(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態により、本発明が限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0015】
〔第1の実施形態〕
(超電導テープの構成例)
まず、超電導テープの構成例について、
図1を参照して説明する。
図1は、超電導テープの構成例を示す図である。
図2は、本実施形態の超電導テープと電極との接続構造を示す縦断面図である。
【0016】
なお、以下の説明において、超電導テープの厚さ方向を、単に「厚さ方向」と記す。当該厚さ方向のうち電極から離間する向き(すなわち超電導テープに近接する向き)を矢印T
1で示し、当該向きとは反対側、すなわち電極に近接する向き(すなわち超電導テープから離間する向き)を矢印T
2で示す。また、超電導テープの長手方向を、単に「長手方向」と記す。また、厚さ方向及び長手方向に垂直な方向を単に「幅方向」と記す。
【0017】
図1及び
図2に示すように、超電導テープ1は、平らな帯状(以下、単に「テープ状」と記す)をなしている導体、いわゆるテープ導体であり、超電導体で構成された層(以下、超電導層と記す)と、常電導体で構成されたその他の部分を含む。具体的には、超電導テープ1は、金属で構成され基板(以下、単に「基板」と記す)12と、厚さ方向において基板12と超電導層15との間に配置された中間層14とを含む。中間層14及び超電導層15は、基板12に沿って超電導テープ1の長手方向に延びている。
【0018】
基板12は、超電導テープ1を構成するその他の層11,13〜17に比べて厚く、超電導テープ1のうち最も機械的強度が高い部分である。基板12は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、銀合金等の金属で構成されている。基板12は、例えば、ニッケル合金の一種であるハステロイ(HASTELLOY(登録商標))で構成することができる。
【0019】
超電導層15は、酸化物超電導体(oxide superconductor)で構成されており、且つ臨界温度が比較的高い高温超電導体(high temperature superconductor)で構成されている。このような高温超電導体は、一般的に約25K以上の臨界温度を有する。本実施形態において、超電導層15は、厚さ0.1mm〜0.2mmの薄膜状に成形されている。超電導層15は、所定の臨界温度以下において常電導状態から超電導状態に転移して、電気抵抗がほぼゼロとなる。本実施形態の超電導層15には、例えば、200A〜300Aの電流を流すことが可能である。
【0020】
超電導層15を構成する高温超電導体(高温超電導材料)は、金属酸化物系のセラミックスであり、本実施形態においては、RE123系の組成を有する銅酸化物(RE)Ba
2Cu
3O
7−δである。ここで、(RE)は、例えば、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ホルミニウム(Ho)、サマリウム(Sm)等の希土類元素、及びイットリウムからなる群より選択された元素を意味している。なお、「Ba」はバリウムを、「Cu」は銅を、「O」は酸素を意味している。また、δは、ゼロより大きく且つ1より小さい数を意味している。
【0021】
中間層14は、例えば、酸化セリウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、バリウムジルコニア等の材料で構成することができる。中間層14は、基板12と超電導層15との間におけるカチオン(陽イオン)の拡散を防止可能な、いわゆる拡散防止層である。
【0022】
また、本実施形態の超電導テープ1は、超電導層15を保護する保護層16を有する。保護層16は、超電導テープ1のうち超電導層15の外側に、当該超電導層15に隣接して設けられている。この保護層16は、銀等の導電性を有する金属で構成され、超電導層15が空気中の水分に触れて劣化することを防止している。また、保護層16は、超電導層15に過剰に電気が流れた場合に超電導層15に電弧が生じること(いわゆる燃焼)を防止している。
【0023】
また、超電導テープ1は、厚さ方向の外側に配置された2つの安定化層11,17を有しており、具体的には、基板12の外側に配置された第1安定化層11と、保護層16の外側に配置された第2安定化層17とを有している。すなわち、これら安定化層11,17により、超電導テープ1の厚さ方向の両面が被覆されている。安定化層11,17は、導電性が比較的高い金属で構成されており、例えば、銅や銀で構成することができる。安定化層11,17は、超電導層15に過剰に電気が流れた場合に超電導層15の燃焼を防止することができる。
【0024】
また、超電導テープ1において、基板12と中間層14との間には、当該基板12上に当該中間層14を配向させて形成するための配向層13が配置されることも好適である。配向層13は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)等から形成される。なお、予め配向した基板を用いる場合には省略することができる。
【0025】
以上に説明したように、本実施形態の超電導テープ1は、第1安定化層11、基板12、配向層13、中間層(拡散防止層)14、超電導層15、保護層16及び第2安定化層17の順に積層されたものである。
図1に示すように、本実施形態の超電導テープ1は、幅方向の寸法(以下、テープ幅と記す)wが4〜12mmである。また、厚さ方向の寸法(以下、テープ厚さと記す)t、すなわちテープ厚さが0.1〜0.2mmである。また、超電導テープの長手方向の寸法を、以下に「テープ長さ」と記す。
【0026】
なお、本発明に係る超電導テープの各寸法は、これらの範囲に限定されるものではない。また、本発明に係る超電導テープは、安定化層11,17、配向層13、保護層16を、必要に応じて省略することができる。また、超電導テープ1は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミドやポリイミドアミド等の電気絶縁材料(図示せず)で被覆されているものとしても良い。
【0027】
超電導テープ1は、2つの主面(以下、テープ主面と記す)10,18を有する。具体的には、超電導テープ1は、厚さ方向において超電導層15に近い面(以下、近位面と記す)18と、超電導層15から遠い面(以下、遠位面と記す)10とを有する。近位面18は、超電導層15との間における厚さ方向の電気抵抗が小さい面でもある。また、遠位面10は、超電導層15との間における厚さ方向の電気抵抗が大きい面でもある。
【0028】
以上のように構成された超電導テープ1のうち超電導層15は、比較的高い臨界温度で常電導状態から超電導状態に遷移することができる。このような超電導テープ1は、「高温超電導テープ線材」又は単に「高温超電導線材」とも呼称される。なお、このような超電導テープ1は、一般的に、長手方向の機械的強度に優れている。一方、厚さ方向の引張応力、いわゆる剥離応力や圧縮応力には、脆弱な傾向があり、厚さ方向に比較的高い応力が生じると機械的な歪が生じる虞がある。
【0029】
(超電導テープと電極との接続構造)
本実施形態の超電導テープと電極との接続構造について
図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態の超電導テープと電極との接続構造を示す縦断面図である。なお、
図2は、超電導テープの幅方向に垂直な縦断面を示している。
図2において、第1及び第2超電導テープのうち、基板及び超電導層以外の層(安定化層、配向層、中間層、保護層)については、図示を省略している。
【0030】
図2に示すように、本実施形態の接続構造は、部分的に重ね合された2つの超電導テープ1,2のそれぞれの一部分1b,2cが、同じ電極5に接合されたものであり、本実施形態においては、第1超電導テープ1のうち端1aを含む部分である端部1bと、第2超電導テープ2のうち端2aを含む部分である端部2cが、それぞれ電極5に接合されている。これら超電導テープ1,2は、略同一のテープ幅を有する。第2超電導テープ2は、第1超電導テープ1と同様に構成されており、基板22と、超電導層25とを含んでいる(
図1参照)。また、本実施形態において超電導テープ1,2は、略同一のテープ厚さを有する。
【0031】
超電導テープ1,2は、異なるテープ長さを有しており、本実施形態においては、第2超電導テープ2は、第1超電導テープ1に比べてテープ長さが短い。第2超電導テープ2は、第1超電導テープ1に沿って延びている。第2超電導テープ2の厚さ方向、長手方向及び幅方向は、第1超電導テープ1と一致している。
【0032】
第2超電導テープ2は、第1超電導テープ1と電極5との間に配置される。換言すれば、第2超電導テープ2は、厚さ方向において、電極5に比較的近い位置に配置された内側超電導テープ2である。一方、第1超電導テープ1は、電極5から比較的遠い位置に配置された外側超電導テープ1である。
【0033】
超電導テープ1,2は、互いに電気的に接続されている。より具体的には、第1超電導テープ1の超電導層15と、第2超電導テープ2の超電導層25は、互いに電気的に接続されている。重ね合された超電導テープ1,2は、これら2つの超電導層15,25の間に電流を流すことが可能である、すなわち2つの超電導層15,25のうち一方を流れる電流を他方に流すことが可能である。
【0034】
図2に示すように、第1超電導テープ1の長手方向の端部1bと、第2超電導テープ2の長手方向の端部2cは、それぞれ、溶加材(filler material)としての金属(例えばはんだ)3により電極5と接合される。詳細には、当該金属すなわちはんだ3が固化した略層状をなしている部分(以下、接続層と記す)31,35により電極5と接合される。
【0035】
本実施形態において、電極5は、銅、インジウム、銀及び金からなる群より選択された少なくとも一種の金属で構成されている。超電導テープ1,2のそれぞれの端部1b,2cと電極5は、溶加材としてのはんだ3により接合される。端部1b,2cと電極5との間にある接続層31,35は、溶融した、はんだが固化したものである。超電導テープ1,2は、それぞれ、はんだで構成された接続層31,35を介して電気的に接続される。
【0036】
本実施形態において、電極5は、略板状をなしており、2つの主面50,58を有する。これら主面50,58のうち一方は、はんだ3が配置される面(以下、接合面と記す)50である。接合面50は、超電導テープ1,2の厚さ方向に垂直な方向に広がっている。本実施形態において、電極5は、単数の平らな接合面50を有する。
【0037】
超電導テープ1,2は、それぞれの長手方向の一方側の端部1b,2cが、はんだ3により電極5と接合される。超電導テープ1,2は、それぞれの端部1b,2cから長手方向の他方側、すなわち電極5から離間する向きに延びている。本実施形態において、超電導テープの長手方向のうち電極から離間する向きを「長手方向内側」と記して矢印L1で示す。当該長手方向内側の反対側を「長手方向外側」と記して矢印L2で示す。
【0038】
電極5は、長手方向外側の縁5aを含む部分(以下、第1縁部と記す)51と、長手方向内側の縁5eを含む部分(以下、第2縁部と記す)55とを有する。第1縁部51は、厚さ方向において第1超電導テープ1の端部1bと対向している部分であり、第2縁部55は、厚さ方向において第2超電導テープ2の端部2cと対向している部分である。本実施形態の電極5は、
図2に示す縦断面において矩形、詳細には、薄い長方形状をなしている。第1縁部51と第2縁部55は、厚さ方向の寸法が同一であり、長手方向に連続している。
【0039】
第1超電導テープ1は、その長手方向外側の端1aが、電極5の縁5aと厚さ方向に対向するように配置される。一方、第2超電導テープ2は、電極5の縁5a及び第1超電導テープ1の端1aに対して、その長手方向の端2aが所定の距離(寸法Dで示す)長手方向内側に位置するように配置される。本実施形態において、当該距離Dは、電極5の長手方向の寸法、すなわち長手方向外側の縁5aと長手方向内側の縁5eとの距離の約半分である。
【0040】
第1超電導テープ1は、その厚さ方向における超電導層15と電極5との間の電気抵抗が小さくなる向きに配置される。具体的には、第1超電導テープ1の2つのテープ主面10,18のうち、超電導層15に近い近位面18を電極5に向けて配置される。すなわち、第1超電導テープ1は、その超電導層15と電極5が厚さ方向に近くなる向きに配置される。
【0041】
本実施形態の第2超電導テープ2は、第1超電導テープ1と同様に、超電導層25と電極5との間の電気抵抗が小さくなる向きに配置される。具体的には、2つのテープ主面20,28のうち近位面28を電極5に向けて配置される。すなわち、第2超電導テープ2は、その超電導層25と電極5が厚さ方向に近くなる向きに配置される。
【0042】
なお、第2超電導テープ2は、RE123系の超電導層を有する超電導テープに替えて、(Bi,Pb)
2Ca
2Sr
2Cu
3O
X、(Bi,Pb)
2Ca
2Sr
3Cu
4O
Xなる組成のいわゆるビスマス系高温超電導材料を用いた超電導テープであってもよい。このようなビスマス系の超電導テープは、銀の母材にフィラメント状のビスマス系高温超電導材料が複数注入された、いわゆる多芯テープ線材であり、設計に応じては補強用に高強度の金属テープが付属される。そのため、第1超電導テープ1とは異なり、厚さ方向に構造が対称となることから、第2超電導テープ2については、どちらのテープ主面を電極5に向けて配置してもよい。
【0043】
第1超電導テープ1の端部1bと電極5の第1縁部51との間には、溶加材としての金属(はんだ)で構成された接続層(以下、第1接続層と記す)31が挟まれる。第1接続層31は、第1超電導テープ1の近位面18と接合面50に接している。第1超電導テープ1の端部1bは、第1接続層31により第1縁部51と接合される。第1接続層31は、第1超電導テープ1と電極5とを物理的かつ電気的に接続する。
【0044】
一方、第2超電導テープ2の端部2cと電極5の第2縁部55との間には、溶加材としての金属(はんだ)で構成された接続層(以下、第2接続層と記す)35が挟まれる。第2接続層35は、近位面28と接合面50に接している。第2超電導テープ2の端部2cは、第2接続層35により第2縁部55と接合される。第2接続層35は、第2超電導テープ2と電極5とを物理的かつ電気的に接続する。
【0045】
このようにして2つの超電導テープ1,2は、それぞれ接続層31,35により、電極5に物理的かつ電気的に接続される。より具体的には、第1超電導テープ1の超電導層15は、第1接続層31を介して電極5と電気的に接続される。第2超電導テープ2の超電導層25は、第2接続層35を介して電極5に電気的に接続される。
【0046】
本実施形態において、第2接続層35は、同一の接合面50上において第1接続層31と長手方向に隣接して配置されている。第2接続層35は、第2超電導テープ2の厚さの分、第1接続層31に比べて厚さが薄いものとなる。電極5の第2縁部55と、第1超電導テープ1の超電導層15との間においては、第2接続層35及び第2超電導テープ2の超電導層25を介して電流を流すことも可能である。
【0047】
このように構成された本実施形態の超電導テープ1,2と電極5との接続構造は、例えば、超電導コイルや超電導電力ケーブルに用いられる。超電導コイルに用いられる場合、超電導テープ1,2のうち少なくとも一方が、渦巻き状(略同心円状)に巻かれて超電導コイルの巻線部を形成する。この場合、超電導テープ1,2の厚さ方向が巻線部の径方向となる。電極5が、例えば、巻線部のうち径方向内側に配置される場合、超電導テープ1,2のうち少なくとも一方は、第1超電導テープ1を径方向外側に向けて(すなわち第2超電導テープ2を径方向内側に向けて)径方向内側から外側に巻かれる。なお、本実施形態の接続構造の超電導コイルへの具体例な適用例については、後述する。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態の接続構造は、高温超電導材料で構成された超電導層15,25をそれぞれ含み、部分的に重ね合されて長手方向に延びており且つ互いに超電導層15,25同士が電気的に接続される第1及び第2超電導テープ1,2と、第1及び第2超電導テープ1,2のぞれぞれの端部1b,2cと接合されており且つ第1及び第2超電導テープのそれぞれの超電導層と電気的に接続される電極5とを有する。第2超電導テープ2は、その端部2cが第1超電導テープ1と電極5との間に配置されており、当該電極5のうち長手方向の内側にある縁部55と接合されている。第2超電導テープ2は、当該縁部55から第1超電導テープ1と同じ向き、すなわち長手方向内側に延びているものとした。
【0049】
本実施形態によれば、超電導層15,25と電極5との間における電気抵抗を増大させることなく、超電導テープ1,2のうち電極5の縁5eの近傍の部分1e,2eの機械的強度を、第2超電導テープ2を有しない場合に比べて高いものにすることができ、これら部分1e,2eに生じた応力により当該部分1e,2eに機械的な歪が生じることを抑制することができる。これらの部分1e,2eのうち電極5の縁5eに近い第2超電導テープ2の部分2eに機械的な歪が生じても、第1超電導テープ1の超電導層15と電極5の第1縁部51の間において安定的に電流を流すことができる。電極5の第1縁部51と第1超電導テープ1の端部1bとの間には、溶加材としての金属で構成された第1接続層31のみが挟まれているため、単に2つの超電導テープ1,2を重ね合わせる場合に比べて超電導層15と電極5との間に生じる電気抵抗を抑制することができる。
【0050】
また、第1超電導テープ1は、厚さ方向における超電導層15と電極5の第1縁部51との間における電気抵抗が小さくなる向きに配置されている。本実施形態において第1超電導テープ1は、2つのテープ主面10,18のうち超電導層15との厚さ方向の距離が近い近位面18を電極5に向けて配置されている。すなわち、第1超電導テープ1は、その超電導層15と電極5との距離が小さくなる向きに配置されている。これにより、第1超電導テープ1の超電導層15と電極5の第1縁部51との間に生じる電気抵抗を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の第2超電導テープ2は、第1超電導テープ1と同様に、厚さ方向における超電導層25と電極5の第2縁部55との間における電気抵抗が小さくなる向きに配置されており、具体的には、2つのテープ主面20,28のうち超電導層25に近い近位面28を電極5に向けて配置されている。これにより、第2超電導テープ2の超電導層25と電極5の第2縁部55との間に生じる電気抵抗を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施形態において、第1超電導テープ1は、その端1aを含む部分である端部1bが、電極5の第1縁部51に接合されるものとしたが、本発明に係る第1超電導テープが、電極に接合される態様は、これに限定されるものではない。第1超電導テープ1は、その一部分が、電極5の第1縁部51と接合されていれば良い。
【0053】
例えば、
図3に示す第1変形例のように、第1超電導テープ1の端1aが、電極5の縁5aより長手方向外側に位置しており、当該端1aを含む部分である端部(以下、延長部と記す)80が、電極5の第1縁部51より長手方向外側に突出しているものとしても良い。第1変形例においては、第1超電導テープ1のうち、延長部80より長手方向内側にある部分1b’が、電極5の第1縁部51に接合される。
【0054】
また、
図4に示す第2変形例のように、第1超電導テープ1の端1aが、電極5の縁5aより長手方向内側に位置しており、接合面50上には、第1超電導テープ1及び第1接続層31が配置されない空間90が形成されないものとしても良い。第2変形例においては、第1超電導テープ1のうち、端1aを含む部分である端部(いわゆる短小部)1b’’が、電極5の第1縁部51と接合される。これら変形例によっても、同様の効果を奏することができる。
【0055】
〔第2の実施形態〕
(超電導テープと電極との接続構造)
本実施形態の超電導テープと電極との接続構造について
図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態の超電導テープと電極との接続構造を示す縦断面図である。なお、
図5は、超電導テープの幅方向に垂直な縦断面を示している。
図5において、第1及び第2超電導テープのうち、基板及び超電導層以外の層については、図示を省略する。また、第1の実施形態と略共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
図5に示すように、本実施形態の接続構造において第2超電導テープ2は、2つのテープ主面20,28のうち超電導層25との厚さ方向の距離が遠い遠位面20を電極5に向けて配置されている。第2超電導テープ2は、金属で構成された基板22を含んでおり、当該基板22は、超電導層25と当該遠位面20との間に配置されている。基板22は、超電導層25等に比べて厚く、第2超電導テープ2のうち最も機械的な強度が高い層状の部分である。
【0057】
第1超電導テープ1は、第1の実施形態と同様に、超電導層15に近い近位面18を電極5に向けて配置されている。超電導テープ1,2同士が、重ね合されている部分、例えば、第2超電導テープ2の端部2cより長手方向内側においては、第1超電導テープ1の近位面18と第2超電導テープ2の近位面28が接している。すなわち、第2超電導テープ2は、その超電導層25と、第1超電導テープ1の超電導層15が近くなる向きに配置されている。つまり、2つの超電導テープ1,2は、2つの超電導層15,25の間における厚さ方向の電気抵抗が極力小さくなるように配置されている。
【0058】
本実施形態の接続構造によれば、第2超電導テープ2のうち、機械的な強度が高い基板22が、超電導層25に比べて電極5の縁5eに近い位置に配置されるため、第2超電導テープ2の部分2eにおいて超電導層25に機械的な歪が生じることを抑制することができる。また、本実施形態の接続構造によれば、第1の実施形態に比べて、厚さ方向に隣り合う2つの超電導層15,25の間の電気抵抗を極力小さくすることができる。2つの超電導層15,25のうち一方に機械的な歪が生じても、当該歪んだ部分を避けるよう一方から他方の超電導層に電流を流すことができる。
【0059】
〔第3の実施形態〕
(超電導テープと電極との接続構造)
本実施形態の超電導テープと電極との接続構造について
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態の超電導テープと電極との接続構造を示す縦断面図である。なお、
図6は、超電導テープの幅方向に垂直な縦断面を示している。
図6において、第1及び第2超電導テープのうち、基板及び超電導層以外の層については、図示を省略する。
図7は、本実施形態の変形例1の接続構造における第2超電導テープの端部の形状を説明する模式図である。
図8は、本実施形態の変形例2の接続構造における第2超電導テープの端部の形状を説明する模式図である。なお、第1及び第2の実施形態と略共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図6に示すように、本実施形態の接続構造において、第2超電導テープ2Bは、その厚さ方向の寸法である厚さ(寸法t2で示す)が、第1超電導テープ1の厚さ(寸法t1で示す)に比べて薄いものとした。このような第2超電導テープ2Bは、例えば、基板22を上述した薄いものにすることにより実現することができる。また、第2超電導テープ2が有する層のうち、例えば、配向層13(
図1参照)等、基板22及び超電導層25以外の層を省略することによっても実現することができる。
【0061】
本実施形態によれば、接続層31,35を形成する溶加材としての溶融した金属が固化していないときや、電極5と第1超電導テープ1との間に接続層31,35を圧縮する向きの外力(いわゆる圧縮力)が作用したときに、第2超電導テープ2Bの端2aの近傍にある接続層31,35や第1超電導テープ1に機械的な歪が生じることを抑制することができる。なお、このような歪を抑制する手段は、第2超電導テープ2Bのように、その厚さを薄くする以外にも、様々な手法がある。
【0062】
例えば、
図7に示す変形例1の接続構造のように、第2超電導テープ2Cのうち電極5と重ね合される端部2fは、長手方向を端2aに向かう(矢印L2で示す)に従って幅方向の寸法w2が小さくなるよう形成されることも好適である。この変形例1において、第2超電導テープ2の端部2fは、長手方向の縁2hに対して所定の鋭角を付けた方向に端2aまで延びる2つの縁2gを有する。
【0063】
この変形例1によっても、第2超電導テープ2の端2aの近傍において、はんだで構成された接続層や第1超電導テープ1に機械的な歪が生じることを抑制することができる。このような端部2fは、第2超電導テープ2の端部において長手方向の縁に対して所定の鋭角を付けた方向に2か所切断するだけで容易に実現することができる。
【0064】
また、
図8に示す変形例2の接続構造のように、第2超電導テープ2Dのうち電極5Cと重ね合される端部2jは、長手方向の縁2iに対して所定の鋭角を付けた方向に端2aまで延びている単数の縁2kを有するものとしても良い。この変形例2においても、第2超電導テープ2の端部2jは、長手方向を端2aに向かうに従って幅方向の寸法w2が小さくなるよう形成される。
【0065】
この変形例2においては、2セットの超電導テープ、すなわち超電導テープ1,2Dと超電導テープ1',2D’が同じ電極5Cに接続されている。一方のセットの第1及び第2超電導テープ1,2Dと、他方のセットの第1及び第2超電導テープ1',2D'は、それぞれの端部が電極5Cにおいて幅方向に隣り合っており、互いに電気的に接続される。これら2セットの超電導テープ1,2D,1',2D’は、ほぼ同じ幅及びほぼ同じ厚さを有する。長手方向において電極5Cより一方側には、超電導テープ1,2Dが延びており、その反対側すなわち他方側には、超電導テープ1',2D'が延びている。
【0066】
この変形例2において、一方のセットの第2超電導テープ2Dと、他方のセットの第2超電導テープ2D'は、それぞれの端部2j,2j'を画定する長手方向の縁2i,2i'同士が、幅方向に対向している。この変形例2によれば、第2超電導テープ2D,2D'のそれぞれの端2a,2a'の近傍において、はんだで構成された接続層や第1超電導テープ1,1'に機械的な歪が生じることを抑制しつつ、一方のセットの第2超電導テープ2Dと、他方のセットの第2超電導テープ2D'との間において安定的に電流を流すことができる。
【0067】
なお、上述した例において、第2超電導テープは、第1超電導テープに比べて高い臨界電流値(critical current)を有することも好適である。第1超電導テープに機械的な歪が生じた場合であっても、当該歪が生じた部分を迂回するように、第1超電導テープと第2超電導テープの間で電流を移すことができ、超電導テープを焼損させることなく安定的に電流を流すことができる。
【0068】
〔第4の実施形態〕
(超電導テープと電極との接続構造)
本実施形態の超電導テープと電極との接続構造について
図9を参照して説明する。
図9は、本実施形態の超電導テープと電極との接続構造を示す縦断面図である。なお、
図9は、超電導テープの幅方向に垂直な縦断面を示している。
図9において、第1及び第2超電導テープのうち、基板及び超電導層以外の層については、図示を省略する。また、第1及び第2の実施形態と略共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
図9に示すように、本実施形態の接続構造において、電極5Eは、第1超電導テープ1と接合される第1縁部51Eと、第2超電導テープ2と接合される第2縁部55とを有する。第1縁部51Eは、第2超電導テープ2の厚さの分、第2縁部55より厚さ方向を第1超電導テープ1に近接する向きに突出している。
【0070】
第1縁部51Eと第2縁部55は、それぞれ、超電導テープ1,2の厚さ方向に垂直な方向に広がっており、溶加材としての金属(はんだ)が配置される2つの面(以下、接合面と記す)52,54を有する。具体的には、第1縁部51Eは、第1接合面52を有し、第2縁部55は、第2接合面54を有する。本実施形態において、第1接合面52は、電極5Eのうち、超電導テープ1,2の長手方向外側に配置されており、第2接合面54は、長手方向内側に配置されている。
【0071】
第1接合面52上には、第1超電導テープ1との間にはんだ(溶加材としての金属)が配置され、当該はんだが固化することにより、第1超電導テープ1と第1縁部51Eとを物理的かつ電気的に接続する第1接続層31Eが形成される。電極5の第1縁部51Eは、当該第1接続層31Eにより第1超電導テープ1の端部1bと接合される。一方、第2接合面54上には、第2超電導テープ2との間にはんだが配置され、当該はんだが固化することにより、第2超電導テープ2と第2縁部55とを物理的かつ電気的に接続する第2接続層35が形成される。電極5の第2縁部55は、当該第2接続層35により第2超電導テープ2の端部2cと接合される。
【0072】
また、電極5は、第1接合面52と第2接合面54との間に配置されており、これら接合面52,54とを接続する面(以下、接続面と記す)53を有する。本実施形態において、接続面53は、長手方向に垂直な方向に広がっている。接続面53は、第2超電導テープ2の端2aと、はんだ構成された層33を挟んで、長手方向に対向している。本実施形態において、第1接続層31Eと、第2接続層35は、当該層33を介して接続されている。
【0073】
第1接合面52は、超電導テープ1,2の厚さ方向において第2接合面54に比べて第1超電導テープ1に近い位置に配置されている。このような形状の電極5Eは、上述した超電導テープ1,2の幅方向に垂直な縦断面が長方形状をなす電極5(
図2、
図5及び
図6参照)に対して、第2超電導テープ2の端部2cに対応する切欠き又は溝を形成することにより実現することができる。
【0074】
本実施形態によれば、第1接合面52は、厚さ方向において第2接合面54に比べて第1超電導テープ1に近い位置に配置されているので、電極5Eと第1超電導テープ1との間にある第1接続層31Eの厚さを、極力、薄いものにすることができ、第1接続層31Eにおいて生じる電気抵抗を極力、抑制することができる。また、電極5Eと第1超電導テープ1との間に厚さ方向の圧縮力が作用したときに、第1接続層31Eに生じる機械的な歪を抑制することができる。また、電極5Eは、第1接合面52と第2接合面54とを接続する接続面53が、第2超電導テープ2の端2aと長手方向に対向しているものとしたので、第2超電導テープ2を電極5Eに接合する際の位置合わせが容易になる。
【0075】
〔第5の実施形態〕
(超電導コイル)
本実施形態の超電導コイルについて
図2、
図10〜
図17を参照して説明する。
図10は、本実施形態の超電導コイルの斜視図である。
図11は、本実施形態の超電導コイルにおける第1及び第2超電導テープと電極の配置を説明する上面図である。
図12は、本実施形態の超電導コイルにおける第1及び第2超電導テープと電極の配置を説明する展開図である。
【0076】
図13は、本実施形態の変形例1の超電導コイルにおける第1及び第2超電導テープと電極の配置を説明する上面図である。
図14は、本実施形態の変形例1の超電導コイルにおける第1及び第2超電導テープと電極の配置を説明する展開図である。
図15は、本実施形態の変形例2の超電導コイルにおける第1及び第2超電導テープと電極の配置を説明する上面図である。
図16は、本実施形態の変形例2の超電導コイルにおける第1及び第2超電導テープと電極の配置を説明する展開図である。
図17は、本実施形態の変形例3の超電導コイルの縦断面図である。なお、第1の実施形態と略共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
図2及び
図10〜
図12に示すように、本実施形態の超電導コイルは、超電導テープ1,2のうち少なくとも一方が渦巻き状に巻かれた巻線部60と、超電導テープ1,2のそれぞれの端部に接合されて、これら超電導テープ1,2と電気的に接続される電極5、5Eと、超電導テープ1,2のうち少なくとも一方が巻き付けられる巻枠70とを有する。
【0078】
本実施形態の超電導コイルは、いわゆるパンケーキコイル(pancake coil)であり、その巻線部60は、平らな円板状をなしている。巻線部60の軸心を
図10に一点鎖線Aで示し、
図11に点Aで示す。巻線部60の軸心Aに沿う方向を、以下に「軸方向」と記す。また、巻線部60の軸心に垂直な方向を、以下に「径方向」と記し、径方向の外側を矢印R1で示し、径方向の内側を矢印R2で示す。超電導テープ1,2のうち少なくとも一方が、巻枠70に巻き付けられる。
【0079】
巻線部60の周方向は、超電導テープ1,2の長手方向とほぼ一致する。当該周方向のうち、超電導テープ1,2が巻き付けられる向き、すなわち径方向内側にある電極5から離間する向きを、矢印C1で示す。この向きは、矢印L1で示す長手方向内側と一致している。また、当該周方向のうち内側の電極5に近接する向きを、矢印C2で示す。この向きは、矢印L2で示す長手方向外側と一致している。
【0080】
巻枠70は、巻線部60の径方向内側において略円環状をなしている。巻枠70は、電気絶縁材料で構成されており、本実施形態においては、繊維強化プラスチックで構成されている。巻枠70は、例えば、ガラス繊維を強化材とし、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を母材とするガラス繊維強化プラスチックで構成することができる。
【0081】
電極5,5Eは、それぞれ巻線部60から軸方向の一方側(矢印A1で示す)に突出して、外部からの電気的接続を提供する、いわゆる「口出し電極」である。電極5,5Eのうち電極5は、巻線部60の径方向内側に配置されており、電極5Eは、巻線部60の径方向外側に配置されている。
図10及び
図11に示すように、巻線部60の径方向内側に配置される電極5は、巻枠70に結合されており、当該巻枠70から軸方向に突出している。
【0082】
超電導テープ1、2の少なくとも一方は、その厚さ方向が巻線部60の径方向となるように巻枠70に巻き付けられる。本実施形態において、超電導テープ1,2のうち第1超電導テープ1が、巻枠70に巻き付けられる。
【0083】
第1超電導テープ1は、巻枠70の径方向外側において電極5から矢印C1で示す周方向に渦巻き状(略同心円状)に巻かれて巻線部60を形成する。本実施形態の巻線部60において、第1超電導テープ1は、軸心Aに垂直な平面上において渦巻き状に巻かれる。
【0084】
第2超電導テープ2は、第1超電導テープ1と径方向内側に配置された電極5との間に、その端部2cが配置される。第2超電導テープ2は、電極5から第1超電導テープ1と同じ向きに、所定の距離(所定の角度)巻枠70に沿って周方向に延びている。第2超電導テープ2は、巻線部60の径方向内側の電極5の近傍において、第1超電導テープ1と部分的に重ね合されており、第1超電導テープ1を補強している。
【0085】
図11及び
図12に示すように、巻線部60の径方向内側の電極5には、超電導テープ1,2のそれぞれの端部1b,2cが、はんだ等の溶加材としての金属により電極5に接合される。すなわち、第1超電導テープ1の端部1bは、電極5のうち第1縁部51(
図2参照)と接合される。第2超電導テープ2の端部2cは、第1超電導テープ1と電極5との間に配置されており、電極5のうち長手方向の縁5eを含む第2縁部55(
図2参照)と接合される。なお、
図11及び
図12においては、溶加材としての金属で構成された接続層の図示を省略している。
【0086】
一方、巻線部60の径方向外側の電極5Eには、
図12に示すように、第1超電導テープ1の長手方向の端1zを含む端部1xが、はんだ等により接合される。第2超電導テープ2のうち電極5から離間する側の端2zは、巻枠70と第1超電導テープ1との間に挟まれている。
【0087】
以上のように構成された超電導コイルにおいて、超電導テープ1,2には、径方向に圧縮する向きの応力が生じる。特に、電極5の縁5eの近傍には、高い応力が集中しやすい。超電導テープ1,2のうち、当該縁5eの近傍においては、第1超電導テープ1の径方向内側に第2超電導テープ2が重ね合されており、高い機械的強度を有している。これにより、第1超電導テープ1のうち径方向内側の電極5の縁5e近傍の部分に機械的な歪が生じることを抑制しつつ、当該第1超電導テープ1により、2つの電極5,5Eの間に安定的に電流を流すことができる。
【0088】
なお、本実施形態の超電導コイルにおいては、超電導テープ1,2のうち第1超電導テープ1が渦巻き状に巻かれて巻線部を形成するものとしたが、本発明に係る巻線部を形成するために渦巻き状に巻かれて巻線部を形成する超電導テープは、これに限定されるものではない。
【0089】
例えば、
図13及び
図14に示す変形例1の超電導コイルのように、超電導テープ1C,2Cのうち第2超電導テープ2Cが渦巻き状に巻かれて巻線部60Cを形成することも好適である。この変形例1において、巻線部60Cの径方向内側の電極5には、超電導テープ1,2のそれぞれの端部1b,2cが接合され、径方向外側の電極5Eには、
図14に示すように、第2超電導テープ2Cの端2zを含む部分2xが接合される。この変形例1においては、第2超電導テープ2Cを介して2つの電極5,5Eが互いに電気的に接続される。巻線部60Cの径方向内側にある電極5の縁5eの近傍においては、2つの超電導テープ1C,2Cが重ね合されている。
【0090】
この変形例1によれば、第1超電導テープ1Cのうち径方向内側の電極5の縁5e近傍の部分に機械的な歪が生じることを抑制することができる。仮に、2つの電極5,5Eの間を接続する第2超電導テープ2Cのうち縁5eの近傍に機械的な歪が生じても、当該歪が生じた部分を、その径方向外側に配置された第1超電導テープ1Cにより迂回させることができる。
【0091】
また、
図15及び
図16に示す変形例2の超電導コイルのように、2つの超電導テープ1E,2Eの双方が渦巻き状に巻かれて巻線部60Eを形成する、いわゆる「バンドル巻き」とすることも好適である。この変形例2において、巻線部60Eの径方向内側の電極5には、超電導テープ1,2のそれぞれの端部1b,2cが接合され、径方向外側の電極5Eには、超電導テープ1,2のそれぞれの端1z,2zを含む部分の少なくとも一方が接合される。
【0092】
この変形例2によれば、2つの電極5、5Eの間を、重ね合された2つの超電導テープ1,2により電気的に接続することができ、仮に、一方の超電導テープに機械的な歪が生じても、当該歪が生じた部分に隣接する他方の超電導テープにより電流を迂回させることができる。
【0093】
なお、上述した例において、超電導テープ1,2のうち少なくとも一方により電気的に接続される2つの電極5,5Eは、巻線部60,60C、60Eから、その軸方向に突出する、いわゆる口出し電極であるものとしたが、本発明の接続構造が適用される電極及び超電導コイルは、上述した態様に限定されるものではない。
【0094】
例えば、
図17に示す変形例3の超電導コイルのように、複数の略円板状の巻線部60G,60H,60J,・・・,60Zが、軸方向に間隔をあけて配列されたもの、いわゆる積層型パンケーキコイルにも、本発明の接続構造を適用することができる。この変形例3において、複数の巻線部60G〜60Zのうち軸方向外側(
図17に矢印A1及び矢印A2で示す)に配置された巻線部60G,60Zには、それぞれ上述した口出し電極5が設けられている。口出し電極5は、巻線部60G,60Zの径方向内側に配置されており、これら巻線部60G,60Zから軸方向外側に突出している。
【0095】
加えて、軸方向に隣り合う2つの巻線部、例えば、隣り合う巻線部60G,60Hの径方向外側には、これらを電気的に接続するコイル間電極5Fが設けられている。コイル間電極5Fは、軸方向に隣り合う巻線部60G,60Hのそれぞれの超電導テープの端部1xと接合される。また、軸方向に隣り合う巻線部60H,60Jの径方向内側には、これらを電気的に接続するコイル間電極5Gが設けられている。このようなコイル間電極5F,5Gにも、上述した超電導テープ1,2と電極との接続構造(
図2〜
図9参照)を適用することができる。
【0096】
〔他の実施形態〕
なお、上述した実施形態において、超電導コイルは、いわゆるパンケーキコイルであり、その巻線部は、その軸心に垂直な平面上において第1及び第2超電導テープのうち少なくとも一方が渦巻き状に巻かれて形成されたものとしたが、本発明に係る接続構造が適用される超電導コイルは、上述した態様に限定されるものではない。本発明に係る接続構造は、例えば、
図18に示すように、第1及び第2超電導テープ1,2のうち少なくとも一方が螺旋状に巻かれ、軸方向外側(矢印A1及びA2で示す)の端において折り返して多層に巻かれる、いわゆるレイヤー巻きの巻線部を有する超電導コイルにも適用することができる。
【0097】
また、上述した超電導コイルにおいて、超電導テープのうち少なくとも一方は、その厚さ方向が、超電導コイルの径方向となるように巻かれて、横断面が略円形をなしている巻線部を形成するものとしたが、本発明に係る接続構造が適用される超電導コイルは、この態様に限定されるものではない。巻線部の横断面が、D形状や楕円形状、レーストラック形状等、様々な形状をなしている超電導コイルに、本発明の接続構造を適用することができる。
【0098】
また、上述した実施形態において、例えば、
図2に示すように、第1及び第2超電導テープ1,2のぞれぞれの端部1b,2cと、電極5は、はんだにより接合され、電極5と端部1b,2cとの間には、それぞれ、はんだにより構成された接続層31,35が形成されるものとしたが、本発明に係る超電導テープと電極とを接合は、はんだによるものに限定されるものではない。超電導テープと電極は、溶加材としての銀ろう等の金属材料により接合される、いわゆる「ろう付け」を行うものとしても良い。また、超電導テープと電極とを接合には、超音波溶接、抵抗溶接、電子ビーム溶接等の様々な溶接技術と溶加材を用いることも可能である。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。