(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の傷口を閉鎖(創閉鎖)するための閉鎖装置として、例えば特許文献1に記載された閉鎖装置が知られている。この閉鎖装置は、皮膚に設置されるベース部と、ベース部から一体的に延び出た引き紐部と、皮膚に設置され、引き紐部に係合する被係合部(ラチェット機構)を有する調整部と、を有している。引き紐部は、外面に凹凸が形成されており、この凹凸によって、引き紐部が被係合部に対して一方向(ベース部と被係合部とが近接する方向)にのみ相対移動可能となっている。そして、閉鎖対象の傷口を挟んでベース部と調整部とを皮膚に設置(例えば貼付)した状態で、調整部に対して引き紐部を相対移動させることにより、傷口が閉鎖される。前述の通り、引き紐部は調整部に対して一方向にのみ相対移動可能であるため、ひとたび引き紐部が調整部に対して引っ張られて傷口が閉鎖されると、この閉鎖状態が維持される。このような閉鎖装置は、初期状態において、複数並列に連結されており、閉鎖対象の傷口の寸法に応じた長さにカットされて使用される。
【0003】
具体的には、従来の閉鎖装置では、引き紐部を含むベース部とこれに対向する調整部とを含む閉鎖要素が2つ1組にて1つの閉鎖ユニットを構成している。この閉鎖ユニットがシート材の軸線方向に複数配置されることにより、閉鎖装置が構成されているのである。そして、互いに隣接する2つの閉鎖ユニットによって挟まれる領域には、シート材の幅方向に延びる単一のミシン目が設けられている。このミシン目の存在によって、閉鎖対象の傷口の長さに応じてシート材を容易にカットすることができる。
【0004】
ところで、閉鎖対象の傷口が湾曲している場合、シート材を傷口に沿わせて湾曲させながら貼付することが望ましい。この場合、従来の閉鎖装置では、ミシン目において不所望に閉鎖装置が分断してしまう場合があった。したがって、閉鎖装置を傷口に沿わせて貼付することが困難であった。また、閉鎖装置を肘や膝などの関節付近に貼付した場合には、関節を屈伸させた際に、ミシン目において不所望に閉鎖装置が分断してしまう場合があった。もちろん、ミシン目を切れにくく構成することも考えられるが、この場合、肘や膝を屈伸させた際の抵抗感(つっぱり感)が強く、快適性に劣る。更に、傷口が治癒した後で閉鎖装置を患部から剥離する際に、やはりミシン目において分断しやすく、迅速な剥離を行い難かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の問題に鑑みて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、閉鎖対象の傷口の形状への追従性が高く、且つ、剥離時に分断しにくい(切れにくい)閉鎖装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、皮膚の傷口を閉鎖するための閉鎖装置であって、
軸線方向とこれに直交する幅方向とを有し、前記傷口を挟んで対向配置される、一対のシート材と、
前記一対のシート材に架け渡される複数の閉鎖要素と、を備え、
各閉鎖要素は、ベース部と、前記ベース部から延出した引き紐部と、前記引き紐部と係合する被係合部を有する調整部と、を有し、
前記一対のシート材には、前記複数の閉鎖要素のうち隣接する2つの閉鎖要素によって挟まれた領域に、前記軸線方向から見て複数のスリットが設けられている。
【0008】
以上の閉鎖装置において、前記複数のスリットのうち少なくとも1つは、前記一対のシート材の前記軸線方向と交差する方向に延びていて良い。
【0009】
前記複数のスリットのうち、前記一対のシート材の前記軸線方向において隣接する2つのスリットが、V字の形状を成すように設けられていて良い。
【0010】
あるいは、前記複数のスリットのうち、前記一対のシート材の前記軸線方向において隣接する2つのスリットが、互いに平行に設けられていて良い。
【0011】
前記複数のスリットは、少なくとも3つのスリットを含み、
前記少なくとも3つのスリットは、前記軸線方向から見て互いに隣接し、当該軸線方向と交差する方向に延在していて良い。
【0012】
前記少なくとも3つのスリットのうち互いに隣接する2つは、前記一対のシート材の前記幅方向の位置が互いに異なっていて良い。
【0013】
また、前記V字の形状は、前記傷口の側に向かって閉じていて良い。
【0014】
あるいは、前記V字の形状は、前記傷口の側に向かって開いていても良い。
【0015】
以上の閉鎖装置において、各閉鎖要素は、
ベース部と、
前記ベース部から延出した引き紐部と、
前記引き紐部と係合する被係合部を有する調整部と、を有していて良い。
【0016】
前記複数の閉鎖要素は、2つで1つの閉鎖ユニットを構成し、
各閉鎖ユニットにおいて、
一方の閉鎖要素の前記ベース部と他方の閉鎖要素の前記調整部とが、前記一対のシート材のうちの一方に配置されており、
前記一方の閉鎖要素の前記調整部と前記他方の閉鎖要素の前記ベース部とが、前記一対のシート材のうちの他方に配置されていて良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、閉鎖対象の傷口の形状への追従性が高く、且つ、剥離時に分断しにくい閉鎖装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
以下に、添付の図面を参照して、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態による閉鎖装置100を示す概略斜視図である。また、
図2は、
図1の閉鎖装置100の概略平面図であり、
図3は、
図1の閉鎖装置100の概略側面図である。
【0021】
本実施の形態による閉鎖装置100は、樹脂製であり、手術時に形成された皮膚の切開創などの傷口を閉鎖(創閉鎖)するためのものである。この閉鎖装置100は、第1閉鎖要素2a及び第2閉鎖要素2bと、これら2つの閉鎖要素2a、2bを一体的に配置するための第1シート材41a及び第2シート材41bと、を備えている。本実施の形態では、第1シート材41a及び第2シート材41bは、サージカルテープである。
図1及び
図2に示すように、各シート材41a、41bは、共通の軸線方向daを有している。更に、各シート材41a、41bは、軸線方向daに直交する幅方向dbを有している。
【0022】
第1閉鎖要素2aは、第1ベース部10aと、この第1ベース部10aから一体的に延出した第1引き紐部20aと、第1引き紐部20aと係合可能な形状の第1被係合部31aを有する第1調整部30aと、を有している。第2閉鎖要素2bは、第2ベース部10bと、この第2ベース部10bから一体的に延出した第2引き紐部20bと、第2引き紐部20bと係合可能な形状の第2被係合部31bを有する第2調整部30bと、を有している。
【0023】
そして、第1閉鎖要素2aの第1ベース部10aと、第2閉鎖要素2bの第2調整部30bとは、第1シート材41aの上に一体的に配置されており、第1閉鎖要素2aの調整部30aと、第2閉鎖要素2bのベース部10bとは、第2シート材41bの上に一体的に配置されている。このように、本実施の形態では、2つの閉鎖要素2a、2bが1つの閉鎖ユニット101を構成し、この閉鎖ユニット101が各シート材41a、41bの軸線方向daに複数配置されている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態の第1閉鎖要素2a及び第2閉鎖要素2bは、互いに同一の構成を有している。このため、以下の説明において、各閉鎖要素2a、2bを特に区別しない場合には、当該閉鎖要素を符号2によって纏めて(a及びbの記号を付さずに)示すこととする。また、各閉鎖要素2a、2bの構成要素についても、第1閉鎖要素2aの構成要素と第2閉鎖要素2bの構成要素とを区別する場合には、符号の末尾に「a」(第1閉鎖要素に対応)または「b」(第2閉鎖要素に対応)の記号を付すが、特に区別しない場合には、これらの記号を付さずに数字のみで示すこととする。
【0025】
図4は、閉鎖要素2a、2bのうち、第1シート材41aの上に配置されている構成要素を示す、概略上面図である。また、
図5は、
図4の構成要素の概略正面図であり、
図6は、
図4のVI−VI線断面図である。
【0026】
図4乃至
図6に示すように、ベース部10は、上方から見て、四隅が丸められた略矩形の形状であり、皮膚側の面(
図4における奥側の面、
図5及び
図6における下面)に当該ベース部10をシート材41に接着するための接着部(不図示)が設けられている。
【0027】
ベース部10からは、当該ベース部10と一体的に形成された引き紐部20が延び出ており、その先端にはツマミ部21が形成されている。引き紐部20は、両側部に、当該引き紐部20の引張方向に対して鈍角を成す方向に突出した複数の係合部22を有している。これらの係合部22は、後述される被係合部31と係合することにより、ベース部10に対する調整部30の相対位置を規定するようになっている。更に、引き紐部20は、その引張方向に対して直交する方向に突出したストッパ部23と、当該引き紐部20の上面に形成され、ベース部10に向かう方向に所定の長さを有する隆起部24と、を有している。
図4に示すように、ストッパ部23と隆起部24とは、一体的に形成されている。
【0028】
次に、調整部30は、ベース部10と略同様の寸法を有する略矩形の平板32を有している。この平板32の皮膚側の面(
図4における奥側の面、
図5及び
図6における下面)には、ベース部10と同様に接着部(不図示)が設けられている。被係合部31は、平板32の上面に設けられている。
図4に示すように、この被係合部31は、引き紐部20を挟み込む一対の壁部33、34を有している。そして、一対の壁部33、34は、互いに対向する面のそれぞれに、引き紐部20の係合部22と係合可能な係合爪36、37が形成されている。
【0029】
一対の壁部33、34の上部(
図4における手前側の部位)には、調整部30に係合する引き紐部20の引張方向において進んだ位置(
図4における下方の位置)に、引き紐部20を覆う天壁38、39が設けられている。この天壁38、39と一対の壁部33、34とは、それらによって囲まれた空間を引き紐部20が通過可能であるように配置されている。これらの天壁38、39の離間距離dは、引き紐部20の隆起部24の幅よりも僅かに広いが、ストッパ部23の幅よりも狭く構成されている。このような構成によって、天壁38、39は、引き紐部20のストッパ部23と当接することにより、当該調整部30から引き紐部20が不所望に抜けることを防止する抜け止め部として、機能するようになっている。
【0030】
このような閉鎖装置100は、シート材41(サージカルテープ)の背面に設けられた接着層に汚れ等が付着しないよう、剥離紙42によって覆われている。
【0031】
図1及び
図2に戻って、本実施の形態の一対のシート材41a、41bには、隣接する2つの閉鎖要素2a、2bによって挟まれた領域の少なくとも1つに、軸線方向daから見て複数のスリット51、52が設けられている。より具体的には、各シート材41a、41bのうち、隣接する2つの閉鎖ユニット101によって挟まれた領域のすべてに軸線方向daから見て複数のスリットの列51、52が設けられている。複数のスリットの列51、52のそれぞれは、幅方向db整列された複数のスリット51a〜51d及び52a〜52dを含んでいる。なお、他の実施の形態では、スリットの列51、52がそれぞれ単一のスリットから構成されていても良い。
【0032】
本実施の形態の複数のスリットの列51a〜51d及び52a〜52dは、
図2に示すように、参照数字の末尾に同一のアルファベットが付された各2つのスリットは、互いに近位の端部が共にV字の頂点に位置するように形成されている。また、
図2に示すように、一方のスリットの列51の各スリット51a〜51dは互いに平行であり、他方のスリットの列52の各スリット52a〜52dも、互いに平行である。本実施の形態では、各スリット51a〜51d及び52a〜52dによって形成されるV字の形状が閉鎖対象の傷口が配置される側に向かって閉じるように形成されている。
【0033】
以上のようなV字の形状のスリットの存在によって、隣接する2つの閉鎖ユニット101が、複数のV字の形状の屈曲部53によって連結されることになる。これらの屈曲部53は、V字の形状に配置された各スリット51a〜51d及び52a〜52dによって区画されるシート材41a、41bの部分である。
図1及び
図2に示すように、本実施の形態による閉鎖装置100では、このような屈曲部53は、隣接する各2つの閉鎖ユニット101の間の領域すべてに設けられている。
【0034】
次に、本実施の形態の閉鎖装置100の作用について説明する。
【0035】
まず、閉鎖装置100は、必要に応じて、閉鎖対象の傷口を閉鎖するために必要十分な寸法(軸線方向daの長さ)となるようにカットされる。このカットは、例えば、隣接する2つの閉鎖ユニット101の間にて行われ得る。
【0036】
閉鎖装置100は、初期状態では、引き紐部20のストッパ部23が調整部30の天壁38、39の縁部に当接すると共に、隆起部24が天壁38,39の間に位置している。このような構成により、引き紐部20は、調整部30に対して引張方向とは逆方向に移動することが無いため、当該引き紐部20が調整部30から抜け落ちてしまうことが防止される。
【0037】
次に、シート材41の裏面を覆う剥離紙42が剥がされ、シート材41の裏面に形成された接着部が露出される。そして、第1シート材41aと第2シート材41bとが閉鎖対象の傷口を挟んで位置付けられるように、閉鎖装置100が皮膚上に貼付される。この貼付に先立ち、シート材41の接着部の皮膚に対する接着性を高めるために、貼付対象の皮膚の表面を予め清浄にし、乾燥させておくことが望ましい。
【0038】
また、傷口が湾曲している場合には、この傷口をより効果的に閉鎖させるために、第1シート材41a及び第2シート材41bを傷口に沿わせて湾曲させて皮膚上に貼付することが好ましい。上述したように、本実施の形態による閉鎖装置100は、隣接する2つの閉鎖ユニット101の間に複数のV字状の屈曲部53を有している。このため、屈曲部53を撓み変形させることにより、各閉鎖ユニット101が傷口の湾曲形状に追従させられながら、閉鎖装置100が傷口の湾曲形状に沿って配置される。このとき、屈曲部53は、V字の形状を有していることから、比較的大きな撓み変形にも耐えることができる。このため、閉鎖装置100を傷口の形状に沿わせて配置させる際に、閉鎖装置100が屈曲部53において不所望に破断してしまうことが無い。
【0039】
そして、第1閉鎖要素2aの第1引き紐部20aの第1ツマミ部21aと、第2閉鎖要素2bの第2引き紐部20bの第2ツマミ部21bと、が同時に引っ張られる。これにより、各引き紐部20が対応する被係合部31に対してそれぞれの引張方向に移動するため、傷口の周囲の生体組織には、実質的に均等な力が作用する。この引張の操作によって、ベース部10と調整部30とが、近接する。すなわち、第1及び第2シート材41a、41bによって、傷口が閉鎖されるように当該傷口の周囲の生体組織が移動される。この引張操作は、傷口が閉鎖されるために必要かつ十分な力が当該傷口の周囲の生体組織に作用するように行われる。
【0040】
引き紐部20が被係合部31に対して引張方向に移動する際には、当該引き紐部20の係合部22の凸部が、係合爪36、37を引張方向に撓み変形させながら当該係合爪36、37を通過する。その一方、係合爪36、37を超えて引張方向に移動した係合部22を引張方向とは逆方向に移動させようとすると、その凸部が係合爪36、37と干渉するため、引き紐部20の移動が規制される。これは、前述したように係合爪36、37が引張方向に向かって湾曲しているため、当該引張方向への湾曲変形は比較的容易である一方で、引張方向とは逆方向への湾曲変形は、事実上不可能であるためである。このようにして、引き紐部420は、移動が引張方向にのみ許容されるのである。
【0041】
このようなツマミ部21(引き紐部20)の引張操作が、閉鎖装置100全体にわたり行われる。これにより、閉鎖対象の傷口が完全に閉鎖される。そして、引き紐部20のうち引張操作によって係合爪36、37を超えて引き出された領域が、適宜の切断工具によって切除される。これにより、閉鎖装置100による傷口の閉鎖が完了する。
【0042】
このような閉鎖装置100は、屈曲部53の存在によって、傷口を閉鎖した状態において関節の屈伸などにより傷口周辺の生体組織が移動する際に、生体組織への良好な追従性を示す。
【0043】
そして、この閉鎖状態を一定期間維持することにより、傷口によって分断されていた生体組織が互いに接合し、当該傷口が治癒する。その後、シート材41が皮膚から除去される。この除去の際に、屈曲部53が適度に撓み変形することにより、隣接する2つの閉鎖ユニット101の間で閉鎖装置100が不所望に分断してしまうことが回避される。
【0044】
以上のような本実施の形態によれば、シート材41のうち、隣接する2つの閉鎖ユニット101によって挟まれた領域に軸線方向daから見て複数のスリット51、52が設けられている。このことにより、閉鎖対象の傷口の形状への追従性が高く、且つ、剥離時に分断しにくい閉鎖装置100を提供することができる。
【0045】
なお、閉鎖ユニット101内の2つの閉鎖要素2a、2bの間に、軸線方向daから見て複数のスリットが設けられていても良い。この場合にも、本実施の形態と同様の作用が提供され得る。
【0046】
また、複数のスリットの列51、52の各スリット51a〜51d、52a〜52dが、一対のシート材41a、41bの前記軸線方向daと交差する方向に延びている。より具体的には、各スリット51a〜51d、52a〜52dのうち、軸線方向daにおいて隣接する2つのスリットが、V字の形状を成すように設けられている。このことにより、隣接する2つの閉鎖ユニット101の間に柔軟性のある屈曲部53が構成されるため、閉鎖対象の傷口の形状への追従性を一層高めることができる。
【0047】
また、被係合部31は、引き紐部20を挟み込む一対の壁部33、34を有し、この一対の壁部33、34は、互いに対向する面にそれぞれ引き紐部20の係合部22と係合可能な係合爪36、37を有している。このため、一対の壁部33、34の間から引き紐部20を引き出すことによって、当該引き紐部20と調整部30との係合位置を容易に調整することができる。
【0048】
更に、引き紐部20は、その引張方向に対して直交する方向に突出したストッパ部23を有しており、調整部30の天壁38、39がこのストッパ部23に当接することにより、調整部30から引き紐部20が抜けることを防止するようになっている。このため、引き紐部20が不所望に調整部30から抜け落ちて創閉鎖の作業性が損なわれてしまうことが、効果的に回避される。
【0049】
また、隣接する2つの閉鎖要素2a、2bを閉鎖させるための各引き紐部20の引張方向が逆方向であることにより、傷口を均等に閉鎖することが容易な閉鎖装置100を提供することができる。
【0050】
以上の実施の形態では、各スリット51a〜51d、52a〜52dが傷口に向かって閉じたV字の形状となるようにシート材41に設けられていたが、このような態様には限定されない。以下に、上述した実施の形態による閉鎖装置100の変形例において採用が可能なスリットのパターンについて、例示する。なお、スリットのパターン以外の構成は、上述した実施の形態と同じであるため、以下の説明においては、スリットのパターンのみについて説明を行うこととする。
【0051】
(変形例1)
図7は、第1の変形例による閉鎖装置200に設けられるスリットの列251、252を示す概略平面図である。見やすさのため、
図7では、シート材241及びスリットの列251、252のみが図示されている。このような図示は、後述する
図8及び
図9においても同様である。
【0052】
図7に示すように、本変形例による閉鎖装置200でも、複数のスリットの列251、252がV字を成すようにシート材241に形成されている。しかしながら、当該V字が上述した閉鎖装置100とは逆向きになっている。すなわち、
図7に示すスリットの列251、252に含まれる各スリットは、V字の形状が閉鎖対象の傷口Aの側に向かって開くように各シート材241a、241bに形成されている。このため、本変形例では、隣接する2つの閉鎖ユニット201(不図示)の間に、第1の実施の形態とは逆向きの屈曲部253が形成されることになる。
【0053】
(変形例2)
次に、
図8は、第2の変形例による閉鎖装置300に設けられるスリットの列351〜353を示す概略平面図である。
【0054】
本変形例では、複数のスリットの列351〜353が各シート材341a、341bの幅方向dbと平行に形成されている点で、上述した実施の形態及び第1の変形例とは異なっている。各スリットの列351〜353は、シート材341の幅方向に形成された複数のスリット(
図8における黒の実線部分に対応)を含んでいる。これら複数のスリットは、シート材341a、341bの幅方向dbにおいて、両端部を除き互いに同一の長さを有している。
【0055】
更に、隣接する2つのスリットの列351及び352は、シート材341の幅方向における位相が互いに異なっており、隣接する2つのスリットの列352及び353も、シート材341の幅方向における位相が異なっている。本実施の形態では、スリット351とスリット352、及び、スリット352とスリット353は、互いに半波長ずつ位相がずれている。このような構成によって、隣接する2つの閉鎖ユニット301の間に、いわゆる網飾り状に延伸可能な可撓部354が形成されている。本変形例による閉鎖装置300を用いて創閉鎖を行う場合、この可撓部354が自在に延伸させられることにより、傷口の形状に良好に追従しつつ、閉鎖装置300が皮膚に貼付されることになる。
【0056】
(変形例3)
次に、
図9は、第3の変形例による閉鎖装置400に設けられるスリットの列451〜453を示す概略平面図である。これらのスリット451〜453は、
図8に示す閉鎖装置300の各スリットを、それぞれ、幅方向dbに沿って約2倍に延長したものである。したがって、閉鎖装置400において形成される可撓部454は、上述した第2の変形例の可撓部354よりも目の粗いものとなる。その他の構成は、第3の実施の形態と同様である。
【0057】
以上の各閉鎖装置100〜400について、貼付時及び剥離時の切れにくさに関する評価を行った結果が、
図10に示す図表に一覧で示されている。表中の「◎」、「○」、「△」及び「×」の各記号は、切れにくさの程度を表している。「◎」は余裕をもって切れなかったことを、「○」は「◎」ほどの余裕はないが切れなかったことを、「△」は部分的に切れてしまうスリットの列があったことを、「×」は容易に切れてしまったことを、それぞれ表している。なお、従来品とは、隣接する2つの閉鎖ユニットの間に単一のミシン目の列が幅方向dbに形成された閉鎖装置である。
【0058】
図10の図表から理解されるように、従来の閉鎖装置と比較すると、いずれの閉鎖装置100〜400も、閉鎖対象の傷口の形状への追従性を有し、且つ、剥離時に分断しにくいという特性を有することが示された。とりわけ、隣接する2つの閉鎖ユニットの間にV字の形状となるスリットを有する閉鎖装置100、200では、貼付時の追従性及び剥離時の切れにくさが特に良好であった。
【0059】
なお、いずれの閉鎖装置においても、各スリットが一対のシート材の幅方向の縁部には形成されないことが好ましい。この場合、当該縁部において応力集中が発生することを回避し、貼付時及び/または剥離時において閉鎖装置をより切れにくくすることができる。