(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記磁石及び前記磁気センサのうちの少なくともいずれか一方を前記操作部の操作に応じて変位させることにより、該磁石と該磁気センサとの相対的な位置関係を変化させる駆動機構を含む入力装置。
請求項2において、前記駆動機構は、前記検出面に対面する状態で回転可能な回転台を含み、該回転台は、前記検出面に沿って進退可能に前記磁石を保持している入力装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、入力装置の一例として、シフトバイワイヤの変速システムに対応するシフト装置1を示す例である。この内容について、
図1〜
図9を参照して説明する。
図1のシフト装置1は、車両に搭載される図示しない自動変速機で設定されるシフトレンジを選択するための操作装置であり、運転者の持ち手をなすシフトノブ(操作部)111を備えている。シフト装置1は、自動変速機を制御するECU(図示しない車載コンピュータユニット)と信号線を介して接続されており、運転者によるシフトノブ111の操作情報を電気信号に変換してECUに入力する。
【0012】
例示するシフト装置1では、エンジンブレーキが必要なときのBレンジ、前進時のD(ドライブ)レンジ、後退時のR(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジを選択できる。シフト装置1では、
図1のごとく、各シフトレンジに対応するシフトノブ111の操作位置であるシフト位置が設定されており、いずれかのシフト位置にシフトノブ111を操作することで、対応するシフトレンジを選択的に設定できる。なお、以下の説明では、例えばDレンジに対応するシフト位置をDポジションと言う。
【0013】
図1のシフト装置1では、初期位置となるH(ホーム)ポジションを操作の起点として、車両の進行方向に沿うシフト方向、及び車幅方向に沿うセレクト方向にシフトノブ111を操作可能である。このシフト装置1の例では、右ハンドルの運転者側から見て、Hポジションに対してBポジションがシフト方向手前側(進行方向逆側)、Nポジションがセレクト方向に引き寄せる側に配置され、Nポジションに対してRポジションがシフト方向奥側(進行方向側)、Dポジションがシフト方向手前側に当たる位置に配置されている。
【0014】
図1に示すHポジションを起点として、運転者がシフト方向手前側にあるBポジションにシフトノブ111を操作すれば、Bレンジを選択できる。Dレンジは、Hポジションからセレクト方向に沿ってシフトノブ111を移動させて一旦Nポジションに操作し、そのままシフト方向手前側のDポジションにシフトノブ111を操作することで選択できる。Rレンジは、Hポジションからセレクト方向に沿ってシフトノブ111を移動させて一旦Nポジションに操作した後、そのままシフト方向奥側のRポジションにシフトノブ111を操作することで選択できる。なお、このシフト装置1では、操作の起点であるHポジションに向けてシフトノブ111が付勢されている。例えばDポジションにシフトノブ111を操作した後、運転者がシフトノブ111から手を離すと、シフトノブ111は自動的にHポジションに復帰する。
【0015】
このシフト装置1は、
図1〜
図3のごとく、一方の端部に球状部110(
図2)を設けた棒状のシフトレバー11と、シフトレバー11を回動可能に支持する筐体13(
図1)と、を含んで構成されている。シフトノブ111(
図1)は、球状部110とは反対側のシフトレバー11の端部に取り付けられる。シフト装置1では、箱状の筐体13の底面に取り付けられたボール受け部15に球状部110が収容され、この収容構造によりシフトレバー11の回動を伴うシフトノブ111の操作が可能となっている。
【0016】
シフトレバー11の球状部110の外周面には、シフトノブ111の操作位置の検出に利用される磁石21を駆動するための駆動ピン116と、シフトノブ111の回転を規制するための規制ピン118と、が立設されている。駆動ピン116は、円柱状の軸部を有していると共に、先端側に球状の摺動ボール116Aを設けたピンである。規制ピン118は、断面円形状の軸状のピンである。
【0017】
駆動ピン116は、シフト方向のシフトノブ111の操作に応じて摺動ボール116Aが水平方向に近い方向(以下、略水平方向という。)に変位し、セレクト方向のシフトノブ111の操作に応じて摺動ボール116Aが鉛直方向に近い方向(以下、略鉛直方向とう。)に変位するように球状部110に設けられている。規制ピン118は、セレクト方向のシフトノブ111の操作に応じて鉛直方向に変位する一方、シフト方向にシフトノブ111が操作されたときは、その軸方向が回動変位することなく軸回りの回転のみが生じるように球状部110に設けられている。
【0018】
箱状の筐体13(
図1)の底面には、上記の通り、シフトレバー11の球状部110に対応する球状の内部空間が形成されたボール受け部15が取り付けられている。また、駆動ピン116の先端側に位置する筐体13の内壁面には、シフトノブ111の操作位置を検出するための基板2が取り付けられている。さらに筐体13の上部には、シフトレバー11の移動経路を規定するためのゲート溝130を設けたシフトパネル131が取り付けられる。
【0019】
ボール受け部15は、半割の2分割構造の部品15A・B(
図2)を組み合わせて形成され、例えば筐体13の底面にネジ止めされている。2分割構造の部品15A・Bを組み合わせたとき、その内部に、球状部110を収容するための球状の内部空間が形成される。この球状の内部空間は、完全な密閉空間ではなく、少なくとも3箇所の開口部150A〜C(
図1)を介して外部に開口している。
【0020】
開口部150としては、シフトレバー11を貫通配置するための開口部150A、駆動ピン116を貫通配置するための開口部150B、及び規制ピン118を貫通配置するための開口部150Cがある。シフトレバー11及び駆動ピン116に対応する開口部150A・Bは、シフトレバー11あるいは駆動ピン116の外周側面に干渉することがないように余裕を持って広く形成されている。
【0021】
一方、規制ピン118に対応する開口部150Cは、シフトノブ111の変位に従動して規制ピン118が移動する経路に対応して形成されている。上記のように規制ピン118は、シフト方向にシフトノブ111が操作されたときには軸方向の回動変位が生じず、セレクト方向のシフトノブ111の操作に従動して鉛直方向に変位するように設けられている。溝状の開口部150Cは、この鉛直方向に沿って延設されており、その溝幅は、規制ピン118を貫通配置可能な程度に狭く設定されている。それ故、開口部150によれば、規制ピン118の外周側面に干渉することで、シフトレバー11が回転した場合に起こり得る規制ピン118の回動変位を規制し、これにより、シフトノブ111を回り止めできる。
【0022】
基板2(
図2)は、磁気センサIC(磁気センサ)201のほか、シフトノブ111の操作により選択されたシフト位置を表す電気信号を生成し出力するための図示しないマイコンチップなどが実装された電子基板である。両面実装に対応する基板2では、筐体13の内部空間に面して磁気センサIC201が配置され、その裏面にマイコンチップなど他の電子部品が配置されている。
【0023】
磁気センサIC201(
図2)は、直交する2方向の磁気の大きさを検知可能な2軸の磁気センサである。この磁気センサIC201は、この直交する2方向により規定される検出面201Sを有し、この検出面201Sが基板2の表面に沿うように取り付けられている。磁気センサIC201は、この検出面201Sにおける磁気の作用方向を検出し、その作用方向を表すセンサ信号を出力する。つまり、この磁気センサIC201は、検出面201Sに直交する軸回りの回転角を検出する1軸の回転センサとして機能する。
マイコンチップは、磁気センサIC201が出力するセンサ信号を処理することで、シフトノブ111が操作されたシフト位置を検出し、そのシフト位置を表す操作信号を電気的に出力する。
【0024】
磁気センサIC201が配置された基板2の表面には、
図2のごとく、磁気センサIC201が略中心に位置するように円環状のホルダガイド23が固定されている。このホルダガイド23は、略円板状の回転台であるマグネットホルダ25を保持している。そして磁石21は、回転台の径方向に進退可能な状態でマグネットホルダ25により保持されている。シフト装置1では、マグネットホルダ25及びホルダガイド23を介して基板2に保持された磁石21について、基板2の表面に沿う進退動作と、基板2に沿う平面内での回転動作と、が可能になっている。
【0025】
マグネットホルダ25(
図2)は、略直方体形状の磁石21を保持する部材であり、樹脂等の非磁性材料により形成されている。マグネットホルダ25は、略円板状の外形状を有する一方、中心を通って径方向に貫通する進退溝250を備えている。基板2とは反対側に当たる表面に穿設されたこの進退溝250は、磁石21を進退可能に収容する溝である。組付状態のシフト装置1における略円板状のマグネットホルダ25は、その円形状の底面が筐体13の内壁面に対面すると共に、径方向に穿設された進退溝250が鉛直方向に近く延在する状態でホルダガイド23に保持されている。
【0026】
ホルダガイド23(
図2)は、基板2側の土台をなす円環状のベース部230を有していると共に、先端がカギ状に内側に折れ曲がる保持爪231をベース部230の周方向における4か所に有している。4か所の保持爪231の内接円の直径は、マグネットホルダ25の直径に略一致している。このホルダガイド23によれば、4か所の保持爪231の内側において、略円板状のマグネットホルダ25を回転可能な状態で保持できる。
【0027】
なお、このホルダガイド23は、円環状を呈するスペーサ27(
図2)を介して基板2に取り付けられる。このスペーサ27は、その外径がホルダガイド23のベース部230の外径と略一致していると共に、その内径はマグネットホルダ25よりも小径である。スペーサ27の厚さとしては、磁気センサIC201の実装高さを僅かに超える寸法が設定されている。マグネットホルダ25と基板2の間にスペーサ27を介在させれば、磁気センサIC201の上面と、マグネットホルダ25の底面と、の隙間を一定に保持できる。
【0028】
磁石21は、
図4のごとく、磁極対をなすN極とS極とを対面させたブロック状の磁石21H、M、Lを3つ並べた略直方体形状の磁石である。3つの磁石21H、M、Lのうち、両端の2つの磁石21H、LはN極が面する側(同図(b)で図示される側面の側)が同じである一方、中央の磁石21Mは裏返されて他の2つの磁石21H、LのN極が面する側にS極が面している。
【0029】
この磁石21では、各磁石21H、M、Lの磁極対によってN極とS極とが対面する方向の磁界が形成されるのに加えて、磁石21H、M、Lのうちの異なる2つに属して隣接するN極とS極との組み合わせによる磁極対によっても磁界が形成される。このような磁極対には、磁石21HのN極と磁石21MのS極との組み合わせによる磁極対215Aと、磁石21MのS極と磁石21LのN極との組み合わせによる磁極対215Bと、が含まれている。
【0030】
磁極対215A・Bは、磁石21Hと磁石21Mと磁石21Lとが隣り合う方向、すなわち略直方体形状の磁石21の長手方向に沿う磁界を形成する。ここで、磁石21は、上記の通り、基板2に対面する状態で保持されたマグネットホルダ25の進退溝250の溝方向に対して略直方体形状の長手方向が一致する状態で、この進退溝250に収容されている。したがって、磁極対215A・Bが形成する磁界は、基板2の表面に沿う方向に磁気を作用することになる。
【0031】
なお、以下の説明では、磁石21の長手方向において上側(シフトノブ側の上方に当たる側)に配置された磁石21Hの基板2に面するN極を第1N極211Nといい、磁石21の長手方向において磁石21Hとは反対側の磁石21Lの基板2に面するN極を第2N極212Nという。また、中央の磁石21Mの基板2に面するS極をS極21Sという。また、磁極対215Aにおける第1N極211NとS極21Sとの境目を第1境界B1といい、磁極対215Bにおける第2N極212NとS極21Sとの境目を第2境界B2という。本例の構成では、磁石21Hの第1N極211N、磁石21MのS極21S、磁石21Lの第2N極212Nにより形成される磁石21の側面(
図4(b)で図示される側面。)が、基板2に面している。
【0032】
磁石21では、基板2とは反対側に当たる側面(
図4(a)で図示される側面。)に、円筒状のボールホルダ210が立設されている。シフト装置1では、マグネットホルダ25の回転中心から偏心して位置するボールホルダ210に駆動ピン116の摺動ボール116Aが収容され、これによりシフトレバー11と磁石21とが連結されている(
図1、
図3参照。)。ボールホルダ210に対する摺動ボール116Aの収容構造は、ボールジョイントのように機能し、摺動ボール116Aの変位に伴う駆動ピン116の回動を許容する。
【0033】
ここで、上記のごとくシフト装置1では、シフト方向のシフトノブ111の操作に応じて駆動ピン116の先端の摺動ボール116Aが略水平方向に変位し、セレクト方向のシフトノブ111の操作に応じて摺動ボール116Aが略鉛直方向に変位する。一方、略直方体形状の磁石21は、鉛直方向に近く延在するマグネットホルダ25の進退溝250に収容された状態となっている。そのため、セレクト方向のシフトノブ111の操作に応じて摺動ボール116Aが略鉛直方向に変位すれば、進退溝250に沿って磁石21がその長手方向に進退する。また、シフト方向にシフトノブ111が操作されたときには、マグネットホルダ25の回転を伴いながら、その回転中心から偏心して位置するボールホルダ210に収容された摺動ボール116Aが略水平方向に変位する。磁石21は、マグネットホルダ25と共に回転するため、その長手方向が回転することになる。
【0034】
このようにシフト装置1では、マグネットホルダ25及びホルダガイド23を介して基板2により磁石21が保持されている。そして、この磁石21に対して駆動ピン116が係合しており、これによりシフトノブ111の操作に応じた磁石21の進退動作及び回転動作が可能になっている。つまり、シフト装置1では、マグネットホルダ25、ホルダガイド23、及び駆動ピン116により、磁石21と磁気センサIC201との相対的な位置関係を変化させる駆動機構が構成されている。
【0035】
次に、以上のように構成されたシフト装置1において、シフト位置を検出する方法について
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5は、各ポジションにおける磁石21の回転位置及び進退位置を示している。
図6は、各ポジションにおける磁石21と検出面201Sとの位置関係を示している。なお、
図5中のポジション毎に付記された縦長の平行四辺形は、基板2に面する磁石21の側面形状を表し、この平行四辺形の内側に重ねて示す太枠の平行四辺形は、磁気センサIC201の検出面201Sを表している。磁石21に対応するこの平行四辺形と、検出面201Sを表す太枠の平行四辺形と、の相対的な位置関係を、容易な理解のために正面視に書き換えたものが
図6の各図である。上記の通り、シフト装置1では、磁石21Hの第1N極211N、磁石21MのS極21S、磁石21Lの第2N極212Nにより形成される磁石21の側面が基板2に面している。
【0036】
シフトノブ111がHポジションにあるとき(
図5参照。)、磁気センサIC201の検出面201Sが磁石21の第2境界B2に対面する状態にある。この状態のとき、検出面201Sにおいては、第2N極212NからS極21Sに至る
図6中の上方に向かう磁気が作用する。
【0037】
Hポジションを起点としてシフトノブ111が(運転者側から見て)シフト方向手前側のBポジションに操作されると、マグネットホルダ25の回転と共に磁石21が検出面201Sに対面する状態で回転し、これにより磁石21の長手方向が傾くように変位する。この場合、検出面201Sに対して磁石21の第2境界B2が対面する状態を維持しつつ磁石21が傾いて第2N極212NからS極21Sに至る磁界の向きが回転し、これにより検出面201Sにおける磁気の作用方向が変化する。すなわち、磁気センサIC201に磁気を作用する磁極対215が切り替わることなく、磁石21の回転に応じて磁気センサIC201に作用する磁気の方向が変化する。
【0038】
Hポジションを起点としてシフトノブ111がセレクト方向のNポジションに操作されると、マグネットホルダ25の進退溝250に沿って磁石21が長手方向下方に移動する。この場合、検出面201Sに対して磁石21の第2境界B2が対面する状態から第1境界B1が対面する状態に切り替わる。このとき、検出面201Sにおける磁気の作用方向は、第2N極212NからS極21Sに至る
図6中の上方から、第1N極211NからS極21Sに至る同図中の下方に反転する。すなわち、磁気センサに磁気を作用する磁極対が、第1境界B1を含む磁極対215Aから第2境界B2を含む磁極対215Bに切り替わることで、検出面201Sにおける磁気の作用方向が反転する。
【0039】
さらに、NポジションからDポジションにシフトノブ111が操作されると、上記のHポジションからBポジションへの操作の場合と同様、マグネットホルダ25の回転に応じて磁石21の長手方向が傾くように変位する。この場合、検出面201Sに対して磁石21の第1境界B1が対面する状態を維持しつつ磁石21が傾いて第1N極211NからS極21Sに至る磁界の向きが回転し、これにより検出面201Sにおける磁気の作用方向が変化する。
【0040】
このように本例のシフト装置1では、HポジションからBポジション、あるいはNポジションからRポジションやDポジションに至るシフト方向の操作が行われたとき、シフトレバー11に従動してマグネットホルダ25に保持された磁石21が回転し、これにより、検出面201Sにおける磁気の作用方向が回転方向に変化する。基板2に実装されたマイコンチップは、このような磁気の作用方向の変化を検出することでシフト方向の操作位置を検出する。
【0041】
また、HポジションからNポジションに至るセレクト方向の操作が行われたとき、検出面201Sに沿うようにして磁石21がその長手方向に進退し、検出面201Sに対面する箇所が磁石21の第2境界B2から第1境界B1に切り替わる。第1境界B1を含む磁極対215Aと第2境界B2を含む磁極対215Bとでは、N極とS極との配置が入れ替わっており磁界の向きが逆であるため、検出面201Sにおける磁気の作用方向が逆である。したがって、検出面201Sにおける磁気の作用方向の180度の回転(反転)を検出することにより、上記のセレクト方向の操作を検出できる。
【0042】
このシフト装置1では、1つの磁気センサIC201に対する磁気の作用方向を検出することで、直交するシフト方向及びセレクト方向に沿う2次元的なシフトノブ111の操作を検出可能である。磁石の変位スペースを確保すると共に2次元的に磁気センサICを配置する必要がある従来のシフト装置と比べて、シフト装置1では、磁石の変位スペースを確保する必要性が少なく、磁気センサIC201を配置するために要するスペースも格段に小さいため、コンパクト設計が容易になっている。
【0043】
なお、本例では、基板2に面して、中央にS極21Sが位置すると共に、両側にN極211N、212Nが位置するように磁石21を構成している。これに代えて、両側にS極が位置し、中央にN極が位置するような磁石を採用しても良い。また、3つの磁石21H、M、Lが並列配置された磁石21に代えて、
図7のごとく、S極を内側にして対向配置された2つの磁石21A・Bの組み合わせよりなる磁石21を採用しても良い。この場合、磁石21A及び21BのN極とS極との組み合わせが、磁気センサIC201に磁気を作用する磁極対となる。Hポジションが属するシフト方向の列にシフトノブ111が操作されているときと、Nポジションが属するシフト方向の列にシフトノブ111が操作されているときと、で磁気センサIC201が対面する磁石21A、Bが切り替わるように構成すると良い。例えば、プラスチックマグネットを着磁することで、2つの磁石21A・Bが一体化された磁石21を形成できる。あるいは、例えば、この2つの磁石21A・Bの周りに溶融状態の樹脂材料を流し込み硬化させるインサート成形により、2つの磁石21A・Bが一体化された磁石21を形成することも良い。これら2つの磁石21A・Bについては、S極を内側にして対向配置するのに代えて、
図8のように、磁界の向きが異なるように配置しても良い。さらに、磁界の向きが異なる磁石を3つ以上並べて配置して磁石21を形成しても良い。この場合には、例えば3列以上のシフト方向の各列に沿ってシフトノブを操作するシフト装置にも対応できるようになる。3列以上のシフト方向を含む2次元的なシフトノブの操作を、たった1つの磁気センサICによって検出できる。
【0044】
さらに例えば、
図9のごとく、シフトレバー11の球状部110の外周面に細長いシート状の磁石プレート218を3枚並列貼付し、これらの磁石プレート218の磁気を磁気センサIC201に作用することも良い。中央の磁石プレート218のS極を外側に向け、両側の磁石プレート218のN極を外側に向けると良い。この磁石プレート218の代わりに、例えば、球状部110の外周面を磁化したり、球状部110の外周面に磁気テープ等を貼付することで、S極の領域の両側にN極の領域が配置された箇所を球状部110の外周面に設けることも良い。この場合には、磁石21を回転、進退等させるための駆動機構を省略できる。駆動機構を省略すれば、磁気センサIC201を球状部110に近接配置でき、コンパクト設計が一層容易になる。また、この構成の場合、部品点数を低減できる可能性があり、低コスト化が容易になる。
【0045】
本例は、筐体13に固定された基板2に対して、シフトレバー11に従動する磁石21が変位する構成の例である。この構成に代えて、例えばシフトレバー11の球状部110に磁気センサIC201を設けることも良い。筐体13側に固定された磁石21に対して、シフトレバー11に従動して磁気センサIC201が変位するように構成すれば良い。さらに、シフトレバー11に従動して磁石21及び磁気センサIC201の両方が変位し、両者間の相対的な位置関係が変化するように構成しても良い。
【0046】
また本例では、シフトノブ111のシフト方向の操作に応じて磁石21が回転し、セレクト方向の操作時に磁石21がその長手方向に進退する構成を例示している。この構成に代えて、シフト方向の操作時に磁石21が進退し、セレクト方向の操作時に磁石21が回転する構成を採用しても良い。
【0047】
本例では、シフトレバー11の球状部110に対して対面するように磁気センサIC201を設けている。磁気センサIC201を含む基板2の配置は、シフトレバー11の横に限らない。シフト方向及びセレクト方向に沿うシフトノブ111の操作を検出可能な位置であれば、磁気センサIC201を含む基板2の配置を適宜、変更可能である。
【0048】
本例では、直交する2方向に作用する磁気を検出可能な2軸の磁気センサを採用しているが、これに代えて、互いに直交する3方向に作用する磁気を検出可能な3軸の磁気センサを採用することも良い。シフト装置1では、上記のごとく、シフトノブ111がセレクト方向に操作されると、磁気センサの検出面201Sに対して磁石21の第2境界B2が対面する状態から第1境界B1が対面する状態に切り替わり、これにより、検出面201Sにおける磁気の作用方向が180度回転する。このような切り替わりの途中では、検出面201Sに対して磁石21のS極21Sが対面する状態が生じ、この状態では、検出面201Sに対して直交する方向の磁気が作用する。そこで、検出面201Sにおける磁気の作用方向の180度回転を検出でき、かつ、180度回転の途中で、検出面201Sに対して直交する作用方向の磁気を検出できたとき、セレクト方向の操作を検出するように構成しても良い。この場合には、セレクト方向の操作を一層確実性高く検出できる。
【0049】
本例では、入力装置としてシフト装置1を例示しているが、このシフト装置1の構成は、ジョイスティックなど操作レバーを備えるポインティングデバイス等のさまざまな入力装置において有効である。
【0050】
(実施例2)
本例は、実施例1のシフト装置1に基づき、検出信頼性を高めたシフト装置の例である。この内容について
図10を参照して説明する。
本例のシフト装置1では、磁石21及び磁気センサICの配置構成が実施例1とは相違している。磁石21は、磁気センサICに面して、2箇所のN極と2箇所のS極とが長手方向に交互に配置されるように4つの磁石を組み合わせたものである。この磁石21では、磁気センサIC側の側面において、シフトノブ111側に当たる上側から順番に、N極、S極、N極、S極が配置され、これにより、3対の磁極対215A、B、Cが形成されている。この磁石21では、磁極のスパンS2に一致する間隔で、磁極の境目をなす境界B1(磁極対215Aの境界)、境界B2(磁極対215Bの境界)、及び境界B3(磁極対215Cの境界)が形成されている。
【0051】
この磁石21に対面する基板(図示略)では、2個の磁気センサICが間隔を空けて配置され、2箇所の検出面201A・Bが形成されている。2個の磁気センサICは、磁石21における磁極の間隔をなすスパンS2に対して、検出面201A・BのスパンS1が略一致するように配置されている。
【0052】
シフトノブ111がHポジションにあるとき、検出面201Aが磁極の境界B2に対面し、検出面201Bが境界B3に対面する状態にある。例えば、このHポジションを起点としてシフトノブ111がシフト方向手前側のBポジションに操作されると、シフトレバー11に従動して磁石21が回転する。この場合、検出面201A・Bが境界B2・B3に対面する状態を維持しつつ磁石21が傾いて磁界の向きが回転し、これにより検出面201A・Bにおける磁気の作用方向が変化する。
【0053】
また例えば、Hポジションを起点としてシフトノブ111がセレクト方向のNポジションに操作されると、シフトレバー11により磁石21が駆動されて
図10中の下方に移動する。この場合、検出面201Aに対して境界B2が対面する状態から境界B1が対面する状態に切り替わると共に、検出面201Bに対して境界B3が対面する状態から境界B2が対面する状態に切り替わる。境界B1とB2、境界B2とB3、では、磁界の向きが逆であるため、Nポジションへの操作に応じて、検出面201A・Bにおける磁気の作用方向が反転する。
【0054】
本例のシフト装置1によれば、検出面201A・Bを有する2つの磁気センサICを利用してシフトノブ111の操作位置を検出するため、検出の信頼性、確実性を向上できる。
なお、本例では、いずれかのポジションにシフトノブ111が操作されたとき、検出面201A・Bが異なる境界に対面する状態となるように構成している。この構成に代えて、いずれかのポジションにシフトノブ111が操作されたとき、一方の検出面のみがいずれかの境界に対面する状態となるように構成しても良い。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0055】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。