(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかる系統構成決定支援装置を適用した系統構成決定支援システムについて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる系統構成決定支援システムの機能構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる系統構成決定支援システムは、設備状態情報収集部101、設備状態情報記憶部102、系統構成計画部103、系統構成表示部104、および系統構成制御部105を有する。
【0010】
設備状態情報収集部101は、設備状態情報を取得する取得部として機能する。ここで、設備状態情報は、電力系統に含まれる送配電設備の劣化状態(例えば、送配電設備の劣化の度合い)および設備の運用状況などに関する情報である。本実施形態では、設備状態情報収集部101は、電力系統に含まれる送配電設備等の外部装置から、設備状態情報を取得する。または、設備状態情報収集部101は、外部装置から、送配電設備の点検に関する点検情報(例えば、送配電設備の点検日)、送配電設備の監視結果を示す遠隔監視情報等を取得し、取得した点検情報および遠隔監視情報等に基づいて、設備状態情報を推定することも可能である。
【0011】
また、送配電設備において設備状態情報が更新されるタイミングが異なることが考えられるため、設備状態情報収集部101は、各送配電設備の設備状態情報の同期を取っても良い。具体的には、設備状態情報収集部101は、ある送配電設備の設備状態情報が更新されたタイミングが、予め設定されたタイミングと異なる場合、当該取得した設備状態情報に基づいて、予め設定されたタイミングにおける当該送配電設備の劣化状態を推定する。ここで、予め設定されたタイミングは、他の送配電設備の設備状態情報が更新されるタイミングである。そして、設備状態情報収集部101は、推定した劣化状態を示す情報を、当該送配電設備の設備状態情報として取得する。
【0012】
設備状態情報記憶部102は、設備状態情報収集部101により取得された設備状態情報を記憶する記憶部である。本実施形態では、設備状態情報記憶部102は、送配電設備の劣化の度合い(以下、劣化度合いと言う)に加えて、送配電設備の劣化進展特性を含む情報を設備状態情報として記憶する。ここで、劣化進展特性は、送配電設備の使用が開始された使用開始時点から、送配電設備が寿命を迎えて更新が必要となる更新時期までの送配電設備の劣化進行の特性である。また、設備状態情報記憶部102は、送配電設備の定格、電力系統内における送配電設備の位置等を設備状態情報として記憶することも可能である。
【0013】
系統構成計画部103は、設備状態情報記憶部102に記憶される設備状態情報に基づいて、後述する系統構成制御部105によって電力系統の構成(例えば、電力系統に含まれる送電ルートが有する回線の使用方法、電力系統に含まれる送配電設備に電力を供給する発電所の出力電力、送配電設備への電力の潮流を調整可能な潮流調整設備の設定値)を変更して、送配電設備が寿命を迎える時期を調整する変更部の一例として機能する。本実施形態では、系統構成計画部103は、電力系統の構成を変更して、送配電設備の負荷率を変化させることにより、送配電設備が寿命を迎える時期を調整する。これにより、電力系統が含む送配電設備が寿命を迎える時期が調整可能となるので、送配電設備の長寿命化を図ったり、送配電設備毎に、寿命を迎える時期を変えたりすることが可能となる。
【0014】
本実施形態では、系統構成計画部103は、設備状態情報記憶部102に記憶される設備状態情報に基づいて、電力系統の構成を変更しているが、設備状態情報収集部101により取得された設備状態情報に基づいて、電力系統の構成を変更するものであれば良い。したがって、系統構成計画部103は、設備状態情報記憶部102に設備状態情報が十分に記憶されていない場合や系統構成決定支援システムが設備状態情報記憶部102を有しない場合には、設備状態情報収集部101により最後に取得された設備状態情報(言い換えると、最新の設備状態情報)に基づいて、電力系統の構成を変更することも可能である。
【0015】
また、本実施形態では、送配電設備が寿命を迎える時期を、送配電設備が寿命を迎えて更新が必要となる更新時期とする。この場合、系統構成計画部103は、送配電設備の更新時期を調整して、送配電設備の更新件数を時期的に平準化する。これにより、送配電設備の更新時期が特定の時期に集中して、送配電設備の更新に要するコストの増大、作業人員および交換機種の手配の困難化を招く可能性を低減できる。さらに、電力系統の供給信頼度の観点から、同時期に多数の送配電設備が更新のために停止することを防止できるので、電力系統の供給信頼度の低下を防止できる。
【0016】
具体的には、系統構成計画部103は、系統構成候補作成部103a、系統潮流計算部103b、設備更新時期推定部103c、および系統構成判定部103dを有する。系統構成候補作成部103aは、設備状態情報に基づいて、電力系統の構成の候補(以下、系統構成候補と言う)を作成する。例えば、系統構成候補作成部103aは、電力系統内の送電ルートをランダムに切り替えて、送配電設備の負荷率を変化させた複数の系統構成候補を作成する。そして、系統構成候補作成部103aは、メタヒューリスティクス等の最適化手法によって、複数の系統構成候補の中から、送配電設備毎に、その更新時期を異ならせることが可能な解候補を生成する。
【0017】
系統潮流計算部103bは、生成された解候補における電力の潮流を求め、求めた潮流を、電力系統において実現可能か否かを判断する。また、系統潮流計算部103bは、解候補における送配電設備の負荷率を算出する。
【0018】
設備更新時期推定部103cは、解候補を電力系統において実現可能であると判断した場合、解候補における送配電設備の負荷率、送配電設備の劣化度合い、および送配電設備の劣化進展特性に基づいて、解候補を電力系統において実現した場合の各送配電設備の更新時期を推定する。
【0019】
系統構成判定部103dは、設備更新時期推定部103cにより推定された各送配電設備の更新時期に基づいて、送配電設備の更新時期の集中が生じていないか否かを判断する。例えば、系統構成判定部103dは、予め設定された期間内に更新時期が来る送配電設備の数が所定数を超えた場合に、送配電設備の更新時期の集中が生じていると判断する。ここで、所定数は、予め設定された期間内において送配電設備の更新を実行可能な送配電設備の数の上限である。そして、系統構成判定部103dは、送配電設備の更新時期の集中が生じていないと判断した場合、解候補と一致するように、電力系統の構成を変更する。一方、送配電設備の更新時期の集中が生じていると判断した場合、系統構成判定部103dは、系統構成候補作成部103aに対して系統構成候補の再作成を指示する。
【0020】
本実施形態では、系統構成判定部103dは、解候補を実現した電力系統の供給信頼度や送配電損失等に応じて、解候補を電力系統の構成とするか否かを判断しても良い。例えば、系統構成判定部103dは、解候補を実現した電力系統の供給信頼度が予め設定された供給信頼度より低い場合、系統構成候補の再作成を指示する。一方、系統構成判定部103dは、解候補を実現した電力系統の供給信頼度が予め設定された供給信頼度以上である場合、解候補と一致するように、電力系統の構成を変更する。
【0021】
系統構成表示部104は、系統構成計画部103により変更した電力系統の構成を出力(表示)する出力部の一例として機能する。系統構成制御部105は、系統構成計画部103により変更した電力系統の構成となるように、電力系統内の遮断器や、開閉器などの各送配電設備に設備制御信号を出力して、当該各送配電設備を制御する。本実施形態では、系統構成制御部105が送配電設備を制御しているが、これに限定するものではなく、系統構成表示部104に表示された電力系統の構成を見た作業員が、変更した電力系統の構成となるように、手作業で送配電設備を操作しても良い。
【0022】
次に、
図2を用いて、本実施形態にかかる系統構成決定支援システムにおける電力系統の構成の変更処理の一例について説明する。
図2は、第1の実施形態にかかる系統構成決定支援システムにおける電力系統の構成の変更処理の一例を説明するための図である。
【0023】
ここでは、
図2に示すように、発電所Eと負荷Rの間に、複数の送電ルートA,Bを含む電力系統の構成の変更処理について説明する。送電ルートA,Bの劣化進展特性は、既知であるものとする。また、送電ルートA,Bが有する全ての回線を使用して、発電所Eから負荷Rへの電力の送電を行った場合、送電ルートA,Bが有する回線は、同じ時期に更新時期を迎えるものとする。これにより、電力系統を運用する送配電事業者による送配電設備の更新件数は、ある時期に集中的に発生することが予想される。
【0024】
そこで、本実施形態では、系統構成計画部103は、送電ルートA,Bの回線の使用方法を変更することにより、当該送電ルートA,Bの負荷率を変化させる。具体的には、系統構成計画部103は、一方の送電ルートAの電流の送電における回線の使用方法を、他方の送電ルートBの電流の送電における回線の使用方法と異ならせる。これにより、系統構成計画部103は、送電ルートAおよび送電ルートBそれぞれの負荷率を変化させて、送電ルートAおよび送電ルートBそれぞれの更新時期を調整する。
【0025】
例えば、送電ルートAが電力の送電に使用可能な回線を2つ有し、送電ルートBが電力の送電に使用可能な回線を1つ有する場合、系統構成計画部103は、送電ルートAの2つの回線を交互に使用して、発電所Eから負荷Rに対して電力を供給することで、送電ルートAの回線に対して平均的にかかる負荷率を、送電ルートBの回線にかかる負荷率より小さくする。これにより、送電ルートAの更新時期を送電ルートBの更新時期より遅らせて、送電ルートAの長寿命化を図る。また、系統構成計画部103は、送電ルートAにおいて電力の送電に使用する回線が減ったことによって、送電ルートBにかかる負荷率が大きくなるため、送電ルートBの劣化の進展が速まり、送電ルートBの更新時期が早まる。その結果、送電ルートA,Bの更新時期が集中することを防止できるので、送配電設備の更新件数を平準化でき、かつ送電ルートA,Bの更新に要する作業人員および交換機種の手配の容易化を図ることができる。
【0026】
次に、
図3〜6を用いて、発電所Eと負荷Rの間の送電ルートA,Bそれぞれの回線の使用方法を異ならせた場合における送電ルートA,Bそれぞれの更新時期の変化の一例について説明する。
図3,4は、第1の実施形態にかかる系統構成決定支援システムによって回線の使用方法を変更した送電ルートの更新時期の変化の一例を説明するための図である。
図3,4において、縦軸は、送電ルートA,Bの健全性指標を表し、横軸は、送電ルートA,Bの使用開始時点からの経過時間を表している。ここで、健全性指標は、送電ルートA,Bの絶縁性など、送電ルートA,Bが故障なく使用できる指標である。したがって、健全性指標は、送電ルートA,Bの劣化度合いが高くなるに従って、その値が低くなる。送電ルートA,Bの劣化進展特性は、既知であり、
図3,4に示す劣化特性曲線によって表される。
図5は、従来の送電ルートの時期毎の更新件数の一例を示す図である。
図6は、第1の実施形態にかかる系統構成決定支援システムによって送電ルートの回線の使用方法を異ならせた場合における送電ルートの時期毎の更新件数の一例を示す図である。
図5,6において、縦軸は、送電ルートの更新件数を表し、横軸は、送電ルートの更新時期を表している。
【0027】
送電ルートA,Bが有する全ての回線を使用して、発電所Eから負荷Rへ電力を送電し続けた場合、送電ルートAおよび送電ルートBは、
図3,4に示すように、同じ時期に、健全性指標が、更新判定閾値以下となり、更新時期を迎えることが想定される。ここで、更新判定閾値は、送電ルートA,Bの更新が必要と判断する健全性指標の閾値である。このように、送電ルートA,Bが同じ時期に更新時期を迎えると、
図5に示すように、電力系統を管理する送配電事業者による送配電設備の更新が、特定の時期(例えば、時期t1)に集中的に発生することが予想される。
【0028】
このような送配電設備の更新時期の集中を回避するため、系統構成計画部103は、送電ルートA,Bそれぞれの回線の使用方法を異ならせる。例えば、系統構成計画部103は、送電ルートAが有する2つの回線のうち、一方の回線を開放して、当該一方の回線によって送電を行わずに、送電ルートA,B共に1つの回線を使用して送電を行う電力系統の構成に変更する。その際、系統構成計画部103は、送電ルートAが有する2つの回線のうち送電を行う回線を、予め設定された期間(例えば、1年)毎に交互に切り換えるものとする。
【0029】
これにより、
図3に示すように、送電ルートAの2つの回線は、送電ルートBの回線と比較して、その負荷率が軽減されるため、劣化の進展が遅くなって更新時期が遅くなる。一方、
図4に示すように、送電ルートBの回線は、送電ルートAにおいて送電に使用される回線が減ることによって、その負荷率が高くなるため、更新時期が早まる。このように、送電ルートA,Bの更新時期を互いに異なる時期とすることで、
図6に示すように、送配電設備の更新時期を、送配電設備の更新件数が少ない時期(例えば、時期t2,t3)にシフトすることが可能となり、送配電設備の予め設定された時期毎の更新件数を平準化できる。
【0030】
このように、第1の実施形態にかかる系統構成決定支援システムによれば、電力系統が含む送配電設備が寿命を迎える時期が調整可能となるので、送配電設備の長寿命化を図ったり、送配電設備毎に、寿命を迎える時期を変えたりすることができる。
【0031】
(変形例)
本変形例は、発電所と発電所間の複数の送電ルートそれぞれの回線の使用方法を異ならせる例である。以下の説明では、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0032】
図7は、変形例にかかる系統構成決定支援システムにおける電力系統の構成の変更処理の一例を説明するための図である。ここでは、
図7に示すように、発電所Eと他の発電所E´の間に、複数の送電ルートA,Bを含む電力系統の構成の変更処理について説明する。発電所Eと他の発電所E´との間の送電ルートA,Bが有する全ての回線を使用して、発電所Eから他の発電所E´へ電力の送電を行った場合も、送電ルートA,Bは、同じ時期に更新時期を迎える。
【0033】
そこで、本変形例では、系統構成計画部103は、一方の送電ルートAの電流の送電における回線の使用方法を、他方の送電ルートBの電流の送電における回線の使用方法と異ならせる。これにより、系統構成計画部103は、送電ルートAおよび送電ルートBそれぞれの負荷率を変化させて、送電ルートAおよび送電ルートBそれぞれの更新時期を異ならせる。その結果、送電ルートA,Bの更新時期が集中することを防止できるので、送配電設備の更新件数を平準化でき、かつ送電ルートA,Bの更新に要する作業人員および交換機種の手配を容易化できる。
【0034】
(第2の実施形態)
本実施形態は、複数の送配電設備それぞれに電力を供給する発電所の出力電力を互いに異ならせることによって、送配電設備の負荷率を変化させる例である。以下の説明では、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0035】
図8は、第2の実施形態にかかる系統構成決定支援システムの機能構成の一例を示す図である。
図8に示すように、本実施形態にかかる系統構成決定支援システムは、設備状態情報収集部101、設備状態情報記憶部102、系統構成計画部801、系統構成表示部104、および系統構成制御部105を有する。
【0036】
本実施形態では、系統構成計画部801の系統構成候補作成部801aは、設備状態情報に基づいて、更新時期を異ならせる複数の送配電設備それぞれに電力を供給する発電所の出力電力を互いに異ならせた系統構成候補を作成する。ただし、発電所の出力電力は、電力系統における電力の需給のバランスが維持されるように時々刻々と調整する必要がある。そのため、系統構成候補作成部801aは、更新時期を異ならせる送配電設備に電力を供給する2以上の発電所の平均的な出力電力が異なるように、当該発電所の出力電力間にバイアスを加える。
【0037】
例えば、系統構成候補作成部801aは、更新時期を異ならせる複数の送配電設備それぞれに電力を供給する発電所の出力電力をランダムに異ならせた系統構成候補を作成する。その際、系統構成候補作成部801aは、発電所からの出力電力の変動によって電力の需給のバランスが崩れないように、発電所の出力電力の調整量の総和が0になるように、発電所の出力電力を調整するものとする。次いで、系統構成候補作成部801aは、メタヒューリスティクス等の最適化手法によって、複数の系統構成候補の中から、送配電設備毎に、その更新時期を異ならせることが可能な解候補を生成する。
【0038】
系統潮流計算部801bは、生成された解候補における発電所の出力電力に従って、当該解候補における電力の潮流を求める。そして、系統潮流計算部801bは、求めた潮流を、電力系統において実現可能か否かを判断する。また、系統潮流計算部801bは、解候補における送配電設備の負荷率を算出する。設備更新時期推定部103cおよび系統構成判定部103dにおいて実行される処理は、第1の実施形態と同様である。
【0039】
系統構成制御部105は、系統構成判定部103dによって、解候補を実現した電力系統において送配電設備の更新期間に集中が生じないと判断された場合、解候補が電力系統において実現されるように、当該電力系統内の送配電設備に対して設備制御信号を出力して、当該送配電設備を制御する。以上の処理により、系統構成計画部801は、複数の送配電設備それぞれに電力を供給する発電所の出力電力を互いに異ならせることによって、送配電設備の負荷率を変化させる。これにより、電力系統が含む送配電設備が寿命を迎える時期が調整可能となるので、発電所の出力電力を変更することによっても、送配電設備の長寿命化を図ったり、送配電設備毎に、寿命を迎える時期を変えたりすることができる。本実施形態では、系統構成制御部105が送配電設備を制御しているが、これに限定するものではなく、系統構成表示部104に表示された電力系統の構成を見た作業員が、変更した電力系統の構成となるように、手作業で送配電設備を操作しても良い。
【0040】
次に、
図9を用いて、本実施形態にかかる系統構成決定支援システムにおける電力系統の構成の変更処理の一例について説明する。
図9は、第2の実施形態にかかる系統構成決定支援システムにおける電力系統の構成の変更処理の一例を説明するための図である。
【0041】
ここでは、
図9に示すように、発電所E1と負荷Rとの間で電力を送電する送電ルートA、および発電所E2と負荷Rとの間で電力を送電する送電ルートBを含む電力系統の構成の変更処理について説明する。送電ルートA,Bの劣化進展特性は、既知であり、
図3,4に示す劣化特性曲線によって表される。したがって、発電所E1,E2の出力電力を変えずに送電ルートA,Bを使用して、発電所E1,E2から負荷Rへ電力を送電し続けた場合、送電ルートAおよび送電ルートBは、
図3,4に示すように、同じ時期に、健全性指標が更新判定閾値以下となり、更新時期を迎えることが想定される。このように、送電ルートA,Bが同じ時期に更新時期を迎えると、
図5に示すように、電力系統を管理する送配電事業者による送配電設備の更新が、特定の時期に集中的に発生することが予想される。
【0042】
そこで、系統構成計画部801は、発電所E1の出力電力を下げるとともに、発電所E2の出力電力を上げる。これにより、送電ルートAの負荷率を送電ルートBの負荷率よりも小さくし、送電ルートAの更新時期を送電ルートBの更新時期より遅らせて、送電ルートAの長寿命化を図る。一方、送電ルートBの負荷率は高くなるため、送電ルートBの劣化の進展が速まり、送電ルートBの更新時期が早まる。その結果、送電ルートAと送電ルートBの更新時期が集中することを防止できるので、送配電設備の更新件数を平準化でき、かつ送配電設備の更新に要する作業人員および交換機種の手配を容易化できる。
【0043】
このように、第2の実施形態にかかる系統構成決定支援システムによれば、電力系統が含む送配電設備が寿命を迎える時期が調整可能となるので、発電所の出力電力を変化させることによっても、送配電設備の長寿命化を図ったり、送配電設備毎に、寿命を迎える時期を変えたりすることができる。
【0044】
(第3の実施形態)
本実施形態は、送配電設備に設けられる潮流調整設備によって、送配電設備に対する潮流を調整することによって、送配電設備の負荷率を変化させる例である。以下の説明では、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0045】
本実施形態では、電力系統が有する送電ルートが、当該送電ルートに対する潮流を調整可能な潮流調整設備を有するものとする。潮流調整設備は、移相変圧器や、パワーエレクトロニクスを応用したFACTS(Flexible AC Transmission Systems)機器等、当該潮流調整設備が設けられた送電ルートの潮流を調整可能な設備である。また、潮流調整設備は、外部から入力される設定値に基づいて、送電ルートの潮流を調整する。
【0046】
図10は、第3の実施形態にかかる系統構成決定支援システムの機能構成の一例を示す図である。
図10に示すように、本実施形態にかかる系統構成決定支援システムは、設備状態情報収集部101、設備状態情報記憶部102、系統構成計画部1001、系統構成表示部104、および系統構成制御部105を有する。
【0047】
本実施形態では、系統構成計画部1001の系統構成候補作成部1001aは、設備状態情報に基づいて、潮流調整設備の設定値を変更して送電ルートの潮流を調整した系統構成候補を作成する。例えば、系統構成候補作成部1001aは、更新時期を異ならせる複数の送電ルートの潮流を潮流調整設備によってランダムに異ならせた系統構成候補を作成する。次いで、系統構成候補作成部1001aは、メタヒューリスティクス等の最適化手法によって、複数の系統構成候補の中から、送配電設備毎に、その更新時期を異ならせることが可能な解候補を生成する。
【0048】
系統潮流計算部1001bは、潮流調整設備により調整された送電ルートの潮流に従って、解候補における電力の潮流を求める。そして、系統潮流計算部1001bは、求めた潮流を、電力系統において実現可能か否かを判断する。また、系統潮流計算部1001bは、解候補における送配電設備の負荷率を算出する。設備更新時期推定部103cおよび系統構成判定部103dにおいて実行される処理は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
系統構成制御部105は、系統構成判定部103dによって、解候補を実現した電力系統において送配電設備の更新期間に集中が生じないと判断された場合、解候補が電力系統において実現されるように、当該電力系統内の潮流調整設備に対して設備制御信号を出力して、当該潮流調整設備を制御する。以上の処理により、系統構成計画部1001は、潮流調整設備によって、送配電設備に対する潮流を調整することによって、送配電設備の負荷率を変化させる。これにより、電力系統が含む送配電設備が寿命を迎える時期が調整可能となるので、潮流調整設備によって送配電設備に対する潮流を調整することによっても、送配電設備の長寿命化を図ったり、送配電設備毎に、寿命を迎える時期を変えたりすることができる。本実施形態では、系統構成制御部105が潮流調整設備を制御しているが、これに限定するものではなく、系統構成表示部104に表示された電力系統の構成を見た作業員が、変更した電力系統の構成となるように、手作業で潮流調整設備を操作しても良い。
【0050】
次に、
図11を用いて、本実施形態にかかる系統構成決定支援システムにおける電力系統の構成の変更処理の一例について説明する。
図11は、第3の実施形態にかかる系統構成決定支援システムにおける電力系統の構成の変更処理の一例を説明するための図である。
【0051】
ここでは、
図11に示すように、発電所Eと負荷Rとの間で電力を送電する送電ルートA,B、および送電ルートAの潮流を調整可能な潮流調整設備Cを有する電力系統の構成の変更処理について説明する。また、送電ルートA,Bの劣化進展特性は、既知であり、
図3,4に示す劣化特性曲線によって表される。したがって、潮流調整設備Cによって送電ルートAの潮流を調整せずに、送電ルートA,Bを使用して、発電所Eから負荷Rへ電力を送電し続けた場合、送電ルートAおよび送電ルートBは、
図3,4に示すように、同じ時期に、健全性指標が更新判定閾値以下となり、更新時期を迎えることが想定される。このように、送電ルートA,Bが同じ時期に更新時期を迎えると、
図5に示すように、電力系統を管理する送配電事業者による送配電設備の更新が、特定の時期に集中的に発生することが予想される。
【0052】
そこで、系統構成計画部1001は、潮流調整設備Cによって、送電ルートAを流れる電力(潮流)を減らす。これにより、送電ルートAの負荷率を送電ルートBの負荷率よりも小さくし、送電ルートAの更新時期を送電ルートBの更新時期より遅らせて、送電ルートAの長寿命化を図る。一方、送電ルートBの負荷率は高くなるため、送電ルートBの劣化の進展は速まり、送電ルートBの更新時期が早まる。その結果、送電ルートAと送電ルートBの更新時期が集中することを防止できるので、送配電設備の更新に要する作業人員および交換機種の手配を容易化でき、送配電設備の更新件数を平準化できる。
【0053】
このように、第3の実施形態にかかる系統構成決定支援システムによれば、電力系統が含む送配電設備が寿命を迎える時期が調整可能となるので、潮流調整設備によって送配電設備に対する潮流を調整することによっても、送配電設備の長寿命化を図ったり、送配電設備毎に、寿命を迎える時期を変えたりすることができる。
【0054】
上述の実施形態では、発電所から負荷(または、他の発電所)へ電力を送電する送電ルートとして2つの送電ルートを有する電力系統の構成を変更する処理について説明したが、送電ルートおよび発電所の数は任意に変更可能である。また、上述の3つの実施形態における電力系統の構成の変更方法を組み合わせて、当該電力系統の構成を変更することも可能である。
【0055】
以上説明したとおり、第1から第3の実施形態によれば、電力系統が含む送配電設備が寿命を迎える時期が調整可能となるので、送配電設備の長寿命化を図ったり、送配電設備毎に、寿命を迎える時期を変えたりすることができる。
【0056】
なお、本実施形態の系統構成決定支援システムで実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)等に予め組み込まれて提供される。本実施形態の系統構成決定支援システムで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0057】
さらに、本実施形態の系統構成決定支援システムで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の系統構成決定支援システムで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0058】
本実施形態の系統構成決定支援システムで実行されるプログラムは、上述した各部(系統構成計画部103,801,1001)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(Central Processing Unit)が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、系統構成計画部103,801,1001が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。