特許第6873838号(P6873838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873838
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   A61M1/16 117
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-120203(P2017-120203)
(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-585(P2019-585A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 文彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 純明
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−118553(JP,U)
【文献】 特開平07−080060(JP,A)
【文献】 特開2000−325470(JP,A)
【文献】 特開2010−131146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を体外循環可能な動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有する血液回路と、
前記動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、
前記血液浄化手段に透析液を導入し得る透析液導入ラインと、
前記血液浄化手段からの排液を排出し得る透析液排出ラインと、
前記血液浄化手段に導入される透析液と当該血液浄化手段から排出される排液とが略同一流量となるよう送液可能な送液手段と、
前記血液浄化手段を介して前記血液回路を流れる血液から除水し得る除水ポンプと、
を具備した血液浄化装置であって、
前記透析液導入ラインにおける前記送液手段より下流側に一端が接続された除水ラインを有し、当該除水ラインに前記除水ポンプが配設されるとともに、前記除水ポンプは、前記除水ラインを介して前記透析液導入ラインの透析液を導出することにより、前記血液浄化手段に導入される透析液の流量を当該血液浄化手段から排出される排液の流量よりも低減させて除水可能とされ、且つ、前記送液手段及び除水ポンプは、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを経て送液可能とされるとともに、前記送液手段の吐出工程の期間内に限り前記除水ポンプが駆動されることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記除水ラインは、前記透析液導入ラインにおける前記送液手段より上流側に他端が接続されたことを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記除水ラインは、前記透析液排出ラインにおける前記送液手段より下流側に他端が接続されたことを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記送液手段の送液量と前記除水ポンプによる送液量とが略同一流量となるように当該送液手段及び除水ポンプを駆動させることにより、前記血液浄化手段に透析液を導入せず除水し得ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記送液手段及び除水ポンプは、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成ることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記送液手段の吐出工程において液体の吐出圧が所定値を超えたことを条件として、前記除水ポンプが駆動されることを特徴とする請求項5記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記送液手段及び除水ポンプの前記吸入工程及び吐出工程を同期可能な同期手段を具備するとともに、当該同期手段にて前記送液手段の吐出工程の期間内に前記除水ポンプの吸入工程を行わせ、当該送液手段の吸入工程の期間内に前記除水ポンプの吐出工程を行わせ得るよう構成されたことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記送液手段又は除水ポンプは、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成るとともに、前記吐出工程の初期及び終期における液体の吐出圧を上昇させ、且つ、その間の期間の液体の吐出圧を低下させることにより、当該吐出工程における液体の吐出量を所定量に維持しつつ送液可能とされたことを特徴とする請求項1〜7の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項9】
前記送液手段は、前記透析液導入ラインに接続されて当該透析液導入ラインの透析液を収容して吐出し得る給液側ポンプ室と、前記透析液排出ラインに接続されて当該透析液排出ラインの排液を吸入して収容し得る排液側ポンプ室を有する複式ポンプから成り、当該給液側ポンプ室の吐出量及び排液側ポンプ室の吸入量を略同一流量としつつ送液とされるとともに、前記除水ラインは、前記透析液導入ラインにおける前記給液側ポンプ室と前記血液浄化手段の接続部位との間に一端が接続されたことを特徴とする請求項1〜8の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液を体外循環させつつ浄化治療及び除水を行うための血液浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液浄化治療(透析治療)を行うための血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させるための血液回路と、該血液回路の途中に接続されたダイアライザと、しごき型の血液ポンプと、ダイアライザに透析液を導入し得る透析液導入ラインと、ダイアライザからの排液を排出し得る透析液排出ラインと、ダイアライザに導入される透析液とダイアライザから排出される排液とが略同一流量となるよう送液可能な送液ポンプと、透析液排出ラインにおける送液ポンプをバイパスするバイパスラインと、バイパスラインに配設され、患者の血液から水分を取り除くための除水ポンプとを有して構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、血液回路の先端に取り付けられた穿刺針を患者に穿刺した状態で血液ポンプを駆動させると、患者の血液が血液回路にて体外循環するとともに、ダイアライザにて血液浄化治療が行われることとなる。また、除水ポンプを駆動させると、ダイアライザに導入される透析液よりもダイアライザから排出される排液の流量の方が多くなるので、排液とともに患者の血液から除かれた水分が排出されて除水が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−136746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、除水ポンプが透析液排出ラインに接続されたバイパスラインに配設されているため、除水時、水分と共に排液が除水ポンプ内を流通し、排液に含まれる蛋白質等の老廃物が除水ポンプのポンプ室に付着する虞がある。かかる状態で長期間使用すると、ポンプ室の容量変化に伴って除水量の制御が難しくなってしまうことから、通常、洗浄消毒によって蛋白質等の老廃物を除去して精度を維持することが必要とされている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、除水時、除水ポンプに対する排液の流通を回避して除水性能及び除水精度を長期に亘って維持させることができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、患者の血液を体外循環可能な動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有する血液回路と、前記動脈側血液回路と静脈側血液回路との間に接続され、当該血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、前記血液浄化手段に透析液を導入し得る透析液導入ラインと、前記血液浄化手段からの排液を排出し得る透析液排出ラインと、前記血液浄化手段に導入される透析液と当該血液浄化手段から排出される排液とが略同一流量となるよう送液可能な送液手段と、前記血液浄化手段を介して前記血液回路を流れる血液から除水し得る除水ポンプとを具備した血液浄化装置であって、前記透析液導入ラインにおける前記送液手段より下流側に一端が接続された除水ラインを有し、当該除水ラインに前記除水ポンプが配設されるとともに、前記除水ポンプは、前記除水ラインを介して前記透析液導入ラインの透析液を導出することにより、前記血液浄化手段に導入される透析液の流量を当該血液浄化手段から排出される排液の流量よりも低減させて除水可能とされ、且つ、前記送液手段及び除水ポンプは、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを経て送液可能とされるとともに、前記送液手段の吐出工程の期間内に限り前記除水ポンプが駆動されることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記除水ラインは、前記透析液導入ラインにおける前記送液手段より上流側に他端が接続されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記除水ラインは、前記透析液排出ラインにおける前記送液手段より下流側に他端が接続されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記送液手段の送液量と前記除水ポンプによる送液量とが略同一流量となるように当該送液手段及び除水ポンプを駆動させることにより、前記血液浄化手段に透析液を導入せず除水し得ることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記送液手段及び除水ポンプは、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成ることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の血液浄化装置において、前記送液手段の吐出工程において液体の吐出圧が所定値を超えたことを条件として、前記除水ポンプが駆動されることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項5又は請求項6記載の血液浄化装置において、前記送液手段及び除水ポンプの前記吸入工程及び吐出工程を同期可能な同期手段を具備するとともに、当該同期手段にて前記送液手段の吐出工程の期間内に前記除水ポンプの吸入工程を行わせ、当該送液手段の吸入工程の期間内に前記除水ポンプの吐出工程を行わせ得るよう構成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記送液手段又は除水ポンプは、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成るとともに、前記吐出工程の初期及び終期における液体の吐出圧を上昇させ、且つ、その間の期間の液体の吐出圧を低下させることにより、当該吐出工程における液体の吐出量を所定量に維持しつつ送液可能とされたことを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記送液手段は、前記透析液導入ラインに接続されて当該透析液導入ラインの透析液を収容して吐出し得る給液側ポンプ室と、前記透析液排出ラインに接続されて当該透析液排出ラインの排液を吸入して収容し得る排液側ポンプ室を有する複式ポンプから成り、当該給液側ポンプ室の吐出量及び排液側ポンプ室の吸入量を略同一流量としつつ送液とされるとともに、前記除水ラインは、前記透析液導入ラインにおける前記給液側ポンプ室と前記血液浄化手段の接続部位との間に一端が接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、除水ポンプは、除水ラインを介して透析液導入ラインの透析液を導出することにより、血液浄化手段に導入される透析液の流量を当該血液浄化手段から排出される排液の流量よりも低減させて除水可能とされたので、除水時、除水ポンプに対する排液の流通を回避して除水性能及び除水精度を長期に亘って維持させることができる。
また、送液手段及び除水ポンプは、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを経て送液可能とされるとともに、送液手段の吐出工程の期間内に限り除水ポンプが駆動されるので、送液手段の吸入工程の期間内に除水ポンプが駆動してしまうのを確実に回避でき、血液浄化手段に導入された透析液が透析液導入ラインを逆流してしまうのを防止することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、除水ラインは、透析液導入ラインにおける送液手段より上流側に他端が接続されたので、除水時、除水ラインで導出された透析液を透析液導入ラインに戻すことができ、透析液を効率よく使用させることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、除水ラインは、透析液排出ラインにおける送液手段より下流側に他端が接続されたので、除水時、除水ラインで導出された透析液が透析液排出ラインを介して装置外に排出させることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、送液手段の送液量と除水ポンプによる送液量とが略同一流量となるように当該送液手段及び除水ポンプを駆動させることにより、血液浄化手段に透析液を導入せず除水し得るので、除水ポンプに対する排液の流通を回避して除水性能及び除水精度を長期に亘って維持させつつ血液浄化手段に透析液を導入しないで除水のみ行わせることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、送液手段及び除水ポンプは、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成るとともに、送液手段の吐出工程の期間内に限り除水ポンプが駆動されるので、送液手段の吸入工程の期間内に除水ポンプが駆動してしまうのを確実に回避でき、血液浄化手段に導入された透析液が透析液導入ラインを逆流してしまうのを防止することができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、送液手段の吐出工程において液体の吐出圧が所定値を超えたことを条件として、除水ポンプが駆動されるので、血液浄化手段に導入された透析液が透析液導入ラインを逆流してしまうのをより確実に防止することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、送液手段及び除水ポンプの吸入工程及び吐出工程を同期可能な同期手段を具備するとともに、当該同期手段にて送液手段の吐出工程の期間内に除水ポンプの吸入工程を行わせ、当該送液手段の吸入工程の期間内に除水ポンプの吐出工程を行わせ得るよう構成されたので、送液手段の吸入工程の期間内に除水ポンプの吐出工程が行われてしまうのを確実に回避でき、血液浄化手段に導入された透析液が透析液導入ラインを逆流してしまうのをより一層確実に防止することができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、送液手段又は除水ポンプは、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成るとともに、吐出工程の初期及び終期における液体の吐出圧を上昇させ、且つ、その間の期間の液体の吐出圧を低下させることにより、当該吐出工程における液体の吐出量を所定量に維持しつつ送液可能とされたので、送液手段の吐出工程において、吐出圧が小さい状態で除水ポンプの吸入工程が行われてしまう可能性を低下させることができ、血液浄化手段に導入された透析液が透析液導入ラインを逆流してしまうのを抑制することができる。
【0024】
請求項9の発明によれば、送液手段は、透析液導入ラインに接続されて当該透析液導入ラインの透析液を収容して吐出し得る給液側ポンプ室と、透析液排出ラインに接続されて当該透析液排出ラインの排液を吸入して収容し得る排液側ポンプ室を有する複式ポンプから成り、当該給液側ポンプ室の吐出量及び排液側ポンプ室の吸入量を略同一流量としつつ送液とされるとともに、除水ラインは、透析液導入ラインにおける給液側ポンプ室と血液浄化手段の接続部位との間に一端が接続されたので、複式ポンプにより透析液及び排液を送液しつつ、除水時、除水ポンプに対する排液の流通を回避して除水性能及び除水精度を長期に亘って維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図2】本発明の第2の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図3】本発明の第1及び第2の実施形態に適用される複式ポンプ(送液手段)を示す縦断面図
図4】同複式ポンプ(送液手段)を示す横断面図
図5】本発明の第1及び第2の実施形態に適用される除水ポンプを示す縦断面図
図6】同血液透析装置において適用される他の形態の除水ポンプを示す模式図
図7】同血液透析装置において適用されるさらに他の形態の除水ポンプを示す模式図
図8】同血液浄化装置の除水ポンプについて、逆流防止のための制御を行わない場合における吐出工程のプランジャの速度と吐出圧との関係を示すグラフ
図9】同血液浄化装置の複式ポンプ(送液手段)について、逆流防止のための制御を行った場合における吐出工程のプランジャの速度と吐出圧との関係を示すグラフ
図10】同血液浄化装置の複式ポンプ(送液手段)について、逆流防止のための他の制御を行った場合における除水ポンプの動作タイミング(除水速度が高い場合)を示すグラフ
図11】同血液浄化装置の複式ポンプ(送液手段)について、逆流防止のための他の制御を行った場合における除水ポンプの動作タイミング(除水速度が低い場合)を示すグラフ
図12】同血液浄化装置の複式ポンプ(送液手段)について、逆流防止のための他の制御を行った場合における除水ポンプの動作タイミング(同期させた場合)を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る血液浄化装置は、血液透析装置に適用されるものであり、図1に示すように、ダイアライザ5(血液浄化手段)に接続された血液回路3(動脈側血液回路3a及び静脈側血液回路3b)と、複式ポンプ1(送液手段)、除水ポンプ2、制御手段7、透析液導入ラインL1、透析液排出ラインL2及び除水ラインL3を有した装置本体Bとから主に構成されている。
【0027】
ダイアライザ5は、不図示の血液浄化膜(本実施形態においては中空糸型の血液透析膜又は血液透析濾過膜であるが、平膜型の血液透析膜を含む)を内在し、血液を導入する血液導入口5a及び導入した血液を導出する血液導出口5bが形成されるとともに、透析液を導入する透析液導入口5c及び導入した透析液を排出する透析液排出口5dが形成されたもので、血液導入口5aから導入した血液に中空糸膜を介して透析液を接触させて血液を浄化するものである。
【0028】
動脈側血液回路3aは、主に可撓性チューブから成り、一端がダイアライザ5の血液導入口5aに接続されて患者の血管から採取した血液をダイアライザ5の中空糸膜内に導くものである。かかる動脈側血液回路3aの他端には、動脈側穿刺針aが取り付けられるとともに、血液ポンプ4が配設されている。なお、本実施形態に係る血液ポンプ4は、しごき型のポンプとされている。
【0029】
静脈側血液回路3bは、動脈側血液回路3aと同様に主に可撓性チューブから成り、一端がダイアライザ5の血液導出口5bに接続されて中空糸膜内を通過した血液を導出させるものである。かかる静脈側血液回路3bの他端には、静脈側穿刺針bが取り付けられるとともに、途中に除泡のためのエアトラップチャンバ6が接続されている。これにより、動脈側穿刺針aで採取された患者の血液は、動脈側血液回路3aを介してダイアライザ5に至り、血液浄化がなされた後、静脈側血液回路3bを流動し、静脈側穿刺針bを介して患者の体内に戻ることとなる。
【0030】
このように、患者の血液が血液回路3によって体外循環され、その過程でダイアライザ5によって血液浄化治療がなされるのである。なお、本明細書においては、血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「動脈側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「静脈側」と称しており、「動脈側」及び「静脈側」とは、穿刺の対象となる血管が動脈及び静脈の何れかによって定義されるものではない。
【0031】
一方、ダイアライザ5の透析液導入口5c及び透析液排出口5dには、それぞれ透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2の端部が接続されており、当該透析液導入ラインL1を介してダイアライザ5に導入された透析液が、中空糸膜の外側を通過して透析液排出ラインL2から排液と共に排出され得るよう構成されている。すなわち、透析液導入ラインL1は、ダイアライザ5に透析液を導入し得るとともに、透析液排出ラインL2は、ダイアライザ5からの排液を排出し得るよう構成されているのである。
【0032】
装置本体Bは、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を有するとともに、複式ポンプ1、除水ポンプ2等を有している。複式ポンプ1は、透析液導入ラインL1と透析液排出ラインL2とに跨って配設され、駆動により、所定濃度に調製された透析液をダイアライザ5に導入させるとともに当該ダイアライザ5から排液を排出させるものである。なお、複式ポンプ1に代えて、透析液導入ラインL1の透析液をダイアライザ5に送液しつつダイアライザ5からの排液を排出させ得る他の形態の送液手段(バランスチャンバを有する送液手段等も含む)としてもよい。
【0033】
より具体的には、本実施形態に係る複式ポンプ1は、ダイアライザ5に導入される透析液と当該ダイアライザ5から排出される排液とが略同一流量となるよう送液可能なポンプから成り、図3、4に示すように、給液側ポンプ室1aと、排液側ポンプ室1bと、給液側ポンプ室1aに透析液を吸入させ得る給液側吸込み口C1と、当該給液側ポンプ室1aの透析液を吐出させ得る給液側吐出口C2と、排液側ポンプ室1bに透析液を吸入させ得る排液側吸込み口C3と、当該排液側ポンプ室1bの透析液を吐出させ得る排液側吐出口C4と、モータMと、プランジャNと、逆止弁(J1〜J4)とを有して構成されている。
【0034】
給液側ポンプ室1aは、プランジャNの往復動によって、給液側吸込み口C1から吸入した透析液を流通させて給液側吐出口C2から吐出させ得る所定容量の収容空間から成る。同様に、排液側ポンプ室1bは、プランジャNの往復動によって、排液側吸込み口C3から吸入した透析液を流通させて排液側吐出口C4から吐出させ得る所定容量の収容空間から成る。また、給液側吸込み口C1及び給液側吐出口C2は、それぞれ透析液導入ラインL1を構成する配管に接続されているとともに、排液側吸込み口C3及び排液側吐出口C4は、それぞれ透析液排出ラインL2を構成する配管に接続されている。
【0035】
プランジャNは、モータMによって給液側ポンプ室1a及び排液側ポンプ室1bに対して往復動可能とされるとともに、当該往復動によって、給液側吸込み口C1及び排液側吸込み口C3からそれぞれ給液側ポンプ室1a及び排液側ポンプ室1b内へ透析液を吸入し、その透析液を給液側吐出口C2及び排液側吐出口C4からそれぞれ吐出させて送液し得るものである。
【0036】
すなわち、モータMの出力軸Maには、カム部材Eが取り付けられているとともに、当該カム部材Eには、出力軸Maの軸線と異なる位置(回転中心に対して偏心した位置)にカム部Eaが突出形成されている。かかるカム部材Eは、モータMが組みつけられた状態で、プランジャNに形成された凹部Na内に位置するようになっている。また、カム部Eaには、ブロックスライダKが取り付けられており、モータMを駆動させると、当該ブロックスライダKがプランジャNを長手方向に押圧することとなり、図3中左右方向に往復動させるようになっている。
【0037】
逆止弁(J1、J2)は、透析液の流れを一方向に保ち逆流を防止する機能を有するバルブから成り、給液側ポンプ室1aと給液側吸込み口C1側の流路及び給液側吐出口C2側の流路との間にそれぞれ配設され、プランジャNの往復動に伴って生じる給液側ポンプ室1a内の液圧の変化に応じて開閉可能とされるとともに、開状態で透析液の流通を許容し、且つ、閉状態で透析液の流通を遮断するよう構成されている。
【0038】
同様に、逆止弁(J3、J4)は、透析液の流れを一方向に保ち逆流を防止する機能を有するバルブから成り、排液側ポンプ室1bと排液側吸込み口C3側の流路及び排液側吐出口C4側の流路との間にそれぞれ配設され、プランジャNの往復動に伴って生じる排液側ポンプ室1b内の液圧の変化に応じて開閉可能とされるとともに、開状態で透析液の流通を許容し、且つ、閉状態で透析液の流通を遮断するよう構成されている。
【0039】
しかして、モータMを駆動させると、プランジャNが一方側に変位して排液側ポンプ室1b側の端部(変位端Sb)に達する過程において、給液側吸込み口C1側の逆止弁J1及び排液側吐出口C4側の逆止弁J4が開状態とされるとともに、給液側吐出口C2側の逆止弁J2及び排液側吸込み口C3側の逆止弁J3が閉状態とされる。そして、プランジャNが一方の側端(変位端Sb)に達すると、全ての逆止弁(J1〜J4)が閉状態とされる。
【0040】
その後、プランジャNが他方側に変位して給液側ポンプ室1a側の端部(変位端Sa)に達する過程において、給液側吐出口C2側の逆止弁J2及び排液側吸込み口C3側の逆止弁J3が開状態とされるとともに、給液側吸込み口C1側の逆止弁J1及び排液側吐出口C4側の逆止弁J4が閉状態とされる。そして、プランジャNが他方の側端(変位端Sa)に達すると、全ての逆止弁(J1〜J4)が閉状態とされる。以降、プランジャNの往復動に伴って、上記と同様な逆止弁(J1〜J4)の開閉が行われる。
【0041】
このように、本実施形態に係る複式ポンプ1(送液手段)は、液体(ダイアライザ5に導入する透析液又はダイアライザ5から排出する透析液の排液)を吸入する吸入工程(すなわち、給液側ポンプ室1a及び排液側ポンプ室1bに透析液及び排液をそれぞれ吸入する吸入工程)とその吸入した液体を吐出する吐出工程(すなわち、給液側ポンプ室1a及び排液側ポンプ室1bに吸入された透析液及び排液をそれぞれ吐出する吐出工程)とを周期的に経て送液可能とされているのである。
【0042】
制御手段7は、例えば装置本体B内に配設されたマイコン等から成るもので、透析液導入ラインL1や透析液排出ラインL2等に配設された任意の電磁弁の開閉、或いは任意のクランプの開閉、複式ポンプ1や血液ポンプ4等の任意アクチュエータの駆動又は停止等に関する制御を行い得るとともに、除水時の除水ポンプ2の駆動又は停止等に関する制御を行い得るものとされている。
【0043】
ここで、本実施形態に係る血液浄化装置においては、図1に示すように、透析液導入ラインL1における複式ポンプ1より下流側の部位P1に一端が接続されるとともに、透析液導入ラインL1における複式ポンプ1より上流側の部位P2に他端が接続された除水ラインL3を有し、当該除水ラインL3に除水ポンプ2が配設されている。すなわち、除水ラインL3は、透析液導入ラインL1に接続された複式ポンプ1の給液側ポンプ室1aより下流側の部位P1(給液側ポンプ室1aとダイアライザ5との間の部位P1)と当該給液側ポンプ室1aより上流側の部位P2とに亘って延設され、複式ポンプ1の給液側ポンプ室1aをバイパスする流路から成る。
【0044】
除水ポンプ2は、ダイアライザ5を介して血液回路3を流れる血液から除水し得るもので、複式ポンプ1と同様、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成る。より具体的には、本実施形態に係る除水ポンプ2は、図5に示すように、ポンプ室2aと、ポンプ室2aに透析液を吸入させ得る吸込み口C5と、ポンプ室2aの透析液を吐出させ得る吐出口C6と、モータRと、カム部材2bと、リンク機構2cと、プランジャ2dと、逆止弁(Q1、Q2)とを有して構成されている。
【0045】
ポンプ室2aは、プランジャ2dの往復動によって、吸込み口C5から吸入した透析液を流通させて吐出口C6から吐出させ得る所定容量の収容空間から成る。吸込み口C5及び吐出口C6は、それぞれ除水ラインL3を構成する配管に接続されている。プランジャ2dは、モータRの駆動力がカム部材2b及びリンク機構2cを介して動作するもので、ポンプ室2aに対して往復動可能とされるとともに、当該往復動によって、吸込み口C5からポンプ室2a内へ透析液を吸入し、その透析液を吐出口C6から吐出させて送液し得るものである。
【0046】
すなわち、モータRの出力軸Raには、カム部材2bが取り付けられているとともに、当該カム部材2bには、リンク機構2cが取り付けられており、モータRを駆動させると、カム部材2b及びリンク機構2cが作動し、プランジャ2dを長手方向に押圧することとなり、図5中左右方向に往復動させるようになっている。
【0047】
逆止弁(Q1、Q2)は、透析液の流れを一方向に保ち逆流を防止する機能を有するバルブから成り、吸込み口C5側の流路及び吐出口C6側の流路にそれぞれ配設され、プランジャ2dの往復動に伴って生じるポンプ室2a内の液圧の変化に応じて開閉可能とされるとともに、開状態で透析液の流通を許容し、且つ、閉状態で透析液の流通を遮断するよう構成されている。
【0048】
しかして、モータRを駆動させると、プランジャ2dが一方側に変位する過程において、吸込み口C5側の逆止弁Q2が開状態とされるとともに、吐出口C6側の逆止弁Q1が閉状態とされる。そして、プランジャNが一方の側端に達すると、両方の逆止弁(Q1、Q2)が閉状態とされる。その後、プランジャ2dが他方側に変位する過程において、吐出口C6側の逆止弁Q1が開状態とされるとともに、吸込み口C5側の逆止弁Q2が閉状態とされる。
【0049】
そして、プランジャ2dが他方の側端に達すると、両方の逆止弁(Q1、Q2)が閉状態とされる。以降、プランジャ2dの往復動に伴って、上記と同様な逆止弁(Q1、Q2)の開閉が行われる。このように、本実施形態に係る除水ポンプ2は、透析液を吸入する吸入工程とその吸入した透析液を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能とされているのである。
【0050】
さらに、本実施形態に係る除水ポンプ2は、除水ラインL3に接続されており、除水時に駆動されることによって、除水ラインL3を介して透析液導入ラインL1の透析液を導出することにより、ダイアライザ5に導入される透析液の流量を当該ダイアライザ5から排出される排液の流量よりも低減させて除水可能とされている。
【0051】
すなわち、複式ポンプ1の駆動により、ダイアライザ5に導入される透析液と当該ダイアライザ5から排出される排液とが略同一流量とされているので、除水ポンプ2を駆動させてダイアライザ5に向かって流動する透析液を除水ラインL3にて導出させることにより、ダイアライザ5に導入される透析液の流量が低減され、その結果、相対的にダイアライザ5から排出される排液の流量の方が多くなる。これにより、ダイアライザ5に導入される透析液との差分だけ血液に含まれる水分が排液に含まれて導出され、除水が行われることとなる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る血液浄化装置は、ダイアライザ5に透析液を流さないで除水のみを行う「ECUM」(extracorporeal ultrafiltration method)(限外濾過治療)と称される治療モードを選択可能とされている。この「ECUM」モードを選択した場合、複式ポンプ1(送液手段)の送液量と除水ポンプ2による送液量とが略同一流量となるように複式ポンプ1及び除水ポンプ2を駆動させるよう構成されており、これにより、ダイアライザ5に透析液を導入せず除水することができる。
【0053】
本実施形態によれば、除水ポンプ2は、除水ラインL3を介して透析液導入ラインL1の透析液を導出することにより、ダイアライザ5に導入される透析液の流量を当該ダイアライザ5から排出される排液の流量よりも低減させて除水可能とされたので、除水時、除水ポンプ2に対する排液の流通を回避して除水性能及び除水精度を長期に亘って維持させることができる。特に、本実施形態に係る除水ラインL3は、透析液導入ラインL1における複式ポンプ1(送液手段)より上流側(部位P2)に他端が接続されたので、除水時、除水ラインL3で導出された透析液を透析液導入ラインL1に戻すことができ、透析液を効率よく使用させることができる。
【0054】
また、複式ポンプ1(送液手段)の送液量と除水ポンプ2による送液量とが略同一流量となるように当該複式ポンプ1及び除水ポンプ2を駆動させることにより、ダイアライザ5に透析液を導入せず除水し得るので、除水ポンプ2に対する排液の流通を回避して除水性能及び除水精度を長期に亘って維持させつつダイアライザ5に透析液を導入しないで除水のみ行わせる(「ECUM」モードを選択する)ことができる。
【0055】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、第1の実施形態と同様、血液透析装置に適用されるものであり、図2に示すように、ダイアライザ5(血液浄化手段)に接続された血液回路3(動脈側血液回路3a及び静脈側血液回路3b)と、複式ポンプ1(送液手段)、除水ポンプ2、制御手段7、透析液導入ラインL1、透析液排出ラインL2及び除水ラインL4を有した装置本体Bとから主に構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0056】
ここで、本実施形態に係る血液浄化装置においては、図2に示すように、透析液導入ラインL1における複式ポンプ1より下流側の部位P1に一端が接続されるとともに、透析液排出ラインL2における複式ポンプ1より下流側の部位P3に他端が接続された除水ラインL4を有し、当該除水ラインL4に除水ポンプ2が配設されている。すなわち、除水ラインL4は、透析液導入ラインL1に接続された複式ポンプ1の給液側ポンプ室1aより下流側の部位P1(給液側ポンプ室1aとダイアライザ5との間の部位P1)と透析液排出ラインL2に接続された複式ポンプ1の排液側ポンプ室1bより下流側の部位P3とに亘って延設された流路から成る。
【0057】
除水ポンプ2は、ダイアライザ5を介して血液回路3を流れる血液から除水し得るもので、複式ポンプ1と同様、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成る。本実施形態に係る除水ポンプ2は、除水ラインL4に接続されており、除水時に駆動されることによって、除水ラインL4を介して透析液導入ラインL1の透析液を導出することにより、ダイアライザ5に導入される透析液の流量を当該ダイアライザ5から排出される排液の流量よりも低減させて除水可能とされている。
【0058】
すなわち、複式ポンプ1の駆動により、ダイアライザ5に導入される透析液と当該ダイアライザ5から排出される排液とが略同一流量とされているので、除水ポンプ2を駆動させてダイアライザ5に向かって流動する透析液を除水ラインL4にて導出させることにより、ダイアライザ5に導入される透析液の流量が低減され、その結果、相対的にダイアライザ5から排出される排液の流量の方が多くなる。これにより、ダイアライザ5に導入される透析液との差分だけ血液に含まれる水分が排液に含まれて導出され、除水が行われることとなる。
【0059】
さらに、本実施形態に係る血液浄化装置は、第1の実施形態と同様、ダイアライザ5に透析液を流さないで除水のみを行う「ECUM」(extracorporeal ultrafiltration method)(限外濾過治療)と称される治療モードを選択可能とされている。この「ECUM」モードを選択した場合、複式ポンプ1(送液手段)の送液量と除水ポンプ2による送液量とが略同一流量となるように複式ポンプ1及び除水ポンプ2を駆動させるよう構成されており、これにより、ダイアライザ5に透析液を導入せず除水することができる。かかる「ECUM」モードの治療によれば、ダイアライザ5による拡散が行われず血液中の溶質の除去が回避されるため、血圧の低下を抑えることができる。
【0060】
本実施形態によれば、除水ポンプ2は、除水ラインL4を介して透析液導入ラインL1の透析液を導出することにより、ダイアライザ5に導入される透析液の流量を当該ダイアライザ5から排出される排液の流量よりも低減させて除水可能とされたので、除水時、除水ポンプ2に対する排液の流通を回避して除水性能及び除水精度を長期に亘って維持させることができる。特に、本実施形態に係る除水ラインL4は、透析液排出ラインL2における複式ポンプ1(送液手段)より下流側(部位P3)に他端が接続されたので、除水時、除水ラインL4で導出された透析液が透析液排出ラインL2を介して装置外に排出させることができる。
【0061】
また、複式ポンプ1(送液手段)の送液量と除水ポンプ2による送液量とが略同一流量となるように当該複式ポンプ1及び除水ポンプ2を駆動させることにより、ダイアライザ5に透析液を導入せず除水し得るので、除水ポンプ2に対する排液の流通を回避して除水性能及び除水精度を長期に亘って維持させつつダイアライザ5に透析液を導入しないで除水のみ行わせる(「ECUM」モードを選択する)ことができる。
【0062】
しかるに、上記第1及び第2の実施形態における除水ポンプ2に代えて、図6に示す除水ポンプ2’又は図7に示す除水ポンプ2”としてもよい。除水ポンプ2’、2”は、図6、7に示すように、ダイアフラム8aにより画成された隔室D1、D2を有するチャンバ8と、しごき型ポンプ又はダイアフラムポンプ等から成るエアポンプ9と、一端が除水ラインL3に接続されるとともに他端がチャンバ8の隔室D1に接続された流路L5と、エアポンプ9が配設され、且つ、一端がチャンバ8の隔室D2に接続されるとともに他端が大気開放された流路L6とを有して構成されている。なお、除水ポンプ2’、2”は、第1の実施形態に係る除水ラインL3に接続されているが、第2の実施形態に係る除水ラインL4に接続されたものとしてもよい。
【0063】
除水ポンプ2’は、除水ラインL3に接続されたもので、図6に示すように、除水ラインL3における流路L5との接続部位P4より上流側(同図中右側)に電磁弁V1a(他のクランプ手段であってもよい)が接続されるとともに、下流側(同図中左側)に電磁弁V1b(他のクランプ手段であってもよい)が接続されている。そして、除水ポンプ2’を駆動させると、電磁弁V1aが開状態及び電磁弁V1bが閉状態とされるとともに、エアポンプ9が隔室D2内の空気を大気に放出するように駆動し、隔室D1内に部位P1の透析液を導入する。
【0064】
その後、隔室D1内の透析液が満杯になった時点(或いは所定量を超えた時点)で、電磁弁V1aが閉状態及び電磁弁V1bが開状態とされるとともに、エアポンプ9が隔室D2内に空気を送り込むように駆動し、隔室D1内の透析液を部位P2まで流動させる。かかる動作を繰り返し行うことにより、除水ラインL3を介して透析液導入ラインL1の透析液を導出することができ、ダイアライザ5に導入される透析液の流量を当該ダイアライザ5から排出される排液の流量よりも低減させて除水することができる。
【0065】
一方、除水ポンプ2”は、除水ラインL3に接続されたもので、図7に示すように、除水ラインL3における流路L5との接続部位P4より上流側(同図中右側)に逆止弁V2aが接続されるとともに、下流側(同図中左側)に逆止弁V2bが接続されている。そして、除水ポンプ2”を駆動させると、エアポンプ9が隔室D2内の空気を大気に放出するように駆動し、隔室D1内に部位P1の透析液を導入する。このとき、逆止弁V2aによる液体の流通が許容され且つ逆止弁V2bによる液体の流通が遮断された状態となる。
【0066】
その後、隔室D1内の透析液が満杯になった時点(或いは所定量を超えた時点)で、エアポンプ9が隔室S2内に空気を起こり込むように駆動し、隔室D1内の透析液を部位P2まで流動させる。このとき、逆止弁V2aによる液体の流通が遮断され且つ逆止弁V2bによる液体の流通が許容された状態となる。かかる動作を繰り返し行うことにより、除水ラインL3を介して透析液導入ラインL1の透析液を導出することができ、ダイアライザ5に導入される透析液の流量を当該ダイアライザ5から排出される排液の流量よりも低減させて除水することができる。
【0067】
次に、第1、第2の実施形態の如く除水ラインL3、L4を有した血液浄化装置において、透析液導入ラインL1に対してダイアライザ5から透析液が逆流してしまうのを防止する方法について説明する。
この場合の複式ポンプ1(又は除水ポンプ2)は、上述したように、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成るとともに、吐出工程の初期及び終期における液体の吐出圧を上昇させ、且つ、その間の期間の液体の吐出圧を低下させることにより、当該吐出工程における液体(透析液)の吐出量を所定量に維持しつつ送液可能とされている。
【0068】
例えば、モータM(図3参照)を通常通り駆動(グラフ中α1で示すように駆動速度が一定の場合)させると、図8に示すように、複式ポンプ1の吐出工程において、グラフ中β1で示すように、モータMの回転角度に対して吐出圧が緩やかな放物線状に変化することとなり、複式ポンプ1の吐出圧が低い時間帯が比較的大きくなってしまう。このように複式ポンプ1の吐出圧が低い時間帯において、除水ポンプ2の吸入工程が重なってしまうと、複式ポンプ1の吐出圧より除水ポンプ2の吸入圧の方が大きい場合、ダイアライザ5から透析液が逆流してしまう。なお、同図において、α1は速度の推移(回転速度)、β1は圧力の推移をそれぞれ示している。
【0069】
かかる逆流を回避するため、本実施形態においては、図9に示すように、複式ポンプ1の吐出工程の初期(開始から所定時間後の間)及び終期(終了まで所定時間前から終了までの間)において、グラフ中α2で示すように、モータMの駆動を速くする(プランジャNの速度を相対的に大きくする)とともに、その間の期間において、モータMの駆動を遅くする(プランジャNの速度を相対的に小さくする)よう構成されている。なお、同図において、α2は速度(回転速度)の推移、β2は圧力の推移をそれぞれ示している。
【0070】
これにより、グラフ中β2で示すように、吐出工程の初期及び終期における液体の吐出圧を上昇させ、且つ、その間の期間の液体の吐出圧を低下させることにより、当該吐出工程における液体の吐出量を所定量に維持しつつ送液することができる。したがって、複式ポンプ1(送液手段)の吐出工程において、吐出圧が小さい状態で除水ポンプ2の吸入工程が行われてしまう可能性を低下させることができ、血液浄化手段に導入された透析液が透析液導入ラインL1を逆流してしまうのを抑制することができる。
【0071】
次に、第1、第2の実施形態の如く除水ラインL3、L4を有した血液浄化装置において、透析液導入ラインL1に対してダイアライザ5から透析液が逆流してしまうのを防止する他の方法について説明する。
この場合の複式ポンプ1(及び除水ポンプ2)は、上述したように、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成るとともに、図10、11に示すように、複式ポンプ1の吐出工程の期間T内に限り除水ポンプ2が駆動される(電気的にONされる)よう構成されている。
【0072】
特に、本実施形態の逆流防止方法においては、複式ポンプ1(送液手段)の吐出工程において液体(透析液)の吐出圧が所定値(図10図11の「d」)を超えたことを条件として、除水ポンプ2が駆動されるようになっている。例えば、除水速度が高い場合、図10に示すように、複式ポンプ1の吐出圧(図1、2で示される部位P1における圧力)がdを超える期間Tであって、吐出圧(部位P1における圧力)がd1を超える期間T1にて除水ポンプ2が駆動されるとともに、除水速度が低い場合、図11に示すように、複式ポンプ1の吐出圧(図1、2で示される部位P1における圧力)がdを超える期間Tであって、吐出圧(部位P1における圧力)がd2(d1<d2)を超える期間T2にて除水ポンプ2が駆動されるようになっている。
【0073】
かかる実施形態に係る逆流防止方法によれば、複式ポンプ1(送液手段)の吐出工程の期間内に限り除水ポンプ2が駆動されるので、複式ポンプ1の吸入工程の期間内に除水ポンプ2が駆動してしまうのを確実に回避でき、ダイアライザ5(血液浄化手段)に導入された透析液が透析液導入ラインL1を逆流してしまうのを防止することができる。特に、複式ポンプ1の吐出工程において液体の吐出圧が所定値を超えたことを条件として、除水ポンプ2が駆動されるようにすれば、ダイアライザ5に導入された透析液が透析液導入ラインL1を逆流してしまうのをより確実に防止することができる。
【0074】
次に、第1、第2の実施形態の如く除水ラインL3、L4を有した血液浄化装置において、透析液導入ラインL1に対してダイアライザ5から透析液が逆流してしまうのを防止するさらに他の方法について説明する。
この場合の複式ポンプ1(送液手段)及び除水ポンプ2は、上述したように、吸入工程及び吐出工程を行わせるプランジャ(N、2d)をそれぞれ有し、当該複式ポンプ1のプランジャNと除水ポンプ2のプランジャ2dとを、例えばカムやリンク等を介して連結して同期可能な同期手段(不図示)を具備するとともに、当該同期手段にて複式ポンプ1の吐出工程の期間内に除水ポンプ2の吸入工程を行わせ、当該複式ポンプ1の吸入工程の期間内に除水ポンプ2の吐出工程を行わせ得るよう構成されている。
【0075】
例えば、図12に示すように、横軸を時間、縦軸を部位P1における透析液の流量とし、複式ポンプ1の流量変化をW1及び除水ポンプ2の流量変化をW2とした場合、同期手段によって、複式ポンプ1の吐出工程の期間内に除水ポンプ2の吸入工程を行わせ、当該複式ポンプ1の吸入工程の期間内に除水ポンプ2の吐出工程を行わせるようになっている。なお、同図においては、縦軸の0点より上方が部位P1からダイアライザ5に向かう流量、及び縦軸の0点より下方が部位P1から除水ラインL3に向かう流量を示している。
【0076】
これにより、複式ポンプ1(送液手段)の吸入工程の期間内に除水ポンプ2の吐出工程が行われてしまうのを確実に回避でき、ダイアライザ5(血液浄化手段)に導入された透析液が透析液導入ラインL1を逆流してしまうのをより一層確実に防止することができる。なお、同期手段は、カムやリンク等によってプランジャを物理的に連結するものに限らず、電気的に制御して同期させるものであってもよい。
【0077】
上記実施形態によれば、送液手段は、透析液導入ラインL1に接続されて当該透析液導入ラインL1の透析液を収容して吐出し得る給液側ポンプ室1aと、透析液排出ラインL2に接続されて当該透析液排出ラインL2の排液を吸入して収容し得る排液側ポンプ室1bを有する複式ポンプ1から成り、当該給液側ポンプ室1aの吐出量及び排液側ポンプ室1bの吸入量を略同一流量としつつ送液とされるとともに、除水ライン(L3、L4)は、透析液導入ラインL1における給液側ポンプ室1aとダイアライザ5(血液浄化手段)の接続部位との間に一端が接続されたので、複式ポンプ1により透析液及び排液を送液しつつ、除水時、除水ポンプに対する排液の流通を回避して除水性能及び除水精度を長期に亘って維持させることができる。
【0078】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば除水ライン(L3、L4)は、透析液導入ラインL1における複式ポンプ1(送液手段)より下流側に一端が接続されていれば、他端が透析液導入ラインL1又は透析液排出ラインL2とは異なる部位(直接、装置本体Bの外部に排出する等)に接続されたものとしてもよい。また、本実施形態に係る複式ポンプ1(送液手段)及び除水ポンプ2は、液体を吸入する吸入工程とその吸入した液体を吐出する吐出工程とを周期的に経て送液可能なポンプから成るが、何れか一方又は両方が吸入工程及び吐出工程を経ないで送液し得るものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
透析液導入ラインにおける送液手段より下流側に一端が接続された除水ラインを有し、当該除水ラインに除水ポンプが配設されるとともに、除水ポンプは、除水ラインを介して透析液導入ラインの透析液を導出することにより、血液浄化手段に導入される透析液の流量を当該血液浄化手段から排出される排液の流量よりも低減させて除水可能とされた血液浄化装置であれば、他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 複式ポンプ(送液手段)
1a 給液側ポンプ室
1b 排液側ポンプ室
2 除水ポンプ
2a ポンプ室
2b カム部材
2c リンク機構
2d プランジャ
3 血液回路
3a 動脈側血液回路
3b 静脈側血液回路
4 血液ポンプ
5 ダイアライザ(血液浄化手段)
6 エアトラップチャンバ
7 制御手段
8 チャンバ
9 エアポンプ
B 装置本体
L1 透析液導入ライン
L2 透析液排出ライン
L3 除水ライン
L4 除水ライン
M モータ
Ma 出力軸
R モータ
Ra 出力軸
E カム部材
Ea カム部
N プランジャ
Na 凹部
K ブロックスライダ
J1〜J4 逆止弁
Q1、Q2 逆止弁
C1 給液側吸込み口
C2 給液側吐出口
C3 排液側吸込み口
C4 排液側吐出口
C5 吸込み口
C6 吐出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12