(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0011】
また、以下の説明において、n
+、n、n
−、n
−−、及び、p
+、p、p
−、p
−−の表記で、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す場合がある。すなわち、n
+はnよりもn型不純物濃度が相対的に高く、n
−はnよりもn型不純物濃度が相対的に低く、n
−−はn
−よりもn型不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p
+はpよりもp型不純物濃度が相対的に高く、p
−はpよりもp型不純物濃度が相対的に低く、p
−−はp
−よりもp型不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n
+型、n
−型、n
−−型を単にn型、p
+型、p
−型、p
−−型を単にp型と記載する場合もある。
【0012】
本明細書中、p型不純物濃度とは正味(net)のp型不純物濃度を意味する。正味のp型不純物濃度とは、半導体領域の実際のp型不純物濃度から実際のn型不純物濃度を差し引いた濃度である。同様に、本明細書中、n型不純物濃度とは正味(net)のn型不純物濃度を意味する。正味のn型不純物濃度とは、半導体領域の実際のn型不純物濃度から実際のp型不純物濃度を差し引いた濃度である。
【0013】
(実施形態1)
本実施形態に係る半導体装置は、第1の面と、第1の面と反対側の第2の面とを有し、第2の面側から第1の面側に向かう方向に不純物濃度分布を有する第1導電型の半導体層と、第1の面側から前記半導体層の中に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、第1の面側から第1半導体領域の中に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、第1の面側から半導体層の中に設けられた第1トレンチと、第1トレンチ内に、第1半導体領域と対向するように、第1絶縁膜を介して設けられた第1電極と、第1トレンチ内に第2絶縁膜を介して設けられた第2電極と、第1トレンチを囲うように、第1の面側から半導体層の中に設けられた第2トレンチと、第2トレンチ内に第3絶縁膜を介して設けられた第3電極と、を具備する。
【0014】
図1は本実施形態の半導体装置を示す図で、
図1(a)はその平面図、
図1(b)は
図1(a)のA−A線に沿って切断し、矢印方向に眺めた断面図である。
【0015】
図2は半導体装置の不純物濃度分布と活性領域の電界分布を示す図で、
図2(a)は
図1(b)と同じ図、
図2(b)は不純物濃度分布図、
図2(c)は電界分布図である。
【0016】
図3は半導体装置の終端領域の電界分布を示す図で、
図3(a)は活性領域と終端領域の境界付近の拡大平面図、
図3(b)は
図3(a)のB−B線に沿って切断し、矢印方向に眺めた断面図、
図3(c)は電界分布図である。
【0017】
始めに、半導体装置の概要を説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置10は、トレンチゲートとトレンチ内に埋め込まれたフィールドプレート電極とを有する縦型のパワーMOSトランジスタである。
【0019】
半導体装置10は、活性領域10aと、活性領域10aを囲む終端領域10bとを備えている。活性領域10aは、半導体装置10のオン動作時に電流を流す領域として機能する。終端領域10bは、半導体装置10のオフ動作時に活性領域10aの端部に印加される電界を緩和し、半導体装置10の耐圧を向上させる領域として機能する。
【0020】
活性領域10aには、第1の方向(X方向)に延在する第1トレンチ14が第1の方向に直交する第2の方向(Y方向)に所定の間隔d1で複数配置されている。第1トレンチ14は、例えばストライプ状である。終端領域10bには、複数の第1トレンチ14を囲むように、第2トレンチ19が配置されている。第2トレンチ19は、例えば額縁状である。第1トレンチ14と第2トレンチ19との距離(X方向の間隔dxおよびY方向の間隔dy)は、実質的に所定の間隔と同じとする(d1=dx=dy)。
【0021】
第1トレンチ14は、両端部が活性領域10aを超えて終端領域10bまで延在している。なお、
図1(a)には、活性領域10aに6本の第1トレンチ14が配置されている場合を示しているが、活性領域10aに配置される第1トレンチ14の数には特に制限はない。
【0022】
半導体装置10には、第1の面11aと、第1の面11aと反対側の第2の面11bとを有し、第2の面11b側から第1の面11a側に向かう方向(Z方向)に不純物濃度分布を有するn型(第1導電型)の半導体層11が設けられている。
【0023】
半導体層11は半導体基板22上に設けられ、第2の面11bが半導体基板22に接している。半導体基板22にはドレイン電極(図示せず)が設けられている。半導体基板22は、例えばシリコン基板である。
【0024】
第1の面11aから半導体層11の中にp型(第2導電型)のpベース領域(第1半導体領域)12が設けられている。第1の面11aからpベース領域12の中にn
+ソース領域(第2半導体領域)13が設けられている。
【0025】
第1トレンチ14は、第1の面11aから半導体層11の中に設けられている。第1トレンチ14内に、pベース領域12と対向するように、ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)15を介してゲート電極(第1電極)16が設けられている。
【0026】
更に、第1トレンチ14内に、第1フィールドプレート絶縁膜(第2絶縁膜)17を介して第1フィールドプレート電極(第2電極)18が設けられている。
【0027】
ここで、ゲート電極16は、第1フィールドプレート絶縁膜17及びゲート絶縁膜15で周囲を覆われており、第1フィールドプレート電極18とは物理的に離間している。
【0028】
第2トレンチ19は、第1トレンチ14を囲うように、第1の面11aから半導体層11の中に設けられている。第2トレンチ19内に、第2フィールドプレート絶縁膜(第3絶縁膜)20を介して第2フィールドプレート電極(第3電極)21が設けられている。
【0029】
pベース領域12および第1フィールドプレート絶縁膜17上に層間絶縁膜23が設けられている。層間絶縁膜23上にソース電極24が設けられている。ソース電極24は、層間絶縁膜23に設けられた開口を通してn
+ソース領域13の側面およびpベース領域12に接続されている。ソース電極24に第1フィールドプレート電極18が接続されていてもよい。
【0030】
なお、第2トレンチ19と隣り合う第1トレンチ14との間に、pベース領域12が設けられない場合もある。
【0031】
次に、半導体装置の活性領域における耐圧について説明する。
【0032】
図2(b)に示すように、半導体層11は、第2の面11b側から第1の面11a側に向かう方向(Z方向)に、順に第1不純物濃度n1を有する第1部分11cと、第1不純物濃度n1より高い第2不純物濃度n2を有する第2部分11dと、第1不純物濃度n1と等しい第3不純物濃度n3を有する第3部分11eとを有している。即ち、半導体層11は、n1=n3<n2と表わされる3段の不純物濃度分布を有している。
【0033】
第2部分11dは、ゲート電極16より第2の面11b側で、且つ第1トレンチ14の底部より第1の面11a側に設けられる。第3部分11eは、ゲート電極16より第2の面11b側で、且つ第2部分11dより第1の面11a側に設けられる。第1部分11c、第2部分11d、および第3部分の厚さは、基本的に同一であってよい。
【0034】
なお、
図2(b)に示す破線は、比較例の半導体装置の不純物濃度分布を示している。比較例の半導体装置では、不純物濃度分布は略一定である。
【0035】
図2(c)に示すように、本実施形態の活性領域10aの電界分布(実線)および比較例の活性領域の電界分布(破線)とも、電界分布はゲート電極16の下端と第1トレンチ14の底部の2箇所でピークを有し、両者の中間で低くなる分布、所謂双峰型分布を示している。耐圧は電界分布の面積に対応しているので、耐圧を向上させるためには、谷を持ち上げて、電界分布の均一化を図る必要がある。
【0036】
本実施形態の半導体層11では、第2部分11dにおける不純物濃度が比較例の半導体層より高い。その結果、ドレイン電圧が増加し、不純物濃度が高い第2部分11dに空乏層が達した際にパンチスルー状態になることで、電界が比較例の半導体層より増加する。その結果、活性領域10aにおける耐圧の向上とオン抵抗の低減が図られる。
【0037】
半導体装置の終端領域における耐圧について説明する。
【0038】
図3(a)、(b)に示すように、本実施形態の終端領域10bには、ストライプ状の第1トレンチ14を囲むように額縁状の第2トレンチ19が配置されている。第2トレンチ19には、第2フィールドプレート絶縁膜20を介して第2フィールドプレート電極21が埋め込まれている。第2フィールドプレート電極21は、第1フィールドプレート電極18と同様にソース電極24に接続されていてよい。
【0039】
第1トレンチ14と第2トレンチ19、第1フィールドプレート絶縁膜17と第2フィールドプレート絶縁膜20、および第1フィールドプレート電極18と第2フィールドプレート電極21とは、それぞれ実質的に同じ構造を有している。実質的に同じとは、完全に同一であることだけでなく、目的の作用効果が得られる範囲内までを含んでいる。
【0040】
具体的には、第1トレンチ14と第2トレンチ19とは、同一のトレンチ幅及びトレンチ深さを有している。第1フィールドプレート絶縁膜17と第2フィールドプレート絶縁膜20とは、同一の膜質及び膜厚を有している。第1フィールドプレート電極18と第2フィールドプレート電極21とは、同一の膜質を有している。
【0041】
その結果、終端領域10bにおける第1トレンチ14と第2トレンチ19とは、活性領域10aにおける隣接する第1トレンチ14同士と同等の構造になる。
【0042】
従って、
図3(c)に示すように、終端部10bの電界分布は活性領域10aの電界分布と略同じになるので、終端部10bの耐圧を活性領域10aの耐圧と同等に改善することが可能である。
【0043】
図4は比較例の半導体装置の終端領域の電界分布を示す図で、
図4(a)は活性領域と終端領域の境界付近の拡大平面図、
図4(b)は
図4(a)のC−C線に沿って切断し、矢印方向に眺めた断面図、
図4(c)は電界分布図である。比較例の半導体装置とは、終端領域に配置される第2トレンチが第1トレンチを囲んでいない半導体装置のことである。
【0044】
図4(a)、(b)に示すように、比較例の半導体装置40では、終端領域40bに第2トレンチ41が第1トレンチ14と平行に配置されている。第2トレンチ41は、第1トレンチ14と同じくストライプ状である。第2トレンチ41には、第2フィールドプレート絶縁膜42を介して第2フィールドプレート電極43が埋め込まれている。
【0045】
図4(c)に示すように、比較例の半導体装置40の終端領域40bでは、電界は不純物濃度の低い第3部分11eでピークを有する分布、所謂単峰型分布を示している。従って、破線で示す
図3(c)の双峰型分布と比べて電界分布が著しく不均一である。終端領域40bでは、第1トレンチ14の長手方向(X方向)は、不純物濃度が一定なので、活性領域40aより耐圧が低下する。
【0046】
次に、半導体装置10の製造方法について説明する。
図5および
図6は、半導体装置10の製造工程を順に示す断面図である。
【0047】
図5(a)に示すように、例えば気相成長法により、半導体基板22に所定の膜厚と所定の不純濃度を有する半導体層を連続してエピタキシャル成長させる。気相成長は、例えばキャリアガスとして水素(H
2)、プロセスガスとしてジクロルシラン(SiCl
2H
2)、ドーピングガスとしてフォスフィン(PH
3)を用いて行う。これにより、第1不純物濃度n1を有する第1部分11c、第2不純物濃度n2を有する第2部分11d、第3不純物濃度n3を有する第3部分11eを有する半導体層11が形成される。
【0048】
図5(b)に示すように、例えばイオン注入法により、ホウ素イオン(B
+)を第1の面11aから半導体層11の所定の領域に注入する。これにより、第1の面11aから半導体層11の中にpベース領域12が形成される。
【0049】
次に、燐イオン(P
+)を第1の面11aからpベース領域12の所定の領域に注入する。これにより、第1の面11aからpベース領域12の中にn
+ソース領域13が形成される。なお、活性化アニールは別々に行っても、同時に行ってもよい。
【0050】
図5(c)に示すように、例えばフォトリソグラフィー法およびRIE(Reactive Ion Etching)法により、第1の面11aから半導体層11の中に第1トレンチ14および第2トレンチ19を同時に形成する。第1トレンチ14および第2トレンチ19は、同一の幅および同一の深さを有している。
【0051】
図6(a)に示すように、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、第1トレンチ14および第2トレンチ19の内面に絶縁膜、例えばシリコン酸化膜を形成し、更に導電膜、例えばポリシリコン膜を埋め込む。これにより、第1トレンチ14に第1フィールドプレート絶縁膜17を介して第1フィールドプレート電極18が形成されると同時に、第2トレンチ19に第2フィールドプレート絶縁膜20を介して第2フィールドプレート電極21が形成される。
【0052】
次に、
図6(b)に示すように、例えばRIE法により、第1トレンチ14内の第1フィールドプレート絶縁膜17をpベース領域12の側面が露出するように掘り下げる。例えば熱酸化法により、露出した第1トレンチ14の内壁にゲート絶縁膜15となる絶縁膜、例えばシリコン酸化膜を形成し、CVD法によりゲート電極16となる導電膜、例えばポリシリコン膜を形成する。
【0053】
次に、
図6(c)に示すように、例えばCVD法により半導体層11の第1の面11aの全面を覆う層間絶縁膜23となる絶縁膜、例えばシリコン酸化膜を形成する。例えばRIE法により、層間絶縁膜23にn
+ソース領域13を貫通してpベース領域12に至るコンタクト孔25を形成する。
【0054】
例えばスパッタリング法により、コンタクト孔25を埋めるように層間絶縁膜23上にソース電極24となる金属膜、例えばアルミニウム(Al)膜を形成する。これにより、
図1に示す半導体装置10が得られる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置10では、半導体層11がn1=n3<n2で表される3段の不純物濃度分布を有するとともに、終端領域10bに活性領域10aの第1トレンチ14を囲むように第2トレンチ19が配置されている。その結果、終端領域10bにおいても第1トレンチ14と第2トレンチ19の配置が活性領域10aにおける隣接する第1トレンチ14同士の配置と同等になるので、終端領域10bにおける耐圧を活性領域10aにおける耐圧と同等にすることができる。従って、終端領域の耐圧を向上させることが可能な半導体装置が得られる。
【0056】
ここでは、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合について説明したが、第1導電型がp型、第2導電型がn型であってもよい。
【0057】
半導体基板22がシリコン基板である場合について説明したが、基板は特に限定されない。その他の半導体基板、例えばSiC基板、GaN基板等を用いることもできる。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態に係る半導体装置について
図7を用いて説明する。
【0059】
図7は半導体装置の不純物濃度分布と活性領域の電界分布を示す図で、
図7(a)は
図1(b)と同じく半導体装置の要部断面図、
図7(b)は不純物濃度分布図、
図7(c)は電界分布図である。
【0060】
本実施形態において、上記実施形態1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施形態が実施形態1と異なる点は、第3不純物濃度n3を第1不純物濃度n1より低くしたことにある。
【0061】
即ち、
図7(b)に示すように、本実施形態の半導体装置では、半導体層11は、n3<n1<n2で表される3段の不純物濃度分布を有している。第2不純物濃度n2は、例えば5×10
15cm
−3〜1×10
17cm
−3とすることができる。第1不純物濃度n1は、1×10
15cm
−3〜1×10
17cm
−3とすることができる。第3不純物濃度n3は、第1不純物濃度n1より低い範囲で1×10
15cm
−3〜1×10
17cm
−3とすることができる。
【0062】
図7(c)に示すように、第3不純物濃度n3を第1不純物濃度n1より低くしたことにより、ゲート電極16端の電界ピークの傾きが小さくなるため、第2部分11dでの電界の低下が抑制される。活性領域10aの耐圧を更に向上させることが可能である。なお、終端領域10bにおける耐圧は、活性領域10aの耐圧と基本的に同等になる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の半導体層11は、n3<n1<n2で表される3段の不純物濃度分布を有している。その結果、ゲート電極16端の電界ピークの傾きが小さくなり、第2部分11dでの電界の低下が抑制される。活性領域10aおよび終端領域10bにおける更に耐圧を向上させることができる。従って、終端領域の耐圧を向上させることが可能な半導体装置が得られる。
【0064】
ここでは、第3不純物濃度n3が第1不純物濃度n1より低い不純物濃度分布において、第1不純物濃度n1が第2不純物濃度n2より低い場合について説明したが、第1不純物濃度n1と第2不純物濃度n2とが等しい不純物濃度分布とすることも可能である。
【0065】
図8は第1不純物濃度n1と第2不純物濃度n2とが実質的に等しく、且つ第3不純物濃度n3が第1不純物濃度n1より低い不純物濃度分布を示す図である(n3<n2=n1)。
【0066】
図8に示すように、第1不純物濃度n1は第2不純物濃度n2と同じ5×10
15cm
−3〜1×10
17cm
−3とし、第3不純物濃度n3は、第1不純物濃度n1より低い範囲で1×10
15cm
−3〜1×10
17cm
−3とすることができる。
図7に示す不純物濃度は所謂3段の不純物濃度分布であるのに対して、
図8に示す不純物濃度分布は所謂2段の不純物濃度分布である。
【0067】
図8に示す2段の不純物濃度分布においても、
図2(b)に示す不純物濃度分布による効果および
図7(b)に示す不純物濃度分布による効果を得ることが可能である。即ち、電界分布がフラットになるので、耐圧の向上が期待される。
具体的には、上述したように、第2部分11dにおける不純物濃度が比較例の半導体層より高い。その結果、ドレイン電圧が増加し、不純物濃度が高い第2部分11dに空乏層が達した際にパンチスルー状態になることで、電界が比較例の半導体層より増加する。その結果、活性領域10aにおける耐圧の向上とオン抵抗の低減が図られる。
【0068】
第3不純物濃度n3を第1不純物濃度n1より低くしたことにより、ゲート電極16端の電界ピークの傾きが小さくなるため、第2部分11dでの電界の低下が抑制される。活性領域10aの耐圧を更に向上させることが可能である。
【0069】
また、2段の不純物濃度分布は、
図5(a)に示す工程において、第1部分11cと第2部分11dをエピタキシャル成長させる際に、ドーピングガス流量を変えずに、一定に維持すればよいので、工程が簡略化される利点もある。
【0070】
(実施形態3)
本実施形態に係る半導体装置について
図9および
図10を用いて説明する。
【0071】
図9は半導体装置の不純物濃度分布と活性領域の電界分布を示す図で、
図9(a)は
図1(b)と同じく半導体装置の要部断面図、
図9(b)は不純物濃度分布図、
図9(c)は電界分布図である。
【0072】
図10は半導体装置の終端領域の電界分布を示す図で、
図10(a)は活性領域と終端領域の境界付近の拡大平面図、
図10(b)は
図10(a)のD−D線に沿って切断し、矢印方向に眺めた断面図、
図10(c)は電界分布図である。
【0073】
本実施形態において、上記実施形態1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施形態が実施形態1と異なる点は、半導体層の不純物濃度を傾斜状にしたことにある。
【0074】
即ち、
図9(b)に示すように、本実施形態の半導体装置では、半導体層11は第2の面11b側から第1の面11a側に向かう方向に不純物濃度が漸次低下する、所謂スロープ状の不純物濃度分布を有している。一例では、不純物濃度分布は、初期値が1×10
17cm
−3に設定され、線形に低下している。
【0075】
図9(c)に示すように、電界分布は、第1トレンチ14の底部付近で比較例より急峻な分布を示している。これは、第1トレンチ14の底部付近での不純物濃度が比較例の不純物濃度より高いので、空乏層が伸びにくくなるためである。
【0076】
活性領域10aにおける耐圧は、実施形態1の活性領域10aにおける耐圧と基本的に同等である。
【0077】
図10に示すように、第2トレンチ19を配置することにより、終端領域10bの第1トレンチ14の長手方向(X方向)の構造は、活性領域10aと同等になる。第1トレンチ14の長手方向は不純物濃度が一定であるが、第2トレンチ19を追加することにより、活性領域10aと同等の電界分布になる。終端部10bの耐圧を向上させることが可能である。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置では、半導体層11は第2の面11b側から第1の面11a側に向かう方向に漸次低下するスロープ状の不純物濃度分布を有している。傾斜状の不純物濃度分布においても、活性領域10aおよび終端部10bの耐圧は実施形態1と同様であり、終端部10bの耐圧を向上させることができる。従って、終端領域の耐圧を向上させることが可能な半導体装置が得られる。
【0079】
ここでは、傾斜した不純物濃度分布がスロープ状である場合について説明したが、傾斜した不純物濃度分布を階段状とすることもできる。
図11は、階段状に傾斜した不純物濃度分布を示す図である。
【0080】
図11に示すように、半導体層11の不純物濃度分布が階段状の場合は、第2部分11dの第2不純物濃度n2は第1部分11cの第1不純物濃度n1より低く、且つ第3部分11eの第3不純物濃度n3は第2不純物濃度n2より低い(n3<n2<n1)。第1不純物濃度n1は、スロープ状の不純物濃度分布の初期値と同じ1×10
17cm
−3とすることができる。傾斜した不純物濃度分布が階段状の場合でも、スロープ状の場合と同様に終端部10bの耐圧を向上させることができる。
【0081】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。