特許第6873907号(P6873907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873907遺伝性眼疾患を治療するための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873907
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】遺伝性眼疾患を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/075 20060101AFI20210510BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20210510BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20210510BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20210510BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20210510BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20210510BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20210510BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20210510BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20210510BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20210510BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   C07K14/075ZNA
   C12N15/11 Z
   C12N15/113 Z
   C12N15/34
   C12N15/63 Z
   C12N15/861 Z
   C12N7/01
   C12N5/10
   A61K35/76
   A61K31/7105
   A61P27/02
   A61P27/06
   A61K48/00
   A61K35/12
   A61K35/30
   !C12Q1/02
【請求項の数】35
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-543944(P2017-543944)
(86)(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公表番号】特表2018-506980(P2018-506980A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】US2016018970
(87)【国際公開番号】WO2016134375
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】62/118,934
(32)【優先日】2015年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511293663
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ アイオワ リサーチ ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】511197958
【氏名又は名称】フォンダッツィオーネ・テレソン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】デイビッドソン, ビバリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ヨン ホン
(72)【発明者】
【氏名】アウリッキオ, アルベルト
【審査官】 原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/159036(WO,A1)
【文献】 特表2014−518614(JP,A)
【文献】 米国特許第06399575(US,B1)
【文献】 Molecular Therapy,2004年,vol. 9, no. 2,p. 198-208
【文献】 Sci. Tranl. Med.,2013年,vol. 5, iss. 189,189ra76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼細胞標的化ペプチドを含む改変アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質であって、前記標的化ペプチドはAAVを眼細胞に標的化し、前記標的化ペプチドは、アミノからカルボキシへの方向で発現されるアミノ酸配列GSTPPPM(SEQ ID NO: 1)またはアミノ酸配列MPPPTSG(SEQ ID NO: 5)を含む前記カプシドタンパク質。
【請求項2】
前記標的化ペプチドが、アミノからカルボキシへの方向で発現される、アミノ酸配列GSTPPPM(SEQ ID NO: 1)またはアミノ酸配列MPPPTSG(SEQ ID NO: 5)からなる請求項1に記載のカプシドタンパク質。
【請求項3】
前記標的化ペプチドが、SEQ ID NO: 8の、P34−A35、T138−A139、A139−P140、G453−T454、N587−R588及び/またはR588−Q589の位置で、AAV2カプシド残基の間に挿入される請求項1に記載のカプシドタンパク質。
【請求項4】
前記標的化ペプチドが、SEQ ID NO:11の、D384、G385、I560、T561、N562、E563、E564、E565、N704及び/またはY705の位置で、AAV9カプシド残基の後に挿入される請求項1に記載のカプシドタンパク質。
【請求項5】
前記カプシドタンパク質が、SEQ ID NO:9を含むかまたはそれからなる請求項1に記載のカプシドタンパク質。
【請求項6】
前記標的化ペプチドは罹患した眼細胞を標的とする請求項1に記載のカプシドタンパク質。
【請求項7】
前記標的化ペプチドは、網膜色素変性症、黄斑変性症、Leberの先天性黒内障、早期発症重症網膜ジストロフィー、色覚異常、網膜分離症、眼白子症、眼皮膚白皮症、緑内障、シュタルガルト病、先天性脈絡膜欠如、加齢黄斑変性症、脊髄小脳失調症タイプ7(SCAT)、色盲、及びムコ多糖症(MPS)IV及びMPS VII等の角膜に影響を与えるリソソーム蓄積症、を有する被験体の眼細胞を標的とする、請求項6に記載のカプシドタンパク質。
【請求項8】
前記AAVカプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV−Rh74(アカゲザル由来AAV)、AAVRh10、またはこれらの血清型の改変カプシドである請求項1〜7のいずれか1項に記載のカプシドタンパク質。
【請求項9】
前記AAVがAAV2カプシドである請求項8に記載のカプシドタンパク質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のカプシドタンパク質をコードする核酸。
【請求項11】
核酸配列GGGTCGACGCCGCCTCCTATG(SEQ ID NO:2)を含む請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のカプシドタンパク質を含有するAAVウイルス。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のカプシドタンパク質を含有するウイルスベクター。
【請求項14】
前記ウイルスベクターが、さらに、目的の核酸をコードする核酸配列を含む請求項13に記載のウイルスベクター。
【請求項15】
前記目的の核酸が治療薬である請求項14に記載のウイルスベクター。
【請求項16】
前記治療薬が酵素またはRNAi分子である請求項15に記載のウイルスベクター。
【請求項17】
前記治療薬が、アタキシン7 mirRNA、網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE 65)、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤または可溶性VEGF受容体1(sFif1)、(Rabエスコートタンパク質−1)REP1、L−オプシン、ロドプシン(Rho)、ホスホジエステラーゼ6(3(PDE6I3)、ATP結合カセット,サブファミリーA,メンバー4(ABCA4)、レシチンレチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)、網膜変性,遅い/ペリフェリン(RDS/ペリフェリン)、チロシンタンパク質キナーゼMer(MERTK)、イノシン−5プライムモノホスフェートデヒドロゲナーゼ,I型(IMPDHI)、グアニル酸シクラーゼ2D(GUCY2D)、アリール−炭化水素相互作用タンパク質様1(AIPL1)、網膜色素変性GTPアーゼレギュレーター相互作用タンパク質1(RPGRIPI)、イノシン−5−プライムモノホスフェートデヒドロゲナーゼ,I型(IMPDH1グアニンヌクレオチド結合タンパク質、アルファト形質導入活性ポリペプチド2(GNAT2)、環状ヌクレオチド依存性チャネルベータ3(CNGB3)、レチノサチシン1(Rs1)、眼球白内障1型(OA1)、眼皮膚白皮症型1(OCA1)チロシナーゼ、P21 WAF−1/Cipl、血小板由来増殖因子(PDGF)、エンドスタチンアンギオスタチン、アリールスルファターゼB、または13−グルクロニダーゼである請求項15に記載のウイルスベクター。
【請求項18】
請求項12に記載のAAVウイルスまたは請求項13〜17のいずれかに1項に記載のウイルスベクター及び担体を含む組成物。
【請求項19】
請求項12に記載のAAVウイルスまたは請求項13〜17のいずれかに1項に記載のウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項13〜17のいずれか1項に記載のウイルスベクターを含む細胞。
【請求項21】
前記細胞が哺乳動物細胞である請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
前記細胞がヒト細胞である請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
前記細胞が非ヒト細胞である請求項21に記載の細胞。
【請求項24】
前記細胞がインビトロであり、任意に前記細胞が眼細胞である請求項20〜23のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項25】
前記細胞がインビボであり、任意に前記細胞が眼細胞である請求項20〜23のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項26】
哺乳動物の眼疾患を治療するための、請求項13〜17のいずれか1項に記載のウイルスベクターまたは請求項20〜25のいずれか1項に記載の細胞を含む組成物。
【請求項27】
前記哺乳動物がヒトである請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記疾患が、網膜色素変性症、黄斑変性症、Leberの先天性黒内障、早期発症重症網膜ジストロフィー、色覚異常、網膜分離症、眼白子症、眼皮膚白皮症、緑内障、シュタルガルト病、先天性脈絡膜欠如、加齢黄斑変性症、SCAT、色盲、またはMPS IV及びMPS VII等の角膜に影響を与えるリソソーム蓄積症である請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
請求項13〜17のいずれか1項に記載のウイルスベクターを含む、被験体の眼への薬剤の送達のための組成物であって、眼細胞は前記組成物を形質導入されることを特徴とし、前記形質導入された眼細胞が前記治療薬を発現し、前記組成物が前記被験体の眼に送達される、組成物。
【請求項30】
前記細胞が形質導入された眼細胞であり、前記形質導入された眼細胞が、網膜外網状層(OPL)内にあるか、それを含む請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
医学的処置または診断に使用するための、請求項13〜17のいずれか1項に記載のウイルスベクターを含む組成物。
【請求項32】
哺乳動物の眼疾患を治療するために有用な医薬を調製するための、請求項13〜17のいずれか1項に記載のウイルスベクターの使用。
【請求項33】
医学的処置または診断に使用するための、請求項20〜23のいずれか1項に記載の細胞を含む組成物。
【請求項34】
哺乳動物の眼疾患を治療するために有用な医薬を調製するための、請求項20〜23のいずれか1項に記載の細胞の使用。
【請求項35】
哺乳動物の眼疾患の予防的または治療的処置に使用するための、請求項13〜17のいずれか1項に記載のウイルスベクターを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年2月20日に出願された米国仮特許出願第62/118,934号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
序論
遺伝子導入は、現在、細胞レベル及び分子レベルの両方で生物学的事象及び疾患プロセスの分析のための強力なツールとして広く認識されている。最近、遺伝性(例えば、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損)または後天性(例えば、癌または感染性疾患)のいずれかのヒト疾患の治療のために遺伝子治療を適用することがかなり注目を集めている。改善された遺伝子導入技術の出現と、欠損遺伝子関連疾患のますます拡大するライブラリーの同定により、遺伝子治療は治療理論から現実の事実に急速に発展した。
【0003】
伝統的に、遺伝子治療は、先天性遺伝子異常を修正するために、患者の細胞に外因性遺伝子を導入する手順として定義されてきた。現在、4500以上のヒトの疾患が遺伝的に分類されているが、ヒトゲノムの特異的突然変異は、これらの疾患の比較的少ないものとして特定されている。最近まで、これらのまれな遺伝病は、遺伝子治療努力の排他的な標的であった。従って、今日までのNIH認可の遺伝子療法プロトコールの大部分は、既知の先天性遺伝子異常を有する個体の体細胞に欠損遺伝子の機能的コピーを導入することに向けられている。最近では、ほとんどのヒト癌、ある種の心臓血管疾患、及び多くの変性疾患にも重要な遺伝的要素があり、新規遺伝子治療の設計のためには、それらは「遺伝的障害」とみなされるべきであると研究者や臨床医は認識し始めた。このため、遺伝子治療は、最近では、病変生物に新しい遺伝情報を導入することによる疾患の表現型の修正として広く定義されている。
【0004】
インビボ遺伝子治療において、導入された遺伝子は、インサイチュで、即ちレシピエント内で、レシピエント生物の細胞に導入される。インビボ遺伝子治療は、いくつかの動物モデルにおいて試験されている。いくつかの最近の刊行物では、筋肉、造血幹細胞、動脈壁、神経系及び肺等の臓器及び組織へのインサイチュでの直接遺伝子導入の実現可能性が報告されている。骨格筋、心筋へのDNAの直接注入、及びDNA−脂質複合体の血管系への注入もまた、インビボで挿入遺伝子産物の検出可能な発現レベルをもたらすことも報告されている。
【0005】
眼の遺伝的疾患、例えば失明を引き起こす疾患のような眼の遺伝による遺伝子疾患の治療は依然として問題である。このような例としては、網膜色素変性症、黄斑変性症、Leber先天性黒内障、Leber遺伝性視神経症、早期発症重症網膜ジストロフィー、色覚異常、網膜分離症、眼白子症、眼皮膚白皮症、緑内障、シュタルガルト病、先天性脈絡膜欠如、加齢黄斑変性症、脊髄小脳失調症7型(SCAT)、色盲、及びムコ多糖症(MPS)IV及びMPS VII等の角膜に影響を与えるリソソーム蓄積症が挙げられる。従って、眼の遺伝病の治療法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ウイルスベクター等の薬剤を眼細胞に標的化する機能を有するペプチドを発見した。本開示は、これらの新規なペプチドを利用して、例えば、ウイルスカプシドを目的の細胞タイプに導く方法を記載する。この場合、眼細胞(例えば、網膜細胞)は、特定されたペプチドによって標的化される。このようなペプチドを含むように改変されたカプシドタンパク質を有するベクターを、治療薬を眼に提供するために使用することができる。
【0007】
本明細書で使用されるように、用語「標的」は、アデノ随伴ウイルス(AAV)等のウイルスのカプシドタンパク質が、別のタイプの組織(例えば、脳組織)よりも1つのタイプの組織(例えば、網膜細胞) に優先的に結合することを意味する。特定の実施形態において、遺伝子改変(組換え)カプシドタンパク質は、比較可能な非改変カプシドタンパク質よりも10〜1000%高いレベルで結合することによって眼細胞を「標的」化し得る。例えば、遺伝子改変カプシドタンパク質を有するAAVは、非改変AAVウイルスよりも50〜100%高いレベルで眼細胞に結合し得る。
【0008】
本発明は、標的化ペプチドが3〜10個のアミノ酸(即ち、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸)長であり、且つ標的化ペプチドがAAVを眼細胞に標的化させる、改変アデノ随伴ウイルス(AAV)を提供する。特定の実施形態では、標的化ペプチドは、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸長である。
【0009】
本発明は、上記のペプチドをコードするよう遺伝子が改変されたカプシドタンパク質を含有するAAVウイルスを提供する。
【0010】
本発明は、上記ウイルスベクターまたは上記の細胞を哺乳動物に投与することによって、哺乳動物における疾患(例えば、眼疾患)を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、哺乳類はヒトである。特定の実施形態において、これらの疾患は、網膜色素変性症、黄斑変性症、Leberの先天性黒内障、Leberの遺伝性視神経症、早期発症重症網膜ジストロフィー、色覚異常、網膜分離症、眼白子症、眼皮膚白皮症、緑内障、シュタルガルト病、先天性脈絡膜欠如、加齢黄斑変性症、SCAT、色盲、及びMPS IV及びMPS VII等の角膜に影響を与えるリソソーム蓄積症である。
【0011】
特定の実施形態では、疾患はリソソーム蓄積疾患または障害である。特定の実施形態では、この疾患は、TPP1(トリペプチジルペプチダーゼI)、CLN3(Battenin)、PPT1(パルミトイルタンパク質チオエステラーゼI)、CLN6(ニューロンセロイドリポフスチン症タンパク質6)またはCLN8の発現または活性における、欠損または欠陥である。特定の実施形態において、疾患は、幼児NCL、晩期乳児NCL、若年性NCL(バッテン病)及び成人NCL等の神経セロイドリポフスチン症(NCL)等の神経変性疾患である。
【0012】
本発明は、上記のウイルスベクターで眼細胞を形質導入して、形質導入された眼細胞が治療薬を発現し、その薬剤を被験体の眼に送達することによって、被験体の眼に薬剤を送達する方法を提供する。特定の実施形態では、薬剤は、Ataxin7mirRNAである(例えば、SCA 7を治療するため)。特定の実施形態において、薬剤は網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)である(例えばLeberの先天性黒内障を治療するため)。特定の実施形態では、薬剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤または可溶性VEGF受容体1(sFif1)(例えば、加齢性黄斑変性症を治療するためのもの)である。特定の実施形態では、薬剤はREP1である(例えば、黄体ホルモン症を治療するため)。特定の実施形態では、薬剤はL−オプシンである(例えば、色盲を治療するため)。表1は、疾患、標的遺伝子及び対応するコードされたタンパク質の例を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1-1】ペプチド改変AAV(PMAAV)−GSTの配列。AAV2/2(AAV2 ITR/AAV2カプシド)カプシド配列(イタリック体)及びグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)網膜標的化ペプチド(太字及び下線)である。
図1-2】ペプチド改変AAV(PMAAV)−GSTの配列。AAV2/2(AAV2 ITR/AAV2カプシド)カプシド配列(イタリック体)及びグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)網膜標的化ペプチド(太字及び下線)である。
図1-3】ペプチド改変AAV(PMAAV)−GSTの配列。AAV2/2(AAV2 ITR/AAV2カプシド)カプシド配列(イタリック体)及びグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)網膜標的化ペプチド(太字及び下線)である。
図1-4】ペプチド改変AAV(PMAAV)−GSTの配列。AAV2/2(AAV2 ITR/AAV2カプシド)カプシド配列(イタリック体)及びグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)網膜標的化ペプチド(太字及び下線)である。
図2】生きた動物における蛍光イメージングは、相対的な感染効率を示した。AAV2/2注入眼では、緑色蛍光タンパク質(GFP)陽性の斑点領域が観察されたが、PMAAV−GST眼では、広範かつ均一なGFPシグナルが認められた。
図3】PMAAV−GST.CMV.eGFPは、網膜色素上皮(RPE)及び外核層(ONL)層群、及び神経節細胞層(GCL)のいくつかの細胞を標的とした。AAV2/2は主にOPLを標的とした。CMV−サイトメガロウイルス;eGFP−強化されたGFP。
図4】網膜下注射。
図5】未改変AAV2−網膜下注射。
図6】未改変AAV2−網膜下注射。
図7】20×画像PM改変AAV2−網膜下注射。
図8】硝子体内注射。
図9】AAV2硝子体内注射。
図10】AAV2硝子体内注射。
図11】AAV2 PM GST硝子体内注射。
図12】AAV2 PM GST硝子体内注射。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本開示の特定の実施形態は、改変されたカプシドを含み、且つ改変されたカプシドは、ウイルスベクターを眼細胞に標的化する少なくとも1つのアミノ酸配列を含むウイルスベクターを提供する。特定の実施形態では、眼細胞は網膜細胞である。
【0015】
特定の実施形態では、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である。特定の実施形態では、AAVはAAV2であるが、指向性は改変されるので、このような改変は任意のAAVの指向性を変化させるであろう。
【0016】
特定の実施形態では、標的化ペプチドは、アミノからカルボキシへの方向、またはカルボキシからアミノへの方向で表される、GSTPPPM(SEQ ID NO: 1)またはアミノ酸配列GETRAPL(SEQ ID NO: 4)を内部に有する(またはこれらからなる)最大10のアミノ酸長の配列を含む。配列の方向は重要ではないことに留意すべきである。例えば、ペプチドは、ペプチドのアミノ末端からカルボキシ末端まで配向してGSTPPPM(SEQ ID NO: 1)であるか、またはペプチドのアミノ末端からカルボキシ末端まで配向してMPPPTSG(SEQ ID NO: 5)であり得る。
【0017】
特定の実施形態では、標的化ペプチドは、P34−A35、T138−A139、A139−P140、G453−T454、N587−R588及び/またはR588−Q589の位置で、AAV2カプシド残基の間に挿入される。野生型参照AAV2カプシドタンパク質配列の例は、SEQ ID NO:10に提供される。
【0018】
特定の実施形態では、標的化ペプチドは、D384、G385、I560、T561、N562、E563、E564、E565、N704及び/またはY705の位置で、AAV9カプシド残基の後に挿入される。野生型参照AAV9カプシドタンパク質配列の例は、SEQ ID NO:11に提供される。
【0019】
特定の実施形態では、カプシドタンパク質は、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:9を含むかまたはそれからなる。
【0020】
本発明は、上記のカプシドタンパク質をコードする核酸を含むウイルスベクターを提供する。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、目的の核酸をコードする核酸配列をさらに含む。特定の実施形態では、目的の核酸は治療薬である。特定の実施形態において、治療薬は、酵素またはRNAi分子(例えば、siRNA、shRNAまたはmiRNA分子)である。ある態様において、治療薬は、アタキシン7 mirRNA、RPE65、VEGF阻害剤または可溶性VEGF受容体1(sFif1)、REP1、L−オプシン、Rho、PDE6β、ABCA4、LRAT、RDS/ペリフェリン、MERTK、IMPDH1、GUCY2D、RDS/ペリフェリン、AIPL1、ABCA4、RPGRIP1、IMPDH1、AIPL1、GUCY2D、LRAT、MERTK、RPGRIP1、RPE65、ABCA4、GNAT2、CNGB3、Rsl、OA1、(OCAI)チロシナーゼ、P21 WAF−1/Cipl、PDGF、エンドスタチン、アンギオスタチン(Angiostatin)、アリールスルファターゼB、またはβ−グルクロニダーゼである。
【0021】
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載のウイルスベクターをコードする核酸配列を提供する。
【0022】
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載の改変されたカプシドをコードする核酸配列を提供する。本開示の特定の実施形態は、SEQ ID NO:2(GGGTCGACGCCGCCTCCTATG)を含むかまたはそれからなる核酸配列を提供する。本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載の核酸配列によってコードされた改変カプシドを提供する。
【0023】
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載のウイルスベクターを含む細胞を提供する。
【0024】
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載のウイルスベクターによって形質導入された細胞を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、細胞はヒト細胞である。特定の実施形態では、細胞は非ヒト細胞である。特定の実施形態では、細胞はインビトロである。特定の実施形態では、細胞はインビボである。特定の実施形態では、細胞は眼細胞、例えば網膜細胞である。
【0026】
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載のウイルスベクターまたは細胞を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の疾患を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、標的化ペプチドは、罹患した眼細胞を標的とする。特定の実施形態では、標的化ペプチドは、網膜色素変性症、黄斑変性症、Leber先天性黒内障、Leber遺伝性視神経症、早期発症重症網膜ジストロフィー、色覚異常、網膜分離症、眼白子症、眼皮膚白皮症、緑内障、シュタルガルト病、先天性脈絡膜欠如、加齢黄斑変性症、SCAT、色盲、またはMPS IV及びMPS VII等の角膜に影響を与えるリソソーム蓄積症、を有する被験体(対象)の眼細胞を標的とする。
【0027】
特定の実施形態では、被験体は、リソソーム蓄積疾患または障害を有する。特定の実施形態では、この疾患は、TPP1(トリペプチジルペプチダーゼI)、CLN3(Battenin)、PPT1(パルミトイルタンパク質チオエステラーゼI)、CLN6(ニューロンセロイドリポフスチン症タンパク質6)またはCLN8の発現または活性における、欠損または欠陥である。疾患としては、幼児NCL、晩期乳児NCL、若年性NCL(バッテン病)及び成人NCL等の神経セロイドリポフスチン症(NCL)等の神経変性疾患が挙げられる。
【0028】
特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0029】
本開示の特定の実施形態は、被験体の眼に薬剤を送達する方法であって、本明細書に記載のウイルスベクターで眼細胞を形質導入して、形質導入された眼細胞が治療薬を発現し、その治療薬を被験体の眼に送達することを含む方法を提供する。
【0030】
特定の実施形態において、ウイルスベクターは、眼細胞を形質導入する。
【0031】
特定の実施形態では、形質導入された眼細胞は、網膜外網状層(OPL)内にあるか、これを含む。
【0032】
本開示の特定の実施形態は、医学的処置または診断において使用するための、本明細書に記載のウイルスベクターまたは細胞を提供する。
【0033】
本開示の特定の実施形態は、哺乳動物における眼疾患、例えば、遺伝性眼疾患を治療するために有用な医薬を調製するための、本明細書に記載のウイルスベクターまたは細胞の使用を提供する。
【0034】
本開示の特定の実施形態は、このようなペプチドを同定するためにファージディスプレイバイオパニング(phage display biopanning)を使用することを含む、眼組織を標的とするペプチドを同定するための方法を提供する。
【0035】
ベクターは、酵素、分泌タンパク質、核タンパク質、または細胞質タンパク質をさらに含み得る。本明細書中で使用されるように、用語「分泌タンパク質」は、自然に分泌されるか、分泌され得るようにシグナル配列を含むよう改変されるかの、いずれかの分泌タンパク質を含む。例えば、分泌タンパク質はベータ−グルクロニダーゼであり得る。
【0036】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれた場合、「作動可能に連結され」ている。一般に、「作動可能に連結され」とは、連結されているDNA配列が連続していることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続している必要はない。連結は、便宜的制限部位での連結反応(ligation)によって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の方法に従って使用される。さらに、酵素をコードする核酸の複数のコピーを発現ベクター内で一緒に連結することができる。このような複数の核酸は、リンカーによって分離されていてもよい。
【0037】
ベクターは、ヒト免疫不全ウイルスまたはネコ免疫不全ウイルスに基づく、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルス、またはレンチウイルスベクターであり得る。このようなAAVの例は、Davidsonら,PNAS(2000)97:3428−3432に見られる。AAV及びレンチウイルスは、持続的な発現を与えることができ、一方アデノウイルスは一過性発現を提供することができる。
【0038】
本開示は、本明細書に記載のベクターを含む哺乳動物細胞も提供する。細胞はヒトであってもよく、目からであってもよい。細胞型は、幹細胞または前駆細胞集団であり得る。
【0039】
本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチド、ポリペプチド、発現ベクターまたは細胞を投与することによって、哺乳類における遺伝的眼疾患または癌等の疾患を治療する方法を提供する。遺伝性眼疾患または癌は、網膜色素変性症、黄斑変性症、Leber先天性黒内障、Leber遺伝性視神経症、早期発症重症網膜ジストロフィー、色覚異常、網膜分離症、眼白子症、眼皮膚白皮症、緑内障、シュタルガルト病、先天性脈絡膜欠如、加齢黄斑変性症、SCAT、色盲、及びMPS IV及びMPS VII等の角膜に影響を与えるリソソーム蓄積症であり得る。
【0040】
遺伝病は、リソソーム蓄積疾患または障害であり得る。特定の実施形態では、この疾患は、TPP1(トリペプチジルペプチダーゼI)、CLN3(Battenin)、PPT1(パルミトイルタンパク質チオエステラーゼI)、CLN6(ニューロンセロイドリポフスチン症タンパク質6)またはCLN8の発現または活性における、欠損または欠陥である。遺伝病は、幼児NCL、晩期乳児NCL、若年性NCL(バッテン病)及び成人NCL等の神経セロイドリポフスチン症(NCL)等の神経変性疾患であり得る。
【0041】
本開示の特定の態様は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ベクター、及び遺伝子操作された細胞(インビボで改変された)、並びにこれらの使用に関する。特に、本開示は、治療に有効な用量の治療薬の局所送達が可能な遺伝子またはタンパク質療法のための方法に関する。
【0042】
一態様によれば、哺乳動物レシピエントにおいて治療薬を発現させるための細胞発現系が提供される。発現系(本明細書では「遺伝子改変細胞」とも呼ばれる)は、治療薬を発現させるための細胞及び発現ベクターを含む。発現ベクターには、異種の遺伝物質を細胞に送達するための、ウイルス、プラスミド、及び他のビヒクルが含まれるが、これらに限定されない。従って、本明細書で使用される用語「発現ベクター」は、異種の遺伝物質を細胞に送達するためのビヒクルを指す。特に、発現ベクターは、改変アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、或いはレンチウイルスまたはレトロウイルスベクターである。
【0043】
発現ベクターは、さらに、異種遺伝子の転写を制御するプロモーターを含む。プロモーターは、誘導性プロモーター(後述)であってもよい。発現系は、哺乳動物レシピエントへの投与に適している。発現系は、複数の非不死化遺伝子改変細胞を含み得、各々細胞は少なくとも1つの治療薬をコードする少なくとも1つの改変遺伝子を含んでいる。
【0044】
細胞発現系はインビボで形成することができる。さらに別の態様によれば、インビボで哺乳動物レシピエントを治療するための方法が提供される。この方法は、異種遺伝子産物を発現する発現ベクターを、インサイチュ(例、眼内投与等)で患者の細胞に導入することを含む。インビボで発現系を形成するために、治療薬を発現させる発現ベクターをインビボで哺乳動物レシピエントに導入する。
【0045】
さらに別の態様によれば、インビボで哺乳動物レシピエントを治療するための方法が提供される。この方法は、インビボで標的タンパク質を患者に導入することを含む。
【0046】
異種遺伝子を発現させるための発現ベクターは、異種遺伝子産物の転写を制御するための誘導性プロモーターを含むことができる。従って、インサイチュでの治療薬の送達は、異種遺伝子の転写を誘発する条件に細胞をインサイチュで曝露することによって制御される。
【0047】
哺乳動物のレシピエントは、遺伝子置換療法に適した状態を有し得る。本明細書中で使用されるように、「遺伝子置換療法」は、レシピエントに治療薬をコードする外因性遺伝物質を投与し、続いてインサイチュで投与された遺伝物質を発現させることを指す。従って、「遺伝子置換療法に適した状態」という語句は、遺伝的疾患(即ち、1つ以上の遺伝子欠損に起因する疾患状態)、後天的病態(即ち、先天性欠損に起因しない病理学的状態)、癌及び予防プロセス(即ち、疾患または望ましくない医学的状態の予防)等の状態を含む。従って、本明細書で使用されるように、用語「治療薬」は、哺乳動物レシピエントに有益な効果を有する任意の薬剤または物質を指す。従って、「治療薬」は、核酸またはタンパク質成分を有する治療分子及び予防分子の両方を包含する。
【0048】
一実施形態によれば、哺乳動物レシピエントは遺伝的疾患を有し、外因性遺伝物質は疾患を治療するための治療薬をコードする異種遺伝子を含む。さらに別の実施形態では、哺乳動物レシピエントは獲得病理を有し、外因性遺伝物質は病理を治療するための治療薬をコードする異種遺伝子を含む。別の実施形態によれば、患者は癌を有し、外因性遺伝物質は抗新生物薬をコードする異種遺伝子を含む。さらに別の実施形態において、患者は望ましくない医学的状態を有し、外因性遺伝物質は、状態を治療するための治療薬をコードする異種遺伝子を含む。
【0049】
さらに別の実施形態によれば、医薬組成物が開示される。医薬組成物は、複数の上記の遺伝子改変された細胞またはポリペプチド及び薬学的に許容される担体を含む。この医薬組成物は、遺伝子置換療法に適した状態を治療するためのものであってもよく、外因性遺伝物質は、この状態を治療するための治療薬をコードする異種遺伝子を含む。医薬組成物は、治療有効量の治療薬を患者に送達するのに十分な量の遺伝子改変された細胞またはポリペプチドを含むことができる。遺伝子置換療法に適した条件の例を以下に記載する。
【0050】
別の態様によれば、上記医薬組成物の形成方法が提供される。この方法は、細胞に異種遺伝子産物を発現させるための発現ベクターを導入して遺伝子改変細胞を形成し、遺伝子改変細胞を薬学的に許容される担体に入れることを含む。
【0051】
これらの及び他の態様、並びに様々な利点及び有用性は、詳細な説明及び添付の図面を参照することにより、より明らかになるであろう。
【0052】
本明細書中で使用されるように、用語「酵素」、「分泌タンパク質」、「核タンパク質」または「細胞質タンパク質」には、これらのポリペプチドの変異体または生物学的に活性若しくは不活性なフラグメントが含まれる。ポリペプチドの1つである「変異体」は、天然のタンパク質と完全には同一ではないポリペプチドである。このような変異体タンパク質は、アミノ酸配列を1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換によって改変することにより得ることができる。タンパク質のアミノ酸配列は、例えば置換によって改変され、天然のポリペプチドと比較して実質的に同じまたは改善された性質を有するポリペプチドを作り出す。置換は、保存された置換であってもよい。「保存された置換」とは、アミノ酸と類似の側鎖を有する別のアミノ酸との置換である。保存された置換は、アミノ酸の電荷またはアミノ酸の側鎖のサイズ(あるいは、側鎖内の化学基のサイズ、電荷または種類)において最小の変化が可能なアミノ酸による置換であり、これにより全ペプチドがその空間的コンフォメーションを保持するが、生物学的活性は変化する。例えば、共通の保存された変化は、AspからGlu、AsnまたはGln;HisからLys、ArgまたはPhe;AsnからGln、AspまたはGlu;及びSerからCys、ThrまたはGlyへの置換であり得る。アリン(Aline)は他のアミノ酸の代用として一般的に使用される。20個の必須アミノ酸は、以下:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及び非極性側鎖を有するメチオニン;グリシン、セリン、スレオニン、シスチン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミン(荷電していない極性側鎖を有する);酸性側鎖を有するアスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩;塩基性側鎖を有するリジン、アルギニン、及びヒスチジンのように分類することができる。
【0053】
アミノ酸の変化は、対応する核酸配列のコドンを変化させることによって達成される。そのようなポリペプチドは、生物活性を改変または改善するために、ポリペプチド構造中の他のアミノ酸を特定のアミノ酸に置換することに基づいて得ることができることが知られている。例えば、代替のアミノ酸の置換により、ポリペプチドに小さな構造変化が与えられ、ポリペプチドの活性の増加がもたらされ得る。あるいは、特定のポリペプチドにおけるアミノ酸置換を使用して残基を提供することができ、その後他の分子に連結して、出発ポリペプチドの十分な特性を保持して他の目的に有用なペプチド−分子結合体を提供することができる。
【0054】
ポリペプチドに相互作用的な生物学的機能を付与する際に、アミノ酸の疎水性指数を使用することができ、あるアミノ酸は類似の疎水性指数を有する他のアミノ酸に置換されてもなお、同様の生物学的活性を保持することができることがわかる。あるいは、特に、生成されるべきポリペプチドに求められる生物学的機能が免疫学的実施形態での使用を意図されている場合に、類似のアミノ酸の置換を親水性に基づいて行うことができる。隣接するアミノ酸の親水性によって支配される「タンパク質」の最大局所平均親水性は、その免疫原性と相関する。従って、各アミノ酸に割り当てられた親水性に基づいて置換を行うことができることが注目される。
【0055】
各アミノ酸に値を割り当てる数値として、親水性指数または疎水性指数のいずれかを用いる場合、これらの値が±2(±1が特に好ましい)であるアミノ酸の置換を行うことが好ましく、±0.5のアミノ酸が最も好ましい置換である。
【0056】
変異体タンパク質は、対応する天然タンパク質のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%であって、しかしながら100%未満である連続したアミノ酸配列相同性または同一性を有する。
【0057】
変異体ポリペプチドのアミノ酸配列は、天然のポリペプチドのアミノ酸配列に実質的に対応する。本明細書で使用する「実質的に対応する」とは、天然のタンパク質によって生成される応答と実質的に同じ生物学的応答を誘発するポリペプチド配列を指す。このような応答は、天然のタンパク質によって生成されるレベルの少なくとも60%であり得、天然のタンパク質によって生成されるレベルの少なくとも80%でさえあり得る。
【0058】
変異体は、対応する天然タンパク質に存在しないアミノ酸残基、または対応する天然タンパク質に対して欠失を含み得る。変異体はまた、対応する天然タンパク質と比較して切り取られた「断片」、即ち全長タンパク質の一部のみであってもよい。タンパク質改変体は、少なくとも1つのD−アミノ酸を有するペプチドも含む。
【0059】
変異体タンパク質は、変異体タンパク質をコードする単離されたDNA配列から発現され得る。「組換え体」は、遺伝子工学のプロセスにより産生されたペプチドまたは核酸として定義される。遺伝暗号における冗長性のために、個々のヌクレオチドはコドンにおいて容易に交換され得、それでもなお同一のアミノ酸配列をもたらすことは当該技術分野において周知であることに留意すべきである。用語「タンパク質」、「ペプチド」及び「ポリペプチド」は、本明細書では互換的に使用される。
【0060】
本開示は、発現ベクターを細胞または患者に投与することによって哺乳動物の疾患を治療する方法を提供する。遺伝子治療法に関して、分子生物学及び遺伝子治療の当業者は、過度の実験をすることなく、本開示の新規な方法で使用される発現ベクターの適切な投与量及び投与経路を決定することができるであろう。
【0061】
一実施形態によれば、細胞はインビボで形質転換されるか、そうでなければインビボで遺伝子改変される。哺乳類レシピエント由来の細胞は、治療薬をコードする異種(例えば、組換え)遺伝子を発現させるための外因性遺伝物質を含むベクターによりインビボで形質転換(即ち、形質導入またはトランスフェクト)され、治療薬はインサイチュで送達される。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「外因性遺伝物質」とは、細胞内に天然には見出されない天然または合成の核酸またはオリゴヌクレオチドを指し;そうではなく、細胞内に天然に存在する場合、細胞によって生物学的に有意なレベルで転写または発現されない。従って、「外因性遺伝物質」には、例えば、アンチセンスRNA、並びに「異種遺伝子」(即ち、同じタイプの天然に存在する細胞において、発現されないか、または生物学的に有意でないレベルで発現されるタンパク質をコードする遺伝子)に転写され得る非天然核酸が含まれ得る。
【0063】
特定の実施形態において、哺乳類のレシピエントは、遺伝子置換療法に適した状態を有する。本明細書中で使用されるように、「遺伝子置換療法」は、レシピエントに治療薬をコードする外因性遺伝物質を投与し、続いてインサイチュで投与された遺伝物質を発現させることを指す。従って、語句「遺伝子置換療法に適した状態」は、遺伝的疾患(即ち、1つ以上の遺伝子欠損に起因する疾患状態)、後天的病態(即ち、先天性欠陥に起因しない病理学的状態)、癌及び予防プロセス(即ち、疾患または望ましくない医学的状態の予防)等の状態を含む。従って、本明細書で使用されるように、用語「治療薬」は、哺乳動物レシピエントに有益な効果を有する任意の薬剤または物質を指す。従って、「治療薬」は、核酸(例えば、アンチセンスRNA)及び/またはタンパク質成分を有する治療分子及び予防分子の両方を包含する。
【0064】
多くの遺伝的眼疾患が知られている。タンパク質/酵素はこれらの疾患に対して不十分であることが知られている時から、これらの疾患に対して有効な治療薬もまた公知である。特定の実施形態では、前記疾患または状態は、網膜色素変性症、黄斑変性症、Leber先天性黒内障、Leber遺伝性視神経症、早期発症重症網膜ジストロフィー、色覚異常、網膜分離症、眼白子症、眼皮膚白皮症、緑内障、シュタルガルト病、先天性脈絡膜欠如、加齢黄斑変性症、SCAT、色盲、及びMPS IV及びMPS VII等の角膜に影響を与えるリソソーム蓄積症である。
【0065】
特定の実施形態では、疾患または状態は、リソソーム蓄積疾患または障害であり得る。特定の実施形態では、この疾患は、TPP1(トリペプチジルペプチダーゼI)、CLN3(Battenin)、PPT1(パルミトイルタンパク質チオエステラーゼI)、CLN6(ニューロンセロイドリポフスチン症タンパク質6)またはCLN8の発現または活性における、欠損または欠陥である。疾患は、幼児NCL、晩期乳児NCL、若年性NCL(バッテン病)及び成人NCL等の神経セロイドリポフスチン症(NCL)等の神経変性疾患であり得る。
【0066】
本明細書中で使用されるように、「後天的病態」は、異常な生理学的、生化学的、細胞的、構造的、または分子生物学的状態によって明示される疾患または症候群を指す。後天的病態の例を表2に示す。これらの疾患に対して有効な治療薬もまた示される。
【表2】
【0067】
あるいは、遺伝子置換療法に適した状態は、予防的プロセス、即ち、疾患または望ましくない病状を予防するためのプロセスである。従って、本開示は、予防的機能を有する治療薬(即ち、予防剤)を哺乳類レシピエントに送達するための細胞発現系を包含する。
【0068】
要約すると、用語「治療薬」は、上記表に列挙された薬剤、並びにそれらの機能的等価物を含むが、これらに限定されない。本明細書中で使用されるように、用語「機能的等価物」は、機能的等価物であるとみなされる治療薬として、哺乳動物レシピエントに対して同等または改善された有益な効果を有する分子(例えば、ペプチドまたはタンパク質)を指す。当業者には理解されるように、機能的に等価なタンパク質は、組換え技術によって、例えば「機能的に等価なDNA」を発現させることにより、作製することができる。本明細書で使用されるように、用語「機能的に等価なDNA」は、天然に存在しないDNAであり、治療薬をコードするものを指す。例えば、表1〜2に開示されている薬剤の多くは、全てではないにしても、天然に存在する核酸によってコードされている既知のアミノ酸配列を有する。しかしながら、遺伝暗号の縮重のため、2以上の核酸が同じ治療薬をコードすることができる。従って、本開示は、天然に存在するDNAによってコードされる治療薬、並びに天然に存在するDNAによってコードされるのと同じタンパク質をコードする天然に存在しないDNAによってコードされる治療薬を包含する。
【0069】
上記で開示した遺伝子置換療法に適した治療薬及び状態は、単なる例示であり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。既知の状態を治療するための適切な治療薬の選択は、過度の実験をすることなく当業者の範囲内であるとみなされる。
【0070】
スクリーニング方法
本開示は、中枢神経系の脈管構造等の特定の領域を標的化(例えば特異的に標的化)するアミノ酸配列をスクリーニングし、同定する方法を提供する。この方法は、特定の疾患状態に特異的である標的配列を同定するために使用することができる。言い換えれば、標的化配列を同定し、特定の疾患の治療に用いることができる。
【0071】
AAVベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、パーキンソン病及び劣性遺伝疾患等のヒト疾患の治療に有用な、小さな(20nm)非病原性ウイルスである。AAV逆方向末端反復(ITR)配列を有する標的遺伝子に連結されたプロモーターを取り囲む構築物が生成される。
【0072】
一実施形態では、本開示のウイルスベクターはAAVベクターである。「AAV」ベクターは、アデノ随伴ウイルスを指し、また天然に存在する野生型ウイルスそれ自体またはその誘導体を指すのに使用され得る。この用語は、特段の要求の無い限り、すべてのサブタイプ、血清型及び偽型、並びに天然型及び組換え型の両方にまで及ぶ。本明細書中で使用されるように、用語「血清型」とは、定義された抗血清とのカプシドタンパク質反応性に基づいて他のAAVによって同定され、区別されるAAVを指し、例えば、霊長類AAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV−Rh74、及びAAVRh10、及びこれらの血清型の修飾されたカプシド)の多くの公知の血清型がある。例えば、血清型AAV−2は、AAV−2のcap遺伝子からコードされるカプシドタンパク質及び同じAAV−2血清型からの5’及び3’ITR配列を含むゲノムを含むAAVを指すのに使用される。偽型AAVは、1つの血清型由来のカプシドタンパク質及び第2の血清型の5’−3’ITRを含むウイルスゲノムを含むAAVを指す。偽型rAAVは、カプシド血清型の細胞表面結合特性及びITR血清型と一致する遺伝的特性を有することが期待される。偽型rAAVは、当技術分野で記載されている標準技術を用いて産生される。本明細書中で使用されるように、例えば、rAAV1は、同じ血清型由来のカプシドタンパク質及び5’−3’ITRの両方を有するAAVを指すために使用され得るか、またはそれは、血清型1由来のカプシドタンパク質及び異なるAAV血清型(例えば、AAV血清型2)由来の5’−3’ITR を有するAAVを指すために使用され得る。本明細書に例示される各例について、ベクター設計及び産生の記載は、カプシド及び5’−3’ITR配列の血清型を説明する。略語「rAAV」は、組換えアデノ随伴ウイルスを指し、組換えAAVベクター(または「rAAVベクター」)とも呼ばれる。
【0073】
「AAVウイルス」または「AAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質(好ましくは、野生型AAVのカプシドタンパク質のすべてによって)及びカプシド形成されたポリヌクレオチドからなるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(即ち、哺乳動物細胞に送達される導入遺伝子等の野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、それは典型的には「rAAV」と呼ばれる。
【0074】
一実施形態では、AAV発現ベクターは、転写開始領域、対象のDNA及び転写終結領域等の制御エレメントを、少なくとも、転写の方向に機能的に連結された成分として提供するために、既知の技術を用いて構築される。制御エレメントは、哺乳動物細胞において機能するように選択される。作動可能に連結された成分を含む得られた構築物は、機能的AAV ITR配列に隣接する(5’及び3’)。
【0075】
「アデノ随伴ウイルス逆方向末端反復」、即ち「AAV ITR」は、DNA複製の起点及びウイルスのパッケージングシグナルとしてシスで一緒に機能するAAVゲノムの各末端に見出される当該分野で認識された領域を意味する。AAV ITRは、AAV repコーディング領域と共に、2つの隣接ITRの間に挿入されたヌクレオチド配列の、哺乳動物細胞ゲノムからの効率的な切除、救済、及び哺乳動物細胞ゲノムへの組み込みを提供する。
【0076】
AAV ITR領域のヌクレオチド配列は公知である。例えば、Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793−801;Berns,K.I.“Parvoviridae and their Replication” in Fundamental Virology,第2版(B.N. Fields及びD.M. Knipe編)参照。本明細書で使用するように、「AAV ITR」は、描かれた野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、例えばヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって変更することができる。さらに、AAV ITRは、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV−Rh74及びAAVRh10等のいくつかのAAV血清型、及びこれらの血清型の改変カプシドのいずれかから誘導され得る。さらに、AAVベクター中の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’ITRは、それらが意図されたように機能する限り、必ずしも同じAAV血清型または単離物と同一またはこれら由来である必要はない、即ち、宿主細胞ゲノムまたはベクターから目的の配列の切除及び救出を可能にし、そしてAAV Rep遺伝子産物が細胞内に存在する場合に、レシピエント細胞ゲノムへの異種配列の組み込みを可能にするために、同一またはこれら由来である必要はない。
【0077】
一実施形態では、限定されないが、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV−Rh74(アカゲザル由来AAV)及びAAVRh10等のいくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。さらに、AAV発現ベクター中の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’ITRは、それらが意図されたように機能する限り、必ずしも同じAAV血清型または単離物と同一またはこれら由来である必要はない、すなわち宿主細胞ゲノムまたはベクターから目的の配列の切除及び救出を可能にし、そして、AAV Rep遺伝子産物が細胞内に存在する場合にはレシピエント細胞ゲノムへのDNA分子の組み込みを可能にするために、同一またはこれら由来である必要はない。
【0078】
一実施形態では、AAVカプシドは、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV−Rh74(アカゲザル由来AAV)、及びAAVRh10等のいくつかのAAV血清型から誘導することができ、AAV ITRはAAV血清型2から誘導することができる。特定の実施形態では、AAVカプシドはAAV2カプシドである。AAVベクターでの使用に適したDNA分子のサイズは、約5キロベース(kb)未満、約4.5kb未満、約4kb未満、約3.5kb未満、約3kb未満、約2.5kb未満であり、当技術分野で公知である。
【0079】
本開示のいくつかの実施形態では、AAVベクターで使用されるDNA分子は、単一のsiRNA配列の1つ以上のコピーを含む。本明細書中で使用されるように、用語「siRNA配列の複数コピー」は、少なくとも2コピー、少なくとも3コピー、少なくとも4コピー、少なくとも5コピー、少なくとも6コピー、少なくとも7コピー、少なくとも8コピー、少なくとも9コピー及び少なくとも10コピーを意味する。いくつかの実施形態では、AAVベクターで使用されるDNA分子は、複数のsiRNA配列を含む。本明細書で使用されるように、用語「複数のsiRNA配列」は、少なくとも2つのsiRNA配列、少なくとも3つのsiRNA配列、少なくとも4つのsiRNA配列、少なくとも5つのsiRNA配列、少なくとも6つのsiRNA配列、少なくとも7つのsiRNA配列、少なくとも8つのsiRNA配列 、少なくとも9個のsiRNA配列、及び少なくとも10個のsiRNA配列を意味する。いくつかの実施形態では、本開示の適切なDNAベクターは、本開示のsiRNA分子をコードする配列及びスタッファー断片を含む。本開示の適切なスタッファー断片には、限定されないが、発現されるタンパク質分子をコードしない配列;発現された細胞型に有害な影響を及ぼさない正常細胞タンパク質をコードする配列;及びそれ自体が機能的siRNA二本鎖分子をコードしない配列等の当分野で公知の配列が含まれる。
【0080】
一実施形態では、AAVベクターでの使用に適したDNA分子は、サイズが約5キロベース(kb)未満であり、例えば、スタッファー配列及び本開示のsiRNA分子をコードする配列を含む。例えば、rep及びcap遺伝子を含むAAVゲノム配列のパッケージングを防止するために、rep及びcap DNAフラグメントを含むプラスミドは、当該技術分野において知られているスタッファーフラグメントをAAVゲノムに組み入れることによって改変され得る。これにより、DNAを最適なパッケージングの長さを超えるようにする。従って、ヘルパー断片はAAVビリオンにパッケージングされない。これは、最適なパッケージングサイズを超えない組換えAAVベクターゲノムのみがビリオンにパッケージングされることを確実にする安全機能である。スタッファー配列を組み込んだAAVヘルパー断片は、4.6kbの野生型ゲノム長を超えることができ、野生型の105%を超える長さは、一般にパッケージングされない。スタッファー断片は、例えば、Lac−Zまたはβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のような非ウイルス源から誘導することができる。
【0081】
一実施形態では、選択されたヌクレオチド配列は、インビボで被験体においてその転写または発現を指示する制御エレメントに作動可能に連結される。このような制御エレメントは、選択された遺伝子に通常関連する制御配列を含むことができる。あるいは、異種制御配列を用いることができる。有用な異種制御配列は、一般に、哺乳動物またはウイルス遺伝子をコードする配列に由来するものを含む。例としては、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、CMV前初期プロモーター領域(CMVIE)等のサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、polIIプロモーター、pol IIIプロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーター等が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ネズミのメタロチオネイン遺伝子等の非ウイルス遺伝子に由来する配列も本明細書中で使用される。そのようなプロモーター配列は、例えばStratagene(San Diego,Calif.)から市販されている。
【0082】
一実施形態では、異種プロモーターと、網膜特異的プロモーター及び誘導性プロモーター、エンハンサー等の他の制御要素との両方が特に有用である。異種プロモーターの例としては、CMVプロモーターが挙げられる。網膜特異的プロモーターの例としては、IRBP(インターフォトレセプターレチノイド結合タンパク質)プロモーター、hGRK1(ヒトロドプシンキナーゼ)プロモーター、IRBPe/GNAT2(インターフォトレセプターレチノイド結合タンパク質プロモーター間のエンハンサー要素)及びヒトトランスデューシンアルファサブユニットプロモーターの最小配列が挙げられる。
【0083】
一実施形態では、AAV ITRによって結合した目的のDNA分子を有するAAV発現ベクターは、選択された配列(複数可)を、そこから切除される、主要なAAVオープンリーディングフレーム(「ORF」)を有するAAVゲノムに直接挿入することによって構築することができる。AAVゲノムの他の部分もまた、複製及びパッケージング機能を可能にするために十分な量のITRが残っている限り、削除することができる。このような構築物は、当技術分野で周知の技術を用いて設計することができる。
【0084】
あるいは、AAV ITRをウイルスゲノム、またはそれを含むAAVベクターから切り出し、標準的なライゲーション技術を用いて別のベクターに存在する選択された核酸構築物の5’及び3’に融合させることができる。例えば、ライゲーションは、20mM Tris−Cl pH7.5、10mM MgCl、10mM DTT、33gg/ml BSA、10mM−50mM NaCl、及び40μM ATP、0.01−0.02(Weiss)単位 T4 DNAリガーゼを0℃で(「粘着末端」ライゲーション用)または1mM ATP、0.3−0.6(Weiss)ユニットT4 DNAリガーゼを14℃で(「平滑末端」ライゲーション用)で行われる。分子間「粘着末端」連結は、通常、30〜100μg/mlの全DNA濃度(5〜100nMの全末端濃度)で行われる。ITRを含むAAVベクター。特に、受託番号53222、53223、53224、53225及び53226でAmerican Type Culture Collection(「ATCC」)から入手可能ないくつかのAAVベクターがそこに記載されている。
【0085】
さらに、キメラ遺伝子は合成的に作製することができ、1つ以上の選択された核酸配列の5’及び3’に配置されたAAV ITR配列を含む。完全なキメラ配列は、標準的な方法によって調製された重複オリゴヌクレオチドから組み立てられる。
【0086】
rAAVビリオンを産生するために、AAV発現ベクターが、トランスフェクション等の公知の技術を用いて適切な宿主細胞に導入される。多くのトランスフェクション技術が当該技術分野において一般的に知られている。例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual(実験マニュアル),Cold Spring Harbor Laboratories,New York参照。特に適したトランスフェクション法としては、リン酸カルシウム共沈、培養細胞への直接マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム媒介遺伝子導入、脂質媒介形質導入、及び高速マイクロプロジェクタイルを用いる核酸送達が挙げられる。
【0087】
一実施形態では、rAAVビリオンを産生するのに適した宿主細胞としては、異種DNA分子のレシピエントとして使用することができ、または使用してきた、微生物、酵母細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞が挙げられる。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。従って、本明細書で使用される「宿主細胞」は、一般に、外因性DNA配列でトランスフェクトされた細胞を指す。本開示の実施には、安定なヒト細胞株293(例えば、受託番号ATCC CRL1573でAmerican Type Culture Collectionを通じて容易に入手可能)由来の細胞を使用することができる。特に、ヒト細胞株293は、アデノウイルス5型DNA断片で形質転換され、アデノウイルスE1a及びE1b遺伝子を発現するヒト胚性腎臓細胞株である。293細胞株は容易にトランスフェクトされて、rAAVビリオンを産生するための特に便利なプラットフォームを提供する。
【0088】
一実施形態では、上記のAAV発現ベクターを含む宿主細胞は、AAV ITRによって隣接配置されたヌクレオチド配列を複製及びカプシド形成してrAAVビリオンを産生するために、AAVヘルパー機能を付与することができるようにされる。AAVヘルパー機能は、一般に、生産的AAV複製のために順にトランスで機能するAAV遺伝子産物を提供するために発現させることができるAAV由来のコード配列である。AAVヘルパー機能は、本明細書では、AAV発現ベクターから失われている必要なAAV機能を補完するために使用される。従って、AAVヘルパー機能は、主要なAAV ORF(オープンリーディングフレーム)の1つまたは両方、即ちrep及びcapコード領域、またはその機能的相同体を含む。
【0089】
Rep発現産物は、とりわけ以下のものを含む多くの機能を有することが示されている:それらの中には、DNA複製のAAV起源の認識、結合及びニッキング;DNAヘリカーゼ活性;及びAAV(または他の異種)プロモーターからの転写の調節が含まれる。Cap発現産物は、必要なパッケージング機能を提供する。AAVヘルパー機能は、本明細書において、AAVベクターから失われているトランスのAAV機能を補完するために使用される。
【0090】
一実施形態では、AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターのトランスフェクションの前または同時に、AAVヘルパー構築物で宿主細胞をトランスフェクトすることによって、宿主細胞に導入される。用語「AAVヘルパー構築物」は、一般に、目的のヌクレオチド配列を送達する形質導入ベクターを産生するために使用されるAAVベクターから欠失したAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子を指す。AAVヘルパー構築物は、溶解性AAV複製のために必要な欠損AAV機能を補完するために、AAV rep及び/またはcap遺伝子の一時的発現を提供するために一般に使用される;しかしながら、ヘルパー構築物はAAV ITRがなく、複製もパッケージングもできない。AAVヘルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはビリオンの形態であり得る。Rep及びCap発現産物の両方をコードする、一般的に使用されるプラスミドpAAV/Ad及びpIM29+45等の多くのAAVヘルパー構築物が記載されている。Rep及び/またはCap発現産物をコードする多くの他のベクターが記載されている。
【0091】
「AAV repコーディング領域」とは、複製タンパク質Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をコードするAAVゲノムの当該分野で認識されている領域を意味する。これらのRep発現産物は、DNA複製のAAV起源の認識、結合及びニッキング、DNAヘリカーゼ活性の認識、結合及びニッキング、及びAAV(または他の異種)プロモーターからの転写の調節等の多くの機能を有することが示されている。Rep発現産物は、AAVゲノムを複製するために集合的に必要とされる。AAV repコード領域の適切なホモログ(相同体)は、AAV−2 DNA複製を媒介するとしても知られているヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)rep遺伝子を含む。
【0092】
「AAVキャップコード領域」とは、カプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3、またはその機能的相同体をコードするAAVゲノムの当該分野で認識されている領域を意味する。これらのCap発現産物は、ウイルスゲノムをパッケージングするためにまとめて必要とされるパッケージング機能を提供する。特定の実施形態では、P34−A35、T138−A139、A139−P140、G453−T454、N587−R588及び/またはR588−Q589でAAV2カプシドタンパク質に挿入等の改変を行う。特定の実施形態では、挿入を、AAV9のD384、G385、I560、T561、N562、E563、E564、E565、N704及び/またはY705に行う。
【0093】
一実施形態では、AAV発現ベクター及びAAVヘルパー構築物の両方を、1つ以上の任意の選択マーカーを含むように構築することができる。適切なマーカーは、細胞が適切な選択培地で増殖された場合に、選択マーカーを含む核酸構築物でトランスフェクトされた細胞の抗原特性に、抗生物質耐性または感受性を付与するか、色を付与するか、またはこの抗原特性を変化させる遺伝子を含む。本開示の実施に有用ないくつかの選択可能なマーカー遺伝子としては、G418(Sigma、St.Louis、Moから入手可能)に対する耐性を付与することによって哺乳類細胞における選択を可能にするハイグロマイシンB耐性遺伝子(Aminoglycoside phosphotranferase(APH)をコードする)が挙げられる。他の適切なマーカーは、当業者に公知である。
【0094】
一実施形態では、宿主細胞(またはパッケージング細胞)は、rAAVビリオンを産生するために、非AAV由来の機能または「アクセサリー機能」を提供することができるようにされている。アクセサリー機能は、AAVがその複製のために依存する非AAV由来のウイルス及び/または細胞機能である。従って、アクセサリー機能としては、AAV遺伝子転写、ステージ特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、Cap発現産物の合成及びAAVカプシドアセンブリの活性化に関与するもの等の、AAV複製に必要な非AAVタンパク質及びRNAを少なくとも挙げることができる。ウイルスに基づくアクセサリー機能は、公知のヘルパーウイルスのいずれかから誘導され得る。
【0095】
一実施形態では、アクセサリー機能は、当業者に公知の方法を用いて宿主細胞に導入され、次いで宿主細胞で発現され得る。通常、アクセサリー機能は、無関係なヘルパーウイルスによる宿主細胞の感染によって提供される。多数の適切なヘルパーウイルスが知られており、アデノウイルス;単純ヘルペスウイルス1型及び2型等のヘルペスウイルス;ワクシニアウイルスを挙げることができる。様々な公知の薬剤のいずれかを用いて、細胞の同期化によって提供されるようなもの等の非ウイルスアクセサリー機能も本明細書中で使用される。
【0096】
一実施形態では、アクセサリー機能は、アクセサリー機能ベクトルを使用して提供される。アクセサリー機能ベクターとしては、1つ以上のアクセサリー機能を提供するヌクレオチド配列を挙げることができる。アクセサリー機能ベクターは、宿主細胞における効率的なAAVビリオン産生をサポートするために当該ベクターを適切な宿主細胞に導入することができる。アクセサリー機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾンまたはコスミドの形態であり得る。アクセサリーベクターはまた、適切な制御エレメント及び酵素に関連する場合、宿主細胞において転写または発現されてアクセサリー機能を提供することができる1つ以上の線状化DNAまたはRNAフラグメントの形態でもあり得る。
【0097】
一実施形態では、アクセサリー機能を提供する核酸配列は、アデノウイルス粒子のゲノムから等の天然供給源から得ることができ、或いは当該分野で公知の組換えまたは合成方法を用いて構築することができる。これに関して、アデノウイルス由来のアクセサリー機能が広く研究されており、アクセサリー機能に関与する多数のアデノウイルス遺伝子が同定され、部分的に特徴付けられている。具体的には、早期アデノウイルス遺伝子領域E1a、E2a、E4、VAI RNA及び場合によってはE1bが、アクセサリープロセスに関与すると考えられる。ヘルペスウイルス由来のアクセサリー機能が記載されている。ワクシニアウイルス由来のアクセサリー機能も記載されている。
【0098】
一実施形態では、宿主細胞にヘルパーウイルスを感染させた結果、または宿主細胞にアクセサリー機能ベクターをトランスフェクションした結果、AAVヘルパー構築物をトランス活性化してAAV Rep及び/またはCapタンパク質を産生するアクセサリー機能が発現される。Rep発現産物は、組換えDNA(目的のDNAを含む)をAAV発現ベクターから削除する。Repタンパク質はまた、AAVゲノムを複製する役割も果たす。発現されたCapタンパク質はカプシドになり、組換えAAVゲノムはカプシドにパッケージングされる。従って、生産的AAV複製が起こり、DNAはrAAVビリオンにパッケージングされる。
【0099】
一実施形態では、組換えAAV複製の後、rAAVビリオンは、CsC1勾配等の様々な従来の精製方法を用いて宿主細胞から精製することができる。さらに、感染がアクセサリー機能の発現のために使用される場合、残留ヘルパーウイルスを公知の方法を用いて不活性化することができる。例えば、アデノウイルスは、約60℃の温度に、例えば20分間以上、加熱することによって不活性化することができる。この治療は、ヘルパーアデノウイルスが熱に不安定であるが、AAVは極めて熱安定性であるため、ヘルパーウイルスのみを効果的に不活性化する。次いで、得られたrAAVビリオンは、被験体の眼へのDNA送達に使用する準備がされる。
【0100】
ウイルスベクターの送達方法には、眼内、網膜下、及び硝子体内経路が含まれるが、これらに限定されない。一般に、rAAVビリオンは、インビボまたはインビトロの形質導入技術のいずれかを用いて眼の細胞に導入され得る。インビトロで形質導入する場合、所望のレシピエント細胞を被験体から取り出し、rAAVビリオンで形質導入し、被験体に再導入する。あるいは、これらの細胞が被験体において不適切な免疫応答を生成しない場合、同系または異種の細胞を使用することができる。
【0101】
被験体への形質導入細胞の送達及び導入に適した方法が記載されている。例えば、組換えAAVビリオンを眼細胞と組み合わせることによりインビトロで細胞を形質導入する(例えば適切な培地中で)ことができ、目的のDNAを含む細胞を、サザンブロット及び/またはPCR等の従来の技術を用いてスクリーニングするか、或いは選択可能なマーカーを使用してスクリーニングする。形質導入された細胞は、その後、以下により詳しく記載される医薬組成物に調製され、組成物は、接合(grafting)、筋肉内、静脈内、皮下及び腹腔内注射等の様々な技術によって対象に導入され得る。
【0102】
一実施形態では、インビボ送達のために、rAAVビリオンを医薬組成物に調製し、一般に眼内投与、例えば、網膜下に注射で投与する。
【0103】
一実施形態では、医薬組成物は、治療上有効量の目的の核酸、即ち問題の疾患状態の症状を軽減または改善するのに十分な量の核酸または所望の利益を与えるのに十分な量の核酸を産生するために十分な遺伝物質を含む。医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤も含む。このような賦形剤は、それ自体、組成物を受け入れる個体に有害な抗体の産生を誘導せず、かつ過度の毒性を伴わずに投与することができる任意の薬剤を含む。薬学的に許容される賦形剤としては、ソルビトール、Tween80、及び水、生理食塩水、グリセロール及びエタノール等の液体が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸の塩が挙げられる。さらに、補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等がそのようなビヒクルに存在してもよい。薬学的に許容される賦形剤の徹底的な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,N.J. 1991)で利用可能である。
【0104】
本明細書の教示から当業者に明らかであるように、加えなければならないウイルスベクターの有効量は経験的に決定することができる。投与は、1回の用量で、連続して、または断続的に、治療の過程全体にわたって行うことができる。投与の最も有効な手段及び用量を決定する方法は、当業者に周知であり、ウイルスベクター、治療の組成、標的細胞及び治療される対象によって変化する。治療医師が選択した用量レベル及びパターンで単回投与及び複数回投与を行うことができる。
【0105】
送達されたウイルスベクターによって2以上の導入遺伝子を発現させることができることを理解するべきである。あるいは、それぞれが1つ以上の異なるトランスジーンを発現する別個のベクターを、本明細書に記載のように眼に送達することもできる。さらに、本開示の方法によって送達されるウイルスベクターは、他の適切な組成物及び療法と組み合わせられることも意図されている。
【0106】
遺伝物質を細胞に導入する方法
外因性遺伝物質(例えば、1つ以上の治療用タンパク質をコードするcDNA)は、トランスフェクションまたは形質導入等の遺伝的伝達方法によってエクスビボまたはインビボで細胞に導入され、遺伝子改変された細胞を提供する。様々な発現ベクター(即ち、外因性遺伝子材料の標的細胞への送達を促進するためのビヒクル)は、当業者に公知である。
【0107】
本明細書中で使用されるように、「細胞のトランスフェクション」とは、添加されたDNAの取り込みによる新しい遺伝物質の細胞による獲得を指す。従って、トランスフェクションは、物理的または化学的方法を用いて細胞に核酸を挿入することを指す。いくつかのトランスフェクション技術は、当業者に知られており、リン酸カルシウムDNA共沈殿;DEAE−デキストラン;エレクトロポレーション;カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;及びタングステン粒子−促進微粒子衝撃が挙げられる。ストロンチウムホスフェートDNA共沈殿は、別の可能なトランスフェクション方法である。
【0108】
一方、「細胞の形質導入」は、DNAまたはRNAウイルスを用いて核酸を細胞に導入するプロセスを指す。核酸を細胞に導入するためのRNAウイルス(即ち、レトロウイルス)は、本明細書において、形質導入キメラレトロウイルスと称される。レトロウイルス内に含まれる外因性遺伝物質は、形質導入された細胞のゲノムに組み込まれる。キメラDNAウイルス(例えば、治療薬をコードするcDNAを保有するアデノウイルス)で形質導入された細胞は、そのゲノムに組み込まれた外因性遺伝物質を有さないが、細胞内の染色体外に保持される外因性遺伝物質を発現することができる。
【0109】
典型的には、外因性遺伝物質は、異種遺伝子(通常、治療タンパク質をコードするエキソンを含むcDNAの形態で)と、新規遺伝子の転写を制御するためのプロモーターとを含む。プロモーターは、転写を開始させるのに必要な特異的ヌクレオチド配列を有することを特徴とする。任意に、外因性遺伝子材料は、さらに、所望の遺伝子転写活性を得るために必要とされるさらなる配列(即ち、エンハンサー)を含む。これを議論するために、「エンハンサー」は、単に、プロモーターによって指示される基本的な転写レベルを変化させるためにコード配列(シスで)と隣接して働く翻訳されていないDNA配列である。外来性遺伝物質は、プロモーターのすぐ下流の細胞ゲノムに導入され、これによりプロモーター及びコード配列がコード配列の転写が可能になるように作動可能に連結され得る。レトロウイルス発現ベクターは、挿入された外因性遺伝子の転写を制御する外因性プロモーターエレメントを含むことができる。このような外因性プロモーターは、構成的プロモーター及び誘導性プロモーターの両方を含む。
【0110】
天然に存在する構成的プロモーターは、必須の細胞機能の発現を制御する。その結果、構成的プロモーターの制御下にある遺伝子が、細胞増殖の全ての条件下で発現される。典型的な構成的プロモーターは、特定の構成的または「ハウスキーピング」機能をコードする以下の遺伝子のためのプロモーターを含む:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセロールムターゼ、アクチンプロモーター、及び当業者に公知の他の構成的プロモーター。さらに、多くのウイルスプロモーターは、真核細胞において構成的に機能する。これらには、SV40の初期プロモーター及び後期プロモーター、モロニー白血病ウイルス及び他のレトロウイルスの長い末端反復(LTR);及び単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターがあり、他にも多数ある。従って、上記言及された構成的プロモーターのいずれかを用いて、異種遺伝子挿入物の転写を制御することができる。
【0111】
誘導性プロモーターの制御下にある遺伝子は、誘導剤の存在下でのみ発現されるか、または存在下でより大きな程度で発現される(例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下での転写が特定の金属イオンの存在下で大きく増加する)。誘導性プロモーターは、それらの誘導因子が結合した時に転写を刺激する応答性要素(RE)を含んでいる。例えば、血清因子、ステロイドホルモン、レチノイン酸及びサイクリックAMPのためのREが挙げられる。誘導性応答を得るために特定のREを含むプロモーターを選択することができ、そして場合によってはRE自体を別のプロモーターに結合させ、それによって組換え遺伝子に誘導性を付与することができる。従って、適切なプロモーター(構成性対誘導性;強対弱)を選択することにより、遺伝子改変細胞内の治療薬の発現の存在及び発現レベルの両方を制御することが可能である。治療薬をコードする遺伝子が誘導性プロモーターの制御下にある場合、インサイチュの治療薬の送達は、遺伝子改変された細胞をインサイチュで治療薬の転写を可能にする条件にさらすことによって、例えば治療薬の転写を制御する誘導性プロモーターの特異的誘導剤の腹腔内注射によって、引き起こされる。例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下にある遺伝子によってコードされる治療薬の遺伝子改変された細胞によるインサイチュ発現は、遺伝子改変された細胞をインサイチュで適切な(即ち誘導する)金属イオンを含む溶液と接触させることによって増強される。
【0112】
従って、インサイチュで送達される治療薬の量は、以下の要因:(1)挿入遺伝子の転写を指示するために使用されるプロモーターの性質(即ち、プロモーターが構成的または誘導的であるか、強いか弱いか);(2)細胞に挿入される外来遺伝子のコピー数;(3)患者に投与(例えば、移植)される形質導入/トランスフェクト細胞の数;(4)移植のサイズ(例えば、接合(graft)またはカプセル化発現系);(5)移植の数;(6)形質導入/トランスフェクトされた細胞または移植が適所に残っている時間の長さ;(7)遺伝子改変細胞による治療薬の生成速度、で制御することにより調整される。特定の治療薬の治療上有効な用量を送達するためのこれらの因子の選択及び最適化は、上記開示された因子及び患者の臨床的プロファイルを考慮して、過度の実験なしに当業者の範囲内でなされるものであるとみなされる。
【0113】
少なくとも1つのプロモーター、及び治療薬をコードする少なくとも1つの異種核酸に加えて、発現ベクターは、発現ベクターでトランスフェクトまたは形質導入された細胞の選択を容易にするために、選択遺伝子(例えばネオマイシン耐性遺伝子)を含むことができる。或いは、細胞に、2つ以上の発現ベクター、治療薬(複数可)をコードする遺伝子(複数可)を含む少なくとも1つのベクター、選択遺伝子を含む他のベクターをトランスフェクトする。適切なプロモーター、エンハンサー、選択遺伝子及び/またはシグナル配列(以下に記載する)の選択は、過度の実験なしに当業者の範囲内でなされるものであるとみなされる。
【0114】
治療薬は、細胞外、細胞内または膜の位置への送達を標的とすることができる。遺伝子産物が細胞から分泌されることが望ましい場合、発現ベクターは、細胞から細胞外環境に治療遺伝子産物を分泌するための適切な分泌「シグナル」配列を含むように設計される。遺伝子産物が細胞内に保持されることが望ましい場合、この分泌シグナル配列は省略される。同様にして、発現ベクターは、細胞原形質膜内に治療薬を固定するための「保持」シグナル配列を含むように構築することができる。例えば、全ての膜タンパク質は疎水性膜貫通領域を有し、これは膜中のタンパク質の転位を停止させ、タンパク質を分泌させない。遺伝子産物を特定の位置に標的化するためのシグナル配列を含む発現ベクターの構築は、過度の実験を必要とせずに当業者の範囲内でなされるものであるとみなされる。
【0115】
以下の議論は、本開示の様々な有用性を対象とする。例えば、本開示はインサイチュで細胞内毒素及び/または細胞外毒素を解毒するのに適した発現系としての有用性を有する。毒素を解毒することができる治療薬をコードする遺伝子に適切なシグナル配列を付加するか、または省略することにより、治療薬は、細胞外環境、細胞原形質膜または細胞内位置への送達を標的とすることができる。一実施形態では、細胞内解毒治療薬をコードする遺伝子を含む外因性遺伝物質は、さらに、細胞外毒素の、治療薬によって細胞内解毒され得る細胞への輸送を促進する表面受容体をコードする配列を含む。あるいは、細胞は、活性部分が細胞外環境に広がるように、細胞原形質膜内に固定された解毒治療剤を発現するよう遺伝子改変することができる。膜結合型治療薬の活性部分は、細胞外環境に存在する毒素を解毒する。
【0116】
その一部は細胞内保持を標的とする上記治療剤に加えて、本開示はまた、細胞外膜への送達を意図した薬剤及び/または細胞原形質膜に固定されることを意図した薬剤を包含する。
【0117】
単離された細胞において特定の遺伝子産物を発現するための特定の発現ベクターの選択及び最適化は、潜在的に1つ以上の適切な制御領域(例えば、プロモーター、挿入配列)を有する遺伝子を得ること;遺伝子が挿入されたベクターを含むベクター構築物を調製すること;培養された細胞にインビトロでベクター構築物をトランスフェクトまたは形質導入すること;遺伝子産物が培養細胞中に存在するかどうかを決定することによって達成される。特定の実施形態では、アデノ随伴ウイルスファミリー由来のウイルスが使用される。特定の実施形態では、AAV2、AAV4及び/またはAAV5に基づく遺伝子治療用発現ベクターが使用される。
【0118】
従って、当業者には明らかであるように、様々な適切なウイルス発現ベクターが、外因性の遺伝物質を細胞に導入するために利用可能である。遺伝子置換治療に適した特定の状態のための治療剤を発現するために適切な発現ベクターの選択及び選択された発現ベクターの細胞への挿入のための条件の最適化は、過度の実験を必要とせずに当業者の範囲内でなされるものである。
【0119】
別の実施形態では、発現ベクターは、物理的(例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、スクレープローディング、微粒子衝突)な様々な方法の1つによって、或いは 化学複合体(例えば、カルシウムまたはストロンチウム共沈、脂質との複合体化、リガンドとの複合体化)としての細胞摂取によって、標的細胞に導入されるプラスミドの形態である。Lipofectin(商標)(Gibco−BRL,Gaithersburg,MD.)及びTransfectam(商標)(ProMega,Madison,Wis.)等のいくつかの市販製品がカチオン性リポソーム複合体形成のために利用可能である。しかしながら、これらの方法によるトランスフェクションの効率は、標的細胞の性質に大きく依存し、従って、上記の手順を用いて細胞への核酸の最適なトランスフェクションの条件を最適化しなければならない。このような最適化は、過度の実験を必要とすることなく、当業者の範囲内でなされるものである。
【0120】
本開示はまた、上記の遺伝子改変細胞を作製及び使用するための様々な方法を提供する。本明細書中で使用されるように、用語「単離された」は、それらの天然に生じるインビボ位置から除去された細胞または複数の細胞を意味する。患者から細胞を除去する方法、及び単離された細胞を培養液中で維持する方法は、当業者に公知である。
【0121】
本開示はまた、インビボで哺乳動物レシピエントの細胞を遺伝子改変するための方法を提供する。一実施形態によれば、この方法は、異種遺伝子産物を発現させるための発現ベクターを、インサイチュで哺乳動物レシピエントの細胞に導入する(例えばベクターをレシピエントに注入することによって)ことを含む。
【0122】
一実施形態では、遺伝子改変された細胞の調製物は、治療有効量の治療薬をインサイチュでレシピエントに送達するのに十分な量の細胞を含む。既知の状態のための特定の治療薬の治療上有効な用量の決定は、過度の実験を必要とせずに当業者の範囲内でなされるものである。従って、有効用量の決定では、当業者は、投与される特定の治療薬の臨床研究の結果だけでなく、患者の状態、状態の重篤度を考慮するであろう。
【0123】
遺伝子改変細胞が、薬学的に許容される担体中にまだ存在しない場合、それらは、レシピエントへの投与前にそのような担体中に置かれる。このような薬学的に許容される担体としては、例えば、生理食塩水及び患者及び治療に適切な他の緩衝液が挙げられる。
【0124】
1つより多い組換え遺伝子を、同じまたは異なるベクター上の各遺伝子改変細胞に導入することができ、これにより単一の細胞による複数の治療薬の発現を可能にする。
【実施例】
【0125】
実施例1
眼細胞を標的とする改変AAVの調製
本発明者らは、局所送達後に眼細胞を標的化するように改変されたAAVを設計した。眼細胞を標的とするアデノ随伴ウイルス(AAV)を作り出すために、本発明者らはまず眼内細胞に優先的に結合するペプチドモチーフを同定するためにインビボでファージディスプレイパニングを使用した。ファージディスプレイライブラリーをマウスの眼に注射し、その後、結合したファージと共に眼細胞を単離した。次いで、単離されたファージを増幅し、再注入し、このようなインビボでのパンニングを5ラウンド行った後、回収されたファージのDNA配列決定により、最初のファージライブラリーからの別個のペプチドモチーフの濃縮が明らかになった。
【0126】
マウスにおいて、ペプチドモチーフGSTPPPM(SEQ ID NO:1)及びGETRAPL(SEQ ID NO:4)が同定された。眼細胞に対するこれらのファージの親和性を確認するために、各ファージを個々にマウスに静脈内注射し、視覚化した。パンニング結果と一致して、選択されたファージの各々は、対照で観察されたバックグラウンドレベルを超えて目に蓄積された。
【0127】
ファージディスプレイパニングから同定されたペプチドをAAV2カプシドに挿入することにより、ペプチド修飾AAVを生成した。VP3カプシドタンパク質の587位と588位の間にペプチドを挿入してクローンを得た。AAV−WT(野生型、挿入なし)は対照ウイルスとしての役割を担った。587/588部位は、AAV2と主要レセプターのヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)との結合に関与するVP3カプシドタンパク質のドメインに位置し、この部位におけるペプチドの挿入は、ウイルスの生存率を損なうことなくAAVの指向性を変えることができる。改変されたカプシドタンパク質は、野生型ウイルスに匹敵するゲノム力価を有するAAVベクターゲノムをパッケージングした。
【化1】
【0128】
AAV2野生型カプシドの配列を以下のSEQ ID NO:8に示す。
【化2】
【0129】
以下の実施例では、眼細胞を標的とする挿入モチーフ(SEQ ID NO:1)を有するAAV2野生型カプシドの配列をイタリック体にし、下線を付したアミノ酸をスペーサーとする。
【化3】
【0130】
SEQ ID NO:4挿入モチーフを有するAAV2野生型カプシドの配列を以下の配列番号SEQ ID NO:10に示す。眼細胞を標的とするアミノ酸モチーフはイタリック体であり、下線を付したアミノ酸はスペーサーである。
【化4】
【0131】
AAV9野生型カプシドの配列を以下のSEQ ID NO:11に示す。
【化5】
【0132】
材料及び方法:
インビボバイオパニング:1μlのPh.D.(商標)7ファージライブラリー(NEBからの力価2.0×1013pfu/ml)をマウス眼の網膜下腔に注射した。30分後、注入した眼からの網膜及びRPEを分離し、5mlの冷PBSで3〜5回洗浄した。網膜及びRPEを500μlのPBS中で均質化した。回収されたファージを滴定し、増幅し、精製し、次回のインビボパンニングのため追加の目に再注入した。全手順を4回繰り返した。この後、50個のランダムに選択されたクローンを配列決定して、濃縮されたモチーフを決定した。
【0133】
ペプチド改変AAV2カプシドの構築:改変カプシドのクローニングのためのプラスミドを、野生型AAV2 Rep及びCapを含むpXX2から開発した。アミノ酸AAAstopAと、AAV2Capのアミノ酸位置587と588との間に挿入された制限部位NotI及びAscIとをコードするDNAフラグメントを有するプラスミドを、バックボーンプラスミドとして構築した。選択されたペプチドをコードするdsDNAインサートを、ペプチド改変pXX2としてNotI及びAscI部位にクローニングした。
【0134】
AAV2産生及び力価:293T細胞のプレートに、3つのプラスミド:AAV2のRep及びCapタンパク質を供給したpXX2またはペプチド改変pXX2;アデノウイルスヘルパー機能を含むpHelper;及びAAV2 ITR及び対象の導入遺伝子を含むベクタープラスミド、を同時トランスフェクトした。直径150mmのプレート20枚を、プラスミドpXX2、pHelper及びベクター(1:1:1のモル比)の90μgのDNAで同時トランスフェクトした。60時間インキュベートした後、ウイルスをイオジキサノール勾配で精製し、ムスタングQ膜を介してさらに精製した。組換えAAVの力価をリアルタイムPCRによって決定した。
【0135】
実施例2
遺伝子療法による遺伝性眼疾患の治療
インビボで遺伝子治療薬の送達を試験するために、ウイルスベクターを眼に投与する2つの方法を試験した。投与方式は、網膜下(図A−D)及び硝子体内(図E−I)にウイルスベクターを注入することによった。
【0136】
この研究で使用されたウイルスはAAV2/2であった。対照として、野生型AAV2/2.CMV.eGFPを使用し、試験薬剤はPMAAV−GST.CMV.eGFP.であった。ウイルスを5週齢のc57BL/6雌マウスに注射した。マウスにウイルス(2.26×109vg/眼)を網膜下注射した。3週間後、マウスを麻酔し、瞳孔を拡張させた。それらを定位プラットフォームに置き、動的蛍光眼底写真を撮った。4週間後、マウスを屠殺し、眼を摘出し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。組織切片を切断して標本にした。eGFPの発現を蛍光顕微鏡下で観察した。
【0137】
野生型AAV2/2.CMV.eGFP及びPMAAV−GST.CMV.eGFPの網膜下注射の3週間後、生きた動物における蛍光イメージングは相対的な感染効率を示した。この実験で用いた標的化ペプチドはGSTPPPM(SEQ ID NO:1)であった。AAV2/2注入眼では、GFP陽性の斑点領域が観察されたが、PMAAV−GST眼では、広範かつ均一なGFPシグナルが存在した(図2)。他の実験では、標的化ペプチドはGETRAPL(SEQ ID NO:4)であった。
【0138】
網膜下注射の4週間後、PMAAV−GST.CMV.eGFPは、網膜色素上皮(RPE)及び外核層(ONL)の層群、及び神経節細胞層(GCL)のいくつかの細胞を標的とした。AAV2/2は主に外側網状層(OPL)を標的とした(図3)。
【0139】
すべての刊行物、特許及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。前述の説明では、本発明をその特定の好ましい実施形態に関連して説明し、多くの詳細を説明の目的で記載してきたが、本発明は追加の実施形態を受け入れる余地があり、本明細書に記載される詳細のうちのいくつかは、本発明の基本原理から逸脱することがない限り、かなり変更されてもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0140】
本発明を説明する文脈における用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示対象の使用は、本明細書中で特段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。「comprising(含む)」、「having(有する)」、「including(含む、挙げられる)」及び「containing(含有する)」との用語は、特段の指示がない限り、制限のない用語(即ち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で特段の指示がない限り、範囲内の各別個の値を個別に指す簡略方法として役立つことを意図しており、各個別値は本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で特段の指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意の、すべての例、または例示的な言語(例えば、「等」)の使用は、単に本発明をよりよく表すことを意図しており、特に断らない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であると解釈されるべきではない。
【0141】
本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含む本発明の実施形態が本明細書に記載されている。これらの実施形態の変形は、前述の説明を読むことにより当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変及び均等物を含む。さらに、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、それらのすべての可能な変形での上述の要素の任意の組合せが本発明に包含される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
眼細胞標的化ペプチドを含む改変アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質であって、前記標的化ペプチドは3〜10のアミノ酸長であり、且つ前記標的化ペプチドはAAVを眼細胞に標的化する前記カプシドタンパク質。
(項目2)
前記標的化ペプチドが3、4、5、6または7のアミノ酸長である項目1に記載のカプシドタンパク質。
(項目3)
前記標的化ペプチドが、アミノからカルボキシへの方向、またはカルボキシからアミノへの方向で発現される、アミノ酸配列GSTPPPM(SEQ ID NO: 1)またはアミノ酸配列GETRAPL(SEQ ID NO: 4)を有する10以下のアミノ酸長の配列を含む項目1に記載のカプシドタンパク質。
(項目4)
前記標的化ペプチドが、アミノからカルボキシへの方向で、またはカルボキシからアミノへの方向で発現される、アミノ酸配列GSTPPPM(SEQ ID NO: 1)またはアミノ酸配列GETRAPL(SEQ ID NO: 4)からなる項目1に記載のカプシドタンパク質。
(項目5)
前記標的化ペプチドが、SEQ ID NO: 8の、P34−A35、T138−A139、A139−P140、G453−T454、N587−R588及び/またはR588−Q589の位置で、AAV2カプシド残基の間に挿入される項目1に記載のカプシドタンパク質。
(項目6)
前記標的化ペプチドが、SEQ ID NO:11の、D384、G385、I560、T561、N562、E563、E564、E565、N704及び/またはY705の位置で、AAV9カプシド残基の後に挿入される項目1に記載のカプシドタンパク質。
(項目7)
前記標的化ペプチドが、SEQ ID NO:9またはSEQ ID NO:10を含むかまたはそれからなる項目1に記載のカプシドタンパク質。
(項目8)
前記標的化ペプチドは罹患した眼細胞を標的とする項目1または2に記載のカプシドタンパク質。
(項目9)
前記標的化ペプチドは、網膜色素変性症、黄斑変性症、Leberの先天性黒内障、早期発症重症網膜ジストロフィー、色覚異常、網膜分離症、眼白子症、眼皮膚白皮症、緑内障、シュタルガルト病、先天性脈絡膜欠如、加齢黄斑変性症、脊髄小脳失調症タイプ7(SCAT)、色盲、及びムコ多糖症(MPS)IV及びMPS VII等の角膜に影響を与えるリソソーム蓄積症、を有する被験体の眼細胞を標的とする、項目8に記載のカプシドタンパク質。
(項目10)
前記AAVカプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV−Rh74(アカゲザル由来AAV)、AAVRh10、またはこれらの血清型の改変カプシドである項目1〜9のいずれか1項に記載のカプシドタンパク質。
(項目11)
前記AAVがAAV2カプシドである項目10に記載のカプシドタンパク質。
(項目12)
項目1〜11のいずれか1項に記載の前記改変カプシドをコードする核酸配列。
(項目13)
核酸配列GGGTCGACGCCGCCTCCTATG(SEQ ID NO:2)を含む項目12に記載の核酸配列。
(項目14)
項目1〜11のいずれか1項に記載のカプシドタンパク質を含有するAAVウイルス。
(項目15)
項目1〜11のいずれか1項に記載のカプシドタンパク質を含有するウイルスベクター。
(項目16)
前記ウイルスベクターが、さらに、目的の核酸をコードする核酸配列を含む項目15に記載のウイルスベクター。
(項目17)
前記目的の核酸が治療薬である項目16に記載のウイルスベクター。
(項目18)
前記治療薬が酵素またはRNAi分子である項目17に記載のウイルスベクター。
(項目19)
前記治療薬が、アタキシン7 mirRNA、網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE 65)、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤または可溶性VEGF受容体1(sFif1)、(Rabエスコートタンパク質−1)REP1、L−オプシン、ロドプシン(Rho)、ホスホジエステラーゼ6(3(PDE6I3)、ATP結合カセット,サブファミリーA,メンバー4(ABCA4)、レシチンレチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)、網膜変性,遅い/ペリフェリン(RDS/ペリフェリン)、チロシンタンパク質キナーゼMer(MERTK)、イノシン−5プライムモノホスフェートデヒドロゲナーゼ,I型(IMPDHI)、グアニル酸シクラーゼ2D(GUCY2D)、アリール−炭化水素相互作用タンパク質様1(AIPL1)、網膜色素変性GTPアーゼレギュレーター相互作用タンパク質1(RPGRIPI)、イノシン−5−プライムモノホスフェートデヒドロゲナーゼ,I型(IMPDH1グアニンヌクレオチド結合タンパク質、アルファト形質導入活性ポリペプチド2(GNAT2)、環状ヌクレオチド依存性チャネルベータ3(CNGB3)、レチノサチシン1(Rs1)、眼球白内障1型(OA1)、眼皮膚白皮症型1(OCA1)チロシナーゼ、P21 WAF−1/Cipl、血小板由来増殖因子(PDGF)、エンドスタチンアンギオスタチン、アリールスルファターゼB、または13−グルクロニダーゼである項目17に記載のウイルスベクター。
(項目20)
項目14に記載のAAVウイルスまたは項目15〜19のいずれかに1項に記載のウイルスベクター及び担体を含む組成物。
(項目21)
項目14に記載のAAVウイルスまたは項目15〜19のいずれかに1項に記載のウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
(項目22)
項目15〜19のいずれか1項に記載のウイルスベクターによって形質導入された、またはそれを含む細胞。
(項目23)
前記細胞が哺乳動物細胞である項目22に記載の細胞。
(項目24)
前記細胞がヒト細胞である項目23に記載の細胞。
(項目25)
前記細胞が非哺乳動物細胞である項目23に記載の細胞。
(項目26)
前記細胞がインビトロであり、前記任意に細胞が眼細胞である項目22〜25のいずれか1項に記載の細胞。
(項目27)
前記細胞がインビボであり、任意に前記細胞が眼細胞である項目22〜25のいずれか1項に記載の細胞。
(項目28)
項目15〜19のいずれか1項に記載のウイルスベクターまたは項目22〜27のいずれか1項に記載の細胞を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の眼疾患を治療する方法。
(項目29)
前記哺乳動物がヒトである項目28に記載の方法。
(項目30)
前記疾患が、網膜色素変性症、黄斑変性症、Leberの先天性黒内障、早期発症重症網膜ジストロフィー、色覚異常、網膜分離症、眼白子症、眼皮膚白皮症、緑内障、シュタルガルト病、先天性脈絡膜欠如、加齢黄斑変性症、SCAT、色盲、またはMPS IV及びMPS VII等の角膜に影響を与えるリソソーム蓄積症である項目28または29に記載の方法。
(項目31)
項目15〜19のいずれか1項に記載のウイルスベクターで眼細胞を形質導入して、形質導入された眼細胞が治療薬を発現し、薬剤を被験体の眼に送達することを含む、被験体の眼に薬剤を送達する方法。
(項目32)
前記形質導入された眼細胞が、網膜外網状層(OPL)内にあるか、それを含む項目28に記載の方法。
(項目33)
医学的処置または診断に使用するための、項目15〜19のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
(項目34)
哺乳動物の眼疾患を治療するために有用な医薬を調製するための、項目15〜19のいずれか1項に記載のウイルスベクターの使用。
(項目35)
医学的処置または診断に使用するための、項目22〜25のいずれか1項に記載の細胞。
(項目36)
哺乳動物の眼疾患を治療するために有用な医薬を調製するための、項目22〜25のいずれか1項に記載の細胞の使用。
(項目37)
哺乳動物の眼疾患の予防的または治療的処置に使用するための、項目15〜19のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]