特許第6873926号(P6873926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アーベーベー・シュバイツ・アーゲーの特許一覧

特許6873926炭化ケイ素パワー半導体デバイスのエッジ終端部を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873926
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】炭化ケイ素パワー半導体デバイスのエッジ終端部を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20210510BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20210510BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20210510BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20210510BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20210510BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H01L29/86 301E
   H01L29/91 K
   H01L29/91 J
   H01L29/06 301F
   H01L29/06 301D
   H01L29/06 301G
   H01L29/06 301V
   H01L29/86 301D
   H01L29/86 301P
   H01L29/48 D
   H01L29/91 F
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-563958(P2017-563958)
(86)(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公表番号】特表2018-521503(P2018-521503A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】EP2016062876
(87)【国際公開番号】WO2016198388
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年3月26日
(31)【優先権主張番号】15171208.0
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボベキー,ヤン
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−511103(JP,A)
【文献】 特開2009−260057(JP,A)
【文献】 PAVEL HAZDRA,RADIATION DEFECTS PRODUCED IN 4H-SIC EPILAYERS BY PROTON AND ALPHA-PARTICLE IRRADIATION,MATERIALS SCIENCE FORUM,2013年,VOL:740-742,PAGE(S):661 - 664,URL,http://dx.doi.org/10.4028/www.scientific.net/MSF.740-742.661
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 21/329
H01L 29/06
H01L 29/47
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素パワー半導体デバイスのエッジ終端構造を製造する方法であって、前記炭化ケイ素パワー半導体デバイスは、第1の主要側(14)と前記第1の主要側(14)とは反対側の第2の主要側(16)との間に中央領域(10)とエッジ領域(12)とを有し、前記方法は、製造ステップを実行し、前記製造ステップは、
a)前記第2の主要側(16)を一方の主要側として有するnドープ炭化ケイ素基板(1)を設け、
b)前記基板(1)よりも低いドーピング濃度を有する炭化ケイ素nドープドリフト層(2)を前記第2の主要側(16)とは反対側にエピタキシャル成長させ、前記炭化ケイ素基板(1)が配置される側とは反対側の前記ドリフト層(2)の側は、前記第1の主要側(14)を形成し、
c)最大終端層深さ(32)まで第2のイオンを注入し、前記第1の主要側(14)でアニーリングを行うことによって、少なくとも1つのpドープ終端層(3)を作製し、
d)前記第1の主要側(14)の下方のドーピング低減層(4)のドーピング濃度最小部(40)の深さから最大ドーピング低減層深さ(42)までのドーピング低減層深さ範囲(44)を有する(n−−)ドープドーピング低減層(46)を形成し、前記ドーピング低減層(4)のドーピング濃度最小部(40)の深さは、前記最大終端層深さ(32)よりも深く、前記ドーピング低減層(4)は、少なくとも1つのドーピング低減領域(46)を含み、各ドーピング低減領域(46)の作製のために、
少なくとも前記エッジ領域(12)における前記第1の主要側(14)に第1のイオンとして水素またはヘリウムをある注入エネルギで注入し、前記第1のイオンは、前記第1の主要側(14)の下方の前記ドーピング低減領域のドーピング濃度最小部(460)の深さから最大ドーピング低減領域深さ(462)までのドーピング低減領域深さ範囲(464)に注入され、
前記第1のイオンおよび前記少なくとも1つの注入エネルギは、前記ドーピング低減層深さ範囲(44)が10μm未満であるように選択され、
e)前記ドーピング低減層(4)をアニーリングし、
ステップd)は、前記ドリフト層(2)の前記ドーピング濃度が前記ドーピング低減層(4)において低下するように実行され、
ステップd)において、前記第1のイオンは、少なくとも2つの異なる注入エネルギで注入される、方法。
【請求項2】
ステップd)において、前記第1のイオンは、3つ〜10の異なる注入エネルギで注入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd)において、異なる注入エネルギで複数のドーピング低減領域(46)が形成され、前記複数のドーピング低減領域(46)は、連続的なドーピング低減層(4)を形成するように互いに重なり合っていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)において、前記少なくとも1つの注入エネルギは、前記少なくとも1つのドーピング低減領域深さ範囲(464)が1μm未満であるように選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップd)において、前記少なくとも1つの注入エネルギは、前記少なくとも1つのドーピング低減領域深さ範囲(464)が0.6μm未満であるように選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ドーピング低減層(4)における前記ドーピング濃度は、前記ドリフト層(2)の前記ドーピング濃度の25〜75%であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドーピング低減層(4)における前記ドーピング濃度は、前記ドリフト層(2)の前記ドーピング濃度の40〜75%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップd)において、前記第1のイオンが前記エッジ領域(12)にのみ適用されるように前記第1の主要側(14)の前記中央領域(10)上にマスク(5)またはマスク(5)としての金属電極(50)が適用されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のイオンは水素であり、100〜1000keVの少なくとも1つの注入エネルギ、および、5*10cm−2〜1*1014cm−2の注入ドーズ量で前記第1のイオンが注入されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のイオンは水素であり、300〜800keVの少なくとも1つの注入エネルギ、および、1*1010cm−2〜1*1013cm−2の注入ドーズ量で前記第1のイオンが注入されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のイオンはヘリウムであり、500〜2500keVの少なくとも1つの注入エネルギ、および、3*10cm−2〜1*1013cm−2の注入ドーズ量で前記第1のイオンが注入されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のイオンはヘリウムであり、300〜1500keVの少なくとも1つの注入エネルギ、および、5*10cm−2〜1*1012cm−2の注入ドーズ量で前記第1のイオンが注入されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記エッジ領域(12)における前記第1の主要側(14)に、前記少なくとも1つの終端層(3)が作製され、前記少なくとも1つの終端層(3)は、
接合終端拡張部(36)と少なくとも1つのガードリングとを含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
エッジ終端構造を有するパワー半導体デバイスを製造する方法であって、前記エッジ終端構造は、請求項1〜13のいずれか1項に従って製造される、方法。
【請求項15】
第1の主要側(14)と前記第1の主要側(14)とは反対側の第2の主要側(16)との間に中央領域(10)とエッジ領域(12)とを有する炭化ケイ素パワー半導体デバイスであって、
前記第2の主要側(16)には、nドープ炭化ケイ素基板層(1)が配置され、
前記第1の主要側(14)には、前記炭化ケイ素基板層(1)よりも低くドープされたn−ドープ炭化ケイ素ドリフト層(2)が配置され、前記第1の主要側(14)の前記エッジ領域(12)には、少なくとも1つのpドープ終端層(3)と前記ドリフト層(2)よりも低いドーピング濃度を有する(n−−)ドープドーピング低減層(4)とが配置され、前記ドーピング低減層(4)は、前記第1の主要側(14)の下方の前記ドーピング低減層(4)のドーピング濃度最小部(40)の深さから最大ドーピング低減層深さ(42)までのドーピング低減層深さ範囲(44)に配置され、前記ドーピング低減層(4)の前記ドーピング濃度最小部(40)の前記深さは、最大終端層深さ(32)よりも深く、前記ドーピング低減層深さ範囲(44)は、10μm未満であり、前記ドーピング低層(4)は、複数のドーピング低減領域(46)を備え、前記複数のドーピング低減領域(46)の各々は、前記ドーピング低減領域のドーピング濃度最小部(460)の深さ、最大ドーピング低減領域深さ(462)およびドーピング低減領域深さ範囲(464)を有し、前記ドーピング低減領域深さ範囲(464)は、前記最大ドーピング低減領域深さ(462)と前記ドーピング濃度最小部(460)の前記深さとの間の差であり、各ドーピング低減領域深さ範囲(464)は、1μm未満である、パワー半導体デバイス。
【請求項16】
各ドーピング低減領域深さ範囲(464)は、0.6μm未満であることを特徴とする、請求項15に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項17】
前記ドーピング低減領域(46)は、互いに重なり合っているか、または互いに接触していることを特徴とする、請求項15または16に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つの終端層(3)は、
接合終端拡張部(36)と少なくとも1つのガードリングとを含むことを特徴とする、請求項1517のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、パワーエレクトロニクスの分野に関し、より特定的には、炭化ケイ素パワー半導体デバイスのエッジ終端構造を製造する方法、このようなエッジ終端構造を有する炭化ケイ素パワー半導体デバイスを製造する方法、および炭化ケイ素パワー半導体デバイスそれ自体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炭化ケイ素(SiC)ショットキーダイオードはn型SiC基板を備え、当該n型SiC基板の上にn−ドープドリフト層をエピタキシャル成長させる。このドリフト層は、ショットキー接触部と接触している。ショットキー接触部のエッジの電界ピークを低下させてダイオードのエッジに向かって電界を円滑に低下させるために、ショットキー接触部を取り囲むようにpドープ接合終端拡張(junction termination extension:JTE)層が配置されてもよい。終端領域におけるショットキーダイオードの表面上の高電界ピークを回避するために、JTE層に加えて、JTE層の周囲に同心円状のフローティングpドープガードリングがあってもよい。
【0003】
WO2009/108268 A1には、先行技術の炭化ケイ素ショットキーダイオードが記載されており、当該炭化ケイ素ショットキーダイオードは、pドープされた複数の間隔をあけて配置された同心円状のフローティングガードリングを有するエッジ終端構造を有する。ガードリングの各々は、高ドープ部分と低ドープ部分とを備える。このようなダイオードは、高ドープ部分および低ドープ部分を形成するために多重イオン注入を必要とする。さまざまなマスクを適用する必要があり、一般に、さまざまなドーピング濃度および好ましくはさまざまな拡散深さも生じさせるためにさまざまなイオンが使用される。これにより製造が高価になる。同時に、それにより、位置合わせ精度およびリソグラフィ処理ステップの再現性に対する要求が増大し、および/または、生産収率が減少する。生産時の高ドープp−領域および低ドープp−領域の位置合わせ不良により、阻止電圧の増加がデバイスシミュレーションによって予測されるほどには高くならない可能性がある。
【0004】
「α粒子照射によって4H−SiCエピ層において生成される放射線欠陥(Radiation Defects Produced in 4H-SiC Epilayers by Alpha-Particle Irradiation)」(Materials Science Forum、740〜742巻、2013、661〜664)は、550keVプロトンを用いた単回照射によって作製されるダイオードのn−ドープ4H−SiCエピ層において低ドープ層を作製する先行技術の方法に関する。
【0005】
US2014/374774 A1には、(n−)ドープドリフト層と(n+)ドープ層との間に(n−−)低ドープ層を作製する方法が記載されている。全ての層は、エピタキシャル成長によって作製される。ドーピング低減層は、pガードリングの形態のpドープ終端層と重なり合っており、すなわち、ドーピング低減層は、ガードリングよりも浅くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/108268号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/374774号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の開示
本発明の目的は、製造が容易であり、終端領域におけるいかなる電界ピークも効率的に防止し、または少なくとも低下させ、それによってデバイスの絶縁破壊特性を向上させる、炭化ケイ素パワー半導体デバイスのエッジ終端部を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に係る炭化ケイ素パワー半導体デバイスのエッジ終端部を製造する方法、請求項11に係るこのようなエッジ終端構造を備える炭化ケイ素パワー半導体デバイスを製造する方法、および請求項12に係るこのようなエッジ終端構造を備える炭化ケイ素パワー半導体デバイスによって達成される。
【0009】
(n−−)ドーピング低減層におけるドリフト層のドーピング濃度の低下により、電界ピークはエッジ領域において低下し得て、そのため、デバイスのエッジの方への電界分布も平滑化され得る。ドーピング低減層におけるドーピング濃度が低いことにより、高電界が終端(エッジ)領域におけるデバイスの表面にまで延在することはない。このようなドーピング低減層によって、デバイスの絶縁破壊電圧を増加させることができ、接合終端部における衝突電離によって生じる逆電流を低下させる。さらに、リーク電流が弱くなることにより、阻止安定性が向上した状態でデバイスを動作させることが可能になる。ドーピング低減層は、pドープガードリング、接合終端拡張部またはフローティング金属リング(フィールドプレートとも呼ばれる)などであるが他の公知の手段を除外するものではないエッジ領域において電界を低下させるための公知の終端手段と組み合わせて実現することができる。
【0010】
導入された放射点の欠陥によるドリフト層の元の濃度を補償するために軽イオン(ヘリウムまたは水素(プロトン))を注入することによってドーピング低減層を作製することは、エッジ領域に限定され得る。これにより、終端領域がアクティブバルク領域よりも高い絶縁破壊電圧を有するデバイスがもたらされ、そのため、当該デバイスの阻止安定性を本発明のデバイスにおいて向上させることができる。絶縁破壊電圧を超えてデバイスをバイアスする場合には、バルクにおける低い絶縁破壊電圧がエッジ終端の保護のように機能し、接合終端表面パッシベーション(信頼性の観点からデバイスの最も傷つきやすい部分)の摩耗を防止し、信頼性を向上させる。
【0011】
リフト層の元のドーピング濃度を補償するために第1のイオンとしてヘリウムまたは水素(プロトン)が適用される。このような軽イオンは、同一の注入エネルギで重イオンよりもより深くに導入することができる。どちらのイオンも、1μm未満の小さな深さ範囲内で炭化ケイ素内に停止させられて、(深さ方向に)局所的に限定された層を作製することができるという利点を有する。それによって、特に最も高い電界の箇所を保護することができる。
【0012】
さらに、ヘリウムおよび水素などの軽イオンのイオン注入装置および低ドーズ量は、市販の加速器で利用でき、イオンを所望の深さに注入するために低注入エネルギが選択されてもよい。
【0013】
用途によっては、さまざまなエネルギを有する単一のまたは複数のイオンピークが、リーク電流を増加させることなく絶縁破壊電圧をさらに増大させることができる。
【0014】
本発明の主題のさらなる好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
添付の図面を参照して、以下の本文において本発明の主題をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1比較例に係る(したがって、クレームされている発明の一部を構成しない)パワー半導体デバイスにおいて、ドーピング低減層はエッジ領域に限定され、すなわちこのような層は中央(アクティブ)領域には配置されておらず、エッジ領域におけるフローティング金属リングを示す。
図2】本発明のSiC接合障壁ショットキーダイオードまたはマージドPiNショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層はエッジ領域に限定され、すなわちこのような層は中央(アクティブ)領域には配置されておらず、エッジ領域におけるpドープガードリングを有する本発明のデバイスを示す。
図3】本発明のSiC接合障壁ショットキーダイオードまたはマージドPiNショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層はエッジ領域に限定され、すなわちこのような層は中央(アクティブ)領域には配置されておらず、pドープ終端層として接合終端拡張部を有する本発明のデバイスを示す。
図4】本発明のSiC接合障壁ショットキーダイオードまたはマージドPiNショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層はエッジ領域に限定され、すなわちこのような層は中央(アクティブ)領域には配置されておらず、接合終端拡張部に埋設されたpドープガードリングの組み合わせを示す。
図5】本発明のSiC接合障壁ショットキーダイオードまたはマージドPiNショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層は、アクティブ領域およびエッジ領域全体にわたって延在する連続的な層であり、エッジ領域におけるフローティング金属リングを示す。
図6】本発明のSiC接合障壁ショットキーダイオードまたはマージドPiNショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層は、アクティブ領域およびエッジ領域全体にわたって延在する連続的な層であり、エッジ領域におけるpドープガードリングを有する本発明のデバイスを示す。
図7】本発明のSiC接合障壁ショットキーダイオードまたはマージドPiNショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層は、アクティブ領域およびエッジ領域全体にわたって延在する連続的な層であり、pドープ終端層として接合終端拡張部を有する本発明のデバイスを示す。
図8】本発明のSiC接合障壁ショットキーダイオードまたはマージドPiNショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層は、アクティブ領域およびエッジ領域全体にわたって延在する連続的な層であり、接合終端拡張部に埋設されたpドープガードリングの組み合わせを示す。
図9】本発明のSiCショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層はエッジ領域に限定され、すなわちこのような層は中央(アクティブ)領域には配置されておらず、エッジ領域におけるフローティング金属リングを示す。
図10】本発明のSiCショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層はエッジ領域に限定され、すなわちこのような層は中央(アクティブ)領域には配置されておらず、エッジ領域におけるpドープガードリングを有する本発明のデバイスを示す。
図11】本発明のSiCショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層はエッジ領域に限定され、すなわちこのような層は中央(アクティブ)領域には配置されておらず、pドープ終端層として接合終端拡張部を有する本発明のデバイスを示す。
図12】本発明のSiCショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層は、アクティブ領域およびエッジ領域全体にわたって延在する連続的な層であり、エッジ領域におけるフローティング金属リングを示す。
図13】本発明のSiCショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層は、アクティブ領域およびエッジ領域全体にわたって延在する連続的な層であり、エッジ領域におけるpドープガードリングを有する本発明のデバイスを示す。
図14】本発明のSiCショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層は、アクティブ領域およびエッジ領域全体にわたって延在する連続的な層であり、pドープ終端層として接合終端拡張部を有する本発明のデバイスを示す。
図15】本発明のSiCショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層は、アクティブ領域およびエッジ領域全体にわたって延在する連続的な層であり、接合終端拡張部に埋設されたpドープガードリングの組み合わせを示す。
図16】本発明のSiC接合障壁ショットキーダイオードまたはマージドPiNショットキーダイオードの断面図であって、ドーピング低減層はエッジ領域に限定され、すなわちこのような層は中央(アクティブ)領域には配置されておらず、エッジ領域におけるフローティング金属リングを示す。
図17】本発明の炭化ケイ素パワー半導体デバイスを製造する方法のステップを示す。
図18】本発明の炭化ケイ素パワー半導体デバイスを製造する方法のステップを示す。
図19】本発明の炭化ケイ素パワー半導体デバイスを製造する方法のステップを示す。
図20】本発明の炭化ケイ素パワー半導体デバイスを製造する方法のステップを示す。
図21】3つの異なる注入エネルギで作られたシャロードーピング低減層を有する本発明のショットキーダイオードを示す。
図22】5つの異なる注入エネルギで作られたシャロードーピング低減層を有する本発明のショットキーダイオードを示す。
図23】3つの異なる注入エネルギで作られたディープドーピング低減層を有する本発明のJBSダイオードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面で使用されている参照符号およびそれらの意味は、参照符号の一覧に要約されている。一般に、同様のまたは同様に機能する部分には同一の参照符号が付与されている。記載されている実施形態は、一例として示されており、本発明を限定するものではない。
【0017】
図1図8および図16は、接合障壁ショットキー(Junction Barrier Schottky:JBS)ダイオードまたはマージドPiNショットキー(merged PiN Schottky:MPS)ダイオードの形態の本発明の炭化ケイ素パワー半導体デバイスを示し、当該炭化ケイ素パワー半導体デバイスは、第1の主要側14と第1の主要側14とは反対側の第2の主要側16との間に、中央領域10とエッジ領域12(終端領域)とを有する。第2の主要側16には、nドープ炭化ケイ素基板層1が配置されている。第1の主要側14には、nドープSiC基板1よりも低くドープされたn−ドープ炭化ケイ素ドリフト層2が配置されている。
【0018】
エッジ領域10には、ドリフト層2よりも低いドーピング濃度を有する(n−−)ドープドーピング低減層4が配置されており、ドーピング低減層4は、第1の主要側14の下方のドーピング濃度最小部40から最大ドーピング低減層深さ42までの層深さ範囲44に配置されている。この最大深さ42は、パワー半導体デバイスの厚みよりも小さい。ドーピング低減層4のドーピング濃度最小部40は、パワー半導体デバイスの表面(第1の主要側14)の下方に位置している。ドーピング低減層深さ範囲44は、10μm未満または5μm未満である。ドーピング低減領域深さ範囲44は、ドーピング濃度最小部40の深さと最大ドーピング低減層深さ42との間の差である。
【0019】
JBSダイオード(図1図8および図16)は、中央領域10における第1の主要側14に、pドープアノード層7(または、複数のこのようなアノード層7)を備える。中央領域10において、アノード層7は、金属電極50と接触しており、金属電極50は、JBSダイオードのアノード電極である。カソード側(第2の主要側16)では、nドープ基板1が、中央領域10において金属電極52と接触するカソード層として機能し、金属電極52は、JBSダイオードのカソード電極である。金属電極52は、炭化ケイ素層、すなわちnドープカソード層(基板1)とオーミック接触を形成する。pドープアノード層が複数のpアノード層によって形成される場合、金属電極50は、炭化ケイ素pドープアノード層7とオーミック接触を形成し、炭化ケイ素層2とショットキー接触を形成する。
【0020】
図1図4図9図11および図16では、ドーピング低減層4は、第1の主要側14に平行な平面全体にわたって延在する、エッジ領域12における連続的な層であるが、これらの実施形態では、ドーピング低減層は中央領域10には配置されていない。
【0021】
図1図5図9図12および図16では、エッジ領域12はフローティング金属リング6によって被覆されており、フローティング金属リング6は、互いを取り囲みかつ中央領域10を取り囲む閉リングである。これらのフローティング金属リング6は、浮かんでおり(電気的に接触しておらず)、そのためデバイスのエッジに向かって電界を減少させる。
【0022】
図2図3図6図7図8図10図11図13図15は、第1の主要側14のエッジ領域10に少なくとも1つのpドープ終端層3が配置されている本発明のデバイスを示す。
【0023】
図2図6図10および図13では、少なくとも1つの終端層3は、少なくとも1つのフローティング(電気的に接触していない)層として形成されており、当該フローティング層はガードリング38と呼ぶこともできる。各ガードリング38は、中央領域10を取り囲む、それ自体閉じた層(リング)である。このようなガードリング38のうちの1つ以上(たとえば、少なくとも2つまたは少なくとも5つまたは少なくとも10のガードリング38)は、中央領域10の周囲に配置されてもよく、ガードリング38は、互いを取り囲んでおり、ドリフト層2によって間隔をあけて配置されている。例示的に、少なくとも2つまたは少なくとも5つまたは少なくとも10のpドープ終端層3は、ガードリング38として形成されてもよい。デバイスの電圧階級によっては、20以上のこのようなガードリング38がエッジ領域12に配置されてもよい。ガードリング38は、パッシベーション39(例示的には半絶縁性)によって被覆されてもよい。
【0024】
図3図7図11および図14には、少なくとも1つのpドープ終端層3が接合終端拡張部(JTE)36として設計され、pドープ終端層3は、p型アノード層7を有する本発明のデバイスについて、中央領域10(電気的にアクティブな領域)におけるこのようなアノード層7よりも低くドープされたpドープ層である本発明のデバイスが示されている。「低くドープされた」は、比較したときに層の最大ドーピング濃度よりも低い最大ドーピング濃度を指す。JTE層36および中央領域10におけるpドープアノード層7は、互いに接続されてもよい。JTE36は、互いに接続されてもよい複数の低p−ドープ層を備え得る(図3には、2つのこのような層が示されており、外側の層は、中央領域10の方に向けられた層よりも深さが浅く、例示的にはドーピング濃度も低い)。これらの層は、中央領域10の方向において、このようなJTEが中央領域10からより遠く離れて配置される場合よりもJTE層36が高くドープされるようにドープされ得る。したがって、JTE36のドーピング濃度(すなわち、深さ方向における最大ドーピング濃度)は、デバイスのエッジに向かって減少する。また、このようなJTE36の深さも、デバイスのエッジに向かって連続的に減少し得る。
【0025】
図4図8および図15は、少なくとも1つのpドープガードリング38およびp−ドープ、すなわち低ドープJTE36がともにデバイス内に配置されている本発明のデバイスの別の実施形態を示す。JTE36およびガードリング38は、重なり合っていてもよく、たとえば、ガードリング38は、ガードリング38がJTE36によってドリフト層2から分離されるようにJTE36に埋設されていてもよい。したがって、ガードリング38は、少なくとも1つのJTE36よりも浅い最大深さを有する。これらの図では、1つのJTE36がエッジ領域12に配置されているが、図3図7図11および図14のように複数のこのようなJTE36がガードリング38と重なり合っていることも可能である。
【0026】
図1図4図9図11および図16では、ドーピング低減層4は、エッジ領域12における領域に限定される。代替的に、第1の主要側14に平行な平面全体にわたって延在するドーピング低減層4を中央領域10およびエッジ領域12に有することも可能である。これらのデバイスでは、エッジ領域12においても中央領域10においても絶縁破壊電圧が増大する。
【0027】
エッジ領域では、デバイスのエッジに向かって電界を減少させるための専門家に周知のいずれかの手段または手段の組み合わせを使用することができる。
【0028】
例示的に、ドリフト層2は、常に低いドーピング濃度を有している。ここでは、ドリフト層2の実質的に一定のドーピング濃度は、ドーピング濃度がドリフト層2全体にわたって実質的に均一であることを意味するが、たとえばエピタキシャル成長プロセスの変動または意図的に局所的に修正されたドーピング濃度により、1倍〜5倍ほどのドリフト層内のドーピング濃度の変動が存在し得る可能性があることを除外するものではなく、典型的な例は、スイッチング挙動を向上させるための高ドープn基板層1と低ドープnエピタキシャル(ドリフト)層2との間の薄いバッファ層である。
【0029】
ドーピング低減層4は、ドリフト層2のドーピング濃度よりも低いドーピング濃度を有している。ドーピング低減層4におけるドーピング濃度は、ドリフト層2のドーピング濃度の25〜75%であってもよく、または40〜75%であってもよい。
【0030】
ショットキーダイオードでは、ドーピング低減層4は、アノード面の少なくとも0.5μm下方に位置し、nドリフト層厚みの半分未満まで延在し得る。
【0031】
JBSおよびMPSダイオードでは、ドーピング低減層4は、アノードp層7およびnドリフト層2によって形成されるp−n接合部の下方に位置している。SiCが注入されたpアノード層7では、それは、例示的な距離がアノード面の1μm以上下方であることを意味する。ドーピング低減層4の例示的な配置は、逆方向阻止で電界を最も効率的に低下させることによってもたらされ、デバイスシミュレーションによって求めることができ、(アノード面から測定して)nドリフト層2の厚みに対して相対的に浅くなければならないことを示す。これは、ショットキーダイオードおよびJBS(MPS)ダイオードの両方のダイオードならびにさまざまな電圧階級について、以下の表に要約されている。
【0032】
【表1】
【0033】
この表は、ショットキーダイオードおよびJBSダイオードの例示的な設計パラメータを示す。nドリフト層2と接合終端部におけるpアノード層7またはpガードリング38またはp型JTE層36との間のp−n接合部の深さは、1μm未満であると考えられる。このp−n接合部をより深く配置するためには、ドーピング低減層4のドーピング濃度最小部40をそれに応じて大きくしなければならない。
【0034】
水素またはヘリウム単回注入エネルギを使用してドーピングを低減させる場合、ドーピング低減層深さ範囲44が約0.5μm(2/3±1μmであり、これはドリフト層厚み±1μmの約1/3である)であることを考慮して、最適なイオン範囲は上記の表では最大ドーピング低減層深さ42の約2/3のところに現れる。水素またはヘリウム多重注入エネルギを使用する場合、この表から、距離40と42との間の範囲をより集中的に利用してドーピングを低減させ、それによって絶縁破壊電圧のさらなる向上を実現することができる。
【0035】
JBSおよびMPSダイオード、ならびに/または、p型ガードリング38もしくはJTE36を使用した接合終端部3では、ドーピング低減層4は、有利にアノード層7またはJTE36またはガードリング38の下方に配置される。ショットキーダイオードでも、ドーピング低減層は、有利にp型接合終端部3の下方に設置されるが(図10図11参照)、ショットキー接触部における点欠陥の高度の集中を回避するためにアノード面には設置されず、これは障壁高さの不均一性を高める可能性がある。
【0036】
接合終端部の全体積が絶縁体になるように複数のエネルギを使用して非常に高いドーズ量で元のSiC半導体材料を注入しなければならない先行技術のUS5,914,499とは対照的に、本発明におけるドーピングの低減は、周囲のnドリフト層のドーピング濃度の25〜75%の範囲内で選択される。その結果、注入コストが大幅に減少し、プロセス全体が経済的に適したものになる。
【0037】
層の深さは、第1の主要側14から測定されるものとする。ドーピング低減層4の最小深さ40は、ドーピング低減層4の最も浅いドーピング濃度最小部の深さであり、(層が複数のドーピング低減領域、すなわち重なり合う領域を備え、それら全てが局所ドーピング濃度最小部を有する場合)層の最も深いドーピング濃度最小部の深さである。層の最大深さ42は、当該層が存在する第1の主要側14からのこのような深さであり、すなわちドーピング濃度が再びドリフト層2の元のドーピング濃度に達する深さである。層深さ範囲は、最大深さとドーピング濃度最小部との差であり、すなわちそれは層の厚みである。したがって、ドーピング濃度層4は、ドリフト層2と同一の導電型(すなわち、n型)を有し、それはドリフト層2よりも低いドーピング濃度によって定義される。
【0038】
図16には、図1の詳細が示されている。ドーピング低減層4は、複数のドーピング低減領域46(図16では、5つのこのような領域46があり、破線によって示されている)を備え、その各々は、ドーピング低減領域のドーピング濃度最小部460の深さ、最大ドーピング低減領域深さ462およびドーピング低減領域深さ範囲464を有し、ドーピング低減領域深さ範囲464は、最大ドーピング低減領域深さ462とドーピング濃度最小部460の深さとの間の差である。各ドーピング低減領域深さ範囲464は、1μm未満または0.6μm未満または0.2〜0.5μmである。図16では、ドーピング低減領域46は、互いに重なり合っているか、または少なくとも互いに接触している。このような接触しているまたは重なり合っているドーピング低減領域46を有することによって、隣接したドーピング低減層4が作製され、当該ドーピング低減層4は、第1のイオンを適用するための印加エネルギにより実現可能な層よりも大きな厚みを有する。
【0039】
終端層3を備える本発明のデバイスでは、ドーピング低減層4は、最大終端層深さ32よりも深いドーピング低減層40の最小ドーピング濃度の深さを有し得て、そのため、ドーピング低減層4はドリフト層2に完全に埋設される(すなわち、ドリフト層2によって取り囲まれる)。本発明の一部ではない比較例では、ドーピング低減層4のドーピング濃度最小部40の深さは、pドープ終端層3の最大深さ32よりも浅くてもよく、すなわち、ドーピング低減層4および終端層は互いに接触していてもよい。ドーピング低減層4は、pドープ終端層3の深さよりも深い最大深さを有していてもよい。
【0040】
例示的な実施形態において、終端層3を備えるデバイスでは、ドーピング低減層4は、p−n接合部の下方に位置し(すなわち、ドーピング低減層4はドリフト層2に埋設される)、たとえば接合部の数μm下方、例示的には表1から1.7kVデバイスにおいて表面から4〜6μmのところに位置している。ドーピング低減層4は、元々は三角形の電界分布を平坦化し、この電界を、衝撃発生率が増加する臨界電界値未満に減少させ、これにより電界を低減させ、後に絶縁破壊電圧を増大させる。
【0041】
図17図20には、炭化ケイ素パワー半導体デバイスのエッジ終端部を製造する方法が示されている。当該デバイスは、第1の主要側14と第1の主要側14とは反対側の第2の主要側16との間に、中央領域10とエッジ領域12とを有している。
【0042】
図17に示される製造方法のステップa)において、互いに対向する2つの側を有するnドープ炭化ケイ素基板1が設けられ、一方の側は第2の主要側16である。
【0043】
ステップb)において、基板の第2の主要側16とは反対側に、n−ドープドリフト層2をエピタキシャル成長させる(図18)。ドリフト層2は、基板1よりも低いドーピング濃度を有している。基板1とは反対側のドリフト層2の側が第1の主要側14を形成する。例示的に、ドリフト層2は、一定の低いドーピング濃度を有している。任意に、基板1とn−ドープドリフト層2との間にnドープバッファ層が配置されてもよく、当該バッファ層は、例示的にはエピタキシャル成長される。バッファ層は、ドリフト層2よりも高く基板1よりも低いドーピング濃度を有している。
【0044】
第1の主要側14にpドープ層(すなわち、アノード層7または終端層3)を備えるデバイスでは、pアノード層7は、設計ニーズに従って、接合終端部3のためのp層とともに形成され得る。任意に、デバイス性能のためのさまざまなp型イオンおよび注入エネルギの利点を利用するために、pアノード層7は、接合終端層3のものとは別に形成されてもよい。形成は、注入および高温アニーリングステップ(たとえば、1600℃)の両方を意味する。ステップc)において、ドーピング低減層4の処理の前に、すなわちステップd)の前に、アノード側14におけるいずれかのp型層3,7が形成される。その理由は、例示的には320℃を超える温度でアニーリングされて約1200℃まで温度安定性である本発明のドーピング低減層4とは対照的に、p型層3,7が高温アニーリングを必要とするからである。
【0045】
pドープ層3,7の任意の作製後のステップd)において、第1の主要側14の下方のドーピング低減層4のドーピング濃度最小部40の深さ(すなわち、最も浅いドーピング濃度最小部)から最大ドーピング低減層深さ42までの層深さ範囲44を有するドーピング低減層4が第1の主要側14に形成される。ドーピング低減層4は、少なくとも1つのドーピング低減領域46を備え、各ドーピング低減領域46の作製のために、ある注入エネルギで、少なくともエッジ領域12における第1の主要側14に第1のイオンが注入される(破線によって示される複数の、すなわち5つのドーピング低減領域46を示す図16を参照)。図19は、第1の主要側14に平行な平面全体にわたってドーピング低減層4が形成されるような第1の主要側14全体に対する注入を示す(矢印によって示されている)。第1の主要側14の下方のドーピング濃度最小部460の深さから最大ドーピング低減領域深さ462までのドーピング低減領域深さ範囲464に第1のイオンが注入される。例示的に、全ての最小ドーピング低減領域深さ460のうちの最も浅い部分がドーピング低減層4の絶対ドーピング濃度最小部40に対応する一方、最も深い最大ドーピング低減領域深さ462が最大ドーピング低減層深さ42に対応する。
【0046】
第1のイオンおよび少なくとも1つの注入エネルギは、ドーピング低減層深さ範囲44が10μm未満であるように選択される。注入エネルギが1つである場合には、深さ範囲44は、選択されたエネルギによって0.5〜0.7μmである。エネルギが増加するにつれて、深さ範囲は大きくなるが、ドーピングの低減は減少する(エネルギが増加するにつれて欠陥ピークは広くなる)。図16に示されるように注入エネルギが5つである場合には、深さ範囲44は、選択されたエネルギによって2〜5μmの範囲内である。注入エネルギが6つ以上であるさまざまな注入スキームは、阻止機能およびn−ドリフト層厚みの必要な改善にしたがって最適化することができる。
【0047】
デバイスの設計によっては、ステップd)において中央領域に第1のイオンを注入することを回避するために第1の主要側14の中央領域をマスク5(図20)で被覆することが望ましいであろう。次いで、第1のイオンがエッジ領域12にのみ適用される。マスク5として、完成したデバイスにおいて主電極として機能し得る金属接触部/電極50が適用されてもよい。第1のイオンを注入する前に、中央領域10を被覆することにより第1のイオンが中央領域10に注入されることを防止するマスク5が、第1の主要側14に適用されてもよい。デバイスの主電極として機能する金属電極50もマスクとして使用されてもよい。
【0048】
フローティング金属リング6を備えるデバイスでは、フローティング金属リング6も第1のイオンの注入前に適用されてもよく、そのためフローティング金属リング6もマスクの役割を果たす。フローティング金属リングの厚みによっては、第1のイオンをフローティング金属リング6に完全に停止させておくことができず、そのためこれは注入エネルギの変化につながる可能性がある。したがって、第1のイオンは、フローティング金属リングで被覆されていない領域よりも浅い深さに注入される(図9)。それによって、ドーピング低減層パターンが作製され、当該ドーピング低減層パターンは、フローティング金属リング6によって被覆されていない領域の下方に、深いところに位置する部分を有し、フローティング金属リング6によって被覆されている領域の下方に、浅いところに位置する部分を有する。したがって、当該パターンは、フローティング金属リング6と同一の閉リング構造を有する。
【0049】
代替的に、マスクが適用されず、第1のイオンが第1の主要側14の表面全体に対して適用され、その結果、(第1の主要側14に平行な)デバイスの平面全体にわたって延在する連続的なドーピング低減層4がもたらされる。この場合、金属電極50は、後に第1の主要側14の中央領域10上に適用されてもよい。
【0050】
たとえば金属電極50とともに、いずれかの適切な製造ステップにおいて、別の金属電極52が第2の主要側16に適用されてもよいが、金属電極50,52を別々に作製することも可能である。
【0051】
例示的に、水素またはヘリウムまたは別の軽イオンが、第1のイオンとして少なくとも1つの注入エネルギで第1の主要側14に適用される。当該イオンは、ステップb)後の半完成パワー半導体デバイスの厚みよりも薄い最大深さ462まで注入される。「半完成デバイス」という用語は、製造ステップにおける未完成の半導体デバイスを指し、ステップb)後の基板1とドリフト層2との合計厚みを指す。
【0052】
イオン注入およびその後のアニーリングによって、Z1/Z2中心点が炭化ケイ素材料内に作製され、当該Z1/Z2中心点は、炭素空孔の二重アクセプタレベルである。次いで、ステップe)において、Z1/Z2中心点が熱的に安定化されるようにドーピング低減層4がアニーリングされる。アニーリングは、320℃または350℃を超える温度で行われてもよい。これらのステップd)およびe)によって、ドリフト層2のドーピング濃度は、ドーピング低減層4において低下する。注入ドーズ量およびそれによるZ1/Z2中心点の数によっては、ドリフト層2(すなわち、ドーピング低減層4)におけるドーピング濃度は、例示的にはドリフト層2のドーピング濃度の25〜75%または40〜75%である値に低下し得る。このようなZ1/Z2中心点は、いかなる種類の炭化ケイ素にも作製される炭素空孔である。例示的に、炭化ケイ素は、ポリタイプまたは多形タイプのような非晶質炭化ケイ素である。
【0053】
Z1/Z2中心点が1200℃以上でのアニーリングによって除去され得るので、金属電極50および/または52を作製するための金属化は、金属焼結温度が1200℃未満で行われる場合には、プロトンまたはヘリウム注入(すなわち、ステップd)後に行われてもよい。
【0054】
例示的な実施形態では、ステップd)において、異なる注入エネルギで第1のイオンを注入することによって、各々が異なる最小および最大低減領域深さ460,462を有する複数のドーピング低減領域46が形成され得る。例示的に、少なくとも2つまたは3つ〜10または3つ〜6つの異なる注入エネルギが適用されてもよい。異なる注入エネルギを適用することによって、第1のイオンは異なる深さに注入される。各ドーピング低減領域46は、1μm未満または0.6μm未満または0.2〜0.5μmであるドーピング低減領域深さ範囲、すなわち厚みを有し得る。連続的なドーピング低減層4を形成するように互いに重なり合っているまたは少なくとも互いに接触しているドーピング低減領域46が作製されてもよい。それによって、1つの注入エネルギで作製される層で実現可能な範囲よりも大きなドーピング低減層4深さ範囲を形成することができる。
【0055】
イオンが水素である場合には、pドープ層3,7を備えるデバイスでは、150〜1000keVまたは300〜800keVの注入エネルギでイオンが注入され得る。水素の注入ドーズ量は、例示的には、510cm−2から11014cm−2または11010cm−2から11013cm−2の間で選択されてもよい。2回以上の注入がなされる場合には、各注入は個々のドーズ量およびエネルギを有し得る。本発明の一部ではない比較例において、第1の主要側14にpドープ層3,7を持たないデバイスでは、例示的には100〜1000keVまたは150〜500keVのより低い注入エネルギおよび210cm−2〜11014cm−2または510cm−2〜11013cm−2の注入ドーズ量が適用されてもよい。
【0056】
図21および図22は、第1の主要側14にp層を持たないショットキーダイオードについての、3つおよび5つの異なる水素エネルギでの水素注入後のドーピングプロファイルを例示的に示す。図21では、3回の注入について、エネルギは100keVから190keVまで幅があり(図21)、図22では、5回の異なる注入について、エネルギは120から300keVまで幅がある。第1のケースでは、プロトンは1.7μmの最大深さ42に注入されるが、第2のケースでは、プロトンは約3.3μmの最大深さ42に注入される。図21では、ドーピング低減層のドーピング濃度最小部40の深さ、すなわち第1の局所ドーピング濃度最小部は、約0.8μmの深さに位置するが、図22では、ドーピング低減層のドーピング濃度最小部40の深さは、約1.0μmの深さに配置される。
【0057】
図23は、pドープ層(第1の主要側14のガードリング38またはJTE36またはpアノード層7であり、当該図は、より深いこのようなpドープ層3,7を概略的に示している)を有するデバイス、たとえばJBSダイオードについての、3回の注入からなるドーピング低減層4のドーピングプロファイルを例示的に示す。ドーピング低減層4は、4〜8μmの深さ範囲に配置される。図23では、ドーピング低減層40のドーピング濃度最小部の深さは、4.8μmである。
【0058】
イオンがヘリウムであり、デバイスがpドープ層3および/または7を備える場合には、500〜2500keVまたは300〜1500keVの注入エネルギが適用され得る。310cm−2〜11013cm−2または510cm−2〜11012cm−2の注入ドーズ量が例示的に適用されてもよい。本発明の一部ではない比較例において、第1の主要側14にpドープ層3,7を持たないデバイスでは、例示的に300〜2500keVまたは200〜1500keVのより低い注入エネルギが適用されてもよい。
【0059】
デバイスのエッジに向かって電界を減少させる/停止させるために、さまざまなエッジ終端部がエッジ領域12に適用されてもよい。例示的に、エッジ領域12において電界を減少させるために、フローティング金属リング6が第1の主要側14に適用されてもよい。このようなリングは、浮かんでおり、互いを取り囲む1つ以上のリングが適用されてもよい。フローティング金属リング6は、ステップd)の前に適用されてもよく、またはステップd)の後に適用されてもよい。前に適用される場合、図9に示されるパターンが作製されてもよい。
【0060】
pイオン(第2のイオン)の注入および最大終端層深さ32までの第1の主要側14のエッジ領域12でのアニーリングおよび終端層3のアニーリングによって、少なくとも1つのp終端層3が第1の主要側14に作製され得る。接合終端拡張部36および/またはガードリング38がエッジ領域12内の領域に限定されるように中央領域10を被覆するマスクが適用され得る。JTE領域36およびガードリング38は、デバイスの表面まで延在している。
【0061】
pドープ終端層3(JTE領域36および/またはガードリング38)の作製と同時に、またはそれに続けて、少なくとも1つのpドープアノード層7が中央領域10に形成され得る。1つのアノード層7が形成されてもよく、または複数のアノード層7が形成されてもよく、そのため複数のデバイスセルが形成される。アノード層7は、終端層3と同一の最大深さおよびドーピング濃度を有し得るが、アノード層7および終端層3は異なるドーピング濃度/深さを有することも可能である。例示的に、ドーピング低減層4は、最も深いところに位置するpドープ層3および7の下方に作製される。
【0062】
JTE領域36が異なる深さの領域を備えることができるように、異なるマスクが適用されてもよく、さまざまな注入エネルギおよび/または注入ドーズ量で第2のイオンが適用されてもよい。例示的に、中央領域10に最も近いJTE領域は、最も高い注入エネルギおよび/または最も高い注入ドーズ量で作製され、適用されるエネルギおよび/またはドーズ量は、デバイスのエッジに向かって連続的に低くなり、そのため、JTE領域は、中央領域10に近付くにつれて深さ/ドーピング濃度が大きくなり、デバイスのエッジに向かって減少する。少なくとも1つのアノード層7も備えるデバイスでは、JTE領域36は、アノード層7に接続されてもよく、またはドリフト層2によってアノード層7から分離されてもよい。
【0063】
少なくとも1つのpドープガードリング38を終端層3として作製するために別のマスクも適用されてもよい。当該マスクは、ガードリング38としてそれ自体閉じたpドープ領域を作製できるようにリング状の開口をエッジ領域12に有し得て、pドープガードリング38は、ドリフト層2によって互いから分離される。1つのガードリング38が作製されてもよく、または、互いを取り囲みかつドリフト層2によって互いから分離されている少なくとも2つもしくは少なくとも5つもしくは少なくとも10のガードリング38が作製されてもよい。
【0064】
また、JTE領域36は、ガードリング38と重なり合うように作製されてもよい。この場合、JTE領域36は、ガードリング38よりも低い注入ドーズ量であるがガードリング38よりも高い注入エネルギで作製され、その結果、高ドープガードリング38が埋設された低ドープJTE領域36が作製される。例示的に、JTE領域36は、ガードリング38よりも幅広である。例示的に、JTE領域は、デバイスのエッジまで延在している。幅は、第1の主要側14に平行な平面において、中央領域10に近い層の面とデバイスのエッジに近い層の面との間の最短距離として定義される。例示的に、JTE領域は、5〜500μmの幅を有するが、ガードリングの幅は、0.5〜20μmである。
【0065】
終端層3を備えるデバイスでは、ドーピング低減層4を作製するための注入エネルギは、最小ドーピング低減層深さ42が最大終端層深さ32よりも大きくなるように、すなわちドーピング低減層4が終端層3の下方に(すなわち、第1の主要側14から終端層3よりも深く)作製されるように選択され得る。別の実施形態では、ドーピング低減層4のドーピング濃度最小部40は、pドープ終端層3の最大深さ32よりも浅くてもよい。最大イオンエネルギおよびそれによるドーピング低減層4の最大深さ42は、pドープ終端層3の最大深さ32よりも深い第1の主要側14からの深さのところに最大深さ42が位置することになるほどに高く選択され得る。
【0066】
このような本発明のエッジ終端構造は、ショットキーダイオードまたはマージドpinショットキーダイオードまたは接合障壁ショットキーダイオードまたはP−i−NダイオードまたはMOSFETまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor:IGBT)または接合型電界効果トランジスタ(Junction Field Effect Transistor:JFET)、例示的にはBIGT(二重モード絶縁ゲートトランジスタ)として設計され得る例示的には逆導通(reverse conducting:RC)IGBTのような、当業者に周知のさまざまな種類の炭化ケイ素パワー半導体デバイスに適用することができる。US8212283 B2には、二重モード絶縁ゲートトランジスタ(BIGT)の形態のこのような逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(RC−IGBT)が記載されており、本文献は、BIGTの定義のために引用によって援用される。
【符号の説明】
【0067】
1 nドープSiC基板、10 中央領域、12 エッジ領域、14 第1の主要側、16 第2の主要側、18 デバイス厚み、2 n−ドープドリフト層、3 pドープ終端層、32 最大終端層深さ、36 接合終端拡張部、38 ガードリング、39 パッシベーション層(半絶縁/絶縁層)、4 ドーピング低減層、40 ドーピング低減層のドーピング濃度最小部の深さ、42 最大ドーピング低減層深さ、44 ドーピング低減層深さ範囲、46 ドーピング低減領域、460 最小ドーピング低減領域深さ、462 最大ドーピング低減領域深さ、464 ドーピング低減領域深さ範囲、5 マスク、50 金属電極、52 金属電極、6 フローティング金属リング、7 pドープアノード層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23