(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記直鎖状オリゴマー/ポリマーシリコーンが、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、およびドデカメチルペンタシロキサンからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
前記環状オリゴマー/ポリマーシリコーン流体が、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
前記アクリルポリマーが、非官能性アクリルポリマー、ヒドロキシ官能性アクリルポリマー、およびカルボキシ官能性アクリルポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書では、経皮薬物送達系に有用なオリゴマー/ポリマーシリコーン流体と、その作製方法と、それを含む感圧性接着剤組成物および経皮薬物送達系と、それを使用して経皮薬物送達を行う方法とについて記述する。いくつかの実施形態では、オリゴマー/ポリマーシリコーン流体は、直鎖状または環状のオリゴマーまたはポリマーシリコーン(シロキサン)流体である。いくつかの実施形態によれば、オリゴマー/ポリマーシリコーン流体は、皮膚を通した組成物からの薬物の流束を増大させる。いかなる理論にも拘泥するものではないが、オリゴマー/ポリマーシリコーン流体は、組成物中の薬物の溶解度に影響を及ぼすことなどの、薬物の熱力学的活性に影響を及ぼすことによって、薬物流束に影響を及ぼすと考えられる。いくつかの実施形態によれば、薬物含有ポリマーマトリックスは、その遊離塩基形態など、1種または複数の第1級または第2級アミン薬物を含む。
【0008】
(定義)
本明細書で使用される技術および科学用語には、他に定義しない限り、本発明が関係する当業者に一般に理解される意味がある。本明細書では、当業者に公知の様々な方法を参照する。参照されるそのような公知の方法について述べている刊行物およびその他の資料は、完全に記述されるかのようにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。当業者の公知の任意の適切な材料および/または方法は、本発明を実施するのに利用することができる。しかし、特定の材料および方法について記述する。以下の記述および例で参照される材料および試薬などは、他に示さない限り、商業的供給元から得ることが可能である。
【0009】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、単数のみを指定することを明示しない限り、単数および複数の両方を指定する。
「約」という用語および範囲の使用は一般に、包含される数値が本明細書に記述される厳密な数値に限定されないことを意味し、本発明の範囲から逸脱することなく実質的に引用される範囲内の範囲を指すものとする。本明細書で使用される「約」は、当業者に理解されかつそれが使用される文脈においてある程度まで変化することになる。それが使用される文脈を考えて当業者に明らかではない用語が使用される場合、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味することになる。
本明細書で使用される「〜を実質的に含まない」という文言は、記述される組成物(例えば、ポリマーマトリックスなど)が、除外成分を、問題となっている組成物の全質量に対して約5質量%未満、約3質量%未満、または約1質量%未満含むことを意味する。本明細書で使用される「〜を含まない」という文言は、記述される組成物(例えば、ポリマーマトリックスなど)が、意図される成分として除外成分を添加することなく配合されることを意味するが、微量が、その他の成分中にまたは副生成物もしくは汚染物質として存在してもよく、したがって組成物は除外成分を最大でも微量のみ含むようになることを意味する。
【0010】
本明細書で使用される「対象」は、ヒトを含む、薬物療法を必要とする任意の哺乳類を示す。例えば、対象は、アミン官能性薬物で治療しまたは予防することができる状態に罹るまたはその状態を発症するリスクがある可能性があり、あるいはその他の目的でアミン官能性薬物を摂取してもよい。
本明細書で使用される「局所」および「局所的に」という用語は、哺乳類の皮膚または粘膜表面への施用を意味し、一方、「経皮」および「経皮」という用語は、皮膚または粘膜(口、頬、鼻、直腸、および膣の粘膜)を経て全身循環に入るまでの通過を示唆する。このように、本明細書に記述される組成物は、アミン官能性薬物の経皮送達を実現するために、対象に局所的に施用されてもよい。
【0011】
本明細書で使用される「治療有効量」および「治療レベル」という文言は、特定の薬理学的効果であってその効果を目的としてそのような治療を必要とする対象に薬物が投与される特定の薬理学的効果をもたらす、対象における薬物の投薬量または血漿濃度をそれぞれ意味する。薬物の、治療有効量または治療レベルは、そのような投薬量が治療有効量であると当業者が考える場合であっても、本明細書に記述される状態/疾患を治療するのに常に有効になるとは限らないことが強調される。単なる便宜のため、例示的な投薬量、薬物送達量、治療有効量、および治療レベルは、成人対象に関連して以下に提示される。当業者なら、必要に応じて特定の対象および/または状態/疾患を治療するための標準的な実施により、そのような量を調節することができる。
【0012】
本明細書に記述される組成物は、「柔軟な有限形態」である。本明細書で使用される「柔軟な有限形態」という文言は、接触する表面に順応することが可能な、および局所施用が容易になるように接触を維持することが可能な、実質的な固体形態を意味する。そのような系は一般に、当技術分野で公知であり、経皮薬物送達パッチなどとして市販されている。
いくつかの実施形態では、本明細書に記述される組成物は、皮膚(または上述の任意のその他の表面)に施用後に薬物を放出する、薬物含有ポリマーマトリックスを含む。本明細書で使用される「薬物含有ポリマーマトリックス」は、1種または複数の薬物または薬学的に許容されるその塩と、感圧性接着剤ポリマーまたは生体接着ポリマーなどのポリマーとを含有する、ポリマー組成物を指す。ポリマーは、接着性そのものの性質を有する場合には「接着性」または「生体接着性」である。その他のポリマーは、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、またはその他の賦形剤を添加することによって、接着剤または生体接着剤として機能することができる。このように、いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、または当技術分野で公知のその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0013】
本明細書で使用される「感圧性接着剤」という用語は、非常に僅かな圧力を加えることによってほとんどの基材に瞬時に接着しかつ永続的に粘着性のままである、粘弾性材料を指す。上述のように、ポリマーは、感圧性接着剤そのものの性質を有する場合には感圧性接着剤ポリマーである。その他のポリマーは、粘着付与剤、可塑剤、またはその他の添加剤と混合することによって、感圧性接着剤として機能してもよい。感圧性接着剤という用語は、異なるポリマーの混合物も含む。
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、室温で感圧性接着剤であり、皮膚への良好な接着性、皮膚に実質的な外傷を与えることなく剥離されまたはその他の手法で除去される能力、エージングによる粘着性の保持など、所望の物理的性質を示す。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、約−70℃〜0℃の間の、示差走査熱量計を使用して測定されたガラス転移温度(T
g)を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、柔軟な有限形態の組成物は「モノリシック」または「単層」系であり、したがって薬物含有ポリマーマトリックス層は、裏打ち層および剥離層が存在する場合にはこれらの層以外で存在する、唯一のポリマー層になる。そのような実施形態では、ポリマーマトリックスは、薬物担体と、系を皮膚または粘膜に固着する手段との両方として機能する。その他の実施形態では、柔軟な有限形態の組成物は、1つまたは複数の追加の接着剤層(1つまたは複数の追加の感圧性接着剤層など)、速度制御層(1つまたは複数の速度制御膜など)、および/または経皮薬物送達系に有用なその他の層など、薬物含有ポリマーマトリックス層に加えて1つまたは複数の層を含む多層系である。そのような実施形態によれば、薬物含有ポリマーマトリックス層は、感圧性接着剤層であってもそうでなくてもよく、または系を皮膚に固着するよう機能してもしなくてもよい。例えば、系を皮膚に固着させる1つまたは複数の個別の接着剤層が設けられてもよい。
【0015】
経皮薬物送達系は、薬物不透過性裏打ち層または被膜を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、裏打ち層は、ポリマーマトリックス層の1つの面に隣接する。存在する場合には、裏打ち層は、ポリマーマトリックス層(および存在する任意のその他の層)を環境から保護し、使用中の薬物の損失および/またはその他の成分の環境への放出を防止する。裏打ち層に使用するのに適切な材料は、当技術分野では周知であり、ポリエステル、ポリエチレン、酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、およびポリウレタンなどの被膜、金属箔、不織布、生地、および市販のラミネートを含むことができる。典型的な裏打ち材料は、2〜1000マイクロメートルの範囲の厚さを有する。例えば、3MのScotch Pak(商標)1012または9732裏打ち材料(エチレンビニルアセテートコポリマーのヒートシール層を持つポリエステル被膜)が、本明細書に記述される経皮薬物送達系に有用である。
【0016】
経皮薬物送達系は、裏打ち層に比べて、系の対向面に隣接して典型的には位置付けられる、剥離ライナーを含んでいてもよい。存在する場合、剥離ライナーは使用前に系から除去されて、局所施用の前にポリマーマトリックス層および/または接着剤層を露出させる。剥離ライナーとして使用するのに適切な材料は、当技術分野で周知であり、Dow Corning Corporationの、Bio−Release(登録商標)ライナーおよびSyl−off(登録商標)7610(共にシリコーンベースの)と称する市販製品、Loparexのシリコーンコーティング付きPET剥離ライナー被膜、および3MのScotchpak(商標)1020、1022、9741、9742、9744、9748、および9755(フルオロポリマーがコーティングされたポリエステル被膜)を含む。
【0017】
経皮薬物送達系は、包装されてもよくまたはパッケージとして提供されてもよく、例えば、一般的な経皮薬物送達系用にまたは配合される特定の薬物に合わせた経皮薬物送達系用に、従来技術で使用されるパウチストック材料などで提供されてもよい。例えば、DuPontのSurlyn(登録商標)は、パウチストック材料で使用することができる。
【0018】
(オリゴマー/ポリマーシリコーン流体)
本明細書で使用される「オリゴマー/ポリマーシリコーン流体」という用語は、「オリゴマー/ポリマーシロキサン流体」という用語と同義に使用される。本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体は、−Si(CH
3)
2−O−反復単位を有し、したがってシリコーンと酸素原子とが交互に配された主鎖構造を有し、炭化水素基がシリコーン側鎖に結合している:
【化1】
本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体は、非常に強力であるが非常に柔軟なケイ素−酸素無機鎖(しばしば高表面エネルギーを伴う)と有機メチル側鎖基(しばしば低表面エネルギーを伴う)との両方を有する珍しい組合せを示す。
【0019】
それら独特の性質には、下記が含まれる:
・ それ自体およびほとんどの表面を濡らし、良好な被膜形成および表面カバーが可能である、低表面張力。
・ 高い熱安定性、低い分子間相互作用、不活性、非反応性。
・ 高い自由体積(類似の炭化水素に比べて)、したがって様々な物質および気体に対して非常に透過性がある。
・ 広範な温度および周波数での良好な電気絶縁特性(誘電性)。
・ 独自の感覚的な感じおよび潤滑性;皮膚に対する非穿刺生体適合性。
・ 微生物の成長を促さない。
・ 水中で不溶性(撥水性);炭化水素中で良好な溶解性。
・ 低ガラス転移温度(Tg:類似の炭化水素が200Kであるのに比べ、140K)。
・ 非常に低い蒸気圧、高引火点。
・ 透明、無色、および本質的に無臭。
【0020】
下記の表は、本明細書に記述されるいくつかのオリゴマー直鎖状シリコーン流体を示す。ポリマーシリコーン流体は、類似の化学構造を有するが、より多くの反復単位を有する。6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれ以上の反復単位を有するオリゴマー/ポリマーシリコーン流体が、明らかに企図される。一般に、反復単位の数に限界はないが、典型的にはポリマーは、約25℃で液体であるように設計されることになる。シリコーン部分の置換基(メチル基、例えば、ジメチルシロキサン反復単位として以下に示される)は、シリコーン流体の所望の性質に応じて選択し制御することができる。
【化2】
【0021】
下記の表は、本明細書に記述されるいくつかのオリゴマー環状シリコーン流体を示す。シリコーン部分の置換基(メチル基として以下に示され、例えば、環状構造内に非変性ジメチルシリコーン単位を持ち、例えば、シクロメチコンである)は、シリコーン流体の所望の性質に応じて選択し制御することができる。いくつかの実施形態では、環状シリコーン流体は、以下に示すように3〜6個のケイ素原子を持つ「オリゴマー」である。7、8、9、10個またはそれ以上のような、より多くのケイ素原子を有する環状シリコーン流体が、明らかに企図される。上述のように、ポリマーは、ポリマーが25℃で液体であるように、典型的には25℃よりも低い融点を有するように設計されることになる。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述される1種または複数のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含む、薬物含有ポリマーマトリックスが提供される。特定の実施形態では、薬物含有ポリマーマトリックスは、(i)感圧性接着剤ポリマーマトリックスなどのポリマーマトリックスと、(ii)本明細書に記述される1種または複数のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体と、(iii)1種または複数の薬物とを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、1種または複数のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を用いて薬物含有ポリマーマトリックスを配合することによって、1種または複数のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含まない同等のポリマーマトリックスで実現されるよりも、大きい薬物流束(例えば、皮膚を通して増強された透過)が実現される。上述のように、いかなる理論にも拘泥するものではないが、オリゴマー/ポリマーシリコーン流体は、組成物中の薬物の溶解度に影響を及ぼすなど、薬物の熱力学的活性に影響を及ぼすことによって、薬物流束に影響を与えると考えられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、1種または複数のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を用いて薬物含有ポリマーマトリックスを配合することによって、1種または複数のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含まない同等のポリマーマトリックスで実現されるよりも、高いまたは低い薬物負荷が可能になる。特定の実施形態では、本明細書に記述される薬物含有ポリマーマトリックスは、1種または複数の薬物を、ポリマーマトリックス中にその飽和濃度でまたはその飽和濃度付近で含む。このように、いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体は、溶解度調節剤として経皮薬物送達系に含まれる。例えば、本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体は、ポリマーマトリックス中の1種または複数の薬物の溶解度を調節する(例えば、増加させまたは減少させる)のに、薬物含有ポリマーマトリックスに含まれてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述される1種または複数のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含む薬物含有ポリマーマトリックスを含む経皮薬物送達系が、提供される。特定の実施形態では、経皮薬物送達系は、治療効果を目的とした、皮膚の内部におよび皮膚を通る薬物の治療有効透過速度など、所望の薬物動態プロファイルを実現する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述される薬物含有ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックスの薬物および/またはその他の成分に関して許容される化学安定性を示す。
いくつかの実施形態では、薬物含有ポリマーマトリックスは、許容される物理的性質、例えば、許容される剪断、粘着、および/または剥離特性、および/または許容される耐摩耗性を示す。
【0028】
(ポリマーマトリックス)
ポリマーマトリックスのその他の成分は限定されず、経皮薬物送達系に使用されるいずれかを含むことができる。
ポリマーマトリックスの担体ポリマーは、経皮薬物送達系で使用するのに適切な任意のポリマーであってもよい。例えば、担体ポリマーは、アクリルポリマー、ゴムポリマー、セルロースポリマー、またはこれらの混合物など、医薬使用が認可されている親水性ポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、担体ポリマーは、アクリル感圧性接着剤などの感圧性接着剤、または以下に具体化されるようなゴムベースの感圧性接着剤である。特定の実施形態では、担体ポリマーは、配合される1種または複数の薬物に対して化学的に適合性がある。例えば、薬物がメチルフェニデートを含む場合、担体ポリマーは、1種または複数の非官能性アクリルポリマーなど、メチルフェニデートと反応する官能基を含まないものであってもよい。同様に、薬物がアンフェタミンを含む場合、担体ポリマーは、1種または複数の非酸官能性アクリルポリマーなど、アンフェタミンと反応する官能基を含まないものであってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体以外の任意のシリコーンポリマーを含まない。このようにいくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体以外のポリマーを実質的に含まずまたは含まない。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、アミンに相溶性のあるかつ/または末端キャップされた、シリコーン感圧性接着剤を含めたシリコーン感圧性接着剤を実質的に含まずまたは含まない。
【0030】
(アクリルポリマー)
いくつかの実施形態では、ポリマー担体はアクリルポリマーを含む。「アクリルポリマー」という用語は、「ポリアクリレート」、「ポリアクリルポリマー」、および「アクリル接着剤」と同義に、当技術分野におけるように本明細書では使用される。アクリルベースのポリマーは、様々なアクリル酸またはエステルのホモポリマー、コポリマーおよびターポリマーなどのいずれかとすることができる。いくつかの実施形態では、アクリルベースのポリマーは、接着剤ポリマーである。その他の実施形態では、アクリルベースのポリマーは、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、またはその他の添加剤を添加することによって、接着剤として機能する。
アクリルポリマーは、コポリマー、ターポリマー、およびマルチポリマーを含むことができる。例えば、アクリルポリマーは、様々なアクリル酸のホモポリマー、コポリマー、およびターポリマーなどのいずれかとすることができる。いくつかの実施形態では、アクリルポリマーは、ポリマーマトリックスのポリマー含量の約2質量%〜約95質量%を構成し、約3%〜約90%、および約5%〜約85%、例えば、2%〜95%、3%〜90%、および5%〜85%で含まれる。いくつかの実施形態では、アクリルポリマーの量およびタイプは、配合して使用される薬物のタイプおよび量に依存する。
【0031】
本発明を実施するのに有用なアクリルポリマーは、アクリル酸の1種または複数のモノマー、およびその他の共重合可能なモノマーの、ポリマーを含む。アクリルポリマーは、アルキルアクリレートおよび/またはメタクリレートおよび/または共重合可能な二次モノマーまたは官能基を持つモノマーの、コポリマーも含む。アクリルベースのポリマーであってその官能基に基づくポリマーの組合せも考えられる。官能基を有するアクリルベースのポリマーは、非官能性モノマー単位に加えて遊離官能基を有する他のモノマー単位を含有する、コポリマーおよびターポリマーを含む。モノマーは、単官能性または多官能性とすることができる。添加されるモノマーのそれぞれのタイプの量を変化させることによって、得られるアクリルポリマーの凝集性を、当技術分野で公知のように変えることができる。いくつかの実施形態では、アクリルポリマーは、少なくとも50質量%のアクリレートまたはアルキルアクリレートモノマー、0〜20%のアクリレートと共重合可能な官能性モノマー、および0〜40%のその他のモノマーから構成される。
【0032】
使用することができるアクリレートモノマーには、アクリル酸およびメタクリル酸およびアルキルアクリルまたはメタクリルエステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸アミル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸グリシジル、および対応するメタクリル酸エステルが含まれる。非官能性アクリルベースのポリマーは、遊離官能基を持たないまたは実質的に持たない任意のアクリルベースのポリマーを含むことができる。
【0033】
使用することができる、上記アルキルアクリレートまたはメタクリレートと共重合可能な官能性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸tert−ブチルアミノエチル、メタクリル酸tert−ブチルアミノエチル、アクリル酸メトキシエチル、およびメタクリル酸メトキシエチルが含まれる。
【0034】
本明細書で使用される「官能性モノマーまたは基」は、アクリルベースのポリマーを直接修飾するまたはさらなる反応のための部位を提供する反応性化学基を有する、典型的にはアクリルベースのポリマー中のモノマー単位である。官能基の例には、カルボキシル、エポキシ、ヒドロキシル、スルホキシル、およびアミノ基が含まれる。官能基を有するアクリルベースのポリマーは、上述の非官能性モノマー単位に加え、遊離官能基を有する他のモノマー単位を含有する。モノマーは、単官能性または多官能性とすることができる。これらの官能基には、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基などが含まれる。典型的なカルボキシル官能性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、およびクロトン酸が含まれる。典型的なヒドロキシ官能性モノマーには、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシアミル、メタクリル酸ヒドロキシアミル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシルが含まれる。上述のように、いくつかの実施形態では、アクリルポリマーは、そのような官能基を含まない。
【0035】
本発明を実施するのに適切なアクリル接着剤のさらなる詳細および例は、参照によりそれら全ての全体が明らかに組み込まれる、Satas, "Acrylic Adhesives," Handbook of Pressure-Sensitive Adhesive Technology, 2nd ed., pp. 396-456 (D. Satas, ed.), Van Nostrand Reinhold, New York (1989); "Acrylic and Methacrylic Ester Polymers," Polymer Science and Engineering, Vol. 1, 2nd ed., pp 234-268, John Wiley & Sons, (1984); 米国特許第4,390,520号; および米国特許第4,994,267号に記載されている。
【0036】
適切なアクリルポリマーは、Duro−Tak(登録商標)という商標名の下(Duro−Tak(登録商標)87−2287、−4098、−2852、−2196、−2296、−2194、−2825、−2516、−2070、−2353、−2154、−2510、−4852、−9085、−9088、−9900、−2051、−2052、−2054、235A、−2074、−2979、−2525、−2677、−4287、−502A、−503A、−504A、−900A、−901A、および−9301など)、およびGELVA(登録商標)GMSという商標名の下(GELVA(登録商標)GMS 2480、788、7883、737、263、1430、1753、1151、2450、2495、2499、3067、3071、3083、3087、3235、9073、および9083など)、Henkel North Americaから販売されているアクリルベースの接着剤などの市販されている感圧性接着剤も含む。その他の適切なアクリル接着剤には、Evonik Industries AG、Essen、ドイツからEUDRAGIT(登録商標)という商標名で販売されるものが含まれる。
【0037】
(ゴムポリマー)
上述のように、いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、1種または複数のゴムベースのポリマー、例えば1種または複数のゴムベースの感圧性接着剤、例えば天然または合成ポリイソプレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエンポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(Kraton(登録商標)D111 KTなど)、炭化水素ポリマー、例えばブチルゴム、ハロゲン含有ポリマー、例えばポリアクリル−ニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリクロロジエン、およびこれらのその他のコポリマーを含む。さらにまたはあるいは、上記論じたように、ポリマーマトリックスは、エチルセルロースなどの非接着剤ポリマーを含んでいてもよい。
【0038】
(その他の成分)
本明細書に記述される実施形態のいずれかによれば、薬物含有ポリマーマトリックスは、可塑剤、浸透促進剤、および充填剤など、1種または複数のその他の薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、1種または複数のそのような賦形剤を約0%〜約20%含む。
「浸透促進剤」は、皮膚の透過を変化させることによって皮膚を通る薬物の送達を加速させることが公知の薬剤である。これらの薬剤は、加速剤、助剤、および収着促進剤とも呼ばれており、本明細書ではまとめて「促進剤」と呼ぶ。この種類の薬剤は、例えば角質層が水分を保持する能力を変化させ、皮膚を軟化させ、皮膚の透過性を改善し、浸透補助または毛包開放剤として作用し、または境界層を含めた皮膚の状態を変化させることによって経皮吸収を改善する機能を発揮するものを含めた、多様な作用機序を持つものを含む。
例示的な浸透促進剤には、多価アルコール、例えばジプロピレングリコール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール;油、例えばオリーブ油、スクアレン、およびラノリン;脂肪エーテル、例えばセチルエーテルおよびオレイルエーテル;脂肪酸エステル、例えばミリスチン酸イソプロピル;水分を保持するケラチンの能力に影響を及ぼす尿素および尿素誘導体、例えばアラントイン;ケラチンの透過性に影響を及ぼす極性溶媒、例えばジメチルデシルホスホキシド(dimethyidecylphosphoxide)、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、ジメチルアセトニド、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、およびジメチルホルムアミド;ケラチンを軟化させるサリチル酸;浸透助剤であるアミノ酸;毛包開放剤であるニコチン酸ベンジル;ならびに皮膚および投与される薬物の表面状態を変化させる、より高い分子量の脂肪族界面活性剤、例えばラウリル硫酸塩が含まれるが、これらに限定するものではない。その他の薬剤には、オレイン酸およびリノール酸、アスコルビン酸、パンテノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール、酢酸トコフェリル、リノール酸トコフェリル、オレイン酸プロピル、およびパルミチン酸イソプロピルが含まれる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスまたは経皮薬物送達系は、浸透促進剤を含まない。
ポリマーマトリックスおよび/または面接着剤は、様々な増粘剤、充填剤と、マトリックスまたは面接着剤の性質をさらに変性させるために経皮薬物送達系で使用されることが公知のその他の添加剤または成分、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、セルロース誘導体、SiO
2、およびその他の成分とを、さらに含んでいてもよい。
【0040】
本明細書に記述される実施形態のいずれかによれば、ポリマーマトリックスは抗酸化剤を含んでいてもよい。特定の実施形態では、抗酸化剤は、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、第3級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、アルファ−トコフェロールおよびそのエステル、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および没食子酸プロピル、およびこれらの混合物など、経皮薬物送達系で使用されることが公知の1種であってもよい。抗酸化剤は、ポリマーマトリックスの、約0〜約0.5質量%を含む約0〜約1質量%を構成していてもよい。
【0041】
(薬物)
本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体は、経皮的に送達することができる任意の薬物を配合するための経皮薬物送達系で有用である。いくつかの実施形態では、1種または複数の薬物は、1種または複数のアミン官能性薬物を含む。「アミン官能性」という用語は、1つまたは複数の、フェニルプロパノールアミンなどの第1級アミンラジカル、プロパノロールなどの第2級アミンラジカル、テオフィリンおよびクロルフェニルアミンなどの第3級アミンラジカルを含有する薬物または活性剤を示す。「アミン官能性」という用語は、テオフィリンおよびジエチルカルボマジンに見出されるものなどの複素環式アミンラジカルと、経皮的に送達できることを前提としたスコポラミン臭化水素酸塩などのアミン官能性薬物の塩も含むが、ニトロラジカルなどの酸化窒素ラジカルは含まない。経皮薬物送達用のアミン官能性薬物のその他の例には、例えば、テトラカイン、エフェドリン、クロニジン、ニコチン、ラミプリル、エナラプリル、フェンタニルと、類似体、例えばアルフェンタニル、カルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、およびトレフェンタニル、アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メタムフェタミン、およびアトロピンが含まれる。経皮薬物送達系で使用されるアミン官能性薬物のその他の例は、当業者に明らかにされよう。特定の実施形態では、1種または複数の薬物が、アンフェタミン、メチルフェニデート、リバスチグミン、またはクロニジンの1種または複数を含む。
【0042】
特定の実施形態では、1種または複数の薬物は、1種または複数の第1級または第2級アミン遊離塩基薬物を含む。そのような薬物は、シリコーン感圧性接着剤中に存在するシリコーン樹脂と相互作用する傾向があり、その結果、薬物の不安定性および剥離の問題が生じる(例えば、マトリックスを剥離ライナーから剥がすことが難しい)。意外にも予期せずに、本明細書に記述される1種または複数のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含む、本明細書に記述されるポリマーマトリックス中に、そのような薬物を配合することによって、これらの問題が低減され、最小限に抑えられ、または回避されることが見出された。
【0043】
本明細書に記述される薬物含有ポリマーマトリックスに配合される薬物の量は、配合される特定の薬物、特定のポリマーマトリックス、および特定の所望の薬物動態プロファイル、および/または治療効果に応じて変えることになる。一般に、薬物の量は、薬物含有ポリマーマトリックスの約30質量%までになる。
薬物含有ポリマーマトリックスは、薬物を、その遊離塩基もしくは遊離酸の形で、または任意の薬学的に許容されるその塩もしくはエステルとして、またはそれらの任意の組合せで含んでいてもよい。例示的な適切な薬学的に許容される塩は、弱い無機および有機酸の塩と、第4級アンモニウム塩である。これらには、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、桂皮酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、またはアスコルビン酸などの酸との塩、あるいは、硫酸、ハロゲン化水素酸、または芳香族スルホン酸の有機エステルとの第4級アンモニウム塩、例えば塩化メチル、臭化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、塩化イソブチル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、臭化フェネチル、塩化ナフチルメチル、硫酸ジメチル、ベンゼンスルホン酸メチル、トルエンスルホン酸エチル、エチレンクロロヒドリン、プロピレンクロロヒドリン、臭化アリル、臭化メチルアリル、または臭化クロチルエステルが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述される薬物含有マトリックスは、本明細書に記述される、薬物、アクリル感圧性接着剤ポリマー、オリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含み、望みに応じて追加の賦形剤を含んでいてもよい。
上述のように、いくつかの実施形態では、薬物含有ポリマーマトリックスは、最大約10質量%、最大約20質量%、または最大約30質量%の薬物、例えば0.1〜10質量%、または0.1〜20質量%、または0.1〜30質量%の薬物を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、薬物含有ポリマーマトリックスは、約2.5質量%〜約50質量%のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体、例えば約2.5%、5%、7.5%、10%、12.5%、15%、20%、30%、40%、または50質量%のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含む。いくつかの実施形態では、薬物含有ポリマーマトリックスは、約20質量%のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含む。
いくつかの実施形態では、薬物含有ポリマーマトリックスは、最大約95質量%の担体ポリマーを含み、例えば、約50%、55%、60、65%、70%、75%、80%、85%、および90%の担体ポリマーも含めて約5〜95質量%の担体ポリマーを含む。本明細書で使用される「担体ポリマー」という用語は、いずれか2種以上の担体ポリマーおよび本明細書に論じられる感圧性接着剤ポリマーなど、2種以上の担体ポリマーのブレンドおよび混合物を含む。
いくつかの実施形態では、薬物含有ポリマーマトリックスは、1種または複数の賦形剤を最大約20質量%含む。
【0046】
(経皮薬物送達系)
上述のように、本明細書には、本明細書に記述される1種または複数のオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含んだポリマーマトリックスを含む経皮薬物送達系が記述される。上述のように、担体ポリマーは、感圧性接着剤であってもそうでなくてもよい。さらに上述のように、経皮薬物送達系は、ポリマーマトリックスから構成されるモノリシックデバイスであってもよく、または面接着剤層などの1種もしくは複数の追加の層を含んでいてもよく、または周囲接着剤部分が設けられていてもよい。上述のように、経皮薬物送達系は、ポリマーマトリックス層の一方の面に裏打ち層を、ポリマーマトリックス層の他方の面に剥離ライナーを含んでいてもよい。多層系では、ポリマーマトリックス層は、皮膚接触層(例えば、剥離層に直接隣接している)であってもよく、または1つもしくは複数の介在層によって皮膚から離間していてもよく、または裏打ち層に直接隣接していてもいなくてもよい。さらに、任意選択のオーバーレイ接着剤被膜を使用して、皮膚に対するパッチの接着を強化してもよい。いくつかの実施形態では、系は、本質的にポリマーマトリックス層からなる。「本質的にポリマーマトリックス層からなる」とは、系が、追加の速度制御ポリマー層、速度制御膜、または薬物リザーバー層など、薬物送達に影響を及ぼすその他のいかなる層も含有しないことを意味する。しかし、本質的にポリマーマトリックス層からなる系は、裏打ち層および/または剥離ライナーを含んでいてもよいことが理解されよう。
【0047】
系は、経皮施用に適切な任意の形状またはサイズのもの、および所望の用量を送達するための施用に適切なサイズのもの、例えば、約5cm
2、約10cm
2、約20cm
2、約25cm
2、約30cm
2、約35cm
2、約40cm
2、約45cm
2、約50cm
2、約60cm
2、および約75cm
2を含めた約2cm
2〜約50cm
2に及ぶ。
【0048】
アンフェタミンに関する特定の実施形態では、アンフェタミンは、ポリマーマトリックスの活性表面積(例えば、薬物含有ポリマーマトリックスの表面積)に対して約0.5mg/cm
2〜約3mg/cm
2の量で、例えば約1mg/cm
2で存在することができ、ポリマーマトリックスの活性表面積に対して約1.05mg/cm
2も含めた量で存在することができる。その他の例示的な量には、約0.75mg/cm
2、0.8mg/cm
2、0.9mg/cm
2、1.0mg/cm
2、1.05mg/cm
2、1.1mg/cm
2、1.2mg/cm
2、および1.25mg/cm
2、1.5mg/cm
2、2.0mg/cm
2、2.5mg/cm
2、および3.0mg/cm
2が含まれる。本明細書に記述される実施形態のいずれかによれば、系は、アンフェタミンを約5〜約30mg、または同等量の薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを含んでいてもよく、約5、10、15、20、25、または30mgのアンフェタミン塩基または同等物が含まれる。
【0049】
リバスチグミンに関する特定の実施形態では、薬物含有ポリマーマトリックスは、約16〜24cm
2のサイズ、例えば17.5cm
2、18cm
2、19cm
2、または23.5cm
2を有し、単位用量当たり約60〜65mg(61.9mg、63.9mg、64mgを含む)のリバスチグミンを含有し、かつ/または約4.6mg/日の用量を送達する。その他の特定の実施形態では、系は約32〜48cm
2、例えば35cm
2、36cm
2、38cm
2、または47cm
2であり、単位用量当たり約126mgのリバスチグミンを含有し、かつ/または約9.5mg/日の用量を送達する。リバスチグミンに関する他の特定の実施形態では、系は、単位用量当たり約32〜65mgのリバスチグミンを含有し、または単位用量当たり約67〜126mgのリバスチグミンを含有する。
【0050】
メチルフェニデートに関する特定の実施形態では、メチルフェニデートは、ポリマーマトリックスの活性表面積に対して、約1.2mg/cm
2〜約3mg/cm
2を含めた約0.5mg/cm
2〜約5mg/cm
2の量で存在することができる。例示的な量には、約0.5mg/cm
2、約0.8mg/cm
2、約1mg/cm
2、約1.2mg/cm
2、約1.4mg/cm
2、約1.6mg/cm
2、約1.7mg/cm
2、約1.8mg/cm
2、約2.0mg/cm
2、約2.2mg/cm
2、約2.4mg/cm
2、約2.6mg/cm
2、約2.8mg/cm
2、約3.0mg/cm
2、約3.3mg/cm
2、約3.5mg/cm
2、約3.7mg/cm
2、約3.9mg/cm
2、約4.1mg/cm
2、約4.3mg/cm
2、約4.5mg/cm
2、約4.7mg/cm
2、および約5.0mg/cm
2が含まれる。メチルフェニデートの実施形態のいずれかによれば、薬物含有ポリマーマトリックスのサイズは、約6cm
2、8cm
2、10cm
2、12.5cm
2、14.5cm
2、15cm
2、18.75cm
2、22.5cm
2、25cm
2、27.5cm
2、30cm
2、37.5cm
2、および45cm
2など、約15cm
2〜約30cm
2を含めた約2cm
2〜約60cm
2の範囲とすることができる。本明細書に記述されるメチルフェニデートの実施形態のいずれかによれば、ポリマーマトリックスは、約20〜約225mgのメチルフェニデート塩基または同等量の薬学的に許容されるその塩を含んでいてもよい。
【0051】
クロニジンに関する特定の実施形態では、クロニジンは、ポリマーマトリックス中に、このポリマーマトリックスの全乾燥質量に対して約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10質量%などの、約1%〜約10質量%など、約1%から約20質量%を含めた約0.1%から約50質量%の量で存在していてもよい。特定の実施形態では、ポリマーマトリックスは、このポリマーマトリックスの全乾燥質量に対してクロニジンを約3、約4、約5、約6、または約7質量%含む。クロニジンの実施形態のいずれかによれば、組成物は、1日当たり約0.05〜約0.5mgのクロニジンを送達するように、例えば1日当たり約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5mgのクロニジンを送達するように設計されてもよく、1〜約7日またはそれよりも長い期間にわたって使用するために設計されてもよい。クロニジンの実施形態のいずれかによれば、薬物含有ポリマーマトリックスのサイズは、例えば、約2cm
2、3.5cm
2、7cm
2、10.5、または12cm
2など、約2cm
2〜約15cm
2を含めた約2cm
2〜約60cm
2の範囲とすることができる。
【0052】
本明細書に記述されるポリマーマトリックスは、当技術分野で公知の方法により調製されてもよい。例えば、ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックスの成分をブレンドし、マトリックス材料を裏打ち層または剥離ライナーなどの支持層に付着させ(例えばカレンダーコーティング、ホットメルトコーティング、溶液コーティングなどによって)、残りの溶媒を全て除去することによって調製することができる。ポリマーマトリックスは、使用に適切なサイズおよび形状に打ち抜くことなどによる、当技術分野で公知の方法によって系に形成することができる。
【0053】
アミン薬物は、任意の段階で添加することができる。一実施形態では、薬物を含む全てのポリマーマトリックス成分を、一緒にブレンドする。ステップの順序、成分の量、および撹拌または混合の量および時間は、当業者により決定し最適化することができる。例示的な一般的方法は下記の通りである:
溶媒、促進材、および有機溶媒(例えば、トルエン、または酢酸エチル、および/またはイソプロピルアルコール)の適切な量を容器内で合わせて一緒に完全に撹拌する。
【0054】
薬物を混合物に添加し、このとき抗酸化剤も混合物に添加してもよく、薬物が均一に混合されるまで撹拌を実施する。
次いでポリマー成分、オリゴマー/ポリマーシリコーン流体、およびその他の賦形剤の適切な量を、薬物混合物に添加し、完全に混合する。
次いで配合物をコーティング操作に移し、制御された指定の厚さで保護剥離ライナー上にコーティングする。次いでコーティングされた生成物を、全ての揮発性処理液をすっかり乾かすために炉内に通す。
次いで剥離ライナー上の乾燥した生成物を、裏当て材料に接合し、保存するためにロール状に巻く。
適切なサイズおよび形状の「系」を、ロール材料から打ち抜き、次いでパウチ状にする。
本明細書に記述される系を作製するのに適切なその他の製造方法は、当技術分野で公知である。
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスのコーティング質量は、薬物送達プロファイルを制御しかつ/または最適化するように選択され調整される。例えば、より高いコーティング質量(例えば、系の単位面積当たりのポリマーマトリックスの単位質量)を持つ系は、高い薬物流束および改善された流束プロファイルを実現し得る。
【0055】
(治療方法)
いくつかの実施形態では、本明細書に記述される系を、それを必要とする対象の皮膚または粘膜に施用することによって、薬物の経皮薬物送達を行う方法が提供される。いくつかの実施形態では、系は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、または少なくとも約7日の期間にわたって、例えば1、2、3、4、5、6、もしくは7日間、あるいはそれ以上にわたって施用される。いくつかの実施形態では、方法は、施用期間中、治療有効量の薬物の経皮送達が実現されるように行われる。いくつかの実施形態では、方法は、施用期間中、対象において薬物の治療レベルが実現されるように行われる。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、もしくは少なくとも約7日、またはそれ以上の期間にわたって、実質的に一定の薬物送達速度が実現するように行われる。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるアンフェタミン系は、中枢神経系を刺激し、注意欠陥障害(ADD)を治療し、またはナルコレプシーを治療するために使用される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるリバスチグミン系は、アルツハイマー病またはパーキンソン病に関連した認知症に罹っているまたはこの認知症を発症するリスクがある患者に使用されるよう設計される。
いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるメチルフェニデート系は、注意欠陥障害(ADD)または注意欠陥過活動性障害(ADHD)、体位性頻脈症候群、またはナルコレプシーに罹っている患者により使用されるよう設計される。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるクロニジン系は、高血圧(血圧上昇)、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、不安障害、禁断症状(例えば、アルコール、オピオイド、またはニコチンからの)、片頭痛、閉経期のフラッシング、下痢、または疼痛を治療するために使用される。
下記の特定の例は、本明細書に記述される経皮薬物送達系およびポリマーマトリックスの例示として含める。これらの例は、本発明の範囲を決して限定するものではない。本発明のその他の態様は、本発明が関係する当業者に明らかにされよう。
【実施例】
【0058】
(例1)
アクリル感圧性接着剤中のシリコーン流体の混和性
本明細書に記述されるアクリル感圧性接着剤およびオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含む組成物を、下記の通り調製し、剥離ライナーに施用し、1週間後に目視観察によって評価した。満足のいく性能は、相分離/油液の不在、均一/均等コーティング、および/または剥離ライナーからの正常な剥がれによって示された。
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
(例2)
アンフェタミンに関する皮膚透過研究
アンフェタミン組成物を、以下に記述されるように調製し、ヒト死体皮膚を通る薬物流束(μg/cm
2/時)を評価した。
【表3】
【0061】
結果を、
図1A〜Cに示す。図に示されるように、本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含む組成物は、増大した透過を示した(最大約5倍)。
【0062】
(例3)
リバスチグミンに関する皮膚透過研究
リバスチグムン組成物を、以下に記述されるように調製し、ヒト死体皮膚を通る薬物流束(μg/cm
2/時)を評価した。
【表4】
【0063】
結果を、
図2A〜Bに示す。図に示されるように、本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含む組成物は、増大した透過を示した(最大約1.75倍)。
【0064】
(例4)
メチルフェニデートに関する皮膚透過研究
メチルフェニデート組成物を、以下に記述されるように調製し、ヒト死体皮膚を通る薬物流束(μg/cm
2/時)を評価した。
【表5】
【0065】
結果を、
図3A〜Cに示す。図に示されるように、本明細書に記述されるオリゴマー/ポリマーシリコーン流体を含む組成物は、増大した透過を示した(最大約1.4×)。