(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流電圧が入力される一対の第1の入力端子及び第2の入力端子と、直流電圧を出力する一対の第1の出力端子及び第2の出力端子と、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に接続された出力コンデンサと、前記第1の入力端子と第1のノードとの間に接続された第1のインダクタ、前記第1のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第1のスイッチ素子、及び、前記第1のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第2のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第1のアーム回路と、前記第2の入力端子と前記第1の出力端子との間に接続された第3のスイッチ素子、及び、前記第2の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続された第4のスイッチ素子を少なくとも有する極性切り替えアームと、前記第1の入力端子と第2のノードとの間に接続された第2のインダクタ、前記第2のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第5のスイッチ素子、及び、前記第2のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第6のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第2のアーム回路と、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された電流蓄積用インダクタと、前記交流電圧の極性に応じて、前記第1のスイッチ素子から第6のスイッチ素子までのスイッチング動作を制御する制御部と、を備える力率改善回路の制御方法であって、
前記制御部により、前記第1の入力端子に入力される入力電圧と閾値とを比較し、前記入力電圧が前記閾値よりも大きい場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設ける位相差制御を行い、前記入力電圧が前記閾値以下の場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設けない非位相差制御を行う、
ことを特徴とする、力率改善回路の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の力率改善回路の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、第1の実施の形態について説明するが、第1の実施の形態の理解の容易のため、先に比較例について説明する。
[比較例]
図1は、比較例の力率改善回路の回路構成を示す図である。力率改善回路1は、インターリーブ方式により、力率を改善する。力率改善回路1は、交流(例えば、50Hz又は60Hz)の入力電圧V
inの供給を電源2から受けて、入力電圧V
inより高い直流の出力電圧V
outを負荷4に出力する、昇圧回路である。比較例では、入力電圧V
inの実効値が200Vであるとし、出力電圧V
outの目標電圧が400Vであるとする。つまり、力率改善回路1は、実効値200Vの入力電圧V
inの供給を受けて、400Vの出力電圧V
outを出力するものとする。
【0016】
力率改善回路1は、入力電圧V
inが供給される第1の入力端子11及び第2の入力端子12を含む。力率改善回路1は、入力電圧V
inを検出する第1の電圧検出器13を含む。第1の電圧検出器13は、第1の入力端子11と第2の入力端子12との間に接続されている。
【0017】
力率改善回路1は、出力電圧V
outを出力する第1の出力端子14及び第2の出力端子15を含む。力率改善回路1は、出力電圧V
outを平滑するための出力コンデンサC
1を含む。出力コンデンサC
1は、第1の出力端子14と第2の出力端子15との間に接続されている。また、力率改善回路1は、出力電圧V
outを検出する第2の電圧検出器16を含む。第2の電圧検出器16は、第1の出力端子14と第2の出力端子15との間に接続されている。
【0018】
第1の出力端子14と第2の出力端子15との間には、負荷4が、接続されている。負荷4は、出力電圧V
outを異なる直流電圧に変換するDC−DCコンバータが例示されるが、これに限定されない。
【0019】
力率改善回路1は、第1のインダクタL
1を含む。第1のインダクタL
1の一端は、第1の入力端子11に接続されている。第1のインダクタL
1の他端は、第1のノードN
1に接続されている。また、力率改善回路1は、第2のインダクタL
2を含む。第2のインダクタL
2の一端は、第1の入力端子11に接続されている。第2のインダクタL
2の他端は、第2のノードN
2に接続されている。
【0020】
力率改善回路1は、第1及び第2のスイッチ素子(例えば、Nチャネル型電界効果トランジスタ(MOSFET))Q
1及びQ
2を含む。第1のノードN
1は、第1のスイッチ素子Q
1のソース−ドレイン経路を介して、第1の出力端子14に接続されている。また、第1のノードN
1は、第2のスイッチ素子Q
2のドレイン−ソース経路を介して、第2の出力端子15に接続されている。
【0021】
第1のインダクタL
1、並びに、第1及び第2のスイッチ素子Q
1及びQ
2が、第1のアーム回路17を構成する。
【0022】
第1のアーム回路17は、マスターアームと称されても良いし、スレーブアームと称されても良い。また、本実施の形態では、力率改善回路1が1個の第1のアーム回路17を含むこととしたが、これに限定されない。力率改善回路1は、並列接続され、第1及び第2のゲートパルス信号P
1及びP
2で制御される、2個以上の第1のアーム回路17を含んでいても良い。
【0023】
また、第1のアーム回路17は、ハイサイドの1個の第1のスイッチ素子Q
1を含んでいるが、これに限定されない。第1のアーム回路17は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第1のゲートパルス信号P
1で制御される、ハイサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。また、第1のアーム回路17は、ローサイドの1個の第2のスイッチ素子Q
2を含んでいるが、これに限定されない。第1のアーム回路17は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第2のゲートパルス信号P
2で制御される、ローサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。ハイサイドのスイッチ素子の個数と、ローサイドのスイッチ素子の個数は、同数が好適である。
【0024】
力率改善回路1は、第3及び第4のスイッチ素子Q
3及びQ
4を含む。第2の入力端子12は、第3のスイッチ素子Q
3のソース−ドレイン経路を介して、第1の出力端子14に接続されている。また、第2の入力端子12は、第4のスイッチ素子Q
4のドレイン−ソース経路を介して、第2の出力端子15に接続されている。
【0025】
第3及び第4のスイッチ素子Q
3及びQ
4が、極性切り替えアーム回路18を構成する。
【0026】
極性切り替えアーム回路18は、ハイサイドの1個の第3のスイッチ素子Q
3を含んでいるが、これに限定されない。極性切り替えアーム回路18は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第3のゲートパルス信号P
3で制御される、ハイサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。また、極性切り替えアーム回路18は、ローサイドの1個の第4のスイッチ素子Q
4を含んでいるが、これに限定されない。極性切り替えアーム回路18は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第4のゲートパルス信号P
4で制御される、ローサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。ハイサイドのスイッチ素子の個数と、ローサイドのスイッチ素子の個数は、同数が好適である。
【0027】
力率改善回路1は、第5及び第6のスイッチ素子Q
5及びQ
6を含む。第2のノードN
2は、第5のスイッチ素子Q
5のソース−ドレイン経路を介して、第1の出力端子14に接続されている。また、第2のノードN
2は、第6のスイッチ素子Q
6のドレイン−ソース経路を介して、第2の出力端子15に接続されている。
【0028】
第2のインダクタL
2、並びに、第5及び第6のスイッチ素子Q
5及びQ
6が、第2のアーム回路19を構成する。
【0029】
第2のアーム回路19は、スレーブアームと称されても良いし、マスターアームと称されても良い。また、本実施の形態では、力率改善回路1が1個の第2のアーム回路19を含むこととしたが、これに限定されない。力率改善回路1は、並列接続され、第5及び第6のゲートパルス信号P
5及びP
6で制御される、2個以上の第2のアーム回路19を含んでいても良い。第2のアーム回路19の個数と、第1のアーム回路17の個数は、同数が好適である。
【0030】
また、第2のアーム回路19は、ハイサイドの1個の第5のスイッチ素子Q
5を含んでいるが、これに限定されない。第2のアーム回路19は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第5のゲートパルス信号P
5で制御される、ハイサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。また、第2のアーム回路19は、ローサイドの1個の第6のスイッチ素子Q
6を含んでいるが、これに限定されない。第2のアーム回路19は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第6のゲートパルス信号P
6で制御される、ローサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。ハイサイドのスイッチ素子の個数と、ローサイドのスイッチ素子の個数は、同数が好適である。
【0031】
第1の入力端子11に入力される入力電流I
inは、第1のアーム回路17に流れる電流IL
1と、第2のアーム回路19に流れる電流IL
2と、の和である。
【0032】
なお、本実施の形態では、第1のスイッチ素子Q
1から第6のスイッチ素子Q
6までがNチャネル型MOSFETであることとしたが、これに限定されない。第1のスイッチ素子Q
1から第6のスイッチ素子Q
6までは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などでも良い。
【0033】
第1のスイッチ素子Q
1から第6のスイッチ素子Q
6までは、第1の寄生ダイオード(ボディダイオード)D
1から第6の寄生ダイオードD
6までを、夫々有する。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。第1の寄生ダイオードD
1から第6の寄生ダイオードD
6までは、第1のスイッチ素子Q
1から第6のスイッチ素子Q
6までのオフ時の過渡的な逆起電力を逃すためのフリーホイールダイオードとして利用可能である。
【0034】
力率改善回路1は、電流蓄積用インダクタL
3を有する。電流蓄積用インダクタL
3の一端は、第1のノードN
1に接続されている。電流蓄積用インダクタL
3の他端は、第2のノードN
2に接続されている。
【0035】
電流蓄積用インダクタL
3の断面積は、第1のインダクタL
1の断面積及び第2のインダクタL
2の断面積よりも小さく設定されていると好ましい。
【0036】
電流蓄積用インダクタL
3に流れる電流IL
3の平均値は、第1のインダクタL
1に流れる電流IL
1の平均値及び第2のインダクタL
2に流れる電流IL
2の平均値よりも小さくなるように設定されていると好ましい。
【0037】
電流蓄積用インダクタL
3のインダクタンスは、第1のインダクタL
1のインダクタンス及び第2のインダクタL
2のインダクタンスよりも大きく設定されていると好ましい。
【0038】
力率改善回路1は、制御部50を含む。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを利用して、実現可能である。
【0039】
制御部50は、入力電圧V
inの極性に応じて、第1のスイッチ素子Q
1から第6のスイッチ素子Q
6までのゲート−ソース間の電圧を制御することにより、第1のスイッチ素子Q
1から第6のスイッチ素子Q
6までのスイッチング動作を制御する。制御部50は、PWM(Pulse Width Modulation)信号である、第1のゲートパルス信号P
1から第6のゲートパルス信号P
6までを、第1のスイッチ素子Q
1から第6のスイッチ素子Q
6までのゲートに、夫々出力する。なお、第1のゲートパルス信号P
1から第6のゲートパルス信号P
6までには、デッドタイムt
dが設定されている。デッドタイムt
dは、1nsから10ns程度が例示されるが、これに限定されない。
【0040】
制御部50は、出力電圧V
outが目標電圧(400V)になるように、第1のスイッチ素子Q
1から第6のスイッチ素子Q
6までを制御する。
【0041】
制御部50は、第1の電圧検出器13で検出された入力電圧V
inと、第2の電圧検出器16で検出された出力電圧V
outと、に基づいて、第1、第2、第5及び第6のゲートパルス信号P
1、P
2、P
5及びP
6の周波数(スイッチング周波数)と、オン時間T
onと、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との位相差時間t
diffと、を計算する。制御部50は、計算した周波数と、オン時間T
onと、位相差時間t
diffと、に基づいて、第1、第2、第5及び第6のゲートパルス信号P
1、P
2、P
5及びP
6を、第1、第2、第5及び第6のスイッチ素子Q
1、Q
2、Q
5及びQ
6のゲートに、夫々出力する。
【0042】
制御部50の動作について、説明する。
【0043】
制御部50は、入力電圧V
inの極性が正相である場合には、極性切り替えアーム回路18内の第3のスイッチ素子Q
3をオフし且つ第4のスイッチ素子Q
4をオンする。
【0044】
そして、制御部50は、第3のスイッチ素子Q
3をオフし且つ第4のスイッチ素子Q
4をオンした状態で、第1及び第2のスイッチ素子Q
1及びQ
2を相補的にオン/オフを切り替えるように制御しつつ、第5及び第6のスイッチ素子Q
5及びQ
6を相補的にオン/オフを切り替えるように制御する。
【0045】
例えば、制御部50は、入力電圧V
inが正相である場合において、第2、第4及び第6のスイッチ素子Q
2、Q
4及びQ
6をオンし且つ第1、第3及び第5のスイッチ素子Q
1、Q
3及びQ
5をオフした第1の状態から、第2のスイッチ素子Q
2をオフし且つ第1のスイッチ素子Q
1をオンした第2の状態に制御する。
【0046】
さらに、制御部50は、第2の状態に制御した後、第2の状態から、第6のスイッチ素子Q
6をオフした第3の状態に制御する。そして、制御部50は、第3の状態に制御した後、第3の状態から、第5のスイッチ素子Q
5をオンした第4の状態に制御する。
【0047】
また、制御部50は、第4の状態に制御した後、第4の状態から、第1のスイッチ素子Q
1をオフした第5の状態に制御する。そして、制御部50は、第5の状態に制御した後、第5の状態から、第2のスイッチ素子Q
2をオンした第6の状態に制御する。
【0048】
また、制御部50は、第6の状態に制御した後、第6の状態から、第5のスイッチ素子Q
5をオフした第7の状態に制御する。そして、制御部50は、第7の状態に制御した後、第7の状態から、第6のスイッチ素子Q
6をオンした第8の状態に制御する。
【0049】
また、制御部50は、第8の状態に制御した後、第8の状態から、第2のスイッチ素子Q
2をオフした第9の状態に制御する。そして、制御部50は、第9の状態に制御した後、第9の状態から、第1のスイッチ素子Q
1をオンした第10の状態に制御する。
【0050】
以上の制御により、入力電圧V
inの極性が正相である場合には、電流IL
1及びIL
2が、第4のスイッチ素子Q
4を介して、第2の入力端子12に流れることとなる。
【0051】
一方、制御部50は、入力電圧V
inの極性が逆相である場合には、極性切り替えアーム回路18内の第3のスイッチ素子Q
3をオンし且つ第4のスイッチ素子Q
4をオフする。
【0052】
そして、制御部50は、第3のスイッチ素子Q
3をオンし且つ第4のスイッチ素子Q
4をオフした状態で、第1及び第2のスイッチ素子Q
1及びQ
2を相補的にオン/オフを切り替えるように制御しつつ、第5及び第6のスイッチ素子Q
5及びQ
6を相補的にオン/オフを切り替えるように制御する。
【0053】
この制御により、入力電圧V
inの極性が逆相である場合には、電流IL
1及びIL
2が、第3のスイッチ素子Q
3を介して第1の入力端子11に流れることとなる。
【0054】
なお、入力電圧V
inの極性が逆相である場合の、第1及び第2のスイッチ素子Q
1及びQ
2を相補的にオン/オフを切り替えるように制御しつつ、第5及び第6のスイッチ素子Q
5及びQ
6を相補的にオン/オフを切り替えるように制御する具体的な動作は、上述の入力電圧V
inが正相である場合の第1の状態から第10の状態までの制御と同様である。
【0055】
図2は、比較例の力率改善回路の動作波形の一例を示す図である。
図2は、入力電圧V
inの極性が正相である場合の、力率改善回路1の動作波形の一例を示す図である。
【0056】
制御部50は、入力電圧V
inが正相である場合において、第2、第4及び第6のスイッチ素子Q
2、Q
4及びQ
6をオンし且つ第1、第3及び第5のスイッチ素子Q
1、Q
3及びQ
5をオフした第1の状態に制御する。
【0057】
次に、制御部50は、タイミングt
1において、第2のスイッチ素子Q
2をオフする。次に、制御部50は、タイミングt
1からデッドタイムt
d経過後のタイミングt
2において、第1のスイッチ素子Q
1をオンした第2の状態に制御する。このとき、第2のスイッチ素子Q
2のドレイン−ソース間電圧VdsQ
2が出力電圧V
out相当になる。
【0058】
次に、制御部50は、タイミングt
3において、第2の状態から、第6のスイッチ素子Q
6をオフした第3の状態に制御する。このとき、第6のスイッチ素子Q
6のドレイン−ソース間電圧VdsQ
6が出力電圧V
out相当になる。
【0059】
これにより、電流蓄積用インダクタL
3には、タイミングt
2からタイミングt
3までの期間に、出力電圧V
out相当の電圧VL
3が印加され、電流蓄積用インダクタL
3に電流IL
3が蓄積される。このとき、電流蓄積用インダクタL
3が寄生ダイオードD
5の寄生容量を放電し、第5のスイッチ素子Q
5のドレイン−ソース間電圧が0Vになる。
【0060】
これにより、第5のスイッチ素子Q
5のZVS動作が可能になる。
【0061】
次に、制御部50は、タイミングt
3からデッドタイムt
d経過後のタイミングt
4において、第5のスイッチ素子Q
5をオンした第4の状態に制御する。このとき、電流蓄積用インダクタL
3が第1のスイッチ素子Q
1及び第5のスイッチ素子Q
5を介して短絡されるので、電流蓄積用インダクタL
3の電流IL
3が保持される。
【0062】
タイミングt
2からタイミングt
4までの期間が、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間の位相差時間t
diffである。
【0063】
次に、制御部50は、タイミングt
5において、第4の状態から、第1のスイッチ素子Q
1をオフした第5の状態に制御する。このとき、電流蓄積用インダクタL
3が寄生ダイオードD
2の寄生容量を放電し、第2のスイッチ素子Q
2のドレイン−ソース間電圧VdsQ
2が0Vになる。
【0064】
これにより、第2のスイッチ素子Q
2のZVS動作が可能になる。
【0065】
タイミングt
2からタイミングt
5までの期間が、オン時間T
onである。
【0066】
次に、制御部50は、タイミングt
5からデッドタイムt
d経過後のタイミングt
6において、第2のスイッチ素子Q
2をオンした第6の状態に制御する。
【0067】
次に、制御部50は、タイミングt
7において、第6の状態から、第5のスイッチ素子Q
5をオフした第7の状態に制御する。これにより、電流蓄積用インダクタL
3には、タイミングt
6からタイミングt
7までの期間に、第3の状態と逆方向の出力電圧V
out相当の電圧が印加され、電流蓄積用インダクタL
3に電流IL
3が蓄積される。このとき、電流蓄積用インダクタL
3が寄生ダイオードD
6の寄生容量を放電し、第6のスイッチ素子Q
6のドレイン−ソース間電圧VdsQ
6が0Vになる。
【0068】
これにより、第6のスイッチ素子Q
6のZVS動作が可能になる。
【0069】
次に、制御部50は、タイミングt
7からデッドタイムt
d経過後のタイミングt
8において、第7の状態から、第6のスイッチ素子Q
6をオンした第8の状態に制御する。このとき、電流蓄積用インダクタL
3が第2のスイッチ素子Q
2及び第6のスイッチ素子Q
6を介して短絡され、電流蓄積用インダクタL
3の電流が保持される。
【0070】
次に、制御部50は、タイミングt
9において、第8の状態から、第2のスイッチ素子Q
2をオフした第9の状態に制御する。このとき、電流蓄積用インダクタL
3が寄生ダイオードD
1の寄生容量を放電し、第1のスイッチ素子Q
1のドレイン−ソース間電圧VdsQ
1が0Vになる。
【0071】
これにより、第1のスイッチ素子Q
1のZVS動作が可能になる。
【0072】
次に、制御部50は、タイミングt
9からデッドタイムt
d経過後のタイミングt
10において、第9の状態から、第1のスイッチ素子Q
1をオンした第10の状態に制御する。
【0073】
制御部50は、以降同様の制御を実行する。
【0074】
なお、第2のスイッチ素子Q
2を制御するための第2のゲートパルス信号P
2の位相と、第6のスイッチ素子Q
6を制御するための第6のゲートパルス信号P
6の位相とは、位相差時間t
diffだけずれている。同様に、第1のスイッチ素子Q
1を制御するための第1のゲートパルス信号P
1の位相と、第5のスイッチ素子Q
5を制御するための第5のゲートパルス信号P
5の位相とは、位相差時間t
diffだけずれている。
【0075】
力率改善回路1は、第1のノードN
1と第2のノードN
2との間に接続された、電流蓄積用インダクタL
3を備える。電流蓄積用インダクタL
3が、第1のスイッチ素子Q
1、第2のスイッチ素子Q
2、第5のスイッチ素子Q
5、又は、第6のスイッチ素子Q
6がオフの時に、これらのスイッチ素子Qの寄生ダイオードDの寄生容量を放電する。従って、第1のスイッチ素子Q
1、第2のスイッチ素子Q
2、第5のスイッチ素子Q
5、及び、第6のスイッチ素子Q
6のZVS動作が可能になる。
【0076】
しかし、力率改善回路1では、電流蓄積用インダクタL
3に電流IL
3が流れる。この電流IL
3により、電流蓄積用インダクタL
3及び各スイッチ素子Qの導通損、並びに、電流蓄積用インダクタL
3の鉄損が発生する。これらの損失を抑制することが望ましい。
【0077】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の力率改善回路は、電流蓄積用インダクタL
3及び各スイッチ素子Qの導通損、並びに、電流蓄積用インダクタL
3の鉄損を抑制するために、位相差制御と、非位相差制御と、を切り替えて実行する。位相差制御は、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間に位相差を設ける制御である。非位相差制御は、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間に位相差を設けない制御である。
【0078】
図3は、第1の実施の形態の力率改善回路の回路構成を示す図である。なお、比較例と同じ構成要素には、同じ参照符号を付して、説明を省略する。
【0079】
第1の実施の形態の力率改善回路1Aは、比較例の制御部50に代えて、制御部50Aを備える。制御部50Aは、閾値記憶部51と、判定部52と、位相差計算部53と、駆動部54と、を含む。
【0080】
閾値記憶部51は、位相差制御と非位相差制御のどちらを行うか、を判定するための、電圧の閾値V
thを記憶する。閾値V
thは、有線通信又は無線通信経由で書き換え可能であっても良い。本実施の形態では、V
th=1/2・V
outとするが、これに限定されない。V
th≦1/2・V
outであれば良い。
【0081】
再び
図3を参照すると、判定部52は、入力電圧V
inと、閾値V
thと、を比較する。判定部52は、入力電圧V
inが閾値V
thより大きい場合は、位相差制御を駆動部54に行わせるための、ローレベルの判定信号S
1を駆動部54に出力する。一方、判定部52は、入力電流I
inが選択した閾値以下の場合には、非位相差制御を駆動部54に行わせるための、ハイレベルの判定信号S
1を駆動部54に出力する。
【0082】
位相差計算部53は、判定信号S
1がローレベルである場合、即ち位相差制御を行う場合に、入力電圧V
in及び出力電圧V
outに基づいて、位相差時間t
diffを計算して、駆動部54に出力する。
【0083】
位相差計算部53は、入力電圧V
inが大きくなるほど、力率改善のために、位相差時間t
diffを大きくすることが好ましい。また、位相差計算部53は、力率改善のために、位相差時間t
diffを、入力電圧V
inに正比例する時間とすることが好ましい。
【0084】
例えば、位相差計算部53は、次の式(1)で位相差時間t
diffを計算すると好ましい。但し、これに限定されない。
【0086】
式(1)において、Cは、第1の寄生ダイオードD
1から第6の寄生ダイオードD
6までの寄生容量である。L
Rは、第1のインダクタL
1及び第2のインダクタL
2のインダクタンスである。
【0087】
駆動部54は、位相差制御及び非位相差制御のいずれの場合にも、出力電圧V
outが目標電圧(400V)になるように、第1のスイッチ素子Q
1から第6のスイッチ素子Q
6までを制御する。
【0088】
駆動部54は、位相差制御及び非位相差制御のいずれの場合にも、入力電圧V
inと、出力電圧V
outと、に基づいて、第1、第2、第5及び第6のゲートパルス信号P
1、P
2、P
5及びP
6の周波数(スイッチング周波数)と、オン時間T
onと、を計算する。駆動部54は、計算した周波数と、オン時間T
onと、位相差計算部53で計算された位相差時間t
diffと、に基づいて、第1、第2、第5及び第6のゲートパルス信号P
1、P
2、P
5及びP
6を、第1、第2、第5及び第6のスイッチ素子Q
1、Q
2、Q
5及びQ
6のゲートに、夫々出力する。
【0089】
制御部50Aの位相差制御の制御動作は、比較例の制御部50と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
制御部50Aの非位相差制御の制御動作について、説明する。
【0091】
第1のアーム回路17及び第2のアーム回路19は、昇圧チョッパ回路と同様の回路構成を有する。従って、力率改善回路1は、非位相差制御の場合には、昇圧チョッパ回路と同様の動作を行う。
【0092】
具体的には、制御部50Aは、入力電圧V
inの極性が正相である場合には、極性切り替えアーム回路18内の第3のスイッチ素子Q
3をオフし且つ第4のスイッチ素子Q
4をオンする。
【0093】
そして、制御部50Aは、第3のスイッチ素子Q
3をオフし且つ第4のスイッチ素子Q
4をオンした状態で、第1及び第5のスイッチ素子Q
1及びQ
5と、第2及び第6のスイッチ素子Q
2及びQ
6と、を相補的にオン/オフを切り替えるように制御する。
【0094】
例えば、制御部50Aは、入力電圧V
inが正相である場合において、第2、第4及び第6のスイッチ素子Q
2、Q
4及びQ
6をオンし且つ第1、第3及び第5のスイッチ素子Q
1、Q
3及びQ
5をオフした第1の状態から、第2及び第6のスイッチ素子Q
2及びQ
6をオフし且つ第1及び第5のスイッチ素子Q
1及びQ
5をオンした第2の状態に制御する。
【0095】
さらに、制御部50Aは、第2の状態に制御した後、第2の状態から、第1及び第5のスイッチ素子Q
1及びQ
5をオフした第3の状態に制御する。
【0096】
そして、制御部50Aは、第3の状態に制御した後、第3の状態から、第2及び第6のスイッチ素子Q
2及びQ
6をオンした第4の状態に制御する。
【0097】
また、制御部50Aは、第4の状態に制御した後、第4の状態から、第2及び第6のスイッチ素子Q
2及びQ
6をオフした第5の状態に制御する。
【0098】
以上の制御により、入力電圧V
inの極性が正相である場合には、電流IL
1及び電流IL
2が、第4のスイッチ素子Q
4を介して、第2の入力端子12に流れることとなる。
【0099】
一方、制御部50Aは、入力電圧V
inの極性が逆相である場合には、極性切り替えアーム回路18内の第3のスイッチ素子Q
3をオンし且つ第4のスイッチ素子Q
4をオフする。
【0100】
そして、制御部50は、第3のスイッチ素子Q
3をオンし且つ第4のスイッチ素子Q
4をオフした状態で、第1及び第5のスイッチ素子Q
1及びQ
5と、第2及び第6のスイッチ素子Q
2及びQ
6と、を相補的にオン/オフを切り替えるように制御する。
【0101】
この制御により、入力電圧V
inの極性が逆相である場合には、電流IL
1及び電流IL
2が、第3のスイッチ素子Q
3を介して第1の入力端子11に流れることとなる。
【0102】
なお、入力電圧V
inの極性が逆相である場合の、第1及び第5のスイッチ素子Q
1及びQ
5と、第2及び第6のスイッチ素子Q
2及びQ
6と、を相補的にオン/オフを切り替えるように制御する具体的な動作は、上述の入力電圧V
inが正相である場合の第1の状態から第5の状態までの制御と同様である。
【0103】
力率改善回路1Aの第1のアーム回路17では、第1のスイッチ素子Q
1及び第2のスイッチ素子Q
2がオフの期間において、第1のインダクタL
1と寄生ダイオードD
2の寄生容量Cとで構成されるLC直列回路が自由振動する。自由振動の際、第1のノードN
1の中心電圧はV
inであり、電圧振幅は(V
out−V
in)である。第2のアーム回路19も、第1のアーム回路17と同様である。
【0104】
V
in≦1/2・V
outである期間について、検討する。この期間では、第2のスイッチ素子Q
2のドレイン−ソース間電圧VdsQ
2は、自由振動電圧の逆相側で、0Vに至る。従って、力率改善回路1Aは、電流蓄積用インダクタL
3の電流IL
3に依らずに、第2のスイッチ素子Q
2のZVS動作が可能になる。また、第1のスイッチ素子Q
1のドレイン−ソース間電圧VdsQ
1は、自由振動電圧の正相側で、0Vに至る。従って、力率改善回路1Aは、電流蓄積用インダクタL
3の電流IL
3に依らずに、第1のスイッチ素子Q
1のZVS動作が可能になる。第2のアーム回路19も、第1のアーム回路17と同様である。
【0105】
そこで、制御部50Aは、V
in≦1/2・V
outである期間においては、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間の位相差時間t
diffを0nsにする。即ち、制御部50Aは、V
in≦1/2・V
outの期間においては、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間に位相差を設けない、非位相差制御を行う。
【0106】
第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間の位相差時間t
diffが0nsであれば、電流蓄積用インダクタL
3の両端の電位が同じになる。つまり、電流蓄積用インダクタL
3の両端間の電圧VL
3が0Vになる。従って、電流蓄積用インダクタL
3に電流IL
3が流れない。これにより、力率改善回路1Aは、電流蓄積用インダクタL
3及び各スイッチ素子Qの導通損、並びに、電流蓄積用インダクタL
3の鉄損を抑制できる。
【0107】
V
in>1/2・V
outである期間について、検討する。この期間では、第2のスイッチ素子Q
2のドレイン−ソース間電圧VdsQ
2は、自由振動電圧の逆相側で、0Vに至らない。第2のアーム回路19も、第1のアーム回路17と同様である。
【0108】
そこで、制御部50Aは、V
in>1/2・V
outの期間においては、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間の位相差時間t
diffを0nsより大きい値にする。即ち、制御部50Aは、V
in>1/2・V
outの期間においては、位相差制御を行う。これにより、電流蓄積用インダクタL
3が、第1のスイッチ素子Q
1、第2のスイッチ素子Q
2、第5のスイッチ素子Q
5、又は、第6のスイッチ素子Q
6がオフの時に、これらのスイッチ素子Qの寄生ダイオードDの寄生容量を放電する。従って、力率改善回路1Aは、第1のスイッチ素子Q
1、第2のスイッチ素子Q
2、第5のスイッチ素子Q
5、及び、第6のスイッチ素子Q
6のZVS動作が可能になる。
【0109】
なお、本実施の形態では、V
th=1/2・V
outとしたが、これに限定されない。V
th≦1/2・V
outであれば良い。
【0110】
図4は、第1の実施の形態の力率改善回路の動作波形の一例を示す図である。閾値V
thが大きいほど、位相差制御を行わない非位相差制御期間71及び73が長くなり、位相差制御を行う位相差制御期間72が短くなる。従って、閾値V
thが大きいほど、電流蓄積用インダクタL
3及び各スイッチ素子Qの導通損、並びに、電流蓄積用インダクタL
3の鉄損を抑制できる。従って、閾値V
thは、V
th≦1/2・V
outの範囲内で最大である、V
th=1/2・V
outとすることが好ましい。本実施の形態では、出力電圧V
outが400Vであるので、閾値V
thは200Vとすることが好ましい。
【0111】
なお、本実施の形態では、力率改善回路1Aが、閾値記憶部51及び判定部52を備え、判定部52が、判定信号S
1を駆動部54に出力することとした。しかしながら、力率改善回路1Aが、閾値記憶部51及び判定部52を備えず、判定信号S
1が外部回路から駆動部54に供給されることとしても良い。これにより、力率改善回路1Aは、制御部50Aの制御負荷を抑制できる。
【0112】
また、力率改善回路1Aは、位相差制御と非位相差制御との切り替わり目において、1ms程度であれば、制御動作を停止することが許容できる。
【0113】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の力率改善回路の回路構成を示す図である。なお、比較例又は第1の実施の形態と同じ構成要素には、同じ参照符号を付して、説明を省略する。
【0114】
力率改善回路1Bは、第1の実施の形態の制御部50Aに代えて、制御部50Bを含む。制御部50Bは、位相差計算部53(
図3参照)に代えて、位相差記憶部56を含む。
【0115】
位相差記憶部56は、位相差制御を行う場合の、予め定められた位相差時間t
diffを記憶する。位相差時間t
diffは、有線通信又は無線通信経由で書き換え可能であっても良い。位相差時間t
diffは、300nsが例示されるが、これに限定されない。
【0116】
比較例の力率改善回路1のように、全期間において位相差制御を行う場合について、検討する。入力電圧V
inのゼロクロス付近では、入力電圧V
inを出力電圧V
outに昇圧する昇圧幅が大きいので、スイッチング周波数を高くする必要がある。スイッチング周波数が高いと、オン時間T
onが取り得る上限値が小さい。オン時間T
onの取り得る上限値が小さいと、位相差時間t
diffの取り得る上限値が小さい。従って、入力電圧V
inのゼロクロス付近での位相差時間t
diffを全期間において使用して、位相差制御を行うこととすると、入力電圧V
inのピーク付近での力率改善効果が好適に得られない。
【0117】
一方、力率改善回路1Bのように、位相差制御期間72だけで位相差制御を行う場合について、検討する。入力電圧V
inの閾値V
th付近では、入力電圧V
inを出力電圧V
outに昇圧する昇圧幅が、ゼロクロス付近と比較して小さいので、スイッチング周波数を低くできる。スイッチング周波数が低いと、オン時間T
onが取り得る上限値が大きい。オン時間T
onの取り得る上限値が大きいと、位相差時間t
diffの取り得る上限値が大きい。従って、入力電圧V
inの閾値V
th付近での位相差時間t
diffを、位相差制御期間72において使用して、位相差制御を行うこととしても、入力電圧V
inのピーク付近での力率改善効果が好適に得られる。
【0118】
そこで、力率改善回路1Bは、位相差制御を行う場合に、予め定められた位相差時間t
diffを利用する。これにより、力率改善回路1Bは、位相差時間t
diffの計算負荷を抑制でき、制御部50Bの制御負荷を抑制できる。
【0119】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。