【文献】
Gary W. Moore et al.,Mixing test specific cutt-off is more sensitive at detecting lupus anticoagulants than index of circulating anticoagulant,Thrombosis research,2016年 1月27日,Vol.139,PP.98-101
【文献】
M. E. MARTINUZZO et al. ,Frequent False-positive results of lupus anticoagulant tests in plasmas of patients receiving the new oral anticoagulants and enoxaparin,ITNTERNATIONAL JOURNAL OF LABOLRATORY HEMATOLOGY,2013年 9月 6日,Vol.36,No.2,PP.144-150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検者の血液検体の凝固時間である第1凝固時間、正常血液検体の凝固時間である第2凝固時間、及び前記被検者の血液検体と前記正常血液検体とを混合して得た混合検体の凝固時間である第3凝固時間を取得する工程と、
前記被検者の血液検体の凝固時間である第4凝固時間、前記正常血液検体の凝固時間である第5凝固時間、及び前記混合検体の凝固時間である第6凝固時間を取得する工程と、
前記第1凝固時間、前記第2凝固時間及び前記第3凝固時間に基づいて、第1の指標値を取得し、前記第4凝固時間、前記第5凝固時間及び前記第6凝固時間に基づいて、第2の指標値を取得する工程と、
前記第1の指標値と第1の閾値とを比較し、前記第2の指標値と第2の閾値とを比較し、それらの比較結果に基づいて、前記被検者の血液検体が、直接抗凝固薬を含む血液検体であるかを判定する工程と
を含み、
前記第1凝固時間、前記第2凝固時間及び前記第3凝固時間が、第1の凝固時間測定試薬を用いて測定された凝固時間であり、前記第4凝固時間、前記第5凝固時間及び前記第6凝固時間が、第2の凝固時間測定試薬を用いて測定された凝固時間であり、
前記第1の凝固時間測定試薬がリン脂質を含み、前記第2の凝固時間測定試薬が、前記第1の凝固時間測定試薬よりも高い濃度でリン脂質を含む、
血液検体の判定方法。
前記第1の指標値が、前記第1凝固時間、前記第2凝固時間及び前記第3凝固時間に基づいて、混合試験の結果を定量的に評価するための値であり、前記第2の指標値が、前記第4凝固時間、前記第5凝固時間及び前記第6凝固時間に基づいて、混合試験の結果を定量的に評価するための値である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の判定方法。
前記第1の指標の値が第1の閾値以上であり、且つ前記第2の指標の値が第2の閾値以上であるとき、前記被検者の血液検体は、直接抗凝固薬を含む血液検体であると判定し、
前記第1の指標の値が第1の閾値より小さいか、又は前記第2の指標の値が第2の閾値より小さいとき、前記被検者の血液検体は、直接抗凝固薬以外の凝固異常の原因を有する血液検体であると判定する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
前記第1の指標の値が前記第1の閾値以上であり、且つ前記第2の指標の値が前記第2の閾値より小さいとき、前記被検者の血液検体は、ループスアンチコアグラントを含む血液検体であると判定し、
前記第1の指標の値が前記第1の閾値より小さく、且つ前記第2の指標の値が前記第2の閾値より小さいとき、前記被検者の血液検体は、凝固因子が欠損した血液検体であると判定する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1.血液検体の判定方法]
本実施形態の血液検体の判定方法(以下、「判定方法」ともいう)は、被検者の血液検体が、DAC検体であるかを判定する方法である。上述のように、直接抗凝固薬(DAC)とは、凝固因子と結合して、該凝固因子が媒介する凝固反応を直接阻害する薬剤をいう。経口投与可能な直接抗凝固薬は、直接経口抗凝固薬(DOAC)と呼ばれている。DACとしては、第Xa因子阻害薬及びトロンビン阻害薬が当該技術において公知である。第Xa因子阻害薬は、第Xa因子と直接結合でき、プロトロンビンからトロンビンへの変換を阻害する。第Xa因子阻害薬としては、例えば、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、オタミキサバン、ラザキサバン、ダレキサバン、レタキサバン、エリバキサバン、アンチスタシンなどが挙げられる。トロンビン阻害薬は、トロンビンと直接結合でき、トロンビンが媒介するフィブリノゲン活性化を阻害する。トロンビン阻害薬としては、例えば、ダビガトラン、ビバリルジン、ヒルジン、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、メラガトラン、キシメラガトランなどが挙げられる。
【0015】
本実施形態の判定方法では、被検者の血液検体、正常血液検体及びそれらを混合して得た混合検体のそれぞれの凝固時間を取得する。本明細書において、「凝固時間を取得する」とは、凝固時間測定試薬を用いて血液検体の凝固時間を実際に測定すること、及び、凝固時間測定試薬を用いて予め測定され、記録された血液検体の凝固時間の値を取得することの両方を意味する。
【0016】
本実施形態において、上記の血液検体の凝固時間は、第1及び第2の凝固時間のそれぞれを用いて測定された凝固時間である。第1の凝固時間測定試薬は、リン脂質を含む凝固時間測定試薬であり、第2の凝固時間測定試薬は、該第1の凝固時間測定試薬よりも高い濃度でリン脂質を含む凝固時間測定試薬である。以下、第1の凝固時間測定試薬を用いて測定された被検者の血液検体の凝固時間を「第1凝固時間」と呼び、該試薬を用いて測定された正常血液検体の凝固時間を「第2凝固時間」と呼び、該試薬を用いて測定された混合検体の凝固時間を「第3凝固時間」と呼ぶ。また、第2の凝固時間測定試薬を用いて測定された被検者の血液検体の凝固時間を「第4凝固時間」と呼び、該試薬を用いて測定された正常血液検体の凝固時間を「第5凝固時間」と呼び、該試薬を用いて測定された混合検体の凝固時間を「第6凝固時間」と呼ぶ。
【0017】
被検者の血液検体は、被検者から採取した血液(全血)又は該血液から調製した血漿であればよい。それらの中でも血漿が好ましく、血小板除去血漿がより好ましい。血小板は、遠心分離やフィルター分離など公知の手法により除去できる。本実施形態では、被検者の血液検体は、凝固異常の疑いのある血液検体が好ましい。そのような血液検体としては、例えば、通常の凝固検査により凝固時間の延長が認められた血液検体、血栓症患者又は血栓症を有する疑いのある者から得た血液検体などが挙げられる。
【0018】
正常血液検体は、健常者から採取した血液(全血)又は該血液から調製した血漿であればよい。本実施形態では、正常血漿が好ましい。正常血漿は、医療機関などで調製された正常プール血漿でもよいし、市販の正常血漿でもよい。市販の正常血漿としては、例えばControl N(シスメックス株式会社)、CRYOcheck Pooled Normal Plasma(Precision BioLogic Inc)などが挙げられる。
【0019】
混合検体は、被検者の血液検体と正常血液検体とを、少なくとも1つの混合比で混合して得られた検体である。被検者の血液検体と正常血液検体との混合比は、適宜決定してよい。混合検体における被検者の血液検体の比率として、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90及び95%(v/v)から少なくとも1つ選択する。本実施形態では、被検者の血液検体の比率が50%(v/v)の混合検体を調製することが好ましい。混合検体の調製は、用手法で行ってもよいし、全自動凝固時間測定装置で行ってもよい。
【0020】
第1及び第2の凝固時間測定試薬は、当該技術において公知の測定原理に基づく凝固時間を測定するための試薬であればよい。例えば、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、希釈活性化部分トロンボプラスチン時間(dAPTT)、プロトロンビン時間(PT)、希釈プロトロンビン時間(dPT)、トロンビン時間(TT)及び希釈トロンビン時間(dTT)の少なくとも1種を測定するための試薬が挙げられる。それらの中でも、dRVVT測定試薬、dAPTT測定試薬及びAPTT測定試薬が好ましい。また、市販の凝固時間測定試薬及び試薬キットを用いてもよい。好ましい実施形態では、第1凝固時間測定試薬と第2凝固時間測定試薬は、同じ測定原理に基づく凝固時間を測定するための試薬である。
【0021】
第1及び第2の凝固時間測定試薬に含まれるリン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)及びホスファチジルセリン(PS)が挙げられる。第1及び第2の凝固時間測定試薬は、PE、PC及びPSから選択される1種、好ましくは2種、より好ましくは全種のリン脂質を含む。リン脂質は、天然由来リン脂質であってもよいし、合成リン脂質であってもよい。LAに対する感度を向上させる観点からは、合成リン脂質又は純度99%以上に精製された天然由来リン脂質が好ましい。PE、PC及びPSの脂肪酸側鎖は特に限定されないが、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などが挙げられる。それらの中でもオレイン酸が好ましい。
【0022】
第1の凝固時間測定試薬におけるリン脂質濃度は、第2の凝固時間測定試薬におけるリン脂質濃度よりも低ければ、特に限定されない。本実施形態では、第1の凝固時間測定試薬におけるリン脂質濃度は、LA検体を測定した場合に、LAによるリン脂質の阻害(凝固時間の延長)が現れる程度の濃度であることが好ましい。この場合、第1の凝固時間測定試薬は、LAのスクリーニング用試薬に相当する。より具体的には、血液検体と第1の凝固時間測定試薬とを体積比1:1で混合する場合、該試薬におけるリン脂質の濃度は、例えば20〜150μg/mLであり、好ましくは30〜70μg/mLである。血液検体と第1の凝固時間測定試薬との混合割合が1:1でない場合は、その混合割合に応じて、該試薬におけるリン脂質の濃度を適宜調整すればよい。
【0023】
第2の凝固時間測定試薬におけるリン脂質濃度は、第1の凝固時間測定試薬におけるリン脂質濃度よりも高ければ、特に限定されない。本実施形態では、第2の凝固時間測定試薬におけるリン脂質濃度は、LA検体を測定した場合に、LAによるリン脂質の阻害(凝固時間の延長)を抑制又は低減できる程度の濃度であることが好ましい。この場合、第2の凝固時間測定試薬は、LAの確認試験用試薬に相当する。例えば、第2の凝固時間測定試薬におけるリン脂質濃度は、第1の凝固時間測定試薬におけるリン脂質濃度の1.1倍以上100倍以下であってもよい。より具体的には、血液検体と第2の凝固時間測定試薬とを体積比1:1で混合する場合、該試薬におけるリン脂質の濃度は、例えば150〜2000μg/mLであり、好ましくは150〜600μg/mLである。血液検体と第2の凝固時間測定試薬との混合割合が1:1でない場合は、その混合割合に応じて、該試薬におけるリン脂質の濃度を適宜調整すればよい。
【0024】
第1及び第2の凝固時間測定試薬は、測定する凝固時間の種類に応じて、凝固に必要な成分を含む。本明細書において、凝固に必要な成分とは、インビトロで血液凝固を起こすために必要な成分をいう。そのような成分は当該技術において公知であり、例えば、活性化剤、蛇毒、組織因子などが挙げられる。活性化剤としては、接触因子活性化剤が好ましく、例えば、エラグ酸、カオリン、セライト、シリカなどが挙げられる。エラグ酸は、金属イオンとキレートを形成した状態にあるエラグ酸であってもよい。蛇毒としては、ラッセル蛇毒、テキスタリン蛇毒、エカリン蛇毒などが挙げられる。組織因子としては、ウサギ脳又はヒト胎盤由来の組織因子、組換え型組織因子などが挙げられる。好ましい実施形態では、第1凝固時間測定試薬と第2凝固時間測定試薬は、同じ成分を含む。
【0025】
第1及び第2の凝固時間測定試薬は、血液凝固を開始させるために、カルシウムイオンを含んでもよい。この場合、第1及び第2の凝固時間測定試薬は、リン脂質、凝固に必要な成分及びカルシウムイオンを含む1液型の試薬であってもよい。あるいは、第1の凝固時間測定試薬は、リン脂質及び凝固に必要な成分を含む第1部分試薬と、カルシウムイオンを含む第2部分試薬とから構成される2液型の試薬であってもよい。同様に、第2の凝固時間測定試薬は、リン脂質及び凝固に必要な成分を含む第3部分試薬と、カルシウムイオンを含む第4部分試薬とから構成されてもよい。本実施形態では、カルシウムイオンを含む1つの部分試薬を、第1の凝固時間測定試薬の第2部分試薬及び第2の凝固時間測定試薬の第3部分試薬として用いてもよい。
【0026】
カルシウムイオンは、カルシウム塩又はその水溶液により、凝固時間測定試薬中に供給されることが好ましい。カルシウム塩としては、例えば、塩化カルシウムなどが挙げられる。第1及び第2の凝固時間測定試薬におけるカルシウムイオンの含有量としては、凝固を生じさせるのに十分な量であればよく、例えば、塩化カルシウムの濃度で表して、通常2mmol/L以上40 mmol/L以下、好ましくは4mmol/L以上30 mmol/L以下である。凝固時間測定試薬が2液型の試薬である場合、カルシウムイオンを含む部分試薬は、カルシウム塩の水溶液であることが好ましい。なお、本明細書では、「mmol/L」を「mM」とも表す。
【0027】
第1及び第2の凝固時間測定試薬が、凝固に必要な成分としてラッセル蛇毒を含む試薬である場合、これらの試薬は、カルシウムイオンを含まなくてもよい。ラッセル蛇毒は、第X因子を直接活性化して血液凝固を惹起するからである。
【0028】
ラッセル蛇毒による血液凝固は、上述のとおり、第X因子が直接活性化されることで惹起されるので、外因系凝固経路の第VII因子及び接触因子、並びに内因系凝固経路の第VIII因子を介さない。そのため、dRVVTは、接触因子異常や第VIII因子欠損などの影響を受けず、LAに対する感度が高いことが知られている。本実施形態では、第1の凝固時間測定試薬が、ラッセル蛇毒及びリン脂質を含む試薬(dRVVT測定試薬)であり、第2の凝固時間測定試薬が、ラッセル蛇毒、及び第1の凝固時間測定試薬よりも高い濃度のリン脂質を含む試薬であることが好ましい。
【0029】
本実施形態では、第1及び第2の凝固時間測定試薬を用いて、第1〜第6凝固時間を実際に測定することにより、これらの凝固時間を取得することが好ましい。各凝固時間の測定は、上記の各血液検体と、第1又は第2の凝固時間測定試薬とを混合して調製される測定試料について行う。具体的には、第1凝固時間は、被検者の血液検体と第1の凝固時間測定試薬とを混合して得た第1測定試料を測定することにより取得され、第2凝固時間は、正常血液検体と第1の凝固時間測定試薬とを混合して得た第2測定試料を測定することにより取得され、第3凝固時間は、混合検体と第1の凝固時間測定試薬とを混合して得た第3測定試料を測定することにより取得される。また、第4凝固時間は、被検者の血液検体と第2の凝固時間測定試薬とを混合して得た第4測定試料を測定することにより取得され、第5凝固時間は、正常血液検体と第2の凝固時間測定試薬とを混合して得た第5測定試料を測定することにより取得され、第6凝固時間は、混合検体と第2の凝固時間測定試薬とを混合して得た第6測定試料を測定することにより取得される。
【0030】
血液検体と凝固時間測定試薬との反応条件は、該試薬の種類に応じて適宜決定できる。例えば、第1又は第2の凝固時間測定試薬が2液型の試薬である場合、血液検体と第1又は第3部分試薬との反応時間は、通常1分以上10分以下であり、好ましくは3分以上5分以下である。温度条件は、通常25℃以上45℃以下であり、好ましくは35℃以上38℃以下である。測定試料の調製は、用手法で行ってもよいし、全自動測定装置で行ってもよい。そのような装置としては、例えば、CS-5100(シスメックス株式会社)、CS-2400(シスメックス株式会社)、CS-2000i(シスメックス株式会社)などが挙げられる。
【0031】
凝固時間の測定は、測定試料の調製後、すみやかに行う。具体的には、第1又は第2の凝固時間測定試薬が2液型の試薬である場合、血液検体と第1又は第3部分試薬との混合物に、カルシウムイオンを含む第2又は第4部分試薬を添加した時点から、凝固時間の測定を開始する。第1又は第2の凝固時間測定試薬が、カルシウムイオン又は蛇毒を含む1液型の試薬の場合は、該試薬を血液検体に添加した時点から凝固時間の測定を開始する。
【0032】
凝固時間の測定は、用手法で行ってもよいし、上記の全自動凝固時間測定装置で行ってもよい。好ましくは、全自動凝固時間測定装置で測定を行う。この装置により凝固時間を測定する場合は、測定試料に光を照射して、得られた光学的情報に基づいて凝固時間が算出される。照射する光は、凝固時間の測定に通常用いられる光であればよく、例えば、波長が660 nm近傍である光が挙げられる。光源は特に限定されないが、例えば、発光ダイオード、ハロゲンランプなどが挙げられる。光源から測定試料に光を照射することにより、該測定試料から散乱光及び透過光が生じる。本実施形態では、光量に関する光学的情報として、例えば、散乱光量又は透過光量に関する情報が挙げられ、散乱光強度、透過度、吸光度などが好ましい。
【0033】
本実施形態では、第1〜第6凝固時間は、同時に測定してもよいし、逐次測定してもよい。第1〜第6凝固時間を逐次測定する場合、測定の順序は特に限定されない。
【0034】
別の実施形態では、第2凝固時間は、第1の凝固時間測定試薬による所定の凝固時間であってもよい。また、第5凝固時間は、第2の凝固時間測定試薬による所定の凝固時間であってもよい。すなわち、第2凝固時間として、第1の凝固時間測定試薬を用いて予め測定され、記録された正常血液検体の凝固時間を用いてもよいし、第5凝固時間として、第2の凝固時間測定試薬を用いて予め測定され、記録された正常血液検体の凝固時間を用いてもよい。これにより、第2及び第5測定試料の調製及び測定を省くことができる。第1及び第2の凝固時間測定試薬が市販の試薬又は試薬キットである場合、それらに添付された説明書に記載の正常血液検体の凝固時間を、第2及び第5凝固時間として用いてもよい。
【0035】
よって、別の実施形態では、第1凝固時間は、被検者の血液検体と第1の凝固時間測定試薬とを混合して得た第1測定試料を測定することにより取得され、第2凝固時間は、第1の凝固時間測定試薬による正常血液検体の所定の凝固時間であり、第3凝固時間は、混合検体と第1の凝固時間測定試薬とを混合して得た第3測定試料を測定することにより取得される。また、第4凝固時間は、被検者の血液検体と第2の凝固時間測定試薬とを混合して得た第4測定試料を測定することにより取得され、第5凝固時間は、第2の凝固時間測定試薬による正常血液検体の所定の凝固時間であり、第6凝固時間は、混合検体と第2の凝固時間測定試薬とを混合して得た第6測定試料を測定することにより取得される。この別の実施形態では、第2及び第5凝固時間として、予め測定され記録された正常血液検体の凝固時間を用いること以外は、上述のとおりである。
【0036】
本実施形態の判定方法では、第1凝固時間、第2凝固時間及び第3凝固時間に基づいて、第1の指標値を取得し、4凝固時間、第5凝固時間及び第6凝固時間に基づいて、第2の指標値を取得する。本実施形態において、第1及び第2の指標値は、被検者の血液検体、正常血液検体及びそれら混合検体の凝固時間に基づいて、混合試験の結果を定量的に評価するための値であることが好ましい。
【0037】
LAの検査では、混合試験の結果を定量的に評価するためのICAなどの指標値は、リン脂質濃度の低いスクリーニング用試薬を用いて測定した凝固時間から取得することが推奨されている。一方、当該技術分野では、リン脂質濃度の高い確認試験用試薬を用いて測定した凝固時間から指標値を取得することは、行われていない。これは、リン脂質濃度が高い試薬は、LAによる凝固時間の延長を抑制するので、取得される指標値からは有用な情報が得られないからである。しかし、本発明者は、リン脂質濃度の異なる2種類の凝固時間測定試薬を用いて、被検血漿、正常血漿及びそれらの混合血漿の凝固時間を測定し、2種類の指標値を取得することを試みた。そして、2種類の指標値により、DAC検体、LA検体及び凝固因子欠損検体を区別できることを見出した。
【0038】
本実施形態において、第1及び第2の指標値は、同じ算出法により得られる値であってもよいし、異なる算出法により得られる値であってもよい。好ましくは、第1及び第2の指標値は、同じ算出法により得られる値である。例えば、第1の指標値は、第2凝固時間及び第3凝固時間の差と、第1凝固時間とから取得される値であり、第2の指標値が、第5凝固時間及び第6凝固時間の差と、第4凝固時間とから取得される値であってもよい。
【0039】
第2凝固時間及び第3凝固時間の差は、下記のいずれかの式で算出される。
(第2凝固時間及び第3凝固時間の差)=(第2凝固時間)−(第3凝固時間)、又は
(第2凝固時間及び第3凝固時間の差)=(第3凝固時間)−(第2凝固時間)
【0040】
同様に、第5凝固時間及び第6凝固時間の差は、下記のいずれかの式で算出される。
(第5凝固時間及び第6凝固時間の差)=(第5凝固時間)−(第6凝固時間)、又は
(第5凝固時間及び第6凝固時間の差)=(第6凝固時間)−(第5凝固時間)
【0041】
本実施形態では、上記の式から算出された値に定数を乗じた値を、差として取得してもよい。
【0042】
第2凝固時間及び第3凝固時間の差と、第1凝固時間とから取得される値としては、例えば、該差の値と第1凝固時間の値との積又は比などが挙げられる。同様に、第5凝固時間及び第6凝固時間の差と、第4凝固時間とから取得される値としては、例えば、該差の値と第4凝固時間の値との積又は比などが挙げられる
【0043】
好ましい実施形態では、第1の指標値は、第2凝固時間及び第3凝固時間の差と、第1凝固時間との比に関する値であり、第2の指標値が、第5凝固時間及び第6凝固時間の差と、第4凝固時間との比に関する値である。比に関する値には、比の値そのものだけではなく、該比の値から算出される値も含まれる。
【0044】
第1の指標値としての比の値は、下記のいずれかの式で算出される値である。
(比の値)=(第2凝固時間及び第3凝固時間の差)/(第1凝固時間)、又は
(比の値)=(第1凝固時間)/(第2凝固時間及び第3凝固時間の差)
【0045】
同様に、第2の指標値としての比の値は、下記のいずれかの式で算出される値である。
(比の値)=(第5凝固時間及び第6凝固時間の差)/(第4凝固時間)、又は
(比の値)=(第5凝固時間)/(第5凝固時間及び第6凝固時間の差)
【0046】
比の値から算出される値としては、例えば、該比の値に定数を乗じた値、該比の値に定数を足した値、該比の値から定数を引いた値、該比の値の逆数、及びこれらの計算を組み合わせて得られる値などが挙げられる。
【0047】
本実施形態では、第1の指標値は、下記の式(1)により取得される比の値であり、第2の指標値は、下記の式(2)により取得される比の値であることが好ましい。
(第1の指標値)=[(第3凝固時間)−(第2凝固時間)]/(第1凝固時間) ・・・式(1)
(第2の指標値)=[(第6凝固時間)−(第5凝固時間)]/(第4凝固時間) ・・・式(2)
【0048】
本実施形態では、上記の式(1)及び(2)から算出された値を100倍して得られる比率(%)を、第1及び第2の指標値として取得してもよい。この場合、得られる比率は、後述のICAに当たる。
【0049】
本実施形態では、第1及び第2の指標値として、公知の定量化指標を用いてもよい。公知の定量化指標としては、例えば、ICA及びPercent Correction (PC)などが挙げられる。なお、ICA自体は、Pengo V.ら、Update of the guidelines for lupus anticoagulant detection. Journal of Thrombosis and Haemostasis 2009; 7: 1737-1740に開示され、PC自体は、Chang S-H.ら、"Percent Correction" Formula for Evaluation of Mixing Studies., Am J Clin Pathol 2002;117:62-73に開示されている。以下に、ICA及びPCについて説明する。
【0050】
ICAは、ロスナー・インデックス(Rosner Index)とも呼ばれ、LA検体の判定に用いられる指標である。ICAは、下記の式により算出される。
【0051】
ICA = [(E−B)/A]×100
(式中、A:被検血漿の凝固時間、B:正常血漿の凝固時間、E:被検血漿の比率が50%(v/v)の混合血漿の凝固時間)
【0052】
PCは、下記のとおり、混合検体における被検血漿の比率に応じて算出式が異なる。
【0053】
PC(9:1) = [(A−C)/(A−B)]×100
PC(8:2) = [(A−D)/(A−B)]×100
PC(5:5) = [(A−E)/(A−B)]×100
PC(2:8) = [(A−F)/(A−B)]×100
PC(1:9) = [(A−G)/(A−B)]×100
(式中、A:被検血漿の凝固時間、B:正常血漿の凝固時間、C:被検血漿の比率が10%(v/v)の混合血漿の凝固時間、D:被検血漿の比率が20%(v/v)の混合血漿の凝固時間、E:被検血漿の比率が50%(v/v)の混合血漿の凝固時間、F:被検血漿の比率が80%(v/v)の混合血漿の凝固時間、G:被検血漿の比率が90%(v/v)の混合血漿の凝固時間)
【0054】
本実施形態の方法では、第1の指標値と第2の指標値とに基づいて、被検者の血液検体が、DACを含む血液検体であるかを判定する。好ましい実施形態では、第1の指標値と第1の閾値とを比較し、第2の指標値と第2の閾値とを比較し、それらの比較結果に基づいて判定する。第1の閾値と第2の閾値は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。第1及び第2の指標値が、同じ算出法により得られる値である場合、第1の閾値と第2の閾値は、同じ値であることが好ましい。
【0055】
例えば、式(1)で算出される第1の指標値については、DAC検体及びLA検体は、凝固因子欠損検体よりも高い傾向にある。また、式(2)で算出される第2の指標値については、DAC検体は、LA検体及び凝固因子欠損検体よりも高い傾向にある。よって、第1の指標の値が第1の閾値以上であり、且つ第2の指標の値が第2の閾値以上であるとき、被検者の血液検体は、DACを含む血液検体であると判定してもよい。また、第1の指標の値が第1の閾値より小さいか、又は第2の指標の値が第2の閾値より小さいとき、被検者の血液検体は、DAC以外の凝固異常の原因を有する血液検体であると判定してもよい。DAC以外の凝固異常の原因としては、例えば、LA及び凝固因子欠損が挙げられる。
【0056】
本実施形態では、被検者の血液検体が、DAC以外の凝固異常の原因を有する血液検体であると判定された場合、第1及び第2の指標値に基づいて、該被検者の血液検体が、LAを含む血液検体であるか又は凝固因子が欠損した血液検体であるかを判定することもできる。一例として、第1及び第2の指標値が、それぞれ式(1)及び(2)で算出された値である場合の判定の手順を示す。第1の指標値が第1の閾値以上であり、且つ第2の指標値が第2の閾値より小さいとき、被検者の血液検体は、LAを含む血液検体であると判定してもよい。また、第1の指標値が第1の閾値より小さく、且つ第2の指標値が第2の閾値より小さいとき、被検者の血液検体は、凝固因子が欠損した血液検体であると判定してもよい。なお、第1の指標値が第1の閾値より小さく、且つ第2の指標値が第2の閾値以上であるとき、被検者の血液検体は、DAC、LA及び凝固因子欠損以外の凝固異常の原因を有すると判定してもよい。
【0057】
本実施形態では、第1の閾値及び第2の閾値の数値自体は特に限定されない。例えば、DACを投与された患者、LA陽性患者及び凝固因子欠損患者の血液検体の凝固時間に関するデータの蓄積により、第1及び第2の閾値を経験的に設定できる。あるいは、DACを投与された患者の血液検体の群、LA陽性患者の血液検体の群、及び凝固因子欠損患者の血液検体の群のそれぞれから、第1の指標値及び第2の指標値を取得し、取得した値に基づいて、これらの群を明確に区別可能な値を、第1及び第2の閾値として設定できる。閾値の算出には、ROC解析などの統計学的手法を用いてもよい。
【0058】
[2.血液検体分析装置及びコンピュータプログラム]
以下に、本実施形態の血液検体分析装置の一例を、図面を参照して説明する。しかし、本実施形態は、この例のみに限定されない。以下、血液検体分析装置を、単に「分析装置」ともいう。
図1に示されるように、血液検体分析装置10は、測定試料の調製及び光学的測定を行う測定装置50と、測定装置50により取得された測定データを分析すると共に測定装置50に指示を与える制御装置40とを備える。測定装置50は、測定試料からの光量に関する光学的情報を取得する測定部20と、測定部20の前方に配置された検体搬送部30とを備える。
【0059】
本実施形態では、測定部20と検体搬送部30とが一体となって分析装置10の一部を構成している。さらなる実施形態では、検体搬送部30は、分析装置10と別体としてもよい。例えば、複数の分析装置を含む大規模なシステムにおいて、検体搬送部を各分析装置に設けずに、大型の搬送ラインに複数の分析装置が接続された形態を採用してもよい。
【0060】
測定部20には、蓋20a及び20bと、カバー20cと、電源ボタン20dが設けられている。ユーザは、蓋20aを開けて、試薬テーブル11及び12(
図2参照)に設置されている試薬容器103を新たな試薬容器103と交換したり、また、別の試薬容器103を新たに追加したりすることができる。試薬容器103には、収容する試薬の種類と、試薬に付与されたシリアルナンバーからなる試薬IDとを含むバーコードが印刷されたバーコードラベル103aが貼付されている。
【0061】
ユーザは、蓋20bを開けて、ランプユニット27(
図2参照)を交換できる。また、ユーザは、カバー20cを開けて、ピアサ17a(
図2参照)を交換できる。検体搬送部30は、検体ラック102に支持された検体容器101を、ピアサ17aによる吸引位置まで搬送する。検体容器101は、ゴム製の蓋101aにより密封されている。
【0062】
血液検体分析装置10を使用する場合、ユーザは、まず、測定部20の電源ボタン20dを押して測定部20を起動させ、制御装置40の電源ボタン439を押して制御装置40を起動させる。制御装置40が起動すると、表示部41にログオン画面が表示される。ユーザは、ログオン画面にユーザ名及びパスワードを入力して制御装置40にログオンし、血液検体分析装置10の使用を開始する。
【0063】
測定装置50の構成について説明する。
図2に示されるように、測定部20は、試薬テーブル11及び12と、キュベットテーブル13と、バーコードリーダ14と、キュベット供給部15と、キャッチャ16と、検体分注アーム17と、試薬分注アーム18と、緊急検体セット部19と、光ファイバ21と、検出部22と、キュベット移送部23と、加温部24と、廃棄口25と、流体部26と、ランプユニット27とを備える。本実施形態において、測定部20は、血液検体から測定試料を調製する測定試料調製部としての機能と、調製した測定試料から光学的情報を取得する光学的情報取得部としての機能とを有する。
【0064】
(測定試料調製部)
試薬テーブル11及び12とキュベットテーブル13は、それぞれ、円環形状を有し、回転可能に構成されている。試薬テーブル11及び12は試薬収納部に相当し、ここには試薬容器103が載せ置かれる。試薬テーブル11及び12に載せ置かれた試薬容器103のバーコードは、バーコードリーダ14により読み取られる。バーコードから読み取られた情報(試薬の種類、試薬ID)は、制御装置40に入力され、ハードディスク434(
図6参照)に格納される。
【0065】
本実施形態の装置では、試薬テーブル11及び/又は12には、第1の凝固時間測定試薬の第1部分試薬及び第2部分試薬(塩化カルシウム水溶液)、第2の凝固時間測定試薬の第3部分試薬及び第4部分試薬(塩化カルシウム水溶液)などがそれぞれ収容された試薬容器103が載せ置かれる。この例では、第1及び第2の凝固時間測定試薬は2液型の試薬であるが、これらは1液型の試薬であってもよい。
【0066】
キュベットテーブル13には、キュベット104を支持可能な複数の孔からなる支持部13aが形成されている。ユーザによってキュベット供給部15に投入された新しいキュベット104は、キュベット供給部15により順次移送され、キャッチャ16によりキュベットテーブル13の支持部13aに設置される。
【0067】
検体分注アーム17と試薬分注アーム18には、それぞれ、上下移動及び回転移動できるようステッピングモータが接続されている。検体分注アーム17の先端には、検体容器101の蓋101aを穿刺できるよう先端が鋭利に形成されたピアサ17aが設置されている。試薬分注アーム18の先端にはピペット18aが設置されている。ピペット18aの先端は、ピアサ17aと異なり平坦に形成されている。また、ピペット18aには、静電容量式の液面検知センサ213(
図3参照)が接続されている。
【0068】
検体搬送部30(
図1参照)によって検体容器101が所定位置に搬送されると、ピアサ17aが、検体分注アーム17の回転移動により検体容器101の真上に位置付けられる。そして、検体分注アーム17が下方向に移動され、ピアサ17aが検体容器101の蓋101aを貫通し、検体容器101に収容されている血液検体が、ピアサ17aにより吸引される。緊急を要する血液検体が緊急検体セット部19にセットされている場合、ピアサ17aは、検体搬送部3から供給される検体に割り込んで、緊急を要する血液検体を吸引する。ピアサ17aにより吸引された血液検体は、キュベットテーブル13上の空のキュベット104に吐出される。
【0069】
血液検体が吐出されたキュベット104は、キュベット移送部23のキャッチャ23aにより、キュベットテーブル13の支持部13aから、加温部24の支持部24aに移送される。加温部24は、支持部24aに設置されたキュベット104に収容されている血液検体を、所定の温度(例えば37℃)で一定時間加温する。加温部24による血液検体の加温が終了すると、このキュベット104は、キャッチャ23aによって再び把持される。そして、このキュベット104は、キャッチャ23aにより把持されたまま所定位置に位置付けられ、この状態で、ピペット18aにより吸引された試薬がキュベット104内に吐出される。
【0070】
ピペット18aによる試薬の分注では、まず、試薬テーブル11及び12が回転され、測定項目に対応する試薬を収容する試薬容器103が、ピペット18aによる吸引位置に搬送される。そして、原点位置を検知するためのセンサに基づいて、ピペット18aの上下方向の位置が原点位置に位置付けられた後、液面検知センサ213によりピペット18aの下端が試薬の液面に接触するまで、ピペット18aが下降される。ピペット18aの下端が試薬の液面に接触すると、必要な量の試薬を吸引できる程度に、さらにピペット18aが下降される。そして、ピペット18aの下降が停止され、ピペット18aにより試薬が吸引される。ピペット18aにより吸引された試薬は、キャッチャ23aによって把持されたキュベット104に吐出される。そして、キャッチャ23aの振動機能により、キュベット104内の血液検体と試薬が攪拌される。これにより、測定試料の調製が行われる。その後、測定試料を収容するキュベット104は、キャッチャ23aにより、検出部22の支持部22aに移送される。
【0071】
(光学的情報取得部)
ランプユニット27は、検出部22による光学的信号の検出に用いられる複数種類の波長の光を供給する。
図4を参照して、ランプユニット27の構成の一例を説明する。ランプユニット27は光源に相当し、ハロゲンランプ27aと、ランプケース27bと、集光レンズ27c〜27eと、円盤形状のフィルター部27fと、モータ27gと、光透過型のセンサ27hと、光ファイバカプラ27iとを備える。
【0072】
図2を参照して、ランプユニット27からの光は、光ファイバ21を介して、検出部22に供給される。検出部22には、穴状の支持部22aが複数設けられており、各支持部22aには、キュベット104が挿入可能となっている。各支持部22aには、それぞれ、光ファイバ21の端部が装着され、支持部22aに支持されたキュベット104に光ファイバ21からの光が照射可能となっている。検出部22は、光ファイバ21を介して、ランプユニット27から供給される光をキュベット104に照射し、キュベット104を透過する光(又はキュベット104からの散乱光)の光量を検出する。
【0073】
図5A〜Dを参照して、検出部22に配された複数の支持部22aのうちの一つの構成の例を示すが、他の支持部22aも同様の構成を有する。
図5Aを参照して、検出部22には、光ファイバ21の先端が挿入される円形の穴22bが形成される。さらに、検出部22には、穴22bを支持部22aに連通させる円形の連通孔22cが形成されている。穴22bの径は、連通孔22cの径よりも大きい。穴22bの端部には、光ファイバ21からの光を集光するレンズ22dが配置されている。さらに、支持部22a内壁面には、連通孔22cに対向する位置に孔22fが形成される。この孔22fの奥に、光検出器22gが配置されている。光検出器22gは受光部に相当し、受光光量に応じた電気信号を出力する。レンズ22dを透過した光は、連通孔22c、支持部22a及び孔22fを介して、光検出器22gの受光面に集光される。光ファイバ21は、端部が穴22bに挿入された状態で、板ばね22eによって抜け止めされる。
【0074】
図5Bを参照して、支持部22aにキュベット104が支持されると、レンズ22dによって集光された光は、キュベット104およびキュベット104に収容された試料を透過して、光検出器22gに入射する。試料において血液凝固反応が進むと、試料の濁度が上昇する。これに伴い、試料を透過する光の光量(透過光量)が減少し、光検出器22gの検出信号のレベルが低下する。
【0075】
図5Cを参照して、散乱光を用いる場合の検出部22の構成を説明する。支持部22aの内側面において、連通孔22cと同じ高さの位置に、孔22hが設けられる。この孔22hの奥に、光検出器22iが配置される。支持部22aにキュベット104が挿入され、光ファイバ21から光が出射されると、キュベット104内の測定試料によって散乱された光が、孔22hを介して光検出器22iに照射される。この例では、光検出器22iからの検出信号は、測定試料による散乱光の強度を示す。また、
図5Dに示されるように、測定試料を透過する透過光と、測定試料により散乱される散乱光との両方を検出できるようにしてもよい。
【0076】
上記のように、検出部22は、ランプユニット27から供給される光をキュベット104に照射し、測定試料からの光学的情報を取得する。取得された光学的情報は、制御装置40に送信される。制御装置40は、光学的情報に基づいて分析を行い、分析結果を表示部41に表示する。
【0077】
測定終了後、不要となったキュベット104は、キュベットテーブル13により搬送され、キャッチャ16により廃棄口25に廃棄される。なお、測定動作の際に、ピアサ17aとピペット18aは、流体部26から供給される洗浄液などの液体により、適宜洗浄される。
【0078】
測定装置50のハードウェア構成について説明する。
図3に示されるように、測定部20は、制御部200と、ステッピングモータ部211と、ロータリーエンコーダ部212と、液面検知センサ213と、センサ部214と、機構部215と、光学的情報取得部216と、バーコードリーダ14とを含む。制御部200は、測定部20及び検体搬送部30における各機構の動作制御を行う機能を有する。
【0079】
図3を参照して、制御部200は、CPU201と、メモリ202と、通信インターフェイス203と、I/Oインターフェイス204を含んでいる。CPU201は、メモリ202に記憶されているコンピュータプログラムを実行する。メモリ202は、ROM、RAM、ハードディスクなどからなる。また、CPU201は、通信インターフェイス203を介して、検体搬送部30を駆動させると共に、制御装置40との間で指示信号及びデータの送受信を行う。また、CPU201は、I/Oインターフェイス204を介して、測定部20内の各部を制御すると共に、各部から出力された信号を受信する。
【0080】
ステッピングモータ部211は、試薬テーブル11及び12と、キュベットテーブル13と、キャッチャ16と、検体分注アーム17と、試薬分注アーム18と、キュベット移送部23を、それぞれ駆動するためのステッピングモータを含んでいる。ロータリーエンコーダ部212は、ステッピングモータ部211に含まれる各ステッピングモータの回転変位量に応じたパルス信号を出力するロータリーエンコーダを含んでいる。
【0081】
液面検知センサ213は、試薬分注アーム18の先端に設置されたピペット18aに接続されており、ピペット18aの下端が試薬の液面に接触したことを検知する。センサ部214は、ピペット18aの上下方向の位置が原点位置に位置付けられたことを検知するセンサと、電源ボタン20dが押されたことを検知するセンサを含んでいる。機構部215は、キュベット供給部15と、緊急検体セット部19と、加温部24と、流体部26を駆動するための機構と、ピアサ17aとピペット18aによる分注動作が可能となるようピアサ17aとピペット18aに圧力を供給する空圧源を含んでいる。光学的情報取得部216は、
図2を参照して、少なくとも、ランプユニット27と、光ファイバ21と、検出部22とを含む。
【0082】
制御装置40の構成について説明する。
図1に示されるように、制御装置40は、表示部41と、入力部42と、コンピュータ本体43とから構成されている。制御装置40は、測定部20から光学的情報を受信する。そして、制御装置40のプロセッサは、光学的情報に基づいて第1〜第6の凝固時間を算出する。制御装置40のプロセッサは、第1、第2及び第3凝固時間に基づく値として、第1の指標を算出し、第4、第5及び第6凝固時間に基づく値として、第2の指標を算出する。また、制御装置40のプロセッサは、血液検体の分析のためのコンピュータプログラムを実行する。制御装置40は、血液検体の判定のための装置としても機能する。表示部41は、コンピュータ本体43で得られた分析結果を表示する。
【0083】
図6に示されるように、制御装置40のコンピュータ本体43は、CPU431と、ROM432と、RAM433と、ハードディスク434と、読出装置435と、入出力インターフェイス436と、通信インターフェイス437と、画像出力インターフェイス438と、電源ボタン439とを備える。CPU431、ROM432、RAM433、ハードディスク434、読出装置435、入出力インターフェイス436、通信インターフェイス437、画像出力インターフェイス438及び電源ボタン439は、バス440によって通信可能に接続されている。
【0084】
CPU431は、ROM432に記憶されているコンピュータプログラム及びRAM433にロードされたコンピュータプログラムを実行する。CPU431が、血液検体の分析のためのコンピュータプログラムを実行することにより、制御装置40が、血液検体の判定のための装置として機能する。
【0085】
ROM432は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されている。ROM432には、CPU431によって実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータが記録されている。
【0086】
RAM433は、SRAM、DRAMなどによって構成されている。RAM433は、ROM432及びハードディスク434に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM433は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU431の作業領域としても利用される。
【0087】
ハードディスク434は、オペレーティングシステム、CPU431に実行させるためのアプリケーションプログラム(血液検体の分析のためのコンピュータプログラム)などのコンピュータプログラム、当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータ、及び制御装置40の設定内容がインストールされている。
【0088】
読出装置435は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブなどによって構成されている。読出装置435は、CD、DVDなどの可搬型記録媒体441に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。
【0089】
入出力インターフェイス436は、例えば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインターフェイスと、SCSI、IDE、インターフェイスなどのパラレルインターフェイスと、D/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインターフェイスとから構成されている。入出力インターフェイス436には、キーボード、マウスなどの入力部42が接続されている。ユーザは入力部42を介して指示を入力し、入出力インターフェイス436は、入力部42を介して入力された信号を受け付ける。
【0090】
通信インターフェイス437は、例えば、Ethernet(登録商標)インターフェイスなどである。制御装置40は、通信インターフェイス437により、プリンタへの印刷データの送信が可能である。通信インターフェイス437は測定部20に接続されており、CPU431は、通信インターフェイス437を介して、測定部20との間で指示信号及びデータの送受信を行う。
【0091】
画像出力インターフェイス438は、LCD、CRTなどで構成される表示部41に接続されている。画像出力インターフェイス438は、画像データに応じた映像信号を表示部41に出力し、表示部41は、画像出力インターフェイス438から出力された映像信号に基づいて画像を表示する。
【0092】
本実施形態の血液検体分析装置では、制御装置40は、検出部22によって検出された光学的情報(例えば透過光強度)に基づいて、第1〜第6凝固時間を取得し、取得した凝固時間に基づいて、第1及び第2の指標値を取得する分析部として機能する。
【0093】
(血液検体分析装置の処理手順)
図3を参照して、測定動作の際、測定部20のCPU201は、検出部22(
図2参照)から出力された検出信号をデジタル化したデータ(光学的情報)を、メモリ202に一時格納する。メモリ202の記憶領域は、支持部22a毎にエリア分割される。各エリアには、対応する支持部22aに支持されたキュベット104に対して所定波長の光を照射したときに取得されるデータ(光学的情報)が、順次格納される。こうして、所定の測定時間にわたって順次、データがメモリ202に格納される。測定時間が経過すると、CPU201は、メモリ202に対するデータの格納を中止し、格納したデータを、通信インターフェイス203を介して制御装置40に送信する。制御装置40は、受信したデータを処理して分析を行い、分析結果を表示部41に表示する。
【0094】
測定部20における処理は、主として測定部20のCPU201の制御の下で行われ、制御装置40における処理は、主として制御装置40のCPU431の制御の下で行われる。しかし、本実施形態はこの例に限定されない。測定部20における処理を、制御装置40のCPU431の制御の下で行ってもよい。
図7Aを参照して、測定処理が開始されると、測定部20は、上記のように、検体搬送部30により搬送された検体容器101から被検者の血液検体(血漿)を吸引し、これを、キュベットテーブル13上の空のキュベット104に分注する。また、測定部20は、試薬収容部に収容された正常血液検体が入った試薬容器103から正常血液検体(血漿)を吸引し、これを、キュベットテーブル13上の空のキュベット104に分注する。ここで、被検者の血液検体と正常血液検体との混合検体は、ユーザが用手法によって予め調製して、検体容器101に収容してもよい。あるいは、混合検体は、測定部20により調製してもよい。測定部20による混合検体の調製は、例えば、次のとおりである。測定部20は、正常血液検体が収容された試薬容器103から所定量の正常血液検体(血漿)を吸引して、これを空のキュベット104に分注する。そして、測定部20は、被検者の血液検体が収容された検体容器101から所定量の血液検体(血漿)を吸引し、これを、正常血液検体が入っているキュベット104に分注して攪拌することにより、混合検体を調製する。本実施形態では、第1及び第2の凝固時間測定試薬の2種類を用いるので、被検者の血液検体、正常血液検体及び混合検体のそれぞれが入ったキュベット104を2本ずつ用意する。
【0095】
次いで、測定部20は、被検者の血液検体、正常血液検体及び混合検体のそれぞれが入っているキュベット104を加温部24に移送して、キュベット104内の検体を所定温度(例えば37℃)に加温する。そして、測定部20は、各血液検体が入っているキュベット104に第1の凝固時間測定試薬(第1部分試薬及び第2部分試薬)を添加して、第1〜第3測定試料を調製する。また、測定部20は、各血液検体が入っている別のキュベット104に第2の凝固時間測定試薬(第3部分試薬及び第4部分試薬)を添加して、第4〜第6測定試料を調製する(ステップS11)。
【0096】
測定部20は、キュベット104に塩化カルシウム水溶液を含む部分試薬を添加した時点から凝固時間の測定を開始する。第1及び第2の凝固時間測定試薬がいずれも、カルシウムイオン又は蛇毒を含む1液型の試薬の場合は、該試薬を添加した時点から凝固時間の測定を開始する。その後、測定部20は、試薬が添加されたキュベット104を検出部22に移送し、キュベット104に光を照射して測定試料を測定する(ステップS12)。この測定では、波長660 nmの光に基づくデータ(散乱光量又は透過光量)が、測定時間の間、順次、メモリ202に格納される。このとき、データは、試薬添加時点からの経過時間に対応付けられた状態でメモリ202に格納される。そして、測定時間が経過すると、測定部20は、測定を中止し、メモリ202に格納された測定結果(データ)を制御装置40に送信する(ステップS13)。
【0097】
上記のとおり、正常血液検体の凝固時間は、第1及び第2の凝固時間測定試薬を用いて予め測定され、記録された所定の値であってもよい。よって、別の実施形態では、測定部20は、正常血液検体の凝固時間を測定しなくてもよい。この場合、第2及び第5凝固時間としての所定の値を、ハードディスク434に予め記憶させる。
【0098】
制御装置40が測定部20から測定結果(データ)を受信すると(ステップS21:YES)、制御装置40は、受信した測定結果に対して分析処理を実行する(ステップS22)。すなわち、制御装置40は、第1の凝固時間測定試薬を添加した測定試料について、第1〜第3凝固時間及び第1の指標値の算出を行い、第2の凝固時間測定試薬を添加した測定試料について、第4〜第6凝固時間及び第2の指標値の算出を行う。分析処理(ステップS22)を行った後、制御装置40は、分析結果の表示処理を実行する(ステップS23)。
【0099】
上記の分析処理及び表示処理について、
図7Bを参照して説明する。ステップS31において、制御装置40のCPU431は、測定部20から受信したデータ(散乱光量又は透過光量)に基づいて、光学的情報(散乱光強度、又は透過度もしくは吸光度)を取得する。ステップS32において、CPU431は、取得した光学的情報から、ハードディスク434に記憶された凝固時間を算出するための式にしたがって、第1〜第6凝固時間を算出し、算出された値をハードディスク434に記憶する。ステップS33において、CPU431は、第1〜第3凝固時間の値から、ハードディスク434に記憶された第1の指標値を算出するための式にしたがって、第1の指標値を算出する。同様に、CPU431は、第4〜第6凝固時間の値から、ハードディスク434に記憶された第2の指標値を算出するための式にしたがって、第2の指標値を算出する。そして、CPU431は、算出された第1及び第2の指標値をハードディスク434に記憶する。ステップS34において、CPU431は、分析結果として、少なくとも第1及び第2の指標値を表示部41に表示させる。CPU431は、第1〜第6凝固時間をさらに表示部41に表示させてもよい。また、CPU431は、第1〜第3凝固時間をプロットしたグラフを表示部41に表示させてもよい。該グラフは、横軸が、各血液検体における被検者の血液検体の割合(v/v%)であり、縦軸が凝固時間(秒)であるグラフが好ましい。
【0100】
分析結果を表示する画面の一例として、
図8を参照して、各検体の凝固時間を測定した結果を表示する画面について説明する。
図8に示される画面には、ラック番号及び位置、検体番号、測定の開始時刻及び終了時刻、第1の凝固時間測定試薬による凝固時間(LA1 1-1 sec)、第2の凝固時間測定試薬による凝固時間(LA2 1-1 sec)が表示されているが、これに限定されない。
図8において、検体番号に「1-1」が付されている検体は、被検者の血液検体の比率が50%(v/v)の混合検体である。本実施形態では、この画面において、第1及び第2の指標値を表示してもよい。ユーザは、画面に表示された第1及び第2の指標値を、被検者の血液検体がDAC検体であるかの判定に用いることができる。
【0101】
あるいは、第1及び第2の指標値は、別の画面に表示してもよい。例えば、
図8に示される画面において、ユーザが、入力部42を介して所定の血液検体を選択したときに、
図9に示すような画面に第1及び第2の指標値が表示されてもよい。
図9を参照して、画面D1は、検体番号を表示する領域D11と、測定項目名を表示する領域D12と、測定日時を表示するための領域D13と、検体コメントを表示する領域D14と、凝固時間及び混合比を表示する領域D15と、参考情報を表示する領域D16と、凝固時間をプロットしたグラフを表示する領域D17とを含む。
図9において、領域D15には、混合比、LAのスクリーニング用試薬(第1の凝固時間測定試薬)及び確認試験用試薬(第2の凝固時間測定試薬)による凝固時間が表示されている。混合比の欄において、「0/1」は正常血液検体を意味し、「1/2」は被検血漿率が50%(v/v)の混合検体を意味し、「1/1」は被検者の血液検体を意味する。
図9において、領域D16には、第1及び第2の指標値としてICAの値が表示されている。本実施形態では、領域D17には、第1の凝固時間測定試薬による凝固時間をプロットしたグラフが表示されることが好ましい。当該技術分野では、クロスミキシング試験は、通常、リン脂質濃度の低いスクリーニング用試薬を用いて行われるからである。
【0102】
本実施形態の装置は、取得した第1及び第2の指標値に基づいて、被検者の血液検体が、DACを含む血液検体であるかを判定し、その判定結果を参考情報として出力してもよい。
図10Aを参照して、制御装置による判定のフローを以下に説明する。
図10Aは、被検者の血液検体、正常血液検体及びそれらを体積比1:1で混合して得た混合検体の測定の結果から、血液検体の判定を行う場合の処理のフローを示す。ここでは、第1及び第2の指標値として、それぞれ上記の式(1)及び(2)で算出される値を取得し、取得した値と、第1及び第2の閾値とを比較して血液検体の判定を行なう場合を例として説明する。しかし、本実施形態は、この例のみに限定されるものではない。本実施形態の方法について述べたことを参照して、混合検体の混合比、指標値の種類は適宜変更できる。
【0103】
ステップS101において、制御装置40のCPU431は、測定部20から受信したデータ(散乱光量又は透過光量)に基づいて、光学的情報(散乱光強度、又は透過度もしくは吸光度)を取得する。ステップS102において、算出部403は、CPU431が取得した光学的情報から、ハードディスク434に記憶された凝固時間を算出するための式にしたがって、第1〜第6凝固時間を算出する。ステップS103において、CPU431は、第1〜第3凝固時間から、ハードディスク434に記憶された式(1)にしたがって、第1の指標値を算出する。また、CPU431は、第4〜第6凝固時間から、ハードディスク434に記憶された式(2)にしたがって、第2の指標値を算出する。
【0104】
ステップS104において、CPU431は、算出した第1の指標値と、ハードディスク434に記憶された第1の閾値とを比較する。第1の指標値が第1の閾値よりも低くないとき(すなわち、第1の指標値が第1の閾値より高いか又は第1の閾値と同じであるとき)、処理はステップS105に進行する。ステップS105において、CPU431は、算出した第2の指標値と、ハードディスク434に記憶された第2の閾値とを比較する。第2の指標値が第2の閾値よりも低くないとき(すなわち、第2の指標値が第2の閾値より高いか又は第2の閾値と同じであるとき)、処理はステップS106に進行する。ステップS106において、CPU431は、被検者の血液検体が、DACを含む検体であるとの判定結果を画像出力インターフェイス438に送信する。
【0105】
ステップS104において、第1の指標値が第1の閾値よりも低いとき、処理はステップS105に進行する。また、ステップS105において、第2の指標値が第2の閾値よりも低いとき、処理はステップS107に進行する。ステップS107において、CPU431は、被検者の血液検体が、DAC以外の凝固異常の原因を有する血液検体であるとの判定結果を画像出力インターフェイス438に送信する。
【0106】
ステップS108において、画像出力インターフェイス438は、判定結果を出力し、表示部41に表示させたり、プリンタに印刷させたりする。あるいは、判定結果を音声で出力してもよい。判定結果に関する参考情報は、「DACを含む疑い」などの文字情報でもよい。フラグのような標識でもよい。これにより、判定結果を、被検者の血液検体についての参考情報としてユーザに提供できる。さらに、参考情報として、第1及び第2の閾値を表示してもよい。なお、血液検体の判定は、本実施形態の分析装置による判定結果だけでなく、他の検査結果などの情報も考慮して行われることが望ましい。よって、本実施形態の分析装置による判定結果及び所定の閾値が参考情報であることを示すために、「(参考)」と表示してもよい。
【0107】
さらなる実施形態では、制御装置40は、被検者の血液検体が、DAC以外の凝固異常の原因を有する血液検体であると判定した場合、第1及び第2の指標値に基づいて、該被検者の血液検体が、LAを含む血液検体であるか又は凝固因子が欠損した血液検体であるかを判定することもできる。
図10Bを参照して、制御装置による判定のフローを以下に説明する。
【0108】
図10Bに示されるステップ201、ステップ202及びステップ203については、
図10Aのステップ101、ステップ102及びステップ103について述べたことと同様である。ステップS204において、CPU431は、算出した第1の指標値と、ハードディスク434に記憶された第1の閾値とを比較する。第1の指標値が第1の閾値よりも低くないとき(すなわち、第1の指標値が第1の閾値より高いか又は第1の閾値と同じであるとき)、処理はステップS205に進行する。ステップS205において、CPU431は、算出した第2の指標値と、ハードディスク434に記憶された第2の閾値とを比較する。第2の指標値が第2の閾値よりも低くないとき(すなわち、第2の指標値が第2の閾値より高いか又は第2の閾値と同じであるとき)、処理はステップS206に進行する。ステップS206において、CPU431は、被検者の血液検体が、DACを含む検体であるとの判定結果を画像出力インターフェイス438に送信する。
【0109】
ステップS205において、第2の指標値が第2の閾値よりも低いとき、処理はステップS207に進行する。ステップS207において、CPU431は、被検者の血液検体が、LAを含む血液検体であるとの判定結果を画像出力インターフェイス438に送信する。
【0110】
ステップS204において、第1の指標値が第1の閾値よりも低いとき、処理はステップS208に進行する。ステップS208において、CPU431は、算出した第2の指標値と、ハードディスク434に記憶された第2の閾値とを比較する。第2の指標値が第2の閾値よりも低いとき、処理はステップS209に進行する。ステップS209において、CPU431は、被検者の血液検体が、凝固因子の欠損した血液検体であるとの判定結果を画像出力インターフェイス438に送信する。
【0111】
ステップS208において、第2の指標値が第2の閾値よりも低くないとき(すなわち、第2の指標値が第2の閾値より高いか又は第2の閾値と同じであるとき)、処理はステップS210に進行する。ステップS210において、CPU431は、被検者の血液検体が、その他の凝固異常の原因を有する血液検体であるとの判定結果を画像出力インターフェイス438に送信する。
【0112】
ステップS211については、ステップS108について述べたことと同様である。表示部41の画面には、判定結果を「DACを含む疑い」、「LAを含む疑い」、「凝固因子欠損の疑い」などの文字で表示してもよい。
【0113】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0114】
実施例1
リン脂質濃度の異なる2種類の凝固時間測定試薬を用いて混合試験を行い、2種類の指標値を得ることにより、DACを含む血液検体と、LAなどの別の凝固異常の原因を有する血液検体とを区別できるかを検討した。
【0115】
(1) 試薬及び検体
(1.1) 凝固時間測定試薬
凝固時間測定試薬として、LA1 Screening Reagent(Lot No. 549855AA、Siemens社:以下、「第1試薬」という)及びLA2 Confirm Reagent(Lot No. 548732A、Siemens社:以下、「第2試薬」という)を用いた。第1試薬は、dRVVT測定に基づくLAのスクリーニング用試薬であり、ラッセル蛇毒及びリン脂質を含む。第2試薬は、dRVVT測定に基づくLAの確認試験用試薬であり、ラッセル蛇毒を含み且つ第1試薬よりも高い濃度でリン脂質を含む。
【0116】
(1.2) 血液検体
被検者の血液検体として、表1に示すLA含有血漿(13検体)、表2に示すリバーロキサバン含有血漿(10検体:以下、「DAC含有血漿」ともいう)、及び、表3に示す凝固因子(第II因子、第V因子、第VII因子又は第X因子)の欠損血漿を用いた。この実施例では、凝固因子の欠損の程度が異なる検体を得るため、各凝固因子の欠損血漿と正常血漿とを種々の比率で混合して、凝固因子の割合が20%、10%、5%、2.5%及び1%未満の血漿を調製した(20検体:以下、「凝固因子欠損血漿」ともいう)。なお、各凝固因子の割合が1%未満の血漿は、表3に示す血漿そのものである。これらの血漿を総称して、以下、「被検血漿」ともいう。また、正常血液検体として、正常血漿であるControl N(Lot No. 503197A:シスメックス株式会社)を用いた。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
(2) 凝固時間の測定
被検血漿(100μL)を37℃で4分間加温した後、第1試薬(100μL)を混合して、第1凝固時間を測定した。正常血漿(100μL)を37℃で4分間加温した後、第1試薬(100μL)を混合して、第2凝固時間を測定した。正常血漿(50μL)と被検血漿(50μL)とを混合し、得られた混合血漿を37℃で4分間加温した。そして、混合血漿に第1試薬(100μL)を混合して、第3凝固時間を測定した。第1試薬に代えて第2試薬を用いたこと以外は上記と同様にして、被検血漿から第4凝固時間を測定し、正常血漿から第5凝固時間を測定し、混合血漿から第6凝固時間を測定した。凝固時間の測定は、全自動凝固時間測定装置CS-5100(シスメックス株式会社)により行った。
【0121】
(3) 指標値の取得
各検体について測定した凝固時間から、以下の式(3)及び(4)にしたがって、第1及び第2の指標値を取得した。なお、第1の指標値は、LA検出のための混合試験の定量化指標として知られるICA(Index of Circulating Anticoagulant)である。
【0122】
(第1の指標値)=[(C−B)/A]×100 ・・・式(3)
(第2の指標値)=[(F−E)/D]×100 ・・・式(4)
(式中、A:第1凝固時間、B:第2凝固時間、C:被検血漿の比率が50%(v/v)の混合血漿の第3凝固時間、D:第4凝固時間、E:第5凝固時間、及び、F:被検血漿の比率が50%(v/v)の混合血漿の第6凝固時間)
【0123】
(4) 結果
第2凝固時間は37.2秒であり、第5凝固時間は34.4秒であった。被検血漿の測定結果の一例として、一部の検体の凝固時間(第1、第3、第4及び第6凝固時間)、並びに第1及び第2の指標値を表4に示す。LA群、DAC群及び凝固因子欠損群における第1及び第2の指標値を、それぞれ
図11A及びBに示す。
【0124】
【表4】
【0125】
図11Aに示されるように、第1の指標値は、LA群及びDAC群では高い傾向にあり、凝固因子欠損群では低い傾向にあることが分かった。
図11Bに示されるように、第2の指標値は、DAC群では高い傾向にあり、LA群及び凝固因子欠損群では低い傾向にあることが分かった。これらことから、DAC群、LA群及び凝固因子欠損群のそれぞれにおいて、第1及び第2の指標値の大きさに特徴があることが示された。例えば、DAC群は、第1及び第2の指標値の両方が高い傾向にあることが分かった。よって、リン脂質濃度の異なる2種類の凝固時間測定試薬を用いて混合試験を行い、2種類の指標値を得ることにより、被検者の血液検体が、DACを含む血液検体であるかを判定できることが示唆される。
【0126】
第1及び第2の指標値を用いることで、凝固異常の原因の鑑別が可能であるか否かを検討した。具体的には、表5に示すマトリックスに基づいて上記の被検血漿を分類し、分類結果について感度及び特異度を算出した。第1及び第2の指標値のカットオフ値(閾値)をいずれも12.0とした。結果を表6に示す。
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
このように、第1及び第2の指標値をそれぞれ閾値と比較し、その比較結果に基づいて、凝固異常の疑いのある血液検体が、DACを含む血液検体、LAを含む血液検体及び凝固因子欠損の血液検体のいずれであるかを高い精度で判定できることが示された。