特許第6873871号(P6873871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873871
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】運動器作動力推定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/22 20060101AFI20210510BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   A61B5/22 200
   A61B5/11 230
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-168336(P2017-168336)
(22)【出願日】2017年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-42998(P2018-42998A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-174659(P2016-174659)
(32)【優先日】2016年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000181826
【氏名又は名称】社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】陳 隆明
(72)【発明者】
【氏名】本田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 豪
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮
(72)【発明者】
【氏名】本光 伸行
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−110217(JP,A)
【文献】 特開2001−321350(JP,A)
【文献】 特表2008−534156(JP,A)
【文献】 特開2015−221202(JP,A)
【文献】 特開2001−286451(JP,A)
【文献】 特開2016−041176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
A61H 1/00 − 5/00
A61H 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想人体モデルを用いて被験者の日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を推定する運動器作動力推定システムであって、
被験者の一ないし複数の身体部位の少なくとも右脚、左脚、胴体または少なくとも右腕、左腕、胴体の筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量に関する身体パラメータ情報が入力される身体パラメータ情報入力部と、
該身体パラメータ情報入力部により入力された被験者の身体部位の身体パラメータ情報を、仮想人体モデルの対応する身体部位に割り当てる身体パラメータ情報割当部と、
前記身体パラメータ情報割当部により仮想人体モデルの身体部位に割り当てられた身体パラメータ情報に基づいて、仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントを算出する慣性モーメント算出部と、
被験者の日常生活における身体動作を計測した結果に基づいて、被験者の身体部位の関節の角度、角速度および角加速度を算出する身体動作計測部と、
前記慣性モーメント算出部による仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントの算出結果と、前記身体動作計測部による被験者の日常生活における身体動作の算出結果とに基づいて、仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を算出する運動器作動力算出部と、
前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を、被験者の日常生活における身体動作に係る上半身側と下半身側、または右半身側と左半身側の少なくともいずれかの身体部位の運動器の作動力と推定して出力する運動器作動力出力部とを備えることを特徴とする運動器作動力推定システム。
【請求項2】
質量に関する身体パラメータ情報は、少なくとも右脚、左脚、胴体または少なくとも右腕、左腕、胴体の骨情報および/または体水分情報に基づくものである請求項1に記載の運動器作動力推定システム。
【請求項3】
前記仮想人体モデルは、身体部位が中実または中空の円柱、円錐台、円錐、カプセル型、楕円体、球体、トーラス体、立方体、直方体、多角柱、くさび、および/または角錐などのプリミティブな形状、多角形あるいはそれらを組み合わせた形状で近似される請求項1または請求項2に記載の運動器作動力推定システム。
【請求項4】
前記身体パラメータ情報割当部は、身体パラメータ情報入力部により入力された被験者の身体部位の身体パラメータ情報を、仮想人体モデルの対応する身体部位に対して各身体部位の体積、面積、密度、長さ、あるいは径の比率に応じて割り当てる請求項1から請求項3のいずれかに記載の運動器作動力推定システム。
【請求項5】
前記身体動作計測部は、被験者の身体動作から被験者の身体部位の位置および/または角度の時間的変化を計測し、被験者の該身体部位の位置および/または角度の時間的変化に基づいて、被験者の該身体部位の関節の角度、角速度および角加速度を算出する請求項1から請求項4のいずれかに記載の運動器作動力推定システム。
【請求項6】
前記運動器作動力算出部は、下式により仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を算出する請求項1から請求項5のいずれかに記載の運動器作動力推定システム。
τ:運動器の作動力
M(q):慣性項
C(q、q’):コリオリ・遠心力項
G(q):重力項
E(q、q’):外力項
q:身体部位の関節の位置/角度ベクトル
q’:身体部位の関節の速度/角速度ベクトル
q”:身体部位の関節の加速度/角加速度ベクトル
【請求項7】
前記運動器作動力算出部は、身体部位の運動器の作動力を被験者または身体部位の質量、体積、面積、密度、長さ、径、あるいはそれらの積により正規化する請求項1から請求項6のいずれかに記載の運動器作動力推定システム。
【請求項8】
前記運動器作動力出力部は、被験者の日常生活における身体動作に従って、前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を時系列的に出力する請求項1から請求項7のいずれかに記載の運動器作動力推定システム。
【請求項9】
前記運動器作動力出力部は、前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の最大または最小の運動器の作動力を出力する請求項1から請求項8のいずれかに記載の運動器作動力推定システム。
【請求項10】
前記運動器作動力出力部は、前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を右半身側と左半身側、および/または上半身側と下半身側に分けて出力する請求項1から請求項9のいずれかに記載の運動器作動力推定システム。
【請求項11】
前記運動器作動力出力部は、前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を、重力項に関する情報を差し引いた状態、あるいは除算した状態、あるいは請求項6に記載の重力項に関する情報を併せた状態で出力する請求項6に記載の運動器作動力推定システム。
【請求項12】
前記運動器作動力出力部は、前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を仮想人体モデルとともに出力する請求項1から請求項11のいずれかに記載の運動器作動力推定システム。
【請求項13】
コンピュータを、
被験者の一ないし複数の身体部位の少なくとも右脚、左脚、胴体または少なくとも右腕、左腕、胴体の筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量に関する身体パラメータ情報が入力される身体パラメータ情報入力部、
該身体パラメータ情報入力部により入力された被験者の身体部位の身体パラメータ情報を、被験者の身体的特徴を反映させた仮想人体モデルの対応する身体部位に割り当てる身体パラメータ情報割当部、
前記身体パラメータ情報割当部により仮想人体モデルの身体部位に割り当てられた身体パラメータ情報に基づいて、仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントを算出する慣性モーメント算出部、
被験者の日常生活における身体動作を計測した結果に基づいて、被験者の身体部位の関節の角度、角速度および角加速度を算出する身体動作計測部と、
前記慣性モーメント算出部による仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントの算出結果と、前記身体動作計測部による被験者の日常生活における身体動作の計測結果とに基づいて、仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を算出する運動器作動力算出部、
前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を、被験者の日常生活における身体動作に係る上半身側と下半身側、または右半身側と左半身側の少なくともいずれかの身体部位の運動器の作動力と推定して出力する運動器作動力出力部として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想人体モデルを用いて被験者の日常生活における運動器の作動力を推定する運動器作動力推定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日本等の先進国を中心に高齢化が進んでおり、平均寿命を延ばすことだけでなく、いかに健康に寿命を全うするかという健康寿命を延ばしていくことが重要になってきており、最近ではロコモティブシンドローム(運動器症候群:通称ロコモ)が注目されるようになってきた。
【0003】
このロコモティブシンドロームとは、骨、関節、筋肉、あるいは神経等の運動器を長期にわたり使い続けることにより、運動器に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態をいい、進行すると日常生活にも支障が生じることになる。特に、50歳以降に多発する入院治療が必要な運動器の障害により、要介護の状態や要介護リスクの高い状態となる人々が増えてきている。
【0004】
そこで、従来より、DEXA等の身体計測装置を用いて、被験者の体重、筋肉量、体脂肪量などのパラメータを計測して、それらのパラメータを分析することが行われている。ただ、DEXA等の身体計測装置では、被験者の体重、筋肉量、体脂肪量などのパラメータを単に計測するに止まるため、運動器に障害が生じるかどうかを十分に示唆することができなかった。
【0005】
一方、高齢になると、多くの人の筋肉は痩せ、筋力が衰えるが、このように加齢によって筋肉が減少する疾患としてサルコペニアも注目されている。このサルコペニアは、1989年にRosenbergによって「加齢による筋肉量減少」を意味する用語として提唱され、当初は骨格筋肉量の減少を定義としていたが、徐々に筋力低下、機能低下も含まれるようになった。このサルコペニアは年々増えてきており、このことは今後、ますます要介護者が増加して、それに伴い個人の生活レベルの低下、社会の医療介護費負担の増加が予想される。
【0006】
そこで、従来より、被験者の筋力を計測する装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。これによれば被験者の筋力を経時的に計測していくことにより、上述の身体計測装置によるパラメータの計測結果と相まって、運動器に障害が生じることをさらに具体的に示唆することができる。特に特許文献1には、下肢の筋力を測定する装置が開示されているが、このように高齢者にとっては上半身よりも下半身、特に下肢の筋力を測定することは、運動器の障害を生じることを示唆するのに非常に有効である。また、特許文献3では、仮想人体モデルを用いて筋力の推定を試みている装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−33517号公報
【特許文献2】特開2013−169448号公報
【特許文献3】特開2003−116822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、筋力測定システムは、あくまでも被験者が最大努力で行ったタスク(例えば、全力で立ち上がる)における筋力を測定することにより運動器の作動力を推定しており、日常生活における身体動作(例えば、自然な力で立ち上がる)よりも過剰な力を入れて行った際の身体動作における運動器の作動力を推定している。そのため、測定された筋力は日常生活における身体動作を行う際の筋力とは乖離したものであり、被験者にとって重要な日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を推定しているものではなかった。また、これまでの仮想人体モデルを用いた筋力推定装置では、筋力推定の計算において重要となる質量に関する身体パラメータとして単に体重や身体寸法比などの身体の表面的な情報から一般的に知られている関係式に基づいて算出した数値で運動器の作動力を推定している。そのため、被験者個々の体格の違い(例えば、身体の筋肉量や脂肪量の左右差が大きい人、上半身と下半身で筋肉の衰え方に大きな差がある人など)を考慮した評価を行うことは困難であった。そのため、高齢者の身体能力を適切に評価し、運動器に生じる不具合を十分に示唆するまでには至っていなかった。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、被験者の日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を推定することができる運動器作動力推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、 仮想人体モデルを用いて被験者の日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を推定する運動器作動力推定システムであって、被験者の一ないし複数の身体部位の少なくとも右脚、左脚、胴体または少なくとも右腕、左腕、胴体の筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量に関する身体パラメータ情報が入力される身体パラメータ情報入力部と、該身体パラメータ情報入力部により入力された被験者の身体部位の身体パラメータ情報を、仮想人体モデルの対応する身体部位に割り当てる身体パラメータ情報割当部と、前記身体パラメータ情報割当部により仮想人体モデルの身体部位に割り当てられた身体パラメータ情報に基づいて、仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントを算出する慣性モーメント算出部と、被験者の日常生活における身体動作を計測する身体動作計測部と、前記慣性モーメント算出部による仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントの算出結果と、前記身体動作計測部による被験者の日常生活における身体動作の計測結果とに基づいて、仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を算出する運動器作動力算出部と、前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を、被験者の日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力と推定して出力する運動器作動力出力部とを備えることを特徴とする。なお、以下、本発明における筋肉情報とは、筋肉量、筋肉率、除脂肪量、除脂肪率、筋質(筋肉の面積、筋肉の密度等)等を前提としている。脂肪情報とは脂肪量、脂肪率、内臓脂肪レベル、皮下脂肪の厚み等を前提としている。また、質量に関する身体パラメータ情報は、少なくとも右脚、左脚、胴体または少なくとも右腕、左腕、胴体の骨情報および/または体水分情報に基づくものとしてもよい。
【0011】
これによれば、被験者の日常生活における身体動作に係る運動器の作動力を推定することができる。しかも、被験者の少なくとも右脚、左脚、胴体または少なくとも右腕、左腕、胴体の筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量に関する身体パラメータ情報に基づいて作動力を推定するので、例えば、身体の筋肉量や脂肪量の左右差が大きい人、上半身と下半身で筋肉の衰え方に大きな差がある人などを考慮した評価を行うことができる。なお、身体部位の運動器の作動力として、身体部位の関節トルク、力、コリオリ力、遠心力、重力、運動量、角運動量、撃力、運動エネルギー、位置エネルギー、力積、仕事、重心位置などが挙げられる。
【0012】
また、前記仮想人体モデルは、身体部位が中実または中空の円柱、円錐台、円錐、カプセル型、楕円体、球体、トーラス体、立方体、直方体、多角柱、くさび、および/または角錐などのプリミティブな形状、多角形あるいはそれらを組み合わせた形状で近似されてもよい。これによれば、仮想人体モデルの身体部位の運動器の作動力を簡単に算出することができる。
【0013】
また、前記身体パラメータ情報割当部は、身体パラメータ情報入力部により入力された被験者の身体部位の身体パラメータ情報を、仮想人体モデルの対応する身体部位に対して各身体部位の体積、面積、密度、長さ、あるいは径の比率に応じて割り当ててもよい。これによれば、身体パラメータ情報入力部により身体パラメータ情報が入力された被験者の身体部位と、仮想人体モデルの身体部位とが一致しない場合であっても、仮想人体モデルの身体部位の運動器の作動力を簡単に算出することができる。
【0014】
また、前記身体動作計測部は、被験者の身体動作から被験者の身体部位の位置および/または角度の時間的変化を計測し、被験者の該身体部位の位置および/または角度の時間的変化に基づいて、被験者の該身体部位の関節の角度、角速度および角加速度を算出してもよい。これによれば、被験者の日常生活における身体動作を計測することができる。
【0015】
また、前記運動器作動力算出部は、下式により仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を算出してもよい。
τ:運動器の作動力
M(q):慣性項
C(q、q’):コリオリ・遠心力項
G(q):重力項
E(q、q’):外力項
q:身体部位の関節の位置/角度ベクトル
q’:身体部位の関節の速度/角速度ベクトル
q”:身体部位の関節の加速度/角加速度ベクトル
【0016】
これによれば、仮想人体モデルの身体部位の運動器の作動力を算出することができる。
【0017】
また、前記運動器作動力算出部は、身体部位の運動器の作動力を被験者または身体部位の質量、体積、面積、密度、長さ、径、あるいはそれらの積により正規化してもよい。これによれば、各被験者または身体部位の身体的特徴を考慮して、仮想人体モデルの身体部位の運動器の作動力を算出することができる。
【0018】
また、前記運動器作動力出力部は、被験者の日常生活における身体動作に従って、前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を時系列的に出力してもよい。これによれば、運動器の作動力がどの段階でどの程度の大きさが必要なのかを把握することができる。
【0019】
また、前記運動器作動力出力部は、前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の最大または最小の運動器の作動力を出力してもよい。これによれば、被験者の運動器を作動するのに必要な作動力を発揮できている度合いを把握することができる。
【0020】
また、前記運動器作動力出力部は、前記運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を右半身側と左半身側、および/または上半身側と下半身側に分けて出力してもよい。これによれば、被験者の右半身側と左半身側、および/または上半身側と下半身側の運動器の作動力のバランスを把握することができる。
【0021】
また、前記運動器作動力出力部は、運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を、重力項に関する情報を差し引いた状態、あるいは除算した状態、あるいは請求項6に記載の重力項に関する情報と併せた状態で出力してもよい。これによれば、身体部位の運動器の作動力を、重力項に関する情報を差し引いた状態、あるいは除算した状態で出力した場合、被験者の体重等の影響を除外した身体部位の運動器の作動力を把握することができる。また、身体部位の運動器の作動力を、重力項に関する情報と併せた状態で出力した場合、被験者の体重等と比較しながら身体部位の運動器の作動力を把握することができる。
【0022】
また、前記運動器作動力算出部は、運動器作動力算出部により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を仮想人体モデルとともに出力してもよい。これによれば、被験者の身体部位がどの程度の大きさの力を発揮したかを一目で確認でき、どの身体部位が弱っているかなどを容易に発見できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被験者の日常生活における身体動作に係る運動器の作動力を推定することができる。しかも、被験者の少なくとも右脚、左脚、胴体または少なくとも右腕、左腕、胴体の筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量に関する身体パラメータ情報に基づいて作動力を推定するので、例えば、身体の筋肉量や脂肪量の左右差が大きい人、上半身と下半身で筋肉の衰え方に大きな差がある人などを考慮した評価を行うことができる。
【0024】
このため、被験者に対して、将来、運動器の機能低下が生じる可能性があることを的確に示唆し得るため、それに応じて被験者が早い段階から所定のトレーニングや治療を行うことによって、サルコペニア等の疾患を減少させたり、被験者の筋力の低下を抑えることができ、ひいては個人の生活レベルの向上、社会の医療介護費負担の軽減を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る運動器作動力推定システムの構成概略図である。
図2】仮想人体モデルを示す図である。
図3】簡易な形状で近似した仮想人体モデルの身体部位を示す図である。
図4図1の運動器作動力推定システムの動作を示すフローチャートである。
図5】実施例1に係る仮想人体モデルにおける7リンクモデルを示す図である。
図6】各被験者の右股関節、左股関節の関節トルクの推移を示す図である。
図7】各被験者の右膝関節、左膝関節の関節トルクの推移を示す図である。
図8】各被験者の胴体の関節トルクの推移を示す図である。
図9】各被験者の股関節、膝関節および胴体の最大関節トルクを示す図である。
図10】各被験者の股関節、膝関節および胴体の最大関節トルクを各被験者の体重で正規化した最大関節トルクを示す図である。
図11】実施例2に係る仮想人体モデルにおける3リンクモデルを示す図である。
図12】各被験者の右股関節の関節トルクおよび重力項の推移を示す図である。
図13】各被験者の右股関節の関節トルクの絶対値および重力項の推移を示す図である。
図14】各被験者の右股関節の関節トルクの絶対値と重力項の差分の推移を示す図である。
図15】実施例2における慣性項M(q)の具体的な計算式を示す図である。
図16】実施例2におけるコリオリ・遠心力項C(q、q’)の具体的な計算式を示す図である。
図17】実施例2における重力項G(q)の具体的な計算式を示す図である。
図18】実施例2における各記号の具体的な定義を示す図である。
図19】実施例3に係る仮想人体モデルの表示画面を示す図である。
図20】DEXAによる実測から得られた脚の質量と体重をもとに身体各部の重量比から推定された脚の重さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係る運動器作動力推定システム(以下、本システムという)の実施形態について図1図20を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、身体部位の運動器の作動力として身体部位の関節トルクを推定する場合について説明する。
【0027】
本システムは、図1に示すように、所定の仮想人体モデルを用いて被験者の日常生活における身体動作に係る身体部位の運動器の作動力を推定するシステムであって、身体パラメータ情報入力部10、身体パラメータ情報割当部20、慣性モーメント算出部30、身体動作計測部40、運動器作動力算出部50、並びに運動器作動力出力部60を備えている。
【0028】
なお、本システムは、PC、タブレット端末、スマートフォン、あるいは専用端末などの情報端末により実現され、記憶媒体またはネットワークを介して所定のプログラムがインストールされることにより機能する。
【0029】
前記身体パラメータ情報入力部10は、被験者の右腕、左腕、右脚、左脚、あるいは胴体などの各身体部位における身体パラメータ情報を入力する。この身体パラメータ情報は、
身体部位の少なくとも左脚、右脚、胴体または少なくとも左腕、右腕、胴体の筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量に関する身体パラメータ情報が含まれ、例えばDEXA等の身体計測装置により計測される。なお、被験者の身体部位は、上述のように右腕、左腕、右脚、左脚、あるいは胴体の区分けに限定されるものではなく、右上腕および右前腕のようにさらに細分化した区分けでもよい。
【0030】
前記身体パラメータ情報割当部20は、被験者の身体部位の身体パラメータ情報を仮想人体モデルの対応する身体部位に割り当てる。なお、本実施形態では、被験者の身体部位の筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量に関する身体パラメータ情報を用いる場合について説明する。
【0031】
この仮想人体モデルとは、図2に示すように、被験者の身体的特徴を反映させた仮想の人体モデルであり、所定の身体部位ごとに分かれた状態となっている。この仮想人体モデルは、あらかじめ準備された性別および/あるいは年齢別の平均的な仮想人体モデルを用いてもよいし、あるいは被験者の身体を実際に計測して作成した仮想人体モデルを用いてもよい。また、この仮想人体モデルは、後に運動器の関節トルクを算出し易くするために、例えば腕や脚の身体部位は円柱、円錐台、円錐、カプセル型、楕円体、球体であって、足甲の身体部位は直方体、立方体、多角柱、くさび、角錐、球体、円柱といったように、プリミティブな形状、多角形あるいはそれらを組み合わせた形状で近似するとよい。
【0032】
この被験者の身体部位の身体パラメータ情報を仮想人体モデルの対応する身体部位に割り当てるに際して、被験者の身体部位と仮想人体モデルの身体部位が互いに一致している場合、例えば、被験者の身体部位が右上腕であり、仮想人体モデルの身体部位も右上腕である場合、被験者の身体部位の身体パラメータ情報をそのまま仮想人体モデルの対応する身体部位に割り当てる。
【0033】
一方、被験者の身体部位と仮想人体モデルの身体部位が一致していない場合、例えば、被験者の身体部位が右腕全体であり、仮想人体モデルの身体部位が右上腕および右前腕に分かれている場合、被験者の身体部位のパラメータ情報を仮想人体モデルの身体部位に対して各身体部位の体積、面積、密度、長さ、あるいは径の比率に応じて割り当てる。
【0034】
例えば、身体部位の体積の比率(以下、体積比という))を用いる場合、図3(a)に示すように、仮想人体モデルの身体部位(例えば腕など)を円柱として近似し、中実の密度が一様であると仮定すると、仮想身体モデルの各身体部位の体積Viは下式から求められる。
【0035】
[式1]
Ri:身体部位の半径(実測した身体部位の上端の半径と下端の半径の平均値)
Li:身体部位のリンク長
i:身体部位のリンク番号
【0036】
このため、被験者の右腕全体の筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量がm(右腕全体)とすると、被験者の右前腕の筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量m(右前腕)は、体積比に応じて下式から求められる。
【0037】
[式2]
【0038】
また、図3(b)に示すように、仮想人体モデルの身体部位(例えば足甲など)を直方体として近似し、中実の密度が一様であると仮定すると、仮想身体モデルの各身体部位の体積Viは下式から求められる。
【0039】
[式3]
ai:身体部位のリンク長
bi:身体部位のリンク幅
ci:身体部位のリンク高
i:身体部位のリンク番号
【0040】
このように、被験者のその他の身体部位についても、同様にして被験者の身体部位のパラメータ情報を仮想人体モデルの身体部位に対して各身体部位の体積比に応じて割り当てるとよい。
【0041】
なお、被験者の身体部位の体積を算出するに際して、上述のように身体部位が中実の状態であると仮定して体積を算出したが、身体部位の内部の骨部分を除いた中空の状態であると仮定して体積を算出するなどしてもよい。また、上述のように身体部位が円柱または直方体であると仮定して体積を算出したが、身体部位の実際の形状にさらに近い形状(例えば、円錐台など)と仮定して体積を算出してもよいし、あるいは被験者の身体部位を実際にスキャニングすることにより身体部位の正確な体積を算出してもよい。
【0042】
前記慣性モーメント算出部30は、仮想人体モデルの身体部位に割り当てられた少なくとも質量に関する身体パラメータ情報に基づいて、仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントを算出する。
【0043】
この仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントの算出方法の一例について説明すると、図3に示すように、仮想人体モデルの身体部位の中点に質量重心位置があると仮定した場合、直交する3つの対象軸を持つ身体部位の座標軸(x軸、y軸、z軸)に対する慣性行列Iは下式から求められる。
【0044】
[式4]
:身体部位を構成する小片の個数
ki:小片の質量
ki、yki、zki:小片の重心座標
【0045】
例えば、身体部位(例えば腕など)を円柱と仮定した場合、y軸回りの慣性モーメントIは、下式から求められる。
【0046】
[式5]
【0047】
また、身体部位(例えば足甲)を直方体と仮定した場合、y軸回りの慣性モーメントIは、下式から求められる。
【0048】
[式6]
【0049】
仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントの算出方法については上述のものに限定されるものではなく、実際には人体の形状は単純な円柱でないため、身体部位の断面を楕円板とし楕円板の集合体として近似する方法や、円錐台として近似する方法などを用いてもよい。
【0050】
また、仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントの算出に際して、筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量に関する身体パラメータ情報を用いたが、筋肉情報や脂肪情報に加えて、骨情報や体水分情報等に基づく質量に関する身体パラメータ情報を用いてもよい。なお、骨情報とは、骨面積、骨塩量、骨塩率等である。また、体水分情報とは、体水分量(血液量、リンパ液、細胞外液、細胞内液等の量)、体水分率等である。
【0051】
また、仮想人体モデルの身体部位の中点に質量重心位置があると仮定したが、身体部位の形状の近似から解析的に質量重心位置を算出したり、統計情報に基づいて質量重心位置を算出してもよい。
【0052】
前記身体動作計測部40は、被験者の日常生活における身体動作を計測する。この被験者の日常生活における身体動作として、立ち上がり動作、歩行動作、片脚立ち動作、スクワット動作が挙げられる。このとき身体動作計測部40は、Kinectセンサー等により被験者の身体動作から被験者の身体部位の3次元位置および/または角度を計測し、それら被験者の身体部位の3次元位置および/または角度の時間的変化に基づいて逆動力学により被験者の身体部位の姿勢を求めるとともに、四次のルンゲクッタ法などの微分の手法を用いて被験者の身体部位の関節の角度q、角速度q’および角加速度q”を算出する。なお、身体動作計測部40は、各部10〜30、50、60と同一装置で構成されてもよいし、あるいは別の装置で構成されてもよい。また、身体部位の3次元位置および/または角度の時間的変化を用いるものとしたが、2次元位置および/または角度の時間的変化を用いてもよい。
【0053】
前記運動器作動力算出部50は、慣性モーメント算出部30による仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントの算出結果と、身体動作計測部40による被験者の日常生活における身体動作の計測結果とに基づいて、仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の関節トルクを例えば逆動力学的に算出する。この身体部位の関節トルクは、定式化して算出する方法や、数値シミュレーションで算出する方法が考えられる。
【0054】
本実施形態では、前記運動器作動力算出部50は、加速度項、コリオリ・遠心力項、重力項、外力項(床や椅子からの反力など)を用いて下式により身体部位の関節のトルクτを算出する。
【0055】
[式7]
τ:運動器の作動力(関節トルク)
M(q):慣性項
C(q、q’):コリオリ・遠心力項
G(q):重力項
E(q、q’):外力項
q:身体部位の関節の位置/角度ベクトル
q’:身体部位の関節の速度/角速度ベクトル
q”:身体部位の関節の加速度/角加速度ベクトル
【0056】
また、慣性項M(q)、コリオリ・遠心力項C(q、q’)、重力項G(q)、外力項E(q、q’)は下式により表される。なお、nは自由度を表わし、( )は転置行列を示す。
【0057】
[式8]
【0058】
なお、運動器作動力算出部50は、身体部位の関節トルクをそのまま算出してもよいが、重力項Gを差し引いた状態で身体部位の関節トルクを算出してもよい。また、身体部位の関節トルクを被験者または身体部位の質量、体積、面積、密度、長さ、径、あるいはそれらの積により正規化してもよい。
【0059】
前記運動器作動力出力部60は、運動器作動力算出部50により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体部位の関節トルクτを、被験者の日常生活における運動器の作動力と推定して出力する。なお、本実施形態では、関節トルクのみを算出したが、関節力、コリオリ力、遠心力、重力、運動量、角運動量、撃力、運動エネルギー、位置エネルギー、力積、仕事、重心位置などを、被験者の日常生活における運動器の作動力と推定して出力してもよい。
【0060】
例えば、図6〜8、12〜14に示すように、被験者の日常生活における身体動作に従って、身体部位の関節トルクを時系列的に出力した場合、運動器の作動力がどの段階でどの程度の大きさが必要なのかを把握することができる。また、図9、10に示すように、身体部位の最大の関節トルクを出力した場合、被験者の運動器を作動するのに必要な最大の作動力を把握することができる。また、図9、10に示すように、右半身側の身体部位の関節トルクと左半身側の身体部位の関節トルクを対比して表示した場合、右半身側と左半身側の運動器の作動力のバランスを把握することができる。なお、本実施形態では、右半身側と左半身側の運動器の作動力のバランスを把握するものとしたが、それと共に、またはそれに代えて、上半身側と下半身側の運動器の作動力のバランスを把握してもよい。また、最大の関節トルクを出力したが、最小の関節トルクを出力してもよい。
【0061】
次に本システムの動作について図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0062】
まず、前記身体パラメータ情報入力部10が、被験者の右腕、左腕、右脚、左脚、あるいは胴体などの各身体部位における身体パラメータ情報を入力する(S1)。
【0063】
そして、前記身体パラメータ情報割当部20が、被験者の身体部位の身体パラメータ情報を仮想人体モデルの対応する身体部位に割り当てる(S2)。
【0064】
そして、前記慣性モーメント算出部30が、仮想人体モデルの身体部位に割り当てられた少なくとも筋肉情報および/または脂肪情報に基づく質量に関する身体パラメータ情報に基づいて、仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントを算出する(S3)。
【0065】
そして、前記身体動作計測部40が、被験者の日常生活における身体動作を計測する(S4)。
【0066】
そして、前記運動器作動力算出部50が、慣性モーメント算出部30による仮想人体モデルの身体部位の慣性モーメントの算出結果と、身体動作計測部40による被験者の日常生活における身体動作の計測結果とに基づいて、仮想人体モデルの日常生活における身体動作に係る身体部位の関節トルクを例えば逆動力学的に算出する(S5)。
【0067】
そして、前記運動器作動力出力部60が、運動器作動力算出部50により算出された仮想人体モデルの日常生活における身体部位の関節トルクτを、被験者の日常生活における運動器の作動力として出力する(S6)。このとき、左半身の身体部位(例えば、左股関節、左膝関節等)と右半身の身体部位(例えば、右股関節、右膝関節等)に分けて関節トルクτを運動器の作動力として出力したり、上半身の身体部位(例えば、胴体部)と下半身の身体部位(例えば、脚部)に分けて関節トルクτを運動器の作動力として出力ことが挙げられる。
【実施例】
【0068】
<実施例1>
本実施例では、44歳男性、78歳男性並びに74歳女性の実際の被験者を対象として、図5に示すように、各被験者の右足、右下腿、右大腿、左足、左下腿、左大腿および胴体の7つの身体部位に係る7リンクモデルを想定し、椅子に座っている状態から立ち上がるという日常生活における身体動作についてシミュレーションを行い、各被験者の右股関節、左股関節、右膝関節、左膝関節および胴体の関節トルクを算出した。
【0069】
また、 本シミュレーションでは、動作解析ソフトOpenSimを用い、Delp, S.L., Loan, J.P., Hoy, M.G., Zajac, F.E., Topp E.L., Rosen, J.M.: An inter active graphics-based model of the lower extremity to study orthopaedic surgical procedures, IEEE Transactions on Biomedical Engineering, vol. 37, pp. 757-767, 1990.、Yamaguchi G.T., Zajac F.E.: A planar model of the knee joint to characterize the knee extensor mechanism, Journal of Biomechanics, vol. 22. pp. 1-10, 1989.、Anderson F.C., Pandy M.G.: A dynamic optimization solution for vertical jumping in three dimensions, Computer Methods in Biomechanics and Biomedical Engineerin g, vol. 2, pp. 201-231, 1999.、Anderson F.C., Pandy M.G.: Dynamic optimization of human walking, Journal of Bio mechanical Engineering, vol. 123, pp. 381-390, 2001.、Delp S.L., Anderson F.C., Arnold A.S., Loan P., Habib A., John C.T., Guendelman E., Thelen D.G.: OpenSim: Open-source Software to Create and Analyze Dynamic Sim ulations of Movement, IEEE Transactions on Biomedical Engineering, vol. 54, No. 11, pp. 1940-1950, 2007.等に記載されているDelpらによって、開発された筋骨格モデルを基にして、7リンクモデルを構築し、シミュレーションを行った。
【0070】
なお、本実施例のその他の設定事項については、下記のとおりである。
・床や椅子からの反力はないものとした。
・被験者の身体部位の筋肉情報、脂肪情報、骨情報、体水分情報に基づき得られた質量はDEXAによる測定から得た。
・仮想人体モデルの身体部位のリンク長やリンク径を被験者ごとに測定した。
・仮想人体モデルの身体部位の足部は直方体として近似するとともに、足部以外は円柱として近似して体積を算出した。
・質量重心位置を仮想人体モデルの身体部位のリンク長の半分と定義した。
【0071】
而して、シミュレーションの結果、各被験者の立ち上がり動作における右股関節および左股関節の関節トルクは、図6に示すように推移した。また、各被験者の立ち上がり動作における右膝関節および左膝関節の関節トルクは、図7に示すように推移した。また、各被験者の立ち上がり動作における胴体の関節トルクは、図8に示すように推移した。なお、図6図8に示す関節トルクはカットオフ周波数3Hzのローパスフィルタ処理を行っている。
【0072】
また、各被験者の立ち上がり動作における右股関節および左股関節の最大関節トルクは、図9(a)に示すとおりとなった。また、各被験者の立ち上がり動作における右膝関節および左膝関節の最大関節トルクは、図9(b)に示すとおりとなった。また、各被験者の立ち上がり動作における胴体の最大関節トルクは、図9(c)に示すとおりとなった。
【0073】
また、各被験者の立ち上がり動作における右股関節および左股関節の最大関節トルクを各被験者の体重により正規化すると、図10(a)に示すとおりとなった。また、各被験者の立ち上がり動作における右膝関節および左膝関節の最大関節トルクを各被験者の体重により正規化すると、図10(b)に示すとおりとなった。また、各被験者の立ち上がり動作における胴体の最大関節トルクを各被験者の体重により正規化すると、図10(c)に示すとおりとなった。
【0074】
<実施例2>
本実施例では、44歳男性、78歳男性並びに74歳女性の実際の被験者を対象として、図11に示すように、各被験者の胴体、右大腿、右下腿の身体部位に係る3リンクモデルを想定し、椅子に座っている状態から立ち上がるという日常生活における身体動作についてシミュレーションを行い、各被験者の右股関節の関節トルクτを算出した。
【0075】
また、本シミュレーションでは、Nacy S.M., Hassan S.S., Hanna M.Y.: A MODIFIED DYNAMIC MODEL OF THE HUMAN LOWER LIMB DURING COMPLETE GAIT CYCLE, International Journal of Mechanical Engineering and Robotics Research, vol. 2, No. 2, pp. 8-19, 2013.に記載されているモデルを参考として、シミュレーションを行った。
【0076】
なお、本実施例のその他の設定事項については、下記のとおりである。
・床や椅子からの反力はないものとした。
・被験者の身体部位の筋肉情報、脂肪情報、骨情報、体水分情報に基づき得られた質量はDEXAによる測定から得た。
・仮想人体モデルの身体部位のリンク長やリンク径を被験者ごとに測定した。
・仮想人体モデルの身体部位の足部は直方体として近似するとともに、足部以外は円柱として近似して体積を算出した。
・質量重心位置を仮想人体モデルの身体部位のリンク長の半分と定義した。
【0077】
なお、本実施例における関節トルクτの算出に用いた慣性項M(q)、コリオリ・遠心力項C(q、q’)、重力項G(q)、外力項E(q、q’)並びに各記号の定義を図15図18に示す。
【0078】
而して、シミュレーションの結果、各被験者の立ち上がり動作における右股関節の関節トルクτは、図12の実線に示すように推移した。また、各被験者の立ち上がり動作における右股関節の関節トルクτの重力項G(q)は、図12の点線に示すように推移した。なお、図12に示す関節トルクτはカットオフ周波数3Hzのローパスフィルタ処理を行っている。
【0079】
また、各被験者の立ち上がり動作における右股関節の関節トルクτの絶対値は、図13の実線に示すように推移した。なお、図13では、関節トルクτの重力項G(q)も併せた状態で表示している。
【0080】
また、各被験者の立ち上がり動作における右股関節の関節トルクτの絶対値と重力項G(q)の差分は、図14の実線に示すように推移した。
【0081】
<実施例3>
本実施例では、実施例1、実施例2のような方法で算出した評価結果をより直感的に把握しやすくするために、図19に示すように、例えば、仮想人体モデルの各部位に円などを描画し、被験者が発揮した力(関節トルクなど)の大きさに応じて色を変更する。これによれば、被験者の身体部位がどの程度の大きさの力を発揮したかを一目で確認でき、どの身体部位が弱ってきているかなどを容易に発見できる。
また、実施例2で示したように重力項Gを被験者が動作を行うのに最低限必要なトルクを「最低必要発揮力」とし、被験者が発揮した関節トルク「あなたの発揮力」とともに表示する。これによれば、個々の被験者の体格に基づく最低限日常生活に必要な力(関節トルクなど)をどの程度上回っているかを確認でき、被験者が日常生活の動作をどの程度余裕を持って行うことができているかをより直感的に理解することができる。
さらに、得られた「あなたの発揮力」が「最低必要発揮力」を上回った度合いなどの発揮力に関する情報を得点に換算することで、身体能力の度合いをより理解しやすくできる。
【0082】
<実施例4>
本実施例では、44歳男性、78歳男性並びに74歳女性の実際の被験者を対象として、図20に示すように、DEXAによる実測から得られた各被験者の筋肉情報、脂肪情報、骨情報、体水分情報に基づき得られた脚の質量と特許文献3で用いられている体重と身体寸法データから推定する手法によって得られた脚の重さとの比較を行った。体重と身体寸法データからの推定では、「岡田ら;「日本人高齢者の身体部分慣性特性」、バイオメカニズム13」の質量比を用いて体重から脚の重さの推定を行った。
図20(a)のようにDEXAによる実測から得られた各被験者の筋肉情報、脂肪情報、骨情報、体水分情報に基づき得られた脚の質量においては、左脚と右脚の質量の左右差がみられる。それに対して、特許文献3で用いられている体重と質量比のデータから推定する手法を用いた場合には、脚の質量に左右差があらわれず、図20(b)のとおりである。
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
10…身体パラメータ情報入力部
20…身体パラメータ情報割当部
30…慣性モーメント算出部
40…身体動作計測部
50…運動器作動力算出部
60…運動器作動力出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図19
図20