特許第6873843号(P6873843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873843静電型トランスデューサおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873843
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】静電型トランスデューサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/02 20060101AFI20210510BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20210510BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H04R19/02
   H04R19/04
   H04R31/00 C
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-125881(P2017-125881)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-93467(P2018-93467A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2020年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-228720(P2016-228720)
(32)【優先日】2016年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】中野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】那須 将樹
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 貴範
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0221852(US,A1)
【文献】 特開2014−239647(JP,A)
【文献】 特開2008−277729(JP,A)
【文献】 特開2012−065426(JP,A)
【文献】 特開2008−251833(JP,A)
【文献】 特開2003−052182(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/056472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/02
H04R 19/04
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電型ユニットを備える静電型トランスデューサであって、
前記静電型ユニットは、
帯状に形成された第一電極シートと、帯状に形成され、前記第一電極シートの幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を前記第一電極シートの幅方向の第一端に合わせた状態で前記第一電極シートの両面に積層される2枚の第一誘電体シートとを備える第一積層シートと、
帯状に形成された第二電極シートと、帯状に形成され、前記第二電極シートの幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を前記第二電極シートの幅方向の第一端に合わせた状態で前記第二電極シートの両面に積層される2枚の第二誘電体シートとを備える第二積層シートと、
を備え、
前記静電型ユニットは、前記第一積層シートおよび前記第二積層シートによりロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成されており、
前記第一積層シートは、ロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成され、
前記第二積層シートは、前記第一積層シートに積層された状態で、前記第一積層シートと共にロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成され、
前記第一電極シートと前記第二電極シートとは、幅方向にオフセットされており、
前記第一電極シートは、前記ロール状の軸方向の第一端面に露出し、
前記第二電極シートは、前記ロール状の軸方向の第二端面に露出する、静電型トランスデューサ。
【請求項2】
前記第一積層シートおよび前記第二積層シートの少なくとも一方において、前記帯状の長手方向の第一端および第二端の少なくとも一方は、前記ロール状より小さな曲率半径にカールされている、請求項1に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項3】
前記第一積層シートおよび前記第二積層シートの少なくとも一方において、前記静電型ユニットにおける前記ロール状の内層側の端は、前記ロール状より小さな曲率半径にカールされている、請求項2に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項4】
前記第一積層シートにおいて、前記静電型ユニットにおける前記ロール状の内層側の端は、前記ロール状より小さな曲率半径にカールされ、
前記第二積層シートにおいて、前記静電型ユニットにおける前記ロール状の内層側の端は、前記ロール状より小さな曲率半径にカールされている、請求項3に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項5】
前記第一積層シートにおいて、前記2枚の第一誘電体シートの前記帯状の長手方向の両端は、前記第一電極シートの前記帯状の長手方向の両端に対して、長手方向の外側に位置し、
前記第一電極シートの前記帯状の長手方向の両端は、前記2枚の第一誘電体シートにより塞がれている、請求項1に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項6】
前記第一電極シートは、正極電位に接続され、
前記第二電極シートは、グランド電位に接続される、請求項5に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項7】
前記2枚の第一誘電体シートの前記帯状の長手方向の第一端から前記第一電極シートの前記帯状の長手方向の第一端までの長さは、前記2枚の第一誘電体シートの一方の厚み以上に設定され、
前記2枚の第一誘電体シートの前記帯状の長手方向の第二端から前記第一電極シートの前記帯状の長手方向の第二端までの長さは、前記2枚の第一誘電体シートの一方の厚み以上に設定されている、請求項5または6に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項8】
前記第二積層シートにおいて、前記2枚の第二誘電体シートの前記帯状の長手方向の両端は、前記第二電極シートの前記帯状の長手方向の両端に対して、長手方向の外側に位置し、
前記第二電極シートの前記帯状の長手方向の両端は、前記2枚の第二誘電体シートにより塞がれている、請求項1、5、6または7に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項9】
前記2枚の第二誘電体シートの前記帯状の長手方向の第一端から前記第二電極シートの前記帯状の長手方向の第一端までの長さは、前記2枚の第二誘電体シートの一方の厚み以上に設定され、
前記2枚の第二誘電体シートの前記帯状の長手方向の第二端から前記第二電極シートの前記帯状の長手方向の第二端までの長さは、前記2枚の第二誘電体シートの一方の厚み以上に設定されている、請求項8に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項10】
前記静電型ユニットにおける前記ロール状の最内層の少なくとも一周は、前記第一積層シートのみ、または、前記第二積層シートのみで構成されている、請求項1−9の何れか一項に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項11】
前記第二電極シートは、グランド電位に接続され、
前記静電型ユニットにおける前記ロール状の最外層の少なくとも一周は、前記グランド電位に接続されている前記第二積層シートのみで構成されている、請求項1−10の何れか一項に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項12】
前記静電型トランスデューサは、前記静電型ユニットにおける前記ロール状の外周面のうち、少なくとも扁平面を被覆する弾性体をさらに備える、請求項1−11の何れか一項に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項13】
前記弾性体は、前記静電型ユニットにおける前記ロール状の外周面を全周に亘って被覆する、請求項12に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項14】
前記弾性体の弾性率は、前記静電型ユニットの弾性率より小さい、請求項12または13に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項15】
前記弾性体の損失係数tanδは、所定条件下において、前記静電型ユニットの損失係数tanδと同等以下である、請求項12−14の何れか一項に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項16】
前記静電型ユニットにおける前記ロール状の最外層は、前記静電型ユニットにおける前記ロール状の内部よりも弾性率が大きい、請求項1−15の何れか一項に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項17】
帯状に形成された第一電極シートと、帯状に形成され、前記第一電極シートの幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を前記第一電極シートの幅方向の第一端に合わせた状態で前記第一電極シートの両面に積層される2枚の第一誘電体シートとを備える第一積層シートを製造する第一積層シート製造工程と、
帯状に形成された第二電極シートと、帯状に形成され、前記第二電極シートの幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を前記第二電極シートの幅方向の第一端に合わせた状態で前記第二電極シートの両面に積層される2枚の第二誘電体シートとを備える第二積層シートを製造する第二積層シート製造工程と、
前記第一積層シートと前記第二積層シートとが積層された複合積層シートを製造する複合積層シート製造工程と、
前記複合積層シートをロール状に巻き回しかつ扁平状に形成することで扁平ロール体を製造する扁平ロール工程と、
を備え、
前記複合積層シートにおいて前記第一電極シートと前記第二電極シートとは、幅方向にオフセットされており、
前記複合積層シートにおいて前記第一電極シートは、前記ロール状の軸方向の第一端面に露出し、
前記複合積層シートにおいて前記第二電極シートは、前記ロール状の軸方向の第二端面に露出する、静電型トランスデューサの製造方法。
【請求項18】
前記静電型トランスデューサの製造方法は、前記扁平ロール体における前記ロール状の軸方向の第一端および第二端を切断することで、前記第一電極シートおよび前記第二電極シートを露出させる切断工程をさらに備える、請求項17に記載の静電型トランスデューサの製造方法。
【請求項19】
前記複合積層シート製造工程は、前記第一積層シートと前記第二積層シートとを積層する際に、前記第一積層シートおよび前記第二積層シートの少なくとも一方において、前記帯状の長手方向の第一端および第二端の少なくとも一方を、前記ロール状より小さな曲率半径にカールする、請求項17または18に記載の静電型トランスデューサの製造方法。
【請求項20】
前記第一積層シート製造工程は、前記2枚の第一誘電体シートの前記帯状の長手方向の両端が、前記第一電極シートの前記帯状の長手方向の両端に対して、長手方向の外側に位置するように、かつ、前記第一電極シートの前記帯状の長手方向の両端が、前記2枚の第一誘電体シートにより塞がれるように、前記第一積層シートを製造する、請求項17または18に記載の静電型トランスデューサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型トランスデューサおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電型トランスデューサにおいて、電極と誘電体の積層数が多いほど、静電容量が大きくなる。そこで、静電型トランスデューサの構造として、積層数を多くした構成を容易に形成できることが求められている。
【0003】
静電型トランスデューサとは異なるタイプの装置について、特許文献1−4に記載されたものが知られている。特許文献1には、電歪材料を用いた感覚提示装置が記載されている。当該装置は、電歪材料層の片面に第一電極を形成した第一シートと、電歪材料層の片面に第二電極を形成した第二シートとを準備し、2枚のシートを第一電極と第二電極とが電歪材料層を介して交互に配置されるように重ね合わせ、重ね合わせた2枚のシートを芯巻に巻回し、芯巻を抜き出した後に扁平化することにより製造される(当該文献の図4参照)。
【0004】
特許文献2には、圧電素子を用いた装置が記載されている。当該装置は、圧電性を有するシート基材の両面に電極を設け、シート基材をロール状に巻き回すことによりロール体を形成することで製造される。そして、接続電極が、それぞれロール体の軸方向の両端面に配置されている。
【0005】
特許文献3には、誘電アクチュエータが記載されている。当該アクチュエータは、誘電エラストマー層と導電ゴム層とを交互に厚み方向に交互に積層し、導電ゴム層を誘電エラストマー層に対して幅方向に順次ずらして積層し、積層したシート体を芯材に渦巻き状に巻き付けることにより製造される。
【0006】
特許文献4には、圧電素子を用いた装置が記載されている。当該装置では、上下面に電極薄膜が形成された圧電素子を交互に上下面を逆にして多数積層され、各電極薄膜をそれぞれ共通接続するように側面電極が形成されている。当該製造方法は、枚葉積層法と言われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−182374号公報
【特許文献2】特開2005−312230号公報
【特許文献3】特開2012−65426号公報
【特許文献4】特公昭63−10594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
静電型トランスデューサにおいて、特許文献4に記載のような枚葉積層法よりも、特許文献1−3に記載のようなロール状に巻き回す方法が、より効率的に積層数を多数にすることができる。
【0009】
しかし、特許文献1−3に記載のように、ロール状に形成する前において、電極が全面に亘って露出していると、取り扱いに注意を要する。例えば、露出する電極に傷などの欠陥が生じるおそれがある。
【0010】
本発明は、ロール状に巻き回す方法を適用することにより積層数を多数にしつつ、取り扱い性が良好な静電型トランスデューサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る静電型トランスデューサは、静電型ユニットを備える。静電型ユニットは、帯状に形成された第一電極シートと、帯状に形成され、前記第一電極シートの幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を前記第一電極シートの幅方向の第一端に合わせた状態で前記第一電極シートの両面に積層される2枚の第一誘電体シートとを備える第一積層シートと、帯状に形成された第二電極シートと、帯状に形成され、前記第二電極シートの幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を前記第二電極シートの幅方向の第一端に合わせた状態で前記第二電極シートの両面に積層される2枚の第二誘電体シートとを備える第二積層シートと、を備える。
【0012】
前記静電型ユニットは、前記第一積層シートおよび前記第二積層シートによりロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成されている。前記第一積層シートは、ロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成されている。前記第二積層シートは、前記第一積層シートに積層された状態で、前記第一積層シートと共にロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成されている。
【0013】
前記第一電極シートと前記第二電極シートとは、幅方向にオフセットされている。前記第一電極シートは、前記ロール状の軸方向の第一端面に露出し、前記第二電極シートは、前記ロール状の軸方向の第二端面に露出する。
【0014】
本発明に係る静電型トランスデューサによれば、静電型ユニットは、第一積層シートおよび第二積層シートによりロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成されている。従って、容易に、多数の電極および多数の誘電体を積層することができる。さらに、静電型ユニットを構成する第一積層シートは、2枚の第一誘電体シートにより第一電極シートを挟んでいる。従って、第一積層シートにおいて、第一電極シートの面状の部分が、2枚の第一誘電体シートにより被覆されている。すなわち、第一積層シートにおいて、第一電極シートは、面状の部分が全面に亘って露出していない。第二積層シートも同様である。そのため、第一積層シートおよび第二積層シートの取り扱い性が良好であり、第一電極シートおよび第二電極シートに対する欠陥の発生を抑制できる。
【0015】
本発明に係る静電型トランスデューサの製造方法は、帯状に形成された第一電極シートと、帯状に形成され、前記第一電極シートの幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を前記第一電極シートの幅方向の第一端に合わせた状態で前記第一電極シートの両面に積層される2枚の第一誘電体シートとを備える第一積層シートを製造する第一積層シート製造工程と、帯状に形成された第二電極シートと、帯状に形成され、前記第二電極シートの幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を前記第二電極シートの幅方向の第一端に合わせた状態で前記第二電極シートの両面に積層される2枚の第二誘電体シートとを備える第二積層シートを製造する第二積層シート製造工程と、前記第一積層シートと前記第二積層シートとが積層された複合積層シートを製造する複合積層シート製造工程と、前記複合積層シートをロール状に巻き回しかつ扁平状に形成することで扁平ロール体を製造する扁平ロール工程とを備える。
【0016】
前記複合積層シートにおいて前記第一電極シートと前記第二電極シートとは、幅方向にオフセットされている。前記複合積層シートにおいて前記第一電極シートは、前記ロール状の軸方向の第一端面に露出し、前記複合積層シートにおいて前記第二電極シートは、前記ロール状の軸方向の第二端面に露出する。
【0017】
本発明に係る製造方法によれば、第一積層シート製造工程にて製造される第一積層シートは、2枚の第一誘電体シートにより第一電極シートを挟んで構成されている。従って、第一積層シートにおいて、第一電極シートの面状の部分が、2枚の第一誘電体シートにより被覆されている。すなわち、第一積層シートにおいて、第一電極シートは、面状の部分が全面に亘って露出していない。第二積層シートも同様である。そのため、第一積層シートおよび第二積層シートの取り扱い性が良好であり、第一電極シートおよび第二電極シートに対する欠陥の発生を抑制できる。そして、扁平ロール工程にて、第一積層シートと第二積層シートが積層された複合積層シートが、ロール状に巻き回しかつ扁平状に形成されている。従って、容易に、多数の電極および多数の誘電体を積層することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】静電型トランスデューサ1の断面図であって、図2のI−I断面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3】静電型トランスデューサ1を構成する静電型ユニット10の斜視図である。
図4】静電型ユニット10を構成する中央積層部16の電気的な接続状態を示す図である。
図5】静電型ユニット10の製造方法を示すフローチャートである。
図6図5のS1における第一積層シート製造工程を示す図である。
図7図5のS2における第二積層シート製造工程を示す図である。
図8図5のS3における複合積層シート製造工程およびS4におけるロール工程を示す図である。
図9図8のIX−IXにおける拡大断面図である。
図10図5のS4におけるロール工程の後の複合積層ロール体140についてのロール状の軸方向に直交する方向の拡大断面図である。
図11図5のS5における扁平工程の後の扁平ロール体150についてのロール状の軸方向に直交する方向の拡大断面図である。
図12】第二実施形態の静電型ユニット310についてのロール状の軸方向に直交する方向の断面図である。
図13】第三実施形態の静電型ユニット450についてのロール状の軸方向に直交する方向の断面図である。
図14】第三実施形態の静電型ユニット450の製造方法において第一積層シート製造工程を示す図である。
図15図14のXV−XV断面図であって、第一積層シートの面方向を図の横方向に一致させた状態の図である。
図16図14のXVI−XVI断面図であって、第一積層シートの面方向を図の横方向に一致させた状態の図である。
図17】第三実施形態の静電型ユニット450の製造方法において第二積層シート製造工程を示す図である。
図18図17のXVIII−XVIII断面図であって、第二積層シートの面方向を図の横方向に一致させた状態の図である。
図19図17のXIX−XIX断面図であって、第二積層シートの面方向を図の横方向に一致させた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1.第一実施形態)
(1−1.静電型トランスデューサ1の概要)
静電型トランスデューサ1は、静電容量の変化を利用しており、振動や音などを発生させるアクチュエータ、または、振動や音などを検出するセンサである。アクチュエータとしての静電型トランスデューサ1は、電極に電圧を印加することにより振動や音を発生する。センサとしての静電型トランスデューサ1は、振動や音の入力に起因してセンサが振動することで電極に電圧を発生する。
【0020】
加振アクチュエータとしての静電型トランスデューサ1は、例えば、人間に触覚振動を提示する装置、構造物の制振のために構造物の振動の逆位相の振動を発生する装置などである。音を発生するアクチュエータとしての静電型トランスデューサ1は、人間の聴覚にて感じる音波を発生するスピーカ、ノイズ音をキャンセルするサウンドマスキング装置などである。
【0021】
加振アクチュエータが発生する振動は、相対的に低周波振動であり、音を発生するアクチュエータが発生する音は、相対的に高周波振動である。本実施形態におけるアクチュエータとしての静電型トランスデューサ1は、バネマス系の振動を利用するため、低周波振動の加振器、および、低周波音の発生器に適している。
【0022】
本実施形態においては、静電型トランスデューサ1は、人間に触覚振動を提示する加振アクチュエータを例に挙げて説明する。例えば、静電型トランスデューサ1は、携帯端末に搭載して、携帯端末を振動させるアクチュエータに適用される。なお、センサとしての静電型トランスデューサ1についても、実質的に同様の構成となる。
【0023】
(1−2.静電型トランスデューサ1の構成)
静電型トランスデューサ1の構成について図1図3を参照して説明する。ここで、図1図3は、分かりやすくするために、各部材の厚みを誇張して図示している。そのため、実際には、静電型トランスデューサ1の図1の上下方向の厚みは、非常に薄く形成されている。静電型トランスデューサ1は、図1図3に示すように、静電型ユニット10、第一導通部20、第二導通部30、第一弾性体41、第二弾性体42、第三弾性体43、制御基板50、および、カバー60を備える。
【0024】
静電型ユニット10は、図1図3に示すように、エラストマーにより、扁平状に形成されている。静電型ユニット10は、扁平面に直交する方向において、積層された複数の電極シート111,121と複数の誘電体シート112,113,122,123とを備える。詳細には、静電型ユニット10は、図1および図3に示すように、複合積層シート130により、ロール状に巻き回した状態かつ扁平状に形成されている。静電型ユニット10は、ロール状かつ扁平状に形成されているため、ロール状の軸方向から見た場合に、背向する2つの平面を有すると共に、当該2つの平面を繋ぐ面として湾曲凸状の側面を有する。さらに、静電型ユニット10は、ロール状の軸方向の両側に平面状の端面を有する。
【0025】
ここで、複合積層シート130は、1枚の第一積層シート110と1枚の第二積層シート120とを積層することにより形成されている。第一積層シート110は、1枚の第一電極シート111を2枚の第一誘電体シート112,113により厚み方向に挟むように、1枚の第一電極シート111および2枚の第一誘電体シート112,113を積層することにより形成されている。第二積層シート120は、1枚の第二電極シート121を2枚の第二誘電体シート122,123により厚み方向に挟むように、1枚の第二電極シート121および2枚の第二誘電体シート122,123を積層することにより形成されている。つまり、静電型ユニット10は、扁平面に直交する方向において、複数枚の第一電極シート111、複数枚の第二電極シート121、および、複数枚の誘電体シート112,113,122,123を積層することにより形成されている。
【0026】
第一電極シート111および第二電極シート121は、弾性変形可能な材料、例えば、エラストマーによりシート状に形成される。第一電極シート111および第二電極シート121は、同一材質により形成されている。
【0027】
第一電極シート111および第二電極シート121は、エラストマー中に導電性フィラーを配合させることにより成形されている。従って、第一電極シート111および第二電極シート121は、可撓性を有しかつ伸縮自在な性質を有する。第一電極シート111および第二電極シート121を構成するエラストマーには、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用できる。また、第一電極シート111および第二電極シート121に配合される導電性フィラーは、導電性を有する粒子であればよく、例えば、炭素材料や金属等の微粒子を適用できる。
【0028】
ここで、第一電極シート111および第二電極シート121は、シート状の基材(図示せず)の表面に電極材料を印刷することによってシート状に成形される。この場合、基材は、第一電極シート111および第二電極シート121の変形を阻害しないように形成される。例えば、基材には、電極材料の厚みに比べて薄く形成され、かつ、可撓性を有する樹脂材料などが用いられる。この他に、第一電極シート111および第二電極シート121は、電極材料のみによって単体として存在可能なシート状に成形されるようにしてもよいし、誘電体シート112,113,122,123の表面に電極材料を直接印刷することによってシート状に成形されるようにしてもよい。
【0029】
第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123は、弾性変形可能な材料、例えば、エラストマーによりシート状に形成される。第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123の厚みは、第一電極シート111および第二電極シート121に比べて厚く形成されている。
【0030】
第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123は、エラストマーにより成形されている。従って、第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123は、可撓性を有しかつ伸縮自在な性質を有する。特に、第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123は、厚み方向に伸縮すると共に、厚み方向の伸縮に伴って扁平面方向の伸縮を可能とする。第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123は、静電体における誘電体として機能する材料が適用される。第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123を構成するエラストマーには、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用できる。
【0031】
ここで、第一誘電体シート112,113は、第一電極シート111と同様に、シート状の基材(図示せず)の表面に誘電体材料を印刷することによってシート状に成形してもよいし、誘電体材料のみにより単体として存在可能なシート状に成形されるようにしてもよい。第二誘電体シート122,123も同様である。
【0032】
ここで、静電型ユニット10は、図2および図3に示すように、ロール状の軸方向において、中央積層部16、第一端積層部17および第二端積層部18に区分されている。中央積層部16、第一端積層部17および第二端積層部18は、それぞれ積層対象が異なる。
【0033】
中央積層部16は、静電型ユニット10のロール状の軸方向における中央に位置する。中央積層部16は、第一電極シート111、第二電極シート121、第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123を積層することにより形成されている。つまり、中央積層部16は、静電体として機能する。詳細には、中央積層部16は、主として、第一誘電体シート112、第一電極シート111、第一誘電体シート113、第二誘電体シート122、第二電極シート121および第二誘電体シート123の順に、繰り返し積層されている。
【0034】
第一端積層部17は、静電型ユニット10のロール状の軸方向において中央積層部16より第一端側、すなわち図2および図3における左側に位置する。第一端積層部17は、第一電極シート111、第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123を積層することにより形成されている。つまり、第一端積層部17は、第一電極シート111による端子として機能する。詳細には、第一端積層部17は、主として、第一誘電体シート112、第一電極シート111、第一誘電体シート113、第二誘電体シート122および第二誘電体シート123の順に、繰り返し積層されている。つまり、第一端積層部17は、第二電極シート121を有しない。
【0035】
第二端積層部18は、静電型ユニット10のロール状の軸方向において中央積層部16より第二端側、すなわち図2および図3における右側に位置する。第二端積層部18は、第二電極シート121、第一誘電体シート112,113および第二誘電体シート122,123を積層することにより形成されている。つまり、第二端積層部18は、第二電極シート121による端子として機能する。第二端積層部18は、主として、第一誘電体シート112、第一誘電体シート113、第二誘電体シート122、第二電極シート121および第二誘電体シート123の順に、繰り返し積層されている。つまり、第二端積層部18は、第一電極シート111を有しない。
【0036】
そして、静電型ユニット10における複合積層シート130を巻き回す軸方向(ロール状の軸方向)の第一端面、すなわち第一端積層部17の端面には、第一電極シート111の端が露出している。第一端面は、図2の静電型ユニット10の左側の端面である。一方、静電型ユニット10の第二端面、すなわち第二端積層部18の端面には、第二電極シート121の端が露出している。第二端面は、図2の静電型ユニット10の右側の端面である。
【0037】
第一導通部20および第二導通部30は、弾性変形可能な材料(例えば、エラストマー)によりシート状に形成され、L字型に屈曲形成されている。第一導通部20および第二導通部30は、第一電極シート111と同様に、エラストマー中に導電性フィラーを配合させることにより成形されている。第一導通部20のL字の一方の辺は、静電型ユニット10の第一端面(第一端積層部17における端面)に面接触している。つまり、第一導通部20は、第一端積層部17における第一電極シート111の端に導通している。第一導通部20のL字の他方の辺は、静電型ユニット10から離れる方向に延びるように形成されている。
【0038】
第二導通部30のL字の一方の辺は、静電型ユニット10の第二端面(第二端積層部18における端面)に面接触している。つまり、第二導通部30は、第二端積層部18における第二電極シート121の端に導通している。第二導通部30のL字の他方の辺は、静電型ユニット10から離れる方向に延びるように形成されている。
【0039】
第一弾性体41は、図1および図2に示すように、静電型ユニット10におけるロール状の外周面を全周に亘って被覆する。第二弾性体42は、図2に示すように、第一導通部20における静電型ユニット10とは反対側の面を被覆する。第三弾性体43は、第二導通部30における静電型ユニット10とは反対側の面を被覆する。なお、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43は、別体としたが、一体としてもよい。
【0040】
第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43には、小さな弾性率E(41),E(42),E(43)を有すると共に、小さな損失係数tanδ(41),tanδ(42),tanδ(43)を有する材料が用いられる。言い換えると、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43は、柔らかく、且つ、減衰特性が低い材料が好適である。
【0041】
特に、第一弾性体41の弾性率E(41)は、静電型ユニット10の中央積層部16の扁平面に直交する方向(積層方向)の弾性率E1(16)より小さい。さらに、第一弾性体41の弾性率E(41)は、中央積層部16の扁平面に平行な方向(面方向)の弾性率E2(16)より小さい。また、第二弾性体42および第三弾性体43の弾性率E(42),E(43)は、中央積層部16の面方向の弾性率E2(16)より小さい。
【0042】
詳細には、中央積層部16の積層方向の弾性率E1(16)に対する第一弾性体41の弾性率E(41)の比は、15%以下である。また、中央積層部16の面方向の弾性率E2(16)に対する第一弾性体41の弾性率E(41)の比は、15%以下である。また、中央積層部16の面方向の弾性率E2(16)に対する第二弾性体42および第三弾性体43の弾性率E(42),E(42)の比は、15%以下である。これらの比は、好ましくは、10%以下である。
【0043】
さらに、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43は、所定条件下において、中央積層部16の損失係数tanδ(16)と同等以下の損失係数tanδ(41),tanδ(42),tanδ(43)を有する。所定条件下とは、温度を−10〜50℃、振動周波数を300Hz以下とする使用環境下を意味する。
【0044】
上記を満たす材料として、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43には、例えば、シリコーンゴムが好適である。例えば、ウレタンゴムは、シリコーンゴムに比べて減衰特性が良いため、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43には、ウレタンゴムはシリコーンゴムに比べてあまり適しない。ただし、目的の特性によっては、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43に、ウレタンゴムを使用することも可能である。
【0045】
制御基板50は、静電型ユニット10の扁平面に平行に配置され、第一弾性体41における中央積層部16と反対側の面に接触して配置される。さらに、制御基板50は、第一導通部20および第二導通部30のL字の他方の面に接触する。
【0046】
カバー60は、静電型ユニット10、第一導通部20、第二導通部30、第一弾性体41、第二弾性体42、第三弾性体43および制御基板50を囲む。カバー60には、例えば、金属、樹脂など、種々の材料が適用される。カバー60は、制御基板50を固定するための面状の第一カバー61と、第一カバー61に取り付けられる第二カバー62とを備える。
【0047】
第一カバー61および第二カバー62は、中央積層部16および第一弾性体41を、静電型ユニット10の扁平面に直交する方向(積層方向、図1および図2の上下方向)に圧縮した状態で保持する。この状態において、各部材の弾性率Eの関係から、扁平面に直交する方向(積層方向)において、第一弾性体41が、中央積層部16より大きく圧縮された状態となる。
【0048】
さらには、第二カバー62は、中央積層部16、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43を、静電型ユニット10の面方向のうち静電型ユニット10のロール状の軸方向(図2の左右方向)に圧縮した状態で保持する。この状態において、各部材の弾性率Eの関係から、静電型ユニット10のロール状の軸方向において、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43は、中央積層部16より大きく圧縮された状態となる。
【0049】
また、第二カバー62は、中央積層部16および第一弾性体41を、静電型ユニット10の面方向のうち静電型ユニット10のロール状の軸方向に直交する方向(図1の左右方向)に圧縮した状態で保持する。この状態において、各部材の弾性率Eの関係から、静電型ユニット10の面方向のうちロール状の軸方向に直交する方向において、第一弾性体41が、中央積層部16より大きく圧縮された状態となる。
【0050】
(1−3.中央積層部16の電気的接続状態)
中央積層部16の電気的接続状態について、図4を参照して説明する。ここで、図4の上下方向と図1の上下方向とは、一致する。ただし、図4には、中央積層部16を構成する1つの静電セルについて図示する。静電セルとは、1つの第一電極シート111、1つの第二電極シート121、および、第一電極シート111と第二電極シート121との間に挟まれた誘電体シート112,113,122,123である。
【0051】
図4に示すように、第一電極シート111と第二電極シート121とは、中央積層部16の積層方向に距離を隔てて対向して配置される。第一電極シート111には、制御基板50における駆動回路によって中央積層部16に周期的な電圧を供給するための第一端子が電気的に接続される。第二電極シート121には、中央積層部16に周期的な電圧を供給するための第二端子が電気的に接続される。本実施形態においては、第一電極シート111は、制御基板50の出力端子に接続され、周期的な電圧が印加されている。第二電極シート121は、グランド電位に接続されている。
【0052】
(1−4.静電型トランスデューサ1の動作)
静電型トランスデューサ1の動作について、図4を参照して説明する。第一電極シート111および第二電極シート121には、周期的な電圧が印加される。ここで、周期的な電圧は、交流電圧(正負を含む周期的な電圧)としてもよいし、正値にオフセットされた周期的な正極電圧としてもよい。
【0053】
第一電極シート111と第二電極シート121に蓄積される電荷が増加すると、誘電体シート112,113,122,123が圧縮変形する。つまり、図4に示すように、中央積層部16の厚みが小さくなり、中央積層部16の面方向の大きさ(図4の幅および奥行き)が大きくなる。反対に、第一電極シート111および第二電極シート121に蓄積される電荷が減少すると、誘電体シート112,113,122,123が元の厚みに戻る。つまり、中央積層部16の厚みが大きくなり、中央積層部16の面方向の大きさが小さくなる。このように、中央積層部16は、積層方向に伸縮すると共に、面方向に伸縮する。
【0054】
中央積層部16が伸縮動作を行うとき、静電型トランスデューサ1は、以下のように動作する。静電型トランスデューサ1は、図1に示すように、第一弾性体41が圧縮された状態を初期状態とする。従って、電荷の増加によって中央積層部16の厚みが小さくなると、第一弾性体41は、初期状態に対して圧縮量が小さくなるように変形する。反対に、電荷の減少によって中央積層部16の厚みが大きくなると、第一弾性体41は初期状態に戻るように動作する。つまり、第一弾性体41は、電荷の増加の場合に比べて、圧縮量が大きくなるように変形する。
【0055】
印加電圧は周期的に変化するため、上記動作が繰り返される。そうすると、中央積層部16の中央が図1および図2の上側に凸となる状態(下側に凹)と、中央積層部16の中央が図1の下側に凸となる状態(上側に凹)とを繰り返す。中央積層部16は、第一弾性体41を介してカバー60によって規制されているために、上記動作となる。
【0056】
中央積層部16の上記変形動作に伴って、中央積層部16の積層方向(d33方向電場と同じ方向)の変位が、第一弾性体41を介してカバー60に伝達される。加えて、中央積層部16の伸縮動作によって第一弾性体41の弾性変形力が変化する。第一弾性体41の弾性変形力の変化が、カバー60に伝達される。従って、初期状態として、第一弾性体41が圧縮されていることにより、カバー60に中央積層部16の積層方向(d33方向)の振動を効率的に付与することができる。つまり、中央積層部16単体としては小さな振動であっても、カバー60に触覚振動を付与することができる。
【0057】
さらに、中央積層部16の上記変形動作に伴って、中央積層部16の面方向(d31方向:電場に直交する方向)の変位が、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43を介してカバー60に伝達される。その結果、中央積層部16の面方向(d31方向)の振動が、カバー60に付与される。ここで、中央積層部16の面方向(d31方向)の振動は、積層方向(d33方向)の振動に比べて小さい。しかし、中央積層部16の積層方向(d33方向)の振動に、面方向(d31)方向の振動が加えられることで、カバー60全体として、大きな触覚振動を付与することができる。
【0058】
ここで、仮に、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43の損失係数tanδ(41),tanδ(42),tanδ(43)が非常に大きいとすると、中央積層部16が伸縮動作を行ったとしても、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43によって振動が吸収されてしまう。この場合、中央積層部16が伸縮動作を行ったとしても、カバー60に伝達されることはない。
【0059】
しかし、本実施形態においては、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43は、損失係数tanδ(41),tanδ(42),tanδ(43)の小さな材料を用いる。従って、中央積層部16の伸縮動作による振動が、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43にほとんど吸収されることなく、カバー60に伝達される。
【0060】
さらに、第一弾性体41の弾性率E(41)は、中央積層部16の積層方向の弾性率E1(16)より小さい。そのため、第一電極シート111および第二電極シート121に電圧を印加していない初期状態において、中央積層部16はほとんど圧縮されていない状態となる。従って、カバー60が中央積層部16を積層方向に押圧したとしても、中央積層部16の積層方向の伸縮動作に影響を与えることはない。つまり、中央積層部16は確実に伸縮動作を行うことができる。
【0061】
また、第一弾性体41、第二弾性体42および第三弾性体43の弾性率E(41),E(42),E(43)は、中央積層部16の面方向の弾性率E2(16)より小さい。そのため、第一電極シート111および第二電極シート121に電圧を印加していない初期状態において、中央積層部16はほとんど圧縮されていない状態となる。従って、カバー60が中央積層部16を面方向に押圧したとしても、中央積層部16の面方向の伸縮動作に影響を与えることはない。つまり、中央積層部16は確実に伸縮動作を行うことができる。
【0062】
(1−5.静電型ユニット10の製造方法)
静電型ユニット10の製造方法について、図5図11を参照して説明する。まず、図5に示すように、第一積層シート110を製造する(S1:第一積層シート製造工程)。第一積層シート110は、図6に示すように、第一電極シート111、2枚の第一誘電体シート112,113、および、2枚のセパレータ114,115を積層することにより形成される。
【0063】
第一電極シート111は、帯状、すなわち所定幅の長尺状に形成されている。2枚の第一誘電体シート112,113および2枚のセパレータ114,115は、帯状、すなわち所定幅の長尺状に形成されている。第一電極シート111および2枚の第一誘電体シート112,113は、それぞれシート状の基材(図示せず)の表面に材料を印刷することによってシート状に成形してもよいし、材料のみにより単体として存在可能なシート状に成形されるようにしてもよい。
【0064】
ここで、2枚の第一誘電体シート112,113の幅および2枚のセパレータ114,115の幅は、第一電極シート111の幅より大きな幅を有する。ここで、図2および図3に示すように、第二端積層部18は、2枚の第一誘電体シート112,113を有するのに対して、第一電極シート111を有しない。つまり、2枚の第一誘電体シート112,113および2枚のセパレータ114,115は、第一電極シート111に対して、図2および図3に示す第二端積層部18に相当する幅の分だけ長く形成されている。また、2枚の第一誘電体シート112,113の長手方向の長さおよび2枚のセパレータ114,115の長手方向の長さは、第一電極シート111の長手方向の長さと同一の長さを有する。
【0065】
2枚の第一誘電体シート112,113は、図6に示すように、幅方向の第一端を第一電極シート111の幅方向の第一端に合わせた状態で、第一電極シート111の両面に積層されている。一方、2枚の第一誘電体シート112,113の幅方向の第二端は、第一電極シート111の幅方向の第二端よりも幅方向の外側に位置している。さらに、2枚のセパレータ114,115は、2枚の第一誘電体シート112,113の外側面に積層されている。このとき、第一電極シート111、2枚の第一誘電体シート112,113、および、2枚のセパレータ114,115は、長手方向の両端が一致する状態となる。
【0066】
このように、5枚の長尺状のシート111,112,113,114,115を積層することにより第一積層シート110が形成される。さらに、第一積層シート110をロール状に巻き回すことにより第一積層ロール体110aが形成される。
【0067】
次に、図5に示すように、第二積層シート120を製造する(S2:第二積層シート製造工程)。第二積層シート120は、図7に示すように、第二電極シート121、2枚の第二誘電体シート122,123、および、2枚のセパレータ124,125を積層することにより形成される。
【0068】
第二電極シート121は、帯状、すなわち所定幅の長尺状に形成されている。2枚の第二誘電体シート122,123および2枚のセパレータ124,125は、帯状、すなわち所定幅の長尺状に形成されている。第二電極シート121および2枚の第二誘電体シート122,123は、それぞれシート状の基材(図示せず)の表面に材料を印刷することによってシート状に成形してもよいし、材料のみにより単体として存在可能なシート状に成形されるようにしてもよい。
【0069】
ここで、2枚の第二誘電体シート122,123の幅および2枚のセパレータ124,125の幅は、第二電極シート121の幅より大きな幅を有する。ここで、図2および図3に示すように、第一端積層部17は、2枚の第二誘電体シート122,123を有するのに対して、第二電極シート121を有しない。つまり、2枚の第二誘電体シート122,123および2枚のセパレータ124,125は、第二電極シート121に対して、図2および図3に示す第一端積層部17に相当する幅の分だけ長く形成されている。また、2枚の第二誘電体シート122,123の長手方向の長さおよび2枚のセパレータ124,125の長手方向の長さは、第二電極シート121の長手方向の長さと同一の長さを有する。
【0070】
2枚の第二誘電体シート122,123は、図7に示すように、幅方向の第一端を第二電極シート121の幅方向の第一端に合わせた状態で、第二電極シート121の両面に積層されている。一方、2枚の第二誘電体シート122,123の幅方向の第二端は、第二電極シート121の幅方向の第二端よりも幅方向の外側に位置している。さらに、2枚のセパレータ124,125は、2枚の第二誘電体シート122,123の外側面に積層されている。このとき、第二電極シート121、2枚の第二誘電体シート122,123、および、2枚のセパレータ124,125は、長手方向の両端が一致する状態となる。
【0071】
このように、5枚の長尺状のシート121,122,123,124,125を積層することにより第二積層シート120が形成され、さらに、第二積層シート120をロール状に巻き回すことにより第二積層ロール体120aが形成される。
【0072】
次に、図5に示すように、第一積層シート110および第二積層シート120が積層された複合積層シート130を製造する(S3:複合積層シート製造工程)。続いて、複合積層シート130をロール状に巻き回すことにより、複合積層ロール体140を形成する(S4:ロール工程)。
【0073】
複合積層シート製造工程およびロール工程は、図8に示すように行う。複数のローラ231,232,233により第一積層シート110を支持しながら、第一積層ロール体110aから第一積層シート110を引き出す。この途中にて、第一積層シート110から2枚のセパレータ114,115を剥がして、ボビン241,242に巻き取る。同様に、複数のローラ251,252,253により第二積層シート120を支持しながら、第二積層ロール体120aから第二積層シート120を引き出す。この途中にて、第二積層シート120から2枚のセパレータ124,125を剥がして、ボビン261,262に巻き取る。
【0074】
セパレータ114,115が剥がされた第一積層シート110と、セパレータ124,125が剥がされた第二積層シート120とが、積層されて複合積層シート130が形成される(S3:複合積層シート製造工程)。複合積層シート130は、図9に示すように、第一電極シート111、2枚の第一誘電体シート112,113、第二電極シート121、2枚の第二誘電体シート122,123により形成されている。ここで、図9において、第一電極シート111の幅は、W(111)であり、第一誘電体シート112,113の幅は、W(112)であり、第二電極シート121の幅は、W(121)であり、第二誘電体シート122,123の幅は、W(122)である。
【0075】
詳細には、複合積層シート130において、第一誘電体シート112,113と第二誘電体シート122,123とは、幅方向の両端が一致している。一方、複合積層シート130において、第一電極シート111と第二電極シート121とは、幅方向にオフセットされている。つまり、幅方向の中央では、第一電極シート111と第二電極シート121とが存在しており、幅方向の端では、第一電極シート111と第二電極シート121の一方のみが存在している。
【0076】
そして、複合積層シート130を図8に示すボビン270に巻き取ることで、図10に示す複合積層ロール体140が形成される(S4:ロール工程)。複合積層ロール体140は、図10に示すように形成される。複合積層ロール体140における最内層の少なくとも一周は、第一積層シート110のみ、または、第二積層シート120のみで構成されている。本実施形態においては、最内層の少なくとも一周は、グランド電位に接続されている第二積層シート120のみで構成されている。なお、本実施形態においては、最内層の1周半よりも長く2周よりも短い範囲が、第二積層シート120のみで構成されている。さらに、複合積層ロール体140における最外層の少なくとも一周は、グランド電位に接続されている第二積層シート120のみで構成されている。なお、本実施形態においては、最外層の1周より長く1周半よりも短い範囲が、第二積層シート120のみで構成されている。
【0077】
次に、図5および図11に示すように、複合積層ロール体140を扁平化することにより、扁平ロール体150を形成する(S5:扁平工程)。扁平ロール体150において、最内周の少なくとも一周は、グランド電位に接続されている第二積層シート120のみで構成されている。さらに、扁平ロール体150における最外層の少なくとも一周は、グランド電位に接続されている第二積層シート120のみで構成されている。
【0078】
続いて、図5に示すように、扁平ロール体150におけるロール状の軸方向の両端を僅かに切断することにより、静電型ユニット10が形成される。詳細には、扁平ロール体150における軸方向の第一端を切断することで、第一電極シート111の端を露出させる(S6:切断工程)。さらに、扁平ロール体150における軸方向第二端を切断することで、第二電極シート121の端を露出させる(S6:切断工程)。第一積層シート110、第二積層シート120および複合積層シート130の製造の際の位置決め精度によっては、扁平ロール体150において第一電極シート111および第二電極シート121が露出していない場合が存在する。このような場合であっても、切断によって、確実に、第一電極シート111および第二電極シート121が露出する。
【0079】
製造された静電型ユニット10において、最内周の少なくとも一周は、グランド電位に接続されている第二積層シート120のみで構成されている。これにより、第一電極シート111と第二電極シート121との離間距離を、所定距離以上とすることができる。さらに、静電型ユニット10において、最外層の少なくとも一周は、グランド電位に接続されている第二積層シート120のみで構成されている。これにより、高い安全性を有する静電型トランスデューサ1が形成される。
【0080】
なお、図5において、S4のロール工程、S5の扁平工程およびS6の切断工程は、静電型ユニット製造工程と称する。また、図5において、S4のロール工程およびS5の扁平工程は、扁平ロール工程と称する。
【0081】
(1−6.効果)
上述したように、静電型トランスデューサ1は、静電型ユニット10を備える。静電型ユニット10は、第一積層シート110と第二積層シート120とを備える。
【0082】
そして、第一積層シート110は、帯状に形成された第一電極シート111と、帯状に形成され、第一電極シート111の幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を第一電極シート111の幅方向の第一端に合わせた状態で第一電極シート111の両面に積層される2枚の第一誘電体シート112,113とを備える。第二積層シート120は、帯状に形成された第二電極シート121と、帯状に形成され、第二電極シート121の幅より大きな幅を有し、幅方向の第一端を第二電極シート121の幅方向の第一端に合わせた状態で第二電極シート121の両面に積層される2枚の第二誘電体シート122,123とを備える。
【0083】
さらに、静電型ユニット10は、第一積層シート110および第二積層シート120によりロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成されている。第一積層シート110は、ロール状に巻き回された状態、かつ、扁平状に形成されている。第二積層シート120は、第一積層シート110に積層された状態で、第一積層シート110と共にロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成されている。第一電極シート111と第二電極シート121とは、幅方向にオフセットされている。第一電極シート111は、ロール状の軸方向の第一端面に露出し、第二電極シート121は、ロール状の軸方向の第二端面に露出する。
【0084】
静電型トランスデューサ1によれば、静電型ユニット10は、第一積層シート110および第二積層シート120によりロール状に巻き回された状態かつ扁平状に形成されている。従って、容易に、多数の電極111,121および多数の誘電体112,113,122,123を積層することができる。さらに、静電型ユニット10を構成する第一積層シート110は、2枚の第一誘電体シート112,113により第一電極シート111を挟んでいる。従って、第一積層シート110において、第一電極シート111の面状の部分が、2枚の第一誘電体シート112,113により被覆されている。すなわち、第一積層シート110において、第一電極シート111は、面状の部分が全面に亘って露出していない。第二積層シート120も同様である。そのため、第一積層シート110および第二積層シート120の取り扱い性が良好であり、第一電極シート111および第二電極シート121に対する欠陥の発生を抑制できる。
【0085】
また、静電型ユニット10におけるロール状の最内層の少なくとも一周は、第一積層シート110のみ、または、第二積層シート120のみで構成されている。これにより、第一電極シート111と第二電極シート121との離間距離を、所定距離以上とすることができる。つまり、静電型トランスデューサ1としての性能を良好にすることができる。
【0086】
また、静電型ユニット10において、第二電極シート121は、グランド電位に接続され、静電型ユニット10におけるロール状の最外層の少なくとも一周は、グランド電位に接続されている第二積層シート120のみで構成されている。これにより、高い安全性を有する静電型トランスデューサ1が形成される。
【0087】
また、静電型トランスデューサ1は、第一積層シート製造工程(S1)と、第二積層シート製造工程(S2)、複合積層シート製造工程(S3)および扁平ロール工程(S4,S5)とにより製造される。
【0088】
第一積層シート製造工程は、第一積層シート110を製造する。第二積層シート製造工程は、第二積層シート120を製造する。複合積層シート製造工程は、第一積層シート110と第二積層シート120とが積層された複合積層シート130を製造する。扁平ロール工程は、複合積層シート130をロール状に巻き回しかつ扁平状に形成することで扁平ロール体150を製造する。
【0089】
当該製造方法によれば、上述した静電型ユニット10を製造することができる。すなわち、第一積層シート製造工程にて製造される第一積層シート110は、2枚の第一誘電体シート112,113により第一電極シート111を挟んで構成されている。従って、第一積層シート110において、第一電極シート111の面状の部分が、2枚の第一誘電体シート112,113により被覆されている。すなわち、第一積層シート110において、第一電極シート111は、面状の部分が全面に亘って露出していない。第二積層シート120も同様である。そのため、第一積層シート110および第二積層シート120の取り扱い性が良好であり、第一電極シート111および第二電極シート121に対する欠陥の発生を抑制できる。そして、扁平ロール工程にて、第一積層シート110と第二積層シート120が積層された複合積層シート130が、ロール状に巻き回しかつ扁平状に形成されている。従って、容易に、多数の電極111,121および多数の誘電体112,113,122,123を積層することができる。
【0090】
また、静電型トランスデューサ1は、扁平ロール体150におけるロール状の軸方向の第一端および第二端を切断することで、第一電極シート111および第二電極シート121を露出させる切断工程(S6)により製造される。これにより、確実に、第一電極シート111および第二電極シート121が露出するため、静電型トランスデューサ1において、導電性が良好となる。
【0091】
また、静電型トランスデューサ1は、静電型ユニット10におけるロール状の外周面のうち、少なくとも扁平面を被覆する第一弾性体41をさらに備える。さらに、静電型トランスデューサ1は、静電型ユニット10を少なくとも積層方向(図1の上下方向)に押圧し、積層方向において第一弾性体41を静電型ユニット10より大きく圧縮させた状態で保持するカバー60を備える。これにより、静電型ユニット10の積層方向において、静電型ユニット10単体としては小さな振動であっても、カバー60に大きな振動を付与することができる。
【0092】
特に、第一弾性体41は、静電型ユニット10におけるロール状の外周面を全周に亘って被覆するようにしてもよい。このとき、カバー60は、静電型ユニット10を積層方向に加えて面方向(図1の左右方向)にも押圧する。そして、カバー60は、面方向において、第一弾性体41を静電型ユニット10より大きく圧縮させた状態で保持する。これにより、静電型ユニット10の面方向における静電型ユニット10の小さな振動を、カバー60に確実に伝達することができる。
【0093】
また、第一弾性体41の弾性率E(41)は、静電型ユニット10の中央積層部16の弾性率E1(16)より小さい。つまり、初期状態において、カバー60により中央積層部16および第一弾性体41を押圧した状態において、中央積層部16の圧縮量は小さい。そのため、カバー60により中央積層部16を押圧したとしても、中央積層部16の伸縮動作にそれほど影響を与えることはない。
【0094】
そして、中央積層部16の第一電極シート111および第二電極シート121に電圧を印加すると、中央積層部16は、積層方向および面方向に伸縮する。中央積層部16の伸縮動作によって生じる中央積層部16の面の変位が、第一弾性体41を介してカバー60に伝達される。加えて、中央積層部16の伸縮動作によって第一弾性体41の弾性変形力が変化して、第一弾性体41の弾性変形力の変化がカバー60に伝達される。従って、初期状態として、第一弾性体41が圧縮されていることにより、カバー60に効率的に振動を付与することができる。つまり、静電型ユニット10の中央積層部16単体としては小さな振動であっても、カバー60に触覚振動を付与することができる。
【0095】
また、第一弾性体41には、損失係数tanδ(41)の小さな材料が用いられる。これにより、第一弾性体41は、中央積層部16の伸縮動作による振動を吸収することなく、カバー60に伝達できる。特に、第一弾性体41にシリコーンゴムが適用されることで、上記動作を確実に実現できる。
【0096】
さらに、第一弾性体41の損失係数tanδ(41)は、所定条件下において、静電型ユニット10の中央積層部16の損失係数tanδ(16)と同等以下としている。所定条件とは、上述したように、温度を−10〜50℃、振動周波数を300Hz以下とする使用環境下である。これにより、第一弾性体41は、確実に、中央積層部16の伸縮動作による振動を吸収することなく、カバー60に伝達できる。
【0097】
(2.第二実施形態)
第二実施形態において、静電型ユニット10におけるロール状の最外層が、静電型ユニット10におけるロール状の内部よりも弾性率が大きくなるように形成されている。例えば、図5のS1−S6により製造された静電型ユニット10の最外層に、UV照射による表面改質を施すことにより、ナノオーダーの硬化層を形成する。UV照射に代えて、所望の弾性率を有するシートを配置してもよい。これにより、静電型ユニット10の振動がカバー60へ伝達される際に、当該振動の伝達感度が向上する。これにより、静電型ユニット10の中央積層部16の伸縮動作による振動がカバー60へより効率的に伝達される。
【0098】
特に、中央積層部16の最外層は、UV照射により表面改質された層とするとよい。これにより、当該最外層は、ナノオーダーの非常に薄い厚みとすることができる。これにより、中央積層部16の伸縮動作自身を阻害することなく、伸縮動作による振動の伝達効率を向上できる。
【0099】
(3.第三実施形態)
第三実施形態の静電型ユニット310について図12を参照して説明する。静電型ユニット310において、図12に示すように、ロール状の内層側の端は、ロール状より小さな曲率半径にカールされている。つまり、第二積層シート120の内層側の端がカールされて、第一カール部311が形成されている。つまり、第二積層シート120の内層側の端における第二電極シート121は、第二誘電体シート122,123に接触している。従って、第一電極シート111と第二電極シート121の内層側の端との離間距離を、確実に所定距離以上とすることができる。その結果、第一電極シート111と第二電極シート121の内層側の端との間における絶縁状態が確保される。
【0100】
さらに、第一積層シート110の内層側の端および外層側の端がカールされて、第二カール部312および第三カール部313が形成されている。つまり、第一積層シート110の内層側の端および外層側の端における第一電極シート111は、第一誘電体シート112,113に接触している。従って、第一電極シート111の内層側の端と第二電極シート121との離間距離を、確実に所定距離以上とすることができる。同様に、第一電極シート111の外層側の端と第二電極シート121との離間距離を、確実に所定距離以上とすることができる。その結果、第一電極シート111の両端と第二電極シート121との間における絶縁状態が確保される。
【0101】
なお、カール部311,312,313は、図8に示すボビン270に設けたフック(不図示)などに第一積層シート110および第二積層シート120の各端を引っ掛けるなどして形成するとよい。つまり、カール部311,312,313は、第一積層シート110と第二積層シート120が積層された複合積層シート130がロール状に巻き回される過程にて形成される。
【0102】
以上のように、静電型ユニット310において、第一積層シート110および第二積層シート120の少なくとも一方において、帯状の長手方向の第一端および第二端の少なくとも一方は、静電型ユニット310におけるロール状より小さな曲率半径にカールされている。カールされた部位において、第一電極シート111と第二電極シート121との離間距離を確実に所定距離以上とすることができる。
【0103】
特に、第一積層シート110においてロール状の内層側の端がカールされ、かつ、第二積層シート120においてロール状の内層側の端がカールされている。これにより、絶縁状態を確実に確保する必要がある内層側の2か所の先端において、第一電極シート111と第二電極シート121との離間距離を確実に所定距離以上とすることができる。
【0104】
さらには、第一積層シート110および第二積層シート120において、ロール状の最外層以外に位置する端は、カールされている。つまり、静電型ユニット310の内部に位置する端は、全てカールされている。従って、これにより、静電型ユニット310の内部において、第一電極シート111と第二電極シート121との離間距離を確実に所定距離以上とすることができる。
【0105】
なお、静電型ユニット310の最外層に位置する第二積層シート120の外層側の端は、カールされていない。しかし、静電型ユニット310の最外層の少なくとも一周は、グランド電位に接続されている第二積層シート120により形成されているため、第二積層シート120の外層側の端は、第一電極シート111との離間距離を十分に確保されている。ただし、全ての端部(4か所の端部)をカールするようにしてもよい。
【0106】
(4.第四実施形態)
(4−1.静電型ユニットの構成)
第四実施形態の静電型ユニット450について図13を参照して説明する。静電型ユニット450は、第一積層シート410および第二積層シート420を備える。ここで、第一積層シート410および第二積層シート420は、第一実施形態の第一積層シート110および第二積層シート120に対応する。ただし、第一積層シート410および第二積層シート420は、第一実施形態の第一積層シート110および第二積層シート120に対して、以下の点を異にする。
【0107】
第一積層シート410は、第一電極シート111、2枚の第一誘電体シート112,113により構成されている。ただし、第一積層シート410において、2枚の第一誘電体シート112,113の帯状の長手方向の両端は、第一電極シート111の帯状の長手方向の両端に対して、長手方向の外側に位置する。つまり、第一電極シート111の帯状の長手方向の両端は、2枚の第一誘電体シート112,113により塞がれている。
【0108】
つまり、第一積層シート410がロール状に巻き回された状態において、第一積層シート410における内層側の端および外層側の端が、2枚の第一誘電体シート112,113のみにより形成されている。従って、第一電極シート111が露出している部位は、幅方向の第一端(図2の左側)のみとなる。そして、第一電極シート111において、幅方向の第二端(図2の右側)および長手方向の両端は、2枚の第一誘電体シート112,113により塞がれており、露出していない。
【0109】
従って、静電型ユニット450において、第一電極シート111の内層側の端と第二電極シート121との離間距離、および、第一電極シート111の外層側の端と第二電極シート121との離間距離を、確実に所定距離以上とすることができる。その結果、第一電極シート111の内層側の端と第二電極シート121との間における絶縁状態が確保されると共に、第一電極シート111の外層側の端と第二電極シート121との間における絶縁状態が確保される。
【0110】
また、第二積層シート420は、第二電極シート121、2枚の第二誘電体シート122,123により構成されている。ただし、第二積層シート420において、2枚の第二誘電体シート122,123の帯状の長手方向の両端は、第二電極シート121の帯状の長手方向の両端に対して、長手方向の外側に位置する。つまり、第二電極シート121の帯状の長手方向の両端は、2枚の第二誘電体シート122,123により塞がれている。
【0111】
つまり、第二積層シート420がロール状に巻き回された状態において、第二積層シート420における内層側の端および外層側の端が、2枚の第二誘電体シート122,123のみにより形成されている。従って、第二電極シート121が露出している部位は、幅方向の第一端(図2の右側)のみとなる。そして、第二電極シート121において、幅方向の第二端(図2の左側)および長手方向の両端は、2枚の第二誘電体シート122,123により塞がれており、露出していない。
【0112】
従って、静電型ユニット450において、第一電極シート111と第二電極シート121の内層側の端との離間距離、および、第一電極シート111と第二電極シート121の外層側の端との離間距離を、確実に所定距離以上とすることができる。その結果、第一電極シート111と第二電極シート121の内層側の端との間における絶縁状態が確保されると共に、第一電極シート111と第二電極シート121の外層側の端との間における絶縁状態が確保される。
【0113】
ここで、上記においては、第一電極シート111の帯状の長手方向の両端が、2枚の第一誘電体シート112,113に塞がれ、かつ、第二電極シート121の帯状の長手方向の両端が、2枚の第二誘電体シート122,123に塞がれるようにした。この他に、正極電位に接続される第一電極シート111の帯状の長手方向の両端が、2枚の第一誘電体シート112,113により塞がれ、かつ、グランド電位に接続される第二電極シート121の内層側の端が、2枚の第二誘電体シート122,123により塞がれるようにしてもよい。この場合、グランド電位に接続される第二電極シート121の外層側の端が、2枚の第二誘電体シート122,123によって塞がれることなく、露出している。つまり、静電型ユニット450の内部に位置する端は、全て電極が露出していない。従って、これにより、静電型ユニット450の内部において、第一電極シート111と第二電極シート121との離間距離を確実に所定距離以上とすることができる。
【0114】
さらに、正極電位に接続される第一電極シート111のみの帯状の長手方向の両端が、2枚の第一誘電体シート112,113により塞がれるようにしてもよい。この場合、グランド電位に接続される第二電極シート121の帯状の長手方向の両端が、2枚の第二誘電体シート122,123によって塞がれることなく、露出している。
【0115】
(4−2.静電型ユニット450の製造方法)
静電型ユニット450の製造方法について、図14図19を参照して説明する。静電型ユニット450の製造方法は、図5に示す第一実施形態の静電型ユニット10の製造方法と同一手順である。ただし、静電型ユニット450の製造方法においては、第一積層シート410を製造する工程(図5のS1)および第二積層シート420を製造する工程(図5のS2)が相違する。
【0116】
第一積層シート410の製造工程においては、図14に示すように、第一電極シート111、2枚の第一誘電体シート112,113および2枚のセパレータ114,115は、帯状、すなわち所定幅の長尺状に形成されている。第一電極シート111および2枚の第一誘電体シート112,113は、それぞれシート状の基材(図示せず)の表面に材料を印刷することによってシート状に成形してもよいし、材料のみにより単体として存在可能なシート状に成形されるようにしてもよい。
【0117】
ここで、2枚の第一誘電体シート112,113の長手方向の長さおよび2枚のセパレータ114,115の長手方向の長さは、第一電極シート111の長手方向の長さより長い。また、2枚の第一誘電体シート112,113の幅および2枚のセパレータ114,115の幅は、第一電極シート111の幅より大きな幅を有する。
【0118】
続いて、セパレータ114、第一誘電体シート112、第一電極シート111、第一誘電体シート113およびセパレータ115の順に積層されることによって、第一積層シート410が製造される。ここで、図15に示すように、第一電極シート111の帯状の長手方向の長さL(111)は、2枚の第一誘電体シート112,113の帯状の長手方向の長さL(112)より、ΔL(111)の2倍の長さ分だけ短い。
【0119】
そして、図15に示すように、第一積層シート410の長手方向に平行な断面において、2枚の第一誘電体シート112,113の帯状の長手方向の両端は、第一電極シート111の帯状の長手方向の両端に対して、長手方向の外側に位置する。詳細には、2枚の第一誘電体シート112,113の帯状の長手方向の第一端(図15の右端)から第一電極シート111の帯状の長手方向の第一端までの長さは、ΔL(111)である。同様に、2枚の第一誘電体シート112,113の帯状の長手方向の第二端(図15の左端)から第一電極シート111の帯状の長手方向の第二端までの長さも、ΔL(111)である。ここで、第一誘電体シート112の厚みは、H(112)である。また、もう1つの第一誘電体シート113の厚みも、第一誘電体シート112の厚みと同様である。そして、長さΔL(111)は、厚みH(112)以上に設定されている。
【0120】
従って、第一積層シート410の長手方向に平行な断面において、第一電極シート111と2枚の第一誘電体シート112,113の表面との距離は、全ての位置において、第一誘電体シート112,113の各厚みH(112)以上となる。その結果、第一電極シート111の絶縁状態が確実に確保できる。
【0121】
また、図16に示すように、第一積層シート410の幅方向に平行な断面においては、第一電極シート111の幅W(111)は、第一誘電体シート112,113の幅W(112)より、幅ΔW(111)だけ短い。そして、第一電極シート111の幅方向の第一端(図16の左端)が、2枚の第一誘電体シート112,113の幅方向の第一端に一致する。そして、第一積層シート410をロール状に巻き回すことにより第一積層ロール体410aが形成される。
【0122】
第二積層シート420の製造工程においては、図17に示すように、第二電極シート121、2枚の第二誘電体シート122,123および2枚のセパレータ124,125は、帯状、すなわち所定幅の長尺状に形成されている。第二電極シート121および2枚の第二誘電体シート122,123は、それぞれシート状の基材(図示せず)の表面に材料を印刷することによってシート状に成形してもよいし、材料のみにより単体として存在可能なシート状に成形されるようにしてもよい。
【0123】
ここで、2枚の第二誘電体シート122,123の長手方向の長さおよび2枚のセパレータ124,125の長手方向の長さは、第二電極シート121の長手方向の長さより長い。また、2枚の第二誘電体シート122,123の幅および2枚のセパレータ124,125の幅は、第二電極シート121の幅より大きな幅を有する。
【0124】
続いて、セパレータ124、第二誘電体シート122、第二電極シート121、第二誘電体シート123およびセパレータ125の順に積層されることによって、第二積層シート420が製造される。ここで、図18に示すように、第二電極シート121の帯状の長手方向の長さL(121)は、2枚の第二誘電体シート122,123の帯状の長手方向の長さL(122)より、ΔL(121)の2倍の長さ分だけ短い。
【0125】
そして、図18に示すように、第二積層シート420の長手方向に平行な断面において、2枚の第二誘電体シート122,123の帯状の長手方向の両端は、第二電極シート121の帯状の長手方向の両端に対して、長手方向の外側に位置する。詳細には、2枚の第二誘電体シート122,123の帯状の長手方向の第一端(図18の右端)から第二電極シート121の帯状の長手方向の第一端までの長さは、ΔL(121)である。同様に、2枚の第二誘電体シート122,123の帯状の長手方向の第二端(図18の左端)から第二電極シート121の帯状の長手方向の第二端までの長さも、ΔL(121)である。ここで、第二誘電体シート122の厚みは、H(122)である。また、もう1つの第二誘電体シート123の厚みも、第二誘電体シート122の厚みと同様である。そして、長さΔL(121)は、厚みH(122)以上に設定されている。
【0126】
従って、第二積層シート420の長手方向に平行な断面において、第二電極シート121と2枚の第二誘電体シート122,123の表面との距離は、全ての位置において、第二誘電体シート122,123の各厚みH(122)以上となる。その結果、第二電極シート121の絶縁状態が確実に確保できる。
【0127】
また、図19に示すように、第二積層シート420の幅方向に平行な断面においては、第二電極シート121の幅W(121)は、第二誘電体シート122,123の幅W(122)より、幅ΔW(121)だけ短い。そして、第二電極シート121の幅方向の第一端(図19の右端)が、2枚の第二誘電体シート122,123の幅方向の第一端に一致する。そして、第二積層シート420をロール状に巻き回すことにより第二積層ロール体420aが形成される。
【0128】
第一積層シート製造工程(S1)および第二積層シート製造工程(S2)の後には、第一実施形態と同様に、図5における複合積層シート製造工程(S3)および扁平ロール工程(S4,S5)を実行することにより、図13に示す静電型ユニット450が製造される。
【0129】
(5.その他)
上記実施形態においては、図1に示すように、第一弾性体41が、静電型ユニット10におけるロール状の外周面を全周に亘って被覆することとした。これに限られず、第一弾性体41は、静電型ユニット10の外周面のうち、扁平面のみを被覆するようにしてもよい。この場合、第二カバー62は、静電型ユニット10におけるロール状の外周面のうち扁平面に隣り合う面(図1の左右面)を、静電型ユニット10の面方向に圧縮しない状態となる。
【0130】
また、上記実施形態においては、図1に示すように、第一弾性体41が、静電型ユニット10におけるロール状の外周面を全周に亘って被覆した状態として、カバー60により、積層方向および面方向に圧縮されることとした。これに限られず、第一弾性体41は、カバー60により静電型ユニット10の積層方向のみに圧縮されることとし、カバー60により静電型ユニット10の面方向には圧縮されないようにしてもよい。また、第二弾性体42および第三弾性体43も、カバー60により圧縮されないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1:静電型トランスデューサ、 10,310,450:静電型ユニット、 16:中央積層部、 17:第一端積層部、 18:第二端積層部、 20:第一導通部、 30:第二導通部、 41:第一弾性体、 42:第二弾性体、 43:第三弾性体、 50:制御基板、 60:カバー、 110,410:第一積層シート、 110a,410a:第一積層ロール体、 111:第一電極シート、 112,113:第一誘電体シート、 114,115:セパレータ、 120,420:第二積層シート、 120a,420a:第二積層ロール体、 121:第二電極シート、 122,123:第二誘電体シート、 124,125:セパレータ、 130:複合積層シート、 140:複合積層ロール体、 150:扁平ロール体、 311:第一カール部、 312:第二カール部、 313:第三カール部
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