(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。
【0016】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0017】
図1に示すように、各発電単位102のZ方向回りの外周の4つの角部には、上下方向に貫通する孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。各ボルト孔109には導電性を有するボルト22が挿入されており、各ボルト22によって燃料電池スタック100は締結されている。燃料電池スタック100の締結のための構成については、後に詳述する。ボルト22は、特許請求の範囲における締結部材に相当する。
【0018】
また、
図1から
図3に示すように、各発電単位102のZ方向回りの外周辺の中点付近には、各発電単位102を上下方向に貫通する孔が形成されており、各発電単位102に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、複数の発電単位102にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために各発電単位102に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0019】
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置する連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置する連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0020】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置する連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置する連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0021】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
図2および
図3に示すように、下側のエンドプレート106には、4つの流路用貫通孔107が形成されている。4つの流路用貫通孔107は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0022】
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、下側のエンドプレート106に形成された流路用貫通孔107を介して、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、下側のエンドプレート106に形成された流路用貫通孔107を介して、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、下側のエンドプレート106に形成された流路用貫通孔107を介して、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、下側のエンドプレート106に形成された流路用貫通孔107を介して、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。なお、各ガス通路部材27とエンドプレート106の表面との間には、絶縁シート26が介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0023】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図4および
図5に示すように、各発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述した各ボルト孔109に対応する孔と、各マニホールド161,162,171,172を構成する連通孔108に対応する孔と、が形成されている。
【0024】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。
【0025】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0026】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0027】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
【0028】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0029】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0030】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0031】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。また、空気極側集電体134とインターコネクタ150との一体部材は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
【0032】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0033】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0034】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、
図3および
図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0035】
A−3.燃料電池スタック100の締結のための構成:
図6は、燃料電池スタック100の締結のための構成を示す説明図である。
図6には、
図1のVI−VIの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されている。上述したように、燃料電池スタック100は、複数のボルト22によって締結されている。
図6に示すように、ボルト22は、軸部226と、軸部226の一方(本実施形態では上側)の端部に形成されたフランジ部228とを備えている。軸部226とフランジ部228とは、一体の部材である。フランジ部228は、径(軸部226の軸方向に直交する方向の寸法)が軸部226より大きい部分であり、座面229を有している。座面229は、フランジ部228における軸部226の軸方向に直交する表面の内、軸部226側の表面である。ボルト22の軸部226におけるフランジ部228とは反対側の端部には、ねじ部224が形成されている。ねじ部224の外周面には、おねじが形成されている。
【0036】
ボルト孔109は、各発電単位102に形成された貫通孔と、上側のエンドプレート104に形成された貫通孔とから構成されている。また、下側のエンドプレート106には、ボルト孔109に連通するねじ孔103が形成されている。ねじ孔103は、下側のエンドプレート106を上下方向に貫通しており、その内周面にめねじが形成されている。ボルト孔109およびねじ孔103は、特許請求の範囲における貫通孔に相当する。
【0037】
ボルト22は、ボルト孔109に挿入されており、ボルト22の軸部226に形成されたねじ部224は、下側のエンドプレート106に形成されたねじ孔103に螺合している。この状態において、ボルト22の軸部226は、上下方向(Z軸方向)に延びる姿勢となっている。また、フランジ部228は、軸部226に対して上側(Z軸正方向側)に位置しており、フランジ部228の座面229は、上側のエンドプレート104の上側の表面に接している。
【0038】
また、
図2および
図3に示すように、上側のエンドプレート104の下面と最上段の発電単位102(インターコネクタ150の上面)との間には、絶縁シート210が介在している。絶縁シート210には、ボルト孔109を構成する孔212が形成されている。絶縁シート210に形成された孔212の径は、各発電単位102に形成された貫通孔の径と略同一である。また、下側のエンドプレート106の上面と最下段の発電単位102(インターコネクタ150の下面)との間には、絶縁シート220が介在している。絶縁シート220には、ボルト孔109に連通する孔222が形成されている。絶縁シート220に形成された孔222の径は、各発電単位102に形成された貫通孔の径より小さい。絶縁シート210,220は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。このため、本実施形態では、一対のエンドプレート104,106は、ボルト22に電気的に接続されるが、各発電単位102におけるセパレータ120と燃料極側フレーム140とインターコネクタ150とは、ボルト22に電気的に接続されない。一対のエンドプレート104,106と、セパレータ120と燃料極側フレーム140とインターコネクタ150とは、特許請求の範囲における導電性部材に相当し、セパレータ120と燃料極側フレーム140とインターコネクタ150とは、特許請求の範囲における非接続導電性部材に相当する。
【0039】
A−4.非接続導電性部材とボルト22との絶縁のための構成:
図7は、
図6におけるボルト22のフランジ部228の周辺部分を拡大して示す説明図である。
図6および
図7に示すように、燃料電池スタック100は、さらに、絶縁性を有する保護管300を備える。保護管300は、例えばアルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素等の絶縁材料により形成されている。保護管300は、複数の非接続導電性部材(セパレータ120、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150)に形成されたボルト孔109(ボルト孔109を構成する各非接続導電性部材に形成された貫通孔の内壁)とボルト22との間に配置されている。具体的には、保護管300は、ボルト22の軸部226の軸周りの外周を囲むとともに、複数の非接続導電性部材のうち、上端に位置する第1の非接続導電性部材(
図6における上から1番目の発電単位102の上側のインターコネクタ150)から、下端に位置する第2の非接続導電性部材(
図6における上から7番目の発電単位102の下側のインターコネクタ150)まで延びている。より具体的には、保護管300は、略円筒状の部材であり、複数の非接続導電性部材(セパレータ120、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150)に形成されたボルト孔109内に挿入されている。保護管300内には、ボルト22の軸部226が挿入されている。換言すれば、保護管300は、ボルト22の軸部226の全周を囲むように配置されている。また、保護管300の厚さは、保護管300の軸周りの全周にわたって略均一であることが好ましい。また、保護管300の厚さは、保護管300の全長にわたって略均一であることが好ましい。また、保護管300の厚さは、ボルト22と非接続導電性部材に形成されたボルト孔109の内壁との間の面方向の距離に対して、1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。保護管300は、特許請求の範囲における筒状部材に相当する。
【0040】
また、上下方向(Z軸方向)に垂直な面方向(XY平面方向)において、保護管300と、複数の非導電性部材(セパレータ120、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150)に形成されたボルト孔109の内壁との間には、第1の隙間S1が形成されている。具体的には、
図7に示すように、保護管300の外径D3は、ボルト孔109の径D4より小さい。また、面方向において、保護管300とボルト22の軸部226との間に、第2の隙間S2が形成されている。具体的には、
図7に示すように、保護管300の内径D2は、ボルト22の軸部226の外径(最大外径)D1より大きい。なお、第1の隙間S1および第2の隙間S2は、少なくとも燃料電池スタック100の運転前において形成されていればよい。
【0041】
また、保護管300の上端および下端のうちの少なくとも一方は、上下方向(Z軸方向)において、燃料電池スタック100を構成する部材から離間している。具体的には、
図6および
図7に示すように、上側のエンドプレート104に形成され、かつ、ボルト孔109を構成する孔105は、第1の孔部105Aと、第2の孔部105Bとを有する。第1の孔部105Aは、エンドプレート104の発電単位102側の表面(下面)に開口している。第1の孔部105Aの径D4は、保護管300の外径D3より大きい。本実施形態では、第1の孔部105Aの径D4は、非接続導電性部材に形成されたボルト孔109の径と略同一である。第1の孔部105Aと第2の孔部105Bとの間には、段差面105Cが形成されている。
図6に示すように、上側のエンドプレート104における段差面105Cと絶縁シート220の上面との上下方向の距離L2は、保護管300の全長L1より長い。
図6では、保護管300の下端は、絶縁シート220の上面のうちの孔222の周囲部分に接触し、保護管300の上端が上側のエンドプレート104における段差面105Cから離間した状態が示されている。このように、保護管300の下端と下側のエンドプレート106との間に絶縁シート220が介在することにより、保護管300と下側のエンドプレート106とが直接接触する構成に比べて、燃料電池スタック100の耐電圧が向上する。
【0042】
また、
図6の状態のとき、保護管300の上端は、最上段の非接続導電性部材(1番目の発電単位102の上側のインターコネクタ150の上面)より上側に位置していることが好ましい。換言すれば、保護管300の全長L1は、上側のエンドプレート104と下側のエンドプレート106との間に挟まれた複数の発電単位102の上下方向の合計長さL3より長い。これにより、例えば、保護管300と発電単位102との熱膨張差によって、発電単位102が保護管300に対して相対的に膨張しても、非接続導電性部材とボルト22との短絡を、より確実に抑制することができる。また、保護管300は、ボルト孔109内において固定されておらず、上下方向および面方向に変位可能に配置されている。なお、保護管300と燃料電池スタック100を構成する部材との間の上下方向の隙間は、少なくとも燃料電池スタック100の運転前において形成されていればよい。
【0043】
なお、
図6には、1つのボルト孔109の位置における燃料電池スタック100の断面が示されているが、他の3つのボルト孔109の位置における燃料電池スタック100の断面も同様の構成である。そのため、下側のエンドプレート106には、合計4つのねじ孔103が形成されており、各ねじ孔103にボルト22のねじ部224が螺合していることとなる。各ねじ孔103に螺合した各ボルト22によって、燃料電池スタック100が締結される。また、燃料電池スタック100に形成された4つのボルト孔109のそれぞれに、上述した保護管300が配置されている。
【0044】
A−5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、複数の非接続導電性部材(セパレータ120、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150)に形成された貫通孔(ボルト孔109)とボルト22との間には、絶縁性を有する保護管300が配置されている。この保護管300は、ボルト22の軸周りの外周を囲むとともに、上端に位置する第1の非接続導電性部材から、下端に位置する第2の非接続導電性部材まで延びている。すなわち、複数の非接続導電性部材とボルト22との間には、保護管300が介在する。これにより、非接続導電性部材に形成された貫通孔と締結部材との間に何ら部材が介在しない構成に比べて、非接続導電性部材とボルト22とが短絡することを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、面方向において、保護管300と、複数の非導電性部材に形成されたボルト孔109の内壁との間には、第1の隙間S1が形成されている。これにより、該ボルト孔109と保護管300との間に隙間が形成されていない構成に比べて、非接続導電性部材と保護管300との熱膨張差に起因する面方向の熱応力が保護管300に生じることが抑制され、その結果、例えば、保護管300の割れ等を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、面方向において、保護管300とボルト22の軸部226との間に、第2の隙間S2が形成されている。これにより、保護管300とボルト22との間に隙間が形成されていない構成に比べて、保護管300とボルト22との熱膨張差に起因する面方向の熱応力が保護管300に生じることが抑制され、その結果、例えば、保護管300の割れ等を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、保護管300の上端および下端のうちの少なくとも一方は、上下方向(Z軸方向)において、燃料電池スタック100を構成する部材から離間している。すなわち、保護管300は、ボルト孔109内において上下方向に変位可能である。これにより、保護管300における上下方向の両端が、上下方向において、燃料電池スタック100を構成する部材に接触している構成に比べて、導電性部材と保護管300との熱膨張差に起因する上下方向の熱応力が保護管300に生じることが抑制され、その結果、例えば、保護管300の割れ等を抑制することができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
上記実施形態における単セル110または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、ボルト22の軸部226の下側端部が下側のエンドプレート106を貫いて下方に突出し、その突出した下側端部に形成されたねじ部224にナットが螺合しているとしてもよい。また、上記実施形態において、ボルト22の軸部226の上側端部の外周面におねじが形成され、上側のエンドプレート104に形成された貫通孔の内周面にめねじが形成されており、ボルト22の軸部226の上側端部が上側のエンドプレート104に形成された貫通孔に螺合しているとしてもよい。また、上記実施形態において、絶縁シート210を備えておらず、代わりに、ボルト22の座面229と上側のエンドプレート104との間に、絶縁シートが配置されているとしてもよい。この場合、インターコネクタ150等に加えて、上側のエンドプレート104も、特許請求の範囲における非接続導電性部材に相当する。
【0049】
また、上記実施形態において、保護管300は、略円筒状に限らず、例えば略角筒状などでもよい。また、上記実施形態において、保護管300は、筒状であればよい。このような構成でも、非接続導電性部材とボルト22との短絡を抑制することができる。
【0050】
また、上記実施形態で、上述の第1の隙間S1は、保護管300の軸周りの全周にわたって形成されている必要は無く、第1の隙間S1が保護管300の軸周りの一部に形成されることにより、保護管300がボルト孔109内において非導電性部材に対して面方向に変位可能であればよい。また、上記実施形態において、保護管300と非導電性部材に形成されたボルト孔109の内壁との間に、第1の隙間S1が形成されていないとしてもよい。また、上記実施形態で、上述の第2の隙間S2は、保護管300の軸周りの全周にわたって形成されている必要は無く、第2の隙間S2が保護管300の軸周りの一部に形成されることにより、保護管300がボルト孔109内においてボルト22に対して面方向に変位可能であればよい。また、上記実施形態において、保護管300と非導電性部材に形成されたボルト孔109の内壁との間に、第2の隙間S2が形成されていないとしてもよい。また、保護管300における上下方向(Z軸方向)の両端が、上下方向において、燃料電池スタック100を構成する部材に接触しているとしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に形成された全てのボルト孔109に保護管300が配置された構成が採用される必要はなく、少なくとも1つのボルト孔109に保護管300が配置された構成が採用されればよい。
【0052】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、電解セルスタックに形成された貫通孔と締結部材との間に筒状部材を配置すれば、導電性部材と締結部材との短絡を抑制することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。