(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873862
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】パッチング耐火物
(51)【国際特許分類】
C04B 35/66 20060101AFI20210510BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
C04B35/66
F27D1/00 N
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-152653(P2017-152653)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-31414(P2019-31414A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 秀行
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−026561(JP,A)
【文献】
特開2014−055093(JP,A)
【文献】
特開平10−158071(JP,A)
【文献】
特開平11−049577(JP,A)
【文献】
特開平09−301779(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/179409(WO,A1)
【文献】
特開2004−352600(JP,A)
【文献】
特開2005−213120(JP,A)
【文献】
特開2000−281455(JP,A)
【文献】
特開平09−268051(JP,A)
【文献】
国際公開第98/030513(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りに適用されるクロムフリーのパッチング耐火物であって、
耐火原料及び結合剤を含み、
前記耐火原料100質量%中に、アルミナ質原料を80質量%以上95質量%以下、粒径75μm未満のジルコニア質原料を3質量%以上10質量%以下、それぞれ含み、
前記耐火原料に対して外掛けで前記結合剤としてリン酸アルミニウムを2質量%以上8質量%以下含むことを特徴とするパッチング耐火物。
【請求項2】
前記ジルコニア質原料は未安定化ジルコニア質原料である請求項1に記載のパッチング耐火物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りに適用されるクロムフリーのパッチング耐火物に関する。なお、廃棄物処理炉とは、廃棄物溶融炉及び廃棄物焼却炉を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りには、融点が高く、耐食性に優れた酸化クロム質原料を含む不定形耐火物が一般的に使用されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、酸化クロム質原料を含む不定形耐火物は、使用後の廃却時に6価クロムの発生が危惧され、厳重な管理体制が求められる等の問題点を有することから、酸化クロム質原料を含まない不定形耐火物、すなわちクロムフリーの不定形耐火物も使用されている。クロムフリーの不定形耐火物としては、例えば、アルミナ質原料、イットリア質原料及びジルコニア質原料を用いた不定形耐火物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
ところで、クロムフリーであるか否かにかかわらず、廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りに適用される不定形耐火物は、流し込み施工用耐火物、すなわちキャスタブル耐火物である(例えば、特許文献1の段落0002及び特許文献2の段落0043参照)。しかし、キャスタブル耐火物を内張りに適用する場合、流し込み施工のための型枠の設置や撤去に時間を要することから施工期間が長くなるという問題がある。また、キャスタブル耐火物では結合剤としてアルミナセメントを使用するのが一般的であるところ、アルミナセメントを使用した場合、強度発現のためセメント水和物を乾燥させる乾燥工程が必要となり、さらに施工期間が長くなるという問題がある。近年、特に廃棄物溶融炉や石炭ガス化炉の操業においては工期短縮が要請されているから、内張りの施工期間についても短縮の要請が強くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−199449号公報
【特許文献2】特開2009−227508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りに適用される不定形耐火物において、施工期間を短縮することにある、
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、不定形耐火物による内張りの施工期間を短縮するために、不定形耐火物としてキャスタブル耐火物に替えて、パッチング耐火物を使用しようという発想を得た。すなわち、従来、パッチング耐火物は内張りの部分的な補修に使用されていたが、本発明者らはパッチング耐火物を内張りの対象箇所全体の補修又は新規施工に適用するという新たな発想を得たのである。パッチング耐火物によるパッチング施工によれば、型枠の設置や撤去が不要であるので施工期間を短縮することができる。
【0007】
また本発明者らは、従来のパッチング耐火物は内張りの部分的な補修を目的としており、それほど耐食性は重視されていなかったことから、前述の発想を実現するためにパッチング耐火物の耐食性向上を志向した。その際、前述の6価クロムの発生問題を回避する点からクロムフリーを前提とし、この前提のもと耐食性向上のためにジルコニア質原料に注目した。
【0008】
さらに本発明者らは、施工期間短縮と耐食性向上のために結合剤としてリン酸アルミニウムに注目した、リン酸アルミニウムを使用することにより、アルミナセメントを使用した場合には必要であった乾燥工程が不要になるので施工期間を短縮することができる。また、リン酸アルミニウムは、アルミナセメント以外の結合剤のなかで最も融点が高いので、廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りという高温(例えば約1400〜2000℃)の環境下において耐食性向上に有効である。
【0009】
すなわち本発明の一観点によれば、次のパッチング耐火物が提供される。
「廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りに適用されるクロムフリーのパッチング耐火物であって、
耐火原料及び結合剤を含み、
前記耐火原料100質量%中に、アルミナ質原料を80質量%以上95質量%以下、粒径75μm未満のジルコニア質原料を3質量%以上10質量%以下、それぞれ含み、
前記耐火原料に対して外掛けで前記結合剤としてリン酸アルミニウムを2質量%以上8質量%以下含むことを特徴とするパッチング耐火物。」
【発明の効果】
【0010】
本発明のパッチング耐火物によれば、廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りの施工期間を短縮することができる、また、従来のパッチング耐火物による施工に比べ、耐食性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のパッチング耐火物は、廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りに適用されるクロムフリーのパッチング耐火物であって、耐火原料及び結合剤を含む。耐火原料としては、当該耐火原料100質量%中に、アルミナ質原料を80質量%以上95質量%以下、粒径75μm未満のジルコニア質原料を3質量%以上10質量%以下、それぞれ含む。
【0012】
本発明においてアルミナ質原料とはAl
2O
3を70質量%以上含む原料であり、例えば電融アルミナ、焼結アルミナ、ボーキサイト、仮焼アルミナ等が挙げられる。また、本発明においてジルコニア質原料とはZrO
3を20質量%以上含む原料であり、例えば電融ジルコニア、ジルコニアムライト原料、アルミナジルコニア原料等が挙げられる。本発明ではジルコニア質原料の分散性を向上させて耐食性を向上させるために、微粒のジルコニア質原料、具体的には粒径75μm未満のジルコニア質原料を使用する。すなわち本発明のパッチング耐火物は、その耐火原料100質量%中に、アルミナ質原料を80質量%以上95質量%以下、粒径75μm未満のジルコニア質原料を3質量%以上10質量%以下(好ましくは5質量%以上8質量%以下)、それぞれ含むことで、従来のパッチング耐火物に比べ耐食性を向上させることができる。また、ジルコニア質原料として未安定化ジルコニア質原料を使用すれば、マイクロクラックを導入できるため耐熱スポーリング性を確保することができる。なお、アルミナ質原料及びジルコニア質原料以外の耐火原料としては、粘土、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ソルビトール、グリセリン等を適宜使用することができる。
【0013】
結合剤としてはリン酸アルミニウムを使用する。結合剤としてリン酸アルミニウムを使用することで、アルミナセメントを使用した場合には必要であった乾燥工程が不要になるので施工期間を短縮することができる。また、リン酸アルミニウムは、アルミナセメント以外の結合剤のなかで最も融点が高いので、廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りという高温(例えば約1400〜2000℃)の環境下において耐食性向上に有効である。リン酸アルミニウムの添加量は、耐火原料に対して外掛けで2質量%以上8質量%以下(好ましくは4質量%以上7質量%以下)である。リン酸アルミニウムの添加量が2質量%未満では結合剤としてのボンド機能が不十分となる。一方、リン酸アルミニウムの添加量が8質量%を超えると、低融点物質が多く生成するため耐食性が低下する。なお、リン酸アルミニウムは水溶液として添加することもできるが、この場合、リン酸アルミニウムの添加量は、溶媒(水)を除いたリン酸アルミニウム自体の添加量とする。
【0014】
本発明のパッチング耐火物は、廃棄物処理炉又は石炭ガス化炉の内張りの部分的な補修に適用することもできるが、その内張りの対象箇所全体の補修又は新規施工に適用することが有効である。このように内張りの対象箇所全体の補修又は新規施工に適用に適用する場合、施工前にアンカー材として鉄筋枠等を設置しておくとよい。
【実施例】
【0015】
表1に示す各例の不定形耐火物について、耐食性、圧縮強さ及び乾燥時間を評価した。なお、表1中、実施例1〜8及び比較例1〜5はパッチング耐火物であり、比較例6はキャスタブル耐火物である。
【0016】
【表1】
【0017】
耐食性は、るつぼ侵食試験(旧JISR2214)に準拠して測定した溶損指数により評価した。侵食試験の侵食剤には、CaO/SiO
2の質量比=0.8の廃棄物スラグを1500℃に加熱したものを用い、侵食試験の後、試験片の最大溶損寸法を測定した。各例の試験片の最大溶損寸法を、比較例1の試験片の最大溶損寸法で割って100倍した値が溶損指数である。溶損指数は、この値が小さい程、耐食性に優れることを意味する。表1では、溶損指数が90未満の場合を◎(優)、90以上100未満の場合を○(良)、100以上の場合を×(不良)と表記した。
【0018】
圧縮強さは1400℃においてJISR2213に準拠して測定した。表1では圧縮強さが70MPa以上の場合を◎(優)、30MPa以上70MPa未満の場合を○(良)、30MPa未満の場合を×(不良)と表記した。
【0019】
乾燥時間は、実際の内張り施工を想定した30トンの不定形耐火物による施工において、養生後、施工体の内部水蒸気圧が2MPa以下になるまで要する時間を測定した。本発明者らは、内部水蒸気圧が2MPa以下であると、操業にて爆裂を生じないことを確認している。なお、内部水蒸気圧は施工体に圧力伝達管の先端を埋め込むことにより直接測定した。
【0020】
表1に示すように本発明の範囲内にあるパッチング耐火物である実施例1〜8は、耐食性、圧縮強さともに良好であり、特にジルコニア質原料及びリン酸アルミニウムの量がともに好ましい範囲内にある実施例1、4、5、8は、耐食性、圧縮強さがともに優れていた。また、実施例1〜8の乾燥時間はいずれもゼロ(0)であった。
【0021】
比較例1はジルコニア質原料の量が少ない例であり、十分な耐食性が得られなかった。
比較例2はジルコニア質原料の量が多い例であり、マイクロクラックの発生が過剰となり、結果として耐食性が低下した。
比較例3はジルコニア質原料の粒径が大きい例であり、ジルコニア質原料の分散性が悪くなり、結果として耐食性が低下した。
比較例4はリン酸アルミニウムの量が少ない例であり、ボンド機能が不十分となり、結果として耐食性及び圧縮強さが低下した。
比較例5はリン酸アルミニウムの量が多い例であり、低融点物質が多く生成するため耐食性が低下した。
比較例6は結合剤としてアルミナセメントを使用したキャスタブル耐火物であり、4日間の乾燥時間を要した。