環形状で平板の下部ワッシャ32Eで構成されている。上部ワッシャ31Eは、上部ワッシャ31と比較すると、傾斜面313をさらに有し、下部ワッシャ32Eは、下部ワッシャ32と比較すると、傾斜面323をさらに有する。なお、以下の説明においては、上部ワッシャ31Eにおいて上部ワッシャ31と同じ構成、および下部ワッシャ32Eにおいて下部ワッシャ32と同じ構成については、図面において同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
本発明に係る第2傾斜面の一例である傾斜面313は、上部ワッシャ31の−y方向の端面の内周面314側に形成された傾斜面である。傾斜面313は、+yに方向で見ると、径方向の幅が予め定められた幅となっている。また、傾斜面313は、外周面315側から内周面314側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。本発明に係る第2傾斜面の一例である傾斜面323は、下部ワッシャ32の−y方向の端面の内周面324側に形成された傾斜面である。傾斜面323は、+y方向に見ると、径方向の幅が予め定められた幅となっている。また、傾斜面323は、外周面325側から内周面324側へ向かうにつれてy軸方向の厚みが減少している。
【0042】
クランクワッシャ30において傾斜面313および傾斜面323を設けず、摺動面310および摺動面320に油溝を設けた構成の場合、潤滑油は油溝を通ってクランクワッシャの外周へ逃げやすくなる。一方、本変形例においては、傾斜面313および傾斜面323から摺動面310および摺動面320の全体に潤滑油が供給されるため、傾斜面313および傾斜面323を設けず且つ油溝を設けた場合より摺動面310および摺動面320の全体に供給される潤滑油の量が増え、焼付きを抑えることができる。また、本変形例においては、潤滑油を保持する表面加工を摺動面310および摺動面320に行わなくても、摺動面310および摺動面320の全体に潤滑油を供給することができ、表面加工を行う構成と比較すると、製造の工数およびコストを減らすことができる。なお、傾斜面313と傾斜面323は、周方向の全体ではなく、周方向の一部に設ける構成であってもよい。
【0043】
また、上部ワッシャと下部ワッシャに油溝を設けず、傾斜面313と傾斜面323を設ける構成においては、傾斜面316および傾斜面326において傾いたスラスト面が当たる位置の径方向の幅を他の部分より広くする構成としてもよい。
【0044】
(変形例4)
上述した実施形態および変形例に係るクランクワッシャは、切欠き312および切欠き322を有しているが、切欠き312および切欠き322を有していない構成であってもよい。
【0045】
(変形例5)
上述した実施形態および変形例においては、上部ワッシャと下部ワッシャの両方に傾斜面が設けられているが、上部ワッシャと下部ワッシャのいずれか一方にのみ傾斜面を設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…クランクシャフト
2…コネクティングロッド
10…主軸受
20…コンロッド軸受
30、30A、30B、30C、30D、30E…クランクワッシャ
31、31A、31B、31C、31D、31E…上部ワッシャ
32、32A、32B、32C、32D、32E…下部ワッシャ
310…摺動面
320…摺動面
312…切欠き
313…傾斜面
314…内周面
315…外周面
316A、316A、316B−1、316B−2、316C、316D…傾斜面
317…油溝
320…摺動面
321…回り止め
322…切欠き
323…傾斜面
324…内周面
325…外周面
326、326A、326B−1、326B−2、326C、326D…傾斜面
327…油溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8