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前記複数の検出対象部及び前記当接部を、前記当接部が前記ロールの表面に当接する第1姿勢と、前記ロールの表面から離反する第2姿勢とに変更可能とする姿勢変更機構を備えている請求項1に記載のロール回転検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
以下の実施形態では、本発明のロール回転検出装置を、圃場にマルチフィルムを敷設するマルチ作業機のマルチフィルム残量検出装置に適用した場合について説明する。
図1は、マルチ作業機を示している。
図1に示すように、マルチ作業機は、走行車両1と、走行車両1の後部に装着された対地作業機2と、対地作業機2に装着された畝成形器3と、対地作業機2に装着されたマルチフィルム敷設装置4とを有する。
【0015】
本実施形態では、走行車両1としてトラクタを例示している。また、対地作業機2としてロータリ耕耘機を例示している。走行車両1は、トラクタ以外の走行する車両であってもよい。ロータリ耕耘機は、サイドドライブ式のロータリ耕耘機を例示しているが、センタードライブ式のロータリ耕耘機であってもよい。対地作業機2は、ロータリ耕耘機に限定されることはなく、圃場Fに対して作業をする機械であればよい。例えば、対地作業機2としては、圃場Fに畝を立てる畝立て機であってもよい。以下の説明では、走行車両1をトラクタとして説明する。また、対地作業機2をロータリ耕耘機として説明する。
【0016】
図1に示す実施形態において、トラクタ(走行車両)1の運転席(図示省略)に着座した運転者の前側(
図1の左側)を前方、運転者の後側(
図1の右側)を後方、運転者の左側(
図1の手前側)を左方、運転者の右側(
図1の奥側)を右方として説明する。また、トラクタ1の前後方向K1(
図1参照)に直交する方向である水平方向K2(
図2参照)を幅方向として説明する。
【0017】
図2の矢印X1方向を幅方向外方、
図2の矢印X2方向を幅方向内方として説明する。幅方向外方X1とは、トラクタ1の中央部から右部、或いは、左部へ向かう方向である。言い換えれば、幅方向外方X1とは、幅方向K2であってトラクタ1から離れる方向のことである。幅方向内方X2とは、幅方向外方X1とは反対の方向である。言い換えれば、幅方向内方X2とは、幅方向K2であってトラクタ1に近づく方向である。
【0018】
トラクタ1は、車体6と、車体6の前部に装着された前輪(図示省略)と、車体6の後部に装着された後輪7とを有する。車体6はエンジン、クラッチを内有したクラッチハウジング、変速装置を内有したミッションケース、差動装置を内有したデフケース等を直結して構成されている。運転席は、車体6の後部に設けられている。車体6の後部には、動力取出し用のPTO軸8が装備されている。
【0019】
図1に示すように、ロータリ耕耘機2は、トラクタ1の後部に三点リンク機構9を介して昇降可能に装着されている。三点リンク機構9は、車体6の後部に装着されている。
図1に示すように、ロータリ耕耘機2は、ロータリ機枠(作業機枠)11と、ロータリ耕耘部12と、ロータリカバー13とを有する。
ロータリ機枠11は、ギヤケース(図示省略)と、サポートアーム16と、伝動ケース17と、サイドフレーム(図示省略)と、マスト18とを有する。ギヤケースは、ロータリ耕耘機2の幅方向K2の略中央部に位置している。サポートアーム16は、ギヤケースから左側と右側に突出している。伝動ケース17の上部は、左側のサポートアーム16の左端部に取り付けられている。
【0020】
サイドフレームの上部は、右側のサポートアーム16の右端部に取り付けられている。伝動ケース17の下部とサイドフレームの下部との間には、回転軸18が設けられている。回転軸18の外周には、ブラケットを介して多数の耕耘爪19が固定されている。これら回転軸18及び耕耘爪19でロータリ耕耘部12を形成している。マスト18は、ギヤケースに固定されている。
【0021】
ギヤケースには、取入軸21が設けられている。この取入軸21には、PTO軸8の動力がジョイントを介して伝達される。取入軸21に伝達された動力は、ギヤケース内のギヤ機構及び左側サポートアーム16内のシャフトを介して、伝動ケース17内のチェーン伝動手段に伝達される。チェーン伝動手段に伝達された動力によって回転軸18が駆動される。回転軸18は、
図1において矢印A1方向に回転される。回転軸18がA1方向に回転すると、耕耘爪19が土壌を耕起して後方に放擲する。
【0022】
左側と右側のサポートアーム16の下面には、それぞれ、固定ブラケット23が取付けられている。また、ロータリカバー13の上面には、左側と右側の取付ブラケット24が取付けられている。各固定ブラケット23に各取付ブラケット24がボルト27,28により取付けられている。これにより、ロータリカバー13が左右のサポートアーム16に取付けられている。詳しくは、取付ブラケット24には、前後方向に関して、複数(図例では2個)の長孔25,26が配置されている。各長孔25,26は、回転軸18を中心とした円弧状に形成されて、各長孔25,26には、ボルト27,28が長孔25,26の長手方向に移動可能に挿通されている。ボルト27,28は、固定ブラケット24の締結孔(図示省略)に解除可能に締結されている。
【0023】
ボルト27,28の締結を解除し、ボルト27,28を長孔25,26内を長手方向に相対的に移動させて、ロータリカバー13を回転軸18回りに回動させ、ボルト27,28を締結孔に再度締結することで、後述する畝成形器3の挟角Bを調整できる。挟角Bとは、「サポートアーム16と回転軸18とを結ぶ直線30」と「連結棒48(後述)と回転軸18とを結ぶ直線31」とのなす角度である。挟角Bの調整により、ロータリ耕耘部12と、ロータリカバー13及び畝成形器3との相対的な位置関係を調整できる。
【0024】
ロータリカバー13は、上部カバー33と、左側と右側の側部カバー34とを有している。上部カバー33は、ロータリ耕耘部12の上方を覆っている。各側部カバー34は、ロータリ耕耘部12の幅方向外方を覆っている。各側部カバー34は、上部カバー33と一体化されている。
取付ブラケット24の後端部には、枠体36が固定されている。枠体36には、畝成形器3とマルチフィルム敷設装置4が取り付けられている。枠体36は、矩形枠39と、横枠材40と、上枠材41とを有する。矩形枠39は、平面視矩形状とされており、矩形枠39の一辺部(図示省略)が前側とされている。この一辺部は、上部カバー33の後部の上方で幅方向に配置され、上部カバー33の後部に沿っている。横枠材40は、幅方向に延びる側面視六角形状の棒状とされている。
【0025】
横枠材40は、矩形枠39の後方で且つ下方に配置されて、矩形枠39に左右の連結材42を介して固定されている。上枠材41は、矩形枠39の後端部の幅方向中央部に固定されている。上枠材41は、側面視L字状の棒状とされ、矩形枠39から上方に延びる上方突出部41aと、上方突出部41aの上端部から後方に延びる後方突出部41bとを有する。
【0026】
枠体36の下面には、横設材44が固定されている。横設材44は、幅方向に配置され、横設材44の左部と右部にそれぞれガイド板(畝立て機枠)45が取り付けられている。各ガイド板45は、ロータリ耕耘部12の左側部と右側部の後方にそれぞれ配置されている。各ガイド板45は、ロータリ耕耘部12から後方に放擲された土を受けるとともに、耕耘された土を案内する。左右ガイド板45により、畝成形器3が構成される。この畝成形器3により、畝Uと、畝Uの左右両側に位置する左側と右側にそれぞれ位置する畝溝Eとが形成される。
【0027】
畝成形器3には、左側と右側のゲージ装置(ゲージ手段)47が備えられている。ゲージ装置47により、ロータリ耕耘機2の耕耘深さが調整されるとともに、畝成形器3の圃場Fに対する高さも調整される。畝成形器3の圃場Fに対する高さの調整により、畝Uの高さも調整される。各ゲージ装置47は、連結棒48と、上部リンク49と、下部リンク50と、車輪ステー51と、ゲージ輪52とを有する。
【0028】
連結棒48は、軸心が幅方向K2に沿うように、矩形枠39の前部の上方に配置されて、矩形枠39に連結棒48の軸心回りに回動可能に支持されている。連結棒48には、例えば、六角パイプが使用される。上部リンク49の前端部は、連結棒48の側部に固定され、上部リンク49は、連結棒48から後方に延びている。下部リンク50の前部は、ガイド板45に枢支されている。
【0029】
車輪ステー51は、ガイド板45の後方で前傾姿勢として配置されている。車輪ステー51の上部は、上部リンク49の後端部に枢支されている。車輪ステー51の下部は、下部リンク50の後部に枢支されている。上部リンク49と下部リンク50と車輪ステー51とにより、リンク機構が構成されている。車輪ステー51の下部には、ゲージ体であるゲージ輪52が回転自在に備えられている。ゲージ輪52は、マルチ作業機による作業時に圃場Fを転動する。
【0030】
ゲージ装置47の高さは、高さ変更装置54により調整される。高さ変更装置54は、カバー筒55と、ネジ杆(図示省略)と、可動杆57と、操作ハンドル58とを有する。カバー筒55の上部はマスト18に枢支されている。ネジ杆は、カバー筒55に内装され、操作ハンドル58で軸心回りに回転操作可能とされている。可動杆57は、カバー筒55の下端からカバー筒55内に挿入され、ネジ杆に上端部が螺合している。可動杆57の下端部は、連結棒48に固定された連動リンク59に枢支されている。
【0031】
操作ハンドル58を操作してネジ杆を回転させると、可動杆57がネジ杆に対して螺進或いは螺退する。可動杆57が螺進すると、可動杆57がカバー筒55から突出していく。可動杆57が螺退すると、可動杆57がカバー筒55内に入っていく。これにより、高さ変更装置54が伸縮して、連動リンク59が連結棒48及び上部リンク49とともに回動する。
【0032】
この回動により、車輪ステー51が下部リンク50とともに上下動して、ゲージ輪52が上下動し、ゲージ輪52の高さを変更することができる。ゲージ輪52の高さの変更により、ロータリ耕耘機2の耕耘深さが調整されるとともに、畝成形器3の圃場Fに対する高さも調整される。
マルチフィルム敷設装置4は、マルチフィルムMを畝Uに敷設するものである。マルチフィルム敷設装置4は、左側と右側のロールホルダ61と、フィルムロールRと、ガイド部材62と、左側と右側の押え輪63と、左側と右側の覆土ディスク64と、鎮圧ロール65と、マルチフィルム残量検出装置66とを有する。
【0033】
図2及び
図3にも示すように、ロールホルダ61の下部は、横枠材40の側部に取付金具68を介してボルト69により着脱自在に取付けられている。取付金具68は、横枠材40に固定される場合と、固定されない場合とがある。ロールホルダ61は、横枠材40から上方で且つ後方に延びた状態とされ、後傾姿勢とされている。ロールホルダ61からは、取付軸(図示省略)が幅方向内方X2に突設されている。両ロールホルダ61の取付軸には、フィルムロールRが回転自在で且つ着脱自在に嵌められている。フィルムロールRには、マルチフィルムMが巻回されている。
【0034】
一方(図例では左側)の取付軸には、圧縮バネ71と、ワッシャ72と、第2検出板73とが嵌められている。圧縮バネ71の左端部は、ロールホルダ61に当接し、圧縮バネ71の右端部は、ワッシャ72に当接している。圧縮バネ71は、ワッシャ72を介して、第2検出板73をフィルムロールRに対して付勢している。この付勢により、第2検出板73はフィルムロールRに押付けられて、フィルムロールRとともに(一体に)回転する。
【0035】
第2検出板73としては、例えば、スプロケットが用いられる。第2検出板73の外周部には、径外方向(径方向外方)75に突出する山形状の歯部が周方向等間隔に多数配置され、隣接する歯部間には、隙間が形成されている。第2検出板73の歯部が検出対象部73aとされ、隣接する歯部間の隙間が非検出対象部73bとされている。第2検出板73の径外方向75とは、径方向74に関して、第2検出板73の内周部から遠ざかる方向である。なお、第2検出板73は、本実施態様では使用されないので、省略してもよい。
【0036】
図1に示すガイド部材62は、フィルムロールRから巻出されたマルチフィルムMを畝Uに案内するもので、フィルムロールRと後述する押え輪63との間に配置されている。ガイド部材62は、上ロール79と下ロール80を有する。上ロール79と下ロール80は、幅方向K2に沿った軸心を有し、支持部材(図示省略)に軸心回りに回転自在に支持されている。上ロール79は、上面側でマルチフィルムMの下面に当接して、マルチフィルムMを案内する。下ロール80は、上ロール79の後方で且つ下方に配置されており、下面側でマルチフィルムMの上面に当接して、マルチフィルムMを案内する。
【0037】
押え輪63は、ガイド部材62で案内されるマルチフィルムMの左側部と右側部を畝Uの左側と右側にある畝溝Eの底面に押付けて、マルチフィルムMの巻出しを助ける。覆土ディスク64は、押え輪63の後方近傍に配置され、押え輪63で押付けられたマルチフィルムMの左端部と右端部に土を被せる。押え輪63と覆土ディスク64とは、横枠材40に支持ステー82を介して取付けられている。
【0038】
鎮圧ロール65は、ガイド部材62の後方に配置され、ガイド部材62で案内されるマルチフィルムMを畝Uの上面に押付けて、マルチフィルムMを畝Uの上面に沿わせる。鎮圧ロール65は、上枠材41の後方突出部41bの後部に連結機構84を介して取付けられている。
連結機構84は、調整部材85と、移動軸86と、保持ブラケット87とを有する。調整部材85は、上枠材41の後方突出部41bの後部に前後方向に移動調整可能に枢支されている。移動軸86は、調整部材85の後部に上下方向に移動調整可能に挿通されている。保持ブラケット87は、移動軸86の下部に備えられ、鎮圧ロール65を回転自在に支持している。
【0039】
マルチフィルム残量検出装置66は、本発明のロール回転検出装置が適用されたものである。マルチフィルム残量検出装置66は、フィルムロールRのマルチフィルムMの残量を検出するもので、マルチフィルム敷設装置4の一方(図例では左側)の側部に備えられている。
図2〜
図6に示すように、マルチフィルム残量検出装置66は、取付枠89と、揺動ブラケット90と、回転軸91と、回転体92と、カバー体94と、検出センサ95と、制御装置96と、報知装置(警報装置)97と、リセットボタン98とを有する。
【0040】
取付枠89は、取付金具68に取り付けられている。取付枠89は、角棒材を屈曲して成り、第1〜第4棒部89a〜89dを有する。第1棒部89aは、側面視においてロールホルダ61に対し直交状とされている。第1棒部89aの前部が取付金具68に対し、側面視においてロールホルダ61と直交する方向に移動調整可能で且つ着脱自在に挿通されて、ボルト69により解除可能に締結されている。第2棒部89bは、第1棒部89bの後端部から上方及び後方に延びており、側面視において第1棒部89aに対し直交状とされている。
【0041】
第2棒部89bの下部には、角棒状の棒状部材100が取付具101及びボルト102により着脱自在に固定されている。第2棒部89bと棒状部材100とは取付具101に挿通され、側面視において、第2棒部89bと棒状部材100とは直交状とされている。ボルト102の締結を緩めた際には、取付具101に対し、第2棒部89bは長手方向に移動自在とされている。
【0042】
また、ボルト102の締結を緩めた際には、取付具101に対し、棒状部材100は長手方向に移動自在とされている。第3棒部89cは、第2棒部89bの上端部から幅方向内方X2に延びており、第2棒部89bに対し直交状とされている。第4棒部89dは、第3棒部89cの右端部から前方及び上方(斜め前上方)に延びており、第3棒部89cに対し直交状とされている。なお、第4棒部89dを取付枠89とは別部材として、第3棒部89cに溶接等で一体化してもよい。
【0043】
揺動ブラケット90は、本体部90aと、二股部90bとを有する。本体部90aは、揺動ブラケット90の先端部を構成するもので、板状とされている。二股部90bは、揺動ブラケット90の基部を構成するもので、二股状とされ、本体部90aの基端部に溶接等で固定されている。二股部90bの内部には、第4棒部89dの前部が挿入されて、二股部90bは第4棒部89dに、ボルトから成る幅方向K2の支軸104により枢支されている。揺動ブラケット90は、支軸104を中心として揺動自在とされて、回転体92の姿勢変更機構を構成している。
【0044】
図4〜
図6に示すように、回転軸91は、幅方向K2に沿って横設されており、幅方向K2の軸心を有する。回転軸91としては、例えば、金属製の丸パイプが使用される。回転軸91は、本体部90aの幅方向内方X2(図例では右側)に配置されて、揺動ブラケット90の本体部90aにボルト(図示省略)により回転自在で且つ着脱自在に備えられている。回転軸91には、回転体92が嵌められて、固定されている。回転軸91と回転体92とは、同一の軸心を有する。
【0045】
回転体92は、フィルムロールRの表面に当接して、フィルムロールRの回転に伴って回転する。
図4に示すように、回転体92は、円盤部92aと、複数の検出対象部92bと、複数の当接部92cと、複数の弾性カバー105とを有する。円盤部92aと、複数の検出対象部92bと、複数の当接部92cとは、板状とされ、これらは、一体に形成されている。なお、回転体92に、回転軸91を含ませる場合もある。
【0046】
回転体92は、フィルムロールRの幅方向K2の中心から幅方向外方X1にずれた位置(具体的には、フィルムロールRの幅方向外方端の近傍位置)において、フィルムロールRの表面に当接している。これにより、回転体92の自重がフィルムロールRに加わってもフィルムロールRを確実に支持することができる。また、回転体92の自重等によってフィルムロールRが撓むことを防止できる。
【0047】
円盤部92aは、円盤状とされて、回転体92の内周部を構成する。円盤部92aは、回転軸91の外周に嵌められて、固定され、回転軸91と一体に回転する。検出対象部92bは、円盤部92aの外周に周方向に間隔をあけて多数設けられている。検出対象部92bは、円盤部92aの外周から径外方向107に放射状に延設されている。円盤部92aの径方向外方107とは、円盤部92aの径方向106に関して、円盤部92aの内周部から遠ざかる方向である。隣接する検出対象部92b間の隙間は、非検出対象部92dとされている。即ち、回転体92の外周部には、周方向に関して、検出対象部92bと非検出対象部92dとが交互に連続して形成されている。複数の検出対象部92bは、周方向に等間隔で形成されている。
【0048】
当接部92cは、検出対象部92bの延設端から屈曲されて、回転体92の軸方向、即ち、幅方向内方X2に沿って延びている。当接部92cは、弾性素材を有している。本実施形態の場合、弾性素材は、弾性カバー105を構成している。言い換えれば、弾性カバー105は、弾性素材により形成されている。弾性素材としては、例えば、ゴムが用いられる。弾性カバー105は、薄い略直方体の筒状とされており、弾性カバー105の内部に、当接部92cの基部を除く部分が挿入されている。但し、弾性カバー105の内部に、当接部92cの全体が挿入されてもよい。これにより、当接部92cの基部を除く部分(又は全体)が弾性カバー105により覆われている。回転体92は、弾性カバー105を介して、フィルムロールRの表面に当接するため、フィルムロールRのマルチフィルムMが損傷されにくい。
【0049】
全ての当接部92cは、回転軸91の中心(軸心)からの距離が等しく形成されている。詳しくは、全ての弾性カバー105のフィルムロールRに当接する部分(径方向外側の面)は、回転軸91の中心(軸心)からの距離が等しく形成されている。
カバー体94は、下方及び前方に開口する中空状とされ、側面視において略半円形状とされている。カバー体94は、回転体92の上部側を覆うもので、カバー体94の下端の開口部(図示省略)からは回転体92が下方に突出している。そのため、カバー体94が、回転体92とフィルムロールRとの当接やフィルムロールRからのマルチフィルムMの巻出しに支障を及ぼすことはない。
【0050】
カバー体94の後壁には、下端から上方に向かう切欠き(図示省略)が形成されている。この切欠きに、揺動ブラケット90の本体部90aが挿脱自在に挿通されている。カバー体94の左側壁の後部には、下端から上方及び後方に向かう切込み94aが形成されている。ボルト109が、切込み94aに挿通され、本体部90aに解除可能に締結されている。この締結により、カバー体94が本体部90aに着脱可能に固定されている。
【0051】
揺動ブラケット90の支軸104を中心とする揺動により、回転体92は、
図3の実線で示す第1姿勢と、
図3の仮想線で示す第2姿勢とに姿勢変更可能とされている。回転体92が第1姿勢にあるときには、揺動ブラケット90が第4棒部89dの延長線上に位置して、回転体92がフィルムロールRの表面に当接する。回転体92が第1姿勢にある状態から、揺動ブラケット90を上方に揺動させると、回転体92が第2姿勢となり、回転体92は、フィルムロールRの表面から上方に離間する。回転体92は、第1姿勢において自重によりフィルムロールRの表面に当接する。詳しくは、回転体92は、揺動ブラケット90と、回転軸91と、回転体92と、第1検出板93と、カバー体94等の自重により、回転体92は第1姿勢を維持するようにされている。
【0052】
これにより、フィルムロールRのマルチフィルムMの残量が少なくなり、フィルムロールRの外径(太さ)が漸次小さくなっていっても、揺動ブラケット90や回転体92等の自重により、回転体92は、フィルムロールRの外径の減少に対応して、下降し、フィルムロールRの表面に当接する第1姿勢を維持する。それ故、マルチフィルムMの敷設作業の進行に伴い、フィルムロールRの外径が減少しても、フィルムロールRの残量検出(後述)を良好に行なえる。また、マルチフィルムMの巻数や外径の異なる種々のフィルムロールRにも容易に対応できる。
【0053】
検出センサ95は、回転体92の回転を検出するものであり、詳しくは、回転体92の回転の検出時にフィルムロールRにマルチフィルムMの残量があることを検出し、回転体92の回転の非検出時にフィルムロールRにマルチフィルムMの残量がないことを検出するものである。即ち、検出センサ95は、マルチフィルムMの残量状態を検出するものである。図示例では、検出センサ95は、ボルトの先端部109に取付けられているが、回転体92の回転を検出することができる位置であれば、他の位置に取付けられてもよい。例えば、検出センサ95は、揺動ブラケット90の本体部90aの先端等に取付けることができる。検出センサ95は、カバー体94の内部において、回転体92の近傍に配置される。
【0054】
本実施形態の場合、検出センサ95は近接センサである。
図5に示すように、検出センサ95は、一端部(右側端部)が幅方向K2に関して回転体92の外周部と対向している。検出センサ95としては、フォトセンサが用いられている。フォトセンサは、発光素子と受光素子とを有する。発光素子は、回転体92の外周部に検出光L1を照射する。発光素子としては、例えば、(赤外)LEDが用いられる。受光素子は、検出光L1の反射光L2を受けて、検出信号Sを出力する。受光素子としては、例えば、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトICが用いられる。
【0055】
マルチ作業機によるマルチフィルムMの圃場への敷設作業時に、フィルムロールRからマルチフィルムMが巻出されると、フィルムロールRの回転に伴い、フィルムロールRと当接する回転体92が回転軸91とともに回転する。この回転時には、検出センサ95からの検出光L1が、回転体92の外周部に照射されている。
図5に示すように、検出光L1が、回転体92の外周部にある検出対象部92bに照射されると、検出光L1が検出対象部92bで反射されて、この反射光L2が検出センサ95により検出される。この検出により、検出センサ95から検出信号Sが出力される。
【0056】
図6に示すように、検出センサ95からの検出光L1が、回転体92の外周部にある非検出対象部92dに照射された場合には、検出光L1は、非検出対象部92dでは反射されず、非検出対象部92dを通過する。その理由は、非検出対象部92dが、隣接する2つの検出対象部92b間にある隙間であるからである。検出光L1が非検出対象部92dでは反射されないので、検出センサ95は検出光L1の反射光を検出せず、検出センサ95から検出信号Sが出力されない。
【0057】
フィルムロールRが回転していると、回転体92が回転し、回転体92の検出対象部92bと非検出対象部92dとに交互に検出センサ95からの検出光L1が照射されるため、
図7に示すように、検出信号Sが検出センサ95から一定間隔で出力される。トラクタ1の走行速度が一定で、フィルムロールRからのマルチフィルムMの巻出し速度が一定であるとした場合には、フィルムロールRのマルチフィルムMの残量が少なくなると、フィルムロールRの回転速度が増加する。これに伴い、回転体92の回転速度が増加するため、
図7に示す検出信号Sの出力時間T1と検出信号Sが出力されない非出力時間T2とが短くなる。
【0058】
フィルムロールRのマルチフィルムMが無くなり、フィルムロールRの回転が停止すると、回転体92の回転も停止する。この停止により、回転体92における、検出センサ95と幅方向K2に対向する何れかの検出対象部92bまたは非検出対象部92dに、検出センサ95からの検出光L1が照射され続けることになる。これにより、
図8に示すように、検出信号Sが検出センサ95から出力され続けるか、または、
図9に示すように、検出信号Sが検出センサ95から出力されない状態が続くことになる。
【0059】
制御装置96は、検出センサ95に接続されている。制御装置96としては、例えば、CPU(演算部)やメモリ(記憶部)を備えたコンピュータ(マイコン等)が使用される。制御装置96は、マルチ作業機による作業時、換言すれば、トラクタ1を走行させながらの作業時に、検出信号Sが検出センサ95から所定時間出力され続けるか、または、検出信号Sが検出センサ95から出力されない状態が所定時間続いた場合に、報知装置97を作動させて、運転席上の運転者に報知する。
【0060】
なお、上記所定時間は短い方が好ましい。その理由は、フィルムロールRのマルチフィルムMが無くなったことをトラクタ1の運転者が早く知ることができるからである。所定時間は、例えば、検出信号Sが出力され続けた場合には、直前の出力時間T1にプラスαを加えた時間が所定時間とされる。また、検出信号Sが出力されない状態が続いた場合には、直前の非出力時間T2にプラスαを加えた時間が所定時間とされる。プラスαは、例えば、直前の出力時間T1または非出力時間T2と同一程度か、その数倍程度とされる。
【0061】
報知装置97からの報知を受けた運転者は、直ちにトラクタ1を停止し、ロータリ耕耘機2と畝成形器3とマルチフィルム敷設装置4とを上昇させて、マルチ作業機による作業を停止し、マルチフィルムMが無くなったフィルムロールRを、新しいフィルムロールRと交換して、マルチ作業機による作業を再開する。
これにより、マルチ作業機による作業時に、畝UにマルチフィルムMが敷設されないことを防止できる。それ故、マルチ作業機による作業後に、面倒な手作業で畝UにマルチフィルムMを敷設する必要が無くなる。なお、フィルムロールRの交換時には、姿勢変更機構によって、回転体92を、フィルムロールRから離間した第2姿勢(
図3の仮想線参照)とすることにより、交換作業を容易に行なえる。
【0062】
報知装置97は、例えば、トラクタ1の運転席の前方の計器パネルに備えられる。報知装置97は、運転者が視覚又は聴覚により認識できる方法によって、マルチフィルムMの残量(フィルム切れ)を報知する。報知装置97としては、例えば、報知(警報)ランプや報知(警報)ブザーが用いられる。リセットボタン98は、報知装置97の作動を停止するもので、制御装置96に接続されており、例えば、計器パネルに備えられる。そして、一般的には、報知装置97からの報知後、運転者がマルチ作業機による作業を停止した際に、リセットボタン98が操作されて、報知装置97の作動が停止され、制御装置96も、報知装置97の作動前の状態にリセットされる。
【0063】
上記のように、マルチフィルム残量検出装置66は、簡単な構成であり、既存のマルチフィルム敷設装置4に容易に取り付けることができるとともに、回転体92をフィルムロールRに当接するだけで、マルチフィルム残量検出装置66を作動させることができ、マルチフィルム残量検出装置66の操作も容易である。また、上記のように、マルチフィルム残量検出装置66は、マルチフィルムMの色とは無関係にマルチフィルムMの残量を検出しているので、色の異なる種々のマルチフィルムMに対応できる。
【0064】
なお、検出センサ95と同一構成、同一機能を有する第2センサを備えることもある。この場合には、第2センサからの検出光を第2検出板73の外周部に照射して、検出センサ95と同様に作用させる。
図10は、マルチフィルム検出システムを示している。
図10に示すように、マルチフィルム検出システムは、圃場支援端末150と、農業管理サーバ170とを備えている。圃場支援端末150と、農業管理サーバ170とは無線等により通信可能であって、農業管理サーバ170は、マルチフィルムMが敷設されていることを示す敷設情報を圃場支援端末150から受信可能である。
【0065】
圃場支援端末150は、トラクタ1の運転席の近傍に設けられている。圃場支援端末150には、制御装置96、報知装置97、残量計115が接続されている。圃場支援端末150は、表示部151を有している。表示部151は、液晶パネル、有機EL等のパネルであり、マルチフィルムMの敷設情報を表示可能である。敷設情報とは、マルチフィルムMが敷設されていることを示す情報である。
【0066】
図11Aは、表示部151に表示した敷設画面Q1を示している。敷設画面Q1は、フィールド表示部160と、幅入力部161を含んでいる。フィールド表示部160には、圃場Fを示す圃場図形D1と、マルチフィルム敷設装置4を示す装置図形D2と、マルチフィルムMを示すフィルム図形D3とが表示可能である。幅入力部161には、圃場支援端末150を操作することにより、マルチフィルムMの幅を入力することができる。幅入力部161に入力されたマルチフィルムMの幅(マルチ幅)に応じて、フィルム図形D3の幅が変化する。
【0067】
マルチフィルムの敷設作業を行っている状況下では、装置図形D2が圃場図形D1上を移動する。敷設作業時において、制御装置96に検出センサ95の検出信号Sが入力されている場合(マルチフィルムMの残量があることが当該制御装置96に入力されている場合)、
図11Aに示すように、表示部151は、装置図形D2の後方に続いて、敷設情報であるフィルム図形D3を連続的に表示する。一方、マルチフィルムの敷設作業を行っている状況下において、
図11Bに示すように、位置P1にて制御装置96に検出センサ95の検出信号Sが入力されない場合、表示部151は、位置P1以降において、装置図形D2の後方に、フィルム図形D3を表示しない。なお、位置P1以降において、マルチフィルム敷設装置4にマルチフィルムMが補充され、再び、制御装置96に検出センサ95の検出信号Sが入力されると、
図11Bに示すように、表示部151は、装置図形D2の後方にフィルム図形D3を表示する。
【0068】
圃場支援端末150は、通信部152を有している。通信部152は、通信モジュールであって、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、LPWA(Low Power, Wide Area)、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)等により無線通信を行うことができる。また、通信部152は、例えば、携帯電話通信網又はデータ通信網などにより無線通信を行うことができる。
【0069】
通信部152は、敷設情報を農業管理サーバ170に送信する。敷設作業が行われている状況下において、制御装置96に検出センサ95の検出信号Sが入力されている場合、マルチフィルムMが敷設中であることを示す敷設情報を、通信部152は、農業管理サーバ170に送信する。敷設作業が行われている状況下において、制御装置96に検出センサ95の検出信号Sが入力されない場合は、通信部152は、敷設情報を農業管理サーバ170に送信しない。農業管理サーバ170は、通信部152から送信された敷設情報を受信している場合は、圃場FにマルチフィルムMが敷設されていることを検知し、通信部152から送信された敷設情報が受信していない場合は、圃場FにマルチフィルムMが敷設されていないことを検知する。
【0070】
農業管理サーバ170は、通信部152から送信された敷設情報をスマートフォン、タブレット等の携帯端末180に送信する。これによれば、携帯端末180を所持する作業者は、圃場支援端末150とは異なる携帯端末180によって、マルチフィルムMが畝Uに敷設されている状況であるか否かをリアルタイムに確認することができる。
さて、トラクタ1は、位置検出装置190を備えていることが好ましい。位置検出装置190は、GPS、みちびき等の測位衛星のデータ(測位衛星システム)に基づいて自己の位置(緯度、経度)を検出する装置である。なお、位置検出装置190は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等の慣性装置を有していてもよく、慣性装置で検出された加速度、角速度を用いて位置を補正してもよいし、その他の補正信号等によって位置を補正してもよく限定されない。
【0071】
圃場支援端末150及び制御装置96は、位置検出装置190で検出された位置(位置情報)と、敷設情報とを対応付けて記憶する記憶部195を有している。記憶部195は不揮発性のメモリ等である。マルチ敷設作業を行っている状況下では、位置情報、敷設情報及びマルチ幅が対応付けられた敷設データが記憶部195に記憶される。通信部152は、位置情報及び敷設情報を含む敷設データを農業管理サーバ170に送信する。農業管理サーバ170は、敷設データを受信後、受信した敷設データを記憶部196に記憶する。また、農業管理サーバ170は、敷設データを携帯端末180に送信する。これによれば、携帯端末180は、圃場Fを示す圃場マップ上にマルチフィルムMが敷設された正確な位置を表示することができる。
【0072】
また、圃場支援端末150の表示部151は、敷設画面Q1のフィールド表示部160に敷設作業を行っている圃場マップを表示して、圃場マップ上にマルチフィルムMが敷設された正確な位置を表示することができる。
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0073】
例えば、上記実施形態は、本発明のロール回転検出装置をマルチフィルム残量検出装置に適用したものであるが、本発明のロール回転検出装置は、マルチフィルム残量検出装置以外にも適用可能である。一例として、本発明のロール回転検出装置は、マルチフィルム以外のフィルムを巻回したフィルムロールの回転を検出する装置として適用可能である。また、フィルムロール以外のロールの回転を検出する装置としても適用可能である。また、本発明のフィルム検出システムは、マルチフィルム以外のフィルムを検出するシステムとしても適用可能である。