【文献】
OKITA, K. et al.,An efficient nonviral method to generate integration-free human-induced pluripotent stem cells from cord blood and peripheral blood cells,Stem Cells,2013年,Vol. 31(3),pp. 458-466
【文献】
NAKAMURA, S. et al.,Expandable Megakaryocyte Cell Lines Enable Clinically Applicable Generation of Platelets from Human Induced Pluripotent Stem Cells,Cell Stem Cell,2014年,Vol. 14,pp. 535-548,全文
【文献】
中村壮 ほか,ヒトES/iPS細胞を用いた不死化巨核球細胞株の作製 Generation of immortalize megakaryocyte cell line from human ES/iPS cell,医学のあゆみ,医歯薬出版株式会社,2014年,Vol. 251(2),pp. 143-148
【文献】
恩田佳幸 ほか,生体外で製造する血液細胞は本当に必要なのか?,The Japanese Journal of Pediatric Hematology/Oncology,2015年,Vol. 52(3),pp. 220-223
【文献】
NAKAJIMA, H.,Role of transcription factors in differentiation and reprogramming of hematopoietic cells,Keio J Med.,2011年,Vol. 60(2),pp. 47-55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(i)の脱分化がOCT3/4、SOX2およびKLF4から成る群から選択される初期化因子の導入により実施される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、様々な集団で構成されている幹細胞又は体細胞を単一細胞由来細胞集団化、つまりクローン化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、1又は複数回の脱分化を経て調製された幹細胞コロニーから、体細胞の分化誘導に関連する遺伝子が染色体に組み込まれた幹細胞を単離したところ、単離された幹細胞が体細胞への分化誘導に適していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
[A1]幹細胞クローンを製造する方法であって、
(i) 体細胞への分化誘導に関連する外来性遺伝子を幹細胞に導入する工程、
(ii) 前記外来性遺伝子が導入された幹細胞を前記体細胞へと分化誘導する工程、
(iii) 分化誘導された体細胞を脱分化する工程、および
(iv) 工程(iii)で形成された幹細胞コロニーから、染色体に前記外来性遺伝子が組み込まれた幹細胞を単離する工程、
を含む、方法。
[A2]単離された幹細胞クローンの体細胞への分化誘導効率が、クローン化前の幹細胞と比較して高い、[A1]に記載の方法。
[A3]前記体細胞が造血前駆細胞、巨核前駆細胞、赤芽球、神経細胞、神経幹細胞、神経冠細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、軟骨細胞、肝細胞又はメラニン細胞である、[A1]又は[A2]に記載の方法。
[A4]前記体細胞が巨核球前駆細胞であり、前記分化誘導に関連する外来性遺伝子が、MYCファミリー遺伝子を含む癌遺伝子、Bmi1を含むp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子(ポリコーム遺伝子)およびBCL−XL遺伝子を含むアポトーシス抑制遺伝子から成る群より選択される少なくとも一つの外来性遺伝子である、[A3]に記載の方法。
[A5]MEG3を発現する幹細胞が単離される、[A1]〜[A4]のいずれかに記載の方法。
[A6]前記分化誘導に関連する外来性遺伝子が薬剤応答性プロモーターと機能的に連結されている、[A1]〜[A5]のいずれかに記載の方法。
[A7]工程(iii)の脱分化がOCT3/4、SOX2およびKLF4から成る群から選択される初期化因子の導入により実施される、[A1]〜[A6]のいずれかに記載の方法。
[A8]体細胞を製造する方法であって、
[A1]〜[A7]に記載の方法に従い製造された幹細胞クローンを体細胞へ分化誘導する工程、を含む、方法。
[A9]血小板を製造する方法であって、
[A1]〜[A6]に記載の方法に従い製造された幹細胞クローンを巨核前駆細胞へ分化誘導する工程、および
分化誘導された巨核球前駆細胞を巨核球細胞に成熟させ、血小板を放出させる工程、
を含む、方法。
[A10]
製造される血小板がHLAを欠損している、[A9]に記載の方法。
【0011】
[B1]次の工程を含む、体細胞をクローン化する方法であって、当該体細胞が、外来性遺伝子を発現することによって製造される体細胞である、方法;
(i)薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された外来性遺伝子が染色体へ組み込まれた体細胞へ初期化因子を導入し、幹細胞コロニーを形成させる工程、
(ii)前記工程(i)で得られた幹細胞コロニーを単離する工程、および
(iii)前記工程(ii)で単離された幹細胞コロニーに含まれる幹細胞を体細胞へ誘導する工程であって、当該幹細胞から当該体細胞へのいずれかの分化段階の細胞を対応する薬剤と接触する工程を含む、工程;
[B2]前記体細胞が、巨核球前駆細胞であって、前記外来性遺伝子が、MYCファミリー遺伝子、ポリコーム遺伝子およびアポトーシス抑制遺伝子から成る群より選択される少なくとも一つの遺伝子である、[B1]に記載の方法;
[B3]前記工程(iii)が、次の工程を含む、[B2]に記載の方法;
(a)前記工程(ii)で単離された幹細胞コロニーに含まれる幹細胞を造血前駆細胞へ誘導する工程、および
(b)前記工程(a)で得られた造血前駆細胞を対応する薬剤と接触する工程;
[B4]前記初期化因子が、OCT3/4、SOX2およびKLF4を含む因子である、[B1]から[B3]のいずれかに記載の方法;
[B5]前記薬剤応答性プロモーターが、TRE配列を有するプロモーターであり、少なくとも前記工程(iii)の細胞において、さらにreverse tetR融合タンパク質を発現させる、[B1]から[B4]のいずれかに記載の方法;
[B6]前記工程(iii)において、前記工程(ii)で単離された幹細胞コロニーに含まれる幹細胞において、MEG3を発現する幹細胞を選択する工程をさらに含む、[B2]から[B5]のいずれかに記載の方法;
[B7]前記工程(iii)において、前記工程(ii)で単離された幹細胞コロニーに含まれる幹細胞において、HLAを欠損させる工程をさらに含む、[B1]から[B6]のいずれかに記載の方法;
[B8]前記HLAが、クラスI抗原である、[B7]に記載の方法;
[B9]前記クラスI抗原が、β2-ミクログロブリンである、[B8]に記載の方法;
[B10]次の工程を含む、血小板の製造方法:
[B2]から[B9]のいずれか1項に記載の方法で巨核球前駆細胞をクローン化する工程、および
クローン化された巨核球前駆細胞を巨核球細胞に成熟させ、血小板を放出させる工程;
[B11]次の工程を含む、HLAを欠損させた体細胞を製造する方法;
(i) 体細胞へ初期化因子を導入し、多能性幹細胞を形成させる工程、
(ii)前記工程(i)で得られた多能性幹細胞においてHLAを欠損させる工程、および
(iii)前記工程(ii)で得られたHLAを欠損させた多能性幹細胞を体細胞へ誘導する工程;[B12]前記初期化因子が、OCT3/4、SOX2およびKLF4を含む因子である、[B11]に記載の方法;
[B13]前記工程(i)で用いられる体細胞が、巨核球前駆細胞であって、当該巨核球前駆細胞が、薬剤応答性プロモーターと機能的に連結されたMYCファミリー遺伝子、ポリコーム遺伝子およびアポトーシス抑制遺伝子から成る群より選択される少なくとも一つの遺伝子を染色体へ組み込むことによって製造された巨核球前駆細胞である、[B11]または[B12]に記載の方法;
[B14]前記工程(iii)が、次の工程を含む、[B13]に記載の方法;
(A)前記工程(ii)で得られたHLAを欠損させた多能性幹細胞を造血前駆細胞へ誘導する工程、および
(B)前記工程(A)で得られた造血前駆細胞を対応する薬剤と接触する工程;
[B15]前記HLAが、クラスI抗原である、[B11]から[B14]のいずれかに記載の方法;
[B16]前記クラスI抗原が、β2-ミクログロブリンである、[B15]に記載の方法;
[B17]次の工程を含む、HLAを欠損させた血小板の製造方法:
[B13]から[B16]のいずれかに記載の方法で、HLAを欠損させた巨核球前駆細胞を製造する工程、および
HLAを欠損させた巨核球前駆細胞を巨核球細胞に成熟させ、血小板を放出させる工程;
[B18]外来性の癌遺伝子および外来性のp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子を含む、iPS細胞であって、当該外来性の癌遺伝子に対する外来性のp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子の含有率が2倍から7倍である、iPS細胞;
[B19]前記癌遺伝子が、c-Mycであり、および前記p16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子がBmi1である、[B18]に記載のiPS細胞;
[B20]外来性の癌遺伝子および外来性のp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子を含む、巨核球前駆細胞であって、当該外来性の癌遺伝子に対する外来性のp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子の含有率が2倍から7倍である、巨核球前駆細胞;
[B21]前記癌遺伝子が、c-Mycであり、および前記p16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子がBmi1である、[B20]に記載の巨核球前駆細胞;及び
[B22]巨核球前駆細胞の誘導に適した多能性幹細胞または造血前駆細胞を選択する方法であって、MEG3を発現する多能性幹細胞または造血前駆細胞を選択する工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、体細胞への分化誘導に適した幹細胞クローンを製造することが可能である。また、本発明によりクローン化された幹細胞は、従来の限界希釈法によりクローン化された幹細胞と比較して細胞増殖能等が優れている。例えば、本発明に従い調製された2次巨核球前駆細胞クローンは、従来のものより細胞増殖能や巨核球への成熟能が優れているだけでなく、同クローンから調製された巨核球は血小板産生能も高い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る幹細胞クローンを製造する方法は、以下の工程を含む:
(i) 体細胞への分化誘導に関連する外来性遺伝子を幹細胞に導入する工程、
(ii) 前記外来性遺伝子が導入された幹細胞を前記体細胞へと分化誘導する工程、
(iii) 分化誘導された体細胞を脱分化する工程、および
(iv) 工程(iii)で形成された幹細胞コロニーから、染色体に前記外来性遺伝子が組み込まれた幹細胞を単離する工程。
【0015】
単離された幹細胞クローンは、クローン化前の幹細胞と比較して体細胞への分化誘導に適しており、一細胞当たりの体細胞への分化誘導効率が高い。
【0016】
一実施態様において、本発明に係る幹細胞クローンの製造方法は、以下の工程を含んでもよい:
(i)薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された外来性遺伝子が染色体へ組み込まれた体細胞へ初期化因子を導入し、幹細胞コロニーを形成させる工程、および
(ii)前記工程(i)で得られた幹細胞コロニーを単離する工程。
【0017】
得られた幹細胞クローンは、更に体細胞へ分化誘導されてもよい。分化誘導は当業者が所望とする体細胞への分化誘導に適した方法を適宜選択して実施されるものであり、特に限定されないが、以下の工程を含んでもよい:
(iii)工程(ii)で単離された幹細胞コロニーに含まれる幹細胞を体細胞へ誘導する工程であって、当該幹細胞から当該体細胞へのいずれかの分化段階の細胞を対応する薬剤と接触する工程を含む、工程。
【0018】
本発明において、クローン化とは、細胞集団のクローン化を意味し、不均一な遺伝情報を持つ細胞集団から、均一な遺伝情報を持つ細胞集団を単離することを意味する。
【0019】
クローン化に供する体細胞
本発明において、クローン化に供される体細胞(1次体細胞という。)は、薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された遺伝子を染色体へ組み込むことによって製造された細胞であれば、特に限定されないが、例えば、神経細胞(WO2014/148646、Wapinski OL et al, Cell. 155:621-635, 2013)、神経幹細胞(Han DW et al, Cell Stem Cell. 10:465-472, 2012)、神経冠細胞(Kim YJ, et al, Cell Stem Cell. 15:497-506, 2014)、心筋細胞(Ieda M et al, Cell. 142:375-386, 2010)、骨格筋細胞(Tanaka A, et al, PLoS One. 8:e61540, 2013)、軟骨細胞(Outani H, et al, PLoS One. 8:e77365, 2013)、肝細胞(Huang P, et al, Cell Stem Cell. 14:370-384, 2014)、メラニン細胞(Yang R, et al, Nat Commun. 5:5807, 2014)、造血前駆細胞(Batta K, Cell Rep. 9:1871-84, 2014)、赤芽球(Hirose S, et al, Stem Cell Reports. 1:499-508, 2013)および巨核球前駆細胞(Nakamura S, et al, Cell Stem Cell. 14:535-548, 2014)が挙げられる。
【0020】
本発明において、巨核球前駆細胞は、限界希釈法によりクローン化できないことから、本発明の方法によりクローン化する体細胞として適している。赤芽球も本発明における体細胞として好ましい。しかしながら、これら以外の体細胞であっても、所望とする体細胞への分化誘導に関連する外来性遺伝子が染色体に導入された幹細胞クローンを得ることが可能であるため、体細胞は巨核前駆細胞や赤芽球に限定されない。
【0021】
本発明における体細胞への分化誘導に関連する外来性遺伝子は広く、幹細胞から体細胞に分化誘導する際に細胞に導入される遺伝子を意味する。体細胞が巨核球前駆細胞である場合を例に説明すると、分化誘導に関連する遺伝子は、癌遺伝子、好ましくはMYCファミリー遺伝子、より好ましくはc-Myc;p16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子(ポリコーム遺伝子)、好ましくはBmi1;およびアポトーシス抑制遺伝子、好ましくはBCL−XL遺伝子、から成る群より選択される少なくとも一つの遺伝子であってもよい。体細胞が赤芽球である場合を例とすれば、分化誘導に関連する遺伝子は、癌遺伝子、好ましくはMYCファミリー遺伝子、より好ましくはc-Myc;アポトーシス抑制遺伝子、好ましくはBCL−XL遺伝子、から成る群より選択される少なくとも一つの遺伝子であってもよい。体細胞への分化誘導に関連する外来性遺伝子は薬剤応答性プロモーターと作用可能に連結されていてもよい。
【0022】
本発明において、薬剤応答性プロモーターとは、対応する薬剤の存在下又は非存在下で遺伝子を発現するプロモーターをいう。対応する薬剤の存在下で遺伝子を発現するプロモーターとしてTREプロモーター(tetO 配列が7回連続したTet応答配列をもつCMV 最小プロモーター)が例示される。TREプロモーターを用いた場合、同一の細胞において、reverse tetR (rtetR)およびVP16ADとの融合タンパク質(reverse tetR融合タンパク質)を同時に発現させることで、対応する薬剤(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンが例示される)の存在下で遺伝子発現を誘導する様式を用いることも好ましい。reverse tetR融合タンパク質を用いる場合、当該融合タンパク質は、少なくとも後述する「幹細胞から2次体細胞へ誘導する工程」において発現させればよい。例えば、1次体細胞を作製する際、reverse tetR融合タンパク質をコードする遺伝子を、薬剤応答性プロモーターと機能的に連結させて導入することにより、「幹細胞から2次体細胞へ誘導する工程」において、対応する薬剤の添加又は除去によってreverse tetR融合タンパク質を発現させることができる。薬剤応答性プロモーターを2種類以上の遺伝子と機能的に連結する場合、薬剤応答性プロモーターはすべて同じ種類を用いてもよく、2種類以上用いてもよい。
【0024】
本発明における「巨核球前駆細胞」とは、成熟することで巨核球となる細胞であって、多核化していない細胞であり、例えば、CD41a陽性/CD42a陽性/CD42b弱陽性として特徴付けられる細胞を含む。本発明の巨核球前駆細胞は、好ましくは、拡大培養により増殖させることが可能である細胞であり、例えば、少なくとも60日以上は、適切な条件で拡大培養可能な細胞である。本発明において、巨核球前駆細胞は、クローン化されていてもされていなくても良く、特に限定されないが、クローン化されたものを巨核球前駆細胞株と呼ぶこともある。本発明における巨核球前駆細胞は、造血前駆細胞から誘導されてもよい。
【0025】
本発明における「巨核球」は、血小板前駆細胞、巨核細胞とも称され、その細胞質を分離することにより、血小板を産生する細胞であり、多核化した細胞であってもよく、例えば、CD41a陽性/CD42a陽性/CD42b陽性として特徴付けられる細胞を含む。この他にも、巨核球とは、GATA1、FOG1、NF-E2およびβ1-tubulinが発現している細胞として特徴づけてもよい。多核化した巨核球とは、巨核球前駆細胞と比較して核の数が相対的に増大した細胞又は細胞群のことをいう。例えば、本発明の方法を適用する巨核球前駆細胞の核が2Nの場合には、4N以上の細胞が多核化した巨核球となる。また、本発明において、巨核球は、巨核球株として不死化されていてもよく、クローン化された細胞群であってもよい。
【0026】
本発明において、造血前駆細胞(Hematopoietic Progenitor Cells(HPC))とは、リンパ球、好酸球、好中球、好塩基球、赤血球、巨核球等の血球系細胞に分化可能な細胞である、本発明において、造血前駆細胞と造血幹細胞は、区別されるものではなく、特に断りがなければ同一の細胞を示す。造血幹細胞/前駆細胞は、例えば、表面抗原であるCD34および/またはCD43が陽性であることによって認識できる。本発明において、造血幹細胞は、多能性幹細胞、臍帯血・骨髄血・末梢血由来の造血幹細胞及び前駆細胞などから分化誘導された造血前駆細胞に対しても適用することができる。例えば、多能性幹細胞を使用する場合、造血前駆細胞は、Takayama N., et al. J Exp Med. 2817-2830 (2010)に記載の方法にしたがって、多能性幹細胞をVEGFの存在下でC3H10T1/2上で培養することで得られるネット様構造物(ES−sac又はiPS−sacとも称する)から調製することができる。ここで、「ネット様構造物」とは、多能性幹細胞由来の立体的な嚢状(内部に空間を伴うもの)構造体で、内皮細胞集団などで形成され、内部に造血前駆細胞を含む構造体である。この他にも、多能性幹細胞からの造血前駆細胞の誘導方法として、胚様体の形成とサイトカインの添加による方法(Chadwick et al. Blood 2003, 102: 906-15、Vijayaragavan et al. Cell Stem Cell 2009, 4: 248-62、Saeki et al. Stem Cells 2009, 27: 59-67)または異種由来のストローマ細胞との共培養法(Niwa A et al. J Cell Physiol. 2009 Nov;221(2):367-77.)等が例示される。
【0027】
該多能性幹細胞として、受精卵、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)といった細胞が挙げられる。本発明の体細胞としての巨核球前駆細胞は、造血前駆細胞へ癌遺伝子、p16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子(ポリコーム遺伝子)、並びに/あるいはアポトーシス抑制遺伝子を強制発現させて該細胞を培養する工程によって誘導されたものであることが望ましい。
【0028】
本発明において、「癌遺伝子」とは、その発現、構造または機能等が正常細胞と異なることに起因して、正常細胞のがん化を引き起こす遺伝子であり、例えば、MYCファミリー遺伝子、Srcファミリー遺伝子、Rasファミリー遺伝子、Rafファミリー遺伝子、c-KitやPDGFR、Ablなどのプロテインキナーゼファミリー遺伝子などを挙げることができる。MYCファミリー遺伝子として、c-MYC、N-MYCおよびL-MYCが例示される。c-MYC遺伝子とは、例えば、NCBIのアクセッション番号NM_002467で示される核酸配列からなる遺伝子である。また、c-MYC遺伝子には、そのホモログも含まれてよく、c-MYC遺伝子ホモログとは、そのcDNA配列が、例えば、NCBIのアクセッション番号NM_002467で示される核酸配列と実質的に同一の配列からなる遺伝子のことである。NCBIのアクセッション番号NM_002467で示される核酸配列と実質的に同一の配列からなるcDNAとは、NCBIのアクセッション番号NM_002467で表される配列からなるDNAと、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、最も好ましくは約99%の同一性を有する配列からなるDNA、もしくは、NCBIのアクセッション番号NM_002467で表わされる核酸配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAであって、これらのDNAによってコードされるタンパク質が、造血前駆細胞など、分化段階の細胞の増幅に寄与するもののことである。
【0029】
ここで、ストリンジェントな条件とは、当業者によって容易に決定されるハイブリダイゼーションの条件のことで、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な実験条件である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリッド形成は、一般的に、相補的鎖がその融点よりやや低い環境における再アニール能力に依存する。
【0030】
例えば、低ストリンジェントな条件として、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄段階において、37℃〜42℃の温度条件下、0.1×SSC、0.1%SDS溶液中で洗浄することなどが上げられる。また、高ストリンジェントな条件として、例えば、洗浄段階において、65℃、5×SSCおよび0.1%SDS中で洗浄することなどが挙げられる。ストリンジェントな条件をより高くすることにより、相同性の高いポリヌクレオチドを得ることができる。
【0031】
本発明において、c-MYCの発現量を抑制することが好ましいため、不安定化ドメインと融合させたタンパク質をコードするc-MYCであってもよい。不安定化ドメインは、ProteoTuner社またはClontech社から購入して用いることができる。
【0032】
本発明において、「p16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子」として、BMI1、Id1、Mel18、Ring1a/b、Phc1/2/3、Cbx2/4/6/7/8、Ezh2、Eed、Suz12、HDAC、Dnmt1/3a/3bなどが例示される。BMI1遺伝子とは、例えば、NCBIのアクセッション番号NM_005180で示される核酸配列からなる遺伝子である。また、BMI1遺伝子には、そのホモログも含まれてよく、BMI1遺伝子のホモログとは、そのcDNA配列が、例えばNCBIのアクセッション番号NM_005180で示される核酸配列と実質的に同一の配列からなる遺伝子のことである。NCBIのアクセッション番号NM_005180で示される核酸配列と実質的に同一の配列からなるcDNAとは、NCBIのアクセッション番号NM_005180で表される配列からなるDNAと、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、最も好ましくは約99%の同一性を有する配列からなるDNA、もしくは、NCBIのアクセッション番号NM_005180で表わされる核酸配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAであって、そのDNAによってコードされるタンパク質が、MYCファミリー遺伝子などの癌遺伝子が発現している細胞内で生じる癌遺伝子誘導性細胞老化を抑制し、該細胞の増幅を促進するもののことである。
【0033】
本発明において、「アポトーシス抑制遺伝子」とは、アポトーシスを抑制する遺伝子であれば特に限定されず、例えば、BCL2遺伝子、BCL−XL遺伝子、Survivin、MCL1などが挙げられる。BCL−XL遺伝子とは、例えば、NCBIのアクセッション番号NM_001191またはNM_138578で示される核酸配列からなる遺伝子である。また、BCL−XL遺伝子には、そのホモログも含まれてよく、BCL−XL遺伝子のホモログとは、そのcDNA配列が、例えば、NCBIのアクセッション番号NM_001191またはNM_138578で示される核酸配列と実質的に同一の配列からなる遺伝子のことである。NCBIのアクセッション番号NM_001191またはNM_138578で示される核酸配列と実質的に同一の配列からなるcDNAとは、NCBIのアクセッション番号NM_001191またはNM_138578で表される配列からなるDNAと、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、最も好ましくは約99%の同一性を有する配列からなるDNA、もしくは、NCBIのアクセッション番号NM_001191またはNM_138578で表わされる核酸配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAであって、そのDNAによってコードされるタンパク質が、アポトーシスを抑制する効果を有するもののことである。
【0034】
本発明において、上記の遺伝子を造血前駆細胞において強制発現させる方法は、薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された遺伝子を染色体へ組み込むことによって行われることが望ましく、例えば、薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された遺伝子を含む発現ベクターを造血前駆細胞へ導入することによって成し得る。これらの遺伝子を発現するベクターとして、例えば、レトロウイルス、レンチウィルスなどのウィルスベクター、動物細胞発現プラスミド(例、pA1-11,pXT1,pRc/CMV,pRc/RSV,pcDNAI/Neo)などが用いられ得る。染色体へ組み込むという点において、レトロウィルスベクターまたはレンチウィルスベクターが好ましいベクターである。
【0035】
発現ベクターは、プロモーターの他に、所望によりエンハンサー、ポリA付加シグナル、選択マーカー遺伝子、SV40複製起点などを含有していてもよい。有用な選択マーカー遺伝子としては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0036】
本発明では、同時に複数の遺伝子を導入するため、遺伝子が縦に連結されてポリシストロニックなベクターを得てもよい。ポリシストロニックな発現を可能にするために、強制発現させる複数の遺伝子間に、口蹄疫ウィルスの2A自己開裂ペプチド(Science, 322, 949-953, 2008などを参照)およびIRES(Internal ribosome entry site)配列などをライゲーションしてもよい。
【0037】
本発明において、発現ベクターを造血前駆細胞に導入する方法は、ウィルスベクターの場合、該核酸を含むプラスミドを適当なパッケージング細胞(例、Plat-E細胞)や補完細胞株(例、293細胞)に導入して、培養上清中に産生されたウィルスを回収し造血前駆細胞と接触させ感染させることによって成し得る。非ウィルスベクターの場合、リポフェクション法、リポソーム法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、遺伝子銃法などを用いてプラスミドベクターを細胞に導入することができる。
【0038】
本発明に係る巨核球前駆細胞の誘導方法の一態様として、造血前駆細胞へ癌遺伝子、あるいはp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子を強制発現させた後に、さらに、アポトーシス抑制遺伝子を強制発現させてもよい。アポトーシス抑制遺伝子の強制発現も、上述と同様に、発現ベクター、またはこれらの遺伝子がコードするタンパク質またはこれらの遺伝子をコードするRNAを造血前駆細胞へ導入することによって成し得る。アポトーシス抑制遺伝子を後に強制発現させる場合、特に限定しないが、癌遺伝子、およびp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子を少なくとも14日間以上強制発現した後にアポトーシス抑制遺伝子の強制発現が行われ得ることが望ましい。
【0039】
本発明では、アポトーシス抑制遺伝子を造血前駆細胞において強制発現させることに代わって、カスパーゼ阻害剤を細胞と接触させても良い。本発明において、カスパーゼ阻害剤は、ペプチド性化合物、非ペプチド性化合物、あるいは、生物由来のタンパク質のいずれであってもよい。ペプチド性化合物としては、例えば人工的に化学合成された下記(1)〜(10)のペプチド性化合物を挙げることができる。
(1)Z-Asp-CH2-DCB(分子量454.26)
(2)Boc-Asp(OMe)-FMK(分子量263.3)
(3)Boc-Asp(OBzl)-CMK(分子量355.8)
(4)Ac-AAVALLPAVLLALLAP-YVAD-CHO(分子量1990.5)(配列番号1)
(5)Ac-AAVALLPAVLLALLAP-DEVD-CHO(分子量2000.4)(配列番号2)
(6)Ac-AAVALLPAVLLALLAP-LEVD-CHO(分子量1998.5)(配列番号3)
(7)Ac-AAVALLPAVLLALLAP-IETD-CHO(分子量2000.5)(配列番号4)
(8)Ac-AAVALLPAVLLALLAP-LEHD-CHO(分子量2036.5)(配列番号5)
(9)Z-DEVD-FMK (Z-Asp-Glu-Val-Asp-fluoromethylketone)(配列番号6)
(10)Z-VAD FMK
【0040】
例えば、ペプチド性化合物のカスパーゼ阻害剤として、(1)VX-740 - Vertex Pharmaceuticals (Leung-Toung et al., Curr. Med. Chem. 9, 979-1002 (2002))、(2)HMR-3480 - Aventis Pharma AG (Randle et al., Expert Opin. Investig. Drugs 10, 1207-1209 (2001))、を挙げることができる。
【0041】
非ペプチド性化合物のカスパーゼ阻害剤としては、(1)アニリノキナゾリン(anilinoquinazolines (AQZs))-AstraZeneca Pharmaceuticals (Scott et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 304, 433-440 (2003))、(2)M826 - Merck Frosst (Han et al., J. Biol. Chem. 277, 30128-30136 (2002))、(3)M867 - Merck Frosst (Methot et al., J.Exp. Med. 199, 199-207 (2004))、(4)ニコチニルアスパチルケトンズ(Nicotinyl aspartyl ketones)- Merck Frosst (Isabel et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 13, 2137-2140 (2003))、などを例示することができる。
【0042】
また、その他の非ペプチド性化合物のカスパーゼ阻害剤として、(1)IDN-6556 - Idun Pharmaceuticals (Hoglen et al., J.Pharmacol. Exp. Ther. 309, 634-640 (2004))、(2)MF-286 and MF-867 - Merck Frosst (Los et al., Drug Discov. Today 8, 67-77 (2003))、(3)IDN-5370 - Idun Pharmaceuticals (Deckwerth et al., Drug Dev. Res. 52, 579-586 (2001))、(4)IDN-1965 - Idun Pharmaceuticals (Hoglen et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 297, 811-818 (2001))、(5)VX-799 - Vertex Pharmaceuticals (Los et al., Drug Discov. Today 8, 67-77 (2003))、などを挙げることができる。このほかに、M-920 and M-791 - Merck Frosst (Hotchkiss et al., Nat. Immunol. 1, 496-501 (2000))などもカスパーゼ阻害剤として挙げることができる。
【0043】
本発明において、好ましいカスパーゼ阻害剤は、Z-VAD FMKである。カスパーゼ阻害剤としてZ-VAD FMKを用いる場合、その添加は造血前駆細胞を培養する培地に対し行われる。培地中でのZ-VAD FMKの好ましい濃度は、例えば、10μM以上、20μM以上、30μM以上、40μM以上、および50μM以上が挙げられ、好ましくは、30μM以上である。
【0044】
本発明において造血前駆細胞から巨核球前駆細胞を誘導するために用いる培地は、特に限定されないが、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えばIMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)およびこれらの混合培地などが包含される。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、セレン、脂肪酸、微量元素、2-メルカプトエタノール、チオールグリセロール、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、サイトカインなどの1つ以上の物質も含有し得る。サイトカインとは、血球系分化を促進するタンパク質であり、例えば、VEGF、TPO、SCFなどが例示される。本発明において好ましい培地は、血清、インスリン、トランスフェリン、セリン、チオールグリセロール、アスコルビン酸、TPOを含むIMDM培地である。より好ましくは、さらにSCFを含む。また、薬剤応答性のプロモーターを含む発現ベクターを用いた場合、強制発現する工程においては、対応する薬剤、例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンを培地に含有させることが望ましい。
【0045】
本発明において、造血前駆細胞から巨核球前駆細胞を誘導するための温度条件は、特に限定されないが、37℃以上の温度で造血前駆細胞を培養することにより、巨核球前駆細胞への分化を促進することが確認されている。ここで、37℃以上の温度とは、細胞にダメージを与えない程度の温度が適当であることから、例えば、約37℃〜約42℃程度、約37〜約39℃程度が好ましい。また、37℃以上の温度における培養期間については、当業者であれば巨核球前駆細胞の数などをモニターしながら、適宜決定することが可能である。所望の巨核球前駆細胞が得られる限り、日数は特に限定されないが、例えば、少なくとも6日間以上、12日以上、18日以上、24日以上、30日以上、42日以上、48日以上、54日以上、60日以上であり、好ましくは60日以上である。培養期間が長いことについては、巨核球前駆細胞の誘導においては問題とされない。また、培養期間中は、適宜、継代を行うことが望ましい。
【0046】
体細胞の初期化方法
本発明において、体細胞を初期化する方法として、体細胞へ初期化因子を導入することによって行い得る。ここで、初期化因子とは、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等の遺伝子または遺伝子産物が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO 2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO 2010/111409、WO2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat. Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al., (2009), Nat. Biotechnol., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、Kim JB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720、Maekawa M, et al. (2011), Nature. 474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。より好ましい初期化因子は、Oct3/4、Sox2およびKlf4を含む組み合わせである。
【0047】
上記初期化因子には、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool(登録商標) (Millipore)、HuSH 29mer shRNA Constructs against HDAC1 (OriGene)等)等の核酸性発現阻害剤など]、MEK阻害剤(例えば、PD184352、PD98059、U0126、SL327およびPD0325901)、Glycogen synthase kinase-3阻害剤(例えば、BioおよびCHIR99021)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-azacytidine)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX-01294等の低分子阻害剤、Suv39hl、Suv39h2、SetDBlおよびG9aに対するsiRNAおよびshRNA等の核酸性発現阻害剤など)、L-channel calcium agonist(例えばBayk8644)、酪酸、TGFβ阻害剤またはALK5阻害剤(例えば、LY364947、SB431542、616453およびA-83-01)、p53阻害剤(例えばp53に対するsiRNAおよびshRNA)、ARID3A阻害剤(例えば、ARID3Aに対するsiRNAおよびshRNA)、miR-291-3p、miR-294、miR-295およびmiR-302などのmiRNA、Wnt Signaling(例えばsoluble Wnt3a)、神経ペプチドY、プロスタグランジン類(例えば、プロスタグランジンE2およびプロスタグランジンJ2)、hTERT、SV40LT、UTF1、IRX6、GLISl、PITX2、DMRTBl等の樹立効率を高めることを目的として用いられる因子も含まれており、本明細書においては、これらの樹立効率の改善目的にて用いられた因子についても初期化因子と別段の区別をしないものとする。
【0048】
初期化因子は、タンパク質の形態の場合、例えばリポフェクション、細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATおよびポリアルギニン)との融合、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入してもよい。
【0049】
一方、DNAの形態の場合、例えば、ウィルス、プラスミド、人工染色体などのベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウィルスベクターとしては、レトロウィルスベクター、レンチウィルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウィルスベクター、センダイウイルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、核初期化物質が発現可能なように、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列、緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。また、上記ベクターには、体細胞への導入後、初期化因子をコードする遺伝子もしくはプロモーターとそれに結合する初期化因子をコードする遺伝子を共に切除するために、それらの前後にLoxP配列を有してもよい。
【0050】
初期化因子がRNAの形態の場合、例えばリポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入しても良く、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびpseudouridine (TriLink Biotechnologies)を取り込ませたRNAを用いても良い(Warren L, (2010) Cell Stem Cell.7:618-630)。
【0051】
初期化後の細胞のための培養液としては、例えば、10〜15%FBSを含有するDMEM、DMEM/F12又はDME培養液(これらの培養液にはさらに、LIF、penicillin/streptomycin、puromycin、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)または市販の培養液(例えば、マウスES細胞培養用培養液(TX-WES培養液、トロンボX社)、霊長類ES細胞培養用培養液(霊長類ES/iPS細胞用培養液、リプロセル社)、無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology社))などが含まれる。
【0052】
初期化後の細胞の培養法の例としては、たとえば、37℃、5%CO
2存在下にて、10%FBS含有DMEM又はDMEM/F12培養液上で体細胞と初期化因子とを接触させ約4〜7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上にまきなおし、体細胞と初期化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培養液で培養し、該接触から約30〜約45日又はそれ以上ののちにiPS様コロニーを生じさせることができる。
【0053】
あるいは、37℃、5% CO
2存在下にて、フィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上で10%FBS含有DMEM培養液(これにはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25〜約30日又はそれ以上ののちにES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009), PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin-5(WO2009/123349)およびマトリゲル(BD社))を用いる方法が例示される。
【0054】
この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725, 2009またはNakagawa M, et al, Sci Rep. 4:3594, 2014)。さらに、樹立効率を上げるため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。
【0055】
上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培養液と培養液交換を行う。また、初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ10cm
2あたり約5×10
3〜約5×10
6細胞の範囲が例示される。
【0056】
体細胞の初期化により得られる幹細胞コロニーを単離する工程
本発明では、上述のとおり体細胞へ初期化因子を導入し、培養することで、幹細胞コロニーを得ることができる。本発明において、幹細胞とは、分裂して自分と同じ細胞を作る自己複製能と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞を意味する。本発明の幹細胞は、コロニーを形成する限り特に限定されないが、幹細胞のうち胎盤を除く組織細胞へ分化する能力を有する多能性幹細胞である。
【0057】
本発明において、コロニーとは、単一細胞に由来する細胞塊を意味する。
【0058】
本発明のクローン化方法においては、得られた幹細胞コロニーを単離する工程を含む。単離においては、単一コロニーを適宜、採取し、他の培養皿へと移すことによって行い得る。
【0059】
巨核球前駆細胞誘導用iPS細胞
本発明において、体細胞が巨核球前駆細胞である場合、上述の通り、薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された外来性の癌遺伝子および外来性のp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子を巨核球前駆細胞の染色体内に含んでいてもよい。その場合、当該巨核球前駆細胞を上述の方法により初期化することによって得られる2次iPS細胞は、同様に薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された外来性の癌遺伝子および外来性のp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子をその染色体内に含む。このとき、巨核球前駆細胞誘導用iPS細胞における外来性の癌遺伝子に対する薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された外来性の癌遺伝子に対する薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された外来性のp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子の含有率が、2倍から7倍であることが好ましく、より好ましくは、3倍から5倍である。同様に、巨核球前駆細胞における外来性の癌遺伝子に対する薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された外来性の癌遺伝子に対する薬剤応答性プロモーターと機能的に連結された外来性のp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子の含有率が、2倍から7倍であることが好ましく、より好ましくは、3倍から5倍である。なお、癌遺伝子およびp16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子は、上述の遺伝子として適宜選択される。
【0060】
幹細胞から2次体細胞へ誘導する工程
本発明のクローン化方法において、上記の方法で得られた幹細胞を2次体細胞へと誘導する工程を含む。本発明において、2次体細胞とは、1次体細胞から幹細胞へ初期化された後、誘導されて得られる体細胞を意味し、好ましくは、1次体細胞と2次体細胞は、同一の体細胞である。本誘導工程では、組み込まれた遺伝子を再度発現させることによって行い得る。遺伝子の再発現は、1次体細胞の初期化により得られた幹細胞から2次体細胞までのいずれかの分化段階の細胞を対応する薬剤と接触させること(対応する薬剤の存在下で遺伝子を発現するプロモーターの場合)、または、1次体細胞の初期化により得られた幹細胞から2次体細胞までのいずれかの分化段階の細胞と対応する薬剤との接触を中止すること(対応する薬剤を除去すると遺伝子を発現するプロモーターの場合)によって行い得る。例えば、rtetRおよびVP16ADの融合遺伝子(reverse tetR)を用いる場合、対応する薬剤を投与することによって遺伝子を再度発現させることができる。「1次体細胞の初期化により得られた幹細胞から2次体細胞までのいずれかの分化段階の細胞」とは、当該幹細胞が2次体細胞に分化するまでに経るあらゆる細胞とすることができる。したがって、本発明において、遺伝子を再発現する前に、当該幹細胞を他の細胞へと誘導してよく、当該誘導後の細胞として、線維芽細胞、造血前駆細胞などが挙げられる。「他の細胞」への誘導は公知の方法にしたがって行うことができる。体細胞として巨核球前駆細胞を用いる場合、上述した造血前駆細胞への誘導方法が例示される。すなわち、幹細胞から造血前駆細胞を誘導し、上述した造血前駆細胞から巨核球前駆細胞を誘導するために用いる培地へ対応する薬剤を投与することで、癌遺伝子、p16遺伝子又はp19遺伝子の発現を抑制する遺伝子、並びに/あるいはアポトーシス抑制遺伝子を強制発現することができる。
【0061】
幹細胞または造血前駆細胞を選択する工程
本発明において、体細胞として巨核球前駆細胞を用いる場合、必ずしも全ての幹細胞が、巨核球前駆細胞へ誘導可能であるとは限らないことから、巨核球前駆細胞へ誘導可能な幹細胞を適宜選択することが好ましく、当該方法として、幹細胞において、MEG3を発現する幹細胞を選択する方法が例示される。本発明において、MEG3を発現する幹細胞由来の造血前駆細胞を選択しても良い。本発明において、MEG3とは、ヒトの場合、例えば、NCBIのアクセッション番号NR_002766、NR_003530、NR_003531、NR_033358、NR_033359、NR_033360、NR_046464、NR_046465、NR_046466、NR_046467、NR_046468、NR_046469、NR_046470、NR_046471、NR_046472またはNR_046473で示される核酸配列からなるノンコーディングRNAである。本発明の方法を適用する幹細胞は、特に限定されないが、1次多能性幹細胞であっても良く、より好ましくは、上記の方法で得られた幹細胞クローンである。発現が高いとは、同時に測定した複数の幹細胞または造血前駆細胞において、平均値より発現が高いことを意味しても良く、または、巨核球前駆細胞へ誘導できない既知の幹細胞または造血前駆細胞での発現と比較して高いことを意味しても良い。
【0062】
本発明において、MEG3の発現を確認する方法として、当業者に周知の方法を用いて行うことができ、例えば、逆転写酵素PCR分析、定量的な逆転写酵素PCR分析、ノーザン・ブロット分析、免疫組織化学、アレイ分析、およびそれらの組合せが例示される。
【0063】
体細胞のHLAを欠損させる方法及びHLAを欠損させた体細胞を製造する方法
一実施態様において、本発明は、次の工程を含む、体細胞のHLAを欠損させる方法、又はHLAを欠損させた体細胞を製造する方法を提供する;
(i)体細胞へ初期化因子を導入し、多能性幹細胞を形成させる工程、
(ii)前記工程(i)で得られた多能性幹細胞においてHLAを欠損させる工程、および
(iii)前記工程(ii)で得られたHLAを欠損させた多能性幹細胞を体細胞へ誘導する工程。
【0064】
本発明のHLAを欠損させる方法に供される体細胞、用いる初期化因子、多能性幹細胞を形成させる方法、および多能性幹細胞を体細胞へ誘導する方法は、上述のクローン化に供される体細胞と同じである。従って、本発明では、体細胞をクローン化し、さらにHLAを欠損させる方法も提供する。
【0065】
本発明において、HLAとは、ヒト白血球型抗原でありα鎖およびL鎖から成るクラスI抗原、DRB1遺伝子がコードするβ鎖とDRA遺伝子がコードするα鎖から成るクラスII抗原およびクラスIII抗原を意味する。体細胞によって、発現するHLAが異なることから、適宜欠損すべきHLAを選択して行うことができ、体細胞として巨核球前駆細胞を用いる場合、クラスI抗原をHLAとして選択して欠損させることが望ましい。HLAの欠損とは、α鎖、L鎖、β鎖のいずれを欠損させてもよく、クラスI抗原を欠損させる場合、L鎖、すなわちβ2-ミクログロブリンを欠損させることが望ましい。
【0066】
本発明の多能性幹細胞において染色体のHLAを欠損させる方法は、相同組換え法など自体公知の方法を適宜選択して行うことができる。
【0067】
血小板の製造方法
本発明の血小板の製造方法は、本発明のクローン化方法で巨核球前駆細胞をクローン化する工程と、クローン化された巨核球前駆細胞を巨核球細胞に成熟させ、血小板を放出させる工程を含む。巨核球前駆細胞を成熟させ、血小板を放出させる工程は、公知の方法又はそれに準ずる方法に従って行うことができる。例えば、巨核球前駆細胞が、MYCファミリー遺伝子、ポリコーム遺伝子およびアポトーシス抑制遺伝子から成る群より選択される少なくとも一つの遺伝子を含む場合、巨核球細胞の成熟は、上記工程(iii)の後、対応する薬剤を培地から除去することにより、MYCファミリー遺伝子、ポリコーム遺伝子および/又はアポトーシス抑制遺伝子の発現を抑制することで行うことができる。成熟した巨核球細胞は、多核化し、血小板を放出する。
【0068】
血小板は、ACD-A液、FFP、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ブドウ糖などと組合せて血小板製剤としてもよく、赤血球細胞と組合せて血液製剤としてもよい。
【0069】
上述の方法でHLAを欠損させた巨核球細胞のクローンを得た場合、これを成熟させて血小板を放出させることにより、HLAを欠損させた血小板を得ることができる。HLAを欠損させた血小板は、レシピエントのHLA型にかかわらず輸血に用いることができるので有用である。
【0070】
巨核球前駆細胞の増殖能力を改善する方法
本発明は、上述の通り、巨核球前駆細胞を初期化により幹細胞を作製し、さらに、巨核球前駆細胞へと変換することによって、当該巨核球前駆細胞の増殖能力を改善する方法を提供する。従って、一実施態様において、本発明の巨核球前駆細胞の増殖能力を改善する方法は、以下の工程を含む;
(i)薬剤応答性に発現する外来性の遺伝子を有する巨核球前駆細胞へ初期化因子を導入し、幹細胞コロニーを形成させる工程、
(ii)前記工程(i)で得られた幹細胞コロニーを単離する工程、および
(iii)前記工程(ii)で単離された幹細胞コロニーに含まれる幹細胞を巨核球前駆細胞へ誘導する工程であって、当該体細胞への誘導が、対応する薬剤と接触する工程を含む方法である、工程。
【0071】
本発明において、増殖能力を改善するとは、染色体におけるテロメア配列が長くなることを意味する。本発明において、テロメア配列とは、TTAGGGの繰り返し配列を意味し、テロメア配列が長くなるとは、当該繰り返し数が多くなることを意味する。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び試験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
巨核球前駆細胞の製造
3x10
5cells/dishでMEFを播種した6cm dishで維持されているセミコンフルエント状態のiPS細胞(SeV2: neonate human fibroblastへWO2010/134526の方法に従って、センダイウィルスベクターによりc-MYC, OCT3/4, SOX2およびKLF4を導入することによって作製)より、iPS-sacを介して造血前駆細胞(HPC)の誘導を行った。詳細には、iPS細胞をヒトトリプシン溶液を用いて遊離させ、1/50から1/30程度の細胞を、コロニーの塊として、マイトマイシンC(MMC)処理したC3H10T1/2(理研から入手可能)上へ播種した。なお、MMC処理したC3H10T1/2は、iPS細胞を播種する前日に8x10
5 cells / dishで10cm dishへ播種して用意した。播種後、20 ng / ml VEGFを添加したEagel’s Basal Medium (EBM)中で5% O
2、5% CO
2、37℃雰囲気下で培養を開始した(day0)。Day3およびday6において、同じ培地で培地交換を行った。
【0074】
Day7において、20% O
2、5% CO
2、37℃の雰囲気下で培養を継続した。Day9、day11およびday13において、同じ培地で培地交換を行った。Day14にセルスクレーパーまたはピペット先端を用いて物理的に細胞を剥離し、40マイクロメートルのセルストレーナーを通して均一の大きさの細胞を回収した。細胞の大きさから、当該回収した細胞は、造血前駆細胞(HPC)であることが確認された。
【0075】
Day14において、回収されたHPCをMMC処理したC3H10T1/2上に3x10
4から1x10
5 cells / wellで播種した。培地はSCF 50 ng / ml, TPO 50 ng / ml, ドキシサイクリン0.5 μg / mlを添加したEBMを用いた。続いて、レンチウィルスベクターでc-MYCおよびBMI1をHPCへ導入した。用いたレンチウィルスベクターは、Tetracycline制御性のinducible vectorであり、LV-TRE-mOKS-Ubc-tTA-I2GのmOKSカセットをc-MYCまたはBMI1に組み替えることで作製した(それぞれ、LV-TRE-c-MYC-xL-Ubc-tTA-I2GまたはLV-TRE-BMI1-Ubc-tTA-I2G)(Nakamura S, et al, Cell Stem Cell. 14:535-548, 2014)。感染に用いたウィルス粒子は、293T細胞へ当該レンチウィルスベクターを感染させて作製された(MOI 300)。感染時のみプロタミンを添加した。以後、1日おきに培地交換を行い、週に1度または2度C3H10T1/2および培地を交換した。
【0076】
c-MYCおよびBMI1を導入してから2週間後に、レンチウィルスベクターを用いてBCL-xlをMOI 10で導入した。BCL-xlの導入に用いたレンチウィルスベクターは、Tetracycline制御性のinducible vectorであり、上述と同様にmOKSカセットをBCL-xlに組み替えることで作製された(LV-TRE-BCL-xL-Ubc-tTA-I2G)(Nakamura S, et al, Cell Stem Cell. 14:535-548, 2014)。感染時のみプロタミンを添加した。以後、10cm dishの10T1/2フィーダー上でSCF 50 ng / ml, TPO 50 ng / ml, ドキシサイクリン0.5 μg / mlを添加したEBM中で維持培養し、巨核球前駆細胞株(imMKCLとも言う)を作製した。
【0077】
限界希釈法
巨核球前駆細胞(imMKCL)を96-well plate上に1.5 cells/300uL/wellの密度で播種し、15% fetal bovine serum (FBS)、50 ng/mL human SCF (R&D systems)、50ng/mL TPO、5 mg/mL doxycycline (Clontech)、2 mg/mL puromycin (Sigma-Aldrich)を含有するIscove's modified Dulbecco's medium (IMDM)中、37°C、5%CO
2雰囲気下で 、10から14日間培養した。スケールアップのため、各wellを、それぞれ、24-well plateおよび6-well plateへ移し、同様に培養を継続した。各well中の細胞を巨核球前駆細胞クローンと称する。
【0078】
巨核球前駆細胞クローンの解析(1回目)
上記の方法で得られた各巨核球前駆細胞クローンをPBSを用いて2度洗浄し、4 x 10
5/3mLで6-well plateへ播種し、50 ng/mL human SCF、50 ng/mL human TPO、750 nM SR1(Calbiochem)、15% FBSを含有するIMDM中で培養した。7日後、培養上清を回収し、血小板産生数および血小板機能を評価した。血小板産生数の評価は次のように行った。すなわち、CD41(BioLegend)、CD42a(eBioscience)およびCD42b(BioLegend)に対する蛍光色素結合抗体およびpropidium iodide(Sigma-Aldrich)を培養上清に添加し、30分間インキュベート後にFACSVerseO(BD Biosciences)を用いて分析した。分析は、大きさで巨核球前駆細胞を排除した後、CD41、CD42aおよびCD42bが陽性であることを指標として計数し、巨核球前駆細胞あたりの血小板数として算出した。血小板機能の評価は次のように行った。すなわち、CD41、CD42b、activated glycoprotein (GP) IIb/IIIa(PAC-1; BD Biosciences)に対する蛍光色素結合抗体および0.4 mM phorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) (Sigma-Aldrich )を培養上清に添加し、30分間インキュベート後にFACSVerseO を用いて分析した。分析は、activated GP IIb/IIIaの発現レベルを蛍光強度(MFI)で計測し、評価に用いた。
【0079】
上記の方法により、22個の巨核球前駆細胞クローンについて、血小板産生量および血小板機能を評価したところ、クローン1、クローン4およびクローン13にて、1.6倍から1.9倍ほど対照(クローン化前の巨核球前駆細胞)よりも血小板産生量が高いことが確認された(
図1A)。血小板機能としては、クローン13が最もその活性が高く、対照と比較してPMA刺激によく反応することが示された(
図1B)。
【0080】
巨核球前駆細胞クローンの解析(2回目)
1回目の解析結果において血小板産生量が多く、血小板機能が高かった5つのクローン(1、2、4、11および13)について、再度同様に解析を行った。血小板産生量は、クローン4のみが、対照に対して1.3倍程度多いことが確認された(
図2A)。また、血小板機能としては、クローン13が、対照に対して3.7倍程度多いことが確認されたが、クローン1、2、4および11では、1回目の解析結果とは異なり、対照に対して変化がなかった(
図2B)。
【0081】
巨核球前駆細胞クローンの解析(3回目)
2回目の解析結果について、再度同様に解析を行った。血小板産生量は、対照に対して変化がなかった(
図3A)。また、血小板機能としては、クローン4および13が、対照に対してそれぞれ1.7倍および1.6倍程度多いことが確認されたが、差異は小さくなった(
図3B)。
【0082】
以上の結果より、限界希釈により得られた巨核球前駆細胞クローンは、血小板産生能および産生された血小板において安定した機能を示さないことが確認された。従って、巨核球前駆細胞のクローン化において、限界希釈法を用いることは不適切であると示唆された。
【実施例1】
【0083】
巨核球前駆細胞の初期化によるクローン化
上述の方法で得られた巨核球前駆細胞を初期化によりiPS細胞を作製し(2次iPS細胞)、2次iPS細胞にてクローン化を行い、再度巨核球前駆細胞へと誘導しクローン化した(2次巨核球前駆細胞)(
図4A)。詳細には、以下の通りである。
【0084】
1x10
6cellsの初代巨核球前駆細胞株へAmaxa Nucleofectorを用いて4種類のエピゾーマルベクタープラスミド(pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pCXLE-hSK、pCXLE-hULおよびpCXWB-EBNA1;Okita K, et al., Stem Cells. 31:458-66, 2013およびOkita K, et al., Nat Methods. 8:409-12, 2011)をエレクトロポレーションにより導入した後、フィーダー細胞である1-2x10
5 cells / 6cm dishのMEF上に3x10
5 cellsで播種した。14日後、得られたコロニーをピックアップして、拡大培養し、10個の2次iPS細胞クローンを解析に用いた。
【0085】
2次iPS細胞クローンの解析
上述の方法で得られた10個の2次iPS細胞クローンからゲノムDNAを抽出し、c-MYCおよびBMI1に対してexon内でPCR反応可能なprimerを用いて、定量PCRを行った。その結果、内在性の2コピー以外の外来性のc-MYCおよびBMI1の挿入数を検討したところ、10種の2次iPS細胞クローンの外来性のBMI1の挿入数は約7コピーから26コピーであり、外来性のc-MYCの挿入数は約1コピーから6コピーと全て異なっていた(
図4B)。
【0086】
上述の方法で得られた10個の2次iPS細胞クローン(前記と一部異なるクローンを用いた)からゲノムDNAを抽出し、全ゲノム配列解析を行い、外来性のc-MYCおよびBMI1の挿入数を検討したところ、以下の表1に示す比率にて、染色体へ挿入されていることが確認された。2次iPS細胞クローンは、c-MYCの挿入数に対してBMI1の挿入数を約3倍から5倍含有していることが確認された。
【表1】
【0087】
以上の結果より、巨核球前駆細胞の製造工程において導入された外来性の遺伝子の組み込み数は、巨核球前駆細胞ごとに異なるが、一定の比率で組み込まれた場合に、巨核球前駆細胞が製造されることが示唆された。
【0088】
2次iPS細胞クローンからの2次巨核球前駆細胞クローンの誘導
3個の2次iPS細胞クローン(#4、#11および#12)から上述した方法にてiPS-sacを介して14日後にHPCクローンをそれぞれ得た。得られたHPCクローンを1x10
5 cells / wellで6-wellへ播種し、SCF 50 ng / ml, TPO 50 ng / ml, ドキシサイクリン0.5 μg / mlを添加したEBM中で27日間培養し、2次巨核球前駆細胞クローンを得た。得られた3つの巨核球前駆細胞クローンを解析したところ、CD41aおよびCD41b陽性であり、CD235陰性である均一な細胞群が得られた(
図5AおよびB)
【0089】
HLA欠損(HLA-null)2次iPS細胞クローンの作製
上述の方法で得られた2次iPS細胞クローン(#11)へ、
図6Aに示したTarget vectorを導入し、相同組換えによりβ2-Microglobulin (β2m)のExon1を欠失させた。相同組換えが適切に行われているかについては、野生型と組換え型において
図6Aに示された位置に設計されたプライマーを用いてPCR産物を確認することによって行われた(
図6B)。その結果、2つのクローン(Clone 3及び4)においてβ2mの欠損型2次iPS細胞クローンが樹立された。
【0090】
続いて、上述の方法により、β2mの欠損型2次巨核球前駆細胞クローンを誘導した。また、上記の方法により、培養上清から血小板を得た。β2mの欠損型2次巨核球前駆細胞クローンおよび血小板において、β2m(BD Pharmingen )およびHLA(BD Pharmingen )に対する抗体を用いて、フローサイトメトリーを行ったところ、いずれにおいてもβ2mおよびHLAが欠失していることが確認された(
図7A)。
【0091】
β2mの欠損型2次巨核球前駆細胞クローンの血小板機能の確認
野生型2次iPS細胞クローン(#11)およびβ2mの欠損型2次巨核球前駆細胞クローンの培養上清中の血小板を上述と同様にPMAで刺激した後、CD42a抗体、CD42b抗体およびPAC1と接触させ、CD42a、CD42bおよびPAC1の陽性レベルを蛍光強度(MFI)で計測し、評価したところ、野生型とβ2mの欠損型において、その違いは見られなかった(
図7B)。以上より、β2mを欠損した血小板は、野生型の血小板と機能は変わらないことが示された。
【実施例2】
【0092】
巨核球前駆細胞の誘導に適したiPS細胞のマーカーの探索
上述の方法で得られたimMKCLを樹立することができた2種の2次iPS細胞(以下、Good-iPSCと言う)および、上述の方法では、imMKCLを樹立することができなかった2種のiPS細胞(以下、Bad-iPSCと言う)より、mRNAを抽出し、製造者マニュアルに従って、Illumina HumanHT-12 v4.0またはAffymetrix GeneChip Human Gene 2.0 ST Arrayを用いてマイクロアレイを行い、各2種のGood-iPSCおよびBad-iPSCの発現量を平均化し、解析を行った(
図8AおよびB)。
【0093】
さらに、Good-iPSCおよびBad-iPSCより、上述と同様の方法で、造血前駆細胞(HPC)を誘導し(以下、それぞれ、Good-HPCおよびBad- HPCと言う)、同様に、誘導し、Illumina HumanHT-12 v4.0またはAffymetrix GeneChip Human Gene 2.0 ST Arrayを用いてマイクロアレイを行った(
図8AおよびB)。
【0094】
以上のマイクロアレイの解析結果、Good-iPSCおよびGood-HPCの共に、MEG3が
高発現していることが確認された。従って、2次iPS細胞クローンまたはそれから誘導されたHPCにおいて、MEG3の発現を確認することで、巨核球前駆細胞の誘導に適した2次iPS細胞クローンを選択することができることが示唆された。
【実施例3】
【0095】
2次iPS細胞クローン由来巨核球前駆細胞の細胞増殖能
本発明によるクローン化の効果を検討するべく、2次iPS細胞クローン由来巨核球前駆細胞の細胞増殖能をクローン化前の巨核前駆細胞株と比較した。本実験においては、2次iPS細胞クローンとして、表1の2nd-iPS_11由来のものを用いた。具体的には、2nd-iPS_11から上述した方法にてiPS-sacを介して14日後に得られたHPCクローンを1x10
5cells / wellで6-wellへ播種し、SCF 50 ng / ml, TPO 50 ng / ml, ドキシサイクリン0.5 μg / mlを添加したEBM中で27日間培養することにより、2次巨核球前駆細胞クローンを得た(Clone 2)。比較例として、「巨核前駆細胞の製造」の項で調製したクローン化前の巨核前駆細胞(Parental)を使用した。これらの細胞を1x10
5 cells / wellで6-wellへ播種し、SCF 50 ng / ml, TPO 50 ng / ml, ドキシサイクリン0.5 μg / mlを添加したEBM中で15日間培養した。
【0096】
15日間の培養期間中定期的に細胞をカウントした結果、2次iPS細胞クローン由来の巨核球前駆細胞はクローン化前の巨核前駆細胞よりも早い増殖を示すことが明らかとなった。結果を
図9A及びBに示す。
【0097】
2次iPS細胞クローン由来巨核球前駆細胞の成熟能
15日間培養した2次巨核球前駆細胞クローン(Clone 2)を更に巨核球成熟条件(EBM中に SCF 50 ng / ml, TPO 50 ng / ml を添加し、さらにSR-1 (StemRegenin1)(Selleckchem社製)750 nMとY27632(wako社製) 10 microMを添加した培養条件)で培養した。巨核前駆細胞(Parental)も2次巨核球前駆細胞クローンと同様の培養条件で巨核球に成熟させた。両細胞についてタイムラプスイメージングを行い撮影した画像を
図10Aに、そして得られた画像をImageJで解析した結果を
図10Bに示す。これらの結果から、本発明に従いクローン化された巨核球の方がクローン元の細胞から誘導された巨核球より優れた成熟能(細胞肥大化)を示した。
【0098】
2次iPS細胞クローン由来巨核球細胞の血小板産生能
続いて、得られた巨核球の血小板産生能を比較するために、
図10Aの画像中で血小板を形成した細胞の数を目視で計測した。その結果、本発明に従いクローン化された細胞に由来する巨核球の方が優れた血小板産生能(proplatelet形成数)を示すことが明らかになった(** p<0.01)。