特許第6873934号(P6873934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873934
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20210510BHJP
   C09D 5/25 20060101ALI20210510BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20210510BHJP
   H01B 3/30 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C09D175/04
   C09D5/25
   C09D7/61
   H01B3/30 B
   H01B3/30 M
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-18600(P2018-18600)
(22)【出願日】2018年2月5日
(65)【公開番号】特開2019-135289(P2019-135289A)
(43)【公開日】2019年8月15日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174932
【氏名又は名称】日本ペイント防食コーティングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520242399
【氏名又は名称】九州電力送配電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 敏和
(72)【発明者】
【氏名】西村 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】龍 晃
(72)【発明者】
【氏名】西村 仁志
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−510482(JP,A)
【文献】 特開昭58−098361(JP,A)
【文献】 特開平07−062052(JP,A)
【文献】 特開平06−325649(JP,A)
【文献】 特開昭60−047074(JP,A)
【文献】 特開昭61−120821(JP,A)
【文献】 特公昭48−017832(JP,B1)
【文献】 特開昭60−071626(JP,A)
【文献】 特開平06−295620(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105349012(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103310915(CN,A)
【文献】 特開昭57−121021(JP,A)
【文献】 特開2010−177066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/04
C09D 5/25
H01B 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線支持物又は電線本体に絶縁塗膜を形成するための塗料組成物であって、
樹脂組成物(A)と、硬化剤(B)と、体質顔料(C)と、を含み、
前記樹脂組成物(A)は、ヒマシ油系ポリオール(a−1)を含み、
前記樹脂組成物(A)は、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)を更に含み、
前記ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、7質量部以下であり、
前記硬化剤(B)は、ポリイソシアネートであり、
前記体質顔料(C)は、マイカ、セリサイト及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
前記塗料組成物における前記体質顔料(C)の顔料容積濃度(PVC)は、15〜20%である塗料組成物。
【請求項2】
前記ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、1質量部以下である請求項に記載の塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線支持物又は電線本体に絶縁塗膜を形成するための塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電鉄塔や配電鉄塔のアーム部に鳥が営巣をする際に営巣材が電線に触れること等が原因となり、地絡が生じることがある。このような地絡を未然に防ぐために、送電鉄塔のアーム部と、碍子を連結する金具とを絶縁塗膜で被覆する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、特許文献1では、軟質変性エポキシ樹脂、軟質変性ウレタン、軟質変性ポリエステルといった、軟質変性樹脂を塗料組成物として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−325649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の塗料組成物を電線支持物又は電線本体に塗装した場合、塗膜の厚みをだすことは難しい。その結果、塗膜の絶縁性を確保しにくいという問題がある。
【0005】
本発明は、絶縁性が十分な塗膜を形成でき、塗装性が良好な塗料組成物を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電線支持物又は電線本体に絶縁塗膜を形成するための塗料組成物であって、樹脂組成物(A)と、硬化剤(B)と、体質顔料(C)と、を含み、前記樹脂組成物(A)は、ヒマシ油系ポリオール(a−1)を含み、前記硬化剤(B)は、ポリイソシアネートであり、前記体質顔料(C)は、マイカ、セリサイト及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記塗料組成物における顔料容積濃度(PVC)は、15〜20%である塗料組成物に関する。
【0007】
前記樹脂組成物(A)は、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)を更に含み、前記ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、7質量部以下であることが好ましい。
【0008】
前記ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁性が十分な塗膜を形成でき、塗装性が良好な塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る塗料組成物について具体的に説明する。
【0011】
[塗料組成物]
本発明に係る塗料組成物は、樹脂組成物(A)と、硬化剤(B)と、体質顔料(C)と、を含む。また、塗料組成物における顔料容積濃度(PVC)は、15〜20%である。
【0012】
<樹脂組成物(A)>
樹脂組成物(A)は、ヒマシ油系ポリオール(a−1)を含む。また、本実施形態に係る樹脂組成物(A)は、例えば、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)を更に含む。
【0013】
ヒマシ油系ポリオール(a−1)としては、例えば、ヒマシ油、ヒマシ油誘導体等が挙げられる。ヒマシ油誘導体としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、水添ヒマシ油、ヒマシ油とヒマシ油以外の油脂とのエステル交換物、ヒマシ油と多価アルコールとの反応物、ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、これらにアルキレンオキサイドを付加重合したもの等が挙げられる。
【0014】
樹脂組成物(A)が、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)を含むことにより強度が高い塗膜を得ることができる。本実施形態に係るビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、例えば、7質量部以下であり、好ましくは、1質量部以下である。ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量が7質量部以下であっても十分に強度が高い塗膜を得ることができる。
【0015】
樹脂組成物(A)には、ヒマシ油系ポリオール(a−1)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)以外の添加剤が含まれてもよい。添加剤として、例えば、湿潤剤、湿潤分散剤、消泡剤、脱泡剤、表面調整剤、沈降防止剤、チキソトロピック付与剤、レオロジーコントロール剤、揺変剤、揺変性改質剤、粘度調整剤、増粘剤等を挙げることができる。
【0016】
<硬化剤(B)>
硬化剤(B)は、ポリイソシアネートである。本明細書において、ポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート、炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート、芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物)等が挙げられる。
【0017】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等が挙げられる。炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ<2.2.1>ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等が挙げられる。芳香環を有する脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上併用することができる。
【0018】
<体質顔料(C)>
体質顔料(C)は、マイカ、セリサイト及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。塗料組成物が体質顔料(C)を含むことにより、塗膜の膜厚を確保しやすくなり、塗装性が良好になる。また、一般に、マイカ、セリサイト及びシリカはそれ自体の絶縁性が高いので、塗料組成物がこれらの体質顔料(C)を含むことにより、塗膜の絶縁性がより高くなる。体質顔料(C)は、例えば、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、カオリン等を更に含んでもよく、マイカ、セリサイト及びシリカの2種以上であってもよい。
【0019】
なお、本明細書において、一般に体質顔料(C)にも、着色顔料にも分類されることがある顔料(例えば、シリカ)は、体質顔料(C)に分類されるものとする。
【0020】
<顔料容積濃度(PVC)>
樹脂組成物(A)と、硬化剤(B)と、体質顔料(C)と、を含む塗料組成物における顔料容積濃度(PVC)は、15〜20%である。顔料容積濃度(PVC)が15〜20%であることにより、塗装性が良好な塗料組成物を得ることができる。また、顔料容積濃度(PVC)が15%未満であると、塗膜の絶縁性が不十分になる。
【0021】
なお、本実施形態に係る塗料組成物の顔料容積濃度(PVC)は、体質顔料(C)の体積(P)と、全ての樹脂の総体積(R)から、式P/(P+R)×100より算出した値である。
【0022】
<着色顔料>
本実施形態に係る塗料組成物は、例えば、カーボンブラック、酸化鉄等の着色顔料を含まないことが好ましい。一般に、カーボンブラック、酸化鉄等はそれ自体の導電性が高い顔料なので、塗料組成物がこれらの着色顔料を含まないことにより、塗膜の絶縁性が高くなる。カーボンブラック、酸化鉄以外の着色顔料としては、例えば、酸化チタンを挙げることができる。
【0023】
このように樹脂組成物(A)と、硬化剤(B)と、体質顔料(C)と、を含む本実施形態に係る塗料組成物は、主剤と硬化剤とが用いられるいわゆる二液混合型の塗料組成物である。これらの主剤及び硬化剤の調製方法としては、特別の方法を必要とせず、当業者において通常用いられる方法を使用することができる。
例えば主剤の調製方法としては、樹脂ビヒクル成分、すなわち、樹脂組成物(A)に、体質顔料(C)、必要に応じて上記添加剤等のその他の成分を加え、ディスパー、2軸ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル、プラネタリミキサー等の分散機で分散することにより調製する方法を挙げることができる。
また、主剤と硬化剤の混合方法としては、特別の方法を必要とせず、当業者において通常用いられる方法、例えば、ディスパー、手持ちミキサー、先端衝突混合スプレーガン等を利用する方法を使用することができる。
【0024】
[塗装方法]
本実施形態に係る塗料組成物は、電線支持物又は電線本体に絶縁塗膜を形成するために用いられる。塗装方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0025】
先ず、電線支持物(例えば、送電鉄塔や配電鉄塔のアーム部)の塗装部位をワイヤブラシ等でケレン処理し、清浄な状態とする。そして、塗料組成物の乾燥膜厚(絶縁塗膜の膜厚)が、例えば、1.5mm以上になるように、コテ等により、塗料組成物を塗装する。電線支持物に塗装された塗料組成物は、30分程度で硬化し、絶縁塗膜を形成する。このようにして、塗料組成物を用いて電線支持物に絶縁塗膜を形成することができる。電線本体にも同様の方法で絶縁塗膜を形成することができる。
【0026】
[絶縁性]
本実施形態に係る絶縁塗膜の絶縁性について説明する。
電気は通常充電された3本の線により送電される。電圧階級が77kVの場合、充電された線同士の間の電圧差は77kVになり、地面に対する電圧差は77kVを3の平方根で割った値(44.5kV)となる。つまり、電圧階級77kV以下の電線支持物又は電線本体に適用することを想定すると、絶縁塗膜の絶縁破壊抵抗値が45kV以上であれば、絶縁破壊は生じない。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係る塗料組成物は電線支持物又は電線本体に絶縁塗膜を形成するための塗料組成物であって、樹脂組成物(A)と、硬化剤(B)と、体質顔料(C)と、を含み、樹脂組成物(A)は、ヒマシ油系ポリオール(a−1)を含み、硬化剤(B)は、ポリイソシアネートであり、塗料組成物における顔料容積濃度(PVC)は、15〜20%である。これにより、絶縁性が十分な塗膜を形成でき、塗装性が良好な塗料組成物を提供することができる。
また、体質顔料(C)は、マイカ、セリサイト及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。これにより、絶縁性がより高い塗膜を形成できる。
【0028】
また、樹脂組成物(A)は、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)を更に含み、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、7質量部以下である。これにより、塗料組成物の塗装性がより良好になる。
【0029】
また、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して、1質量部以下である。これにより、絶縁性がより高い塗膜を形成できる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0032】
<実施例1>
それぞれ固形分換算で、37質量部のヒマシ油ポリオール(a−1)及び4質量部のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)からなる樹脂組成物(A)と、25質量部のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなる硬化剤(B)と、19質量部のマイカ及び11質量部のシリカからなる体質顔料(C)と、4質量部の添加剤(脱水剤、分散剤)と、を混合し実施例1の塗料組成物を得た。実施例1の塗料組成物の顔料容積濃度(PVC)は15%であった。また、ハケ塗り、コテ塗りにより、目標乾燥膜厚を1.5mm以上として、実施例1の塗料組成物を基材に塗装して、乾燥させて実施例1の塗膜を得た。
【0033】
<実施例2〜実施例6>
表1に示した固形分換算の質量比率で、樹脂組成物(A)と、硬化剤(B)と、体質顔料(C)とを混合し、実施例2〜実施例6の塗料組成物を得た。これらの塗料組成物の顔料容積濃度(PVC)は表1に示した値であった。また、ハケ塗り、コテ塗りにより、目標乾燥膜厚を1.5mm以上として、実施例2〜実施例6の塗料組成物を基材に塗装して、乾燥させて実施例2〜実施例6の塗膜を得た。
【0034】
<比較例1〜比較例7>
表1に示した固形分換算の質量比率で、樹脂組成物(A)と、硬化剤(B)と、体質顔料(C)とを混合し、比較例1〜比較例7の塗料組成物を得た。これらの塗料組成物の顔料容積濃度(PVC)は表1に示した値であった。また、ハケ塗り、コテ塗りにより、目標乾燥膜厚を1.5mm以上として、比較例1〜比較例7の塗料組成物を基材に塗装して、乾燥させて比較例1、比較例2の塗膜を得た。
【0035】
[樹脂組成物(A)]
各実施例、比較例の樹脂組成物(A)は、以下の市販品を用いた。
・ヒマシ油ポリオール(a−1):ポリオール(商品名)(固形分99%以上)、伊藤製油社製
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2):ニューポールBP−2P(商品名)(固形分99%以上)、三洋化成工業社製
【0036】
[硬化剤(B)]
各実施例、比較例の硬化剤(B)は、以下の市販品を用いた。
・MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート):ミリオネートMR−200(商品名)(固形分99%以上)日本ポリウレタン工業社製
【0037】
[体質顔料(C)]
各実施例、比較例の体質顔料(C)は、以下の市販品を用いた。
・マイカ:ミクロマイカC−1000(商品名)(比重:2.8)、白石カルシウム社製
・炭酸カルシウム:スーパー#1700(商品名)(比重:2.7)、丸尾カルシウム社製
・シリカ:クリスタライト5X(商品名)(比重:2.6)、龍森社製
・沈降性硫酸バリウム:沈降性硫酸バリウム100(商品名)(比重:4.5)、堺化学工業社製
・カオリン:ASP−600(商品名)(比重:2.6)、BASF社製
【0038】
[塗料性状及び塗装性]
ハケ塗り、コテ塗りにより、各実施例、比較例の塗料組成物を基材に塗装した際の塗料性状及び塗装性を以下の評価基準で評価した。評価結果を表1に示した。
(評価基準)
1:塗装性に支障が出るほど粘度が低い又は高いか、あるいは一度に乾燥膜厚が1.5mm未満しか塗れない。
2:塗装性に支障が無く、一度に乾燥膜厚が1.5mm以上塗れる。
【0039】
[絶縁性]
各実施例、比較例の塗膜に対して油中絶縁耐力試験を行った。各実施例、比較例の塗膜の絶縁破壊抵抗値を測定した。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1〜実施例6と、比較例1、比較例3〜比較例7との比較から、塗料組成物の顔料容積濃度(PVC)が15%未満となると、塗膜の絶縁性が低くなり(絶縁破壊値が45kV未満となり)、塗装性も悪化することが確認された。実施例1〜実施例6と、比較例2との比較から、塗料組成物の顔料容積濃度(PVC)が20%を超えると、塗装性が悪化することが確認された。従って、塗料組成物における顔料容積濃度(PVC)が、15〜20%であることにより、絶縁性が十分な塗膜を形成でき、塗料組成物の塗装性が良好になることが確認された。
【0042】
また、実施例1、実施例3〜実施例7を比較することにより、塗料組成物の顔料容積濃度(PVC)が同程度であっても、体質顔料(C)がマイカを多く含むほど、塗膜の絶縁性がより高くなる傾向が確認された。なお、マイカ及びセリサイトはケイ酸塩鉱物であり、マイカとセリサイトとを置き換えても同様の傾向を示すことは明らかである。
従って、体質顔料(C)は、マイカ、セリサイト及びシリカの少なくともいずれかであることにより(特にマイカやセリサイトを多く含むことにより)、絶縁性がより高い塗膜を形成できることが確認された。
【0043】
また、各実施例の塗料性状及び塗装性の評価結果に差はなかったが、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の含有量が多くなる程、塗膜の強度がより高くなる傾向が確認された。
一方で、各実施例の塗料性状及び塗装性の評価結果に差はなかったが、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の含有量が多くなる程、塗料が硬く、ハケ塗り、コテ塗りにより伸ばしにくくなる傾向が確認された。
以上から、各実施例を比較することにより、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量が7質量部以下であっても十分に強度が高い塗膜を得ることができると考えられた。反対に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量が7質量部を超えた場合には、塗膜の強度が過度に高まるだけで塗装性も悪くなり現実的でないと考えられた。
【0044】
特に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量が4質量部以下(実施例1〜実施例5)であることにより、絶縁性がより高い塗膜を形成できることが確認された。
更に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(a−2)の固形分含有量が1質量部以下(実施例4、実施例5)であることにより、絶縁性が更に高い塗膜を形成できることが確認された。