特許第6873855号(P6873855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873855力率改善回路及び力率改善回路の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873855
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】力率改善回路及び力率改善回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   H02M7/12 Q
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-141363(P2017-141363)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-22396(P2019-22396A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 健一
(72)【発明者】
【氏名】押方 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英輝
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−019489(JP,A)
【文献】 特開2015−023606(JP,A)
【文献】 特開2008−125310(JP,A)
【文献】 特開2011−078179(JP,A)
【文献】 特表2009−543532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧が入力される一対の第1の入力端子及び第2の入力端子と、
直流電圧を出力する一対の第1の出力端子及び第2の出力端子と、
前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に接続された出力コンデンサと、
前記第1の入力端子と第1のノードとの間に接続された第1のインダクタ、前記第1のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第1のスイッチ素子、及び、前記第1のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第2のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第1のアーム回路と、
前記第2の入力端子と前記第1の出力端子との間に接続された第3のスイッチ素子、及び、前記第2の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続された第4のスイッチ素子を少なくとも有する極性切り替えアームと、
前記第1の入力端子と第2のノードとの間に接続された第2のインダクタ、前記第2のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第5のスイッチ素子、及び、前記第2のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第6のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第2のアーム回路と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された電流蓄積用インダクタと、
前記交流電圧の極性に応じて、前記第1のスイッチ素子から第6のスイッチ素子までのスイッチング動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1の入力端子に入力される入力電圧と閾値とを比較し、前記入力電圧が前記閾値よりも大きい場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設ける位相差制御を行い、前記入力電圧が前記閾値以下の場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設けない非位相差制御を行う、
ことを特徴とする力率改善回路。
【請求項2】
前記閾値は、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間の出力電圧の2分の1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の力率改善回路。
【請求項3】
前記制御部は、
前記位相差制御を行う場合には、前記位相差を予め定められた時間とする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の力率改善回路。
【請求項4】
前記制御部は、
前記位相差制御を行う場合には、前記入力電圧が大きくなるほど、前記位相差を大きくする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の力率改善回路。
【請求項5】
前記制御部は、
前記位相差制御を行う場合には、前記位相差を、前記入力電圧に正比例する時間とする、
ことを特徴とする請求項4に記載の力率改善回路。
【請求項6】
前記制御部は、
前記位相差制御を行う場合には、前記位相差を、
【数1】
で計算する、
ことを特徴とする請求項5に記載の力率改善回路。
diffは位相差時間、Vinは入力電圧、Voutは出力電圧、Cは第1から第6までのスイッチ素子の寄生容量、Lは第1及び第2インダクタのインダクタンス。
【請求項7】
交流電圧が入力される一対の第1の入力端子及び第2の入力端子と、直流電圧を出力する一対の第1の出力端子及び第2の出力端子と、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に接続された出力コンデンサと、前記第1の入力端子と第1のノードとの間に接続された第1のインダクタ、前記第1のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第1のスイッチ素子、及び、前記第1のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第2のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第1のアーム回路と、前記第2の入力端子と前記第1の出力端子との間に接続された第3のスイッチ素子、及び、前記第2の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続された第4のスイッチ素子を少なくとも有する極性切り替えアームと、前記第1の入力端子と第2のノードとの間に接続された第2のインダクタ、前記第2のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第5のスイッチ素子、及び、前記第2のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第6のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第2のアーム回路と、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された電流蓄積用インダクタと、前記交流電圧の極性に応じて、前記第1のスイッチ素子から第6のスイッチ素子までのスイッチング動作を制御する制御部と、を備える力率改善回路の制御方法であって、
前記制御部により、前記第1の入力端子に入力される入力電圧と閾値とを比較し、前記入力電圧が前記閾値よりも大きい場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設ける位相差制御を行い、前記入力電圧が前記閾値以下の場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設けない非位相差制御を行う、
ことを特徴とする、力率改善回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力率改善回路及び力率改善回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インターリーブ方式の力率改善(Power Factor Correction)回路がある(例えば、特許文献1参照)。この従来の力率改善回路は、マスターアーム回路(第1のアーム回路と称されても良い)と、スレーブアーム回路(第2のアーム回路と称されても良い)と、極性切換アーム回路と、を備える。この従来の力率改善回路では、2つのインダクタの電流の位相がずれているので、一方のインダクタの電流が、他方のインダクタの電流を打ち消す方向に流れる。従って、入力コンデンサ及び出力コンデンサのリップル電流を低減できる。しかし、この従来の力率改善回路では、ZVS(Zero Volt Switching)動作が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−23606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ZVS動作が可能な力率改善回路及び力率改善回路の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の力率改善回路は、
交流電圧が入力される一対の第1の入力端子及び第2の入力端子と、
直流電圧を出力する一対の第1の出力端子及び第2の出力端子と、
前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に接続された出力コンデンサと、
前記第1の入力端子と第1のノードとの間に接続された第1のインダクタ、前記第1のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第1のスイッチ素子、及び、前記第1のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第2のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第1のアーム回路と、
前記第2の入力端子と前記第1の出力端子との間に接続された第3のスイッチ素子、及び、前記第2の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続された第4のスイッチ素子を少なくとも有する極性切り替えアームと、
前記第1の入力端子と第2のノードとの間に接続された第2のインダクタ、前記第2のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第5のスイッチ素子、及び、前記第2のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第6のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第2のアーム回路と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された電流蓄積用インダクタと、
前記交流電圧の極性に応じて、前記第1のスイッチ素子から第6のスイッチ素子までのスイッチング動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1の入力端子に入力される入力電圧と閾値とを比較し、前記入力電圧が前記閾値よりも大きい場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設ける位相差制御を行い、前記入力電圧が前記閾値以下の場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設けない非位相差制御を行う、
ことを特徴とする。
【0006】
前記力率改善回路において、
前記閾値は、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間の出力電圧の2分の1である、
ことを特徴とする。
【0007】
前記力率改善回路において、
前記制御部は、
前記位相差制御を行う場合には、前記位相差を予め定められた時間とする、
ことを特徴とする。
【0008】
前記力率改善回路において、
前記制御部は、
前記位相差制御を行う場合には、前記入力電圧が大きくなるほど、前記位相差を大きくする、
ことを特徴とする。
【0009】
前記力率改善回路において、
前記制御部は、
前記位相差制御を行う場合には、前記位相差を、前記入力電圧に正比例する時間とする、
ことを特徴とする。
【0010】
前記力率改善回路において、
前記制御部は、
前記位相差制御を行う場合には、前記位相差を、
【数1】
で計算する、
ことを特徴とする。
diffは位相差時間、Vinは入力電圧、Voutは出力電圧、Cは第1から第6までのスイッチ素子の寄生容量、Lは第1及び第2インダクタのインダクタンスである。
【0011】
本発明の一態様の力率改善回路の制御方法は、
交流電圧が入力される一対の第1の入力端子及び第2の入力端子と、直流電圧を出力する一対の第1の出力端子及び第2の出力端子と、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に接続された出力コンデンサと、前記第1の入力端子と第1のノードとの間に接続された第1のインダクタ、前記第1のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第1のスイッチ素子、及び、前記第1のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第2のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第1のアーム回路と、前記第2の入力端子と前記第1の出力端子との間に接続された第3のスイッチ素子、及び、前記第2の入力端子と前記第2の出力端子との間に接続された第4のスイッチ素子を少なくとも有する極性切り替えアームと、前記第1の入力端子と第2のノードとの間に接続された第2のインダクタ、前記第2のノードと前記第1の出力端子との間に接続された第5のスイッチ素子、及び、前記第2のノードと前記第2の出力端子との間に接続された第6のスイッチ素子を少なくとも有する1以上の第2のアーム回路と、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に接続された電流蓄積用インダクタと、前記交流電圧の極性に応じて、前記第1のスイッチ素子から第6のスイッチ素子までのスイッチング動作を制御する制御部と、を備える力率改善回路の制御方法であって、
前記制御部により、前記第1の入力端子に入力される入力電圧と閾値とを比較し、前記入力電圧が前記閾値よりも大きい場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設ける位相差制御を行い、前記入力電圧が前記閾値以下の場合には、前記第1のアーム回路と前記第2のアーム回路との間に位相差を設けない非位相差制御を行う、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様の力率改善回路及び力率改善回路の制御方法は、ZVS動作を可能にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、比較例の力率改善回路の回路構成を示す図である。
図2図2は、比較例の力率改善回路の動作波形の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態の力率改善回路の回路構成を示す図である。
図4図4は、第1の実施の形態の力率改善回路の動作波形の一例を示す図である。
図5図5は、第2の実施の形態の力率改善回路の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の力率改善回路の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、第1の実施の形態について説明するが、第1の実施の形態の理解の容易のため、先に比較例について説明する。
[比較例]
図1は、比較例の力率改善回路の回路構成を示す図である。力率改善回路1は、インターリーブ方式により、力率を改善する。力率改善回路1は、交流(例えば、50Hz又は60Hz)の入力電圧Vinの供給を電源2から受けて、入力電圧Vinより高い直流の出力電圧Voutを負荷4に出力する、昇圧回路である。比較例では、入力電圧Vinの実効値が200Vであるとし、出力電圧Voutの目標電圧が400Vであるとする。つまり、力率改善回路1は、実効値200Vの入力電圧Vinの供給を受けて、400Vの出力電圧Voutを出力するものとする。
【0016】
力率改善回路1は、入力電圧Vinが供給される第1の入力端子11及び第2の入力端子12を含む。力率改善回路1は、入力電圧Vinを検出する第1の電圧検出器13を含む。第1の電圧検出器13は、第1の入力端子11と第2の入力端子12との間に接続されている。
【0017】
力率改善回路1は、出力電圧Voutを出力する第1の出力端子14及び第2の出力端子15を含む。力率改善回路1は、出力電圧Voutを平滑するための出力コンデンサCを含む。出力コンデンサCは、第1の出力端子14と第2の出力端子15との間に接続されている。また、力率改善回路1は、出力電圧Voutを検出する第2の電圧検出器16を含む。第2の電圧検出器16は、第1の出力端子14と第2の出力端子15との間に接続されている。
【0018】
第1の出力端子14と第2の出力端子15との間には、負荷4が、接続されている。負荷4は、出力電圧Voutを異なる直流電圧に変換するDC−DCコンバータが例示されるが、これに限定されない。
【0019】
力率改善回路1は、第1のインダクタLを含む。第1のインダクタLの一端は、第1の入力端子11に接続されている。第1のインダクタLの他端は、第1のノードNに接続されている。また、力率改善回路1は、第2のインダクタLを含む。第2のインダクタLの一端は、第1の入力端子11に接続されている。第2のインダクタLの他端は、第2のノードNに接続されている。
【0020】
力率改善回路1は、第1及び第2のスイッチ素子(例えば、Nチャネル型電界効果トランジスタ(MOSFET))Q及びQを含む。第1のノードNは、第1のスイッチ素子Qのソース−ドレイン経路を介して、第1の出力端子14に接続されている。また、第1のノードNは、第2のスイッチ素子Qのドレイン−ソース経路を介して、第2の出力端子15に接続されている。
【0021】
第1のインダクタL、並びに、第1及び第2のスイッチ素子Q及びQが、第1のアーム回路17を構成する。
【0022】
第1のアーム回路17は、マスターアームと称されても良いし、スレーブアームと称されても良い。また、本実施の形態では、力率改善回路1が1個の第1のアーム回路17を含むこととしたが、これに限定されない。力率改善回路1は、並列接続され、第1及び第2のゲートパルス信号P及びPで制御される、2個以上の第1のアーム回路17を含んでいても良い。
【0023】
また、第1のアーム回路17は、ハイサイドの1個の第1のスイッチ素子Qを含んでいるが、これに限定されない。第1のアーム回路17は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第1のゲートパルス信号Pで制御される、ハイサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。また、第1のアーム回路17は、ローサイドの1個の第2のスイッチ素子Qを含んでいるが、これに限定されない。第1のアーム回路17は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第2のゲートパルス信号Pで制御される、ローサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。ハイサイドのスイッチ素子の個数と、ローサイドのスイッチ素子の個数は、同数が好適である。
【0024】
力率改善回路1は、第3及び第4のスイッチ素子Q及びQを含む。第2の入力端子12は、第3のスイッチ素子Qのソース−ドレイン経路を介して、第1の出力端子14に接続されている。また、第2の入力端子12は、第4のスイッチ素子Qのドレイン−ソース経路を介して、第2の出力端子15に接続されている。
【0025】
第3及び第4のスイッチ素子Q及びQが、極性切り替えアーム回路18を構成する。
【0026】
極性切り替えアーム回路18は、ハイサイドの1個の第3のスイッチ素子Qを含んでいるが、これに限定されない。極性切り替えアーム回路18は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第3のゲートパルス信号Pで制御される、ハイサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。また、極性切り替えアーム回路18は、ローサイドの1個の第4のスイッチ素子Qを含んでいるが、これに限定されない。極性切り替えアーム回路18は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第4のゲートパルス信号Pで制御される、ローサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。ハイサイドのスイッチ素子の個数と、ローサイドのスイッチ素子の個数は、同数が好適である。
【0027】
力率改善回路1は、第5及び第6のスイッチ素子Q及びQを含む。第2のノードNは、第5のスイッチ素子Qのソース−ドレイン経路を介して、第1の出力端子14に接続されている。また、第2のノードNは、第6のスイッチ素子Qのドレイン−ソース経路を介して、第2の出力端子15に接続されている。
【0028】
第2のインダクタL、並びに、第5及び第6のスイッチ素子Q及びQが、第2のアーム回路19を構成する。
【0029】
第2のアーム回路19は、スレーブアームと称されても良いし、マスターアームと称されても良い。また、本実施の形態では、力率改善回路1が1個の第2のアーム回路19を含むこととしたが、これに限定されない。力率改善回路1は、並列接続され、第5及び第6のゲートパルス信号P及びPで制御される、2個以上の第2のアーム回路19を含んでいても良い。第2のアーム回路19の個数と、第1のアーム回路17の個数は、同数が好適である。
【0030】
また、第2のアーム回路19は、ハイサイドの1個の第5のスイッチ素子Qを含んでいるが、これに限定されない。第2のアーム回路19は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第5のゲートパルス信号Pで制御される、ハイサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。また、第2のアーム回路19は、ローサイドの1個の第6のスイッチ素子Qを含んでいるが、これに限定されない。第2のアーム回路19は、ソース−ドレイン経路が並列接続され、第6のゲートパルス信号Pで制御される、ローサイドの2個以上のスイッチ素子を含んでいても良い。ハイサイドのスイッチ素子の個数と、ローサイドのスイッチ素子の個数は、同数が好適である。
【0031】
第1の入力端子11に入力される入力電流Iinは、第1のアーム回路17に流れる電流ILと、第2のアーム回路19に流れる電流ILと、の和である。
【0032】
なお、本実施の形態では、第1のスイッチ素子Qから第6のスイッチ素子QまでがNチャネル型MOSFETであることとしたが、これに限定されない。第1のスイッチ素子Qから第6のスイッチ素子Qまでは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などでも良い。
【0033】
第1のスイッチ素子Qから第6のスイッチ素子Qまでは、第1の寄生ダイオード(ボディダイオード)Dから第6の寄生ダイオードDまでを、夫々有する。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。第1の寄生ダイオードDから第6の寄生ダイオードDまでは、第1のスイッチ素子Qから第6のスイッチ素子Qまでのオフ時の過渡的な逆起電力を逃すためのフリーホイールダイオードとして利用可能である。
【0034】
力率改善回路1は、電流蓄積用インダクタLを有する。電流蓄積用インダクタLの一端は、第1のノードNに接続されている。電流蓄積用インダクタLの他端は、第2のノードNに接続されている。
【0035】
電流蓄積用インダクタLの断面積は、第1のインダクタLの断面積及び第2のインダクタLの断面積よりも小さく設定されていると好ましい。
【0036】
電流蓄積用インダクタLに流れる電流ILの平均値は、第1のインダクタLに流れる電流ILの平均値及び第2のインダクタLに流れる電流ILの平均値よりも小さくなるように設定されていると好ましい。
【0037】
電流蓄積用インダクタLのインダクタンスは、第1のインダクタLのインダクタンス及び第2のインダクタLのインダクタンスよりも大きく設定されていると好ましい。
【0038】
力率改善回路1は、制御部50を含む。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを利用して、実現可能である。
【0039】
制御部50は、入力電圧Vinの極性に応じて、第1のスイッチ素子Qから第6のスイッチ素子Qまでのゲート−ソース間の電圧を制御することにより、第1のスイッチ素子Qから第6のスイッチ素子Qまでのスイッチング動作を制御する。制御部50は、PWM(Pulse Width Modulation)信号である、第1のゲートパルス信号Pから第6のゲートパルス信号Pまでを、第1のスイッチ素子Qから第6のスイッチ素子Qまでのゲートに、夫々出力する。なお、第1のゲートパルス信号Pから第6のゲートパルス信号Pまでには、デッドタイムtが設定されている。デッドタイムtは、1nsから10ns程度が例示されるが、これに限定されない。
【0040】
制御部50は、出力電圧Voutが目標電圧(400V)になるように、第1のスイッチ素子Qから第6のスイッチ素子Qまでを制御する。
【0041】
制御部50は、第1の電圧検出器13で検出された入力電圧Vinと、第2の電圧検出器16で検出された出力電圧Voutと、に基づいて、第1、第2、第5及び第6のゲートパルス信号P、P、P及びPの周波数(スイッチング周波数)と、オン時間Tonと、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との位相差時間tdiffと、を計算する。制御部50は、計算した周波数と、オン時間Tonと、位相差時間tdiffと、に基づいて、第1、第2、第5及び第6のゲートパルス信号P、P、P及びPを、第1、第2、第5及び第6のスイッチ素子Q、Q、Q及びQのゲートに、夫々出力する。
【0042】
制御部50の動作について、説明する。
【0043】
制御部50は、入力電圧Vinの極性が正相である場合には、極性切り替えアーム回路18内の第3のスイッチ素子Qをオフし且つ第4のスイッチ素子Qをオンする。
【0044】
そして、制御部50は、第3のスイッチ素子Qをオフし且つ第4のスイッチ素子Qをオンした状態で、第1及び第2のスイッチ素子Q及びQを相補的にオン/オフを切り替えるように制御しつつ、第5及び第6のスイッチ素子Q及びQを相補的にオン/オフを切り替えるように制御する。
【0045】
例えば、制御部50は、入力電圧Vinが正相である場合において、第2、第4及び第6のスイッチ素子Q、Q及びQをオンし且つ第1、第3及び第5のスイッチ素子Q、Q及びQをオフした第1の状態から、第2のスイッチ素子Qをオフし且つ第1のスイッチ素子Qをオンした第2の状態に制御する。
【0046】
さらに、制御部50は、第2の状態に制御した後、第2の状態から、第6のスイッチ素子Qをオフした第3の状態に制御する。そして、制御部50は、第3の状態に制御した後、第3の状態から、第5のスイッチ素子Qをオンした第4の状態に制御する。
【0047】
また、制御部50は、第4の状態に制御した後、第4の状態から、第1のスイッチ素子Qをオフした第5の状態に制御する。そして、制御部50は、第5の状態に制御した後、第5の状態から、第2のスイッチ素子Qをオンした第6の状態に制御する。
【0048】
また、制御部50は、第6の状態に制御した後、第6の状態から、第5のスイッチ素子Qをオフした第7の状態に制御する。そして、制御部50は、第7の状態に制御した後、第7の状態から、第6のスイッチ素子Qをオンした第8の状態に制御する。
【0049】
また、制御部50は、第8の状態に制御した後、第8の状態から、第2のスイッチ素子Qをオフした第9の状態に制御する。そして、制御部50は、第9の状態に制御した後、第9の状態から、第1のスイッチ素子Qをオンした第10の状態に制御する。
【0050】
以上の制御により、入力電圧Vinの極性が正相である場合には、電流IL及びILが、第4のスイッチ素子Qを介して、第2の入力端子12に流れることとなる。
【0051】
一方、制御部50は、入力電圧Vinの極性が逆相である場合には、極性切り替えアーム回路18内の第3のスイッチ素子Qをオンし且つ第4のスイッチ素子Qをオフする。
【0052】
そして、制御部50は、第3のスイッチ素子Qをオンし且つ第4のスイッチ素子Qをオフした状態で、第1及び第2のスイッチ素子Q及びQを相補的にオン/オフを切り替えるように制御しつつ、第5及び第6のスイッチ素子Q及びQを相補的にオン/オフを切り替えるように制御する。
【0053】
この制御により、入力電圧Vinの極性が逆相である場合には、電流IL及びILが、第3のスイッチ素子Qを介して第1の入力端子11に流れることとなる。
【0054】
なお、入力電圧Vinの極性が逆相である場合の、第1及び第2のスイッチ素子Q及びQを相補的にオン/オフを切り替えるように制御しつつ、第5及び第6のスイッチ素子Q及びQを相補的にオン/オフを切り替えるように制御する具体的な動作は、上述の入力電圧Vinが正相である場合の第1の状態から第10の状態までの制御と同様である。
【0055】
図2は、比較例の力率改善回路の動作波形の一例を示す図である。図2は、入力電圧Vinの極性が正相である場合の、力率改善回路1の動作波形の一例を示す図である。
【0056】
制御部50は、入力電圧Vinが正相である場合において、第2、第4及び第6のスイッチ素子Q、Q及びQをオンし且つ第1、第3及び第5のスイッチ素子Q、Q及びQをオフした第1の状態に制御する。
【0057】
次に、制御部50は、タイミングtにおいて、第2のスイッチ素子Qをオフする。次に、制御部50は、タイミングtからデッドタイムt経過後のタイミングtにおいて、第1のスイッチ素子Qをオンした第2の状態に制御する。このとき、第2のスイッチ素子Qのドレイン−ソース間電圧VdsQが出力電圧Vout相当になる。
【0058】
次に、制御部50は、タイミングtにおいて、第2の状態から、第6のスイッチ素子Qをオフした第3の状態に制御する。このとき、第6のスイッチ素子Qのドレイン−ソース間電圧VdsQが出力電圧Vout相当になる。
【0059】
これにより、電流蓄積用インダクタLには、タイミングtからタイミングtまでの期間に、出力電圧Vout相当の電圧VLが印加され、電流蓄積用インダクタLに電流ILが蓄積される。このとき、電流蓄積用インダクタLが寄生ダイオードDの寄生容量を放電し、第5のスイッチ素子Qのドレイン−ソース間電圧が0Vになる。
【0060】
これにより、第5のスイッチ素子QのZVS動作が可能になる。
【0061】
次に、制御部50は、タイミングtからデッドタイムt経過後のタイミングtにおいて、第5のスイッチ素子Qをオンした第4の状態に制御する。このとき、電流蓄積用インダクタLが第1のスイッチ素子Q及び第5のスイッチ素子Qを介して短絡されるので、電流蓄積用インダクタLの電流ILが保持される。
【0062】
タイミングtからタイミングtまでの期間が、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間の位相差時間tdiffである。
【0063】
次に、制御部50は、タイミングtにおいて、第4の状態から、第1のスイッチ素子Qをオフした第5の状態に制御する。このとき、電流蓄積用インダクタLが寄生ダイオードDの寄生容量を放電し、第2のスイッチ素子Qのドレイン−ソース間電圧VdsQが0Vになる。
【0064】
これにより、第2のスイッチ素子QのZVS動作が可能になる。
【0065】
タイミングtからタイミングtまでの期間が、オン時間Tonである。
【0066】
次に、制御部50は、タイミングtからデッドタイムt経過後のタイミングtにおいて、第2のスイッチ素子Qをオンした第6の状態に制御する。
【0067】
次に、制御部50は、タイミングtにおいて、第6の状態から、第5のスイッチ素子Qをオフした第7の状態に制御する。これにより、電流蓄積用インダクタLには、タイミングtからタイミングtまでの期間に、第3の状態と逆方向の出力電圧Vout相当の電圧が印加され、電流蓄積用インダクタLに電流ILが蓄積される。このとき、電流蓄積用インダクタLが寄生ダイオードDの寄生容量を放電し、第6のスイッチ素子Qのドレイン−ソース間電圧VdsQが0Vになる。
【0068】
これにより、第6のスイッチ素子QのZVS動作が可能になる。
【0069】
次に、制御部50は、タイミングtからデッドタイムt経過後のタイミングtにおいて、第7の状態から、第6のスイッチ素子Qをオンした第8の状態に制御する。このとき、電流蓄積用インダクタLが第2のスイッチ素子Q及び第6のスイッチ素子Qを介して短絡され、電流蓄積用インダクタLの電流が保持される。
【0070】
次に、制御部50は、タイミングtにおいて、第8の状態から、第2のスイッチ素子Qをオフした第9の状態に制御する。このとき、電流蓄積用インダクタLが寄生ダイオードDの寄生容量を放電し、第1のスイッチ素子Qのドレイン−ソース間電圧VdsQが0Vになる。
【0071】
これにより、第1のスイッチ素子QのZVS動作が可能になる。
【0072】
次に、制御部50は、タイミングtからデッドタイムt経過後のタイミングt10において、第9の状態から、第1のスイッチ素子Qをオンした第10の状態に制御する。
【0073】
制御部50は、以降同様の制御を実行する。
【0074】
なお、第2のスイッチ素子Qを制御するための第2のゲートパルス信号Pの位相と、第6のスイッチ素子Qを制御するための第6のゲートパルス信号Pの位相とは、位相差時間tdiffだけずれている。同様に、第1のスイッチ素子Qを制御するための第1のゲートパルス信号Pの位相と、第5のスイッチ素子Qを制御するための第5のゲートパルス信号Pの位相とは、位相差時間tdiffだけずれている。
【0075】
力率改善回路1は、第1のノードNと第2のノードNとの間に接続された、電流蓄積用インダクタLを備える。電流蓄積用インダクタLが、第1のスイッチ素子Q、第2のスイッチ素子Q、第5のスイッチ素子Q、又は、第6のスイッチ素子Qがオフの時に、これらのスイッチ素子Qの寄生ダイオードDの寄生容量を放電する。従って、第1のスイッチ素子Q、第2のスイッチ素子Q、第5のスイッチ素子Q、及び、第6のスイッチ素子QのZVS動作が可能になる。
【0076】
しかし、力率改善回路1では、電流蓄積用インダクタLに電流ILが流れる。この電流ILにより、電流蓄積用インダクタL及び各スイッチ素子Qの導通損、並びに、電流蓄積用インダクタLの鉄損が発生する。これらの損失を抑制することが望ましい。
【0077】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の力率改善回路は、電流蓄積用インダクタL及び各スイッチ素子Qの導通損、並びに、電流蓄積用インダクタLの鉄損を抑制するために、位相差制御と、非位相差制御と、を切り替えて実行する。位相差制御は、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間に位相差を設ける制御である。非位相差制御は、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間に位相差を設けない制御である。
【0078】
図3は、第1の実施の形態の力率改善回路の回路構成を示す図である。なお、比較例と同じ構成要素には、同じ参照符号を付して、説明を省略する。
【0079】
第1の実施の形態の力率改善回路1Aは、比較例の制御部50に代えて、制御部50Aを備える。制御部50Aは、閾値記憶部51と、判定部52と、位相差計算部53と、駆動部54と、を含む。
【0080】
閾値記憶部51は、位相差制御と非位相差制御のどちらを行うか、を判定するための、電圧の閾値Vthを記憶する。閾値Vthは、有線通信又は無線通信経由で書き換え可能であっても良い。本実施の形態では、Vth=1/2・Voutとするが、これに限定されない。Vth≦1/2・Voutであれば良い。
【0081】
再び図3を参照すると、判定部52は、入力電圧Vinと、閾値Vthと、を比較する。判定部52は、入力電圧Vinが閾値Vthより大きい場合は、位相差制御を駆動部54に行わせるための、ローレベルの判定信号Sを駆動部54に出力する。一方、判定部52は、入力電流Iinが選択した閾値以下の場合には、非位相差制御を駆動部54に行わせるための、ハイレベルの判定信号Sを駆動部54に出力する。
【0082】
位相差計算部53は、判定信号Sがローレベルである場合、即ち位相差制御を行う場合に、入力電圧Vin及び出力電圧Voutに基づいて、位相差時間tdiffを計算して、駆動部54に出力する。
【0083】
位相差計算部53は、入力電圧Vinが大きくなるほど、力率改善のために、位相差時間tdiffを大きくすることが好ましい。また、位相差計算部53は、力率改善のために、位相差時間tdiffを、入力電圧Vinに正比例する時間とすることが好ましい。
【0084】
例えば、位相差計算部53は、次の式(1)で位相差時間tdiffを計算すると好ましい。但し、これに限定されない。
【0085】
【数2】
【0086】
式(1)において、Cは、第1の寄生ダイオードDから第6の寄生ダイオードDまでの寄生容量である。Lは、第1のインダクタL及び第2のインダクタLのインダクタンスである。
【0087】
駆動部54は、位相差制御及び非位相差制御のいずれの場合にも、出力電圧Voutが目標電圧(400V)になるように、第1のスイッチ素子Qから第6のスイッチ素子Qまでを制御する。
【0088】
駆動部54は、位相差制御及び非位相差制御のいずれの場合にも、入力電圧Vinと、出力電圧Voutと、に基づいて、第1、第2、第5及び第6のゲートパルス信号P、P、P及びPの周波数(スイッチング周波数)と、オン時間Tonと、を計算する。駆動部54は、計算した周波数と、オン時間Tonと、位相差計算部53で計算された位相差時間tdiffと、に基づいて、第1、第2、第5及び第6のゲートパルス信号P、P、P及びPを、第1、第2、第5及び第6のスイッチ素子Q、Q、Q及びQのゲートに、夫々出力する。
【0089】
制御部50Aの位相差制御の制御動作は、比較例の制御部50と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
制御部50Aの非位相差制御の制御動作について、説明する。
【0091】
第1のアーム回路17及び第2のアーム回路19は、昇圧チョッパ回路と同様の回路構成を有する。従って、力率改善回路1は、非位相差制御の場合には、昇圧チョッパ回路と同様の動作を行う。
【0092】
具体的には、制御部50Aは、入力電圧Vinの極性が正相である場合には、極性切り替えアーム回路18内の第3のスイッチ素子Qをオフし且つ第4のスイッチ素子Qをオンする。
【0093】
そして、制御部50Aは、第3のスイッチ素子Qをオフし且つ第4のスイッチ素子Qをオンした状態で、第1及び第5のスイッチ素子Q及びQと、第2及び第6のスイッチ素子Q及びQと、を相補的にオン/オフを切り替えるように制御する。
【0094】
例えば、制御部50Aは、入力電圧Vinが正相である場合において、第2、第4及び第6のスイッチ素子Q、Q及びQをオンし且つ第1、第3及び第5のスイッチ素子Q、Q及びQをオフした第1の状態から、第2及び第6のスイッチ素子Q及びQをオフし且つ第1及び第5のスイッチ素子Q及びQをオンした第2の状態に制御する。
【0095】
さらに、制御部50Aは、第2の状態に制御した後、第2の状態から、第1及び第5のスイッチ素子Q及びQをオフした第3の状態に制御する。
【0096】
そして、制御部50Aは、第3の状態に制御した後、第3の状態から、第2及び第6のスイッチ素子Q及びQをオンした第4の状態に制御する。
【0097】
また、制御部50Aは、第4の状態に制御した後、第4の状態から、第2及び第6のスイッチ素子Q及びQをオフした第5の状態に制御する。
【0098】
以上の制御により、入力電圧Vinの極性が正相である場合には、電流IL及び電流ILが、第4のスイッチ素子Qを介して、第2の入力端子12に流れることとなる。
【0099】
一方、制御部50Aは、入力電圧Vinの極性が逆相である場合には、極性切り替えアーム回路18内の第3のスイッチ素子Qをオンし且つ第4のスイッチ素子Qをオフする。
【0100】
そして、制御部50は、第3のスイッチ素子Qをオンし且つ第4のスイッチ素子Qをオフした状態で、第1及び第5のスイッチ素子Q及びQと、第2及び第6のスイッチ素子Q及びQと、を相補的にオン/オフを切り替えるように制御する。
【0101】
この制御により、入力電圧Vinの極性が逆相である場合には、電流IL及び電流ILが、第3のスイッチ素子Qを介して第1の入力端子11に流れることとなる。
【0102】
なお、入力電圧Vinの極性が逆相である場合の、第1及び第5のスイッチ素子Q及びQと、第2及び第6のスイッチ素子Q及びQと、を相補的にオン/オフを切り替えるように制御する具体的な動作は、上述の入力電圧Vinが正相である場合の第1の状態から第5の状態までの制御と同様である。
【0103】
力率改善回路1Aの第1のアーム回路17では、第1のスイッチ素子Q及び第2のスイッチ素子Qがオフの期間において、第1のインダクタLと寄生ダイオードDの寄生容量Cとで構成されるLC直列回路が自由振動する。自由振動の際、第1のノードNの中心電圧はVinであり、電圧振幅は(Vout−Vin)である。第2のアーム回路19も、第1のアーム回路17と同様である。
【0104】
in≦1/2・Voutである期間について、検討する。この期間では、第2のスイッチ素子Qのドレイン−ソース間電圧VdsQは、自由振動電圧の逆相側で、0Vに至る。従って、力率改善回路1Aは、電流蓄積用インダクタLの電流ILに依らずに、第2のスイッチ素子QのZVS動作が可能になる。また、第1のスイッチ素子Qのドレイン−ソース間電圧VdsQは、自由振動電圧の正相側で、0Vに至る。従って、力率改善回路1Aは、電流蓄積用インダクタLの電流ILに依らずに、第1のスイッチ素子QのZVS動作が可能になる。第2のアーム回路19も、第1のアーム回路17と同様である。
【0105】
そこで、制御部50Aは、Vin≦1/2・Voutである期間においては、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間の位相差時間tdiffを0nsにする。即ち、制御部50Aは、Vin≦1/2・Voutの期間においては、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間に位相差を設けない、非位相差制御を行う。
【0106】
第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間の位相差時間tdiffが0nsであれば、電流蓄積用インダクタLの両端の電位が同じになる。つまり、電流蓄積用インダクタLの両端間の電圧VLが0Vになる。従って、電流蓄積用インダクタLに電流ILが流れない。これにより、力率改善回路1Aは、電流蓄積用インダクタL及び各スイッチ素子Qの導通損、並びに、電流蓄積用インダクタLの鉄損を抑制できる。
【0107】
in>1/2・Voutである期間について、検討する。この期間では、第2のスイッチ素子Qのドレイン−ソース間電圧VdsQは、自由振動電圧の逆相側で、0Vに至らない。第2のアーム回路19も、第1のアーム回路17と同様である。
【0108】
そこで、制御部50Aは、Vin>1/2・Voutの期間においては、第1のアーム回路17と第2のアーム回路19との間の位相差時間tdiffを0nsより大きい値にする。即ち、制御部50Aは、Vin>1/2・Voutの期間においては、位相差制御を行う。これにより、電流蓄積用インダクタLが、第1のスイッチ素子Q、第2のスイッチ素子Q、第5のスイッチ素子Q、又は、第6のスイッチ素子Qがオフの時に、これらのスイッチ素子Qの寄生ダイオードDの寄生容量を放電する。従って、力率改善回路1Aは、第1のスイッチ素子Q、第2のスイッチ素子Q、第5のスイッチ素子Q、及び、第6のスイッチ素子QのZVS動作が可能になる。
【0109】
なお、本実施の形態では、Vth=1/2・Voutとしたが、これに限定されない。Vth≦1/2・Voutであれば良い。
【0110】
図4は、第1の実施の形態の力率改善回路の動作波形の一例を示す図である。閾値Vthが大きいほど、位相差制御を行わない非位相差制御期間71及び73が長くなり、位相差制御を行う位相差制御期間72が短くなる。従って、閾値Vthが大きいほど、電流蓄積用インダクタL及び各スイッチ素子Qの導通損、並びに、電流蓄積用インダクタLの鉄損を抑制できる。従って、閾値Vthは、Vth≦1/2・Voutの範囲内で最大である、Vth=1/2・Voutとすることが好ましい。本実施の形態では、出力電圧Voutが400Vであるので、閾値Vthは200Vとすることが好ましい。
【0111】
なお、本実施の形態では、力率改善回路1Aが、閾値記憶部51及び判定部52を備え、判定部52が、判定信号Sを駆動部54に出力することとした。しかしながら、力率改善回路1Aが、閾値記憶部51及び判定部52を備えず、判定信号Sが外部回路から駆動部54に供給されることとしても良い。これにより、力率改善回路1Aは、制御部50Aの制御負荷を抑制できる。
【0112】
また、力率改善回路1Aは、位相差制御と非位相差制御との切り替わり目において、1ms程度であれば、制御動作を停止することが許容できる。
【0113】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の力率改善回路の回路構成を示す図である。なお、比較例又は第1の実施の形態と同じ構成要素には、同じ参照符号を付して、説明を省略する。
【0114】
力率改善回路1Bは、第1の実施の形態の制御部50Aに代えて、制御部50Bを含む。制御部50Bは、位相差計算部53(図3参照)に代えて、位相差記憶部56を含む。
【0115】
位相差記憶部56は、位相差制御を行う場合の、予め定められた位相差時間tdiffを記憶する。位相差時間tdiffは、有線通信又は無線通信経由で書き換え可能であっても良い。位相差時間tdiffは、300nsが例示されるが、これに限定されない。
【0116】
比較例の力率改善回路1のように、全期間において位相差制御を行う場合について、検討する。入力電圧Vinのゼロクロス付近では、入力電圧Vinを出力電圧Voutに昇圧する昇圧幅が大きいので、スイッチング周波数を高くする必要がある。スイッチング周波数が高いと、オン時間Tonが取り得る上限値が小さい。オン時間Tonの取り得る上限値が小さいと、位相差時間tdiffの取り得る上限値が小さい。従って、入力電圧Vinのゼロクロス付近での位相差時間tdiffを全期間において使用して、位相差制御を行うこととすると、入力電圧Vinのピーク付近での力率改善効果が好適に得られない。
【0117】
一方、力率改善回路1Bのように、位相差制御期間72だけで位相差制御を行う場合について、検討する。入力電圧Vinの閾値Vth付近では、入力電圧Vinを出力電圧Voutに昇圧する昇圧幅が、ゼロクロス付近と比較して小さいので、スイッチング周波数を低くできる。スイッチング周波数が低いと、オン時間Tonが取り得る上限値が大きい。オン時間Tonの取り得る上限値が大きいと、位相差時間tdiffの取り得る上限値が大きい。従って、入力電圧Vinの閾値Vth付近での位相差時間tdiffを、位相差制御期間72において使用して、位相差制御を行うこととしても、入力電圧Vinのピーク付近での力率改善効果が好適に得られる。
【0118】
そこで、力率改善回路1Bは、位相差制御を行う場合に、予め定められた位相差時間tdiffを利用する。これにより、力率改善回路1Bは、位相差時間tdiffの計算負荷を抑制でき、制御部50Bの制御負荷を抑制できる。
【0119】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0120】
1、1A、1B 力率改善回路
2 電源
4 負荷
11 第1の入力端子
12 第2の入力端子
13 第1の電圧検出器
14 第1の出力端子
15 第2の出力端子
16 第2の電圧検出器
17 第1のアーム回路
18 極性切り替えアーム回路
19 第2のアーム回路
50、50A、50B 制御部
51 閾値記憶部
52 判定部
53 位相差計算部
54 駆動部
56 位相差記憶部
第1のインダクタ
第2のインダクタ
第1のスイッチ素子
第2のスイッチ素子
第3のスイッチ素子
第4のスイッチ素子
第5のスイッチ素子
第6のスイッチ素子
出力コンデンサ
第1のノード
第2のノード
図1
図2
図3
図4
図5