(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873923
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】安定化された薬学組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20210510BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20210510BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20210510BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20210510BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20210510BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20210510BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20210510BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20210510BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/20
A61K47/26
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-561639(P2017-561639)
(86)(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公表番号】特表2018-516253(P2018-516253A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】KR2016005653
(87)【国際公開番号】WO2016190712
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2017年12月8日
【審判番号】不服2019-14673(P2019-14673/J1)
【審判請求日】2019年11月1日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0074540
(32)【優先日】2015年5月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511285358
【氏名又は名称】サムヤン バイオファーマシューティカルズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG BIOPHARMACEUTICALS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジュンウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョンヘ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ミンヒョ
(72)【発明者】
【氏名】イ,サウォン
【合議体】
【審判長】
滝口 尚良
【審判官】
松本 直子
【審判官】
石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/121523(WO,A2)
【文献】
国際公開第2015/050230(WO,A1)
【文献】
特表2003−521518(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/182093(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第103006584(CN,A)
【文献】
国際公開第2013/179248(WO,A1)
【文献】
SOP−Freeze−Pump−Thaw Degassing of Liquids,2011年,[検索日 2018.01.30],A1. General,インターネット:<URL:http://chemsafety.chem.oregonstate.edu/content/sop−freeze−pump−thaw−degassing−liquids>
【文献】
Tips and Tricks for the Lab: Air−Sensitive Techniques (2),2013年,[検索日 2018.01.30],Freeze−Pump−Thaw,インターネット:<URL:http://www.chemistryviews.org/details/education/4308331/tips_and_tricks−for_the_lab_air−sensitive_techniques_2.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/33-33/44
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩、水性溶媒及び抗酸化剤を含む溶液を容器に分注した後、凍結して凍結物を得る段階;および
(b)真空減圧条件下で前記凍結物を脱気して脱気された凍結物を得る段階を含み、
前記脱気された凍結物は、前記段階(a)の溶液に含有されている溶媒100重量を基準に95重量部〜100重量部の溶媒を含み、
前記段階(a)〜(b)は、密閉されたチャンバー内で行われる、
薬学組成物の製造方法。
【請求項2】
前記段階(b)で溶存酸素濃度1.5ppm以下に脱気する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記段階(b)の脱気段階は、12時間以内に行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記段階(a)の溶液は、脱気処理されていない溶液である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記溶液は、薬学的に許容可能な賦形剤およびpH調節剤からなる群より選択される1種以上を追加的に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記賦形剤は、マンニトールであるか、前記pH調節剤は、塩酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの混合物である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記抗酸化剤は、モノチオグリセロール、硫化ナトリウム、アセチルシステイン、またはこれらの混合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記段階(a)で−20℃以下に凍結する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記段階(b)で真空減圧条件は、2,000mTorr以下の条件である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記段階(b)を行った後に、密封するか、窒素で充填した後に密封する段階を追加的に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記段階(b)を行った後に、脱気された凍結物を解凍する段階を追加的に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
密封する段階を行った後に、脱気された凍結物を解凍する段階を追加的に含む、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む安定性が向上した薬学組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペメトレキセド二ナトリウム塩は、新たな多重標的抗葉酸剤であり、非小細胞肺癌(NSCLC)、悪性胸膜中皮腫(methothelioma)および乳癌、大腸癌、子宮癌、頭頸部癌および膀胱癌を含む広範囲な固形癌に優れた抗癌活性を有している。アリムタ(Alimta:登録商標)は、臨床に使用されているペメトレキセド凍結乾燥剤型注射剤として、国内では化学療法を受けたことのない手術不可能な悪性胸膜中皮腫患者にシスプラチンと併用して使用したり、以前の化学療法実施後、局所進行性乳癌と非小細胞肺癌の単独療法剤として2007年に発売されて使用されている。
【0003】
現在使用されている大部分の凍結乾燥剤型の注射剤は、水溶液状で薬物の不安定性により凍結乾燥粉末の形態で製造し、これを患者に投薬する前に生理食塩水や注射用水などで再構成して使用している。しかし、このような再構成過程は、必要な量を測量して凍結乾燥剤バイアルに投入しなければならない煩わしさがあり、再構成過程で微生物汚染の危険があり、再構成後の一定時間内に使用しなければならない制限もある。そして、このような凍結乾燥剤型は、凍結乾燥過程で長い乾燥サイクルにより多くの時間が消費されて、生産費用が高まり、製造工程も複雑な問題点がある。そこで、製造時の経済性の面や使用者の便宜性などを考慮してみる時、安定性が確保された即時使用可能な(ready−to−use)液状組成物の必要性が台頭してきた。
【0004】
しかし、ペメトレキセドは、水溶液内で速い酸化を起こして様々な類縁物質を生成する代表的な薬物である。液状で薬物の不安定性により、薬物の安定性を高める方法として代表的なものが抗酸化剤を添加したり溶存酸素を除去する方法である。抗酸化剤を使用する方法としては、国際特許公開第WO2001/56575号でペメトレキセドをモノチオグリセロール、L−システインまたはチオグリコール酸の抗酸化剤と共に製剤化した液状製剤を開示している。大韓民国登録特許第10−1260636号では、ペメトレキセドに抗酸化剤としてアセチルシステイン、緩衝剤としてクエン酸を使用して安定性を高めた製剤を開示している。国際特許公開第WO2012/121523号では、抗酸化剤を使用せずに注射溶液中の溶存酸素の濃度を1ppm以下に調節して安定性を高める製造工程について開示している。しかし、前記文献に開示された製造工程は、実験室内における小規模生産は可能であるが、大規模の商業用生産には多くの工程の困難さがある。特に大規模生産時、注射用水や水溶液を真空脱気した後、ガラスバイアルに分注する場合、脱気状態を維持するのに相当な困難さがある短所がある。前記文献は、抗酸化剤などの安定化剤を使用せずに酸化を防止して安定性を高めることができる工程であるが、これを商業生産が可能な工程へ連結させることは容易なことではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許公開第WO2001/56575号
【特許文献2】大韓民国登録特許第10−1260636号
【特許文献3】国際特許公開第WO2012/121523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、前記問題点などを考慮して密閉されたチャンバー内ですべての工程を進行することができるため、大規模の商業生産が可能な、水溶液状態で安定した薬学組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、酸素を除去して安定性を高めた薬学組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明のまた他の目的は、脱気した水溶液で密閉されたシステムで組成物を製造する煩わしさの代わりに、密閉されたチャンバー内で凍結および脱気して工程を簡単に行うことによって、酸化に不安定な薬物の安定性確保と共に大規模生産が可能な、ペメトレキセド含有薬学組成物およびその製造方法を提供することである。
【0009】
本発明のまた他の目的は、抗酸化剤添加と共に前記凍結および脱気工程を行い、安定性はもちろん、色の変化まで遮断した、室温保管の可能な水溶液状態の薬学組成物およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような課題を解決するための一つの実施形態として、本発明は、(a)ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含む溶液を凍結して凍結物を得る段階;および(b)真空減圧条件下で前記凍結物を脱気して脱気された凍結物を得る段階を含む、薬学組成物の製造方法に関するものである。
【0011】
本発明の他の実施形態は、ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含み、凍結および脱気されたことを特徴とする、薬学組成物に関するものである。
【0012】
前記段階(a)の溶液は、脱気処理されていない溶液であってもよく、段階(a)で−20℃以下に凍結されてもよい。
【0013】
前記段階(a)の溶液または薬学組成物は、ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩をペメトレキセドとして5〜100mg/ml、好ましくは10〜50mg/ml、より好ましくは20〜30mg/ml含んでもよい。
【0014】
前記段階(a)の溶液または薬学組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤およびpH調節剤からなる群より選択される1種以上を追加的に含んでもよく、例えば前記賦形剤は、マンニトールであるか、前記pH調節剤は、塩酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの混合物であってもよい。前記賦形剤は、溶液または組成物の総重量に対して0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは2〜3重量%用いることができ、前記pH調節剤は、溶液または組成物のpHを6〜8、好ましくは6.5〜8.0、より好ましくは6.6〜7.8、さらに好ましくは7.0〜7.5範囲に調節する量で用いてもよい。
【0015】
前記段階(a)の溶液または薬学組成物は、抗酸化剤を追加的に含んでもよい。抗酸化剤としては、当業界で使用される通常のものを用いることができ、例えば、モノチオグリセロール、L−システイン、チオグリコール酸、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、EDTA、L−メチオニン、L−シスチン、亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、EDTA二ナトリウム、クエン酸、リポ酸、ジヒドロリポ酸、L−アルギニン、L−グルタチオン、L−トリプトファン、またはこれらの混合物などを用いることができ、好ましくは、モノチオグリセロール、硫化ナトリウム、アセチルシステイン、またはこれらの混合物、より好ましくは、モノチオグリセロールを用いることができる。前記抗酸化剤は0.01〜10mg/ml、好ましくは0.1〜5mg/ml、より好ましくは1〜3mg/mlの濃度で用いることができる。
【0016】
本発明では前記段階(b)でペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含む溶液が凍結された凍結物を脱気することを一特徴とする。前記脱気された凍結物は、段階(a)の溶液に含有されている溶媒100重量を基準に95重量部〜100重量部の溶媒を含むものであってもよく、前記段階(b)で溶存酸素濃度1.5ppm以下に脱気するものであってもよい。
【0017】
好ましくは、前記凍結および脱気、選択的に密封する段階は、密閉されたチャンバー内で行われてもよく、前記段階(b)を行った後に、または密封する段階を行った後に脱気された凍結物を解凍する段階を追加的に含むことができる。前記段階(b)で真空減圧条件は2,000mTorr以下の条件であってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態は、(a)ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含む溶液を凍結して凍結物を得る段階;および(b)真空減圧条件下で前記凍結物を脱気して脱気された凍結物を得る段階を含む、薬学組成物の溶存酸素濃度を減少させる方法に関するものである。
【0019】
本発明のまた他の実施形態は、(a)ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含む溶液を凍結して凍結物を得る段階;および(b)真空減圧条件下で前記凍結物を脱気して脱気された凍結物を得る段階を含む、薬学組成物を安定化させる方法に関するものである。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、密閉されたチャンバー内で(a)ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含む溶液を凍結して凍結物を得る段階および(b)真空減圧条件下で前記凍結物を脱気して脱気された凍結物を得る段階;または(a)ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含む溶液を凍結して凍結物を得る段階、(b)真空減圧条件下で前記凍結物を脱気して脱気された凍結物を得る段階および(c)密封する段階を含む、水溶液状で溶存酸素を除去して酸化に弱い薬物の安定性を高める方法に関するものである。
【0021】
本発明の他の実施形態で、段階(a)の溶液は、抗酸化剤を追加的に含むものであってもよい。通常の抗酸化剤を用いることができ、その例は前述したとおりである。
【0022】
本発明は水溶液状で溶存酸素を除去して酸化に弱い薬物の安定性を高める方法であって、全ての工程が密閉されたチャンバー内で連続的に行われるため、汚染なく無菌空間で簡便に行われ得る工程であり、他の脱気方法より時間や便宜性、収率の面でも遥かに効果的である。
【0023】
ひいては、本発明は、凍結および脱気と共に抗酸化剤を用い、安定性はもちろん、色の変化まで遮断した、室温保管の可能な水溶液状薬学組成物を効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による製造方法は、好ましくは密閉されたチャンバー内で凍結、脱気および密封工程が連続的に行われるため、大規模商業生産に適し、汚染なく無菌空間で簡便に行われ得る工程であって、他の脱気方法よりも時間や便宜性、収率の面でも顕著に効果的な工程である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、(a)ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含む溶液を凍結して凍結物を得る段階;および(b)真空減圧条件下で前記凍結物を脱気して脱気された凍結物を得る段階を含む、安定性に優れた薬学組成物を大規模に商業生産することができる方法に関する。
【0026】
本発明の追加の実施形態は、ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含み、凍結および脱気されたことを特徴とする、薬学組成物を提供する。本発明による薬学組成物は、解凍されてもよく、液状非経口製剤、特に液状注射剤として用いられてもよい。
【0027】
前記段階(a)で、ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩と水性溶媒を含む溶液を製造し、これを凍結して凍結物を得ることができる。また、凍結前に前記溶液を充填容器に分注する段階を行うこともできる。本発明の製造方法では、前記段階(a)の溶液をアンプルまたはバイアルのような容器に分注した後に密閉されたチャンバー内で凍結、脱気および密封工程を順次に行うことができるため、大規模の生産時に脱気状態を維持するに有利であるという長所がある。
【0028】
本発明において、「ペメトレキセド(pemetrexed)」は、5−置換ピロロ[2,3−d]ピリミジン化合物であって、具体的に下記の化学式1で表され、非小細胞肺癌、悪性胸膜中皮腫をはじめ多様な癌種で抗癌効能を示す多重標的抗葉酸剤を意味する。
[化学式1]
【0029】
本発明において、「薬学的に許容可能な塩」は、当該技術分野における通常の方法により製造された塩を意味する。具体的に、前記薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容される無機酸と有機酸および塩基から誘導された塩を含むが、これに限定されない。適した酸の例としては、塩酸、臭素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、ラクト酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを含むことができる。適した塩基の例としては、アルカリ金属、例えば、ナトリウム、またはカリウム、アルカリ土類金属、例えば、マグネシウムを含むことができるが、これに制限されない。特に、ペメトレキセドの薬学的に許容可能な塩は、ペメトレキセド二ナトリウム塩であってもよいが、これに制限されない。
【0030】
本発明において、「ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩」は、ペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩の水和物を含む概念であって、すべての形態の水和物、例えば2.5水和物、7水和物などを含むが、これらに制限されない。
【0031】
前記水性溶媒は、水または緩衝溶液であってもよく、好ましくは注射用水または生理食塩水であってもよい。
【0032】
本発明による薬学組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤およびpH調節剤からなる群より選択される1種以上を追加的に含むことができ、例えば、前記賦形剤は、マンニトールであり/であるか、前記pH調節剤は、塩酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの混合物であってもよい。前記賦形剤およびpH調節剤は、段階(a)の溶液に追加されてもよい。
【0033】
本発明による薬学組成物は、抗酸化剤を追加的に含むものであってもよい。抗酸化剤としては、当業界で使用される通常のものを用いることができ、例えばモノチオグリセロール、L−システイン、チオグリコール酸、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、EDTA、L−メチオニン、L−シスチン、亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、EDTA2ナトリウム、クエン酸、リポ酸、ジヒドロリポ酸、L−アルギニン、L−グルタチオン、L−トリプトファン、またはこれらの混合物などを用いることができ、好ましくは、モノチオグリセロール、硫化ナトリウム、アセチルシステイン、またはこれらの混合物、より好ましくは、モノチオグリセロールを用いることができる。前記抗酸化剤は、段階(a)の溶液に追加されてもよい。前記抗酸化剤は、0.01〜10mg/ml、好ましくは0.1〜5mg/ml、より好ましくは1〜3mg/mlの濃度で用いることができる。例えば、モノチオグリセロールは、0.01〜10mg/ml、好ましくは0.1超過〜5mg/ml、より好ましくは0.2〜3mg/ml、例えば0.24〜3mg/ml、例えば1〜3mg/mlの濃度で用いることができる。
【0034】
前記段階(a)の溶液または溶媒は、脱気処理されていないものであってもよい。従来は液状製剤の溶存酸素濃度を調節するために、水性溶媒それ自体または水性溶媒に薬物を溶解した溶液に対して溶存酸素濃度を調節するための段階を行う必要があるが、本発明は凍結後に脱気処理を行うため、その前段階で水性溶媒または薬物を含む溶液に対して脱気処理または溶存酸素の濃度を調節するための処理が必要でない。したがって、本発明によれば、安定性の高い液状製剤を容易に簡単に製造することができる。
【0035】
前記段階(a)で前記溶液の凍結は−20℃以下、好ましくは−30℃以下、例えば−20℃〜−50℃、特に−30℃〜−50℃、より特に−40℃の温度で凍結することができる。凍結方法は通常の液状製剤の凍結方法を適用することができる。
【0036】
前記段階(b)で脱気された凍結物は、段階(a)の溶液に含有されている溶媒100重量を基準に95重量部〜100重量部、またはより好ましくは98重量部〜100重量部の溶媒を含むものであってもよく、凍結物の脱気後に溶媒含有量が大部分そのまま維持され解凍する場合に液状の組成物が得られ、したがって、再構成などを行う必要なく直ちに用いることができるという利点がある。従来の凍結乾燥された粉末型製剤とは異なり、本発明の方法により得られた薬学組成物は、段階(b)で溶媒を除去する乾燥工程でなく、溶存酸素の含有量を減少させる脱気工程を行うことによって、酸素に不安定な薬物であるペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩の安定性を確保することができる。
【0037】
前記段階(b)で得られた脱気された凍結物または以降に解凍された組成物の溶存酸素濃度は1.5ppm以下であってもよい。脱気工程を行って、組成物中に含有されている溶存酸素の含有量を減少させ、酸素に不安定な薬物であるペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩の安定性を確保することができる。
【0038】
本発明のまた他の一例で、前記薬学組成物の製造方法は、凍結および脱気工程、好ましくは密封工程を密閉チャンバー内で行うことができる。具体的に、−20℃以下の温度で前記段階(a)の溶液を凍結させた後、真空減圧して凍結状態の組成物から酸素を除去し、これを直ちに密封することによって一つのチャンバー内で一体の工程で凍結、脱気および密封をすべて行うことができる。
【0039】
本発明の一例で、前記段階(a)の凍結および段階(b)脱気工程以降および密封工程前に、組成物が充填された容器に窒素を充填する工程を追加的に含むことができる。充填容器の上部空間に真空でできた陰圧により大気中の空気が逆流する可能性を完全に排除するために、脱気工程後、密封工程前に、組成物が充填された容器に窒素を充填して陰圧を減らすことによってかかる危険性を大幅減少させることができる。具体的に、脱気後にゴムキャップで密封する前に窒素を充填して真空解除する工程を含む。脱気後に密封し、真空を解除しても溶存酸素を十分に除去するが、バイアル内に陰圧がかかっており、微細な孔にも空気が簡単に投入される可能性があるため、密封前に窒素を充填してバイアル内の陰圧を相当部分低めることによってかかる危険性を減らすことができる。
【0040】
一般に溶液状態で真空減圧をすると蒸気圧により直ちに水分が沸いてあふれる現象が起こるが、密閉されたチャンバー内で溶液状態の薬学組成物を凍結および脱気する場合、組成物の成分および含有量損失なく真空減圧で水溶液より氷点の低い気体が除去可能である。本明細書で、「脱気」という用語は、固体または液体中に含まれている気体分子を除去することである。この気体分子を除去する基本原理は、ヘンリーの法則とダルタンの分圧の法則が適用される。ヘンリーの法則は、溶液中の溶存気体の量はその液体と接している気体の圧力に比例するということであり、液体と接する気体の圧力を低め、つまり、真空にして液体中の気体分子が排出されるようにするのが基本原理である。
【0041】
他の方法としては、液体の温度により気体の溶存飽和度が変わることを利用して液体を加熱する方法がある。この方法は、液体を加熱するためのエネルギー消費の問題があり、また熱に弱い薬物や賦形剤の変性や濃度の変化などにより医薬品への適用には適した方法とはいえない。その他、膜脱気や触媒樹脂脱気などの方法があるが、生産工程が複雑で適用するには困難な部分が多くある。本発明では真空減圧脱気工程を通じて水溶液内に存在する酸素の濃度を顕著に低めることによって酸化反応を遮断することができる。
【0042】
前記段階(b)の脱気工程は、2,000mTorr以下の圧力、好ましくは1,000mTorr以下、より好ましくは500mTorr以下、例えば300mTorr以下の圧力で行うことができる。前記圧力は、0mTorr以上、例えば5mTorr以上、例えば100mTorr以上であってもよい。例えば、脱気工程は、0〜2,000mTorr、特に5〜1,000mTorr、より特に100〜500mTorrの圧力で行われてもよい。前記脱気工程は、目的とする真空度を達成した後に所定の時間真空度を維持し、凍結物に含有されている酸素または酸素を含む気体を除去することができる。
【0043】
本発明が一般的な凍結乾燥工程と異なる点は、凍結後、真空減圧後に所望の真空度に到達すれば乾燥が起こる前に真空を解除しなければならない点である。これは乾燥が進行されるほど溶媒の減少による有効成分などの濃度増加が起こることがあるためである。乾燥を未然に防止するためには、目的とする減圧条件に到達した後に、真空度を好ましくは12時間以内、より好ましくは10時間以内、さらに好ましくは6時間以内に維持する。例えば、目的とする減圧条件に到達した後に直ちに(0時間に)密封および/または真空解除工程を行うことができる。
【0044】
本発明の脱気された凍結物または解凍された溶液に含有されている溶媒の場合、凍結および脱気前に溶液に含有されている溶媒100重量を基準に全く乾燥なしに100重量部がそのまま残っていることが理想的であるが、好ましくは95重量部〜100重量部の溶媒を含むことができ、より好ましくは98重量部〜100重量部の溶媒を含むことができる。
【0045】
また本発明では、密封後に解凍する工程において密閉されたチャンバー内で温度を上げながら解凍してもよく、密閉されたチャンバー内で取り出した後に解凍してもよい。過度に低い温度でバイアルを取り出せば、バイアル表面の湿気によりアルミニウムキャッピングの際に不便さを招くことがあるため、これは注意しなければならない。
【0046】
ひいては、前記段階以降に凍結および脱気された前記薬学組成物を通常の方法、例えば滅菌濾過および/または加熱滅菌などの方法により滅菌処理することもできる。また本発明の段階(a)の水性溶媒、または溶液を通常の方法、例えば滅菌濾過および/または加熱滅菌などの方法により滅菌処理を行うこともできる。
【0047】
以上のような本発明による方法により製造されたペメトレキセドまたはその薬学的に許容可能な塩および水性溶媒を含む薬学組成物は、凍結および脱気されたことを特徴とし、向上した安定性を示す。
【0048】
[実施例]
以下、本発明を実施例を通じてより詳しく説明するが、これらは本発明を説明するためのものであり、本発明の範疇がこれらによって制限されるのではない。
【0049】
[実施例1〜5]真空度による液状製剤の製造
(1)バイアルに充填された混合溶液
注射用水1500mlにペメトレキセド二ナトリウム2.5水和物48.3g(ペメトレキセドで含有量基準40g)を完全に溶かし、ここにマンニトール40gを入れて完全に溶解した。前記溶液に0.1NのHClを加えてpHを7.3に合わせ、注射用水を加えて混合溶液の総重量を1,600gに調節した。前記得られた溶液の溶存酸素濃度は、約7.0ppmであった。前記製造した混合溶液を滅菌フィルターを利用して濾過し、クリーンベンチで5mlバイアルに4mlずつ充填し、ゴムキャップで密封して、前記バイアルに充填された混合溶液を得た。
【0050】
(2)凍結および脱気
前記製造した溶液が盛られたガラスバイアルをゴムキャップを若干開いた状態で密閉されたチャンバーに入れて−40℃で1時間凍結させた。完全に溶液が凍結したことを確認し、−40℃に維持しながら密閉されたチャンバーの真空ポンプを作動させて真空減圧を始めた。下記表1のように真空度を調節し、所望の真空度まで下がると即時真空ポンプの作動を中止し、ゴムキャップで密封した。密封状態を確認した後、真空を解除し、ガラスバイアルを密閉されたチャンバーで取り出した後、解凍しアルミニウムキャップでキャッピングした。凍結および脱気を行って得る製剤の溶存酸素濃度を下記表1に示した。
【0051】
溶存酸素の測定は、YSI 550A溶存酸素測定器を使用して窒素で充填されているグローブボックス内で攪拌しながら測定した。前記解凍溶液の特性を表1に示した。
【表1】
【0052】
[実施例6]凍結および脱気後に窒素充填した液状製剤の製造
前記実施例1と同様な方法でバイアルに充填された混合溶液を得た。前記製造した溶液が盛られたガラスバイアルをゴムキャップを若干開いた状態で密閉されたチャンバーに入れて−40℃で1時間凍結させた。完全に溶液が凍結したことを確認し、−40℃に維持しながら密閉されたチャンバーの真空ポンプを作動させて真空減圧を始めた。真空度が300mTorrまで下がると、即時真空ポンプの作動を中止し、窒素を充填した後、ゴムキャップで密封した。密封状態を確認した後、真空が解除されるとガラスバイアルを密閉されたチャンバーで取り出した後、解凍しアルミニウムキャップでキャッピングした。前記得られた溶液の溶存酸素濃度は、約0.5ppmであった。
【0053】
[実施例7〜9]抗酸化剤添加および凍結脱気した液状製剤の製造
注射用数1500mlにペメトレキセド二ナトリウム2.5水和物48.3g(ペメトレキセドで含有量基準40g)を完全に溶かし、ここにマンニトール40gを入れて完全に溶解した。ここに表2でのように抗酸化剤を添加し、前記溶液に0.1NのHClまたは0.1〜1NのNaOHを加えてpHを7.3に合わせ、注射用数を加えて混合溶液の総重量を1,600gに調節した。前記得られた溶液の溶存酸素濃度は約7.0ppmであった。前記製造した混合溶液を滅菌フィルターを利用して濾過し、クリーンベンチで5mlバイアルに4mlずつ充填し、ゴムキャップで密封して、前記バイアルに充填された混合溶液を得た。前記製造した溶液が盛られたガラスバイアルをゴムキャップを若干開いた状態で密閉されたチャンバーに入れ、−40℃で1時間以上十分に凍結させた。完全に溶液が凍結したことを確認し、−40℃で維持しながら密閉されたチャンバーの真空ポンプを作動させて真空減圧を始めた。真空度が200mTorrまで下がると即時真空ポンプの作動を中止し、ゴムキャップで密封した。密封状態を確認した後、ガラスバイアルを密閉されたチャンバーで取り出した後、解凍しアルミニウムキャップでキャッピングした。前記得られた溶液の溶存酸素濃度は約0.5ppmであった。
【表2】
【0054】
[実施例10〜15]抗酸化剤濃度の影響およびスケールアップの影響をみるための凍結脱気した液状製剤の製造
注射用数7500mlにペメトレキセド二ナトリウム2.5水和物241.5g(ペメトレキセドで含有量基準200g)を完全に溶かし、ここにマンニトール200gを入れて完全に溶解した。ここに表3でのように抗酸化剤の濃度を異なるように添加し、前記溶液に0.1NのHClまたは0.1〜1NのNaOHを加えてpHを7.3に合わせ、注射用数を加えて混合溶液の総重量を8,000gに調節した。前記得られた溶液の溶存酸素濃度は約7.0ppmであった。前記製造した混合溶液を滅菌フィルターを利用して濾過し、クリーンベンチで50mlバイアルに40mlずつ充填し、ゴムキャップで密封して、前記バイアルに充填された混合溶液を得た。前記製造した溶液が盛られたガラスバイアルをゴムキャップを若干開いた状態で密閉されたチャンバーに入れ、−40℃で3時間以上十分に凍結させた。完全に溶液が凍結したことを確認し、−40℃に維持しながら密閉されたチャンバーの真空ポンプを作動させて真空減圧を始める。真空度が200mTorrまで下がると即時真空ポンプの作動を中止し、ゴムキャップで密封した。密封状態を確認した後、ガラスバイアルを密閉されたチャンバーで取り出した後、解凍しアルミニウムキャップでキャッピングした。前記得られた溶液の溶存酸素濃度は約0.5ppmであった。
【表3】
【0055】
[比較例1]凍結および脱気していない液状製剤の製造
前記実施例1と同様な方法でバイアルに充填された混合溶液を得た。前記バイアルをアルミニウムキャップでキャッピングした。前記得られた溶液の溶存酸素濃度は、約7.0ppmであった。
【0056】
[比較例2]凍結および脱気せずに窒素充填した液状製剤の製造
前記実施例1と同様な方法でバイアルに充填された混合溶液を得た。前記バイアルに窒素を充填した後、ゴムキャップで密封し、アルミニウムキャップでキャッピングした。前記得られた溶液の溶存酸素濃度は、約7.0ppmであった。
【0057】
[比較例3〜5]抗酸化剤を添加し、凍結および脱気していない液状製剤の製造
前記実施例7〜9と同様な方法でバイアルに充填された混合溶液を得た。前記バイアルをゴムキャップで密封し、アルミニウムキャップでキャッピングした。前記得られた溶液の溶存酸素濃度は約7.0ppmであった。
【0058】
[実験例1]加速安定性の試験
前記実施例1〜6および7〜9と比較例1〜2および比較例3〜5で製造した組成物に対して加速条件(40℃/RH75%)で安定性評価を行った。安定性評価は、水溶液の性状およびpH、そして含有量および類縁物質の量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。
【0059】
A.含有量の液体クロマトグラフの条件
a.コラム:Zorbax SB−C8、4.6mm×150mm、3.5μm、またはこれと類似するコラム
b.検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:285nm)
c.注入量:20μl
d.流速:1.0mL/min
e.コラム温度:30℃
f.移動相:酢酸緩衝液:アセトニトリル=(89:11)(v/v%)
*酢酸緩衝液(30mM、pH5.3±0.1):精製水1L当り1.7mLの酢酸無水物を入れてよく混合した後、50%水酸化ナトリウムでpH5.3±0.1に調節した後、必要時に濾過
【0060】
B.類縁物質の液体クロマトグラフの条件
a.コラム:Zorbax SB−C8、4.6mm×150mm、3.5μm、またはこれと類似するコラム
b.検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:250nm)
c.注入量:20μl
d.流速:1.0mL/min
e.コラム温度:25℃
f.自動注入器温度:2〜8℃
g.移動相:勾配溶出
【表4】
移動相A:ギ酸緩衝液:アセトニトリル=95:5(v/v)
移動相B:ギ酸緩衝液:アセトニトリル=70:30(v/v)
ギ酸緩衝液:アンモニウムギ酸2.9gを2Lの精製水に溶かした後、ギ酸を利用してpH3.5±0.1に調整する。
【0061】
前記のようにすべての実施例と比較例の加速安定性試験(40℃/RH75%)を12週間行った結果を表5および6に提示した。安定性試験の評価基準は、pHは6.6〜7.8、含有量は95〜105%、総類縁物質は1.5%以下、個々の類縁物質は0.2%以下である。
【表5】
【0062】
測定結果、実施例3〜6は、ほとんど類似する結果を示し、真空度は、500mTorr以下ではほとんど脱気が類似に進行されたこととみられた。脱気工程を行わない比較例の場合、窒素充填の有無に関係なしに安定性が顕著に落ちることをみることができた。これによって、脱気を通じて溶存酸素を除去する工程は、ペメトレキセドの安定性を顕著に改善させる工程であることを示す。
【表6】
【0063】
測定結果、実施例7〜9は、含有量の変化や類縁物質の生成においてほとんど類似な結果を示し、基準以下の良い安定性を示した。性状まで考慮すれば実施例7と実施例9が優れた安定性を示すことが分かった。しかし、真空脱気をせずに抗酸化剤だけを用いた比較例3〜5をみると、使用されたすべての抗酸化剤の場合、真空脱気をせずに抗酸化剤だけを単独で用いる場合、安定性が顕著に落ちることをみることができた。これは真空脱気をして溶存酸素を除去する工程は、抗酸化剤を使用しても必ず必要な工程であることを示す。
【0064】
[実験例2]苛酷安定性の試験
実施例5および7〜9と比較例1および3〜5の組成物に対して苛酷安定性試験(60℃/RH80%)を4週間行った結果を表7に提示した。
【表7】
【0065】
測定結果、実施例5は、苛酷安定性1ヶ月結果にも性状は若干変わったが、含有量の変化はほとんどなく、総類縁物質(基準:1.5%以下)や個々の類縁物質(基準:0.2%以下)も基準以下に維持されていた。しかし、脱気をしていない比較例1の場合、1週間ぶりに基準から含有量、類縁物質のすべてが逸脱し、性状も濃い褐色に変わったことをみることができるため、相当な酸化反応が進行することが分かった。
【0066】
抗酸化剤を使用し、真空脱気工程を実施した実施例7と9は、含有量や類縁物質の変化は真空脱気だけを実施した実施例5のようによい安定性を示すが、色の変化の面では明確な効果を示した。実施例8の場合である硫化ナトリウムは、他の抗酸化剤に比べると変色に対する効果は少ないことが示された。しかし、比較例3〜5でみられるように、真空脱気をせずに抗酸化剤だけを用いた場合、比較例1と同様に、色の変化だけでなく、含有量や類縁物質の変化も大きく現れて薬物の安定化に効果を奏さないことと示された。前記の試験結果から推察すると、脱気工程を通じて安定性を画期的に改善した前記水溶液剤型は抗酸化剤と併用することによって色の変化までも遮断した、室温保管が可能な最も安定した水溶液剤型といえる。
【0067】
[実験例3]抗酸化剤濃度による影響およびスケールアップ影響に対する苛酷安定性の試験
実施例5および実施例7と実施例10〜15の組成物に対して苛酷安定性試験(60℃/RH80%)を4週間行った結果を表8に提示した。
【表8】
【0068】
測定結果、抗酸化剤なしに100mg/ml剤型で製造して凍結脱気を進行した実施例5と1000mg/ml剤型で製造して凍結脱気した実施例10の苛酷安定性結果を比較してみると、性状はほとんど類似に変わり、含有量の変化も殆どなく、総類縁物質(基準:1.5%以下)や個々の類縁物質(基準:0.2%以下)も基準以下に維持されていた。抗酸化剤(モノチオグリセロール2.4mg/ml)を使用して100mg/ml剤型で製造した実施例7と同一の濃度の抗酸化剤を使用して1000mg/ml剤型で製造して凍結脱気した実施例11を比較しても、ほとんど類似な苛酷安定性結果が示され、本研究で進行した凍結真空脱気工程は少量生産および大量生産にすべて同一の機能を示す工程といえる。
【0069】
抗酸化剤の濃度を異にして安定性を確認してみた結果、含有量および類縁物質を基準にみた時、モノチオグリセロールの濃度に関係なしに十分に基準内に入る安定性をみせている。しかし、色の変化をみると、実施例15のモノチオグリセロールの濃度が0.1mg/mlである場合、淡い微黄色に変色が起こることを確認することができた。これからみると、モノチオグリセロールを抗酸化剤として用いた場合、0.24mg/ml以上の濃度では色および含有量類縁物質の面で差がない優れた安定性を示すことが分かる。
【0070】
前記試験結果から推察すると、凍結真空脱気工程を通じて安定性を確保した前記水溶液剤型は、少量の抗酸化剤と併用することによって、色の変化までも遮断した、室温保管が可能な最も安定した水溶液剤型であることが確認され、このような凍結真空脱気工程は実験室だけでなく、工場でもそのまま適用可能であるため、スケールアップが可能な工程といえる。
【0071】
[実験例4]抗酸化剤種類による苛酷安定性の試験
表2の組成のとおり製造して実施例7〜9の組成物に対して苛酷安定性試験(60℃/RH80%)を3ヶ月間行った結果を表9に提示した。
【表9】
【0072】
測定結果、3種類の抗酸化剤の場合、類縁物質や含有量の面ではすべて基準を満たした。しかし、色の面では実施例8の硫化ナトリウムの場合、時間の経過により黄色に変わり、実施例9のアセチルシステインの場合も淡いが、苛酷2ヶ月からは若干の変色をみることができた。類縁物質の面でもすべて基準値を満たしてはいるが、総類縁物質からみると、モノチオグリセロールを用いた組成が少しより優れた安定性を示すことをみることができる。
【0073】
前記の実験結果からみると、抗酸化剤のうち、モノチオグリセロールが類縁物質の面や、色の変化の面で最も適した抗酸化剤であることが分かった。
【0074】
以上で本発明の特定部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者に、このような具体的記述は単に好ましい実施例に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されるのでない点は明白であろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項とそれらの等価物により定義されるといえる。