(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[眼鏡レンズ]
本発明の一態様にかかる眼鏡レンズは、青色光吸収性化合物を含むレンズ基材と膜厚1.0〜10.0nmのクロム層を含む多層膜とを有し、青色光カット率が21.0%以上であり、眼鏡レンズの物体側表面において測定される主波長が500.0〜550.0nmの範囲であり、かつ眼鏡レンズの眼球側表面において測定される主波長が500.0〜550.0nmの範囲である眼鏡レンズである。
【0012】
本発明および本明細書における用語の定義および/または測定方法を、以下に説明する。
【0013】
「物体側表面」とは、眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に物体側に位置する表面であり、「眼球側表面」とは、その反対、即ち眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に眼球側に位置する表面である。面形状に関して、一態様では、物体側表面は凸面であり、眼球側表面は凹面である。ただし、この態様に限定されるものではない。
【0014】
「青色光吸収性化合物」とは、400〜500nmの波長域に吸収を有する化合物をいう。
【0015】
「青色光カット率」とは、日本医用光学機器工業会の規格にしたがって、下記式1により求められる。
(式1)
青色光カット率C
b=1−τ
b
【0016】
式1中、τ
bは、日本医用光学機器工業会の規格に規定されている眼に有害な青色光の重み付き透過率であり、下記式2により算出される。式2中、WB(λ)は、重み付け関数であり、下記式3により算出される。τ(λ)は、分光光度計により測定される波長λnmにおける透過率である。したがって、青色光カット率C
bには、吸収による青色光のカット率と反射による青色光のカット率が合算されている。
【0019】
式3中、E
sλ(λ)は、太陽光の分光放射照度であり、B(λ)はブルーライトハザード関数である。E
sλ(λ)、B(λ)およびWB(λ)は、JIS T 7333付属書Cに記載されている。E
sλ(λ)、B(λ)およびWB(λ)を用いて値を算出する場合、分光光度計による測定は、1〜5nmの測定波長間隔(ピッチ)で、少なくとも波長380nmから500nmまで行うものとする。
【0020】
「主波長」とは、人の眼で感じる光の色の波長を数値化した指標であり、JIS Z 8701にしたがって測定される。
【0021】
後述の「視感反射率」は、JIS T 7334:2011にしたがい測定され、「視感透過率」は、JIS T 7333 :2005にしたがい測定される。
【0022】
後述の眼鏡レンズの物体側表面において測定される波長400〜500nmの波長域における平均反射率は、物体側表面から直入射する光(即ち入射角度が0°)に対する平均反射率であって、眼鏡レンズの物体側から分光光度計を用いて波長400〜500nmの波長域で測定される反射率の算術平均である。後述の眼鏡レンズの眼球側表面において測定される波長400〜500nmの波長域における平均反射率は、眼球側表面から直入射する光に対する平均反射率であって、眼鏡レンズの眼球側から分光光度計を用いて波長400〜500nmの波長域で測定される反射率の算術平均である。測定にあたり、測定波長間隔(ピッチ)は、任意に設定可能である。例えば、1〜5nmの範囲で設定することができる。以下において、波長400〜500nmの波長域における平均反射率を、「青色光反射率」とも記載する。
【0023】
本発明および本明細書において、「膜厚」は、物理膜厚である。膜厚は、公知の膜厚測定法によって求めることができる。例えば膜厚は、光学式膜厚測定器によって測定された光学膜厚を物理膜厚に換算することにより求めることができる。
【0024】
以下、上記眼鏡レンズについて、更に詳細に説明する。
【0025】
<青色光カット率>
上記眼鏡レンズの青色光カット率は、21.0%以上である。青色光カット率が21.0%以上の眼鏡レンズによれば、この眼鏡レンズを備えた眼鏡を装用者が装用することにより、装用者の眼に入射する青色光の光量を低減し、装用者の眼への青色光による負担を軽減することができる。青色光カット率は、21.5%以上であることが好ましく、22.0%以上であることがより好ましく、22.5%以上であることが更に好ましく、23.0%以上であることが一層好ましく、23.5%以上であることがより一層好ましく、24.0%以上であることが更により一層好ましい。また、青色光カット率は、例えば50.0%以下、40.0%以下または30.0%以下であることができる。ただし、装用者の眼に入射する青色光の光量を低減する観点からは青色光カット率は高いほど好ましいため、上記に例示された上限を超えてもよい。
【0026】
<主波長>
上記眼鏡レンズは、物体側表面および眼球側表面においてそれぞれ測定される主波長が500.0〜550.0nmの範囲である。500.0〜550.0nmは緑色光の波長域であるため、両表面において500.0〜550.0nmの波長域に主波長を有する眼鏡レンズは、いずれの表面側から観察されても緑色の干渉色を呈することができる。一般的な眼鏡レンズは反射防止膜を有するが、通常の反射防止膜は、人の眼が違和感を感じ難い緑色の干渉色を呈するように設計されている。したがって、両表面においてそれぞれ測定される波長が500.0〜550.0nmの範囲である上記眼鏡レンズは、通常の眼鏡レンズと同様の外観を呈することができる。上記眼鏡レンズの各表面において測定される主波長は、500.0〜550.0nmの範囲内であればよい。一態様では、上記眼鏡レンズの各表面において測定される主波長は、例えば510.0nm以上であることができる。また、一態様では、上記眼鏡レンズの各表面において測定される主波長は、例えば540.0nm以下であることもできる。
【0027】
上記眼鏡レンズが21.0%以上の青色光カット率を有しつつ両表面においてそれぞれ測定される主波長が500.0〜550.0nmの範囲であることには、レンズ基材が青色光吸収性化合物を含むこと、および上記眼鏡レンズが多層膜の中の一層としてクロム層を含む多層膜を有することが寄与し得る。上記レンズ基材および上記多層膜について、詳細は後述する。
【0028】
<レンズ基材>
上記眼鏡レンズに含まれるレンズ基材は、青色光吸収性化合物を含むものである限り、特に限定されない。レンズ基材は、プラスチックレンズ基材またはガラスレンズ基材であることができる。ガラスレンズ基材は、例えば無機ガラス製のレンズ基材であることができる。レンズ基材としては、軽量で割れ難く、かつ青色光吸収性化合物の導入が容易であるという観点から、プラスチックレンズ基材が好ましい。プラスチックレンズ基材としては、(メタ)アクリル樹脂をはじめとするスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する硬化性組成物を硬化した硬化物(一般に透明樹脂と呼ばれる。)を挙げることができる。硬化性組成物は、重合性組成物ともいうことができる。なおレンズ基材としては、染色されていないもの(無色レンズ)を用いてもよく、染色されているもの(染色レンズ)を用いてもよい。レンズ基材の屈折率は、例えば、1.60〜1.75程度であることができる。ただしレンズ基材の屈折率は、上記範囲に限定されるものではなく、上記の範囲内でも、上記の範囲から上下に離れていてもよい。本発明および本明細書において、屈折率とは、波長500nmの光に対する屈折率をいうものとする。また、レンズ基材は、屈折力を有するレンズ(いわゆる度付レンズ)であってもよく、屈折力なしのレンズ(いわゆる度なしレンズ)であってもよい。
【0029】
上記眼鏡レンズは、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等の各種レンズであることができる。レンズの種類は、レンズ基材の両面の面形状により決定される。また、レンズ基材表面は、凸面、凹面、平面のいずれであってもよい。通常のレンズ基材および眼鏡レンズでは、物体側表面は凸面、眼球側表面は凹面である。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0030】
(青色光吸収性化合物)
上記レンズ基材は、青色光吸収性化合物を含む。このことが、上記眼鏡レンズに21.0%以上の青色光カット率をもたらすことができる理由の1つである。青色光吸収性化合物は、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、インドール化合物等の青色光の波長域に吸収を有する各種化合物を挙げることができ、好ましい青色光吸収性化合物としてはベンゾトリアゾール化合物およびインドール化合物を挙げることができ、より好ましい青色光吸収性化合物としてはベンゾトリアゾール化合物を挙げることができる。ベンゾトリアゾール化合物としては、下記式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
【0032】
式(1)において、Xは、共鳴効果を付与する基を表す。Xの置換位置は、好ましくはトリアゾール環の5位である。
Xの例としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、スルホ基、カルボキシ基、ニトリル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基が挙げられ、これらの中でも、塩素原子、臭素原子、フッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0033】
式(1)において、R
2は、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、アルキル基およびアルコキシ基のそれぞれについて、炭素数1〜8が好ましく、炭素数2〜8がより好ましく、炭素数4〜8が更に好ましい。
アルキル基およびアルコキシ基は、分岐であっても直鎖であってもよい。アルキル基およびアルコキシ基の中でも、アルキル基が好ましい。
【0034】
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、n−オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられ、これらの中でも、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、および1,1,3,3−テトラメチルブチル基から選ばれる少なくとも1種が好ましく、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、および1,1,3,3−テトラメチルブチル基がより好ましく、tert−ブチル基が更に好ましい。
【0035】
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、へプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基が挙げられ、これらの中でもブトキシ基、またはエトキシ基が好ましい。
式(1)において、R
2の置換位置は、ベンゾトリアゾリル基の置換位置を基準として、3位,4位または5位が好ましい。
【0036】
式(1)において、R
1は、炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、これらの具体例としては、R
2について挙げた上記例のうち炭素数が適合するものが挙げられる。これらの中でもメチル基またはエチル基が好ましい。
【0037】
式(1)において、mは0または1の整数を表す。
【0038】
式(1)において、R
2の置換位置は、ベンゾトリアゾリル基の置換位置を基準として、5位が好ましい。
【0039】
nはR
3の価数を表し、1または2である。
【0040】
式(1)において、R
3は、水素原子、または炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。nが1の場合、R
3は水素原子を表し、nが2の場合、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。
【0041】
R
3で表される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基が挙げられる。R
3で表される炭化水素基の炭素数は、炭素数1〜8であり、炭素数1〜3であることが好ましい。
R
3で表される2価の炭化水素基の例としては、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ベンゼンジイル基、トルエンジイル基等が挙げられ、これらの中でもメタンジイル基が好ましい。
【0042】
式(1)において、R
3の置換位置は、ベンゾトリアゾリル基の置換位置を基準として、3位が好ましい。
【0043】
R
3は、好ましくは水素原子であり、この場合nは1である。
【0044】
ベンゾトリアゾール化合物は、好ましくは、下記式(1−1)で示されるベンゾトリアゾール化合物である。
【0046】
式(1−1)において、R
1、R
2、mは、それぞれ上記と同義であり、例示および好ましい態様も上記と同様である。
【0047】
式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2−ヒドロキシフェニル]、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−(tert−ブチル)−2−ヒドロキシフェニル]、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル]、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル]、メチレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−エトキシ−2−ヒドロキシフェニル]、フェニレンビス[3−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2−ヒドロキシフェニル]、および下記式(1−1)で表されるベンゾトリアゾール化合物の具体例が挙げられる。
【0048】
式(1−1)で表されるベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−エチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジエチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(4−エトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、および5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0049】
上記の中でも、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−エチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(4−エトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、および2−(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0050】
上記レンズ基材は、例えば、レンズ基材を構成する樹脂(または樹脂を得るための重合性化合物)100質量部に対して、青色光吸収性化合物を0.05〜3.00質量部含むことができ、0.05〜2.50質量部含むことが好ましく、0.10〜2.00質量部含むことがより好ましく、0.30〜2.00質量部含むことが更に好ましい。ただし、眼鏡レンズの青色光カット率を21.0%以上とすることができればよいため、上記範囲の含有量に限定されるものではない。青色光吸収性化合物を含むレンズ基材の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、硬化性組成物を硬化してレンズ形状の成形品としてレンズ基材を得る方法において、硬化性組成物に青色光吸収性化合物を添加することにより、青色光吸収性化合物を含むレンズ基材を得ることができる。または、一般にレンズ基材の染色方法として用いられる各種湿式または乾式の方法により、レンズ基材に青色光吸収性色素を導入することができる。例えば、湿式の方法の一例としてはディップ法(浸漬法)を挙げることができ、乾式の方法の一例としては昇華染色法を挙げることができる。
【0051】
また、上記レンズ基材には、眼鏡レンズのレンズ基材に一般に含まれることがある各種添加剤が含まれていてもよい。例えば、レンズ基材を、重合性化合物と青色光吸収性化合物を含む硬化性組成物を硬化して成形する場合、かかる硬化性組成物に、例えば、特開平7−063902号公報、特開平7−104101号公報、特開平9−208621号公報、特開平9−255781号公報等に記載されている重合触媒、特開平1−163012号公報、特開平3−281312号公報等に記載されている内部離型剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、ブルーイング剤等の添加剤の一種以上を添加してもよい。これら添加剤の種類および添加量、ならびに硬化性組成物を用いるレンズ基材の成形方法については、公知技術を適用することができる。
【0052】
<多層膜>
上記眼鏡レンズは、膜厚1.0〜10.0nmのクロム層を含む多層膜を有する。以下において、膜厚1.0〜10.0nmのクロム層を含む多層膜を、「クロム層入り多層膜」とも記載し、その他の多層膜を「他の多層膜」とも記載する。
クロム層入り多層膜は、眼鏡レンズの物体側表面上に位置することができ、眼球側表面上に位置することもでき、両表面上に位置することもできる。また、一態様では、眼鏡レンズの眼球側表面および物体側表面の一方の表面上にクロム層入り多層膜が位置し、他方の表面上に他の多層膜が位置することができる。他の一態様では、眼鏡レンズの眼球側表面および物体側表面の一方の表面上にクロム層入り多層膜が位置し、他方の表面上にはクロム層入り多層膜も他の多層膜も位置しないこともあり得る。一態様では、クロム層入り多層膜は、眼鏡レンズの少なくとも物体側表面上に位置することができ、物体側表面上のみに位置することもできる。クロム層入り多層膜および他の多層膜は、いずれもレンズ基材の表面上に直接位置してもよく、一層以上の他の層を介して間接的にレンズ基材の表面上に位置してもよい。レンズ基材と多層膜との間に形成され得る層としては、例えば、偏光層、調光層、ハードコート層等を挙げることができる。ハードコート層を設けることにより眼鏡レンズの耐久性(強度)を高めることができる。ハードコート層は、例えば硬化性組成物を硬化した硬化層であることができる。ハードコート層の詳細については、例えば特開2012−128135号公報の段落0025〜0028、0030を参照できる。また、レンズ基材と上記多層膜との間には、密着性向上のためのプライマー層を形成してもよい。プライマー層の詳細については、例えば特開2012−128135号公報の段落0029〜0030を参照できる。
【0053】
(クロム層入り多層膜)
本発明および本明細書において、「クロム層」は、任意の成膜方法によってクロム(Cr)を堆積させて形成された膜を意味し、成膜時に不可避的に混入する不純物および成膜を補助するために任意に使用される公知の添加剤を除けば、クロム(クロム元素の単体、即ち金属クロム)からなる膜である。例えば、クロム層は、膜の質量に対して90〜100質量%をクロムが占める膜であり、95〜100質量%をクロムが占める膜であることもできる。成膜方法としては、公知の成膜方法を用いることができる。成膜の容易性の観点からは、成膜は蒸着により行うことが好ましい。即ち、クロム層は、クロム蒸着膜であることが好ましい。蒸着膜とは、蒸着によって成膜された膜を意味する。本発明および本明細書における「蒸着」には、乾式法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が含まれる。真空蒸着法では、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。以上の点は、下記の高屈折率層および低屈折率層の成膜についても同様である。
【0054】
クロム層入り多層膜に含まれるクロム層は、膜厚が1.0〜10.0nmである。以下において、膜厚1.0〜10.0nmのクロム層を、単にクロム層とも記載する。眼鏡レンズの透過率(例えば視感透過率)の観点からは、クロム層の膜厚は9.0nm以下であることが好ましく、8.0nm以下であることがより好ましく、7.0nm以下であることが更に好ましく、6.0nm以下であることが一層好ましく、5.0nm以下であることがより一層好ましく、4.0nm以下であることが更に一層好ましく、3.0nm以下であることが更により一層好ましい。また、クロム層の膜厚は、クロム層による青色光等の様々な波長の光の吸収効率の観点から1.0nm以上であり、1.1nm以上であることが好ましい。クロム層入り多層膜には、膜厚1.0〜10.0nmのクロム層が一層のみ含まれることが好ましいが、一態様では、かかるクロム層が二層以上に分割されて、分割された層の間に他の層が存在していることもあり得る。この場合、二層以上に分割されたクロム層の合計膜厚が1.0〜10.0nmである。
【0055】
クロム層入り多層膜は、高屈折率層と低屈折率層が交互に積層された多層膜の中にクロム層を含む多層膜であることが好ましい。本発明および本明細書において、「高屈折率」および「低屈折率」に関する「高」、「低」とは、相対的な表記である。即ち、高屈折率層とは、同じ多層膜に含まれる低屈折率層より屈折率が高い層をいう。換言すれば、低屈折率層とは、同じ多層膜に含まれる高屈折率層より屈折率が低い層をいう。高屈折率層を構成する高屈折率材料の屈折率は、例えば1.60以上(例えば1.60〜2.40の範囲)であり、低屈折率層を構成する低屈折率材料の屈折率は、例えば1.59以下(例えば1.37〜1.59の範囲)であることができる。ただし上記の通り、高屈折率および低屈折率に関する「高」、「低」の表記は相対的なものであるため、高屈折率材料および低屈折率材料の屈折率は、上記範囲に限定されるものではない。
【0056】
高屈折率材料および低屈折率材料としては、無機材料、有機材料または有機・無機複合材料を用いることができ、成膜性等の観点からは無機材料が好ましい。即ち、クロム層入り多層膜は、無機多層膜であることが好ましい。具体的には、高屈折率層を形成するための高屈折率材料としては、ジルコニウム酸化物(例えばZrO
2)、タンタル酸化物(Ta
2O
5)、チタン酸化物(例えばTiO
2)、アルミニウム酸化物(Al
2O
3)、イットリウム酸化物(例えばY
2O
3)、ハフニウム酸化物(例えばHfO
2)、およびニオブ酸化物(例えばNb
2O
5)からなる群から選ばれる酸化物の一種または二種以上の混合物を挙げることができる。一方、低屈折率層を形成するための低屈折率材料としては、ケイ素酸化物(例えばSiO
2)、フッ化マグネシウム(例えばMgF
2)およびフッ化バリウム(例えばBaF
2)からなる群から選ばれる酸化物またはフッ化物の一種または二種以上の混合物を挙げることができる。なお上記の例示では、便宜上、酸化物およびフッ化物を化学量論組成で表示したが、化学量論組成から酸素またはフッ素が欠損もしくは過多の状態にあるものも、高屈折率材料または低屈折率材料として使用可能である。
【0057】
好ましくは、高屈折率層は高屈折率材料を主成分とする膜であり、低屈折率層は低屈折率材料を主成分とする膜である。ここで主成分とは、膜において最も多くを占める成分であって、通常は膜の質量に対して50質量%程度〜100質量%、更には90質量%程度〜100質量%を占める成分である。上記高屈折率材料または低屈折率材料を主成分とする成膜材料(例えば蒸着源)を用いて成膜を行うことにより、そのような膜(例えば蒸着膜)を形成することができる。なお成膜材料に関する主成分も、上記と同様である。膜および成膜材料には、不可避的に混入する不純物が含まれる場合があり、また、主成分の果たす機能を損なわない範囲で他の成分、例えば他の無機物質や成膜を補助する役割を果たす公知の添加成分が含まれていてもよい。成膜は、公知の成膜方法により行うことができ、成膜の容易性の観点からは、蒸着により行うことが好ましい。
【0058】
高屈折率層の膜厚および低屈折率層の膜厚は、層構成に応じて決定することができる。詳しくは、多層膜に含まれる層の組み合わせ、および各層の膜厚は、高屈折率層および低屈折率層を形成するための成膜材料の屈折率と、多層膜を設けることにより眼鏡レンズにもたらしたい所望の反射特性および透過特性に基づき、公知の手法による光学的シミュレーションにより決定することができる。
クロム層入り多層膜の層構成としては、例えば、レンズ基材側からレンズ最表面側に向かって、
第一層(高屈折率層)/第二層(クロム層)/第三層(低屈折率層)/第四層(高屈折率層)/第五層(低屈折率層)の順に積層された構成;
第一層(低屈折率層)/第二層(高屈折率層)/第三層(低屈折率層)/第四層(高屈折率層)/第五層(クロム層)/第六層(低屈折率層)/第七層(高屈折率層)/第八層(低屈折率層)、
等を挙げることができる。なお、上記の層構成の例示において、「/」との表記は、「/」の左に記載されている層と右に記載されている層が隣接する場合と、「/」の左に記載されている層と右に記載されている層の間に後述する導電性酸化物層が存在す場合とを包含する意味で用いられている。
【0059】
クロム入り多層膜に含まれる低屈折率層と高屈折率層の組み合わせの好ましい一例としては、ケイ素酸化物を主成分とする膜(低屈折率層)とジルコニウム酸化物を主成分とする膜(高屈折率層)との組み合わせを挙げることができる。
【0060】
クロム層入り多層膜は、以上説明したクロム層、高屈折率層および低屈折率層に加えて、導電性酸化物を主成分とする層(導電性酸化物層)、好ましくは導電性酸化物を主成分とする蒸着源を用いる蒸着により形成された導電性酸化物の蒸着膜の一層以上を、多層膜の任意の位置に含むこともできる。この点は、他の多層膜についても同様である。なお導電性酸化物層に関して記載する主成分についても、上記と同様である。
導電性酸化物層としては、眼鏡レンズの透明性の観点から、膜厚10.0nm以下の酸化インジウムスズ(tin−doped indium oxide;ITO)層、膜厚10.0nm以下のスズ酸化物層、および膜厚10.0nm以下のチタン酸化物層が好ましい。酸化インジウムスズ(ITO)層とは、ITOを主成分として含む層である。この点は、スズ酸化物層、チタン酸化物層についても同様である。クロム層入り多層膜および他の多層膜は、導電性酸化物層を含むことにより、眼鏡レンズが帯電し塵や埃が付着することを防ぐことができる。なお本発明および本明細書において、クロム層入り多層膜および他の多層膜に含まれる「高屈折率層」および「低屈折率層」としては、膜厚10.0nm以下の酸化インジウムスズ(ITO)層、膜厚10.0nm以下のスズ酸化物層、および膜厚10.0nm以下のチタン酸化物層は考慮されないものとする。即ち、これらの層の一層以上がクロム層入り多層膜または他の多層膜に含まれる場合であっても、これらの層は「高屈折率層」または「低屈折率層」とは見做さないものとする。膜厚10.0nm以下の上記の導電性酸化物層の膜厚は、例えば0.1nm以上であることができる。
【0061】
(他の多層膜)
上記眼鏡レンズが、物体側表面および眼球側表面の一方の表面上にクロム層入り多層膜を有し、他方の表面上に他の多層膜を有する場合、他の多層膜としては、眼鏡レンズに反射防止膜として通常設けられる多層膜を形成することが好ましい。反射防止膜としては、可視光(380〜780nmの波長域の光)に対して反射防止効果を発揮する多層膜を挙げることができる。そのような多層膜の構成は公知である。また、他の多層膜は、例えば無機多層膜であることができる。他の多層膜は、例えば、高屈折率層と低屈折率層が交互に合計3〜10層積層された多層膜であることができる。高屈折率層および低屈折率層の詳細は、先に記載した通りである。他の多層膜に含まれる低屈折率層と高屈折率層の組み合わせの好ましい一例としては、ケイ素酸化物を主成分とする膜(低屈折率層)とジルコニウム酸化物を主成分とする膜(高屈折率層)との組み合わせを挙げることができる。
【0062】
更に、クロム層入り多層膜上および/または他の多層膜上には、更なる機能性膜を形成することもできる。そのような機能性膜としては、撥水性または親水性の防汚膜、防曇膜等の各種機能性膜を挙げることができる。これら機能性膜については、いずれも公知技術を適用することができる。
【0063】
<眼鏡レンズの反射特性、透過特性>
(青色光反射率)
先に記載したように、レンズ基材の表面上に青色光を強く反射する性質を有する多層膜を設けると、この多層膜を有する側の眼鏡レンズ表面の外観が青みを呈してしまう。これに対し、上記眼鏡レンズは、レンズ基材に青色光吸収性化合物を含むこと、および先に記載したクロム層入り多層膜を有することにより、眼鏡レンズ表面における青色光反射率を高くすることを要さずに21.0%以上の青色光カット率を実現することができる。上記眼鏡レンズは、眼鏡レンズの物体側表面において測定される青色光反射率および眼球側表面において測定される青色光反射率の少なくとも一方(好ましくは両方)が、2.00%以下であることが好ましく、2.00%未満であることがより好ましく、1.50%以下であることが更に好ましく、1.00%以下であることが一層好ましい。上記青色光反射率は、例えば0.10%以上であることができるが、これを下回ってもよい。
【0064】
(視感反射率)
眼鏡レンズの外観品質向上の観点からは、眼鏡レンズの物体側表面において測定される視感反射率は低いことが好ましい。また、眼鏡レンズの装用感向上の観点からは、眼鏡レンズの眼球側表面において測定される視感反射率は低いことが好ましい。外観品質向上の観点からは、眼鏡レンズの物体側表面において測定される視感反射率は1.80%以下であることが好ましく、1.50%以下であることがより好ましく、1.30%以下であることがより好ましい。一方、装用感向上の観点からは、眼鏡レンズの眼球側表面において測定される視感反射率は1.80%以下であることが好ましく、1.50%以下であることがより好ましく、1.30%以下であることがより好ましい。
眼鏡レンズの物体側表面において測定される視感反射率および眼球側表面において測定される視感反射率は、それぞれ、例えば0.10%以上、0.20%以上、0.30%以上、0.40%以上、または0.50%以上であることができるが、上記の下限は例示であって、これらに限定されるものではない。レンズ基材の物体側表面上および/または眼球側表面上に設けられるクロム層入り多層膜または他の多層膜の膜設計によって、上記視感反射率を実現することができる。膜設計は、公知の方法による光学的シミュレーションによって行うことができる。
【0065】
(視感透過率)
上記眼鏡レンズは、一態様では、高い視感透過率を有する透明性に優れた眼鏡レンズであることができる。上記眼鏡レンズの視感透過率は、好ましくは80.0%以上であり、より好ましくは85.0%以上である。また、上記眼鏡レンズの視感透過率は、例えば95.0%以下であり、90.0%以下であることもできる。クロム層入り多層膜に含まれるクロム層を薄膜(詳しくは膜厚1.0〜10.0nm)とすることにより、視感透過率を大きく下げることなく先に記載した青色光カット率および主波長を実現することができる。
【0066】
[眼鏡]
本発明の更なる態様は、上記の本発明の一態様にかかる眼鏡レンズを備えた眼鏡に関する。この眼鏡に含まれる眼鏡レンズの詳細については、先に記載した通りである。上記眼鏡レンズは、かかる眼鏡レンズを備えることにより、眼鏡装用者の眼への青色光による負担を軽減することができる。また、上記眼鏡は、眼鏡レンズの両表面で測定される主波長が500〜550nmの範囲であるため、一般的な眼鏡レンズと同様に緑色の干渉色を呈することができる。フレーム等の眼鏡の構成については、特に制限はなく、公知技術を適用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
(1)青色光吸収性化合物を含むレンズ基材(レンズ基材A)の作製
ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド100.00質量部、青色光吸収性化合物である2−(3−tertブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール0.40質量部を攪拌混合した後、触媒としてテトラ−n−ブチルホスホニュウムブロマイド0.05質量部を添加し、10mmHgの減圧下で3分間攪拌混合し、レンズ用モノマー組成物(硬化性組成物)を調製した。次いで、このレンズ用モノマー組成物を、予め準備したガラス製モールドと樹脂製ガスケットから構成されるレンズ成型用鋳型(0.00D、肉厚2.0mmに設定)の中に注入し、炉内温度20℃〜100℃の電気炉中で20時間かけて重合を行った。重合終了後、ガスケットおよびモールドを取り外した後、110℃で1時間熱処理してプラスチックレンズ(レンズ基材A)を得た。得られたレンズ基材Aは、物体側表面が凸面、眼球側表面が凹面、屈折率は1.60であった。
【0069】
(2)多層膜の成膜
レンズ基材Aの両表面を光学的に加工(研磨)して光学面とした後に、両表面上にそれぞれ膜厚3000nmのハードコート層(硬化性組成物を硬化した硬化層)を形成した。
物体側のハードコート層表面上および眼球側のハードコート層表面上に、それぞれ、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着により表1に示す構成の多層蒸着膜を成膜した。
こうして、物体側にクロム層入り多層膜を有し、眼球側に他の多層膜(クロム層を含まない)を有する実施例1の眼鏡レンズを得た。
本実施例では、凸面側、凹面側とも、多層蒸着膜は、レンズ基材側(ハードコート層側)から眼鏡レンズの表面側に向かって、1層、2層・・・の順に積層し、眼鏡レンズ表面側の最外層が表1中の最下欄に記載の層になるように形成した。また、本実施例では、不可避的に混入する可能性のある不純物を除けば表1に示す酸化物またはクロムからなる蒸着源(成膜材料)を使用して成膜を行った。各酸化物の屈折率および各層の膜厚を表1に示す。これらの点は、後述の実施例および比較例についても同様である。
【0070】
[実施例2]
レンズ基材Aの両表面を光学的に加工(研磨)して光学面とした後に、両表面上にそれぞれ膜厚3000nmのハードコート層(硬化性組成物を硬化した硬化層)を形成した。
物体側のハードコート層表面上および眼球側のハードコート層表面上に、それぞれ、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着により表2に示す構成の多層蒸着膜を成膜した。
こうして、物体側にクロム層入り多層膜を有し、眼球側に他の多層膜(クロム層を含まない)を有する実施例2の眼鏡レンズを得た。
【0071】
[比較例1]
レンズ基材Aの両表面を光学的に加工(研磨)して光学面とした後に、両表面上にそれぞれ膜厚3000nmのハードコート層(硬化性組成物を硬化した硬化層)を形成した。
物体側のハードコート層表面上および眼球側のハードコート層表面上に、それぞれ、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着により表3に示す構成の多層蒸着膜を成膜した。
こうして、物体側および眼球側に他の多層膜(クロム層を含まない)を有する比較例1の眼鏡レンズを得た。
【0072】
[比較例2]
レンズ基材Aの両表面を光学的に加工(研磨)して光学面とした後に、両表面上にそれぞれ膜厚3000nmのハードコート層(硬化性組成物を硬化した硬化層)を形成した。
物体側のハードコート層表面上および眼球側のハードコート層表面上に、それぞれ、アシストガスとして酸素ガスおよび窒素ガスを用いて、イオンアシスト蒸着により表4に示す構成の多層蒸着膜を成膜した。
こうして、物体側および眼球側に他の多層膜(クロム層を含まない)を有する比較例2の眼鏡レンズを得た。
【0073】
表1〜表4に記載の膜厚は、光学式膜厚測定器によって測定された光学膜厚を物理膜厚に換算して求めた値(単位:nm)である。各層の厚みは成膜時間によって制御した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
[評価方法]
<1.眼鏡レンズの青色光カット率、視感透過率>
実施例および比較例の各眼鏡レンズの直入射透過分光特性を、日立製作所製分光光度計U4100を用いて、眼鏡レンズの物体側の表面側(凸面側)から物体側表面の光学中心に光を入射させて波長380nmから780nmまで1nmピッチで測定した。
測定結果を用いて、先に記載した方法により、青色光カット率および視感透過率を求めた。
【0079】
<2.眼鏡レンズの物体側表面および眼球側表面において測定される青色光反射率および視感反射率>
実施例および比較例の各眼鏡レンズの物体側から、物体側表面(凸面側)の光学中心における直入射反射分光特性を測定した。
測定結果を用いて、先に記載した方法により400〜500nmの波長域における物体側表面における青色光反射率および視感反射率を、それぞれ求めた。
また、実施例および比較例の各眼鏡レンズの眼球側から、眼球側表面(凹面側)の光学中心における直入射反射分光特性を測定した。
測定結果を用いて、先に記載した方法により400〜500nmの波長域における眼球側表面における青色光反射率および視感反射率を、それぞれ求めた。
上記測定は、オリンパス社製レンズ反射率測定器USPM−RUを用いて行った(測定ピッチ:1nm)。
【0080】
<3.主波長>
上記2.で眼鏡レンズの物体側表面について得られた直入射反射分光特性の測定結果を用いて、JIS Z 8701にしたがい眼鏡レンズの物体側表面において測定される主波長を求めた。
また、上記2.で眼鏡レンズの眼球側表面について得られた直入射反射分光特性の測定結果を用いて、JIS Z 8701にしたがい眼鏡レンズの眼球側表面において測定される主波長を求めた。
【0081】
<4.干渉色>
実施例および比較例の各眼鏡レンズを、観察者が眼鏡レンズの物体側(凸面側)から目視で観察して干渉色を確認した。
【0082】
以上の結果を、表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
最後に、前述の各態様を総括する。
【0085】
一態様によれば、青色光吸収性化合物を含むレンズ基材と膜厚1.0〜10.0nmのクロム層を含む多層膜とを有し、青色光カット率が21.0%以上であり、眼鏡レンズの物体側表面において測定される主波長が500.0〜550.0nmの範囲であり、かつ眼鏡レンズの眼球側表面において測定される主波長が500.0〜550.0nmの範囲である眼鏡レンズが提供される。
【0086】
上記眼鏡レンズは、青色光による眼への負担を軽減することができ、かつ通常の眼鏡レンズと同様の外観を呈することができる。
【0087】
一態様では、上記眼鏡レンズは、レンズ基材の物体側表面上および眼球側表面上に多層膜が位置し、上記クロム層を含む多層膜が、レンズ基材の物体側表面上に位置する多層膜である。
【0088】
一態様によれば、上記眼鏡レンズを備えた眼鏡が提供される。
【0089】
本明細書に記載の各種態様は、任意の組み合わせで2つ以上を組み合わせることができる。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。