(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る燃料電池モジュールは、ブスバーが有するばね機構部が、燃料電池モジュール内の熱膨張差により生じる熱応力をばね反力に変換することで、燃料電池モジュールの熱応力による劣化の低減を図ったものである。より詳しく、以下に説明する。
【0012】
図1に基づき第1実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を説明する。
図1は、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を示す図である。この
図1に示すように、燃料電池モジュール1は、水素含有ガスと酸素含有ガス(空気)とを用いて発電する。より具体的には、燃料電池モジュール1は、セルスタック100と、収納容器200と、ブスバー300と、絶縁材部400とを、備えて構成されている。
【0013】
セルスタック100は、水素含有ガスと酸素含有ガスとを用いて発電する燃料電池セル102を複数積層して構成されている。また、セルスタック100の両端部には、燃料電池セル102の発電により生じた電流を外部に供給する電極端子104が配置されている。
【0014】
燃料電池セル102は、例えば固体酸化物燃料電池セルであり、主に酸化物イオン(O
2−)を通す電解質を介して電気化学的反応により発電する。より具体的には、固体酸化物燃料電池セルのアノード側には燃料ガスとして水素含有ガスが供給され、カソード側には酸化剤として酸素含有ガスが供給される。これにより、以下の化学式1に示す反応により発電する。固体酸化物燃料電池セルは、酸化物イオンの伝導性を高めるために、600℃〜1000℃の高温で動作する。このため、電極反応が速くなり、固体酸化物燃料電池セルの電極材料として、貴金属を必ずしも用いる必要がなくなる。
【0015】
固体酸化物燃料電池セルは、一般的に温度が高いほど、電流密度に対するセル電圧が高くなり、発電性能が向上する。また、固体酸化物燃料電池セルは、セラミックで構成される。このセラミックは、600℃〜1000℃の高温において、フェライト系のSUS(SUS:Steel Special Use Stainless)材料なみの熱膨張率を有する場合もある。
【0016】
(化学式1)
燃料極反応:H
2 + O
2−→ 2H
+ + 2e−
CO + O
2− → CO
2 + 2e−
酸化剤極反応:O
2+ 4e− → 2O
2−
収納容器200は、セルスタック100を収納する。収納容器200には、セルスタック100に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給管202と、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給管204とが接続されている。また、収納容器200は、収納壁206で構成され、収納壁206で囲まれた空間内にセルスタック100を収納する。収納壁206は、100〜600℃の高温となるため、例えば、耐酸化性の良いSUS材料で構成されている。
【0017】
また、収納容器200から水素含有ガスもしくは酸素含有ガスが漏れると、燃料電池モジュール1の性能が低下してしまう恐れがある。また、水素含有ガスに含まれる可燃ガスや一酸化炭素(CO)ガスが漏れると、有害となってしまう恐れがある。このため、収納容器200は、シール(気密)されている。
【0018】
ブスバー300は、一端302がセルスタック100の電極端子104に電気的に接続され、他端304が収納容の収納壁206の貫通穴を介して収納容器200の外部に配置される。このように、ブスバー300は、セルスタック100の両端部に配置される電極端子104に接続され、燃料電池セル102の発電により生じた電流を収集し、外部に給電する。ブスバー300は、例えば高温での耐酸化性があるSUS材料で構成される。このSUS材料には、熱膨張率が低く、絶縁材との間に熱膨張差による熱応力が発生しにくい、フェライト系のSUS430、ZMGなどが用いられる。
【0019】
また、ブスバー300は、収納容器200内にばね機構部306を有する。
図1に示すように、ブスバー300は、例えばブスバー300の突き出し方向、及び、ばね機構部306の伸縮方向が、セルの積層方向と一致するように構成されている。すなわち、ばね機構部306の伸縮方向は、ブスバーの一端302と他端304とを結ぶ方向である。ばね機構部306の詳細な構成は後述する。
【0020】
絶縁材部400は、収納容器200とブスバー300との隙間を絶縁した状態で密閉すると共に、ブスバー300を収納容器200の収納壁206に固定する。絶縁材部400の材料は、ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミック、及び耐熱性のシリコーンなどである。
【0021】
図2乃至
図4に基づいて、ばね機構部306の詳細な構成を説明する。
図2は、つるまきばねを示す図である。
図3は、2つのU字部を下に備えるばね機構部306を示す図である。
図4は、U字部を上と下にそれぞれ備えるばね機構部306を示す図である。
【0022】
これらの
図2乃至
図4に示すように、ばね機構部306は、金属弾性体の復元力、すなわちばねの復元力を用いる。この
図2に示すように、ばね機構部306は、つるまきばね、つまりスパイラル状にされた金属ばねにより構成される。また、
図3及び
図4に示すように、ばね機構部306は、金属を複数回折り曲げられたばねにより構成される。
【0023】
(作用)
セルスタック100は、発電すると共に、収納容器200の真ん中に位置するため、燃料電池モジュール1内で最も高温になる。一方で、収納容器200は、外気に最も近くに位置するため比較的低温となる。このため、セルスタック100と収納容器200との間には、温度差によって熱膨張差が発生する。収納容器200の材料をSUS材料の中で熱膨張係数の大きなオーステナイト系の材料を用いても、熱膨張差が発生してしまう。また、ブスバー300も熱膨張する。ブスバー300のばね機構部306は、その伸縮性により、これらを組み合わせた熱膨張差を吸収する。すなわち、ブスバー300のばね機構部306は、熱膨張差により生じる熱応力を、熱応力よりも小さなばねの反発力に変換する。
【0024】
なお、電極端子104とブスバー300を一体的に構成してもよい。この場合、一体的に構成された電極端子104及びブスバー300は、電極端子と呼ばれる場合がある。
【0025】
(効果)
第1実施形態に係る燃料電池モジュール1は、ブスバー300が収納容器200内にばね機構部306を有することとした。これにより、ブスバー300のばね機構部306が、熱膨張差により生じる熱応力を、ばね反力に変換可能である。ばね反力は熱応力よりも小さいので、セルスタック100にかかる熱応力は、ばね機構部306を介さずに両端固定となった場合の熱応力よりも小さくなる。これにより、セルスタック100の破損などが抑制され、セルスタック100の熱応力による劣化を低減可能である。
【0026】
また、収納容器200とブスバー300に介在する絶縁材部400にかかる熱応力も、ばね機構部306のより小さなばね反力に変換されるので、絶縁材部400の熱応力による劣化を低減可能である。
【0027】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る燃料電池モジュールは、ばね機構部における開脚部分の隙間が次第に狭まる先細りのU字状の形状を有するばねが、燃料電池モジュール内の熱膨張差により生じる熱応力をより小さなばね反力に変換することで、燃料電池モジュールの熱応力による劣化の低減を図ったものである。より詳しく、以下に説明する。
【0028】
図5は、第2実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を示す図であり、この
図5に基づき第2実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を説明する。第2実施形態に係る燃料電池モジュール1におけるばね機構部306の構成が、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1におけるばね機構部306の構成と相違する。第1実施形態に係る燃料電池モジュール1と相違する点を説明し、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1と同等の構成には、同等の番号を付して説明を省略する。
【0029】
図5に示すように、ばね機構部306は、U字状の形状を有するばねで構成される。このU字形状は、U字形状の開脚部分の隙間が次第に狭まる先細り状になっている。すなわち、U字形ばねのU字形を形成する板状材間の間隔が、下側における間隔D1から上側における隙間D2に向かうに従い短くなる。隙間が先細り状になっているU字形ばねのばね反力は、隙間が先細り状になっていないU字形ばねのばね反力よりも小さくなる。
【0030】
(作用)
先細りしているU字状の形状を有するばねは、先細りしていないU字状の形状ばねと比較して、熱応力をより小さなばね反力に変換できる。このため、収納容器200とセルスタック100との間に生じた熱膨張差をより小さなばね反力として吸収可能である。先細りしているU字状の形状を有するばねは、安価に入手できる板状の材料を用いると共に、加工が容易である。このため、製造コストも抑制可能である。
【0031】
(効果)
第2実施形態に係る燃料電池モジュール1は、ばね機構部306に開脚部分の隙間が次第に狭まる先細りのU字状の形状ばねを用いることとした。これにより、熱応力をより小さなばね反力に変換可能である。このため、セルスタック100及び絶縁材にかかる熱応力は、先細りしていないU字状の形状ばねを用いる場合の熱応力よりも小さくなり、セルスタック100及び絶縁材の熱応力による劣化をより低減可能である。また、先細りしているU字状の形状ばねは、加工が簡単な形状であり、安価に入手できる板状の材料を利用できる。
【0032】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る燃料電池モジュールは、くさびを第1絶縁材部のガイド穴部とブスバーとの隙間に配置し、ブスバーと接している第1絶縁材部と、ブスバーと接している第2絶縁材部との間の熱変動を抑制することで、燃料電池モジュールの熱応力による劣化の低減を図ったものである。より詳しく、以下に説明する。
【0033】
図6は、第3実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を示す断面模式図であり、この
図6に基づき第3実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を説明する。第3実施形態に係る燃料電池モジュール1における絶縁材部400の構成が、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1における絶縁材部400の構成と相違する。第1実施形態に係る燃料電池モジュール1と相違する点を説明し、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1と同等の構成には、同等の番号を付して説明を省略する。
【0034】
図6に示すように、絶縁材部400は、収納容器200とブスバー300との隙間を絶縁した状態で密閉すると共に、ブスバー300を収納容器200の収納壁206に固定する。すなわち、絶縁材部400は、第1絶縁材部402と、くさび404、第2絶縁材部406とを備えて構成されている。
【0035】
第1絶縁材部402は、円柱状の形状で有り、内部にブスバー300を通すガイド穴部が構成されている。第1絶縁材部402は、例えば絶縁がいしである。第1絶縁材部402の材料は、ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミック、及び耐熱性のシリコーンなどである。
【0036】
くさび404は、一方の端部を厚く、他方の端部に向かって次第に薄くなる形状をしている。くさび404は、例えば三角形状の金属で構成されている。くさび404は、第1絶縁材部402のガイド穴部とブスバー300との隙間に、配置される。
【0037】
第2絶縁材部406は、第1絶縁材部402とブスバー300との隙間、第1絶縁材部402と収納容器200との間の隙間を封止している。第2絶縁材部406は、例えばシール剤である。なお、第2絶縁材部406を有することにより、くさび404が無い状態でも、くさび404がある状態と同等のシール性、及び絶縁性を有している。
【0038】
図7に基づき、フランジ部408を更に有する絶縁材部400の例を説明する。
図7は、フランジ部408を更に有する絶縁材部400の構成例を示す断面模式図である。この
図7に示すように、絶縁材部400は、第1絶縁材部402と、くさび404と、第2絶縁材部406と、フランジ部408と、第3絶縁材部410とを備えて構成されている。
図6で示す絶縁材部400と同等の構成には同一の番号を付して説明を省略する。
【0039】
フランジ部408は、円筒部412と、円盤部414とを有して構成されている。円筒部412と円盤部414は全周溶接によって接続され、固定シールされている。溶接を無くして、円筒部412と円盤部414は一つの部品として成形し、コスト低減しても良い。円筒部412の内部には、第1絶縁材部402が組み込まれている。また、円盤部414は、収納容器200の収納壁206にねじ416で、ねじ止めされる。
【0040】
第3絶縁材部410は、フランジ形状部の円盤部414と収納容器200の収納壁206との間に配置されている。第3絶縁材部410は、例えば、シール材である。この
図7で示すように、フランジ形状部の円盤部414を収納容器200の収納壁206にネジ止めする事により、第3絶縁材部410でフランジ形状部と収納容器200との隙間を気密にしている。
【0041】
図8は、第1絶縁材部402が円盤部420を更に有する例を示す断面模式図であり、この
図8に基づき、第1絶縁材部402が円盤部420を更に有する例を説明する。
【0042】
この
図8に示すように、絶縁材部400は、第1絶縁材部402と、くさび404、第2絶縁材部406と、第3絶縁材部410とを備えて構成されている。
図6で示す絶縁材部400と同等の構成には同一の番号を付して説明を省略する。
【0043】
第1絶縁材部402は、円柱状の形状部418と、円盤部420とを有して構成されている。円柱状の形状部418は、内部にブスバー300を通すガイド穴部が構成されている。また、円盤部420は、収納容器200の収納壁206にねじ止めされる。
【0044】
第3絶縁材部410は、第1絶縁材部402の円盤部420と収納容器200の収納壁206との間に配置されている。このことから分かるように、第1絶縁材部402の円盤部420を収納容器200の収納壁206にネジ止めする事により、第3絶縁材部410で第1絶縁材部402と収納容器200との隙間を気密にしている。(作用)
くさび404が、第1絶縁材部402のガイド穴部とブスバー300との隙間に、打ち込まれる。これにより、くさび404は、第1絶縁材部402のガイド穴部とブスバー300との接合を強固にする。このように、絶縁材部400とブスバー300との固定が強力になり、ブスバー300と接している第1絶縁材部402と、ブスバー300と接している第2絶縁材部406との間の変動が抑制される。この場合、ブスバー300は、燃料電池モジュール1の熱膨張差を吸収するために伸び縮みする。
【0045】
(効果)
第3実施形態に係る燃料電池モジュール1は、第1絶縁材部402のガイド穴部とブスバー300との隙間に、くさび404を配置することした。これにより、絶縁材部400とブスバー300との固定がより強力になる。このため、ブスバー300と接している第1絶縁材部402と、ブスバー300と接している第2絶縁材部406との間の変動が抑制され、第2絶縁材部406の劣化を低減可能である。
【0046】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る燃料電池モジュールは、外側ブスバーの熱膨張係数を絶縁材部の熱膨張係数により近づけ、外側ブスバーと絶縁材部との間に生じる熱応力を抑制することで、燃料電池モジュールの熱応力による劣化の低減を図ったものである。
【0047】
図9は、第4実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を示す図であり、この
図9に基づき、第4実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を説明する。第4実施形態に係る燃料電池モジュール1におけるブスバー300の構成が、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1における絶縁材部400の構成と相違する。第1実施形態に係る燃料電池モジュール1と相違する点を説明し、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1と同等の構成には、同等の番号を付して説明を省略する。
【0048】
この
図9に示すように、ブスバー300は、外側ブスバー308と、内側ブスバー310とを有して構成されている。外側ブスバー308は、収納容器200の収納壁206と絶縁した状態で絶縁材部400に固定される。外側ブスバー308の内の絶縁材に接触する領域の形状は、円柱状の形状である。また、外側ブスバー308は、絶縁材部400と熱膨張係数が同等の材質で構成されている。この材質は、例えばフェライト系SUS430などである。
【0049】
内側ブスバー310は、ばね機構部306を有し、セルスタック100の電極端子に接続される。内側ブスバー310は、高温でも耐酸化性が有る材質で構成されている。この材質は、例えばSUS材料であるZMGなどである。このため、内側ブスバー310は、セルスタック100との接触電気抵抗、及び比電気抵抗が、外側ブスバー308を構成するフェライト系SUS430などを用いる場合よりも小さくなる。
【0050】
また、内側ブスバー310は、外側ブスバー308より弾性係数がより小さい。このように、外側ブスバー308と内側ブスバー310とは、材質が異なる。
【0051】
内側ブスバー310、及び外側ブスバー308の一方はめねじ機能部312を有し、他方のブスバー300はおねじ機能部314を有する。また、めねじ機能部312と、おねじ機能部314とは、電気的に接続されている。
図9に示す例では、外側ブスバー308がめねじ機能部312を有し、内側ブスバー310がおねじ機能部314を有している。或いは、外側ブスバー308がおねじ機能部314を有し、内側ブスバー310がめねじ機能部312を有してもよい。
【0052】
図10は、内側ブスバー310が、ばね機構部306として、先細りしているU字状の形状ばねを有している例を示す図であり、この
図10に基づき、内側ブスバー310が先細りしているU字状の形状ばねを有している例を説明する。この
図10に示すように、外側ブスバー308がめねじ機能部312を有し、内側ブスバー310がおねじ機能部314を有する。この内側ブスバー310は、先細りしているU字状の形状ばねで構成されるばね機構部306を有する。また、内側ブスバー310は、ねじ316でセルスタック100の電極端子104に固定されている。
【0053】
なお、絶縁材部400は、
図7で示した絶縁材部400と同等の構成である。
【0054】
(作用)
ここでは、収納容器200にセルスタック100を収納する工程の一例を説明する。外側ブスバー308と内側ブスバー310とを分離した状態で、セルスタック100の電極端子104に内側ブスバー310を固定する。また、外側ブスバー308を、絶縁材部400に組み込む。次に、収納容器200の内部にセルスタック100などを組み込んで蓋をする。続いて、外側ブスバー308と内側ブスバー310とを電気的に接続する。
【0055】
このように、外側ブスバー308と、内側ブスバー310とを分離できるので、セルスタック100の収納容器200への収納がより効率的に行われる。また、例えば絶縁材部400の材質によっては、絶縁材部400を500℃以上の高温にしないと、外側ブスバー308と絶縁材部400の間にシール機能を付与することができない。この場合、外側ブスバー308と内側ブスバー310とを分離可能である。このため、シール機能を付与する際に外側ブスバー308に伝わる熱は、内側ブスバー310に伝導されない。これにより、セルスタック100における熱劣化が抑制される。
【0056】
外側ブスバー308は、絶縁材部400と熱膨張係数が同等の材質であるため、高温時にも絶縁材部400と同等の熱膨張をする。また、外側ブスバー308は、丸棒の形状、すなわち円柱状の形状であるため、絶縁材部400との間に発生した力を接触面において均一に伝える。
【0057】
内側ブスバー310は、セルスタック100との接触電気抵抗及び比電気抵抗が、外側ブスバー308を構成する材料を用いた場合よりも小さい。このため、電気出力のロスを、外側ブスバー308を構成する材料を用いた場合よりも減少する。先細りしているU字状の形状ばねは、熱応力をより小さなばね反発力に変換する。また、U字状の形状ばねは、板状であるので、安価な板材を切り出して構成される。
【0058】
(効果)
第4実施形態に係る燃料電池モジュール1は、外側ブスバー308と、内側ブスバー310とを分離可能に構成し、それぞれの材質と形状を異ならせることとした。これにより、内側ブスバー310の伝導性などを維持した状態で、外側ブスバー308の熱膨張係数を絶縁材部400の熱膨張係数により近づけることが可能である。このため、外側ブスバー308と絶縁材部400との間に生じる熱応力をより抑制可能でき、絶縁材部400の劣化を低減できる。このため、発電停止にともなう熱膨張収縮の繰り返しが生じても、絶縁材部400のシール機能の劣化を低減できる。
【0059】
また、外側ブスバー308の熱膨張係数を維持した状態で、内側ブスバー310の材質を電極端子104との接触電気抵抗、及び比電気抵抗が外側ブスバー308の材質よりも小さい材質にすることが可能である。このため、セルスタック100から内側ブスバー310を介して供給する電気のロスをより低減できる。
【0060】
また、外側ブスバー308を円柱状の形状として、内側ブスバー310を板材の形状にできる。このため、外側ブスバー308と絶縁材部400との間に発生した力も接触面において均一に伝えることができ、応力集中の発生が板状材と比較してより抑制される。また、内側ブスバー310が有するばね機能部306におけるU字状の形状ばねを板状にできるので、安価な板材を切り出して構成可能である。さらに、U字状の形状ばねにより熱応力を小さなばね反発力に変換可能であるので、発電停止にともなう熱膨張収縮を何度繰り返しても絶縁材部400の劣化を低減可能である。
【0061】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る燃料電池モジュールは、セルスタックの電圧端子に接続されるブスバーが有するばね機構部が、燃料電池モジュール内の熱膨張差により生じる熱応力をばね反力に変換することで、燃料電池モジュールの熱応力による劣化の低減を図ったものである。より詳しく、以下に説明する。
【0062】
図11は、第5実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を示す図であり、この
図11に基づき第5実施形態に係る燃料電池モジュール1の構成を説明する。第5実施形態に係る燃料電池モジュール1は、セルスタック100の積層面に電圧を計測するための電圧端子106が設けられていることで、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1と相違する。第1実施形態に係る燃料電池モジュール1と相違する点を説明し、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1と同等の構成には、同等の番号を付して説明を省略する。
【0063】
この
図11に示すように、セルスタック100は、積層面に電圧を計測するための電圧端子106を有している。電圧端子106に電気的に接続されるブスバー300も第1乃至第4実施形態で説明したブスバー300と同等の構成を有する。また、
図11に示すように電圧端子106に電気的に接続されるブスバー300の突き出し方向およびばね機構部306の伸縮方向がセルの積層方向と同じである。
【0064】
なお、電圧端子106とブスバー300を一体的に構成してもよい。この場合、一体的に構成された電圧端子106及びブスバー300は、電圧端子と呼ばれる場合がある。
【0065】
(作用)
電圧端子106の熱膨張と、収納容器200の熱膨張と、セルスタック100の熱膨張とが、それぞれ組み合わされ、熱膨張差が発生する。この場合、電圧端子106に接続されるブスバー300が他のブスバー300より長いため、熱膨張差がより大きくなる。この熱膨張差を電圧端子106に接続されるブスバー300のばね機構部306が吸収する。
【0066】
(効果)
第5実施形態に係る燃料電池モジュール1は、セルスタック100の電圧端子106に接続されるブスバー300が収納容器200内にばね機構部306を有することとした。これにより、ブスバー300のばね機構部306は、熱膨張差による熱応力を、より小さなばね反力に変換可能である。このため、セルスタック100にかかる熱応力は、ばね機構部306を介さずに両端固定となった場合の熱応力よりも小さくなる。これにより、セルスタック100の破損などが抑制され、セルスタック100の熱応力による劣化を低減可能である。
【0067】
また、収納容器200とブスバー300に介在する絶縁材部400にかかる熱応力も、ばね機構部306のより小さなばね反力に変換されるので、絶縁材部400の熱応力による劣化を低減可能である。
【0068】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る燃料電池モジュールは、外部ブスバーが固定される第1絶縁材部を遊動フランジにすることで、外部ブスバーと内部ブスバーと回転歪みの低減を図ったものである。より詳しく、以下に説明する。
【0069】
図12に基づき、第1絶縁材部402が遊動フランジである、絶縁材部400を説明する。
図12は、絶縁材部400の構成部品を示す図である。
【0070】
この
図12に示すように、絶縁材部400は、第1絶縁材部402と、第2絶縁材部406と、第3絶縁材部410と、フランジ422と、ナット424と、ナット426と、を備えて構成されている。ここでの、外側ブスバー308は、既にくさびで固定されている。
図12で示す絶縁材部400は、フランジ422と、ナット424と、ナット426とを更に備えることで、第3実施形態の
図8に示す絶縁材部400と相違する。以下に相違する部分を説明する。
【0071】
第1絶縁材部402は、円柱状の形状部418と、ネジ穴が設けられていない円盤部420とを有して構成されている。フランジ422は、円盤状の形状であり、第1絶縁材部402における円柱状の形状部418を貫通する穴部を有している。
【0072】
また、外側ブスバー308と内側ブスバーと310の接合部がナット424とナット426とを備えて構成されている。すなわち、ここでの接合部はダブルナットである。また、外側ブスバー308に、ナット424、426用のネジ山が切られている。
【0073】
図13は、
図12に示す構成部品を組み立てた状態の断面模式図であり、
図13に基づき
図12に示す構成部品を組み立てた状態の絶縁材部400を説明する。この
図13に示すように、構成部品を組み立てる際に、外側ブスバー308と内側ブスバー306とがナット424、426でねじ止めされる。続いて、フランジ422の穴部に、円柱状の形状部418を貫通させた状態でフランジ422がネジ止めさる。これにより、第1絶縁材部402の円盤部420が、収納壁206とフランジ422とで押圧され、第1絶縁材部402が収納壁206に固定される。
【0074】
(作用)
フランジ422のネジを緩めた状態において、第1絶縁材部402を回転可能に支持できる。これにより、外側ブスバー308と内側ブスバー306とをナット424、426でねじ止めする際に、外側ブスバー308の回転に制限を受けない。このため、外側ブスバー308と内側ブスバー306との間に回転歪みが生じることが抑制される。
【0075】
外側ブスバー308と内側ブスバー310との接合部にダブルナット424、426を用いることとした。これにより、外側ブスバーのネジきりにより、この接合部が構成される。
【0076】
(効果)
第6実施形態に係る燃料電池モジュール1は、第1絶縁材部402を遊動フランジとすることとした。これにより、外側ブスバー308と内側ブスバー306とをねじ止めする際に、外側ブスバーの塑性変形を行わなくとも、外側ブスバー308を回転させることが可能である。このため、外部ブスバーと内部ブスバーとの接合時における回転歪みが低減される。
【0077】
また、外側ブスバー308と内側ブスバー310との接合部にダブルナット424、426を用いることとした。これにより、外側ブスバーのネジきりにより、この接合部を構成できる。このため、外側ブスバー308にメネジを切るよりも安いコストで外側ブスバー308と内側ブスバー310とを接合できる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。