特許第6873946号(P6873946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873946
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】角膜内皮細胞マーカー
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20210510BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20210510BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   C07K14/705ZNA
   C12N15/12
   !C07K16/28
【請求項の数】2
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2018-114955(P2018-114955)
(22)【出願日】2018年6月15日
(62)【分割の表示】特願2015-529637(P2015-529637)の分割
【原出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-158937(P2018-158937A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年6月15日
【審判番号】不服2020-2220(P2020-2220/J1)
【審判請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-157597(P2013-157597)
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】518192482
【氏名又は名称】アクチュアライズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518200916
【氏名又は名称】コーニアジェン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CorneaGen Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】小泉 範子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直毅
(72)【発明者】
【氏名】平野 浩惇
(72)【発明者】
【氏名】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】上野 盛夫
【合議体】
【審判長】 森井 隆信
【審判官】 中島 庸子
【審判官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 Human and Mouse CD Marker Handbook,BD Bioscience,2011年11月25日,pp.1−46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12N15/00-15/90, C12Q1/68,C12N5/00-5/28
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)CD166のタンパク質:ならびに
(B)CD73のタンパク質
から選択される少なくとも1つを、角膜内皮細胞を培養して得られた培養細胞が正常細胞であるか、または線維芽細胞様の形質転換細胞であるかを識別するための指標とする方法。
【請求項2】
前記指標は、CD166のタンパク質とCD73のタンパク質とを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞、特に眼科領域の分化状態のマーカー、特に角膜内皮細胞マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
視覚情報は、眼球の最前面の透明な組織である角膜から取り入れられた光が、網膜に達して網膜の神経細胞を興奮させ、発生した電気信号が視神経を経由して大脳の視覚野に伝達することで認識される。良好な視力を得るためには、角膜が透明であることが必要である。角膜の透明性は、角膜内皮細胞のポンプ機能およびバリア機能により、含水率が一定に保たれることにより保持される。
【0003】
角膜は眼球の前方に位置し、主に角膜上皮細胞層、角膜実質層、角膜内皮細胞層の3層構造を持った透明な組織である。角膜内皮細胞層は角膜深層部に存在する単層の細胞層であり、バリア機能とポンプ機能を持ち、角膜の水分量を一定に保つことで角膜の透明性を維持する役割を果たしている。また、障害を受けても生体内で増殖しないことが知られており、角膜内皮細胞が外傷や疾患等によって障害されて細胞数が減少することで、重篤な視覚障害が生じることが知られている。
【0004】
ヒトの角膜内皮細胞は、出生時には1平方ミリメートル当たり約3000個の密度で存在しているが、一度障害を受けると再生する能力を持たない。角膜内皮変性症や種々の原因による角膜内皮の機能不全によって生じる水疱性角膜症では、角膜が浮腫と混濁を生じ、著しい視力低下をきたす。現在、水疱性角膜症に対しては、角膜の上皮、実質および内皮の3層構造のすべてを移植する全層角膜移植術が行われている。しかし、日本での角膜提供は不足しており、角膜移植の待機患者約2600人に対し、年間に国内ドナー角膜を用いて行われている角膜移植件数は1700件程度である。
【0005】
近年、拒絶反応や術後合併症のリスクを軽減し、よりよい視機能を得る目的から、障害を受けた組織のみを移植する「パーツ移植」の考えが注目されている。角膜移植の中でも、実質組織の移植である深層表層角膜移植術、角膜内皮組織の移植であるデスメ膜角膜内皮移植術(Descemet's Stripping Automated Endothelial Keratoplasty)などが行われるようになっている。また、生体外で培養した角膜上皮や口腔粘膜を角膜上皮の代わりに移植する培養粘膜上皮移植術は既に臨床応用されており、同様に生体外で培養した角膜内皮を移植する方法も検討されている。
【0006】
角膜内皮細胞を再生して利用する手法が検討されているが、再生した角膜内皮細胞を識別するマーカーはあまり存在しない。
【0007】
特許文献1は、角膜内皮細胞マーカーの記載はあるが、本発明のものとは異なる。特許文献2は、角膜内皮細胞マーカーを開示するがいずれも表面抗原ではない。特許文献3は、角膜内皮細胞を識別することを開示するが、使用しているマーカーは神経堤マーカーである。
【0008】
非特許文献1では、角膜内皮細胞特異的細胞表面マーカーの同定の記載はあるが、具体的な開示はなされていない。非特許文献2は、角膜内皮細胞マーカーを開示するが表面抗原ではない。非特許文献3は、上皮細胞または内皮細胞マーカーの記載はあるが、角膜内皮細胞に関する具体的な記載はなされていない。非特許文献4は角膜実質細胞に関するマーカーを記載する文献であり角膜内皮細胞に関する記載はない。非特許文献5は、角膜内皮細胞マーカーを開示するがいずれも表面抗原ではない。非特許文献6は角膜内皮細胞マーカーを開示するがいずれも表面抗原ではない。非特許文献7は角膜内皮細胞マーカーを開示するがいずれも表面抗原ではない。非特許文献8は角膜内皮細胞マーカーを開示するが具体的な開示はなされていない。非特許文献9は角膜内皮細胞マーカーを開示するがいずれも表面抗原ではない。
【0009】
このように、角膜内皮の形質転換について正常かどうかを判断するための表面分子の実態は明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2013/086236号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2013/051722号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2013/012087号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】再生医療:Vol.9, 増刊号,Page.283 (2010.02.05)
【非特許文献2】日本角膜学会総会・日本角膜移植学会プログラム・抄録集:Vol.35th-27th,Page.75 (2011)
【非特許文献3】Am J Pathol. 2011 Feb;178(2)572-9.
【非特許文献4】Cytotherapy.2007;9(3):252-8
【非特許文献5】日本眼科学会雑誌 Vol.117, 臨時増刊号, Page.378 (2013.03.04)
【非特許文献6】Kunzevitzky, NJ, et al. ARVO E-Abstract1698, Poster Board Number: D0333, 2013
【非特許文献7】Mehta JS, et al. ARVO E-Abstract 2198,2013
【非特許文献8】再生医療 Vol.10, 増刊号, Page.201 (2011.02.01)
【非特許文献9】日本眼科学会雑誌 Vol.105, 臨時増刊号, Page.195 (2001.03.15)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、角膜細胞、特に角膜内皮細胞の正常細胞と形質転換細胞とを識別するマーカーを提供する。したがって、本発明は、以下をも提供する。
(1) CD166、HLA−A2、CD66a、CD66c、CD66d、CD66e、CD98、CD59、CD54、CD340、CD47、EGF−R、CD29、CD74、CD165、CD221、CD49a、SSEA−4、CD130およびCD49fからなる群より選択される遺伝子の核酸および/または該核酸によってコードされるタンパク質を含む正常角膜内皮細胞マーカー:ならびに
CD26、CD9、CD49b、CD49e、CD13、CD99、CD105、CD63、CD58、CD201、CD56、CD44、CD55、CD71、CD73、CD91、HLA−DQ、CD164、CD49d、CD49c、CD90、MICA/B、CD46、CD140b、CD146、CD147、CD81、CD151、CD200およびCD10なる群より選択される遺伝子の核酸および/または該核酸によってコードされるタンパク質を含む形質転換角膜内皮細胞マーカー
から選択される少なくとも1つを含む、角膜内皮細胞の正常細胞・形質転換細胞を識別するためのマーカー。
(2)前記マーカーは、細胞表面マーカーである、項目1に記載のマーカー。
(3)前記マーカーは、少なくとも1つの形質転換角膜内皮細胞マーカーと少なくとも1つの正常角膜内皮細胞マーカーとを含む、項目1または2に記載のマーカー。
(4)前記マーカーは正常角膜内皮細胞マーカーとしてCD98、CD166、およびCD340からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載のマーカー。
(5)前記マーカーは形質転換角膜内皮細胞マーカーとしてCD9、CD49e、CD44、およびCD73からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含む、項目1〜4のいずれか1項に記載のマーカー。
(6)前記マーカーは正常角膜内皮細胞マーカーとしてCD98、CD166、およびCD340からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含み、形質転換角膜内皮細胞マーカーとしてCD9、CD49e、CD44、およびCD73からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含む、項目1〜5のいずれか1項に記載のマーカー。
(7)前記マーカーは、CD166およびCD73からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーを含む、項目1〜6のいずれか1項に記載のマーカー。
(8)項目1〜7のいずれか1項に記載のマーカーに結合する物質を含む、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別するための検出剤。
(9)項目1〜7のいずれか1項に記載のマーカーを、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別する指標とする方法。
(10) a)角膜内皮細胞を含む試料を提供する工程;および
b)該サンプルにおいて、項目1〜7のいずれか1項に記載のマーカーを指標として、正常角膜内皮細胞の割合を上昇させる工程
を含む、正常角膜内皮細胞の割合が上昇した角膜内皮細胞試料を調製するための方法。
(11)項目1〜7のいずれか1項に記載のマーカーまたは該マーカーに結合する物質を含む、角膜内皮細胞を含む試料を作製する際の純度検定剤。
(12)項目1〜7のいずれか1項に記載のマーカーを、角膜内皮細胞を含む試料を作製する際の純度検定の指標とする方法。
(13)純化された角膜内皮細胞を調製するための方法であって、該方法は:
未分化細胞から角膜内皮細胞を誘導する工程:および
項目1〜7のいずれか1項に記載のマーカーを指標として、該角膜内皮細胞の割合を上昇させる工程を包含する、方法。
(14)前記未分化細胞は、誘導性多能性幹(iPS)細胞または胚性幹(ES)細胞である、項目13に記載の方法。
(15)項目10または13に記載の方法で調製された細胞を含む組成物。
(16)角膜治療のための、項目15に記載の組成物。
(17)前記角膜治療の対象は角膜内皮疾患を含む、項目16に記載の組成物。
【0013】
あるいは、本発明は以下を提供し得る。
(A1) CD166、HLA−A2、CD66a、CD66c、CD66d、CD66e、CD98、CD59、CD54、CD340、CD47、EGF−R、CD29、CD74、CD165、CD221、CD49a、SSEA−4、CD130およびCD49fからなる群より選択される遺伝子の核酸および/または該核酸によってコードされるタンパク質を含む正常角膜内皮細胞マーカー:ならびに
CD26、CD9、CD49b、CD49e、CD13、CD99、CD105、CD63、CD58、CD201、CD56、CD44、CD55、CD71、CD73、CD91、HLA−DQ、CD164、CD49d、CD49c、CD90、MICA/B、CD46、CD140b、CD146、CD147、CD81、CD151、CD200およびCD10なる群より選択される遺伝子の核酸および/または該核酸によってコードされるタンパク質を含む形質転換角膜内皮細胞マーカー
から選択される少なくとも1つを含む、角膜内皮細胞の正常細胞・形質転換細胞を識別するためのマーカー。
(A2)前記マーカーは、細胞表面マーカーである、項目A1に記載のマーカー。
(A3)前記マーカーは、少なくとも1つの形質転換角膜内皮細胞マーカーと少なくとも1つの正常角膜内皮細胞マーカーとを含む、項目A1またはA2に記載のマーカー。
(A4)前記マーカーは正常角膜内皮細胞マーカーとしてCD98、CD166、およびCD340からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含む、項目A1〜A3のいずれか1項に記載のマーカー。
(A5)前記マーカーは形質転換角膜内皮細胞マーカーとしてCD9、CD49e、CD44、およびCD73からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含む、項目A1〜A4のいずれか1項に記載のマーカー。
(A6)前記マーカーは正常角膜内皮細胞マーカーとしてCD98、CD166、およびCD340からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含み、形質転換角膜内皮細胞マーカーとしてCD9、CD49e、CD44、およびCD73からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含む、項目A1〜A5のいずれか1項に記載のマーカー。
(A7)前記マーカーは、CD166およびCD73からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーを含む、項目A1〜A6のいずれか1項に記載のマーカー。
(A8)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーに結合する物質を含む、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別するための検出剤。
(A9)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーに結合する物質を含む、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別するための診断剤。
(A10)前記角膜内皮細胞は、生体内に存在する細胞である、項目A9に記載の診断剤。
(A11)前記診断は、角膜内皮疾患の診断を含む、項目A9またはA10に記載の診断剤。
(A12)前記角膜内皮疾患は、線維芽細胞に関連する疾患である、項目A11に記載の診断剤。
(A13)前記角膜内皮疾患は、水疱性角膜症、外傷または内眼手術に起因する角膜内皮障害、ならびにFuchs角膜内皮ジストロフィおよび後部多形性角膜内皮ジストロフィを含む角膜ジストロフィからなる群より選択される、項目A11またはA12に記載の診断剤。
(A14)前記形質転換角膜内皮細胞マーカーが少なくとも1つ発現した場合、形質転換角膜内皮細胞が含まれると判断される、項目A9〜A13のいずれか1項に記載の診断剤。
(A15)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーに結合する物質を含む、角膜内皮細胞の診断剤であって、前記形質転換角膜内皮細胞マーカーが少なくとも1つ発現した場合、該角膜内皮細胞に不可逆性の変性を来していると診断される、診断剤。
(A16)前記結合する物質を染色するための薬剤をさらに含む、項目A9〜A15のいずれか1項に記載の診断剤。
(A17)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーを、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別する指標とする方法。
(A18) a)角膜内皮細胞を含む試料を提供する工程;および
b)該サンプルにおいて、項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーを指標として、正常角膜内皮細胞の割合を上昇させる工程
を含む、正常角膜内皮細胞の割合が上昇した角膜内皮細胞試料を調製するための方法。
(A19)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーまたは該マーカーに結合する物質を含む、角膜内皮細胞を含む試料を作製する際の純度検定剤。
(A20)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーを、角膜内皮細胞を含む試料を作製する際の純度検定の指標とする方法。
(A21)純化された角膜内皮細胞を調製するための方法であって、該方法は:
未分化細胞から角膜内皮細胞を誘導する工程:および
項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーを指標として、該角膜内皮細胞の割合を上昇させる工程を包含する、方法。
(A22)前記未分化細胞は、誘導性多能性幹(iPS)細胞または胚性幹(ES)細胞である、項目A21に記載の方法。
(A23)項目A18〜A22のいずれか1項に記載の方法で調製された細胞を含む組成物。
(A24)角膜治療のための、項目A23に記載の組成物。
(A25)前記角膜治療の対象は角膜内皮疾患を含む、項目A24に記載の組成物。
(B8)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーに結合する物質を、角膜内皮細胞を含むサンプルに適用する工程、および該物質と該角膜内皮細胞との結合を検出する工程を含む、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別するための検出方法。
(B9)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーに結合する物質を、角膜内皮細胞を含むサンプルに適用する工程、および該物質と該細胞との結合を検出する工程を含む、該角膜内皮細胞の診断方法であって、該結合の有無を判断することによって正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とが識別される、方法。
(B10)前記角膜内皮細胞は、生体内に存在する細胞である、項目B9に記載の方法。
(B11)前記診断は、角膜内皮疾患の診断を含む、項目B9またはB10に記載の方法。
(B12)前記角膜内皮疾患は、線維芽細胞に関連する疾患である、項目B11に記載の方法。
(B13)前記角膜内皮疾患は、水疱性角膜症、外傷または内眼手術に起因する角膜内皮障害、ならびにFuchs角膜内皮ジストロフィおよび後部多形性角膜内皮ジストロフィを含む角膜ジストロフィからなる群より選択される、項目B11またはB12に記載の方法。
(B14)前記形質転換角膜内皮細胞マーカーが少なくとも1つ発現した場合、形質転換角膜内皮細胞が含まれると判断される、項目B9〜B13のいずれか1項に記載の診断剤。
(B15)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーに結合する物質を、角膜内皮細胞を含むサンプルに適用する工程、および該物質と該細胞との結合を検出する工程を含む、角膜内皮細胞の診断方法であって、前記形質転換角膜内皮細胞マーカーが少なくとも1つ発現した場合、該角膜内皮細胞に不可逆性の変性を来していると診断される、方法。
(B16)前記マーカーに結合する物質は前記結合する物質を染色するための薬剤をさらに含む、項目B9〜B15のいずれか1項に記載の方法。
(B19)項目A1〜A7のいずれか1項に記載のマーカーに結合する物質を、角膜内皮細胞を含むサンプルに適用する工程、および該物質と該細胞との結合を検出する工程を含む、角膜内皮細胞を含む試料を作製する際の純度を検定する方法であって、該結合の有無を判断することによって正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とが識別される、方法。
(B23)項目A18〜A22のいずれか1項に記載の方法で調製された細胞を用いる、治療または予防方法。
(B24)前記治療または予防は角膜のためのものである、項目B23に記載の方法。
(B25)前記治療または予防の対象は角膜内皮疾患を含む、項目B24に記載の組成物。
【0014】
さらに別の局面において、本発明は、本発明の検出剤、マーカー等を用いた診断剤、検出キット、診断キット、検出システム、診断システム等を提供する。
【0015】
さらに別の局面において、本発明は、本発明の医薬組成物、治療剤または進行予防剤を用いた治療方法、予防方法、使用等を提供する。
【0016】
本発明において、上述の特徴は、1または複数をさらに組み合わせて用いることができることが理解される。
【0017】
本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、角膜内皮細胞に存在する細胞の分化能を識別することができ、機能が高い細胞を識別することができ、その結果従来不可能または困難であった、角膜内皮の疾患や障害を治療または予防することができる。また、細胞を含む試料を作製する際の純度検定の方法、角膜内皮細胞の純化方法、純化された角膜内皮細胞を調製するための方法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、培養角膜内皮細胞生産への解決課題に関する図である。角膜内皮不全の新たな治療を樹立することを目的として、サルおよびウサギモデルにおいて、培養角膜内皮細胞の移植のための新たな外科手順を樹立した。従来は、タイプIコラーゲンシート上でサル内皮細胞を培養し、これを角膜内皮不全サルモデルに培養した角膜内皮シートを移植するあるいは細胞懸濁液として前房内に注入して移植するといったことがなされている。図中、上段では、左からドナー角膜からヒト角膜内皮細胞の分離、および培養を行い、これを移植するというフロー模式図が記載されている。左下の写真は正常の形態に培養した角膜内皮を示し、右下は培養により形質転換を生じた細胞を示す。
図2図2は、培養サル角膜内皮細胞における位相差顕微鏡像を示す。左側に示す正常角膜内皮細胞は、六角形を主とする多角形細胞から成る様子が示されている。それに対し、右側に示す、線維芽細胞様に形質転換を起こしている細胞では細胞は多角形ではなく、細長い線維芽細胞様の形状をしている。
図3図3は培養サル角膜内皮細胞における候補マーカーのフローサイトメトリー解析結果を示す。左は正常細胞、右は形質転換細胞を示す。また、上段はCD166、下段はCD73を示す。この結果から、CD166は正常細胞で高発現、CD73は形質転換細胞で高発現となっていることが明確に確認される。
図4図4は、培養サル角膜内皮細胞における候補マーカーのPCR解析結果を示す。上からCD166、CD73、およびコントロールとしてのGAPDHであり、左の列が正常細胞、右の列が形質転換細胞である。この結果から、特に、CD166は正常細胞で高発現、CD73は形質転換細胞で高発現となっていることが明確に確認される。これはフローサイトメトリーによる解析結果と一致している。
図5図5は、培養サル角膜内皮細胞における候補マーカーの免疫染色像を示す。左からCD166、CD73を用いて染色したものである。上段が正常角膜内皮細胞、下段が形質転換細胞である。この結果から、CD166は正常角膜内皮細胞において高発現であり、CD73は形質転換細胞において高発現であるということがわかる.この結果はフローサイトメトリーによる解析結果と一致するものである。バーは100μmを示す。
図6図6は、培養サル角膜内皮細胞における位相差顕微鏡像の結果を示す。左上は正常角膜内皮細胞を示し、右上は形質転換細胞を示す。これらの正常細胞と、形質転換細胞を混合した後に、CD73の発現の程度によってソーティングして培養したものを下段に示す。CD73低発現の細胞は多角形の正常の細胞形態を示す。一方、CD73高発現の細胞は形質転換した線維芽細胞様の形態を示す。
図7図7は、不死化ヒト角膜内皮細胞における位相差顕微鏡像の結果を示す。左は正常角膜内皮細胞を示し、中は形質転換細胞を示す。これらの正常細胞と、形質転換細胞を混合して培養したものを左に示す。バーは100μmである。
図8図8図7に示した不死化ヒト角膜内皮細胞における正常細胞と、形質転換細胞を混合したものをフローサイトメトリーによってCD73発現を検討したものである。CD73の高発現のピークと低発現のピークに分かれることを示す。
図9図9図7に示した不死化ヒト角膜内皮細胞における正常細胞と、形質転換細胞を混合したものをフローサイトメトリーによってCD73発現によりソーティングして培養したものである。CD73低発現の細胞は多角形の正常の細胞形態を示す。一方、CD73高発現の細胞は形質転換した線維芽細胞様の形態を示す。CD73高発現および低発現のものをソーティングせず培養したものは一部に正常細胞と一部に形質転換細胞を含む。
図10図10は、CD73によりソーティングした後の候補マーカーの発現解析を行った結果を示す。上段がCD73が低発現であった細胞のソーティング後であり、下段がCD73が高発現であった細胞のソーティング後である。左はCD73による染色、右はCD166による染色を示す。CD73低発現の細胞は免疫染色においてCD166高発現である一方、CD73高発現の細胞は免疫染色においてCD166低発現であった。
図11図11は、CD73によりソーティングした後の角膜内皮細胞の機能関連マーカーの発現解析を行った結果を示す。上段がCD73が低発現であった細胞のソーティング後であり、下段がCD73が高発現であった細胞のソーティング後である。左側は、ZO−1の発現を示し、右側は、Na/K−ATPaseの発現を示す。CD73低発現の細胞は免疫染色においてZO−1およびNa/K−ATPaseの発現を認めた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0021】
本明細書において、「CD98」は、CDタンパク質の一種であり、大中性アミノ酸トランスポーター(large neutral amino acid transporter 1;LAT1)を形成するSLC3A2(溶質キャリアファミリー3(二塩基性および中性のアミノ酸輸送の活性化剤)メンバー2、4F2hc/CD98;CD98の重サブユニットタンパク質;MDU1、4T2HC、4F2、NACAEとも呼ばれる。このトランスポーターは、細胞内カルシウムレベルの調節およびL型アミノ酸の輸送に役割を果たす。Gene ID(Entrez): 6520;NM_001013251(NM_001012661)およびNP_001012680)とSLC7A5(CD9
8の軽サブユニットタンパク質;LAT1、E16、D16S469E、MPE16等とも呼ばれる。Gene ID(Entrez):8140 NM_003486;NP_003477)とから構成されるヘテロダイマーである糖タンパク質である。配列番号1−4が代表的な配列(SLC3A2=配列番号1−2;SLC7A5=配列番号3−4;それぞれ核酸配列、アミノ酸配列)である。
【0022】
本明細書において「CD166」は、Activated leukocyte cell adhesion molecule(ALCAM)として知られているI型膜貫通タンパクである。10箇所のN結合型糖鎖附加部位を含む、免疫グロブリンスーパーファミリー分子である。分子量100−105kDaで、5個の細胞外Ig様ドメインと32アミノ酸の細胞内末端、短い膜貫通領域で構成されている。CD166は接着分子の一つで、CD6分子との結合、またはALCAM−ALCAMの同種結合を形成する。ALCAM;CD166;MEMDとも呼ばれる。文献PMID:23056608およびPMID:18334960も参照。各種アクセッション番号については、Gene ID(Entrez):214(human)、NM_001243280(mRNA)、NP_001230209(タンパク質)である。配列番号5−6が代表的な配列(それぞれ核酸配列、アミノ酸配列)である。
【0023】
本明細書において「CD340」はHER2またはneuオンコジーンとして知られるCDの一種であり、細胞表面に存在する約185kDaの糖タンパクで、受容体型チロシンキナーゼである。NEU;NGL;HER2;TKR1;CD340;HER−2;MLN 19;HER−2/neuとも呼ばれる。ERBB2:v−erb−b2赤芽細胞白血病ウイルス由来オンコジーンホモログ(鳥類)である。この遺伝子は、受容体型チロシンキナーゼの上皮増殖因子(EGF)レセプターファミリーのメンバーをコードする。このタンパク質は、それ自体のリガンド結合ドメインを有しないため、増殖因子に結合することができないとされているが、他のリガンド結合EGFレセプターファミリーのメンバーに結合してヘテロダイマーを形成し、リガンド結合を安定化して、下流のシグナル伝達経路(例えば、有糸活性化タンパク質キナーゼおよびホスファチジルイノシトールー3キナーゼ等)のキナーゼ媒介活性化を増強するとされている。文献PMID: 15557433を参照。Entrez Gene ID: (Hu) 2064 であり、NM_0010005862.1である。配列番号7−8が代表的な配列(それぞれ核酸配列、アミノ酸配列)である。
【0024】
本明細書において「CD9」は、4回膜貫通4スーパーファミリーのメンバーであり、テトラスパニンとも呼ばれる。CD9;BTCC−1;DRAP−27;MIC3;MRP−1;TSPAN−29;TSPAN29とも呼ばれる。テトラスパニンは、4回膜貫通ドメインを伴う細胞表面糖タンパク質であり、他の細胞表面タンパク質とマルチマー複合体を形成する。ヒト羊膜上皮細胞(hHEAC)は、CD9、CD44、CD73およびCD90を発現し、無視できる程度でCD31、CD34、CD45およびCD117を発現する。文献PMID: 21166885を参照。CD9遺伝子は、1.4kbのmRNAをコードし、角膜において検出可能に優勢に発現し毛様体上皮、網膜、虹彩、および水晶体において低レベルで発現する。文献PMID:1339429を参照。Entrez Gene ID:928であり、RefSeq(mRNA):NM_001769(Hu)、RefSeq(protein):NP_001760(Hu)である。配列番号9−10が代表的な配列(それぞれ核酸配列、アミノ酸配列)である。
【0025】
本明細書において「CD49e」は、通常インテグリンα5と呼ばれるタンパク質であり、ITGA5;CD49e;FNRA;VLA5Aとも呼ばれる。ファイブロネクチンレセプターαポリペプチドとも呼ばれている。α鎖5は翻訳後修飾により細胞外ドメインにおいて切断され、ジスルフィド結合の軽鎖および重鎖を生じ、β1と結合してフィブロネクチンレセプターを形成する。この分子の発現のプロモーターは、角膜上皮細胞では細胞外マトリクス成分のフィブロネクチンによって転写因子Sp1と通じて正に調節されている。文献PMID:10995740を参照。Entrez Gene ID:3678であり、RefSeq(mRNA):NM_002205(Hu)であり、RefSeq(protein):NP_002196(Hu)である。配列番号11−12が代表的な配列(それぞれ核酸配列、アミノ酸配列)である。
【0026】
本明細書において「CD44」は、細胞−細胞、細胞−細胞間基質(ECM;extra cellular matrix)を接着させる細胞表面糖タンパク質である。CD44分子にはN結合糖鎖部位、O結合糖鎖部位、それにコンドロイチン硫酸結合部位が複数あり糖鎖に富む構造を示す。膜貫通部に続く細胞内部分にはリン酸化されるセリンがあり、またアンキリンを介してアクチンと結合、細胞の運動(癌細胞の転移)に関与しているヒアルロン酸(HA)のレセプターであり、他のリガンド(例えば、オステオポンチン、コラーゲンおよびマトリクスメタロプオテイナーゼ(MMP))とも相互作用することができるとされている。ヒト羊膜上皮細胞(hHEAC)は、CD9、CD44、CD73およびCD90を発現し、無視できる程度でCD31、CD34、CD45およびCD117を発現する。文献PMID:21166885を参照。CDW44;CSPG8;ECMR−III;HCELL; HUTCH−I;IN;LHR;MC56;MDU2;MDU3;MIC4;Pgp1とも呼ばれる。Entrez Gene ID:960であり、RefSeq(mRNA):NM_000610であり、RefSeq(protein):NP_000601である。配列番号13−14が代表的な配列(それぞれ核酸配列、アミノ酸配列)である。
【0027】
本明細書において「CD73」は、エクト−5’−ヌクレオチダーゼとも呼ばれる酵素であり、AMPをアデノシンに変換する。NT5E;CD73;E5NT;NT;NT5;NTE;eN;eNTとも呼ばれる。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞外ヌクレオチドを膜透過性ヌクレオシドへと変換する反応を触媒する血漿膜タンパク質である。ヒト羊膜上皮細胞(hAEC)は、CD9、CD44、CD73およびCD90を発現し、無視できる程度でCD31、CD34、CD45およびCD117を発現する。単離された角膜ケラトサイトは、線維芽細胞様の形状を示し、CD13、CD29、CD44、CD56、CD73、CD90、CD105およびCD133を発現するが、HLA−DR、CD34、CD117およびCD45について陰性である。これらの特性は、BM−MSC(骨髄間葉系幹細胞)に類似する。辺縁骨髄間葉系幹細胞(L−MSC)は、CD34、CD34、CD90、CD73、CD105であるとされている。文献PMID:21166885、PMID:17464757およびPMID:22587591を参照。Entrez Gene ID:4907であり、RefSeq(mRNA):NM_001204813であり、RefSeq(protein):NP_001191742である。配列番号15−16が代表的な配列(それぞれ核酸配列、アミノ酸配列)である。
【0028】
このほかのCDについては、例えば、http://hcdm.org/index.php/component/molecule/?Itemid=132の情報を参照することができ、また、以下のようであることが知られており、本発明の実施においてこれらの情報を利用することができ、必要に応じてこれらの情報の内容は、本明細書において参考として援用する。
【0029】
【表1-1】


【0030】
【表1-2】

【0031】
【表1-3】

【0032】
【表1-4】
【0033】
各CD名については、特定のアクセッション番号(および本明細書に具体的に記載する場合の配列番号)に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。
【0034】
なお、本発明で挙げる他のタンパク質すべてにも同じことがあてはまる。従って、既定のタンパク質または核酸の名称は、配列表に示すようなタンパク質または核酸を指すだけでなく、機能的に活性な誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシーまたは低ストリンジェンシー条件下で、好ましくは上述のような条件下で、前記タンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、指す。本明細書で使用される「誘導体」または「構成要素タンパク質の類似体」または「変異体」は、好ましくは、限定を意図するものではないが、構成要素タンパク質に実質的に相同な領域を含む分子を含み、このような分子は、種々の実施形態において、同一サイズのアミノ酸配列にわたり、または当該分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアラインメントを行ってアラインされる配列と比較した際、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%同一であるか、あるいはこのような分子をコードする核酸は、ストリンジェントな条件、中程度にストリンジェントな条件、またはストリンジェントでない条件下で、構成要素タンパク質をコードする配列にハイブリダイズ可能である。これは、それぞれ、アミノ酸置換、欠失および付加によって、天然存在タンパク質を修飾した所産であり、その誘導体がなお天然存在タンパク質の生物学的機能を、必ずしも同じ度合いでなくてもよいが示すタンパク質を意味する。例えば、本明細書において記載されあるいは当該分野で公知の適切で利用可能なin vitroアッセイによって、このようなタンパク質の生物学的機能を調べることも可能である。本発明では、ヒトについて主に論じられるが、他の種例えば霊長類内の他の種あるいはこのほかの属の動物の種のものにも当てはまることが理解され、これらの哺乳動物についても、本発明の範囲内に入ることが理解される。
【0035】
本明細書で使用される「機能的に活性な」は、本明細書において、本発明のポリペプチド、すなわちフラグメントまたは誘導体が関連する態様に従って、生物学的活性などの、タンパク質の構造的機能、制御機能、または生化学的機能を有する、ポリペプチド、すなわちフラグメントまたは誘導体を指す。
【0036】
本発明において、CD98等の分子の「フラグメント」とは、CD98等の分子の任意の領域を含むポリペプチドであり、本発明の目的(例えば、検出、診断等)に用いることができる限り、天然の分子の生物学的機能を有していなくてもよい。フラグメントの例として、CD98等の分子の細胞外領域を含むフラグメントが挙げられるがそれに限定されない。
【0037】
CD98等の分子の代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号Xに記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号X+1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号X+1に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号Xに記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号X+1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、CD98等の分子の有する活性をいう。
【0038】
CD98等の分子のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号X+1に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号X+1に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号X+1に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号X+1に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。ここで、配列番号X(Xは、1〜15)までの奇数)は、CD98等の分子(サブユニットを含む)の核酸配列を示し、X=1はCD98の重サブユニットタンパク質、X=3はCD98の軽サブユニットタンパク質、X=5はCD166、X=7はCD340、X=9はCD9、X=11はCD49e、X=13はCD44、X=15はCD73である。生物学的活性とは、代表的に、CD98等の分子の有する活性をいう。また、配列番号1−15の核酸配列は、CDR(コード領域)以外の配列を含みうる。これらの領域もプライマーまたはプローブとして使用することができるが、別の実施形態ではCDRのみを核酸領域として利用してもよい。
【0039】
ここで、本明細書において「CD98等」とは、本発明の任意のマーカーをいう。より詳細には、正常細胞において形質転換細胞より有意に多く発現するマーカーとして、CD166、HLA−A2、CD66a、CD66c、CD66d、CD66e、CD98、CD59、CD54、CD340、CD47、EGF−R、CD29、CD74、CD165、CD221、CD49a、SSEA−4、CD130、CD49fが含まれ、形質転換細胞において正常細胞より有意に多く発現するマーカーとして、CD26、CD9、CD49b、CD49e、CD13、CD99、CD105、CD63、CD58、CD201、CD56、CD44、CD55、CD71、CD73、CD91、HLA−DQ、CD164、CD49d、CD49c、CD90、MICA/B、CD46、CD140b、CD146、CD147、CD81、CD151、CD200、CD10が含まれるがこれらに限定されない。
【0040】
本発明の関連において、「CD98等の分子に結合する物質」または「CD98等の分子相互作用分子」は、少なくとも一時的にCD98等の分子に結合し、そして好ましくは、結合したことを表示しうる(例えば標識されるか標識可能な状態である)、分子または物質である。CD98等の分子に結合する物質はCD98等の分子の阻害剤であってもよく、その例としては、抗体、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、siRNA、低分子量分子(LMW)、結合性ペプチド、アプタマー、リボザイムおよびペプチド模倣体(peptidomimetic)等を挙げることができ、例えばCD98等の分子に対して向けられる、特にCD98等の分子の活性部位に対して向けられる、結合性タンパク質または結合性ペプチド、並びにCD98等の分子の遺伝子に対して向けられる核酸も含まれる。CD98等の分子に対する核酸は、例えばCD98等の分子の遺伝子の発現またはCD98等の分子の活性を阻害する、二本鎖または一本鎖DNAまたはRNA、あるいはその修飾物または誘導体を指し、そして限定なしに、アンチセンス核酸、アプタマー、siRNA(低分子干渉RNA)およびリボザイムを含む。本明細書において、CD98等の分子について「結合性タンパク質」または「結合性ペプチド」とは、CD98等の分子に結合する種類のタンパク質またはペプチドを指し、そしてCD98等の分子に対して指向されるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、抗体フラグメントおよびタンパク質骨格を含むがこれらに限定されない。
【0041】
本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)が包含される。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0042】
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。
【0043】
本明細書において「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al., J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98(1994))。本明細書において「核酸」はまた、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。
【0044】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、その発現を左右する遺伝子を調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」をさすことがある。「遺伝子産物」とは、遺伝子に基づいて産生された物質でありタンパク質、mRNAなどをさす。
【0045】
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいい、一般に「相同性」を有するとは、同一性または類似性の程度が高いことをいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。従って本明細書において「相同体」または「相同遺伝子産物」は、本明細書にさらに記載する複合体のタンパク質構成要素と同じ生物学的機能を発揮する、別の種、好ましくは哺乳動物におけるタンパク質を意味する。こうような相同体はまた、「オルソログ遺伝子産物」とも称されることもある。ヒトおよび哺乳動物または他の種からオルソログ遺伝子対を検出するためのアルゴリズムは、これらの生物の全ゲノムを用いる。まず、予測されるタンパク質の完全Smith−Waterman並列を用いて、対合ベストヒットを回収する。信頼性をさらに改善するため、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)および線虫(C.elegans)タンパク質を含む対合ベストヒットを用いて、これらの対のクラスターを形成してもよい。このような分析は、例えば、Nature,2001,409:860−921に提供される。他の種の遺伝子に対する、本明細書に提供するタンパク質をコードする遺伝子の配列相同性に基づいて、慣用的技術を適用してそれぞれの遺伝子をクローニングし、そしてこのような遺伝子からタンパク質を発現させることによって、あるいは本明細書に提供する方法に従って、または当該分野で周知の他の適切な方法に従って、類似の複合体を単離することにより、他の種のタンパク質を単離することによって、本明細書に記載のタンパク質の相同体を単離することも可能である。
【0046】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメータの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。類似性は、同一性に加え、類似のアミノ酸についても計算に入れた数値である。
【0047】
本明細書において「ストリンジェント(な)条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques, A Prac1tical Approach, Second Edition, Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。従って、本発明において使用されるポリペプチド(例えば、トランスサイレチンなど)には、本発明で特に記載されたポリペプチドをコードする核酸分子に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドも包含される。これらの低ストリンジェンシー条件は、35%ホルムアミド、5xSSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM EDTA、0.02% ポリビニルピロリドン(PVP)、0.02%BSA、100μg/ml変性サケ精子DNA、および10%(重量/体積)デキストラン硫酸を含む緩衝液中、40℃で18〜20時間ハイブリダイゼーションし、2xSSC、25mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM EDTA、および0.1%SDSからなる緩衝液中、55℃で1〜5時間洗浄し、そして2xSSC、25mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM EDTA、および0.1%SDSからなる緩衝液中、60℃で1.5時間洗浄することを含む。
【0048】
本明細書において「精製された」物質または生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。従って、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本発明で用いられる物質は、好ましくは「精製された」物質である。
【0049】
本明細書において「対応する」アミノ酸または核酸とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドと同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。対応するアミノ酸は、例えば、システイン化、グルタチオン化、S−S結合形成、酸化(例えば、メチオニン側鎖の酸化)、ホルミル化、アセチル化、リン酸化、糖鎖付加、ミリスチル化などがされる特定のアミノ酸であり得る。あるいは、対応するアミノ酸は、二量体化を担うアミノ酸であり得る。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。
【0050】
本明細書において「対応する」遺伝子(例えば、ポリヌクレオチド配列または分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリヌクレオチド配列または分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。従って、マウス、ラットのCD98等の分子は、それぞれ、ヒトにおいて、対応するCD98等の分子を見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。従って、例えば、ある動物(例えば、マウス、ラット)における対応する遺伝子は、対応する遺伝子(例えば、ヒトのもの)の基準となる遺伝子として配列番号1等の配列をクエリ配列として用いてその動物の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
【0051】
本明細書において「フラグメント(断片)」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、このようなフラグメントは、例えば、全長のものがマーカーとして機能する場合、そのフラグメント自体もまたマーカーとしての機能を有する限り、本発明の範囲内に入ることが理解される。
【0052】
本発明に従って、用語「活性」は、本明細書において、最も広い意味での分子の機能を指す。活性は、限定を意図するものではないが、概して、分子の生物学的機能、生化学的機能、物理的機能または化学的機能を含む。活性は、例えば、酵素活性、他の分子と相互作用する能力、および他の分子の機能を活性化するか、促進するか、安定化するか、阻害するか、抑制するか、または不安定化する能力、安定性、特定の細胞内位置に局在する能力を含む。適用可能な場合、この用語はまた、最も広い意味でのタンパク質複合体の機能にも関する。
【0053】
本明細書において「生物学的機能」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、特異的な抗体の生成、酵素活性、抵抗性の付与等を挙げることができるがそれらに限定されない。本発明においては、例えば、CD98等がそのリガンドを認識する機能などを挙げることができるがそれらに限定されない。このような生物学的活性は、上述した表の中で言及されるアクセッション番号、Entrez番号等において引用される文献等を参照することができ、本明細書においてそのような文献等もまた参考として援用する。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。従って、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。従って、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が挙げられる。
【0054】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたもの(本明細書にいう誘導体)であり得る。例えば、CD98等の分子の発現レベルは、任意の方法によって決定することができる。具体的には、CD98等の分子のmRNAの量、CD98等の分子タンパク質の量、そしてCD98等の分子タンパク質の生物学的な活性を評価することによって、CD98等の分子の発現レベルを知ることができる。CD98等の分子のmRNAやタンパク質の量は、本明細書に記載したような方法によって決定することができる。
【0055】
本明細書において、「CD98等の分子またはその機能的等価物」または「CD98等の分子およびその機能的等価物からなる群」という場合は、CD98等の分子自体のほか、CD98等の分子の変異体または改変体(例えば、アミノ酸配列改変体等)であって、眼細胞等の分化制御および/または増殖促進作用を有するもの、または本明細書に記載されるマーカーとしての機能を有するもの、ならびに、作用する時点において、CD98等の分子自体またはこのCD98等の分子の変異体もしくは改変体に変化することができるもの(例えば、CD98等の分子自体またはCD98等の分子の変異体もしくは改変体をコードする核酸、およびその核酸を含むベクター、細胞等を含む)が包含されることが理解される。本発明において、CD98等の分子の機能的等価物は、格別に言及していなくても、CD98等の分子と同様に用いられうることが理解される。
【0056】
本発明で用いられるCD98等の分子の機能的等価物は、データベース等を検索することによって、見出すことができる。本明細書において「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al., J.Mol.Biol.215:403-410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman, Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444-2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195-197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch, J.Mol.Biol.48:443-453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用される遺伝子には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
【0057】
本発明の機能的等価物としては、アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加されたものを用いることができる。本明細書において、「アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、あるいは天然の変異により、天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等により改変がなされていることを意味する。
【0058】
CD98等の分子の改変アミノ酸配列は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個のアミノ酸の挿入、置換、もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加がなされたものであることができる。改変アミノ酸配列は、好ましくは、そのアミノ酸配列が、CD98等の分子のアミノ酸配列において1または複数個(好ましくは1もしくは数個または1、2、3、もしくは4個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であってもよい。ここで「保存的置換」とは、タンパク質の機能を実質的に改変しないように、1または複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0059】
本明細書において「マーカー(物質、タンパク質または遺伝子(核酸))」とは、ある状態(例えば、正常細胞状態、形質転換状態、疾患状態、障害状態、あるいは増殖能、分化状態のレベル、有無等)にあるかまたはその危険性があるかどうかを追跡する示標となる物質をいう。このようなマーカーとしては、遺伝子(核酸=DNAレベル)、遺伝子産物(mRNA、タンパク質など)、代謝物質、酵素などを挙げることができる。本発明において、ある状態(例えば、分化障害などの疾患)についての検出、診断、予備的検出、予測または事前診断は、その状態に関連するマーカーに特異的な薬剤、剤、因子または手段、あるいはそれらを含む組成物、キットまたはシステム等を用いて実現することができる。本明細書において、「遺伝子産物」とは、遺伝子によってコードされるタンパク質またはmRNAをいう。本明細書では、眼細胞、特に角膜内皮細胞への関連が示されていない遺伝子産物(すなわち、CD98等の分子など)が眼細胞、特に角膜内皮細胞の正常かどうか(形質転換したかどうか)の指標として使用可能であることが見出された。
【0060】
本明細書において「神経細胞」とは、広義に用いられ、神経系の器官に含まれる任意の細胞を意味し、特に、神経堤細胞由来の細胞(例えば、角膜内皮細胞等)も包含されることが理解される。
【0061】
本明細書において「眼細胞」とは、広義に用いられ、眼に存在する任意の細胞を意味し、眼瞼、強膜、角膜、ぶどう膜、水晶体、硝子体、網膜、視神経に存在する任意の細胞が包含される。
【0062】
本明細書において「角膜内皮細胞」は、当該分野で用いられる通常の意味で用いられる。角膜とは、眼を構成する層状の組織の一つであり透明であり、最も外界に近い部分に位置する。角膜は、ヒトでは外側(体表面)から順に5層でできているとされ、外側から角膜上皮、ボーマン膜(外境界線)、固有層、デスメ膜(内境界線)、および角膜内皮で構成される。特に、特定しない限り、上皮および内皮以外の部分は「角膜実質」とまとめて称することがあり、本明細書でもそのように称する。
【0063】
本明細書において「角膜組織」とは、通常の意味で使用され、角膜を構成する組織自体をいう。角膜組織というときは、角膜を構成する角膜上皮、ボーマン膜(外境界線)、固有層、デスメ膜(内境界線)、および角膜内皮の全部(ヒトの場合。それ以外の動物の場合は、それに対応する区分に応じてその全部)を含んでいてもよく一部欠損していてもよく、あるいは、角膜のほか他の組織(強膜)を含んでいてもよく、その場合は特に強角膜ということがある。したがって、強角膜または強角膜片は角膜組織の一実施形態であるといえる。
【0064】
本明細書において「正常角膜内皮細胞マーカー」とは、正常な角膜内皮細胞において発現し、形質転換を受けると、発現量が有意に減少するマーカーをいう。閾値としては、正常細胞における発現が、形質転換細胞における値よりも、約1.01倍以上、約1.02倍以上、約1.03倍以上、約1.04倍以上、約1.05倍以上、約1.1倍以上、約1.2倍以上、約1.3倍以上、約1.4倍以上、約1.5倍以上、約1.6倍以上、約1.7倍以上、約1.8倍以上、約1.9倍以上、約2倍以上、約2.5倍以上、約3倍以上、約3.5倍以上、約4倍以上、約4.5倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上などを挙げることができるがそれに限定されない。
【0065】
本明細書において「形質転換角膜内皮細胞マーカー」とは、形質転換を起こした角膜内皮細胞において発現し、正常細胞では有意に発現が低いマーカーをいう。閾値としては、形質転換細胞における発現が、正常細胞における値よりも、約1.01倍以上、約1.02倍以上、約1.03倍以上、約1.04倍以上、約1.05倍以上、約1.1倍以上、約1.2倍以上、約1.3倍以上、約1.4倍以上、約1.5倍以上、約1.6倍以上、約1.7倍以上、約1.8倍以上、約1.9倍以上、約2倍以上、約2.5倍以上、約3倍以上、約3.5倍以上、約4倍以上、約4.5倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上などを挙げることができるがそれに限定されない。
【0066】
本明細書において「形質転換」とは、細胞の形質が正常ではない状態に変化することをいい、正常な動物細胞が無制限に分裂を行うようになる、つまりがん化の意味、または化生の中で特にダイナミックなもの(幹細胞まで脱分化したり組織の基本形の壁を越えて変化したりするもの)の意味を含む。
【0067】
本明細書において、角膜内皮細胞が正常に培養されているかどうかは、角膜内皮細胞が本来有している機能(本明細書では「正常(な)機能」ともいい、そのような細胞を「正常細胞」ともいう。)等の特徴を少なくとも1つは維持しているかを確認することによって判定することができる。そのような機能としては、ZO−1およびNa/K−ATPase、角膜移植への適応能(Matsubara M, Tanishima T: Wound-healing of the corneal endotheliumin the monkey: a morphometric study, Jpn J Ophthalmol 1982, 26:264-273;Matsubara M, Tanishima T: Wound-healing of corneal endothelium in monkey: an autoradiographic study, Jpn J Ophthalmol 1983, 27:444-450;Van Horn DL, Hyndiuk RA: Endothelial wound repair in primate cornea, Exp Eye Res 1975,21:113-124およびVan Horn DL, Sendele DD, Seideman S, Buco PJ: Regenerative capacity of the corneal endothelium in rabbit and cat, Invest Ophthalmol Vis Sci 1977,16:597-613)等が挙げられるがそれらに限定されない。すなわち、「正常な機能」は、角膜移植を実現するのに必要な機能または十分であることを示す指標でありうることが理解される。例えば、正常化の判断方法としては、ZO−1およびNa/K−ATPaseのような角膜内皮細胞における機能タンパク質を指標としてその発現の変化を観察したり、あるいはサル等への移植によって生着し、機能するかどうかを調べることによって実行することができる。移植による判断方法は以下のとおりに行なうことができる。すなわち、I型コラーゲンまたは羊膜または角膜実質などのキャリア上に角膜内皮培養して培養角膜内皮シートを作製する。全身麻酔下でカニクイザルの角膜輪部を1.5mm切開してシリコン製の手術器具を前房内に挿入して角膜内皮細胞を機械的に掻爬して水疱性角膜症モデルを作製する。続いて角膜輪部を5−6mm切開して培養角膜内皮シートを前房内に挿入し、前房を空気で置換することでシートを角膜内皮面に接着させる。培養角膜内皮シートの移植による水疱性角膜症の治療効果は細隙灯顕微鏡による角膜透明性の評価にて行うことができる。またキャリアを用いずに、Rhoキナーゼ阻害剤などの細胞接着促進剤とともに細胞を懸濁液として前房内に注入することでも同様に水疱性角膜症の治療効果は細隙灯顕微鏡による角膜透明性の評価にて行うことができる。したがって、正常でない、すなわち、形質転換を生じた細胞は、この評価において正常細胞の評価を受けない。形質転換を生じた細胞は角膜内皮細胞としての機能であるポンプ機能、バリア機能が減弱あるいは喪失しているために、角膜が透明化しない、角膜厚が厚い、角膜内皮細胞密度が低いなどの項目で評価される。
【0068】
本発明において、「Rhoキナーゼ」とは、Rhoの活性化に伴い活性化されるセリン/スレオニンキナーゼを意味する。例えば、ROKα(ROCK−II:Leung, T. et al., J.Biol.Chem., 270, 29051-29054, 1995)、p160ROCK(ROKβ、ROCK−I:Ishizaki, T. et al., The EMBO J., 15(8), 1885-1893, 1996)およびその他のセリン/スレオニンキナーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。
【0069】
Rhoキナーゼ阻害剤としては、下記文献:米国特許4678783号、特許第3421217号、国際公開第95/28387、国際公開99/20620、国際公開99/61403、国際公開02/076976、国際公開02/076977、国際公開第2002/083175、国際公開02/100833、国際公開03/059913、国際公開03/062227、国際公開2004/009555、国際公開2004/022541、国際公開2004/108724、国際公開2005/003101、国際公開2005/039564、国際公開2005/034866、国際公開2005/037197、国際公開2005/037198、国際公開2005/035501、国際公開2005/035503、国際公開2005/035506、国際公開2005/080394、国際公開2005/103050、国際公開2006/057270、国際公開2007/026664などに開示された化合物があげられる。かかる化合物は、それぞれ開示された文献に記載の方法により製造することができる。具体例として、1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジンまたはその塩(たとえば、ファスジル(1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン))、(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−1−(4−ピリジルカルバモイル)シクロヘキサン((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド)またはその塩(たとえば、Y−27632((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド2塩酸塩1水和物)など)などがあげられ、これらの化合物は、市販品(和光純薬株式会社、旭化成ファーマ等)を好適に用いることもできる。
【0070】
(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−1−(4−ピリジルカルバモイル)シクロヘキサン、1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジンおよびそれらの薬学的に許容される塩等は、角膜内皮細胞の接着促進に特に優れているため、好ましく用いられる。該化合物の塩としては、薬学的に許容される酸付加塩が好ましく、それらの酸とは塩酸、臭化水素酸、硫酸等の無機酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、マンデル酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸等の有機酸があげられる。(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−1−(4−ピリジルカルバモイル)シクロヘキサン((R)−(+)−トランス−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド)・2塩酸塩(一水和物であってもよい)、および1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン塩酸塩がより好ましい。
【0071】
本明細書において「被験体」とは、本発明の診断または検出等の対象となる対象(例えば、ヒト等の生物または生物から取り出した器官(眼)あるいは細胞等)をいう。
【0072】
本明細書において「試料」とは、被験体等から得られた任意の物質をいい、例えば、眼の細胞等が含まれる。当業者は本明細書の記載をもとに適宜好ましい試料を選択することができる。
【0073】
本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当する)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0074】
本明細書において「検出剤」とは、広義には、目的の対象(例えば、正常細胞(例えば、正常角膜内皮細胞)または形質転換細胞(例えば、形質転換角膜内皮細胞))を検出することができるあらゆる薬剤をいう。
【0075】
本明細書において「診断剤」とは、広義には、目的の状態(例えば、疾患など)を診断することができるあらゆる薬剤をいう。
【0076】
本発明の検出剤は、検出可能とする部分(例えば、抗体等)に他の物質(例えば、標識等)を結合させた複合体または複合分子であってもよい。本明細書において使用される場合、「複合体」または「複合分子」とは、2以上の部分を含む任意の構成体を意味する。例えば、一方の部分がポリペプチドである場合は、他方の部分は、ポリペプチドであってもよく、それ以外の物質(例えば、糖、脂質、核酸、他の炭化水素等)であってもよい。本明細書において複合体を構成する2以上の部分は、共有結合で結合されていてもよくそれ以外の結合(例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力等)で結合されていてもよい。2以上の部分がポリペプチドの場合は、キメラポリペプチドとも称しうる。従って、本明細書において「複合体」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子を含む。
【0077】
本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。
【0078】
本明細書中で使用される用語「結合」は、2つの物質の間、あるいはそれらの組み合わせの間での、物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。結合には、イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水性相互作用などが含まれる。物理的相互作用(結合)は、直接的または間接的であり得、間接的なものは、別のタンパク質または化合物の効果を介するかまたは起因する。直接的な結合とは、別のタンパク質または化合物の効果を介してもまたはそれらに起因しても起こらず、他の実質的な化学中間体を伴わない、相互作用をいう。結合または相互作用を測定することによって、本発明のマーカーの発現の度合い等を測定することができる。
【0079】
従って、本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に」相互作用する(または結合する)「因子」(または、薬剤、検出剤等)とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
【0080】
本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に」相互作用する(または結合する)とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含む試料中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用する(または結合する)ことをいう。物質または因子について特異的な相互作用(または結合)としては、例えば、リガンド−レセプター反応、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に」相互作用する(または結合する)こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に」相互作用する(または結合する)ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用(または結合)が包含される。
【0081】
本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチド発現の「検出」または「定量」は、例えば、マーカー検出剤への結合または相互作用を含む、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、発光イムノアッセイ(LIA)、免疫沈降法(IP)、免疫拡散法(SRID)、免疫比濁法(TIA)、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526-32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、in vitro翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は
、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
【0082】
本明細書において「発現量」とは、目的の細胞、組織などにおいて、ポリペプチドまたはmRNA等が発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明において使用されるポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明において使用されるポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。あるマーカーの発現量を測定することによって、マーカーに基づく種々の検出または診断を行うことができる。
【0083】
本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「減少」または「抑制」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における減少、または減少させる活性をいう。
【0084】
本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「増加」または「活性化」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における増加または増加させる活性をいう。
【0085】
従って、本発明のマーカーの減少、抑制、増加または活性化等の調節能力を指標に、眼の細胞の分化調節を行う薬剤を検出、スクリーニングすることができることが理解される。
【0086】
本明細書において「抗体」は、広義にはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらのフラグメント、例えばFvフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)およびFabフラグメント、ならびにその他の組換えにより生産された結合体または機能的等価物(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、多機能抗体、二重特異性またはオリゴ特異性(oligospecific)抗体、単鎖抗体、scFV、ダイアボディー、sc(Fv)(single chain (Fv)2)、scFv−Fc)を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。本発明で用いられるCD98等に対する抗体は、それぞれ、CD98等のタンパク質に結合すればよく、その由来、種類、形状などは問われない。具体的には、非ヒト動物の抗体(例えば、マウス抗体、ラット抗体、ラクダ抗体)、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの公知の抗体が使用できる。本発明においては、モノクローナル、あるいはポリクローナルを抗体として利用することができるが好ましくはモノクローナル抗体である。抗体のCD98等のそれぞれのタンパク質への結合は特異的な結合であることが好ましい。
【0087】
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。本明細書において「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体またはリンパ球レセプターが結合する抗原分子中の部位をいう。エピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。
【0088】
本明細書において「手段」とは、ある目的(例えば、検出、診断、治療)を達成する任意の道具となり得るものをいい、特に、本明細書では、「選択的に認識(検出)する手段」とは、ある対象を他のものとは異なって認識(検出)することができる手段をいう。
【0089】
本明細書において使用される抗体は、擬陽性が減じられるかぎり、どのような特異性の抗体を用いても良いことが理解される。従って、本発明において用いられる抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。本明細書において「リガンド」とは、あるタンパク質に特異的に結合する物質をいう。例えば、細胞膜上に存在する種々のレセプタータンパク質分子と特異的に結合するレクチン、抗原、抗体、ホルモン、神経伝達物質などがリガンドとして挙げられる。
【0090】
本発明の検出剤または診断剤あるいはその他医薬は、プローブおよびプライマーの形態を採ることができる。本発明のプローブおよびプライマーは、CD98等の分子と特異的にハイブリダイズすることができる。本明細書に記載されるように、CD98等の分子の発現は角膜内皮細胞における正常細胞または形質転換細胞であるかどうかの指標であり、また、形質転換の度合いの指標として有用である。従って、本発明によるプローブおよびプライマーは、角膜内皮細胞のうち正常細胞または形質転換細胞および/または形質転換の度合いを識別するために用いることができる。本発明のプローブおよびプライマーは、1つの実施形態では、CD98等の分子の発現を検出することができればよく、複数のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)等の塩基または塩基対からなる重合体を指す。二本鎖cDNAも組織in situハイブリダイゼーションにおいて利用可能であることが知られており、本発明のプローブおよびプライマーにはそのような二本鎖cDNAも含まれる。組織中のRNAの検出において特に好ましいプローブおよびプライマーとしては、RNAプローブ(リボプローブ)を挙げることができる。
【0091】
本明細書において「(核酸)プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。本明細書においてプライマーはマーカー検出手段として使用され得る。
【0092】
通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子(例えば、本発明のマーカー)の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましくは少なくとも10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは少なくとも11の連続するヌクレオチド長の、少なくとも12の連続するヌクレオチド長の、少なくとも13の連続するヌクレオチド長の、少なくとも14の連続するヌクレオチド長の、少なくとも15の連続するヌクレオチド長の、少なくとも16の連続するヌクレオチド長の、少なくとも17の連続するヌクレオチド長の、少なくとも18の連続するヌクレオチド長の、少なくとも19の連続するヌクレオチド長の、少なくとも20の連続するヌクレオチド長の、少なくとも25の連続するヌクレオチド長の、少なくとも30の連続するヌクレオチド長の、少なくとも40の連続するヌクレオチド長の、少なくとも50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、少なくとも90%相同な、少なくとも95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。
【0093】
本発明によるプライマーは、二種以上の該プライマーからなる、プライマーセットとしても使用することができる。
【0094】
本発明によるプライマーおよびプライマーセットは、PCR法、RT−PCR法、リアルタイムPCR法、in situ PCR法、LAMP法等の核酸増幅法を利用して目的遺伝子を検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーおよびプライマーセットとして利用することができる。
【0095】
本発明によるプライマーセットはCD98等の分子等の目的のタンパク質のヌクレオチド配列をPCR法等の核酸増幅法により増幅できるように選択することができる。核酸増幅法は周知であり、核酸増幅法におけるプライマーペアの選択は当業者に自明である。例えば、PCR法においては、二つのプライマー(プライマー対)の一方がCD98等の分子目的のタンパク質の二本鎖DNAのプラス鎖に対合し、他方のプライマーが二本鎖DNAのマイナス鎖に対合し、かつ一方のプライマーにより伸長された伸長鎖にもう一方のプライマーが対合するようにプライマーを選択できる。また、LAMP法(WO00/28082号公報)においては、標的遺伝子に対して3’末端側からF3c、F2c、F1cという3つの領域を、5’末端側からB1、B2、B3という3つの領域を、それぞれ規定し、この6つの領域を用いて4種類のプライマーを設計することができる。本発明のプライマーは、本明細書に開示したヌクレオチド配列に基づき、化学合成できる。プライマーの調製は周知であり、例えば、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press(1989))、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987−1997))に従って実施することができる。
【0096】
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の手段となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチド、特異的抗体またはそのフラグメントなどが挙げられるがそれに限定されない。本明細書においてプローブは、マーカー検出手段としてもちいられる。
【0097】
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同なまたは相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましくは少なくとも10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは少なくとも11の連続するヌクレオチド長の、少なくとも12の連続するヌクレオチド長の、少なくとも13の連続するヌクレオチド長の、少なくとも14の連続するヌクレオチド長の、少なくとも15の連続するヌクレオチド長の、少なくとも20の連続するヌクレオチド長の、少なくとも25の連続するヌクレオチド長の、少なくとも30の連続するヌクレオチド長の、少なくとも40の連続するヌクレオチド長の、少なくとも50の連続するヌクレオチド長の、少なくとも核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも約70%相同な、より好ましくは、少なくとも約80%相同な、さらに好ましくは、少なくとも約90%相同な、少なくとも約95%相同な核酸配列が含まれる。
【0098】
1つの実施形態において、本発明の検出剤は、標識されたものでありうる。あるいは、本発明の検出剤は、タグを結合させたものであってもよい。
【0099】
本明細書において「標識」とは、目的となる分子または物質を他から識別するための存在(例えば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ビオチン法、化学発光法等を挙げることができる。本発明のマーカーまたはそれを捕捉する因子または手段を複数、蛍光法によって標識する場合には、蛍光発光極大波長が互いに異なる蛍光物質によって標識を行う。蛍光発光極大波長の差は、10nm以上であることが好ましい。リガンドを標識する場合、機能に影響を与えないものならば何れも用いることができるが、蛍光物質としては、AlexaTMFluorが望ましい。AlexaTMFluorは、クマリン、ローダミン、フルオレセイン、シアニンなどを修飾して得られた水溶性の蛍光色素であり、広範囲の蛍光波長に対応したシリーズであり、他の該当波長の蛍光色素に比べ、非常に安定で、明るく、またpH感受性が低い。蛍光極大波長が10nm以上ある蛍光色素の組み合わせとしては、AlexaTM555とAlexaTM633の組み合わせ、AlexaTM488とAlexaTM555との組み合わせ等を挙げることができる。核酸を標識する場合は、その塩基部分と結合できるものであれば何れも用いることができるが、シアニン色素(例えば、CyDyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N−アセトキシ−N2−アセチルアミノフルオレン(AAF)、AAIF(AAFのヨウ素誘導体)等を使用することが好ましい。蛍光発光極大波長の差が10nm以上である蛍光物質としては、例えば、Cy5とローダミン6G試薬との組み合わせ、Cy3とフルオレセインとの組み合わせ、ローダミン6G試薬とフルオレセインとの組み合わせ等を挙げることができる。本発明では、このような標識を利用して、使用される検出手段に検出され得るように目的とする対象を改変することができる。そのような改変は、当該分野において公知であり、当業者は標識におよび目的とする対象に応じて適宜そのような方法を実施することができる。
【0100】
本明細書において使用される場合、「タグ」とは、受容体−リガンドのような特異的認識機構により分子を選別するための物質、より具体的には、特定の物質を結合するための結合パートナーの役割を果たす物質(例えば、ビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジンのような関係を有する)をいい、「標識」の範疇に含まれうる。よって、例えば、タグが結合した特定の物質は、タグ配列の結合パートナーを結合させた基材を接触させることで、この特定の物質を選別することができる。このようなタグまたは標識は、当該分野で周知である。代表的なタグ配列としては、mycタグ、Hisタグ、HA、Aviタグなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のマーカーまたはマーカー検出剤にはこのようなタグを結合させてもよい。
【0101】
1つの局面において、本発明は、CD98等の分子を、角膜内皮細胞のうち増殖能の高い細胞/または分化能を識別する指標とするための方法、あるいは角膜内皮細胞のうち増殖能の高い細胞/または分化能を検出または診断する方法を提供する。
【0102】
本発明の方法では、CD98等の分子を、角膜内皮細胞のうち増殖能の高い細胞/または分化能を識別する指標とするために、例えば、CD98等の分子またはこれらの分子の遺伝子を生体内で検出する工程を行って実施することができる。例えば、その際に、CD98等の分子またはこれらの分子の遺伝子に結合する物質を含む検出剤を用いることができる。そのような検出剤は、本明細書において記載されており、その記載を元に、当業者が本発明の方法を実施することができることが理解される。
【0103】
本発明の方法は、本発明の検出剤または診断剤を目的とする試料に接触させ、その試料中に目的とする対象であるCD98等の分子またはこれらの分子の遺伝子があるかどうか、あるいはそのレベルまたは量を測定する。
【0104】
本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、物質を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のマーカー、検出剤、診断剤、リガンド等として機能しうるポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在させることができる。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。
【0105】
1つの実施形態では、本発明の方法において対象とされる増殖能の高い細胞は未分化細胞である。
【0106】
別の実施形態では、本発明の方法において対象とされる増殖能の高い細胞は幹細胞である。
【0107】
別の実施形態では、本発明の方法において対象とされる角膜内皮細胞はヒト細胞である。
【0108】
さらに別の実施形態では、本発明の方法において対象とされる角膜内皮細胞の増殖能はコロニー形成能、Ki−67陽性およびBrdU陽性からなる群より選択される特徴により識別される。
【0109】
本発明の1つの実施形態では、本発明の指標とする方法に基づいて、分化の状態に関する診断を行うこともできる。
【0110】
具体的なCD98等の分子またはこれらの分子の遺伝子の発現を検出する方法については、被験試料(例えば、細胞等)におけるCD98等の分子またはこれらの分子の遺伝子の発現を検出できる方法であれば特に限定されず、例えば、ハイブリダイゼーション法、核酸増幅法、抗原抗体反応法が挙げられる。
【0111】
ここで、「被験試料」とは、角膜内皮細胞または目的とする細胞またはそれに由来する物質であって遺伝子発現を可能にするものを含むと考えられる試料であればよく、例えば、角膜内皮から直接単離した細胞を用いることができる。角膜内皮の細胞は公知の方法により取得することができる(Koizumi N, Okumura N, Kinoshita S., Experimental Eye Research. 2012;95:60-7.)。好ましくは、角膜内皮のドナーから得られた細胞、角膜内皮細胞等を被験細胞試料として用いることができる。また、インビトロで分化誘導された角膜内皮細胞を含む培養細胞を試料として用いることができる。インビトロにおける角膜内皮細胞への分化誘導は、公知のES細胞、iPS細胞、骨髄間質細胞等の細胞を出発材料として、公知の方法、例えば、AMED法等による分化させる<Ueno M, Matsumura M, Watanabe K, Nakamura T, Osakada F, Takahashi M, Kawasaki H, Kinoshita S, Sasai Y:, Proc Natl Acad Sci USA. 103(25): 9554-9559, 2006.>処理を行うことにより実施することができる。
【0112】
本発明による検出の1つの実施形態によれば、本発明によるプローブを核酸試料(mRNAまたはその転写産物)とハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション複合体、すなわちヌクレオチド二本鎖、を直接または間接的に検出することにより細胞試料におけるCD98等の分子またはその分子の遺伝子の発現を検出することができる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press(1989)、特にSection 9.47-9.58)、”Current Protocols in Molecular Biology”(John Wiley & Sons(1987-1997)、特にSection 6.3-6.4)、”DNA Cloning 1:Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.”(Oxford University(1995)、条件については特にSection 2.10)を参照しうる。
【0113】
ハイブリダイゼーション法を利用したCD98等の分子またはこれらの分子の遺伝子の発現の検出は、例えば、:(a)被験試料由来のポリヌクレオチドと、本発明によるプローブとを接触させる工程;および(b)ハイブリダイゼーション複合体を検出する工程により実施することができる。工程(a)において、目的の被験試料から調製されたmRNAまたはそのmRNAから転写された相補的DNA(cDNA)を、被験細胞試料由来のポリヌクレオチドとして、プローブと接触させることができる。プローブを用いた検出法においては、プローブを標識して用いることができる。標識としては例えば、放射能活性(例えば、32P、14C、および35S)、蛍光(例えば、FITC、ユーロピウム)、化学発色のような酵素反応(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)等を利用した標識が挙げられる。ハイブリダイゼーション産生物の検出は、ノーザンハイブリダイゼーション、サザンハイブリダイゼーション、コロニー・ハイブリダイゼーション等の周知の方法を用いて実施できる。ハイブリダイゼーション複合体が検出された細胞は、CD98等の分子を発現している細胞であるので、該細胞について、増殖能が高い(未分化細胞、前駆細胞または幹細胞等)および/または分化能が高いと判定することができる。
【0114】
本発明による検出の別の実施形態によれば、本発明によるプライマーまたはプライマーセットを用いて核酸増幅法により核酸試料(mRNAまたはその転写産物)を増幅させ、増幅産物を検出することにより、試料におけるCD98等の分子またはこれらの分子の遺伝子の発現を検出することができる。
【0115】
核酸増幅法を利用したCD98等の分子またはこれらの分子の遺伝子の発現の検出は、例えば、(i)被験試料由来のポリヌクレオチドを鋳型とし、本発明によるプライマーまたはプライマーセットを用いて核酸増幅法を実施する工程;および(ii)形成された増幅産物を検出する工程により実施することができる。
【0116】
工程(i)において、目的の被験試料から調製されたmRNAまたはそのmRNAから転写された相補的DNA(cDNA)を鋳型として用いることができる。増幅産物の検出は、PCR法、RT−PCR法、リアルタイムPCR法、LAMP法等の核酸増幅法を用いて実施できる。増幅産物が検出される細胞は、正常角膜内皮細胞マーカーについては、正常角膜内皮細胞の傾向が高いものであり、形質転換角膜内皮細胞マーカーについては、形質転換角膜内皮細胞の傾向が高いものであるので、該細胞について、正常または形質転換された細胞であるかどうかを判定することができる。
【0117】
本発明による検出の別の実施形態によれば、本発明による抗体と試料とを接触させ、抗原抗体反応を検出することにより試料において、含まれる細胞が正常または形質転換された細胞であるかどうか、および/またはその割合を判定することができる。
【0118】
抗原抗体反応を利用したCD98等の分子の発現の検出は、例えば、下記工程:(I)被験細胞試料由来のタンパク質と、本発明による抗体とを接触させる工程;および(II)抗原抗体複合体を測定する工程により実施することができる。抗原抗体反応の検出方法は当業者に周知であり、例えば、免疫学的方法により、ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を含むと考えられる被験細胞試料中のCD98等の分子を検出することができる。免疫学的方法としては、細胞試料を必要に応じて適切な処理、例えば、細胞の分離、抽出操作などをした試料について、免疫組織染色法、酵素免疫測定法、ウェスタンブロット法、凝集法、競合法、サンドイッチ法など既知の方法を適用することができる。免疫組織染色法は、例えば標識化抗体を用いる直接法、該抗体に対する抗体の標識化されたものを用いる間接法などにより行うことができる。標識化剤としては蛍光物質、放射性物質、酵素、金属、色素など公知の標識物質を使用することができる。
【0119】
抗原抗体複合体が検出される細胞は、CD98等の分子を発現している細胞であるので、該細胞について、増殖能が高い(未分化細胞、前駆細胞または幹細胞等)および/または分化能が高いと判定することができる。角膜内皮の移植が必要な疾患、例えば水疱性角膜症、角膜浮腫、角膜白斑、特に、角膜ジストロフィ、外傷または内眼手術に起因する角膜内皮障害などの、あるいは他の特定の角膜内皮疾患(Fuchs角膜内皮ジストロフィ、後部多形性角膜内皮ジストロフィ等)の治療に用いるためには、増殖能が高い細胞(未分化細胞、前駆細胞または幹細胞等)は純度が高いことが望ましい。
【0120】
前記の各検出工程は1回のみならず、同工程を繰り返しあるいは組み合わせて行うことにより、細胞の正常・形質転換のレベルの検出または選択の精度を高めていくことができる。従って、このような実施形態を採用した場合、本発明による検出方法によれば、前記の工程を2回以上行うことにより、細胞の正常・形質転換のレベルをより高精度に検出または選択することができる。
【0121】
また、他のマーカー遺伝子、好ましくは例えば増殖マーカー遺伝子(例えば、Ki−67およびBrdU等)あるいはこれらの検出剤を併用することにより、細胞の正常・形質転換のレベルの検出または選択の精度を高めていくことができる。
【0122】
本明細書において「診断」とは、被験体(例えば、生体、細胞等)における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状または未来を判定することをいう。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、細胞または体内等の状態を調べることができ、そのような情報を用いて、被験体における疾患、障害、状態、投与すべき処置または予防のための処方物または方法などの種々のパラメータを選定することができる。本明細書において、狭義には、「診断」は、現状を診断することをいうが、広義には「早期診断」、「予測診断」、「事前診断」等を含む。本発明の診断方法は、原則として、身体から出たもの(例えば、細胞)を利用することができ、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることから、産業上有用である。例えば、本発明のマーカーに結合する物質を用いて正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別して、細胞を診断することができる。本明細書において、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることを明確にするために、特に「予測診断、事前診断もしくは診断」を「支援」すると称することがある。
【0123】
本発明の診断薬等の医薬等としての処方手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、使用すべき量を決定することができる。
【0124】
本発明で使用される抗体は、以下のようにして生産することができる。
【0125】
本発明で使用される抗体(例えば、抗CD98抗体等)は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として取得できる。本発明で使用される抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマにより産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主により産生されるもの等を含む。
【0126】
一例として、モノクローナル抗体の調製方法を以下に記載する。モノクローナル抗体は、抗原で免疫した動物から得られる抗体産生細胞と、ミエローマ細胞との細胞融合によりハイブリドーマを調製し、得られるハイブリドーマからCD98等の分子等の活性を特異的に阻害する抗体を産生するクローンを選択することにより調製することができる。
【0127】
動物の免疫に抗原として用いるCD98等の分子等の成熟型等のタンパク質のアミノ酸配列の全体または免疫原性を有するフラグメントを免疫原として使用することができる。また、細胞表面に存在するタンパク質を特異的に検出するためのモノクローナル抗体としては、本発明のマーカーのタンパク質のアミノ酸配列における任意の10以上からなるペプチドを抗原として使用することが好ましい。他の本発明の任意の因子(例えば、CD98等の分子ならびにこれらに対応するタンパク質など)についても同様に抗原を設計することができる。
【0128】
得られた抗原用のCD98等の分子に結合させた後、アジュバントを添加する。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント等が挙げられ、これらの何れのものを混合してもよい。
【0129】
上記のようにして得られた抗原を哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウマ、サル、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどの哺乳動物に投与する。免疫は、既存の方法であれば何れの方法をも用いることができるが、主として静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射などにより行う。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、好ましくは4〜21日間隔で免疫する。
【0130】
最終の免疫日から2〜3日後に抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞が挙げられるが、一般に脾臓細胞が用いられる。抗原の免疫量は1回にマウス1匹当たり、例えば100μg用いられる。
【0131】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。まず、目的となるタンパク質(例えば、CD98等の分子等のタンパク質)を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法に従って免疫する。免疫動物から得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させてハイブリドーマを得る。更にこのハイブリドーマから、通常のスクリーニング法により、目的とする抗体を産生する細胞をスクリーニングすることによって目的の抗体を産生するハイブリドーマが選択できる。
【0132】
具体的には、モノクローナル抗体の作製は例えば以下に示すように行われる。まず、目的となる遺伝子(CD98等の分子等)を発現させることによって、抗体取得の感作抗原として使用される目的のタンパク質が取得できる。目的の遺伝子の塩基配列およびタンパク質のアミノ酸配列は、本明細書の他の場所に記載されている(例えば、配列番号1−16などに開示されている。すなわち、目的の遺伝子をコードする遺伝子配列を公知の発現ベクターに挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から、目的のタンパク質が公知の方法で精製できる。また、精製した天然のタンパク質もまた同様に使用できる。また、本発明で用いられるように、目的のタンパク質の所望の部分ポリペプチドを異なるポリペプチドと融合した融合タンパク質を免疫原として利用することもできる。免疫原とする融合タンパク質を製造するために、例えば、抗体のFcフラグメントやペプチドタグなどを利用することができる。融合タンパク質を発現するベクターは、所望の二種類またはそれ以上のポリペプチドフラグメントをコードする遺伝子をインフレームで融合させ、当該融合遺伝子を発現ベクターに挿入することにより作製することができる。融合タンパク質の作製方法はMolecular Cloning 2nd ed.(Sambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)に記載されている。
【0133】
このようにして精製された目的のタンパク質(例えば、CD98等の分子のタンパク質)を、哺乳動物に対する免疫に使用する感作抗原として使用できる。目的のタンパク質の部分ペプチドもまた感作抗原として使用できる。例えば、次のようなペプチド:目的のタンパク質(CD98等の分子)のアミノ酸配列に基づいて化学合成によって取得されたペプチド;目的の遺伝子(CD98等の分子等)の一部を発現ベクターに組込んで発現させることによって取得されたペプチド;目的のタンパク質(CD98等の分子)をタンパク質分解酵素により分解することによって取得されたペプチドを感作抗原とすることができる。
【0134】
部分ペプチドとして用いるタンパク質の領域および大きさは限定されない。例示的な領域としては、CD98等の分子の細胞外ドメインを構成するアミノ酸配列から選択することができる。感作抗原とするペプチドを構成するアミノ酸の数は、少なくとも3以上、例えば、5以上、あるいは6以上であることが好ましい。より具体的には、8〜50、好ましくは10〜30残基のペプチドを感作抗原とすることができる。
【0135】
1つの実施形態では、本発明による検出キットとしては、本発明による実施形態の検出を実施するための検出キットが挙げられ、具体的には、CD98等の分子の発現を検出するためのキットであって、本発明によるプローブを少なくとも含んでなるキットが挙げられる。このプローブは、標識したものであってもよい。この検出用キットはハイブリッド形成法によりCD98等の分子の発現を検出する。従って第一の態様の検出方法は、所望により、ハイブリッド形成法を実施するための種々の試薬、例えば標識の検出に用いられる基質化合物、ハイブリダイゼーション緩衝液、説明書、および/または器具などを更に含むことができる。
【0136】
本発明によるこの実施形態の検出キットは、精度の高い検出を行うために、CD98等の分子以外の分化マーカー遺伝子(例えば、Ki−67、BrdU等)の発現を検出可能なプローブ、プライマー、プライマーセット、または抗体を更に含んでいてもよい。これらのプローブ、プライマー、プライマーセット、または抗体は、標識したものであってもよい。この検出用キットはハイブリッド形成法、核酸増幅法、抗原抗体反応法のいずれかの方法により、CD98等の分子以外の分化マーカー遺伝子の発現を更に検出する。
【0137】
別の実施形態において、本発明による検出用キットとしては、本発明による別の実施形態の検出を実施するための検出キットが挙げられ、具体的には、CD98等の分子の発現を検出するためのキットであって、本発明によるプライマーまたは本発明によるプライマーセットを少なくとも含んでなるキットが挙げられる。この検出用キットは核酸増幅法によりCD98等の分子の発現を検出する。従って第二の態様の検出方法は、所望により、核酸増幅法を実施するための種々の試薬、例えば緩衝液、PCRが正常に進行し得ることを示す内部標準、説明書、および/または器具などを更に含むことができる。
【0138】
本発明によるこの実施形態の検出キットは、精度の高い検出を行うために、CD98等の分子以外の分化マーカー遺伝子の発現を検出可能なプローブ、プライマー、プライマーセット、または抗体を更に含んでいてもよい。これらのプローブ、プライマー、プライマーセット、または抗体は、標識したものであってもよい。この検出用キットはハイブリッド形成法、核酸増幅法、抗原抗体反応法のいずれかの方法により、CD98等の分子以外の分化マーカーの発現を更に検出する。
【0139】
さらなる実施形態において、本発明による検出キットとしては、本発明によるさらなる実施形態の検出を実施するための検出キットが挙げられ、具体的には、CD98等の分子のタンパク質を検出するためのキットであって、本発明による抗体を少なくとも含んでなるキットが挙げられる。この抗体は、標識したものであってもよい。この検出用キットは抗原抗体反応を検出することによりCD98等の分子の発現を検出する。この実施形態の検出方法は、所望により、抗原抗体反応を実施するための種々の試薬、例えばELISA法等に用いる2次抗体、発色試薬、緩衝液、説明書、および/または器具などを更に含むことができる。
【0140】
この実施形態では、本発明による検出キットは、精度の高い検出を行うために、CD98等の分子以外の分化マーカーの発現を検出可能なプローブ、プライマー、プライマーセット、または抗体を更に含んでいてもよい。これらのプローブ、プライマー、プライマーセット、または抗体は、標識したものであってもよい。この検出用キットはハイブリッド形成法、核酸増幅法、抗原抗体反応法のいずれかの方法により、CD98等の分子以外の分化マーカーの発現を更に検出する。
【0141】
これらのキット、組成物またはシステムは、本発明のマーカー(例えば、CD98等の分子を同定することができる限り、任意の被験体由来の試料中のマーカー、該マーカーに特異的に相互作用する因子、または該マーカーを選択的に認識する手段を用いることができることが理解され得る。従って、本明細書において具体的に記載された因子または手段のみならず、当該分野において公知の任意の等価の因子または手段を用いることができることが理解される。
【0142】
1つの実施形態では、本発明において使用される因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択され、好ましくは、因子は、タンパク質または複合分子(例えば、糖タンパク質、脂質タンパク質など)である。好ましくは、因子は、抗体(例えば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体)である。このような因子は、標識されるか、または標識可能であることが好ましい。なぜなら、診断することが容易となるからである。
【0143】
本発明の好ましい実施形態において、使用される手段は、質量分析装置、核磁気共鳴測定装置、X線解析装置、SPR、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー)、免疫学的手段(例えば、ウェスタンブロッティング、EIA(エンザイムイムノアッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素連結イムノソルベントアッセイ))、生化学的手段(例えば、pI電気泳動、サザンブロッティング、二次元電気泳動)、電気泳動機器、化学的分析機器、蛍光二次元ディファレンシャル電気泳動法(2DE−DIGE)、同位体標識法(ICAT)、タンデムアフィニティ精製法(TAP法)、物理学的手段、レーザーマイクロダイセクションおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0144】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のシステムまたはキットは、さらに、マーカーの標準を含む。このような標準は、マーカーの検出手段(該マーカーに特異的に相互作用する因子、または該マーカーを選択的に認識する手段など)が正常に機能しているかどうかを確認するために用いることが好ましい。
【0145】
好ましい実施形態では、本発明では、対象となる試料を精製する手段をさらに備え得る。このような精製手段としては、例えば、クロマトグラフィーなどを挙げることができる。精製することによって、診断の精度を上げることができることから、好ましい実施形態において使用され得るが、これは必須ではない。
【0146】
(好ましい実施形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0147】
(正常細胞・形質転換細胞マーカー)
1つの局面において、本発明は、新規正常角膜内皮細胞マーカーおよび/または形質転換角膜内皮細胞マーカーから選択される少なくとも1つを含む、角膜内皮の正常細胞・形質転換細胞を識別するためのマーカーを提供する。
【0148】
本発明において提供される正常角膜内皮細胞マーカーはCD166、HLA−A2、CD66a、CD66c、CD66d、CD66e、CD98、CD59、CD54、CD340、CD47、EGF−R、CD29、CD74、CD165、CD221、CD49a、SSEA−4、CD130およびCD49f等がある。
【0149】
また、本発明において提供される形質転換角膜内皮細胞マーカーはCD26、CD9、CD49b、CD49e、CD13、CD99、CD105、CD63、CD58、CD201、CD56、CD44、CD55、CD71、CD73、CD91、HLA−DQ、CD164、CD49d、CD49c、CD90、MICA/B、CD46、CD140b、CD146、CD147、CD81、CD151、CD200およびCD10等がある。
【0150】
これらのマーカーのほとんどが細胞表面マーカーである。細胞表面マーカーであることから、FACS等での利用が容易であり、細胞の分析が容易に行えることが理解される。
【0151】
本発明のマーカーは、少なくとも1つの形質転換角膜内皮細胞マーカーと少なくとも1つの正常角膜内皮細胞マーカーとを含んでいてもよい。2種類の傾向を示す(複数の)マーカーを提供することによって正常細胞および形質転換細胞の両方をマーカーの発現という正の反応で判断することができるため分析がより容易になる。
【0152】
マーカーとして用いるためには、そのマーカーの発現の程度が強ければ強いほど有利である。正常と形質転換との区別が容易になるからである。ヒトについていえば、マーカーとして適切な強発現の程度としては、約1倍を超えるもの、例えば、少なくとも約1.1倍以上、少なくとも約1.2倍以上、少なくとも約1.3倍以上、少なくとも約1.4倍以上、少なくとも約1.5倍以上、少なくとも約1.6倍以上、少なくとも約1.7倍以上、少なくとも約1.8倍以上、少なくとも約1.9倍以上、少なくとも約2.0倍以上、少なくとも約2.5倍以上、少なくとも約3.0倍以上、少なくとも約4.0倍以上、少なくとも約5.0倍以上等を挙げることができるがこれに限定されない。また、マーカーは1つ用いてもよく複数用いてもよい。なお、発現の程度については、表2−3を参照のこと。表4においては、好ましいマーカーが示されている(正常細胞ではCD98、CD166、CD340を、形質転換細胞ではCD9、CD49e、CD44、CD73である)が、これに限定されるものではない。また、表4に記載されるマーカーは1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つ全部を任意に組み合わせてもよいことが理解される。
【0153】
1つの好ましい実施形態では、正常角膜内皮細胞マーカーとしてCD98、CD166、およびCD340が有利である。これらのマーカーは1つ、2つまたは3つ使用することができる。理論に束縛されることを望まないが、これらのマーカーは角膜内皮細胞の正常細胞と形質転換細胞との間できわめて顕著に発現レベルの相違が見られたため、そのマーカーとしての利用が期待されるからである。
【0154】
別の好ましい実施形態では、形質転換角膜内皮細胞マーカーとしてCD9、CD49e、CD44、およびCD73が有利である。これらのマーカーは1つ、2つ、3つまたは4つ使用することができる。理論に束縛されることを望まないが、これらのマーカーは角膜内皮細胞の正常細胞と形質転換細胞との間できわめて顕著に発現レベルの相違が見られたため、そのマーカーとしての利用が期待されるからである。
【0155】
さらに好ましい実施形態では、本発明のマーカーは、正常角膜内皮細胞マーカーとしてCD98、CD166、およびCD340からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含み、形質転換角膜内皮細胞マーカーとしてCD9、CD49e、CD44、およびCD73からなる群より選択される少なくとも1つの分子を含む。
【0156】
さらに好ましい実施形態では、本発明のマーカーは、CD166およびCD73からなる群より選択される少なくとも1つのマーカーを含む。これらのマーカーは、角膜内皮細胞の正常細胞と形質転換細胞との間でなおいっそうきわめて顕著に発現レベルの相違が見られたため、そのマーカーとしての利用がなおいっそう期待されるからである。
【0157】
別の局面において、本発明は、本発明のマーカーとして使用しうる遺伝子の核酸および/または該核酸によってコードされるタンパク質をマーカーとして提供する。このような場合、本発明は、本発明のマーカーに結合する物質を含む、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別するための検出剤を提供する。本発明のマーカーとしては、本明細書において記載される任意の形態が利用されうることが理解される。あるいは、本発明は、本発明のマーカーに結合する物質を含む、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別するための診断剤を提供する。また、本発明は、本発明のマーカーに結合する物質を用いた、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別するための診断する方法を提供する。本発明の検出剤または診断剤は、対象となる細胞が提供されたときに、本発明のマーカーに結合する物質を用いて、その物質の細胞への結合状態に関する情報(例えば、この物質を標識して用いて、その標識に関する信号等を検出するか、あるいは、結合する物質ことができる)に基づいて、その対象となる細胞が正常であるか、形質転換されているかを検出ないし診断することができる。
【0158】
1つの特定の局面では、本発明は、本発明のマーカーに結合する物質を、角膜内皮細胞を含むサンプルに適用する工程、および該物質と該角膜内皮細胞との結合を検出する工程を含む、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別するための検出方法を提供する。あるいは、本発明は、本発明のマーカーに結合する物質を、角膜内皮細胞を含むサンプルに適用する工程、および該物質と該細胞との結合を検出する工程を含む、該角膜内皮細胞の診断方法であって、該結合の有無を判断することによって正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とが識別される、方法を提供する。
【0159】
1つの実施形態では、この物質は、抗体またはその抗原結合断片、核酸プライマー、プローブ等でありうる。
【0160】
ある実施形態では、本発明の診断剤または検出剤が対象とする細胞は、生体内に存在するまたは存在していた細胞である。あるいは、本発明の診断剤または検出剤が対象とする細胞は、継代培養した細胞等、生体内に存在していないまたは存在していなかった細胞であり得る。
【0161】
ある実施形態では、本発明の診断剤または診断方法を用いて、角膜内皮疾患の診断を行うことができる。例えば、本発明の診断剤または診断方法を用いて生体内に存在するまたは存在していた細胞の状態を調べ、形質転換細胞が見出されたとき、ある実施形態では本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーの発現が一定のレベル以上で見出されたとき、その形質転換細胞あるいは線維芽細胞に関連する角膜内皮疾患が発生しているまたはその予兆があると診断することができる。生体内で調べる場合は、例えば、手術前あるいは手術中等にその場で細胞状態を診断することができる。このような一定のレベルは、当業者は本明細書の情報をもとに統計学等の当該分野の技術常識を用いて適宜設定することができる。本発明の検出または診断が対象としうる角膜内皮障害としては、原発性のもの(内皮細胞を標的とする疾患として、角膜内皮変性(滴状角膜、Fuchs角膜内皮ジストロフィ、後部多形性角膜ジストロフィ、虹彩角膜内皮症候群、先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ等)、ウイルス性疾患(サイトメガロウイルス角膜内皮炎、単純ヘルペスウイルス角膜内皮炎等)、落屑症候群、角膜移植後拒否反応等)、続発性のもの(外的要因に伴う炎症あるいは物理的損傷として、例えば、角膜ぶどう膜炎、角膜実質炎、白内障手術後、角膜移植後、網膜・硝子体手術後、緑内障手術後(濾過手術、周辺虹彩切開)、緑内障発作、コンタクトレンズ長期装着、角膜外傷、分娩時外傷等)、その最終的な症状としての水疱性角膜症が挙げられるがこれらに限定されない。特に重要な角膜内皮疾患としては、水疱性角膜症、外傷または内眼手術に起因する角膜内皮障害、Fuchs角膜内皮ジストロフィおよび後部多形性角膜内皮ジストロフィなどの角膜ジストロフィを含む角膜内皮細胞の線維性変化が関与するものを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0162】
1つの実施形態では、本発明の診断剤または診断方法では、形質転換角膜内皮細胞マーカーが少なくとも1つ発現した場合、形質転換角膜内皮細胞が含まれると判断される。あるいは、本発明の別の実施形態では、形質転換角膜内皮細胞マーカーが少なくとも1つ発現した場合、該角膜内皮細胞に不可逆性の変性を来していると診断される。
【0163】
1つの実施形態では、本発明は、本発明において用いられる上記結合する物質を染色するための薬剤をさらに含んでいてもよい。このような結合する物質の染色によって、結合状態をより可視化することができる。このような染色に使用される薬剤は、染色し得るかぎりどのような薬剤であってもよく当該分野において公知の任意の薬剤を用いることができる。
【0164】
染色技術も当該分野において公知であり任意の手法を用いることができる。例えば、特定のタンパク質の存在または過剰発現を検出するために抗体を使用することは当該分野において公知である。本発明では、形質転換した角膜内皮細胞は形質転換角膜内皮細胞マーカーが発現またはその発現が有意に増加するため、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーに対する特異的な抗体を、この発現の検出に使用し、そして、それにより形質転換の状態を検出しうる。上述の技術は、これだけに制限されることなく、ウェスタンブロット、ドットブロット、沈殿、凝集、ELISAアッセイ、免疫組織化学、in situハイブリダイゼーション、さまざまな組織または体液におけるフローサイトメトリー、および他の種々のサンドイッチアッセイを含む。これらの技術は、当該分野において周知である。例えば米国特許第5,876,949号(本明細書においてその全体を援用する)を参照のこと。本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーの細胞内エピトープに特異的な抗体を使用したとき、細胞を溶解し、そしてその抗体と一緒にインキュベートする必要がある。上述の技術は全細胞溶解物または例えば免疫沈殿により試験するために分離される形質転換角膜内皮細胞あるいは正常角膜内皮細胞において行われうる。あるいは別の技術として、例えば免疫組織学的染色は、細胞全体を必要とし、そして特定の細胞密度の細胞層をさらに必要とする。上述の試験は、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーの細胞外エピトープに特異的な抗体を必要とする。形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーは、表面抗原であるため、通常は、細胞を溶解する必要はないと考えられる。
【0165】
また、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーに対する特異的な抗体は、角膜内皮細胞の状態を検出または診断するために利用されうる。そのための処理方法、例えば免疫組織学的染色または免疫蛍光顕微鏡検査は、当該分野で周知であり、そして形質転換角膜細胞または正常角膜内皮細胞を視覚化するために使用されうる。例えば米国特許第5,514,554号(本明細書においてその全体が参考として援用される。)を参照のこと。例えば、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーの発現は、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーのタンパク質全体またはそのタンパク質の断片を検出しうる抗体を使用することにより検出され得る。あるいは、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーの発現の他の検出方法は、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーをコードするDNAまたはRNA配列の検出を含む。このようなDNAまたはRNAの配列の検出技術は当該分野において周知であり任意の手法を用いることができる。
【0166】
この場合、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーの発現または分布変更を検出するために、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーに特異的な抗体は、多数の公知の検出可能な標識、例えば、蛍光、放射性または酵素物質等により、共有結合的または非共有結合的に標識され得る。あるいは、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーに特異的な抗体に特異的な2次抗体が、当該分野において公知の任意の適切な検出可能な標識により標識され、本発明の形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーに特異的な抗体を検出するために使用される。
【0167】
1つの実施形態では、生体内での診断は以下のようにして実施することができる。1つの例としては、蛍光標識した形質転換角膜内皮細胞マーカーあるいは正常角膜内皮細胞マーカーに特異的な抗体を前房内(または血管内)に投与し、蛍光顕微鏡などにより生体内で観察することができるが生体内での診断の手法はこれに限定されず任意の他の形態を用いることができる。
【0168】
別の局面において、本発明は、本発明のマーカーを、正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とを識別する指標とする方法を提供する。本発明のマーカーとしては、本明細書において記載される任意の形態が利用されうることが理解される。
【0169】
(正常角膜内皮細胞の割合が上昇した角膜内皮細胞試料を調製するための方法・純化された角膜内皮細胞を調製するための方法)
別の局面において、本発明は、a)角膜内皮細胞を含む試料を提供する工程;およびb)該サンプルにおいて、本発明のマーカーを指標として、正常角膜内皮細胞の割合を上昇させる工程を含む、正常角膜内皮細胞の割合が上昇した角膜内皮細胞試料を調製するための方法を提供する。本発明のマーカーとしては、(正常細胞・形質転換細胞マーカー)をはじめとして、本明細書において記載される任意の形態が利用されうることが理解される。
【0170】
別の局面において、本発明は、純化された角膜内皮細胞を調製するための方法であって、該方法は:未分化細胞から角膜内皮細胞を誘導する工程:および本発明のマーカーを指標として、該角膜内皮細胞の割合を上昇させる工程を包含する、方法を提供する。本発明のマーカーとしては、(正常細胞・形質転換細胞マーカー)をはじめとして、本明細書において記載される任意の形態が利用されうることが理解される。
【0171】
純化の方法としては、例えば、蛍光細胞ソーター(FACS)において、目的とするマーカーを発現する細胞を分取する手法、磁気細胞分離法(MACS)等を列挙することができるが、これに限定されない。
【0172】
1つの具体的な手法としては、以下を挙げることができるがこれに限定されない:培養した角膜内皮細胞を正常細胞あるいは形質転換細胞マーカーに対する抗体と反応させたのちに、蛍光細胞ソーターにより目的の正常細胞あるいは形質転換細胞マーカーの発現強度の程度により正常細胞あるいは形質転換細胞をそれぞれ分離して回収する。
【0173】
1つの実施形態では、未分化細胞は、誘導性多能性幹(iPS)細胞または胚性幹(ES)細胞である。
【0174】
別の局面において、本発明は、本発明の方法で調製された細胞を含む組成物を提供する。
【0175】
さらに別の局面では、本発明は、本発明の組成物を角膜治療のために使用することを提供する。ここで角膜治療の対象は角膜内皮疾患を含みうるが、それに限定されない。
【0176】
(純度検定)
別の局面において、本発明は、本発明のマーカーに結合する物質を含む、角膜内皮細胞を含む試料を作製する際の純度検定剤を提供する。あるいは本発明は、本発明のマーカーに結合する物質を、角膜内皮細胞を含むサンプルに適用する工程、および該物質と該細胞との結合を検出する工程を含む、角膜内皮細胞を含む試料を作製する際の純度を検定する方法であって、該結合の有無を判断することによって正常角膜内皮細胞と形質転換角膜内皮細胞とが識別される、方法を提供する。本発明はまた、本発明の純度を検定する方法で調製された細胞を用いる、治療または予防方法を提供する。1つの実施形態では、この治療または予防は角膜のためのものである。1つの実施形態では、前記治療または予防の対象は角膜内皮疾患を含む。疾患、治療および予防は、本明細書において記載される任意の技術および実施形態が適用され得ることが理解される。
【0177】
また、他の局面において、本発明は、本発明のマーカーを、角膜内皮細胞を含む試料を作製する際の純度検定の指標とする方法を提供する。
【0178】
純度の検定の方法としては、フローサイトメトリー等で発現抗原を測定し、これを全体の割合で除することによって純度を検定すること、磁気細胞分離法(MACS)、免疫染色を行い蛍光顕微鏡で観察すること、ウエスタンブロッティング法、PCR法などがあるが、これに限定されない。
【0179】
1つの具体的な手法としては、以下を挙げることができるがこれに限定されない:培養した角膜内皮細胞を正常細胞あるいは形質転換細胞マーカーに対する抗体と反応させたのちに、フローサイトメトリーにより目的の正常細胞あるいは形質転換細胞マーカーの発現強度の程度により細胞集団における正常細胞あるいは形質転換細胞の割合を検定することができる。
【0180】
純度検定の技術において使用される本発明のマーカーとしては、(正常細胞・形質転換細胞マーカー)をはじめとして、本明細書において記載される任意の形態が利用されうることが理解される。
【0181】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al.(1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987). Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M.(1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F. M.(1992). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis, M.A. et al.(1995). PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky,J.J.et al.(1999). PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得 る)が参考として援用される。
【0182】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait, M.J.(1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Gait, M.J.(1990). Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press; Eckstein, F. (1991). Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Adams, R.L. et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al.(1994). Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G.M. et al.(1996). Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T.(1996). Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0183】
例えば、本明細書において、当該分野に知られる標準法によって、例えば自動化DNA合成装置(Biosearch, Applied Biosystems等から商業的に入手可能なものなど)の使用によって、本発明のオリゴヌクレオチドを合成することも可能である。例えば、Stein et al.(1988, Nucl. Acids Res. 16: 3209)の方法によって、ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチドを合成することも可能であるし、調節孔ガラスポリマー支持体(Sarin et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7448-7451)等の使用によって、メチルホスホネート・オリゴヌクレオチドを調製することも可能である。
【0184】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0185】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0186】
必要な場合、以下の実施例で用いる動物の取り扱いは、京都府立医科大学または同志社大学において規定される基準を遵守し、ヘルシンキ宣言に基づいて行った。また、視覚および眼科研究における動物の使用についてのARVO宣言(the ARVO Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Research)に従って動物の飼育および取り扱いを行った。また、試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma、和光純薬、ナカライ、abcam、Santa Cruz Biotechnology、R & D Systems、Abnova、AssayPro、Origene、Biobyt、Biorad、Cell Signaling Technology、GE Healthcare、IBL等)の同等品でも代用可能である。
【0187】
(実験材料と方法)
(材料)
(角膜組織)
本実験で使用した全てのヒト角膜組織はアメリカシアトルアイバンクのSightLifeTM(Northwest Lions Foundation)より輸入されたものを使用した。また、全てのサル角膜組織は、他の研究目的により安楽死したカニクイザル(日精バイリス株式会社滋賀研究所(Nissei Bilis Co., Ltd.)Ohtsu, Japan、株式会社ケアリー(Keari Co., Ltd.)Wakayama, Japan)の角膜を使用した。全ての角膜を、保存培地(Optisol;Chiron Vision Corporation,Irvine,CA)中、4℃で保存した。
【0188】
(細胞培養)
ヒト角膜内皮細胞初代培養では、角膜組織から内皮細胞層を含むデスメ膜を剥離し、OPTIMEM-Iに溶解した2mg/ml Collagenase A(カタログ番号:70164923;Roche Applied Science,Penzberg, Germany)に入れて37℃でインキュベートした。12時間後、1000rpmで5分間遠心分離して上清を除去後、沈殿している角膜内皮細胞塊に培養培地を加えて混和し、FNC Coating Mix(カタログ番号:0407;Athena Enzyme Systems, Baltimore,MD,USA)をコートした12ウェルプレートへ全量を播種した。培養培地はOPTIMEM-I(カタログ番号:51985;Gibco-Invitrogen, Carlsbad, CA)に8%ウシ胎仔血清(カタログ番号:10437-028;fetal bovine serum;FBS;BioWest,France)、50μg/ml Gentamicin(Invtirogen)、10μM Y-27632(Calbiochem, La Jolla,CA)を加えたものを使用した。
【0189】
サル角膜内皮細胞初代培養では、角膜組織から内皮細胞層を含むデスメ膜を剥離し、DMEM(Gibco-Invitrogen)に溶解した2mg/ml Collagenase A(カタログ番号:70164923;Roche Applied Science, Penzberg, Germany)に入れて37℃でインキュベートした。12時間後、1000rpmで5分間遠心分離して上清を除去後、沈殿している角膜内皮細胞塊に培養培地を加えて混和し、FNC Coating Mix(カタログ番号:0407;Athena Enzyme Systems, Baltimore,MD,USA)をコートした12ウェルプレートへ全量を播種した。培養培地はDMEM(カタログ番号:12320;Gibco-Invitrogen)に10% FBS、50μg/ml ゲンタマイシン(カタログ番号:15710−064;Invitrogen)、2ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor;カタログ番号:13256−029;bFGF; Invitrogen)を加えたものを使用した。
【0190】
ヒト角膜は、初代培養までの期間が14日未満のものを用いた。ヒトおよびサルの角膜内皮細胞(CEC)の培養には、以前に報告した系[Koizumi N et al.、Exp Eye Res.,2012;95:60-67;Koizumi N et al.、Invest Ophthalmol Vis Sci..2007;48:4519-4526;Okumura N et al.、Am J Pathol. 2012;181:268-277]を使用した。
【0191】
培地交換は2日ごとに行った。継代は50〜80%コンフルエントになった時点で行った。継代方法は、Ca2+Mg2+非含有(free)PBS(PBS−;Nissui Pharmaceutical Co., Ltd., Tokyo. Japan)で細胞を洗浄し、TrypLETM Select(カタログ番号:12563;Invitrogen)を加え、37℃で5分間インキュベートした。プレートから細胞を剥離して回収し、1000rpm 5分間遠心分離後、培養培地を加えて細胞懸濁液とした。FNC Coating Mixをコートしたプレートへ1:2〜3の密度で細胞を播種した。
【0192】
(免疫染色)
培養した細胞を固定した後にCD73、CD166または、機能関連マーカーとしてZO−1、Na/K−ATPaseを用いて免疫染色を行い蛍光顕微鏡にて観察を行った。培養サルまたはヒト角膜内皮細胞を24ウェルプレート(Sigma-Aldrich Co.、St. Louis、MO)にて培養し、4%ホルムアルデヒドで10分間室温(RT)で固定し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに30分間インキュベートした。次に、Anti-HumanCD73(カタログ番号:550256;BD Pharmingen)あるいはAnti-Human CD166(カタログ番号:559260;BD Pharmingen)あるいはバリア機能に関連するタンパク質であるZO−1(Zymed Laboratories,Inc.,South San Francisco,CA)あるいはポンプ機能に関連するタンパク質であるNa/K−ATPase(Upstate Biotec,Inc.,Lake Placid,NY)の免疫組織染色を行った。それぞれの抗体の1:300希釈を用いて実施した。二次抗体には、Alexa Fluor(登録商標)488標識Alexa Fluor(登録商標)の1:1000希釈を使用した。次いで、細胞の核をDAPI(Vector Laboratories,Inc.,Burlingame,CA)で染色した。次いで、スライドを蛍光顕微鏡(BZ-9000, KEYENCE、Osaka、Japan)で観察した。
【0193】
(RT−PCR)
RT-PCR(半定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)により、CD166、CD73、GAPDHに対するPCR法を行った。プライマーは、オリゴヌクレオチド合成会社であるINVITROGENから購入し、脱塩処理したものを用いた。細胞からの総RNAの抽出にはRNEasy Mini Kit(QIAGEN社、カタログ番号:74106)を用いた。抽出したRNAはReverTra Ace(TOYOBO社(カタログ番号:TRT−101))により逆転写反応(42℃、60分間)を行い、TAKARA Taq Hot Start Version(タカラバイオ社、カタログ番号:RR001A)によりGAPDHを内部標準としてCD166、CD73を増幅した。同量のcDNAを、PCR機(GeneAmp 9700;Applied Biosystems)と、下記のプライマーペアによって増幅した。PCR反応には下記に示すプライマーを用いた。
・CD166−F:CCCCAGAGGAATTTTTGTTTTAC(配列番号17)
・CD166−R:AGCCTGATGTTATCTTTCATCCA(配列番号18)
・CD73−F:GTTCCTGTAGTCCAGGCCTATG(配列番号19)
・CD73−R:ACATTTCATCCGTGTGTCTCAG(配列番号20)
・GAPDH-F:GAGTCAACGGATTTGGTCGT(配列番号21)
・GAPDH-R:TTGATTTTGGAGGGATCTCG(配列番号22)
増幅されたDNA断片は1.5%アガロースゲル(ナカライテスク、カタログ番号:01149−76)で電気泳動し、エチジウムブロマイド(ナカライテスク、カタログ番号:14603−51)での染色により検出した。
【0194】
(フローサイトメトリー)
培養ヒト角膜内皮あるいは培養サル角膜内皮細胞をFNC Coating Mixをコートした培養皿へ播種し、37℃で5%COの条件下にてコンフルエントに到達するまで約14日間培養した。TrypLETM Selectにて細胞を剥離して回収した。Human Cell Surface Marker Screening Panel(BD LyoplateTM、BD Bio-sciences, Franklin Lakes, NJ)を用いて、説明書に準じてフローサイトメーター(BD FACSCantoTMII(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ))を使用してハイスループットの表面抗原解析を行った。また、培養サル角膜内皮を(BD AccuriTM C6 (BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ))を用いて表面抗原の解析を行った。TrypLETM Selectにて細胞を剥離して回収した細胞に70%エタノールを加えて−20℃で2時間インキュベートし、細胞を固定した。PBS−にて2回洗浄後、1% BSAを加え、室温で15分間インキュベートしてブロッキングした。APCMouse anti-Human CD73 (カタログ番号:560847;BD Pharmingen)あるいはPEMouse anti-HumanCD166 (カタログ番号:560903;BD Pharmingen)を使用し、室温で30分間インキュベートした。培養サル角膜内皮および不死化ヒト角膜内皮細胞のソーティングは、FACS Aria II(BD Bio−sciences, Franklin Lakes, NJ)を使用した。回収した細胞を1次抗体としてPurified Mouse anti-HumanCD73 (カタログ番号:550256;BD Pharmingen)にて室温で15分間インキュベートし、二次抗体はAlexa Fluor 488-conjugated goat anti-rabbit IgG(1:1500)を使用し、室温で20分間インキュベートした。CD73の発現の程度に応じてソーティングして、24ウェルプレート(Sigma−AldrichCo.、St. Louis、MO)にて培養した。
【0195】
(参考例1)
図1に示すように、従来の培養角膜内皮細胞生産における問題点をみるために、ドナー角膜からヒト角膜内皮細胞の分離、および培養を行った場合の、細胞の様子を観察した。実験観察条件は、上記(実験材料と方法)の欄で記載したとおりである。
【0196】
図1に示すように、左は正常の多角形の細胞形態を保って培養できた角膜内皮を示すが、通常の方法で分離し、培養すると容易に右下に示すように、形質転換を生じて線維芽細胞様に形態変化して細胞機能を消失する。
【0197】
培養角膜内皮細胞移植の臨床応用には、形質転換細胞を含まない角膜内皮細胞の作製が不可欠であるが、従来の技術では達成できないというのが現在の眼科学における状況である。そこで、培養した細胞の純度検定、純度をソーティングで高める、iPS細胞およびES細胞から角膜内皮細胞を誘導した際に正常な角膜内皮細胞をソーティングで選別するなどの目的に用いることが可能な、正常または形質転換角膜内皮細胞のマーカーの選定を行った。
【0198】
(調製例:正常角膜内皮細胞および形質転換角膜内皮細胞の不死化株の作製)
本例では、正常角膜内皮細胞および形質転換角膜内皮細胞の不死化株を作製した。
【0199】
(培養方法)
シアトルアイバンクから購入した研究用角膜より角膜内皮細胞を基底膜とともに機械的に剥離し、コラゲナーゼを用いて基底膜よりはがして回収後、初代培養を行った。ヒト細胞用の培地はOpti−MEM I Reduced−Serum Medium, Liquid(INVITROGEN カタログ番号:31985−070)に、8%FBS(BIOWEST、カタログ番号:S1820−500)、200mg/ml CaCl・2HO(SIGMA カタログ番号:C7902−500G)、0.08% コンドロイチン硫酸(SIGMA カタログ番号:C9819−5G)、20μg/mlアスコルビン酸(SIGMA カタログ番号:A4544−25G)、50μg/mlゲンタマイシン(INVITROGEN カタログ番号:15710−064)および5ng/ml EGF(INVITROGEN カタログ番号:PHG0311)を加えた3T3フィーダー細胞用の馴化させたものを基本培地として用いた。また、基本培地にSB431542(4−[4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−5−(2−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド)(1μmol/l)およびSB203580(4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルホニルフェニル)−5(4−ピリジル)イミダゾール<4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(1μmol/l)を添加したもの(「SB203580+SB431542+3T3馴化培地」という)で培養した。SB431542は、TOCRIS社
から得た(カタログ番号:1614)。SB203580はCALBIOCHEMから得た(カタログ番号:559389)。
【0200】
(取得方法)
図1で示したヒトドナー角膜由来の培養角膜内皮細胞のうち、形態が正常の細胞、形質転換した細胞それぞれをSV40ラージT抗原およびhTERT遺伝子を導入して不死化細胞株を作成した。具体的には、SV40ラージT抗原およびhTERT遺伝子をPCRにより増幅して、レンチウイルスベクター(pLenti6.3_V5-TOPO; Life Technologies Inc)に導入した。その後、レンチウイスルベクターを3種類のヘルパープラスミド(pLP1、pLP2、pLP/VSVG; Life Technologies Inc.)とともにトランスフェクション試薬(Fugene HD; Promega Corp., Madison, WI)を用いて293T細胞(RCB2202; Riken Bioresource Center, Ibaraki, Japan)に感染させた。48時間の感染後にウイスルを含む培養上清を回収して、5μg/mlのポリブレンを用いて、培養した正常形態の角膜内皮細胞、形質転換した角膜内皮細胞それぞれの培養液に添加して、SV40ラージT抗原およびhTERT遺伝子を導入し不死化した。
【0201】
(実施例1:形質転換角膜内皮細胞および正常角膜内皮細胞におけるフローサイトメトリー)
本発明者らは、フローサイトメトリーを用いたハイスループット解析により、正常ヒト角膜内皮細胞および形質転換した細胞の表面マーカーのスクリーニングを行い、候補マーカーの選定を進めた。
【0202】
ヒト角膜内皮細胞を上述の(実験材料と方法)に記載の方法で培養して、細胞形態が正常の細胞と形質転換した細胞をHuman Cell Surface Marker Screening Panel (BD LyoplateTM、BD Bioscience)を用いてフローサイトメトリーを用いたハイスループット解析を行った。そこで、正常細胞および形質転細胞におけるそれぞれの表面抗原の発現を比較して、正常細胞において増強しているものを正常細胞のマーカー候補とした(表2)。一方、同様に形質転換細胞で発現が増強しているものを形質転換細胞のマーカーとした(表3)。
【0203】
(表2 正常転換ヒト角膜内皮細胞において強発現である表面抗原)
【0204】
【表2】
【0205】
(表3 形質転換ヒト角膜内皮細胞において強発現である表面抗原)
【0206】
【表3】
【0207】
また、ヒト角膜内皮細胞と同様にカニクイザルの角膜組織から分離した正常および形質転換した角膜内皮細胞においても同様の解析を行った。ヒト角膜内皮細胞における候補マーカーについてサル角膜内皮細胞において同様の傾向を示したマーカーを特に確度の高い候補マーカーとして表4に示す。使用したプロトコールは、上記(実験材料と方法)に記載の方法に準じた。
【0208】
(表4 角膜内皮細胞の代表的表面抗原マーカー)
【0209】
【表4】
【0210】
その結果、以下の正常角膜内皮細胞マーカーおよび形質転換角膜内皮細胞マーカーを同定した。以下にそのマーカーを示す。
【0211】
ヒト角膜内皮細胞の正常細胞におけるマーカーはCD166、HLA−A2、CD66(a,c,d,e)、CD98、CD59、CD54、CD340、CD47、EGF−R、CD29、CD74、CD165、CD221、CD49a、SSEA−4、CD130、CD49fである。
【0212】
また、形質転換細胞におけるマーカーはCD26、CD9、CD49b、CD49e、CD13、CD99、CD105、CD63、CD58、CD201、CD56、CD44、CD55、CD71、CD73、CD91、HLA−DQ、CD164、CD49d、CD49c、CD90、MICA/B、CD46、CD140b、CD146、CD147、CD81、CD151、CD200、CD10である。
【0213】
特に確度の高いマーカーは、正常細胞ではCD98、CD166、CD340を、形質転換細胞ではCD9、CD49e、CD44、CD73である。
【0214】
本発明者らは、上記のうち、CD166およびCD73を選択して更なる解析を進めた。なお、正常細胞ではCD166が高発現であり、CD73が低発現、一方で、形質転換細胞ではCD166が低発現であり、CD73が高発現であることが示されている。
【0215】
これらの表面抗原のマーカーについて説明すると、CD166は増殖や遊走に関与する細胞集団に広く分布するI型膜貫通タンパク質であり、造血細胞や内皮細胞、骨髄間葉系幹細胞、線維芽細胞など、様々な細胞に発現している。CD73は中性条件下でAMPをアデノシンへと変換する作用を有する膜結合型酵素であり、TおよびBリンパ球のサブセットや濾胞樹状細胞、内皮細胞、骨髄ストローマ細胞などに発現している。
【0216】
(実施例2:培養サル角膜内皮細胞における解析)
本実施例では、培養サル角膜内皮細胞を用いて、形質転換細胞および正常細胞におけるこれらの細胞表面マーカーの解析を行った。
【0217】
サル角膜内皮細胞の培養を行った。具体的には、サル角膜組織から内皮細胞層を含むデスメ膜を剥離し、DMEM(Gibco−Invitrogen)に溶解した2mg/ml Collagenase A(カタログ番号:70164923;Roche Applied Science,Penzberg, Germany)に入れて37℃でインキュベートした。12時間後、1000rpmで5分間遠心分離して上清を除去後、沈殿している角膜内皮細胞塊に培養培地を加えて混和し、FNC Coating Mix(カタログ番号:0407;Athena Enzyme Systems, Baltimore,MD,USA)をコートした12ウェルプレートへ全量を播種した。培養培地はDMEM(カタログ番号:12320;Gibco−Invitrogen)に10% FBS、50μg/ml ゲンタマイシン(カタログ番号:15710−064;Invitrogen)、2ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor;カタログ番号:13256−029;bFGF; Invitrogen)を加えたものを使用した。同様の方法で培養した際に、正常の形態に培養できた角膜内皮細胞を正常角膜内皮細胞として、線維芽細胞様に形質転換を生じた細胞を形質転換細胞として以下の検討に用いた。図2の位相差顕微鏡像において左側に示す正常角膜内皮細胞は、1つ1つの細胞が小さく、六角形を主とする多角形細胞から成る様子が示されている。それに対し、右側に示す、線維芽細胞様に形質転換を起こしている細胞では、1つ1つの細胞が大きく、細長い形状をしている。
【0218】
次に、これらの2種類の状態(正常角膜内皮細胞、形質転換細胞)の培養サル角膜内皮細胞におけるCD166、CD73のフローサイトメトリーを行った。免疫染色のプロトコールは、(実験材料および方法)に記載したものに準じた。
【0219】
結果を図3に示す。左側が正常角膜内皮細胞、右側が形質転換細胞である。上段はCD166、下段はCD73を用いてフローサイトメトリーを行ったものである。この結果から、コントロールと比べると、CD166は正常角膜内皮細胞では高発現であるのに対して、形質転換細胞ではコントロールと同程度の発現量であった。また、CD73においてはコントールと比較して、正常細胞におけるより形質転換細胞においては発現の強い増強を認めた。このことは、CD166は正常角膜内皮細胞において高発現であり、CD73は形質転換細胞において高発現であるということがわかる。この結果はフローサイトメトリーによるスクリーニング解析結果と一致するものである。
【0220】
次に、これらの2種類の状態(正常角膜内皮細胞、線維芽細胞様に形質転換を起こしている細胞)の培養サル角膜内皮細胞におけるCD166、CD73のRT−PCRを行った。プロトコールは、(実験材料および方法)に記載したものに準じた。
【0221】
結果を図4に示す。上からCD166、CD73、およびコントロールとしてのGAPDHのバンドであり、左の列が正常細胞、右の列が形質転換細胞である。この結果から、遺伝子レベルにおいてもCD166は正常細胞で高発現、CD73は形質転換細胞で高発現となっていることが明確に確認された。これはフローサイトメトリーによるスクリーニング解析結果と一致している。
【0222】
次に、これらの2種類の状態(正常角膜内皮細胞、形質転換細胞)の培養サル角膜内皮細胞におけるCD166、CD73の発現を免疫染色においても確認した。プロトコールは、(実験材料および方法)に記載したものに準じた。
【0223】
結果を図5に示す。左からCD166およびCD73を示し、上段は正常細胞、下段は形質転換細胞のものを示す。これらの結果から、正常細胞ではCD166が高発現、CD73が低発現であり、一方形質転換細胞ではCD166が低発現、CD73が高発現であることが示され、フローサイトメトリーによるスクリーニング解析結果と一致することを確認できた。以上の結果より正常細胞マーカーとしてCD166、形質転換細胞マーカーとしてCD73を代表例として詳細な検討を行ったが、フローサイトメトリー、PCR、免疫染色においてマーカーとして利用可能であることが実証された。
【0224】
(実施例3:培養サル角膜内皮細胞における解析)
本実施例では、サル正常および形質転換細胞をCD73を代表としてソーティングして、細胞の純化に応用可能であることを示した。図6左上に正常サル角膜内皮細胞、右上に形質転換細胞の位相差顕微鏡像を示す。これらの2種類の状態(正常角膜内皮細胞、形質転換細胞)のサル角膜内皮細胞を1:1の比率で混合した後に、CD73によりフローサイトメトリー解析を行った。CD73の高発現の細胞群と低発現の細胞群の2群に分けてソーティングして培養した。左下はCD73低発現の細胞(CD73(−))、右下はCD73高発現の細胞(CD73(+))のソーティング後の位相差顕微鏡写真である。CD73(−)では、正常細胞の形態である多角形形態の細胞であるのに対してCD73(+)では、形質転換した線維芽細胞様形態となった細胞である。このことから、CD73をマーカーとして用いることで、正常細胞と形質転換して線維芽状となった細胞とをソーティングに用いることが可能であることが示された。
【0225】
(実施例4:不死化ヒト角膜内皮細胞における解析)
本実施例では、調製例にて調製した不死化ヒト角膜内皮細胞を用いて、形質転換細胞および正常細胞におけるこれらの細胞表面マーカーの解析を行った。ヒト角膜組織から内皮細胞層を含むデスメ膜を剥離し、OPTIMEM−Iに溶解した2mg/ml Collagenase A(カタログ番号:70164923;Roche Applied Science,Penzberg, Germany)に入れて37℃でインキュベートした。12時間後、1000rpmで5分間遠心分離して上清を除去後、沈殿している角膜内皮細胞塊に培養培地を加えて混和し、FNC Coating Mix(カタログ番号:0407;Athena Enzyme Systems, Baltimore,MD,USA)をコートした12ウェルプレートへ全量を播種した。培養したヒト角膜内皮細胞にSV40およびhTERT遺伝子の導入を行い不死化細胞を作製した。作製したヒト角膜内皮不死化細胞から、正常の細胞形態または線維芽細胞様に形質転換した細胞をそれぞれクローニングして、正常細胞、形質転換細胞として以下の検討に用いた。
【0226】
そのヒト角膜内皮不死化細胞の位相差顕微鏡像を図7に示す。左は正常角膜内皮細胞を示し、右は形質転換細胞を示す。培養サル細胞と同様に、左側に示す正常角膜内皮細胞は、1つ1つの細胞が小さく、六角形を主とする多角形細胞から成る様子が示されている。それに対し、右側に示す、線維芽細胞様に形質転換を起こしている細胞では、1つ1つの細胞が大きく、細長い形状をしている。
【0227】
次に、CD73を例として、本特許におけるマーカーを用いることで、正常細胞をソーティングして純化できるか否かの試験を行った。正常形態および形質転換不死化ヒト角膜内皮細胞の混合培養細胞をCD73によりフローサイトメトリー解析を行った。
【0228】
結果を図8に示す。CD73によるフローサイトメトリーにより、CD73の高発現の細胞群と低発現の細胞群の2群からなることが分かる。次に、図8のP4で示されるCD73低発現の細胞と、P5で示されるCD73高発現の細胞をソーティングして細胞培養を行った。
【0229】
結果を図9に示す。左はCD73低発現の細胞(CD73(-))、中はCD73高発現の細胞(CD73(+))のソーティング後の位相差顕微鏡写真である。CD73(−)では、正常細胞の形態である多角形形態の細胞であるのに対してCD73(+)では、形質転換した線維芽細胞様形態となった細胞である。右はコントロールとしてソーティングを行わずに培養した位相差顕微鏡像であるが、正常の形態での細胞と、形質転換した細胞が混在する。これらのことから、CD73をマーカーとして用いることで、正常細胞と形質転換して線維芽状となった細胞とをソーティングに用いることが可能であることが示された。
【0230】
次に、CD73によりソーティングした後の候補マーカーの発現解析を行った。ここでは、CD73、CD166の発現解析を行った。プロトコールは、(実験材料および方法)に記載したものに準じた。
【0231】
結果を図10に示す。上段がCD73(−)としてソーティングした細胞を示し、下段がCD73(+)としてソーティングした細胞を示す。左側はCD73による染色、右側はCD166による染色を示す。CD73(−)では、CD73が染色されないが、CD166が強く染色された。また、CD73(+)ではCD73が染色される一方で、CD166の発現がCD73(−)と比べて減弱を認めた。
【0232】
次に、CD73によりソーティング下後の機能関連マーカーの発現解析を行った。ここでは、ZO−1およびNa/K−ATPaseの発現を解析した。プロトコールは、(実験材料および方法)に記載したものに準じた。
【0233】
結果を図11に示す。上段がCD73(−)を示し、下段がCD73(+)を示す。左側は、ZO−1の発現を示し、右側は、Na/K−ATPaseの発現を示す。CD73(−)では、正常機能を示すZO−1およびNa/K−ATPaseがいずれも有意に多く発現していることが示される。したがって、CD73(−)は、機能的な面でも、正常細胞を形質転換した細胞から区別することができるマーカーであることが示される。
【0234】
(実施例5:本発明のマーカーを用いた正常細胞が濃縮された試料の調製方法)
培養した角膜内皮細胞を本発明の形質転換細胞のマーカーを用いてソーティングして形質転換細胞を除去することで、正常形態および正常機能を有する角膜内皮細胞を純化することが可能となる。また、本発明の正常細胞のマーカーを用いてソーティングすること正常形態および正常機能を有する角膜内皮細胞を選択的に培養することが可能となる。また、角膜組織から角膜内皮細胞を培養する際に、角膜上皮細胞、角膜実質細胞、結膜上皮細胞、結膜実質細胞などの角膜内皮細胞以外の細胞がコンタミネーションした際には本発明のマーカーを用いてソーティングすることで角膜内皮細胞を純化することが可能である。また、本技術を用いることで、iPS細胞またはES細胞から誘導した細胞群から、本発明のマーカーを用いてソーティングすることで角膜内皮細胞を純化することが可能である。
【0235】
(実施例6:本発明のマーカーを用いた正常細胞が濃縮された試料を用いた治療)
実施例5で作製した、純度を高めた培養角膜内皮細胞またはiPS細胞またはES細胞から誘導した角膜内皮細胞をキャリアを用いるあるいは用いない角膜内皮細胞シートとして角膜内皮機能不全患者に移植することで治療可能である。また、細胞の懸濁液として前房内などの眼内に注入、注射することで治療可能である。
【0236】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本願は日本国特許出願特願2013-157597に対する優先権を主張しその内容は参考としてその全体が援用される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0237】
眼細胞の線維芽様に形質転換した細胞と正常細胞とを区別するマーカーが提供され、角膜移植に関連する技術に関与する産業(細胞培養産業、製薬等)において利用可能な技術が提供される。
【配列表フリーテキスト】
【0238】
配列番号1:CD98の重サブユニットタンパク質(Gene ID(Entrez):6520;NM_001013251(NM_001012661)およびNP_001012680)の核酸配列
配列番号2:CD98の重サブユニットタンパク質(Gene ID(Entrez):6520;NM_001013251(NM_001012661)およびNP_001012680)のアミノ酸配列
配列番号3:CD98の軽サブユニットタンパク質(Gene ID(Entrez):8140 NM_003486;NP_003477)の核酸配列
配列番号4:CD98の軽サブユニットタンパク質(Gene ID(Entrez):8140 NM_003486;NP_003477)のアミノ酸配列
配列番号5:CD166(Gene ID(Entrez):214(human)、NM_001243280(mRNA)、NP_001230209(タンパク質))の核酸配列
配列番号6:CD166(Gene ID(Entrez):214(human)、NM_001243280(mRNA)、NP_001230209(タンパク質))のアミノ酸配列
配列番号7:CD340(Entrez Gene ID: (Hu) 2064 であり、NM_0010005862.1)の核酸配列
配列番号8:CD340(Entrez Gene ID: (Hu) 2064 、NM_0010005862.1)のアミノ酸配列
配列番号9:CD9(Entrez Gene ID:928、NM_001769(Hu)、NP_001760(Hu))の核酸配列
配列番号10:CD9(Entrez Gene ID:928、NM_001769(Hu)、NP_001760(Hu))のアミノ酸配列
配列番号11:CD49e(Entrez Gene ID:3678、NM_002205(Hu)、NP_002196(Hu))の核酸配列
配列番号12:CD49e(Entrez Gene ID:3678、NM_002205(Hu)、NP_002196(Hu))のアミノ酸配列
配列番号13:CD44(Entrez Gene ID:960、NM_000610、NP_000601)の核酸配列
配列番号14:CD44(Entrez Gene ID:960、NM_000610、NP_000601)のアミノ酸配列
配列番号15:CD73(Entrez Gene ID:4907、NM_001204813、NP_001191742)の核酸配列
配列番号16:CD73(Entrez Gene ID:4907、NM_001204813、NP_001191742)のアミノ酸配列
配列番号17:プライマーCD166−F CCCCAGAGGAATTTTTGTTTTAC
配列番号18:プライマーCD166−R AGCCTGATGTTATCTTTCATCCA
配列番号19:プライマーCD73−F GTTCCTGTAGTCCAGGCCTATG
配列番号20:プライマーCD73−R ACATTTCATCCGTGTGTCTCAG
配列番号21:プライマーGAPDH-F GAGTCAACGGATTTGGTCGT
配列番号22:プライマーGAPDH-R TTGATTTTGGAGGGATCTCG
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]