(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873861
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ、超音波探傷装置及び超音波探傷方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20210510BHJP
G01N 29/32 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/32
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-151471(P2017-151471)
(22)【出願日】2017年8月4日
(65)【公開番号】特開2019-32168(P2019-32168A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】若崎 真吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛史
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲
(72)【発明者】
【氏名】相澤 利枝
【審査官】
小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−099041(JP,A)
【文献】
特開昭61−099860(JP,A)
【文献】
特開2006−035003(JP,A)
【文献】
特開平05−184572(JP,A)
【文献】
特許第4244172(JP,B2)
【文献】
特許第4911630(JP,B2)
【文献】
特開2001−268694(JP,A)
【文献】
特開平07−303299(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0216257(US,A1)
【文献】
特開平08−223696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 − G01N 29/52
H04R 1/00
H04R 1/02
H04R 1/06
H04R 1/20
H04R 1/22
H04R 1/24
H04R 1/26
H04R 1/28
H04R 1/30
H04R 1/32
H04R 1/34
H04R 1/40
H04R 1/44
H04R 3/00
H04R 7/00
H04R 9/00
H04R 13/00
H04R 15/00
H04R 17/00
H04R 17/10
H04R 19/00
H04R 23/00
H04R 29/00
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極及び下部電極を有する圧電振動子と、前記上部電極の上部に設けられたダンパーと、前記下部電極の下部に設けられた前面板と、前記圧電振動子及びダンパーを囲繞するケーシングと、を有する超音波トランスデューサにおいて、
前記圧電振動子の少なくとも1つの側面が前記下部電極に向けて傾斜状の切欠き部を有し、前記上部電極は前記ダンパーから前記切欠き部側に所定領域露出し、
前記下部電極の幅と前記ダンパーの幅が略同等であることを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記上部電極の露出した表面にリード線を接続したことを特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記切欠き部は多段状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記切欠き部は曲線状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサを用いて構造物の超音波探傷検査を行うことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサを用いて構造物の超音波探傷検査を行うことを特徴とする超音波探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波トランスデューサ、超音波探傷装置及び超音波探傷方法に関し、特に高温環境下において使用可能な超音波トランスデューサ、超音波探傷装置及び超音波探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速炉とは高速中性子による核分裂反応がエネルギー発生源となっている原子炉である。高速炉は放射性廃棄物の減容、ウランの有効活用等の利点がある。高速炉の冷却材は、中性子の減速能及び吸収断面積が比較的小さいこと、熱輸送特性が良好なことから液体ナトリウムが用いられている。しかしながら、液体ナトリウムは銀色を呈しており不透明であるため、高速炉の内部を目視することができない。
【0003】
一方、高速炉の炉内構造物の検査が高速炉の品質信頼性確保のために要求されており、高速炉の運転休止中に定期検査を行う必要がある。炉内構造物は高放射線領域にあるため、定期検査には遠隔操作で炉内構造物の欠陥を検出できる超音波探傷装置が用いられている。超音波探傷装置は超音波を検査対象に入射しその反射波から欠陥を検出するため、液体ナトリウム中においても炉内構造物の状態を検査できる。定期検査時は、液体ナトリウムが固化しない温度の200±20℃に維持されるため、炉内検査用の超音波探傷装置は少なくとも220℃以上の耐熱性を有する必要がある。
この超音波探傷装置は、高速炉以外にも、その他の高温の液体中においても使用することができる。
【0004】
通常の超音波探傷装置は、超音波を送受波する超音波トランスデューサと、この超音波トランスデューサの検出結果に所定の信号処理を施す信号処理装置と、から構成されている。
【0005】
一般的な超音波トランスデューサ1は、
図6(d)に示すように、上下面に電極層を形成した圧電振動子4を有しており、この圧電振動子4は外部から電圧を加えることにより、圧電振動子の極性に応じて膨張と収縮を繰り返し振動させることで超音波を発生させる。この超音波トランスデューサ1において、超音波の送受信面側には前面板7が設けられ、送受信面の背面側には背面側に圧電振動子の不要な振動を抑制する機能を有するダンパー8が設けられている。
【0006】
図6(a)〜(d)に従来の超音波トランスデューサ1の製造工程を示す。まず、圧電振動子4の上下面に薄膜の電極層(上部電極5、下部電極6)を形成し、上部電極5にリード線14を取り付ける(
図6(a))。次に、圧電振動子4の上面に接合層10を介してダンパー8を接合し、下面に接合層9を介して前面板7を接合する(
図6(b)、(c))。その後、前面板7にリード線13を取り付け、ケーシング11とコネクタ12を取り付けて超音波トランスデューサ1を得る(
図6(d))。
【0007】
一方、高温環境下で用いられる超音波トランスデューサ1を従来と同様の工程で製造する場合、圧電振動子4とダンパー8の接合層10に用いられる接合材は、上部電極5とリード線14の接続に用いる接合材よりも融点の低い接合材を用いる必要がある。しかしながら、高温用の超音波トランスデューサ1では耐熱性を有する接合材を選定する必要があるため、圧電振動子4とダンパー8の接合材の選定が困難となる。また、上部電極5とリード線14の接続と、圧電振動子4へのダンパー8の接合に同じ接合材を用いる場合、上部電極5とリード線14が導通する必要があるため、接合材は金属接合材を用いる。しかし、ダンパー8の材料であるセラミックスと金属接合材の接合性を良好に保つのは困難であるため、ダンパー8の材料の選定に制約が生じる。
【0008】
そこで、圧電振動子4とダンパー8の接合材やダンパー8の材料の選定に制約が生じないようにするため、高温用の超音波トランスデューサ1を、
図6(a)〜(d)に示す従来の製造工程とは異なる工程で製造する方法が考えられる。
【0009】
例えば、圧電振動子4へダンパー8を接合した後に上部電極5とリード線14の接続をする方法が挙げられる。この場合、上部電極5とリード線14の接続に用いる接合材は、圧電振動子4とダンパー8の接合に用いる接合材よりも融点を低くする必要がある。
【0010】
また、この工程では、圧電振動子4とダンパー8との間の上部電極5に対して、側面からリード線14を接続する必要があり、上部電極5は薄膜であるためリード線14の接続スペースが小さく、リード線14の接続作業が困難であるとともに、所望の接続強度が得られない場合がある。
【0011】
そこで、圧電振動子4の一部にダンパー8が接続しない領域を形成し、リード線14の接続スペースを確保する方法が考えられる。
その例として、
図7に圧電振動子4の一部にダンパー8が接続しない領域を形成した超音波トランスデューサ1の構成図を示す。
図7に示す超音波トランスデューサ1では、上部電極5にリード線14の接続スペースを確保している。これにより、十分な量の接合材でリード線14を接続することが可能となり、所望の接続強度を確保することができるため、超音波トランスデューサ1の信頼性を高めることができる。
【0012】
また、他の方法としてダンパー8の底面及び少なくとも1つの側面に金属蒸着を施して側面電極18を形成し、その側面電極18にリード線14を接続することが知られている。
図8に側面電極18を形成した超音波トランスデューサ1の構成図を示す。この場合、圧電振動子4の全てにダンパー8が接続される構造となるため、不要な振動は発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4244172号公報
【特許文献2】特許第4911630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、
図7に示す従来の高温用の超音波トランスデューサ1では、ダンパー8に接触しない上部電極5の領域にリード線を接続し、リード線の接続強度、信頼性を向上させている。
【0015】
しかしながら、ダンパー8が接触しない領域の圧電振動子4では不要な振動が発生する可能性がある。この不要な振動はパルス幅が大きいため、分解能を低下させる要因となる。パルス幅とは、超音波パルスが継続する時間間隔である。超音波トランスデューサ1がパルス幅の大きい超音波を送信した場合、物体から反射した超音波のパルス幅も大きくなる。
【0016】
また、超音波トランスデューサ1が2つの異なる距離に存在する物体から反射した超音波を受信する場合、受信する超音波は2物体間の距離分の時間差が生じるが、この時間差よりパルス幅が大きいと2つの超音波は重なり合って分離できない。すなわち、圧電振動子4で不要な振動が発生すると、超音波トランスデューサ1が送受信する超音波のパルス幅が大きくなり、分解能が低下するという問題があった。
【0017】
また、
図8に示すダンパー8の側面に側面電極18を設けた従来の高温用の超音波トランスデューサ1では、ダンパー8の側面に側面電極18を形成するため、上部電極5と側面電極18の断線・接続不良や下部電極6と側面電極18間でのショートが生じやすく、超音波トランスデューサ1の信頼性に問題があった。
【0018】
本発明に係る実施形態は、上記課題を解決するためになされたもので、超音波トランスデューサを高温環境下で使用する際も、周波数特性及び分解能が良好で、かつ、リード線と電極との接続強度を向上させることができる信頼性の高い超音波トランスデューサ、超音波探傷装置及び超音波探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサは、上部電極及び下部電極を有する圧電振動子と、前記上部電極の上部に設けられたダンパーと、前記下部電極の下部に設けられた前面板と、前記圧電振動子及びダンパーを囲繞するケーシングと、を有する超音波トランスデューサにおいて、前記圧電振動子の少なくとも1つの側面
が前記下部電極に向けて傾斜状の切欠き部を有し、前記上部電極は前記ダンパーから前記切欠き部側に所定領域露出
し、前記下部電極の幅と前記ダンパーの幅が略同等であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によれば、高温環境下でも周波数特性及び分解能が良好で、かつ、リード線と電極との接続強度を向上させた信頼性の高い超音波トランスデューサ、超音波探傷装置及び超音波探傷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態に係る超音波トランスデューサの構成図。
【
図2】第1の実施形態に係る超音波トランスデューサの周波数特性図。
【
図3】第1の実施形態の変形例に係る超音波トランスデューサの構成図。
【
図4】第2の実施形態に係る超音波トランスデューサの構成図。
【
図5】第3の実施形態に係る超音波トランスデューサの構成図。
【
図6】従来の超音波トランスデューサの製造工程を示す図。
【
図7】従来の超音波トランスデューサの構成図(その1)。
【
図8】従来の超音波トランスデューサの構成図(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る超音波トランスデューサ、超音波探傷装置及び超音波探傷方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る超音波トランスデューサ、超音波探傷装置及び超音波探傷方法を、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0023】
(全体構成)
第1の実施形態に係る超音波探傷装置は超音波トランスデューサ1と信号処理装置2から構成され、超音波トランスデューサ1から検査対象の構造物3に超音波を出射しその反射波から構造物3の欠陥を検出する。
【0024】
超音波トランスデューサ1は、上下面に上部電極5及び下部電極6を有する圧電振動子4と、圧電振動子4の下部電極6側に接合層9を介して設けられた前面板7と、上部電極5側に接合層10を介して設けられたダンパー8と、圧電振動子4等を内包し下面に前面板7が溶接等によって接合されたケーシング11と、ケーシング11の上面に設けられたコネクタ12と、コネクタ12と前面板7及び上部電極5との間にそれぞれ接続されるリード線13、14と、から構成される。
【0025】
(圧電振動子)
圧電振動子4は、
図1に示すように、一方の側面(
図1の例では右側側面)が下部電極6に向けて傾斜状の切欠き部を有する逆錐状であり、ダンパー8は上部電極5の切欠き部側が所定領域露出するように、接合層10を介して圧電振動子4の上部に接合されている。すなわち、切欠き部は上下方向において圧電振動子4の下部電極6側に設けられており、ダンパー8は従来の超音波トランスデューサ1のように上部電極5の全てを覆うように設けられるのではなく、上部電極5の上面が横方向において切欠き部側に所定領域露出するように、上部電極5上に接合層10を介して接合されている。
【0026】
下部電極6は逆錐状の圧電振動子4の下面に設けられており、上部電極5に接するダンパー8の接触面と、略同等の幅を有している。すなわち、下部電極6のサイズは上部電極5よりも小さく、上部電極5に接するダンパー8の接触面と略同サイズとなっている。
【0027】
圧電振動子4は、膨張と収縮を繰り返し振動させることで超音波を発生させる機能を有する。高温用の圧電振動子4の材料としては、キュリー温度が低いと超音波トランスデューサ1を高温下で使用する際に脱分極を起こしてしまい感度を失うことから、例えばチタン酸鉛系等のキュリー温度の高い材料が用いられるが、その他のキュリー温度の高い材料を用いてもよい。
【0028】
(前面板、ダンパー、ケーシング)
前面板7は、圧電振動子4の表面を保護する機能を有し、薄肉の金属板が用いられる。圧電振動子4と前面板7との接合層9には金属の接合材が用いられ、下部電極6と前面板7は導通状態に維持され、リード線13が前面板7に接続している。
【0029】
ダンパー8は、圧電振動子4の不要な振動を抑制する機能を有し、耐熱性の多孔体セラミックス、例えばチタン酸アルミニウム系等の材料が用いられる。
圧電振動子4とダンパー8との接合層10は耐熱無機系セラミックス等の接合材が用いられ、ダンパー8が接していない領域の上部電極5にリード線14が接続されている。
【0030】
ケーシング11は、前面板7と密閉溶接されており、ケーシング11内部への液体の流入を防ぐ機能を有する。また、ケーシング11にはコネクタ12が設けられている。コネクタ12はリード線13、14と接続しており、超音波トランスデューサ1と信号処理装置2を接続する機能を有する。
【0031】
なお、上記説明で挙げた超音波トランスデューサ1の構成材料はあくまでも例示に過ぎず、同様な機能、材質を持つものであれば他の材料を用いてもよいことはもちろんである。
【0032】
(作用)
上述したように、本実施形態に係る超音波トランスデューサ1は、一方の側面が下部電極6に向けて傾斜状の切欠き部を有する逆錐状とし、圧電振動子4の下部に設けられた下部電極6の幅をダンパー8の幅と略同等としている。すなわち、ダンパー8に重ならない下部電極6の領域が除去されている。
【0033】
この領域に対応する圧電振動子4(傾斜部分)は下部電極6が設けられていないため、電圧が印加されず、これにより分解能低下の要因となる不要な振動が発生しない。また、圧電振動子4の一方の側面(
図1の例では右側側面)に逆錐状の傾斜面が形成されていることにより、圧電振動子4の厚みが変化するため、周波数帯域の幅が広くなり分解能が向上する。
【0034】
さらに、上部電極5にはダンパー8が接続しない所定の領域が形成されるため、上部電極5にリード線14を接続するためのスペースを十分確保することができる。これにより、上部電極5とリード線14との接続強度を向上させることができるため、リード線14の接続の信頼性が向上する。
【0035】
本実施形態に係る超音波トランスデューサ1の周波数特性を
図2に示す。
図2の曲線aは、従来の超音波トランスデューサの周波数特性の例であり、曲線bは本実施形態における超音波トランスデューサの周波数特性の例である。
【0036】
本実施形態に係る超音波トランスデューサ1では、圧電振動子4の一方の側面を傾斜状とし縦方向の厚みが変化する構成にしたことで、
図2に示すように、圧電振動子4の不要な振動が発生せず、かつ、周波数帯域の幅が広くなる。これにより、周波数帯域の幅が広くなることでパルス幅が小さくなるため分解能が向上する。
【0037】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、圧電振動子4の一方の側面を傾斜状とし縦方向の厚みが変化する構成にしたことで、圧電振動子4の不要な振動が発生せず、かつ、周波数帯域の幅が広くなる。これにより、周波数帯域の幅が広くなることでパルス幅が小さくなるため分解能が向上する。
【0038】
また、上部電極5とリード線14の接続のためのスペースを十分確保することができるため、上部電極5とリード線14との接続強度を向上させることが可能となり、リード線14の接続の信頼性を向上させることができる。
【0039】
(変形例1)
上記第1の実施形態では、圧電振動子4の下部に設けられた下部電極6の幅をダンパー8の幅と略同等としているが、本変形例1では、
図3に示すように、下部電極6の幅をダンパー8の幅よりも一定程度大きくなるように設定している。
これにより、圧電振動子4の一部では不要な振動が発生するが、この影響はごく僅かであるため、
図1に示す超音波トランスデューサ1と同等の効果を得ることができる。
【0040】
(変形例2)
上記第1の実施形態では、圧電振動子4は一方の側面(
図1の例では右側側面)が下部電極6に向けて傾斜状の切欠き部を有する逆錐状であるが、その代わりに他方の側面(
図1の例では左側側面)に傾斜状の切欠き部を設けてもよく、さらに、両側面に傾斜状の切欠き部を設け、逆台形状にしてもよい(図示せず)。
【0041】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る超音波トランスデューサ、超音波探傷装置及び超音波探傷方法を、
図4を用いて説明する。なお、上記の実施形態と同一又は類似の構成については同一の符号を付し、重複説明を省略する。
本第2の実施形態では、
図4に示すように、圧電振動子4の傾斜状の切欠き部を多段状に形成している。
【0042】
このように、圧電振動子4の切欠き部を多段状にすることで、圧電振動子4の厚みが段階的に変化する。
これにより、第1の実施形態と同様に分解能を向上させることができるとともに、段数を適宜増減することで、周波数特性や分解能を調整することができる。
【0043】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る超音波トランスデューサ、超音波探傷装置及び超音波探傷方法を、
図5を用いて説明する。なお、上記の実施形態と同一又は類似の構成については同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0044】
本第3の実施形態では、
図5に示すように、圧電振動子4の傾斜状の切欠き部を曲線状に形成している。
このように、圧電振動子4の切欠き部を曲線状にすることで、圧電振動子4の厚みが連続的に変化する。
【0045】
これにより、第1の実施形態と同様に分解能を向上させることができるとともに、曲線の曲率を適宜調整することで、周波数特性や分解能を調整することができる。なお、曲線の形状は連続的に変化するものに限られず、複数の変曲点を持つ曲線であってもよい。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…超音波トランスデューサ、2…信号処理装置、3…構造物、4…圧電振動子、5…上部電極、6…下部電極、7…前面板、8…ダンパー、9、10…接合層、11…ケーシング、12…コネクタ、13、14…リード線、18…側面電極