特許第6873831号(P6873831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873831医用画像診断装置、医用画像処理装置及び医用画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873831
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】医用画像診断装置、医用画像処理装置及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   A61B6/03 370F
   A61B6/03 360Q
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-112786(P2017-112786)
(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-202009(P2018-202009A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】木本 達也
(72)【発明者】
【氏名】池田 佳弘
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−048782(JP,A)
【文献】 特開平05−232608(JP,A)
【文献】 特開2016−198501(JP,A)
【文献】 特開2017−074123(JP,A)
【文献】 特開2012−061307(JP,A)
【文献】 特開2000−293664(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0250974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影画像である第1の画像とサブトラクション画像である第2の画像とを取得する取得部と、
前記第1の画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第1のノイズレベルと、前記第2の画像の取得に用いられた非造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第2のノイズレベルとに基づいて決定された係数を用いて、前記第1の画像と前記第2の画像とを合成した合成画像を生成する生成部と、
生成された前記合成画像を表示部に表示させる表示制御部と
を備える、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記係数を決定する決定部を更に備える、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記第1のノイズレベルと、前記第2のノイズレベルとを含んだ関数を最小化する値を前記係数として決定する、請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記決定部は、ノイズレベルの組み合わせごとに値を対応付けて記憶する対応情報を参照して、前記第1のノイズレベルと、前記第2のノイズレベルとに対応する前記ノイズレベルの組み合わせを特定し、特定したノイズレベルの組み合わせに対応付けられた値を前記係数として決定する、請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記決定部は、更に、ノイズレベルの組み合わせを含んだ関数を最小化する値を、ノイズレベルの組み合わせごとに決定して、前記対応情報を生成する、請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記第1の画像において設定された関心領域内における造影信号成分の実測値とノイズ信号成分の実測値との比率を前記第1のノイズレベルとして算出し、前記非造影画像において設定された前記関心領域内における造影信号成分の実測値とノイズ信号成分の実測値との比率を前記第2のノイズレベルとして算出する、請求項2〜5のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記決定部は、造影剤存在下における撮像条件と、造影剤非存在下における撮像条件とに応じた推定値を記憶する推定情報を参照し、前記第1のノイズレベルと前記第2のノイズレベルとを推定する、請求項2〜5のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記第1の画像と前記第2の画像とを合成する前に、前記第1の画像及び前記第2の画像少なくともいずれか一方にノイズを低減させるフィルタを適用する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記生成部は、前記第1の画像及び前記第2の画像にノイズを低減させるフィルタを適用する場合に、前記第1の画像と前記第2の画像とで異なるフィルタを適用する、請求項8に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記合成画像における造影信号成分の強度が、前記第1の画像における造影信号成分の強度と揃うように、前記合成画像の信号値を補正する、請求項1〜9のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記第2の画像は、前記第1の画像と前記非造影画像とのサブトラクション画像である、請求項1〜10のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記第2の画像は、造影タイミングが前記第1の画像とは異なる造影画像と、前記第1の画像とのサブトラクション画像である、請求項1〜10のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
造影画像である第1の画像とサブトラクション画像である第2の画像とを取得する取得部と、
前記第1の画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第1のノイズレベルと、前記第2の画像の取得に用いられた非造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第2のノイズレベルとに基づいて決定された係数を用いて、前記第1の画像と前記第2の画像とを合成した合成画像を生成する生成部と、
生成された前記合成画像を表示部に表示させる表示制御部と
を備える、医用画像処理装置。
【請求項14】
造影画像である第1の画像とサブトラクション画像である第2の画像とを取得し、
前記第1の画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第1のノイズレベルと、前記第2の画像の取得に用いられた非造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第2のノイズレベルとに基づいて決定された係数を用いて、前記第1の画像と前記第2の画像とを合成した合成画像を生成し、
生成された前記合成画像を表示部に表示させる
処理をコンピュータに実行させる、医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置、医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断において画質は、診断を左右するほど重要なファクターである。特に、造影画像では、コントラストとノイズとの比(CNR:Contrast Noise Ratio)によって画質の良し悪しが定義される場合がある。かかる場合、CNRが大きいほど見やすい画像となる。よって、造影画像を用いた診断には、可能な限りCNRが大きい画像を用いることが望まれる。
【0003】
ここで、例えば、X線CT(Computed Tomography)装置において画像のCNRを向上させるには、被検体に照射するX線量を増加させてコントラストを高める方法がある。しかしながら、この方法では、コントラストを高めることができても、被検体への被ばく量が増えてしまう。
【0004】
また、例えば、ガウシアンフィルタやメディアンフィルタなどを用いて、スキャンされた画像に対してノイズ低減フィルタ処理することでCNRを向上させる方法もある。ノイズ低減フィルタは入力画像に対し、最適なパラメータを決定することで威力を発揮できる。しかしながら、スキャンされた画像の情報から、最適なパラメータの決定を自動化することは非常に難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-10761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、造影画像のCNR(Contrast Noise Ratio)を向上させることができる医用画像診断装置、医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用画像診断装置は、取得部と、生成部と、表示制御部とを備える。取得部は、造影画像である第1の画像とサブトラクション画像である第2の画像とを取得する。生成部は、前記第1の画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第1のノイズレベルと、前記第2の画像の取得に用いられた非造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第2のノイズレベルとに基づいて決定された係数を用いて、前記第1の画像と前記第2の画像とを合成した合成画像を生成する。表示制御部は、生成された前記合成画像を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、従来技術に係る造影画像の後処理を説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る決定機能による係数決定処理を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る処理回路による合成画像生成処理の手順を示すフローチャートである。
図5A図5Aは、第1の実施形態を説明するための図(1)である。
図5B図5Bは、第1の実施形態を説明するための図(2)である。
図6図6は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。
図7図7は、第2の実施形態を説明するための図である。
図8図8は、その他の実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る医用画像診断装置、医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムを説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、医用画像診断装置がX線CT装置である場合について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置100は、架台10と、寝台20と、コンソール30とを有する。架台10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール30に出力する装置であり、X線照射制御回路11と、X線発生装置12と、検出器13と、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)14と、回転フレーム15と、架台駆動回路16とを有する。
【0011】
回転フレーム15は、X線発生装置12と検出器13とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、後述する架台駆動回路16によって被検体Pを中心とした円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。
【0012】
X線照射制御回路11は、高電圧発生部として、X線管12aに高電圧を供給する装置であり、X線管12aは、X線照射制御回路11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。X線照射制御回路11は、後述するスキャン制御回路33の制御により、X線管12aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。
【0013】
また、X線照射制御回路11は、ウェッジ12bの切り替えを行う。また、X線照射制御回路11は、コリメータ12cの開口度を調整することにより、X線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整する。なお、本実施形態は、複数種類のウェッジ12bを、操作者が手動で切り替える場合であっても良い。
【0014】
X線発生装置12は、X線を発生し、発生したX線を被検体Pへ照射する装置であり、X線管12aと、ウェッジ12bと、コリメータ12cとを有する。
【0015】
X線管12aは、X線照射制御回路11による制御のもと供給される高電圧により被検体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム15の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。X線管12aは、ファン角及びコーン角を持って広がるX線ビームを発生する。例えば、X線照射制御回路11の制御により、X線管12aは、フル再構成用に被検体Pの全周囲でX線を連続曝射したり、ハーフ再構成用にハーフ再構成可能な曝射範囲(180度+ファン角)でX線を連続曝射したりすることが可能である。また、X線照射制御回路11の制御により、X線管12aは、予め設定された位置(管球位置)でX線(パルスX線)を間欠曝射したりすることが可能である。また、X線照射制御回路11は、X線管12aから曝射されるX線の強度を変調させることも可能である。例えば、X線照射制御回路11は、特定の管球位置では、X線管12aから曝射されるX線の強度を強くし、特定の管球位置以外の範囲では、X線管12aから曝射されるX線の強度を弱くする。
【0016】
ウェッジ12bは、X線管12aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ12bは、X線管12aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管12aから曝射されたX線を透過して減衰させるフィルタである。例えば、ウェッジ12bは、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジ12bは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0017】
コリメータ12cは、X線照射制御回路11の制御により、ウェッジ12bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。
【0018】
架台駆動回路16は、回転フレーム15を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線発生装置12と検出器13とを旋回させる。
【0019】
検出器13は、被検体Pを透過したX線を検出する2次元アレイ型検出器(面検出器)であり、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列がZ軸方向に沿って複数列配列されている。具体的には、検出器13は、Z軸方向に沿って320列など多列に配列されたX線検出素子を有し、例えば、被検体Pの肺や心臓を含む範囲など、広範囲に被検体Pを透過したX線を検出することが可能である。なお、Z軸は架台10が非チルト時の状態における回転フレーム15の回転中心軸方向を示す。
【0020】
データ収集回路14は、DASであり、検出器13が検出したX線の検出データから、投影データを収集する。例えば、データ収集回路14は、検出器13により検出されたX線強度分布データに対して、増幅処理やA/D変換処理、チャンネル間の感度補正処理等を行なって投影データを生成し、生成した投影データを後述するコンソール30に送信する。例えば、回転フレーム15の回転中に、X線管12aからX線が連続曝射されている場合、データ収集回路14は、全周囲分(360度分)の投影データ群を収集する。また、データ収集回路14は、収集した各投影データに管球位置を対応付けて、後述するコンソール30に送信する。管球位置は、投影データの投影方向を示す情報となる。なお、チャンネル間の感度補正処理は、後述する前処理回路34が行なっても良い。
【0021】
寝台20は、被検体Pを載せる装置であり、図1に示すように、寝台駆動装置21と、天板22とを有する。寝台駆動装置21は、天板22をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム15内に移動させる。天板22は、被検体Pが載置される板である。なお、本実施形態では、架台10と天板22との相対位置の変化が天板22を制御することによって実現されるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、架台10が自走式である場合、架台10の走行を制御することによって架台10と天板22との相対位置の変化が実現されてもよい。
【0022】
なお、架台10は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム15を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム15を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行うステップアンドシュート方式を実行する。
【0023】
コンソール30は、操作者によるX線CT装置100の操作を受け付けるとともに、架台10によって収集された投影データを用いてCT画像データを再構成する装置である。コンソール30は、図1に示すように、入力インターフェース31と、ディスプレイ32と、スキャン制御回路33と、前処理回路34と、記憶回路35と、画像再構成回路36と、処理回路37とを有する。
【0024】
入力インターフェース31は、X線CT装置100の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、処理回路37に転送する。例えば、入力インターフェース31は、操作者から、CT画像データの撮影条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像データに対する画像処理条件等を受け付ける。また、入力インターフェース31は、被検体Pに対する検査を選択するための操作を受け付ける。また、入力インターフェース31は、画像上の部位を指定するための指定操作を受け付ける。
【0025】
ディスプレイ32は、操作者によって参照されるモニタであり、処理回路37による制御のもと、CT画像データから生成された画像データを操作者に表示したり、入力インターフェース31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。また、ディスプレイ32は、スキャン計画の計画画面や、スキャン中の画面などを表示する。
【0026】
スキャン制御回路33は、処理回路37による制御のもと、X線照射制御回路11、架台駆動回路16、データ収集回路14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台10における投影データの収集処理を制御する。具体的には、スキャン制御回路33は、位置決め画像(スキャノ画像)を収集する撮影及び診断に用いる画像を収集する本撮影(スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。
【0027】
前処理回路34は、データ収集回路14によって生成された投影データに対して、対数変換処理と、オフセット補正、感度補正及びビームハードニング補正等の補正処理とを行なって、補正済みの投影データを生成する。具体的には、前処理回路34は、データ収集回路14によって生成された位置決め画像の投影データ及び本撮影によって収集された投影データのそれぞれについて、補正済みの投影データを生成して、記憶回路35に格納する。
【0028】
記憶回路35は、前処理回路34により生成された投影データを記憶する。具体的には、記憶回路35は、前処理回路34によって生成された、位置決め画像の投影データ及び本撮影によって収集される診断用の投影データを記憶する。また、記憶回路35は、後述する画像再構成回路36によって再構成されたCT画像データなどを記憶する。また、記憶回路35は、後述する処理回路37による処理結果を適宜記憶する。
【0029】
画像再構成回路36は、記憶回路35が記憶する投影データを用いてCT画像データを再構成する。具体的には、画像再構成回路36は、位置決め画像の投影データ及び診断に用いられる画像の投影データから、CT画像データをそれぞれ再構成する。ここで、再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。或いは、画像再構成回路36は、逐次近似法を用いてCT画像データを再構成することもできる。
【0030】
また、画像再構成回路36は、CT画像データに対して各種画像処理を行うことで、画像データを生成する。そして、画像再構成回路36は、再構成したCT画像データや、各種画像処理により生成した画像データを記憶回路35に格納する。
【0031】
処理回路37は、架台10、寝台20及びコンソール30の動作を制御することによって、X線CT装置100の全体制御を行う。具体的には、処理回路37は、スキャン制御回路33を制御することで、架台10で行なわれるCTスキャンを制御する。また、処理回路37は、画像再構成回路36を制御することで、コンソール30における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、処理回路37は、記憶回路35が記憶する各種画像データを、ディスプレイ32に表示するように制御する。
【0032】
また、処理回路37は、図1に示すように、取得機能37aと、決定機能37bと、生成機能37cと、表示制御機能37dとを実行する。ここで、例えば、図1に示す処理回路37の構成要素である取得機能37aと、決定機能37bと、生成機能37cと、表示制御機能37dとが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路35に記録されている。処理回路37は、各プログラムを記憶回路35から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路37は、図1の処理回路37内に示された各機能を有することとなる。なお、取得機能37a、決定機能37b、生成機能37c及び表示制御機能37dの詳細については後述する。
【0033】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置100の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線CT装置100は、造影画像を用いた診断に利用される場合がある。このような場合、従来技術に係るX線CT装置では、以下に示す造影画像の後処理を実行する場合がある。ここでは、従来技術に係る造影画像を用いた診断の一例について説明する。図2は、従来技術に係る造影画像の後処理を説明するための図である。なお、図2では、関心領域(ROI:Region of Interest)として肝臓全体が設定された場合を示す。
【0034】
例えば、従来技術に係るX線CT装置は、造影剤非存在下で被検体の肝臓を撮影することによって、非造影画像2aを生成し、造影剤存在下で被検体の肝臓を撮影することによって、造影画像2bを生成する。例えば、図2に示す例では、非造影画像2aでは肝臓の組織が描出され、造影画像2bでは肝臓の組織及び血管が描出されている。また、従来技術に係るX線CT装置は、非造影画像2aと造影画像2bとをサブトラクションすることにより、造影された部位が抽出されたサブトラクション画像2cを生成する。例えば、図2に示す例では、サブトラクション画像2cでは肝臓の血管が描出されている。
【0035】
ところで、造影画像2b上において造影された部分だけを強調することにより、医師や技師等の利用者にとって「造影成分」を観察しやすくなることに加えて、「周囲の組織」も同時に観察することが可能になる。これにより、利用者は、造影成分を周囲の組織を参照しながら診断することが可能になる。このように、造影画像2bにおいて造影成分を強調する場合、例えば、従来技術に係るX線CT装置は、造影画像2bとサブトラクション画像2cとを合成した合成画像2dを生成する。
【0036】
ここで、各画像における信号成分に含まれる造影信号成分の強度をコントラストと定義する。そして、非造影画像2aにおけるコントラストを0とし、造影画像2bにおけるコントラストを1とした場合、サブトラクション画像2cにおけるコントラストは1となる。また、造影画像2bとサブトラクション画像2cとを合成した合成画像2dにおけるコントラストは2(=1+1)となる。このように、合成画像2dにおけるコントラストは、造影画像2bのコントラストよりも強調される。
【0037】
しかしながら、従来の技術では、造影画像2bとサブトラクション画像2cとを単純に合成すると、造影画像2bに含まれるノイズレベルやサブトラクション画像2cに含まれるノイズレベルよりも、合成画像2dのノイズレベルが増加してしまう。ここで言う「ノイズレベル」とは、各画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分を示す。言い換えると、ノイズレベルとは、画像内のある位置における信号成分の強度のうち、ノイズ信号成分の比率を示す。すなわち、ノイズレベルとは、ある位置における、CT値の強度と、ノイズの強度との比率であり、CT値の標準偏差(SD:Standard Deviation)を示す。
【0038】
より具体的には、非造影画像2aにおけるノイズレベルをAとし、造影画像2bにおけるノイズレベルをBとした場合、サブトラクション画像2cにおけるノイズレベルは、非造影画像2aにおけるノイズレベルを2乗した値と、造影画像2bにおけるノイズレベルを2乗した値との和の平方根で表される。すなわち、サブトラクション画像2cにおけるノイズレベルは、以下の式(1)で表される。
【0039】
【数1】
【0040】
また、造影画像2bとサブトラクション画像2cとを合成した合成画像2dにおけるノイズレベルは、造影画像2bにおけるノイズレベルを2乗した値と、サブトラクション画像2cにおけるノイズレベルを2乗した値との和の平方根で表される。すなわち、合成画像2dにおけるノイズレベルは、以下の式(2)で表される。なお、説明の便宜上、図2に示す例ではノイズ低減フィルタの適用を省略しているが、造影画像2bとサブトラクション画像2cとを合成する前に、造影画像2b及びサブトラクション画像2cにはノイズ低減フィルタを適用してもよい。造影画像2b及びサブトラクション画像2cにノイズ低減フィルタを適用する場合、合成画像2dにおけるノイズレベルは、造影画像2bにおけるノイズレベルにノイズ低減フィルタのノイズ低減率を乗算して2乗した値と、サブトラクション画像2cにおけるノイズレベルにノイズ低減フィルタのノイズ低減率を乗算して2乗した値との和の平方根で表される。
【0041】
【数2】
【0042】
このように、従来の技術では、合成画像2dにおいて造影成分のコントラストが増強される一方、ノイズレベルも増強されてしまう。かかる場合、合成画像2dにおいて、コントラストとノイズレベルの比であるCNR(Contrast Noise Ratio)を向上されることが困難である。言い換えると、従来の技術では、後処理することにより造影画像のCNRを向上させることが困難であった。このようなことから、第1の実施形態に係るX線CT装置100では、取得機能37a、決定機能37b、生成機能37c及び表示制御機能37dを有した処理回路37が、以下に説明する合成画像生成処理を実行することにより、造影画像のCNRを向上させる。
【0043】
例えば、処理回路37は、造影画像2bにおける信号成分に含まれるノイズ信号成分である第1のノイズレベルと、サブトラクション画像2cの取得に用いられた非造影画像2aにおける信号成分に含まれるノイズ信号成分である第2のノイズレベルとに基づいて決定された係数を用いて、造影画像2bとサブトラクション画像2cとを合成した合成画像を生成する。
【0044】
以下では、第1の実施形態に係る処理回路37により実行される合成画像生成処理について説明する。まず、図3を用いて、非造影画像と造影画像を取得してから合成画像を生成するまでの過程におけるコントラスト及びノイズレベルの変動について説明することで、決定機能37bによる係数決定処理について説明する。図3は、第1の実施形態に係る決定機能37bによる係数決定処理を説明するための図である。
【0045】
図3では、各画像における信号成分に含まれる造影信号成分の強度をコントラストと定義し、「Contrast」と記す。ここで、各画像における信号成分の強度は、例えば、CT値で表される。また、図3では、各画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分をノイズレベルと定義し、「Noise」と記す。ここで、ノイズレベルは、上述したように、CT値のSDで表される。
【0046】
図3では、非造影画像のコントラストが0であり、造影画像のコントラストが1である場合を一例に示す。また、図3では、非造影画像のノイズレベルがAであり、造影画像のノイズレベルがBである場合を一例に示す。例えば、図3に示すように、サブトラクション画像のコントラストは、1(=1−0)である。また、非造影画像のノイズレベルがAであり、造影画像のノイズレベルがBであることにより、サブトラクション画像のノイズレベルは、上記した式(1)で表される。
【0047】
また、図3に示す例では、造影画像とサブトラクション画像とを合成する前に、造影画像とサブトラクション画像とにノイズ低減フィルタが適用される場合について説明する。例えば、図3に示すように、サブトラクション画像には、ノイズ低減率X(ここで、0<X<1)のノイズ低減フィルタが適用される。この結果、ノイズレベルが低減したサブトラクション画像(図3中の「Denoised Sub」)が得られる。ノイズ低減フィルタを適用後のサブトラクション画像のノイズレベルは、以下の式(3)で表される。なお、ノイズ低減フィルタを適用後のサブトラクション画像のコントラストは変わらず1である。
【0048】
【数3】
【0049】
また、例えば、図3に示すように、造影画像には、ノイズ低減率Y(ここで、0<Y<1)のノイズ低減フィルタが適用される。この結果、ノイズレベルが低減した造影画像(図3中の「Denoised CE」)が得られる。ノイズ低減フィルタを適用後の造影画像のノイズレベルは、YBで表される。なお、ノイズ低減フィルタを適用後の造影画像のコントラストは変わらず1である。
【0050】
そして、ノイズ低減フィルタを適用後の造影画像とノイズ低減フィルタを適用後のサブトラクション画像とを合成して合成画像が得られる。ここで、図3に示す例では、サブトラクション画像に係数rを乗じて、造影画像と合成する。これにより得られる合成画像のコントラストは、例えば、図3に示すように、1+rである。また、合成画像におけるノイズレベルは、造影画像におけるノイズレベルにノイズ低減フィルタのノイズ低減率Yを乗算して2乗した値と、サブトラクション画像におけるノイズレベルにノイズ低減フィルタのノイズ低減率Xを乗算して2乗した値との和の平方根で表される。すなわち、合成画像のノイズレベルは、例えば、以下の式(4)で表される。
【0051】
【数4】
【0052】
ところで、生成された合成画像では、造影画像に比べてコントラストが上がるが、合成画像のコントラストは、CT値の概念で表現される値ではない。このようなことから、合成画像の信号値をCT値の概念で表現される値とするために、合成画像を規格化する。より具体的には、合成画像の信号値を、合成画像のコントラストである(1+r)で割って、合成画像の信号値を造影画像の信号値に戻す。この結果、規格化後の合成画像のコントラストが1になる。また、規格化後の合成画像のノイズレベルをf(r)とした場合、f(r)は、造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第1のノイズレベルと、サブトラクション画像の取得に用いられた非造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第2のノイズレベルとを含んだ関数であり、以下の式(5)で表される。
【0053】
【数5】
【0054】
決定機能37bは、式(5)で表される関数f(r)が最小となるrを求める。例えば、決定機能37bは、f(r)を微分した以下の式(6)が0となるrを求める。
【0055】
【数6】
【0056】
続いて、図4を用いて、合成画像生成処理の手順について説明する。図4は、第1の実施形態に係る処理回路37による合成画像生成処理の手順を示すフローチャートである。図4では、X線CT装置100の処理回路37が実行する動作を説明するフローチャートを示し、各構成要素がフローチャートのどのステップに対応するかを説明する。
【0057】
ステップS1及びステップS2は、取得機能37aに対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から取得機能37aに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、取得機能37aが実現されるステップである。ステップS1では、取得機能37aは、非造影画像と造影画像とを取得する。例えば、取得機能37aは、リアルタイムに生成された非造影画像と造影画像とを取得する。或いは、取得機能37aは、自装置に記憶されている非造影画像と造影画像とを取得してもよい。
【0058】
そして、ステップS2では、取得機能37aは、ステップS1で取得した、非造影画像と造影画像とを用いてサブトラクション画像を生成する。例えば、取得機能37aは、非造影画像と造影画像とを非線形位置合わせをしてからサブトラクション画像を生成する。なお、第1の実施形態では、造影画像のことを「第1の画像」と称し、サブトラクション画像のことを「第2の画像」と称する場合がある。言い換えると、第2の画像は、第1の画像と非造影画像とのサブトラクション画像である。
【0059】
ステップS3からステップS5は、決定機能37bに対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から決定機能37bに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、決定機能37bが実現されるステップである。ステップS3では、決定機能37bは、ROIの設定を受け付ける。例えば、決定機能37bは、入力インターフェース31を介して、造影画像においてROIの設定を利用者から受け付ける。一例をあげると、利用者は、肝臓を撮影した造影画像である場合、血管が描出された造影領域や造影成分が流れ込むことが予想される腫瘍領域にROIを設定する。このようにして造影領域や腫瘍領域にROIを設定することにより、後述のステップS4以降の処理が実行されることで、ROI内のコントラストを増強した合成画像が生成されることになる。なお、利用者は、造影画像全体にROIを設定してもよいし、造影画像の一部の領域にROIを設定してもよい。また、利用者は、造影画像の一部の領域にROIを設定する場合、複数個所にROIを設定してもよい。
【0060】
そして、ステップS4では、決定機能37bは、ノイズレベルを算出する。ここで、例えば、決定機能37bは、ステップS3で設定されたROI内のノイズレベルを算出する。すなわち、決定機能37bは、例えば、第1の画像において設定された関心領域内における造影信号成分の実測値とノイズ信号成分の実測値との比率を第1のノイズレベルとして算出し、非造影画像において設定された関心領域内における造影信号成分の実測値とノイズ信号成分の実測値との比率を第2のノイズレベルとして算出する。
【0061】
ステップS5では、決定機能37bは、係数を決定する。例えば、決定機能37bは、第1のノイズレベルと、第2のノイズレベルとを含んだ関数を最小化する値を係数として決定する。なお、以下では、決定機能37bにより決定された係数をrとして説明する。
【0062】
ステップS6からステップS8は、生成機能37cに対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から生成機能37cに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、生成機能37cが実現されるステップである。ステップS6では、生成機能37cは、サブトラクション画像にノイズ低減フィルタを適用する。例えば、生成機能37cは、ノイズ低減率が0より大きく1より小さい値を有するノイズ低減フィルタをサブトラクション画像に適用する。また、ステップS7では、生成機能37cは、造影画像にノイズ低減フィルタを適用する。例えば、生成機能37cは、ノイズ低減率が0より大きく1より小さい値を有するノイズ低減フィルタを造影画像に適用する。なお、生成機能37cは、ステップS6とステップS7とを並列に処理してもよく、ステップS6とステップS7との順序を入れ替えて処理してもよい。
【0063】
ここで、生成機能37cは、造影画像とサブトラクション画像とを合成する前に、造影画像とサブトラクション画像とにノイズ低減フィルタを適用する場合、造影画像に適用するノイズ低減フィルタと、サブトラクション画像に適用するノイズ低減フィルタとで異なるノイズ低減フィルタを適用してもよい。言い換えると、生成機能37cは、造影画像とサブトラクション画像とを合成する前に、造影画像及びサブトラクション画像にノイズを低減させるフィルタを適用する場合に、造影画像とサブトラクション画像とで異なるフィルタを適用する。或いは、造影画像とサブトラクション画像とにノイズ低減フィルタを適用する場合、造影画像に適用するノイズ低減フィルタと、サブトラクション画像に適用するノイズ低減フィルタとで同じノイズ低減フィルタを適用してもよい。言い換えると、生成機能37cは、造影画像及びサブトラクション画像にノイズを低減させるフィルタを適用する場合に、造影画像とサブトラクション画像とで同じノイズ低減フィルタを適用する。
【0064】
ステップS8では、生成機能37cは、係数を用いて造影画像とサブトラクション画像とを合成して合成画像を生成する。例えば、生成機能37cは、造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第1のノイズレベルと、サブトラクション画像の取得に用いられた非造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第2のノイズレベルとに基づいて決定された係数を用いて、造影画像とサブトラクション画像とを合成した合成画像を生成する。より具体的には、生成機能37cは、サブトラクション画像の信号値を、ステップS5で決定した係数倍し、造影画像に足しこむ。
【0065】
ステップS9及びステップS10は、表示制御機能37dに対応するステップである。処理回路37が記憶回路35から表示制御機能37dに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、表示制御機能37dが実現されるステップである。ステップS8において、生成機能37cにより生成された合成画像では、造影画像に比べてコントラストが上がるが、合成画像のコントラストは、CT値の概念で表現される値ではない。このようなことから、ステップS9では、表示制御機能37dは、合成画像の信号値をCT値の概念で表現される値とするために、合成画像を規格化する。例えば、表示制御機能37dは、合成画像における造影信号成分の強度が、造影画像における造影信号成分の強度と揃うように、合成画像の信号値を補正する。より具体的には、ステップS5で決定された係数がrである場合、表示制御機能37dは、合成画像の信号値を(1+r)で割って、合成画像の信号値を造影画像の信号値に戻す。
【0066】
ステップS10では、表示制御機能37dは、生成された合成画像をディスプレイ32に表示させる。図5A及び図5Bは、第1の実施形態を説明するための図である。図5Aは、ステップS1で取得機能37aにより取得された造影画像を示し、図5Bは、ステップS8で生成機能37cにより生成された合成画像を示す。
【0067】
図5Aでは、血管が描出された造影領域にROI51が設定された場合を示す。また、図5Aでは、説明の便宜上、組織領域52も図示している。ここで、ROI51の信号値は、造影領域の信号成分を示し、組織領域52の信号値は非造影領域の信号成分を示す。かかる場合、造影領域の信号値と非造影領域の信号値とのSDの比率は、例えば、8.0である。
【0068】
図5Bでは、血管が描出された造影領域にROI53が設定された場合を示す。このROI53は、図5Aに示すROI51に対応する位置に設定される。また、図5Bでは、説明の便宜上、組織領域54も図示している。ここで、ROI53の信号値は、造影領域の信号成分を示し、組織領域54の信号値は非造影領域の信号成分を示す。かかる場合、造影領域の信号値と非造影領域の信号値とのSDの比率は、例えば、14.4である。このように、図5Bでは、図5Aと比較して、造影領域の信号成分が増強される一方、非造影領域の信号成分が抑制される。また、図5Bに示すように、組織領域54よりROI53の信号値が上がる結果、図5Aと比較して、血液が流入している腫瘍領域55の信号が強調される。
【0069】
上述したように、第1の実施形態では、造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第1のノイズレベルと、サブトラクション画像の取得に用いられた非造影画像における信号成分に含まれるノイズ信号成分である第2のノイズレベルとに基づいて決定された係数を用いて、造影画像とサブトラクション画像とを合成した合成画像を生成する。これにより、第1の実施形態によれば、造影画像のCNRを向上させることができる。
【0070】
また、従来の技術では、画像情報から自動でフィルタのパラメータを最適化することは困難であった。一方、上述した第1の実施形態では、造影画像ごとにフィルタを最適化することを回避できる。これにより、第1の実施形態によれば、後処理することにより、簡易に造影画像のCNRを向上させることができる。
【0071】
(第1の実施形態の変形例)
また、上述した第1の実施形態では、決定機能37bは、設定されたROI内のノイズレベルを算出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、決定機能37bは、スキャン条件からノイズレベルを算出するようにしてもよい。より具体的には、同一の被検体を撮影する場合に、同じスキャン条件であるなら、ノイズレベルは同じになる。この一方で、同一の被検体を撮影する場合でも、スキャン条件が異なる場合、ノイズレベルも異なる。例えば、非造影画像の撮影時と、造影画像の撮影時とでは、スキャン条件が異なる場合がある。このように、非造影画像の撮影時と、造影画像の撮影時とでは、スキャン条件が異なる場合には、非造影画像のノイズレベルと造影画像のノイズレベルとが異なる。
【0072】
より具体的には、非造影画像の撮影時は、被検体の広範囲を撮影する場合があるので、通常、撮影時間が長くなる。このため、非造影画像の撮影時では、被検体への被曝量を低減するために、管電流を下げたスキャン条件が設定される場合がある。一方、造影画像の撮影時は、造影される領域に注目して撮影することになるので、通常、撮影時間は短くなる。また、造影される領域のコントラストを上げるために、管電流を上げたスキャン条件が設定される場合がある。このため、非造影画像の撮影時と、造影画像の撮影時とでは、管電流のみが異なるスキャン条件が設定される場合がある。言い換えると、管電流の値さえ決まれば、非造影画像のノイズレベルと造影画像のノイズレベルとの比が決まる。
【0073】
このようなことから、管電流以外のスキャン条件が同じである条件下で、管電流を変化させた場合のノイズレベルを測定して、管電流ごとのノイズレベルを対応付けた推定情報を事前に作成しておく。なお、かかる場合、推定情報は、例えば、記憶回路35に格納される。そして、決定機能37bは、非造影画像の撮影時と、造影画像の撮影時とにおいて、管電流以外のスキャン条件が同じである場合には、推定情報を参照して、スキャン条件に応じたノイズレベルを推定する。言い換えると、決定機能37bは、造影剤存在下における撮像条件と、造影剤非存在下における撮像条件とに応じた推定値を記憶する推定情報を参照し、第1のノイズレベルと第2のノイズレベルとを推定する。
【0074】
図6は、第1の実施形態の変形例を説明するための図である。図6では、推定情報の一例を示す。図6に示すように、推定情報は、「管電流」と「ノイズレベル」とを対応付けた情報を記憶する。図6に示す「管電流」は、スキャン条件において設定された管電流値を示す。例えば、「管電流」には、「α1」や「α2」等の値が格納される。また、図6に示す「ノイズレベル」は、スキャン条件として設定された管電流値に応じたノイズレベルを示す。例えば、「ノイズレベル」には、「β1」や「β2」等の値が格納される。一例をあげると、図6に示す推定情報は、管電流値がα1である場合のノイズレベルがβ1であり、管電流値がα2である場合のノイズレベルがβ2であることを示す。
【0075】
例えば、決定機能37bは、非造影画像の撮影時と造影画像の撮影時とにおいて、管電流以外のスキャン条件が同じである場合に、非造影画像の撮影時の管電流値がα1である場合には、非造影画像のノイズレベルがβ1であると推定する。また、かかる場合、決定機能37bは、造影画像の撮影時の管電流値がα2である場合には、造影画像のノイズレベルがβ2であると推定する。これにより、決定機能37bは、非造影画像と造影画像とのノイズレベルの比がβ1/β2であると算出する。
【0076】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、リアルタイムに係数を算出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ノイズレベルに応じた係数を事前に設定しておき、造影画像及び非造影画像のノイズレベルに応じた係数を選択するようにしてもよい。そこで、第2の実施形態では、ノイズレベルに応じた係数を対応情報として事前に設定しておき、対応情報を参照して係数を決定する場合について説明する。
【0077】
なお、第2の実施形態に係るX線CT装置の構成は、記憶回路35が対応情報を更に記憶する点と、決定機能37bが異なる機能を実行する点とを除いて、図1に示す第1の実施形態に係るX線CT装置100の構成と同様である。このため、第2の実施形態では、記憶回路35が記憶する対応情報と、決定機能37bが実行する機能についてのみ説明する。
【0078】
図7は、第2の実施形態を説明するための図である。図7では、対応情報の一例を示す。図7に示すように、対応情報は、「第1のノイズレベル」と、「第2のノイズレベル」と、「値」とを対応付けた情報を記憶する。図7に示す「第1のノイズレベル」は、画像のノイズレベルを示す。例えば、「第1のノイズレベル」には、「β1」や「β2」等の値が格納される。同様に、図7に示す「第2のノイズレベル」は、画像のノイズレベルを示す。例えば、「第2のノイズレベル」には、「β2」や「β3」等の値が格納される。
【0079】
また、例えば、「値」には、対応する第1のノイズレベル及び第2のノイズレベルの組み合わせを含んだ関数を最小化する値を示す。なお、対応情報における「値」は、例えば、決定機能37bにより、上記式(6)が0となる値として事前に決定される。言い換えると、第2の実施形態に係る決定機能37bは、第1のノイズレベル及び第2のノイズレベルの組み合わせを含んだ関数を最小化する値を、第1のノイズレベル及び第2のノイズレベルの組み合わせごとに決定して、対応情報を生成する。
【0080】
一例をあげると、図7に示す対応情報は、ノイズレベルの組み合わせがβ1とβ2である場合の値がr12であり、ノイズレベルの組み合わせがβ1とβ3である場合の値がr13であり、ノイズレベルの組み合わせがβ2とβ3である場合の値がr23であることを示す。
【0081】
決定機能37bは、ノイズレベルの組み合わせごとに値を対応付けて記憶する対応情報を参照して、第1のノイズレベルと、第2のノイズレベルとに対応するノイズレベルの組み合わせを特定し、特定したノイズレベルの組み合わせに対応付けられた値を係数として決定する。例えば、決定機能37bは、非造影画像のノイズレベルがβ1であり、造影画像のノイズレベルがβ2である場合、係数がr12であると決定する。
【0082】
上述したように第2の実施形態では、ノイズレベルに応じた係数を対応情報として事前に設定しておき、対応情報を参照して係数を決定するので、係数を決定する処理を簡略化できる。この結果、第2の実施形態によれば、造影画像のCNRを向上させる処理を高速化することが可能である。
【0083】
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
【0084】
上述した実施形態では、取得機能37aは、非造影画像と造影画像とを自装置から取得して、サブトラクション画像を生成するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、取得機能37aは、自装置或いは他装置において既に生成されたサブトラクション画像を取得するようにしてもよい。
【0085】
また、上述した実施形態では、造影画像とサブトラクション画像とを合成する前に、造影画像とサブトラクション画像とにノイズ低減フィルタを適用する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、造影画像とサブトラクション画像のいずれか一方にだけノイズ低減フィルタを適用してもよい。言い換えると、生成機能37cは、第1の画像と第2の画像とを合成する前に、第1の画像及び第2の画像少なくともいずれか一方にノイズを低減させるフィルタを適用する。或いは、造影画像とサブトラクション画像とを合成する前に、造影画像及びサブトラクション画像にノイズ低減フィルタを適用しなくてもよい。
【0086】
上述した実施形態では、第2の画像は、造影画像である第1の画像と非造影画像とのサブトラクション画像であるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第2の画像は、造影画像である第1の画像と、造影タイミングが第1の画像とは異なる造影画像とのサブトラクション画像であってもよい。
【0087】
また、上述した実施形態では、X線CT装置において、合成画像生成処理を実行する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線CT以外のX線診断装置、超音波診断装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医用画像診断装置において、上述した合成画像生成処理が実行されてもよい。
【0088】
また、上述した実施形態では、合成画像における造影成分信号を本来のCT値に戻すために、合成画像を規格化するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、合成画像を規格化しなくてもよい。更に、規格化は、CT値は物質の種類によって定まるために、合成像中の造影信号成分が合成比率によって変化してしまう事態を避け、オリジナルの造影像の造影信号成分と同じに揃えることを目的とする。このため、撮像状態によって輝度値が都度変化するMRI装置や超音波診断装置では規格化は必須ではない。
【0089】
更に、上述した実施形態では、医用画像診断装置において合成画像生成処理を実行することにより、造影画像のCNRを向上させる場合について説明した。しかしながら、このような合成画像生成処理は、造影画像を生成した医用画像診断装置において実行されることに限定されるものではない。例えば、合成画像生成処理は、医用画像診断装置から造影画像を取得した医用画像処理装置において実行されてもよい。そこで、その他の実施形態として、医用画像処理装置において合成画像生成処理を実行することにより、造影画像のCNRを向上させる場合について説明する。
【0090】
図8は、その他の実施形態に係る医用画像処理装置300の構成例を示すブロック図である。例えば、その他の実施形態に係る医用画像処理装置300は、X線CT装置100と互いに通信可能に接続される。なお、X線CT装置100は、第1の実施形態或いは第2の実施形態で説明した合成画像生成処理を実行可能であってもよいし、合成画像生成処理を実行可能でなくてもよい。
【0091】
また、例えば、図8に示すように、その他の実施形態に係る医用画像処理装置300は、通信インターフェース310と、記憶回路320と、入力インターフェース330と、ディスプレイ340と、処理回路350とを有する。
【0092】
通信インターフェース310は、処理回路350に接続され、ネットワークを介して接続された各種の医用画像診断装置等の他装置との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース310は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。図8では、通信インターフェース310は、X線CT装置100からCT画像データを受信し、受信したCT画像データを処理回路350に出力する場合について説明する。
【0093】
記憶回路320は、処理回路350に接続され、各種データを記憶する。例えば、記憶回路320は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。本実施形態では、記憶回路320は、X線CT装置100から受信したCT画像データを記憶する。また、記憶回路320は、処理回路350による処理結果を記憶する。
【0094】
入力インターフェース330は、処理回路350に接続され、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路350に出力する。例えば、入力インターフェース330は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0095】
ディスプレイ340は、処理回路350に接続され、処理回路350から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。例えば、ディスプレイ340は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0096】
処理回路350は、入力インターフェース330を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用画像処理装置300が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路350は、プロセッサによって実現される。処理回路350は、通信インターフェース310から出力されるCT画像データを記憶回路320に記憶させる。また、処理回路350は、記憶回路320からCT画像データを読み出し、ディスプレイ340に表示する。
【0097】
また、処理回路350は、図8に示すように、取得機能351と、決定機能352と、生成機能353と、表示制御機能354とを実行する。ここで、例えば、図8に示す処理回路350の構成要素である取得機能351と、決定機能352と、生成機能353と、表示制御機能354とが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路320に記録されている。処理回路350は、各プログラムを記憶回路320から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路350は、図8の処理回路350内に示された各機能を有することとなる。
【0098】
このような構成のもと、医用画像処理装置300は、第1の実施形態或いは第2の実施形態に係る処理回路37と同様の合成画像生成処理を実行する。例えば、取得機能351は、上述した取得機能37aと同様の処理を実行する。決定機能352は、上述した決定機能37bと同様の処理を実行する。生成機能353は、上述した生成機能37cと同様の処理を実行する。表示制御機能354は、上述した表示制御機能37dと同様の処理を実行する。
【0099】
なお、図8では、医用画像処理装置300には、X線CT装置100が接続される場合を示しているが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、医用画像処理装置300には、X線CT以外のX線診断装置、超音波診断装置、MRI装置等の医用画像診断装置が接続されてもよい。
【0100】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0101】
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0102】
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0103】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、造影画像のCNRを向上させることができる。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0105】
30 コンソール
37 処理回路
37a 取得機能
37b 決定機能
37c 生成機能
37d 表示制御機能
100 X線CT装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8