特許第6873955号(P6873955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873955
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】遠心成形用水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20210510BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20210510BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20210510BHJP
   C04B 24/04 20060101ALI20210510BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20210510BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20210510BHJP
   B28B 1/20 20060101ALI20210510BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B24/12 A
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B24/26 H
   C04B24/04
   C04B24/06 A
   C04B40/02
   B28B1/20 C
   B28B11/24
【請求項の数】49
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2018-172542(P2018-172542)
(22)【出願日】2018年9月14日
(65)【公開番号】特開2019-64905(P2019-64905A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2017-188731(P2017-188731)
(32)【優先日】2017年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-188732(P2017-188732)
(32)【優先日】2017年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】島田 恒平
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡内 伸曉
(72)【発明者】
【氏名】吉浪 雄亮
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−175787(JP,A)
【文献】 特開2014−181171(JP,A)
【文献】 特開昭60−016848(JP,A)
【文献】 特開昭61−122147(JP,A)
【文献】 特開2017−007922(JP,A)
【文献】 米国特許第05525155(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
C04B 40/02
B28B 1/20
B28B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)重量平均分子量が1,500以上300,000以下であり、かつ、四級化率が5%以上100%以下である、カチオンポリマー(以下、(A1)成分という)、(B1)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(B1)成分という)、水硬性粉体、骨材及び水を含有する、遠心成形用水硬性組成物であって、
(A1)成分と(B1)成分の合計含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下であり、
(A1)成分の含有量と(B1)成分の含有量との質量比(B1)/(A1)が、0.50以上100以下である、遠心成形用水硬性組成物。
【請求項2】
(A1)成分の重量平均分子量が、2,000以上200,000以下である、請求項1に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項3】
(A1)成分の四級化率が、7%以上100%以下である、請求項1又は2に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項4】
水/水硬性粉体の比が10質量%以上30質量%以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項5】
水/水硬性粉体の比が10質量%以上25質量%以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項6】
(A1)成分の含有量が水硬性粉体100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項7】
次の工程を含む、水硬性組成物硬化体の製造方法。
工程1:(A1)重量平均分子量が1,500以上300,000以下であり、かつ、四級化率が5%以上100%以下である、カチオンポリマー(以下、(A1)成分という)と(B1)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(B1)成分という)と水硬性粉体と骨材と水とを、
(A1)成分と(B1)成分の合計が、水硬性粉体100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下、
(A1)成分と(B1)成分との質量比(B1)/(A1)が、0.50以上100以下となるように混合して、水硬性組成物を得る工程。
工程2:工程1で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
工程3:工程2で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする工程。
工程4:工程3で得られた型締めされた水硬性組成物を型枠中で凝結させる工程。
【請求項8】
工程1で、水/水硬性粉体の比が10質量%以上30質量%以下の水硬性組成物を調製する、請求項に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項9】
工程1で、水/水硬性粉体の比が10質量%以上25質量%以下の水硬性組成物を調製する、請求項に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項10】
工程1で、水硬性粉体100質量部に対して、(A1)成分を0.01質量部以上1質量部以下混合する、請求項の何れか1項に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項11】
工程4の後に、下記の工程5を有する、請求項10の何れか1項に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
工程5:工程4で得られた凝結された水硬性組成物を型枠中で蒸気養生する工程。
【請求項12】
工程5で、蒸気養生温度が40℃以上90℃以下である、請求項11に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項13】
下記(A2)成分、下記(B2)成分、及び水を含有する、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
(A2)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体であって、カルボキシル基が未中和の化合物
(B2)成分:ポリカルボン酸系分散剤であって、カルボキシル基が未中和の分散剤
【請求項14】
(A2)成分と(B2)成分の合計含有量が、0.02質量%以上10質量%以下である、請求項13に記載の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項15】
(A2)成分の含有量と(B2)成分の含有量との質量比(B2)/(A2)が、0.01以上100以下である、請求項13又は14に記載の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項16】
下記(A2)成分と下記(B2)成分と水とを混合する、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法。
(A2)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体であって、カルボキシル基が未中和の化合物
(B2)成分:ポリカルボン酸系分散剤であって、カルボキシル基が未中和の分散剤
【請求項17】
下記(A2)成分、下記(B2)成分、水硬性粉体、骨材及び水を含有する、遠心成形用水硬性組成物。
(A2)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体であって、カルボキシル基が未中和の化合物
(B2)成分:ポリカルボン酸系分散剤であって、カルボキシル基が未中和の分散剤
【請求項18】
(A2)成分の重量平均分子量が、1,000以上100,000以下である、請求項17に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項19】
(A2)成分の重量平均分子量が、2,000以上50,000以下である、請求項17に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項20】
(A2)成分の含有量が水硬性粉体100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下である、請求項1719の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項21】
(A2)成分の含有量と(B2)成分の含有量との質量比(B2)/(A2)が、0.01以上100以下である、請求項1720の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項22】
水/水硬性粉体の比が10質量%以上30質量%以下である、請求項1721の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項23】
水/水硬性粉体の比が10質量%以上25質量%以下である、請求項1721の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項24】
次の工程を含む、水硬性組成物硬化体の製造方法。
工程1’:下記(A2)成分と下記(B2)成分と水硬性粉体と骨材と水とを混合し、水硬性組成物を得る工程。
(A2)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合
体であって、カルボキシル基が未中和の化合物
(B2)成分:ポリカルボン酸系分散剤であって、カルボキシル基が未中和の分散剤
工程2’:工程1’で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
工程3’:工程2’で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする工程。
工程4’:工程3’で得られた型締めされた水硬性組成物を型枠中で凝結させる工程。
【請求項25】
工程1’で、水/水硬性粉体の比が10質量%以上30質量%以下の水硬性組成物を調製する、請求項24に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項26】
工程1’で、水/水硬性粉体の比が10質量%以上25質量%以下の水硬性組成物を調製する、請求項24に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項27】
工程1’で、水硬性粉体100質量部に対して、(A2)成分を0.01質量部以上1質量部以下混合する、請求項2426の何れか1項に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項28】
工程4’の後に、下記の工程5’を有する、請求項2427の何れか1項に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
工程5’:工程4’で得られた凝結された水硬性組成物を型枠中で蒸気養生する工程。
【請求項29】
工程5’で、蒸気養生温度が40℃以上90℃以下である、請求項28に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項30】
下記(A3)成分、下記(B1)成分、下記(C)成分、及び水を含有し、20℃におけるpHが5以下である、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
(A3)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体
(B1)成分:ポリカルボン酸系分散剤
(C)成分:ブレンステッド酸
【請求項31】
20℃におけるpHが4.8以下である、請求項30に記載の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項32】
(C)成分がカルボン酸である、請求項30又は31に記載の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項33】
(C)成分が、乳酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、及び安息香酸から選ばれる1種以上である、請求項3032の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項34】
(A3)成分と(B1)成分の合計含有量が、1.5質量%以上100質量%以下である、請求項3033の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項35】
(A3)成分の含有量と(B1)成分の含有量との質量比(B1)/(A3)が、0.1以上100以下である、請求項3034の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項36】
下記(A3)成分、下記(B1)成分、下記(C)成分、及び水を、pHが5以下となるように混合する、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法。
(A3)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体
(B1)成分:ポリカルボン酸系分散剤
(C)成分:ブレンステッド酸
【請求項37】
下記(A3)成分、下記(B1)成分、下記(C)成分、水硬性粉体、骨材及び水を含有する、遠心成形用水硬性組成物。
(A3)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体
(B1)成分:ポリカルボン酸系分散剤
(C)成分:ブレンステッド酸
【請求項38】
(A3)成分の重量平均分子量が、1,000以上100,000以下である、請求項37に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項39】
(A3)成分の重量平均分子量が、2,000以上50,000以下である、請求項37に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項40】
(A3)成分の含有量が水硬性粉体100質量部に対して0.01質量部以上1質量部以下である、請求項3739の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項41】
(A3)成分の含有量と(B1)成分の含有量との質量比(B1)/(A3)が、0.1以上100以下である、請求項3740の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項42】
水/水硬性粉体の比が10質量%以上30質量%以下である、請求項3741の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項43】
水/水硬性粉体の比が10質量%以上25質量%以下である、請求項3741の何れか1項に記載の遠心成形用水硬性組成物。
【請求項44】
次の工程を含む、水硬性組成物硬化体の製造方法。
工程1”−1:下記(A3)成分、下記(B1)成分、下記(C)成分、及び水を、pHが5以下となるように混合し、分散剤組成物を得る工程
(A3)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体
(B1)成分:ポリカルボン酸系分散剤
(C)成分:ブレンステッド酸
工程1”−2:工程1”−1で得られた分散剤組成物と水硬性粉体と骨材と水とを混合し、水硬性組成物を得る工程。
工程2”:工程1”−2で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
工程3”:工程2”で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする工程。
工程4”:工程3”で得られた型締めされた水硬性組成物を型枠中で凝結させる工程。
【請求項45】
工程1”−2で、水/水硬性粉体の比が10質量%以上30質量%以下の水硬性組成物を調製する、請求項44に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項46】
工程1”−2で、水/水硬性粉体の比が10質量%以上25質量%以下の水硬性組成物を調製する、請求項44に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項47】
工程1”−2で、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分を0.01質量部以上1質量部以下となるように混合する、請求項4446の何れか1項に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【請求項48】
工程4”の後に、下記の工程5”を有する、請求項4447の何れか1項に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
工程5”:工程4”で得られた凝結された水硬性組成物を型枠中で蒸気養生する工程。
【請求項49】
工程5”で、蒸気養生温度が40℃以上90℃以下である、請求項48に記載の水硬性組成物硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、遠心成形用水硬性組成物、並びに水硬性組成物硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管類、パイル、ポール等の中空円筒型コンクリート成形品を製造する方法として、遠心成形法が知られている。この遠心成形法は、型枠内に混練したコンクリート材料を投入し、型枠を高速回転させて生じる遠心力によって、型枠内面にコンクリートを押し付けるようにして締固める方法である。
遠心成形用水硬性組成物において、遠心成形製品の成形性の観点から、分散剤はナフタレン系分散剤を用いることが多いが、国内外を問わず、高強度化、耐震強化へのニーズが高まっており、非特許文献1に開示されているように、高強度の硬化体を求められる領域では、コンクリートの単位水量が少ない領域においてはナフタレン系分散剤で混練が困難な領域が現れ、実運用が困難である。そのため、減水性の高いポリカルボン酸系分散剤の利用が進んでいるが、ポリカルボン酸系分散剤を利用した際に問題となるのが遠心成形製品の成形性である。
【0003】
遠心成形製品の成形性が良好でないと、所定の強度が得られないことや、打設の際の掘削工程により多くの労力を要すること、遠心成形の結果排出されるスラッジの処理に多額の処理費用がかかることとなる。またポリカルボン酸系分散剤を使用した場合、遠心成形製品の成形性を保つためには、水硬性組成物の単位水量を特定の範囲とする必要があり、管理幅が狭く、また材料の表面水変動や温度、湿度変化等により分散剤の必要添加量が変動するため管理が難しく、成形性の良い遠心成形製品の製造が困難である。そのため、水硬性組成物の水量および分散剤添加量等の配合条件の幅広い範囲で優れた成形性を発現する遠心成形用水硬性組成物が望まれる。
【0004】
またポリカルボン酸系分散剤を含有する分散剤組成物は、水硬性組成物の製造において、添加剤の保管や計量などの設備投資を少なくするために、他の添加剤と分層せずに均一な状態で一液化させることが望ましい。
【0005】
特許文献1には、非晶質超微粒子シリカと高性能原水剤及び遠心成形助剤を含有し、水セメント比が35%以下のコンクリートを、遠心力35G以下の中速回転で締固めることを特徴とするコンクリートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−122147号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本建築学会構造系論文集、第606号、29−34頁、一般財団法人 日本建築学会、2006年8月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、分層せずに均一な状態で一液化を維持することができ、且つ遠心成形用水硬性組成物に添加した際に、成形性に優れた硬化体が得られる配合条件、例えば、水量等の条件範囲が広い、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、並びにポリカルボン酸系分散剤を用いる遠心成形用水硬性組成物において、成形性に優れた硬化体が得られる配合条件、例えば、水量、分散剤添加量等の条件範囲が広い、遠心成形用水硬性組成物、及び水硬性組成物硬化体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A1)重量平均分子量が1,500以上300,000以下であり、かつ、四級化率が5%以上100%以下である、カチオンポリマー(以下、(A1)成分という)、(B1)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(B1)成分という)、水硬性粉体、骨材及び水を含有する、遠心成形用水硬性組成物に関する。以下、本発明において、前記遠心成形用水硬性組成物を第1の遠心成形用水硬性組成物とする。
【0010】
また本発明は、次の工程を含む、水硬性組成物硬化体の製造方法に関する。
工程1:前記(A1)成分と前記(B1)成分と水硬性粉体と骨材と水とを混合し、水硬性組成物を得る工程。
工程2:工程1で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
工程3:工程2で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする工程。
工程4:工程3で得られた型締めされた水硬性組成物を型枠中で凝結させる工程。
以下、本発明において、前記水硬性組成物硬化体の製造方法を第1の水硬性組成物硬化体の製造方法とする。
【0011】
また本発明は、下記(A2)成分、下記(B2)成分、及び水を含有する、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物に関する。
(A2)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体であって、カルボキシル基が未中和の化合物
(B2)成分:ポリカルボン酸系分散剤であって、カルボキシル基が未中和の分散剤
以下、本発明において、前記遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物を第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物とする。
【0012】
また本発明は、前記(A2)成分と前記(B2)成分と水とを混合する、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に関する。以下、本発明において、前記遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法を第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法とする。
【0013】
また本発明は、前記(A2)成分、前記(B2)成分、水硬性粉体、骨材及び水を含有する、遠心成形用水硬性組成物に関する。以下、本発明において、前記遠心成形用水硬性組成物を第2の遠心成形用水硬性組成物とする。
【0014】
また本発明は、次の工程を含む、水硬性組成物硬化体の製造方法に関する。
工程1’:前記(A2)成分と前記(B2)成分と水硬性粉体と骨材と水とを混合し、水硬性組成物を得る工程。
工程2’:工程1’で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
工程3’:工程2’で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする工程。
工程4’:工程3’で得られた型締めされた水硬性組成物を型枠中で凝結させる工程。
以下、本発明において、前記水硬性組成物硬化体の製造方法を第2の水硬性組成物硬化体の製造方法とする。
【0015】
また本発明は、下記(A3)成分、下記(B1)成分、下記(C)成分、及び水を含有し、20℃におけるpHが5以下である、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物に関する。
(A3)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体
(B1)成分:ポリカルボン酸系分散剤
(C)成分:ブレンステッド酸
以下、本発明において、前記遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物を第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物とする。
【0016】
また本発明は、前記(A3)成分、前記(B1)成分、前記(C)成分、及び水を、pHが5以下となるように混合する、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に関する。以下、本発明において、前記遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法を第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法とする。
【0017】
また本発明は、前記(A3)成分、前記(B1)成分、前記(C)成分、水硬性粉体、骨材及び水を含有する、遠心成形用水硬性組成物に関する。以下、本発明において、前記遠心成形用水硬性組成物を第3の遠心成形用水硬性組成物とする。
【0018】
また本発明は、次の工程を含む、水硬性組成物硬化体の製造方法に関する。
工程1”−1:下記(A3)成分、下記(B1)成分、下記(C)成分、及び水を、pHが5以下となるように混合し、分散剤組成物を得る工程
(A3)成分:アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体
(B1)成分:ポリカルボン酸系分散剤
(C)成分:ブレンステッド酸
工程1”−2:工程1”−1で得られた分散剤組成物と水硬性粉体と骨材と水とを混合し、水硬性組成物を得る工程。
工程2”:工程1”−2で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
工程3”:工程2”で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする工程。
工程4”:工程3”で得られた型締めされた水硬性組成物を型枠中で凝結させる工程。
以下、本発明において、前記水硬性組成物硬化体の製造方法を第3の水硬性組成物硬化体の製造方法とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポリカルボン酸系分散剤を用いる遠心成形用水硬性組成物において、成形性に優れた硬化体が得られる配合条件、例えば、水量、分散剤添加量等の条件範囲が広い、遠心成形用水硬性組成物、及び水硬性組成物硬化体の製造方法が提供される。また本発明によれば、ポリカルボン酸系分散剤を用いる遠心成形用水硬性組成物において、該水硬性組成物の水量、及び分散剤添加量の幅広い配合条件の範囲で硬化体の成形性に優れる、遠心成形用水硬性組成物、及び水硬性組成物硬化体の製造方法が提供される。これらの知見は、例えば、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物、及び第1の水硬性組成物硬化体の製造方法に適用できる。
【0020】
本発明によれば、分層せずに均一な状態で一液化を維持することができ、且つ遠心成形用水硬性組成物に添加した際に、成形性に優れた硬化体が得られる配合条件、例えば、水量等の条件範囲が広い、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、並びにポリカルボン酸系分散剤を用いる遠心成形用水硬性組成物において、成形性に優れた硬化体が得られる配合条件、例えば、水量等の条件範囲が広い、遠心成形用水硬性組成物、及び水硬性組成物硬化体の製造方法が提供される。また本発明によれば、分層せずに均一な状態で一液化を維持することができ、且つ遠心成形用水硬性組成物に添加した際に、該水硬性組成物の水量の幅広い範囲で硬化体の成形性に優れる、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、並びにポリカルボン酸系分散剤を用いる遠心成形用水硬性組成物において、該水硬性組成物の水量の幅広い範囲で硬化体の成形性に優れる、遠心成形用水硬性組成物、及び水硬性組成物硬化体の製造方法が提供される。これらの知見は、例えば、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、第2の遠心成形用水硬性組成物、第2の水硬性組成物硬化体の製造方法、第3の遠心成形用水硬性組成物、並びに第3の水硬性組成物硬化体の製造方法に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1の遠心成形用水硬性組成物〕
本発明者らは、第1の遠心成形用水硬性組成物において、(B1)成分であるポリカルボン酸系分散剤を用いて混練する際に、(A1)成分であるカチオンポリマーを添加することによって、遠心成形体の成形性が向上することを見出した。このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。(B1)成分単独の使用では、添加量や水量によっては無機紛体が過度に分散し、遠心成形時に発生する毛管流によりスラッジが発生するところ、(A1)成分と(B1)成分を併用することで、水硬性組成物中に含まれる無機粉体を効果的に凝集させて、水硬性粉体粒子間を架橋により組織化(チキソトロピー性を増大)させることができるため、毛管流の発生を抑制し、遠心成形体からのスラッジの流出を抑制していると考えられる。また本発明者らは、遠心成形体の成形性向上の副次的効果として、水硬性組成物の硬化体の混練から7日後の強度(以下、7日強度ともいう)の向上効果が得られることを見出した。なお、7日強度は、硬化体の強度を示す指標である。7日強度の向上効果が得られた理由は必ずしも定かではないが、遠心成形体からスラッジとして多く排出される無機早強剤や水和生成物が、遠心成形体からのスラッジの流出を抑制することにより、遠心成形体中に効果的に保持されることにより7日強度が向上したと考えられる。
【0022】
本発明は、(A1)成分、(B1)成分、水硬性粉体、骨材及び水を含有する。第1の水硬性組成物を提供する。以下、本発明の第1の水硬性組成物について説明する。
【0023】
<(A1)成分>
(A1)成分は、重量平均分子量が1,500以上300,000以下であり、かつ、四級化率が5%以上100%以下である、カチオンポリマーである。(A1)成分は、カチオン性基を含むモノマー単位を有する高分子化合物である。
【0024】
(A1)成分としては、ポリアミドポリアミン/エピクロロヒドリン縮合物、ジメチルアミン/アンモニア/エピクロルヒドリン縮合物、ジメチルアミン/トリメチルアミン/エピクロルヒドリン縮合物、カチオン化セルロース、カチオン化澱粉、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化キサンタンガム、ジアリルジアルキル四級アンモニウム塩の重合体、ジアリルジアルキル四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、ジアリルジアルキル四級アンモニウム塩/アクリルアミド/アクリル酸共重合物、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体、四級化ジメチルアミノエチルアクリレートの重合体、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリオキシアルキレン基を付加してもよい四級化ポリエチレンイミン、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらカチオンポリマーの対イオンである陰イオンとしては、塩化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硫酸エチルイオンなどの硫酸アルキルイオンが挙げられ、好ましくは塩化物イオン、又は硫酸エチルイオンである。
【0025】
(A1)成分としては、遠心成形性の観点から、ポリアミドポリアミン/エピクロロヒドリン縮合物、ジメチルアミン/アンモニア/エピクロルヒドリン縮合物、ジメチルアミン/トリメチルアミン/エピクロルヒドリン縮合物、ジアリルジアルキル四級アンモニウム塩の重合体、ポリオキシアルキレン基を付加してもよい四級化ポリエチレンイミン、及び四級化ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体から選ばれる1種以上が好ましく、ポリアミドポリアミン/エピクロロヒドリン縮合物、ジメチルアミン/アンモニア/エピクロルヒドリン縮合物、ジアリルジアルキル四級アンモニウム塩の重合体、ポリオキシアルキレン基を付加してもよい四級化ポリエチレンイミン、及び四級化ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリアミドポリアミン/エピクロロヒドリン縮合物、ジアリルジアルキル四級アンモニウム塩の重合体、ポリオキシアルキレン基を付加してもよい四級化ポリエチレンイミン、及び四級化ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体から選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0026】
(A1)成分の四級化率は、遠心成形性の観点から、5%以上、好ましくは7%以上、より好ましくは9%以上、そして、100%以下である。本発明において、「四級化率」とは、カチオンポリマー中に含まれるすべてのアミノ基のモル当量数における、4級アンモニウム基のモル当量数の割合(%)を意味する。四級化率は、下記の測定法においてpH4の時に求めたカチオン当量(以下、Q4という)(meq/g)およびpH10の時に求めたカチオン当量(以下、Q10という)(meq/g)を用いた以下の計算式によって求められる。
[四級化率の算出]
四級化率は下記の式に従って算出される。
四級化率(%)=Q10(meq/g)×100/Q4(meq/g)
【0027】
[カチオン当量の測定]
カチオン当量Q4、Q10は、pH4および10の二点において、以下の方法によって測定し、算出される。測定試料100gを200mLのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら徐々に0.5重量%硫酸水溶液を加え、pHを調整する。次にトルイジンブルー指示薬(TB指示薬)を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2mL/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、赤紫色が30秒間保持される時点を終点とする。
[空試験]
測定試料の代わりにイオン交換水100gを用いる以外はカチオン当量の測定と同様の操作を行う。
[計算方法]
カチオン当量値(meq/g)=(1/2)
×(試料の滴定量−空試験の滴定量)×(N/400PVSKの力価)
【0028】
(A1)成分は、遠心成形性の観点から、構成単量体中のアミノ基を有する単量体と4級アンモニウム基を有する単量体の合計量が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってもよい。
【0029】
(A1)成分の重量平均分子量は、遠心成形性の観点から、1,500以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは2,500以上、そして、遠心成形性の観点から、300,000以下、好ましくは250,000以下、より好ましくは200,000以下である。
【0030】
(A1)成分の重量平均分子量は下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定することができる。
[GPC条件]
カラム:α−M(東ソー製) 2本連結
溶離液:0.15mol/L硫酸Na、1%酢酸水溶液
流速 :1.0mL/min
温度 :40℃
検出器:RI
分子量標準:プルラン
【0031】
<(B1)成分>
(B1)成分は、ポリカルボン酸系分散剤である。(B1)成分としては、下記一般式(B11)で示される単量体(B11)と下記一般式(B12)で示される単量体(B12)とを構成単量体として含む共重合体〔以下、共重合体(B1)という〕が挙げられる。
【0032】
【化1】
【0033】
〔式中、
11b、R12b:同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
13b:水素原子又は−(CO)q1O(AO)n1’
:炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基
n1’:AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数
p1:0以上2以下の数
q1:0又は1の数
を示す。〕
【0034】
【化2】
【0035】
〔式中、
14b、R15b、R16b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CHr1COOMであり、(CHr1COOMは、COOM又は他の(CHr1COOMと無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM、Mは存在しない。
、M:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基
r1:0以上2以下の数
を示す。〕
【0036】
一般式(B11)中、R11bは、水素原子が好ましい。
一般式(B11)中、R12bは、メチル基が好ましい。
一般式(B11)中、R13bは、水素原子が好ましい。
一般式(B11)中、Xは、メチル基が好ましい。
一般式(B11)中、AOは、エチレンオキシ基が好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
【0037】
一般式(B11)中、n1’は、AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数である。n1’は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体の強度発現の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは250以下、より好ましくは200以下の数である。
【0038】
一般式(B11)中、p1は、0が好ましい。
一般式(B11)中、q1は、1が好ましい。(B1)成分の共重合体(B1)は、一般式(B11)中、q1が1である単量体(B11)と一般式(B12)で示される単量体(B12)とを構成単量体として含む共重合体を含む。
【0039】
一般式(B12)中、R14bは、水素原子が好ましい。
一般式(B12)中、R15bは、メチル基又は水素原子が好ましい。
一般式(B12)中、R16bは、水素原子が好ましい。
(CHr1COOMについては、COOM又は他の(CHr1COOMと無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM、Mは存在しない。
共重合体(B1)について、一般式(B12)中、M、Mは、同一でも異なっていても良く、それぞれ、水素原子が好ましい。
一般式(B12)中の(CHr1COOMのr1は、1が好ましい。
【0040】
共重合体(B1)は、遠心成形性及び/又は硬化体の強度発現の観点から、構成単量体中の単量体(B11)と単量体(B12)の合計量が、90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは95質量%以上、そして、100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってもよい。
【0041】
共重合体(B1)は、単量体(B11)と単量体(B12)の合計に対する単量体(B12)の割合が、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、そして、好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。
【0042】
共重合体(B1)の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、更に好ましくは50,000以下である。この重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC−8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CHCN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(単分散のポリエチレングリコール:分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000)
【0043】
<水硬性粉体>
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。
【0044】
<骨材>
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物は、骨材を含有する。骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。細骨材として、JIS A0203−2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材として、JIS A0203−2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
【0045】
<水硬性組成物の組成等>
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物において、(A1)成分の含有量は、遠心成形性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上、そして、遠心成形性の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.90質量部以下、更に好ましくは0.80質量部以下、より更に好ましくは0.60質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下である。
【0046】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物において、(B1)成分の含有量は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1.5質量部以下である。
【0047】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物において、(A1)成分と(B1)成分の合計含有量は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下である。
【0048】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物において、(A1)成分の含有量と(B1)成分の含有量との質量比(B1)/(A1)は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.50以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下である。
【0049】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物は、水/水硬性粉体比(以下、W/Pと表記する場合もある)が、遠心成形性と強度の観点から、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、14質量%以上が更に好ましく、そして、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、24質量%以下が更に好ましく、23質量%以下がより更に好ましく、22質量%以下がより更に好ましい。
本発明において、水/水硬性粉体比は、水硬性組成物中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水/水硬性粉体×100で算出される。水/水硬性粉体比は、水和反応により硬化する物性を有する粉体の量に基づいて算出される。水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。水硬性粉体に関する、水硬性組成物の他の量的関係についても同様である。
【0050】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物がコンクリートの場合、粗骨材の使用量は、水硬性組成物の強度の発現とセメント等の水硬性粉体の使用量を低減し、型枠等への充填性を向上する観点から、嵩容積は、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上であり、そして、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。嵩容積は、コンクリート1m中の粗骨材の容積(空隙を含む)の割合である。
また、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物がコンクリートの場合、細骨材の使用量は、型枠等への充填性を向上する観点から、好ましくは500kg/m以上、より好ましくは600kg/m以上、更に好ましくは700kg/m以上であり、そして、好ましくは1000kg/m以下、より好ましくは900kg/m以下である。
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物がモルタルの場合、細骨材の使用量は、好ましくは800kg/m以上、より好ましくは900kg/m以上、更に好ましくは1000kg/m以上であり、そして、好ましくは2000kg/m以下、より好ましくは1800kg/m以下、更に好ましくは1700kg/m以下である。
【0051】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物としては、コンクリート等が挙げられる。なかでもセメントを用いたコンクリートが好ましい。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物は、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の何れの分野においても有用である。
【0052】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物は、グリセリン及びN−メチルジエタノールアミンなどの早強剤やエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩などのキレート剤を含有することもできる。キレート剤の含有量は、蒸気養生後の強度発現の観点から、水硬性粉体とシリカを含む高強度混和材との合計100質量部に対し0.1質量部以下が好ましい。
【0053】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物は、従来のセメント分散剤、水溶性高分子化合物、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張材、防水剤、遅延剤、急結剤、起泡剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、防腐剤、消泡剤などの成分〔(A1)成分、(B1)成分に該当するものを除く〕を含有することができる。
【0054】
〔第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法〕
本発明は、(A1)成分と(B1)成分と水硬性粉体と骨材と水とを混合する、第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法を提供する。この製造方法により、(A1)成分、(B1)成分、水硬性粉体、骨材、及び水を含有する本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物が製造される。以下、本発明の第1の水硬性組成物の製造方法について説明する。
【0055】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法に用いられる(A1)成分と(B1)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法に用いられる水硬性粉体と骨材の具体例及び好ましい態様は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。水硬性粉体は、W/Pが、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べた範囲となるように用いる。また、骨材の使用量も、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べた事項は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法に適宜適用することができる。
【0056】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、遠心成形性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(A1)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上、そして、遠心成形性の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.90質量部以下、更に好ましくは0.80質量部以下、より更に好ましくは0.60質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下混合する。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物における(A1)成分の含有量となるように(A1)成分を混合することが好ましい。
【0057】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(B1)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1.5質量部以下混合する。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物における(B1)成分の含有量となるように(B1)成分を混合することが好ましい。
【0058】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、(A1)成分と(B1)成分の合計が、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下となるように混合する。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物における(A1)成分と(B1)成分の合計含有量となるように(A1)成分と(B1)成分を混合することが好ましい。
【0059】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A1)成分と(B1)成分とを、(A1)成分と(B1)成分の質量比(B1)/(A1)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.50以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下となるように混合する。
【0060】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、生産性の観点から、(A1)成分及び(B1)成分と水とを予め混合して、水硬性粉体と混合することが好ましい。
【0061】
(A1)成分と、(B1)成分と、水硬性粉体、骨材と、水と、必要に応じて用いられる成分との混合は、モルタルミキサー、強制二軸ミキサー等のミキサーを用いて行うことができる。前記混合時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、そして、好ましくは5分間以下、より好ましくは3分間以下である。水硬性組成物の調製にあたっては、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で説明した材料や薬剤及びそれらの量を用いることができる。
【0062】
得られた水硬性組成物は、更に、水硬性組成物を型枠に充填し養生し硬化させる。型枠として、建築物の型枠、コンクリート製品用の型枠等が挙げられる。型枠への充填方法として、ミキサーから直接投入する方法、水硬性組成物をポンプで圧送して型枠に導入する方法等が挙げられる。
【0063】
水硬性組成物の養生の際、硬化を促進するために加熱養生し、硬化を促進させても良い。ここで、加熱養生は、40℃以上90℃以下の温度で水硬性組成物を保持して硬化を促進することができる。
【0064】
〔第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法〕
本発明は、次の工程を含む、第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法を提供する。
工程1:(A1)成分と(B1)成分と水硬性粉体と骨材と水とを混合し、水硬性組成物を得る工程。
工程2:工程1で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
工程3:工程2で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする工程。
工程4:工程3で得られた型締めされた水硬性組成物を型枠中で凝結させる工程。
以下、本発明の第1の水硬性組成物硬化体の製造方法について説明する。
【0065】
本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法に用いられる(A1)成分と(B1)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法に用いられる水硬性粉体と骨材の具体例及び好ましい態様は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。水硬性粉体は、W/Pが、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べた範囲となるように用いる。また、骨材の使用量も、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物、及び第1の遠心成形用水硬性組成物の製造方法で述べた事項は、本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法に適宜適用することができる。
【0066】
本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、工程1〜4に加え、下記の工程5を含むことが好ましい。
工程5:工程4で凝結した水硬性組成物を型枠中で蒸気養生する工程。
【0067】
本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、工程1〜5に加え、次の工程6を含むことができる。
工程6:工程5の後、水硬性組成物を冷却して、型枠から脱型する工程。
【0068】
本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、工程1〜6に加え、次の工程7を含むことができる。
工程7:工程6で得られた水硬性組成物の硬化体を常温常圧で養生する工程。
【0069】
工程1では、遠心成形性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(A1)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上、そして、遠心成形性の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.90質量部以下、更に好ましくは0.80質量部以下、より更に好ましくは0.60質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下混合する。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物における(A1)成分の含有量となるように(A1)成分を混合することが好ましい。
【0070】
工程1では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(B1)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1.5質量部以下混合する。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物における(B1)成分の含有量となるように(B1)成分を混合することが好ましい。
【0071】
工程1では、(A1)成分と(B1)成分の合計が、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下となるように混合する。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物における(A1)成分と(B1)成分の合計含有量となるように(A1)成分と(B1)成分を混合することが好ましい。
【0072】
工程1では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A1)成分と(B1)成分とを、(A1)成分と(B1)成分の質量比(B1)/(A1)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.50以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下となるように混合する。
【0073】
工程1では、水と(A1)成分と(B1)成分とを含む混合物を、骨材と水硬性粉体を含む混合物に添加して混合する方法が、水硬性組成物を製造する際でも、容易に均一に混合できる点で好ましい。
【0074】
工程1の具体的な方法としては、水硬性粉体と骨材とを混合し、水と(A1)成分と(B1)成分とを含む混合物を、前記のような混合量となるように添加し、混練して水硬性組成物を調製する工程が挙げられる。
【0075】
工程1では、(A1)成分と(B1)成分は、別々に、水、水硬性粉体、骨材に添加して混合することができる。
【0076】
工程1では、遠心成形性と強度の観点から、W/Pが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上が、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは24質量%以下、より更に好ましくは23質量%以下、より更に好ましくは22質量%以下の水硬性組成物を調製する。
【0077】
工程2で、工程1で得られた水硬性組成物を型枠に充填する方法は、混練後の水硬性組成物を混練手段から排出し、手作業にて型枠へ投入してならす方法が挙げられる。
【0078】
工程3では、型枠に充填した水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めするが、このとき少なくとも1回は遠心力を変えることが好ましい。工程3では、水硬性組成物を、段階的に変化する遠心力をかけて型締めすることができる。すなわち、工程3で、水硬性組成物を、少なくとも1回は遠心力を変えて型締めする、更に、段階的に変化する、更に段階的に大きくなる遠心力をかけて型締めすることができる。
【0079】
工程3では、型枠に充填した水硬性組成物を、0.5G以上の遠心力で型締めすることが好ましい。遠心成形の遠心力は、好ましくは0.5G以上、そして、好ましくは30G以下、より好ましくは25G以下である。エネルギーコスト低減面と成形性の面から、1分以上、遠心力を15G以上、そして、30G以下、更に25G以下の範囲(高遠心力ともいう)に保持することが好ましい。
【0080】
遠心力での締め固めは、例えば0.5G以上30G以下の遠心力で、好ましくは5分以上、より好ましくは7分以上、更に好ましくは9分以上、そして、好ましくは40分以下行なう。成形体を平滑に締め固める観点から、高遠心力、例えば20G以上の遠心力の保持による締め固めは、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは15分以下行なう。すなわち、工程3では、0.5G以上30G以下の遠心力を、好ましくは5分以上、より好ましくは7分以上、更に好ましくは9分以上、そして、好ましくは40分以下かけて、水硬性組成物を型締めすることができる。また、工程3では、20G以上の遠心力の保持による締め固めを、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは15分以下行なうことができる。
【0081】
遠心力での締め固めは、段階に分けて行うことができ、成形性の観点から、段階的に遠心力Gを大きくする方法が好ましい。以下に示すような段階条件で所望の遠心力となるまで行うことができる。例えば、五段階の場合、工程3では、(1)一段階目である初速が0.5G以上2G未満の遠心力で0分間超15分間以下、(2)二段階目である二速が2G以上5G未満の遠心力で0分間超15分間以下、(3)三段階目である三速が5G以上10G未満の遠心力で0分間超15分間以下、(4)四段階目である四速が10G以上20G未満の遠心力で0分間超15分間以下、(5)五段階目である五速が20G以上30G以下の遠心力で0分間超15分間以下、の条件により水硬性組成物の型締めを行うことが好ましい。
【0082】
工程4では、工程3で得られた水硬性組成物を凝結させる。具体的には、混練後3〜4時間の気中養生を行うこととする。
【0083】
工程5では、工程4で得られた型枠に入った硬化した水硬性組成物を蒸気養生する。工程5では、40℃以上90℃以下で蒸気養生を行なうことが好ましく、60℃以上90℃以下で蒸気養生を行なうことがより好ましい。
更に、工程5では、前養生を行った後、蒸気養生を行うことが好ましい。例えば、水硬性組成物が充填された型枠の周囲温度(以下、周囲温度ということもある)を、室温、好ましくは10℃以上40℃以下とし、1時間以上4時間以下、放置する前養生を行った後、周囲温度を40℃以上90℃以下、更に60℃以上90℃以下として蒸気養生を行なうことができる。
前養生は、後述の実施例、比較例では「前置き」として実施した。
前養生は、硬化体のひび割れによる強度低下を抑える観点から、1時間以上が好ましい。
また、本発明の硬化体の製造方法が工程6を含む場合、工程5と工程6は一連の温度制御のもとに連続して行うことができる。
蒸気養生は、水硬性組成物が充填された型枠の周囲に水蒸気を適用した状態で所定の温度で一定時間保持して行われる。水蒸気を適用後、(1)所定の温度に到達させるまでの温度上昇期間、(2)所定の温度で一定時間保持する期間、及び、(3)所定の温度で一定時間保持した後、温度下降期間を、蒸気養生の期間としてよい。
【0084】
本発明の硬化体の製造方法における具体的な蒸気養生条件として、工程5として、1時間当たり10℃以上30℃以下の昇温速度で型枠の周囲温度を60℃以上85℃以下に昇温し、昇温した温度を2時間以上8時間以下保持し、次いで、工程6として、1時間当たり5℃以上20℃以下の降温速度で、周囲温度を室温、例えば20℃まで冷却し、成形体を脱型する。
昇温速度は、硬化体のひび割れによる強度低下を抑える観点から、1時間当たり20℃以下が好ましい。
好ましい条件の一例を挙げれば、水硬性組成物が充填された型枠を、周囲温度が、室温、例えば10℃以上30℃以下で3時間放置(前養生)し、1時間あたり20℃の昇温速度で周囲温度を70℃以上90℃以下まで昇温させ、その昇温した70℃以上90℃以下の温度を2時間以上6時間以下保持し、次いで、1時間あたり10℃の降温速度で周囲温度を室温、例えば20℃まで冷却し(工程5)、その温度で20時間以上30時間以下放置した後に成形体を脱型する(工程6)方法が挙げられる。
また、更に180℃程度のオートクレーブ養生を行なう事も可能である。
【0085】
工程7では、工程6で得られた水硬性組成物の硬化体を常温常圧で養生する。具体的には、20℃、大気圧下で保存する。
【0086】
本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法としては、工程1〜6を含み、水硬性組成物の調製を開始してから工程6で脱型するまでの時間が8時間以上30時間以下である製造方法が挙げられる。ここで、水硬性組成物の調製の開始とは、水硬性粉体と水とが最初に接触した時点である。
【0087】
本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法硬化体の製造方法により得られる水硬性組成物の硬化体は、遠心成形コンクリート製品として使用でき、具体的には、パイル、ポール、ヒューム管等が挙げられる。本発明の硬化体の製造方法により得られる水硬性組成物の硬化体は、初期強度に優れるとともに、製造時のノロの発生量が少なく当該製品の製造現場での廃棄物を低減できる。また、締め固めに優れることから、当該製品の内面及び端面凹凸が少なく、表面美観に優れるとともに、更に製品内面が平滑に仕上がることから、パイル打ち込み、中堀工法時の切削機の障害が改善される。
【0088】
〔第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物〕
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、本発明者らは、(A2)成分である、アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体であって、カルボキシル基が未中和の化合物と(B2)成分である、ポリカルボン酸系分散剤であって、カルボキシル基が未中和の化合物とを含有する分散剤組成物が分層せずに均一な状態で一液化を維持することができることを見出した。
このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。共通溶媒中の二種類のポリマーの混合エントロピーが小さく、混合エンタルピーが正の値を取るとき、混合ギブス自由エネルギーが正となり、相分離を起こす。カルボキシル基が未中和の状態で混合することによって、水分子との相互作用を低減し、混合エントロピーの増加を大きくすることができるため、結果的に混合ギブス自由エネルギー変化が正の値をとり、分層せずに均一な状態で一液化が維持されるものと考えられる。
【0089】
本発明は、(A2)成分、(B2)成分、及び水を含有する、第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物を提供する。以下、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物について説明する。
【0090】
<(A2)成分>
(A2)成分は、アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体であって、カルボキシル基が未中和の化合物である。
(A2)成分のうち、カルボキシル基が未中和の化合物とは、アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体が有するカルボキシル基が塩ではないものをいう。
【0091】
(A2)成分は、アクリル酸又はマレイン酸の重合体であってもよく、アクリル酸とマレイン酸の共重合体であってもよい。(A2)成分は、遠心成形性及び/又は硬化体の強度発現の観点から、アクリル酸とマレイン酸の共重合体が好ましい。
【0092】
(A2)成分が、アクリル酸の単量体(以下、(A21)という)とマレイン酸の単量体(以下、(A22)という)とを構成単量体として含む共重合体である場合、(A2)成分の共重合体は、単量体(A21)と単量体(A22)のモル比(A21)/(A22)が、遠心成形性の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは30/70以上、より更に好ましくは40/60以上、より更に好ましくは50/50以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは80/20以下、より更に好ましくは70/30以下である。
【0093】
(A2)成分が、単量体(A21)と単量体(A22)とを構成単量体として含む共重合体である場合、(A2)成分は、構成単量体中の単量体(A21)と単量体(A22)の合計量が、90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは95質量%以上、そして、100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってもよい。
【0094】
(A2)成分の重量平均分子量は、遠心成形性及び製品粘度の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは75,000以下、更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは10,000以下である。この重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC−8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CHCN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(単分散のポリエチレングリコール:分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000)
【0095】
<(B2)成分>
(B2)成分は、ポリカルボン酸系分散剤であって、カルボキシル基が未中和の化合物である。
(B2)成分のうち、カルボキシル基が未中和の化合物とは、ポリカルボン酸系分散剤が有するカルボキシル基が塩ではないものをいう。
【0096】
(B2)成分としては、下記一般式(B21)で示される単量体(B21)と下記一般式(B22)で示される単量体(B22)とを構成単量体として含む共重合体〔以下、共重合体(B2)という〕が挙げられる。
【0097】
【化3】
【0098】
〔式中、
21b、R22b:同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
23b:水素原子又は−(CO)q2O(AO)n2’
:炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基
n2’:AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数
p2:0以上2以下の数
q2:0又は1の数
を示す。〕
【0099】
【化4】
【0100】
〔式中、
24b、R25b、R26b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CHr2COOHであり、(CHr2COOHは、COOH又は他の(CHr2COOHと無水物を形成していてもよい。
r2:0以上2以下の数
を示す。〕
【0101】
一般式(B21)中、R21bは、水素原子が好ましい。
一般式(B21)中、R22bは、メチル基が好ましい。
一般式(B21)中、R23bは、水素原子が好ましい。
一般式(B21)中、Xは、メチル基が好ましい。
一般式(B21)中、AOは、エチレンオキシ基が好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
【0102】
一般式(B21)中、n2’は、AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数である。n2’は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体の強度発現の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは250以下、より好ましくは200以下の数である。
【0103】
一般式(B21)中、p2は、0が好ましい。
一般式(B21)中、q2は、1が好ましい。(B2)成分の共重合体(B2)は、一般式(B21)中、q2が1である単量体(B21)と一般式(B22)で示される単量体(B22)とを構成単量体として含む共重合体を含む。
【0104】
一般式(B22)中、R24bは、水素原子が好ましい。
一般式(B22)中、R25bは、メチル基又は水素原子が好ましい。
一般式(B22)中、R26bは、水素原子が好ましい。
一般式(B22)中の(CHr2COOHのr2は、1が好ましい。
【0105】
共重合体(B2)は、遠心成形性及び/又は硬化体の強度発現の観点から、構成単量体中の単量体(B21)と単量体(B22)の合計量が、90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは95質量%以上、そして、100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってもよい。
【0106】
共重合体(B2)は、単量体(B21)と単量体(B22)の合計に対する単量体(B22)の割合が、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、そして、好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。
【0107】
共重合体(B2)の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、更に好ましくは50,000以下である。この重量平均分子量は、(B1)成分に記載の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたものである。
【0108】
<分散剤組成物の組成等>
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、(A2)成分の含有量は、一液安定性及び遠心成形成の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。
【0109】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体中、カルボキシル基が未中和の化合物((A2)成分)の含有量は、一液安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、また100質量%であることが特に好ましい。
【0110】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、(B2)成分の含有量は、一液安定性及び遠心成形成の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0111】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、ポリカルボン酸系分散剤中、カルボキシル基が未中和の分散剤((B2)成分)の含有量は、一液安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、また100質量%であることが特に好ましい。
【0112】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、(A2)成分と(B2)成分の合計含有量は、一液安定性及び遠心成形成の観点から、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下である。
【0113】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、(A2)成分の含有量と(B2)成分の含有量との質量比(B2)/(A2)は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは1以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは15以下である。
【0114】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物は、水を含有する液体組成物である。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、水の含有量は、好ましくは0質量%を超え、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは98.5質量%以下、より好ましくは94質量%以下、更に好ましくは88質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
【0115】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物は、従来のセメント分散剤、水溶性高分子化合物、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張材、防水剤、遅延剤、急結剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、防腐剤、消泡剤などの成分〔(A2)成分、(A3)成分、(B1)成分、(B2)成分に該当するものを除く〕を含有することができる。
【0116】
〔第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法〕
本発明は、(A2)成分と(B2)成分と水とを混合する、第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法を提供する。この製造方法により、(A2)成分、(B2)成分、及び水を含有する本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物が製造される。以下、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法について説明する。
【0117】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に用いられる(A2)成分と(B2)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べた事項は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に適宜適用することができる。
【0118】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、一液安定性及び遠心成形成の観点から、(A2)成分を、混合原料中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下混合する。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物分散剤組成物における(A2)成分の含有量となるように(A2)成分を混合することが好ましい。
【0119】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、一液安定性及び遠心成形成の観点から、(B2)成分を、混合原料中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下混合する。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物分散剤組成物における(B2)成分の含有量となるように(B2)成分を混合することが好ましい。
【0120】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、一液安定性及び遠心成形成の観点から、(A2)成分と(B2)成分とを、(A2)成分と(B2)成分の合計が、混合原料中、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下となるように混合する。
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物分散剤組成物における(A2)成分と(B2)成分の合計含有量となるように(A2)成分と(B2)成分を混合することが好ましい。
【0121】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A2)成分と(B2)成分とを、(A2)成分と(B2)成分の質量比(B2)/(A2)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは1以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは15以下となるように混合する。
【0122】
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、水を、混合原料中、好ましくは0質量%を超え、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは98.5質量%以下、より好ましくは94質量%以下、更に好ましくは88質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下となるように混合する。
【0123】
〔第2の遠心成形用水硬性組成物〕
本発明者らは、第2の遠心成形用水硬性組成物において、(B2)成分であるポリカルボン酸系分散剤を用いて混練する際に、(A2)成分を添加することによって、遠心成形体の成形性が向上することを見出した。
このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。(B2)成分単独の使用では、添加量や水量によっては無機紛体が過度に分散し、遠心成形時に発生する毛管流によりスラッジが発生するところ、(A2)成分と(B2)成分を併用することで、水硬性組成物中に含まれる無機粉体を効果的に凝集させて、水硬性粉体粒子間を架橋により組織化(チキソトロピー性の増大)させることができるため、毛管流の発生を抑制し、遠心成形体からのスラッジの流出を抑制していると考えられる。また本発明者らは、遠心成形体の成形性向上の副次的効果として、水硬性組成物の硬化体の混練から7日後の強度(以下、7日強度ともいう)の向上効果が得られることを見出した。なお、7日強度は、硬化体の強度を示す指標である。7日強度の向上効果が得られた理由は必ずしも定かではないが、遠心成形体からスラッジとして多く排出される無機早強剤や水和生成物が、遠心成形体からのスラッジの流出を抑制することにより、遠心成形体中に効果的に保持されることにより7日強度が向上したと考えられる。
【0124】
本発明は、(A2)成分、(B2)成分、水硬性粉体、骨材及び水を含有する、第2の遠心成形用水硬性組成物を提供する。以下、本発明の第2の水硬性組成物について説明する。
【0125】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物に用いられる(A2)成分と(B2)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。また本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物に用いられる水硬性粉体と骨材の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法で述べた事項は、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物に適宜適用することができる。
【0126】
<水硬性組成物の組成等>
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物において、(A2)成分の含有量は、遠心成形性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上、そして、遠心成形性の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.90質量部以下、更に好ましくは0.80質量部以下、より更に好ましくは0.60質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下である。
【0127】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物において、アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体中、カルボキシル基が未中和の化合物((A2)成分)の含有量は、一液安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、また100質量%であることが特に好ましい。
【0128】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物において、(B2)成分の含有量は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下である。
【0129】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物において、ポリカルボン酸系分散剤中、カルボキシル基が未中和の分散剤((B2)成分)の含有量は、一液安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、また100質量%であることが特に好ましい。
【0130】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物において、(A2)成分と(B2)成分の合計含有量は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A2)成分と(B2)成分の合計が、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下である。
【0131】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物において、(A2)成分の含有量と(B2)成分の含有量との質量比(B2)/(A2)は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは1以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは15以下である。
【0132】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物は、水/水硬性粉体比(以下、W/Pと表記する場合もある)が、遠心成形性と強度の観点から、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、14質量%以上が更に好ましく、そして、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、24質量%以下が更に好ましく、23質量%以下がより更に好ましく、22質量%以下がより更に好ましい。
【0133】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物において、粗骨材の使用量、及び細骨材の使用量は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物に記載のものと同じである。
【0134】
遠心成形用水硬性組成物としては、コンクリート等が挙げられる。なかでもセメントを用いたコンクリートが好ましい。本発明の水硬性組成物は、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の何れの分野においても有用である。
【0135】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物は、グリセリン及びN−メチルジエタノールアミンなどの早強剤やエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩などのキレート剤を含有することもできる。キレート剤の含有量は、蒸気養生後の強度発現の観点から、水硬性粉体とシリカを含む高強度混和材との合計100質量部に対し0.1質量部以下が好ましい。
【0136】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物は、従来のセメント分散剤、水溶性高分子化合物、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張材、防水剤、遅延剤、急結剤、起泡剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、防腐剤、消泡剤などの成分〔(A2)成分、(A3)成分、(B1)成分、(B2)成分に該当するものを除く〕を含有することができる。
【0137】
〔第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法〕
本発明は、(A2)成分と(B2)成分と水硬性粉体と骨材と水とを混合する、第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法を提供する。この製造方法により、(A2)成分、(B2)成分、水硬性粉体、骨材、及び水を含有する本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物が製造される。以下、本発明の第2の水硬性組成物の製造方法について説明する。
【0138】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法に用いられる(A2)成分と(B2)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法に用いられる水硬性粉体と骨材の具体例及び好ましい態様は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。水硬性粉体は、W/Pが、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物で述べた範囲となるように用いる。また、骨材の使用量も、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、並びに第2の遠心成形用水硬性組成物で述べた事項は、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法に適宜適用することができる。
【0139】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、遠心成形性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(A2)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上、そして、遠心成形性の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.90質量部以下、更に好ましくは0.80質量部以下、より更に好ましくは0.60質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下混合する。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物における(A2)成分の含有量となるように(A2)成分を混合することが好ましい。
【0140】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(B2)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下混合する。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物における(B2)成分の含有量となるように(B2)成分を混合することが好ましい。
【0141】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、(A2)成分と(B2)成分の合計が、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下となるように混合する。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物における(A2)成分と(B2)成分の合計含有量となるように(A2)成分と(B2)成分を混合することが好ましい。
【0142】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A2)成分と(B2)成分とを、(A2)成分と(B2)成分の質量比(B2)/(A2)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは1以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは15以下となるように混合する。
【0143】
本発明の第2の水硬性組成物の製造方法では、生産性の観点から、(A2)成分及び(B2)成分と水とを予め混合し、水硬性粉体と混合することが好ましい。また本発明の第2の水硬性組成物の製造方法において、(A2)成分と(B2)成分の添加は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物を用いて添加することが好ましく、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物と水とを予め混合し、水硬性粉体と混合することがより好ましい。
【0144】
(A2)成分と、(B2)成分と、水硬性粉体と、骨材と、水と、必要に応じて用いられる成分との混合は、モルタルミキサー、強制二軸ミキサー等のミキサーを用いて行うことができる。前記混合時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、そして、好ましくは5分間以下、より好ましくは3分間以下である。水硬性組成物の調製にあたっては、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物で説明した材料や薬剤及びそれらの量を用いることができる。
【0145】
得られた水硬性組成物は、更に、水硬性組成物を型枠に充填し養生し硬化させる。型枠として、建築物の型枠、コンクリート製品用の型枠等が挙げられる。型枠への充填方法として、ミキサーから直接投入する方法、水硬性組成物をポンプで圧送して型枠に導入する方法等が挙げられる。
【0146】
水硬性組成物の養生の際、硬化を促進するために加熱養生し、硬化を促進させても良い。ここで、加熱養生は、40℃以上90℃以下の温度で水硬性組成物を保持して硬化を促進することができる。
【0147】
〔第2の水硬性組成物の硬化体の製造方法〕
本発明は、次の工程を含む第2の水硬性組成物の硬化体の製造方法を提供する。
工程1’:(A2)成分と(B2)成分と水硬性粉体と骨材と水とを混合し、水硬性組成物を得る工程。
工程2’:工程1’で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
工程3’:工程2’で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする工程。
工程4’:工程3’で得られた型締めされた水硬性組成物を型枠中で凝結させる工程。
以下、本発明の第2の水硬性組成物硬化体の製造方法について説明する。
【0148】
本発明の第2の水硬性組成物の硬化体の製造方法に用いられる(A2)成分と(B2)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の第2の水硬性組成物の硬化体の製造方法に用いられる水硬性粉体と骨材の具体例及び好ましい態様は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。水硬性粉体は、W/Pが、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物で述べた範囲となるように用いる。また、骨材の使用量も、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。
本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、第2の遠心成形用水硬性組成物、並びに第2の遠心成形用水硬性組成物の製造方法で述べた事項は、本発明の第2の水硬性組成物の硬化体の製造方法に適宜適用することができる。
【0149】
本発明の第2の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、工程1’〜4’に加え、下記の工程5’を含むことが好ましい。
工程5’:工程4’で凝結した水硬性組成物を型枠中で蒸気養生する工程。
【0150】
本発明の第2の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、工程1’〜5’に加え、次の工程6’を含むことができる。
工程6’:工程5’の後、水硬性組成物を冷却して、型枠から脱型する工程。
【0151】
本発明の第2の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、工程1’〜6’に加え、次の工程7’を含むことができる。
工程7’:工程6’で得られた水硬性組成物の硬化体を常温常圧で養生する工程。
【0152】
工程1’では、遠心成形性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(A2)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上、そして、遠心成形性の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.90質量部以下、更に好ましくは0.80質量部以下、より更に好ましくは0.60質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下混合する。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物における(A2)成分の含有量となるように(A2)成分を混合することが好ましい。
【0153】
工程1’では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(B2)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下混合する。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物における(B2)成分の含有量となるように(B2)成分を混合することが好ましい。
【0154】
工程1’では、(A2)成分と(B2)成分の合計が、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下となるように混合する。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物における(A2)成分と(B2)成分の合計含有量となるように(A2)成分と(B2)成分を混合することが好ましい。
【0155】
工程1’では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A2)成分と(B2)成分とを、(A2)成分と(B2)成分の質量比(B2)/(A2)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは1以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下、より更に好ましくは15以下となるように混合する。
【0156】
工程1’では、水と(A2)成分と(B2)成分とを含む混合物を、骨材と水硬性粉体を含む混合物に添加して混合する方法が、水硬性組成物を製造する際でも、容易に均一に混合できる点で好ましい。また(A2)成分と(B2)成分の添加は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物を用いて添加することが好ましく、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物と水とを含む混合物を、骨材と水硬性粉体を含む混合物に添加して混合する方法が、水硬性組成物を製造する際でも、容易に均一に混合できる点で好ましい。
【0157】
工程1’の具体的な方法としては、水硬性粉体と骨材とを混合し、水と(A2)成分と(B2)成分とを含む混合物を、前記のような混合量となるように添加し、混練して水硬性組成物を調製する工程が挙げられる。
【0158】
工程1’では、(A2)成分と(B2)成分は、別々に、水、水硬性粉体、骨材に添加して混合することができる。
【0159】
工程1’では、遠心成形性と強度の観点から、W/Pが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは24質量%以下、より更に好ましくは23質量%以下、より更に好ましくは22質量%以下の水硬性組成物を調製する。
【0160】
工程2’〜7’の具体例及び好ましい態様は、本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法で工程2〜7に記載した態様とそれぞれ同じである。
【0161】
本発明の製造方法としては、工程1’〜6’を含み、水硬性組成物の調製を開始してから工程6’で脱型するまでの時間が8時間以上30時間以下である、水硬性組成物の硬化体の製造方法が挙げられる。ここで、水硬性組成物の調製の開始とは、水硬性粉体と水とが最初に接触した時点である。
【0162】
本発明の第2の水硬性組成物の硬化体の製造方法により得られる水硬性組成物の硬化体は、遠心成形コンクリート製品として使用でき、具体的には、パイル、ポール、ヒューム管等が挙げられる。本発明の硬化体の製造方法により得られる水硬性組成物の硬化体は、初期強度に優れるとともに、製造時のノロの発生量が少なく当該製品の製造現場での廃棄物を低減できる。また、締め固めに優れることから、当該製品の内面及び端面凹凸が少なく、表面美観に優れるとともに、更に製品内面が平滑に仕上がることから、パイル打ち込み、中堀工法時の切削機の障害が改善される。
【0163】
〔第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物〕
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、本発明者らは、(A3)成分であるアクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体、及び(B1)成分であるポリカルボン酸系分散剤のうち、それぞれのカルボキシル基が中和の化合物(すなわちカルボキシ基が塩の化合物)又は未中和の化合物(すなわちカルボキシ基が塩ではない化合物)のどちらを含有した場合であっても、(C)成分を含有し、20℃におけるpHが5以下であれば、分散剤組成物が分層せずに均一な状態で一液化を維持することができることを見出した。
このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。共通溶媒中の二種類のポリマーの混合エントロピーが小さく、混合エンタルピーが正の値を取るとき、混合ギブス自由エネルギーが正となり、相分離を起こす。(C)成分を含有し、分散剤組成物中の20℃におけるpHを5以下にすることで、カルボキシル基が未中和の状態に近づくことになり、水分子との相互作用を低減し、混合エントロピーを大きくすることができるため、結果的に混合ギブス自由エネルギー変化が正の値をとり、分層せずに均一な状態で一液化が維持されるものと考えられる。
【0164】
本発明は、(A3)成分、(B1)成分、(C)成分、及び水を含有し、20℃におけるpHが5以下である、第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物を提供する。以下、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物について説明する。
【0165】
<(A3)成分>
(A3)成分は、アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体である。(A3)成分は、(A3)成分中のカルボキシル基が中和の化合物でも、未中和の化合物のどちらであってもよい。(A)成分中のカルボキシル基が未中和の化合物とは、アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体が有するカルボキシル基が塩ではないものをいう。また(A)成分中のカルボキシル基が中和の化合物とは、アクリル酸及び/又はマレイン酸を構成単量体とする重合体又は共重合体が有するカルボキシル基が塩であるものをいう。
【0166】
(A3)成分は、アクリル酸又はマレイン酸の重合体であってもよく、アクリル酸とマレイン酸の共重合体であってもよい。(A3)成分は、遠心成形性及び/又は硬化体の強度発現の観点から、アクリル酸とマレイン酸の共重合体が好ましい。
【0167】
(A3)成分が、アクリル酸の単量体(以下、(A31)という)とマレイン酸の単量体(以下、(A32)という)とを構成単量体として含む共重合体である場合、(A3)成分の共重合体は、単量体(A31)と単量体(A32)のモル比(A31)/(A32)が、遠心成形性の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは30/70以上、より更に好ましくは40/60以上、より更に好ましくは50/50以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは80/20以下、より更に好ましくは70/30以下である。
【0168】
(A3)成分が、単量体(A31)と単量体(A32)とを構成単量体として含む共重合体である場合、(A3)成分は、構成単量体中の単量体(A31)と単量体(A32)の合計量が、90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは95質量%以上、そして、100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってもよい。
【0169】
(A3)成分の重量平均分子量は、遠心成形性及び製品粘度の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは75,000以下、更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは10,000以下である。この重量平均分子量は、(A2)成分に記載の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたものである。
【0170】
<(B1)成分>
(B1)成分は、ポリカルボン酸系分散剤である。(B1)成分は、(B1)成分中のカルボキシル基が中和の化合物でも、未中和の化合物のどちらであってもよい。(B1)成分中のカルボキシル基が未中和の化合物とは、ポリカルボン酸系分散剤が有するカルボキシル基が塩ではないものをいう。また(B1)成分中のカルボキシル基が中和の化合物とは、ポリカルボン酸系分散剤が有するカルボキシル基が塩であるものをいう。
(B1)成分の具体例、及び好ましい態様は、本発明の第1の水硬性組成物の(B1)成分に記載の態様と同じである。
【0171】
<(C)成分>
(C)成分は、ブレンステッド酸である。但し(C)成分からは、(A2)成分、(A3)成分、(B1)成分、(B2)成分は除かれる。ブレンステッド酸とは、プロトンを有し、かつ、水を含有する液体組成物中で当該プロトンを放出または解離できる酸であり、ルイス酸のようなプロトンを有さない酸とは異なる。(C)成分としては、乳酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、安息香酸、塩酸、グルコン酸、酒石酸、アジピン酸、硫酸、リン酸、シュウ酸、及び硝酸が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0172】
(C)成分は、pH調整の容易さ、安全性の観点から、カルボン酸(少なくとも一つのカルボキシ基を有する有機酸)から選ばれる1種以上が好ましく、乳酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、安息香酸、グルコン酸、酒石酸、アジピン酸、及びシュウ酸から選ばれる1種以上がより好ましく、乳酸、酢酸、クエン酸、及びグルコン酸から選ばれる1種以上が更に好ましい。また(C)成分は、経済性の観点から、塩酸、硫酸、リン酸、及び硝酸から選ばれる1種以上が好ましく、塩酸、硫酸、及びリン酸から選ばれる1種以上がより好ましく、塩酸及び硫酸から選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0173】
<分散剤組成物の組成等>
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、(A3)成分の含有量は、一液安定性及び遠心成形成の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。
【0174】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、(B1)成分の含有量は、一液安定性及び遠心成形成の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。
【0175】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、(A3)成分と(B1)成分の合計含有量は、一液安定性及び遠心成形成の観点から、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0176】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、(A3)成分の含有量と(B1)成分の含有量との質量比(B1)/(A3)は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは10以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下である。
【0177】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、(C)成分の含有量は、水硬性組成物の強度および安全性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0178】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物は、水を含有する液体組成物である。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、水の含有量は、好ましくは0質量%を超え、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは98.5質量%以下、より好ましくは94質量%以下、更に好ましくは88質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
【0179】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物において、20℃におけるpHは、保存安定性および安全性の観点から、5以下、好ましくは4.8以下、より好ましくは4.6以下、そして、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。pHはJIS K 3362;2008の項目8.3に従って20℃において測定した値を採用する。
【0180】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物は、従来のセメント分散剤、水溶性高分子化合物、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張材、防水剤、遅延剤、急結剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、防腐剤、消泡剤などの成分〔(A2)成分、(A3)成分、(B1)成分、(B2)成分に該当するものを除く〕を含有することができる。
【0181】
〔第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法〕
本発明は、(A3)成分、(B1)成分、(C)成分、及び水を、pHが5以下となるように混合する、第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法を提供する。この製造方法により、(A3)成分、(B1)成分、(C)成分及び水を含有する本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物が製造される。以下、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法について説明する。
【0182】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に用いられる(A3)成分と(B1)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べた事項は、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に適宜適用することができる。
【0183】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、一液安定性及び遠心成形成の観点から、(A3)成分を、混合原料中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下混合する。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物分散剤組成物における(A3)成分の含有量となるように(A3)成分を混合することが好ましい。
【0184】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、一液安定性及び遠心成形成の観点から、(B1)成分を、混合原料中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下混合する。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物分散剤組成物における(B1)成分の含有量となるように(B1)成分を混合することが好ましい。
【0185】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、一液安定性及び遠心成形成の観点から、(A3)成分と(B1)成分とを、(A3)成分と(B1)成分の合計が、混合原料中、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下となるように混合する。
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物分散剤組成物における(A3)成分と(B1)成分の合計含有量となるように(A3)成分と(B1)成分を混合することが好ましい。
【0186】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A3)成分と(B1)成分とを、(A3)成分と(B1)成分の質量比(B1)/(A3)が、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは10以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下となるように混合する。
【0187】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、水硬性組成物の強度および安全性の観点から、(C)成分を、混合原料中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下となるように混合する。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物分散剤組成物における(C)成分の含有量となるように(C)成分を混合することが好ましい。
【0188】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、水を、混合原料中、好ましくは0質量%を超え、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは98.5質量%以下、より好ましくは94質量%以下、更に好ましくは88質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下となるように混合する。
【0189】
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、pHを、保存安定性及び安全性の観点から、5以下、好ましくは4.8以下、より好ましくは4.6以下、そして、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上となるように混合する。pHはJIS K 3362;2008の項目8.3に従って測定した値を採用する。
【0190】
〔第3の遠心成形用水硬性組成物〕
本発明者らは、(A3)成分、(B1)成分、(C)成分を含有する第3の遠心成形用水硬性組成物が、遠心成形体の成形性が向上することを見出した。
このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。(B1)成分単独の使用では、添加量や水量によっては無機紛体が過度に分散し、遠心成形時に発生する毛管流によりスラッジが発生するところ、(A3)成分と(B1)成分を併用することで、水硬性組成物中に含まれる無機粉体を効果的に凝集させて、水硬性粉体粒子間を架橋により組織化(チキソトロピー性の増大)させることができるため、毛管流の発生を抑制し、遠心成形体からのスラッジの流出を抑制していると考えられる。また本発明者らは、遠心成形体の成形性向上の副次的効果として、水硬性組成物の硬化体の混練から7日後の強度(以下、7日強度ともいう)の向上効果が得られることを見出した。なお、7日強度は、硬化体の強度を示す指標である。7日強度の向上効果が得られた理由は必ずしも定かではないが、遠心成形体からスラッジとして多く排出される無機早強剤や水和生成物が、遠心成形体からのスラッジの流出を抑制することにより、遠心成形体中に効果的に保持されることにより7日強度が向上したと考えられる。
【0191】
本発明は、(A3)成分、(B1)成分、(C)成分、水硬性粉体、骨材及び水を含有する、第3の遠心成形用水硬性組成物を提供する。以下、本発明の第3の水硬性組成物について説明する。
【0192】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物に用いられる(A3)成分と(B1)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。また本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物に用いられる水硬性粉体と骨材の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法で述べた事項は、本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物に適宜適用することができる。
【0193】
<水硬性組成物の組成等>
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物において、(A3)成分の含有量は、遠心成形性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上、そして、遠心成形性の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.75質量部以下、更に好ましくは0.50質量部以下、より更に好ましくは0.25質量部以下、より更に好ましくは0.10質量部以下である。
【0194】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物において、(B1)成分の含有量は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下である。
【0195】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物において、(A3)成分と(B1)成分の合計含有量は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A3)成分と(B1)成分の合計が、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下である。
【0196】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物において、(A3)成分の含有量と(B1)成分の含有量との質量比(B1)/(A3)は、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは10以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下である。
【0197】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物において、(C)成分の含有量は、水硬性組成物の強度発現性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.75質量部以下、更に好ましくは0.50質量部以下、より更に好ましくは0.10質量部以下である。
【0198】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物は、水/水硬性粉体比(以下、W/Pと表記する場合もある)が、遠心成形性と強度の観点から、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、14質量%以上が更に好ましく、16質量%以上がより更に好ましく、そして、30質量%以下が好ましく、28質量%以下がより好ましく、26質量%以下が更に好ましく、25質量%以下がより更に好ましく、24質量%以下がより更に好ましく、22質量%以下がより更に好ましい。
【0199】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物において、粗骨材の使用量、及び細骨材の使用量は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物に記載のものと同じである。
【0200】
遠心成形用水硬性組成物としては、コンクリート等が挙げられる。なかでもセメントを用いたコンクリートが好ましい。本発明の水硬性組成物は、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の何れの分野においても有用である。
【0201】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物は、グリセリン及びN−メチルジエタノールアミンなどの早強剤やエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩などのキレート剤を含有することもできる。キレート剤の含有量は、蒸気養生後の強度発現の観点から、水硬性粉体とシリカを含む高強度混和材との合計100質量部に対し0.1質量部以下が好ましい。
【0202】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物は、従来のセメント分散剤、水溶性高分子化合物、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張材、防水剤、遅延剤、急結剤、起泡剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、防腐剤、消泡剤などの成分〔(A2)成分、(A3)成分、(B1)成分、(B2)成分に該当するものを除く〕を含有することができる。
【0203】
〔第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法〕
本発明は、(A3)成分と(B1)成分と(C)成分と水硬性粉体と骨材と水とを混合する、第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法を提供する。この製造方法により、(A3)成分、(B1)成分、(C)成分、水硬性粉体、骨材、及び水を含有する本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物が製造される。以下、本発明の第3の水硬性組成物の製造方法について説明する。
【0204】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法に用いられる(A3)成分と(B1)成分と(C)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法に用いられる水硬性粉体と骨材の具体例及び好ましい態様は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。水硬性粉体は、W/Pが、本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物で述べた範囲となるように用いる。また、骨材の使用量も、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、並びに第3の遠心成形用水硬性組成物で述べた事項は、本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法に適宜適用することができる。
【0205】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、遠心成形性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(A3)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上、そして、遠心成形性の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.75質量部以下、更に好ましくは0.50質量部以下、より更に好ましくは0.25質量部以下、より更に好ましくは0.10質量部以下混合する。本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物における(A3)成分の含有量となるように(A3)成分を混合することが好ましい。
【0206】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(B1)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下混合する。本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物における(B1)成分の含有量となるように(B1)成分を混合することが好ましい。
【0207】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、(A3)成分と(B1)成分の合計が、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下となるように混合する。本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物における(A3)成分と(B1)成分の合計含有量となるように(A3)成分と(B1)成分を混合することが好ましい。
【0208】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A3)成分と(B1)成分とを、(A3)成分と(B1)成分の質量比(B1)/(A3)が、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは10以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下となるように混合する。
【0209】
本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法では、水硬性組成物の強度発現性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(C)成分を、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.75質量部以下、更に好ましくは0.50質量部以下、より更に好ましくは0.10質量部以下混合する。本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物における(C)成分の含有量となるように(C)成分を混合することが好ましい。
【0210】
本発明の第3の水硬性組成物の製造方法では、生産性の観点から、(A3)成分及び(B1)成分と(C)成分と水とを予め混合し、水硬性粉体と混合することが好ましい。また本発明の第3の水硬性組成物の製造方法において、(A3)成分と(B1)成分と(C)成分の添加は、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物を用いて添加することが好ましく、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物と水とを予め混合し、水硬性粉体と混合することがより好ましい。
【0211】
(A3)成分と、(B1)成分と、(C)成分と、水硬性粉体と、骨材と、水と、必要に応じて用いられる成分との混合は、モルタルミキサー、強制二軸ミキサー等のミキサーを用いて行うことができる。前記混合時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、そして、好ましくは5分間以下、より好ましくは3分間以下である。水硬性組成物の調製にあたっては、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物で説明した材料や薬剤及びそれらの量を用いることができる。
【0212】
得られた水硬性組成物は、更に、水硬性組成物を型枠に充填し養生し硬化させる。型枠として、建築物の型枠、コンクリート製品用の型枠等が挙げられる。型枠への充填方法として、ミキサーから直接投入する方法、水硬性組成物をポンプで圧送して型枠に導入する方法等が挙げられる。
【0213】
水硬性組成物の養生の際、硬化を促進するために加熱養生し、硬化を促進させても良い。ここで、加熱養生は、40℃以上90℃以下の温度で水硬性組成物を保持して硬化を促進することができる。
【0214】
〔第3の水硬性組成物の硬化体の製造方法〕
本発明は、次の工程を含む第3の水硬性組成物の硬化体の製造方法を提供する。
工程1”−1:下記(A3)成分、下記(B1)成分、下記(C)成分、及び水を、pHが5以下となるように混合し、分散剤組成物を得る工程
工程1”−2:工程1”−1で得られた分散剤組成物と水硬性粉体と骨材と水とを混合し、水硬性組成物を得る工程。
工程2”:工程1”−2で得られた水硬性組成物を型枠に充填する工程。
工程3”:工程2”で得られた型枠に充填された水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする工程。
工程4”:工程3”で得られた型締めされた水硬性組成物を型枠中で凝結させる工程。
以下、本発明の第3の水硬性組成物硬化体の製造方法について説明する。また工程1”−1と工程1”−2を合わせて工程1”とする。
【0215】
本発明の第3の水硬性組成物の硬化体の製造方法に用いられる(A3)成分と(B1)成分と(C)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の第3の水硬性組成物の硬化体の製造方法に用いられる水硬性粉体と骨材の具体例及び好ましい態様は、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。水硬性粉体は、W/Pが、本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物で述べた範囲となるように用いる。また、骨材の使用量も、本発明の第1の遠心成形用水硬性組成物で述べたものと同じである。
本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物及びその製造方法、第3の遠心成形用水硬性組成物、並びに第3の遠心成形用水硬性組成物の製造方法で述べた事項は、本発明の第3の水硬性組成物の硬化体の製造方法に適宜適用することができる。
【0216】
本発明の第3の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、工程1”〜4”に加え、下記の工程5”を含むことが好ましい。
工程5”:工程4”で凝結した水硬性組成物を型枠中で蒸気養生する工程。
【0217】
本発明の第3の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、工程1”〜5”に加え、次の工程6”を含むことができる。
工程6”:工程5”の後、水硬性組成物を冷却して、型枠から脱型する工程。
【0218】
本発明の第3の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、工程1”〜6”に加え、次の工程7”を含むことができる。
工程7”:工程6”で得られた水硬性組成物の硬化体を常温常圧で養生する工程。
【0219】
工程1”−1の分散剤組成物を得る方法の具体例、及び好ましい態様は、本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法と同じである。
【0220】
工程1”−2では、遠心成形性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(A3)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.015質量部以上、更に好ましくは0.02質量部以上、そして、遠心成形性の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.75質量部以下、更に好ましくは0.50質量部以下、より更に好ましくは0.25質量部以下、より更に好ましくは0.10質量部以下混合する。本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物における(A3)成分の含有量となるように(A3)成分を混合することが好ましい。
【0221】
工程1”−2では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(B1)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下混合する。本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物における(B1)成分の含有量となるように(B1)成分を混合することが好ましい。
【0222】
工程1”−2では、(A3)成分と(B1)成分の合計が、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは4質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下となるように混合する。本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物における(A3)成分と(B1)成分の合計含有量となるように(A3)成分と(B1)成分を混合することが好ましい。
【0223】
工程1”−2では、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点から、(A3)成分と(B1)成分とを、(A3)成分と(B1)成分の質量比(B3)/(A1)が、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは10以上、そして、遠心成形性及び/又は遠心成形後の硬化体強度の観点の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下となるように混合する。
【0224】
工程1”−2では、水硬性組成物の強度発現性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(C)成分を、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.75質量部以下、更に好ましくは0.50質量部以下、より更に好ましくは0.10質量部以下混合する。本発明の第3の遠心成形用水硬性組成物における(C)成分の含有量となるように(C)成分を混合することが好ましい。
【0225】
工程1”−2では、遠心成形性と強度の観点から、W/Pが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上、より更に好ましくは16質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは28質量%以下、更に好ましくは26質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは24質量%以下、より更に好ましくは22質量%以下の水硬性組成物を調製する。
【0226】
工程1”−2では、工程1”−1で得られた分散剤組成物(本発明の第2の遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物)と水とを含む混合物を、骨材と水硬性粉体を含む混合物に添加して混合する方法が、水硬性組成物を製造する際でも、容易に均一に混合できる点で好ましい。
【0227】
工程2”〜7”の具体例及び好ましい態様は、本発明の第1の水硬性組成物の硬化体の製造方法で工程2〜7に記載した態様とそれぞれ同じである。
【0228】
本発明の製造方法としては、工程1”〜6”を含み、水硬性組成物の調製を開始してから工程6”で脱型するまでの時間が8時間以上30時間以下である、水硬性組成物の硬化体の製造方法が挙げられる。ここで、水硬性組成物の調製の開始とは、水硬性粉体と水とが最初に接触した時点である。
【0229】
本発明の第3の水硬性組成物の硬化体の製造方法により得られる水硬性組成物の硬化体は、遠心成形コンクリート製品として使用でき、具体的には、パイル、ポール、ヒューム管等が挙げられる。本発明の硬化体の製造方法により得られる水硬性組成物の硬化体は、初期強度に優れるとともに、製造時のノロの発生量が少なく当該製品の製造現場での廃棄物を低減できる。また、締め固めに優れることから、当該製品の内面及び端面凹凸が少なく、表面美観に優れるとともに、更に製品内面が平滑に仕上がることから、パイル打ち込み、中堀工法時の切削機の障害が改善される。
【実施例】
【0230】
表1、2に示した(A1)成分、(A1’)成分((A1)成分の比較成分)、及び(B1)成分は、以下のものを用いた。
【0231】
(A1)成分
(a1−1):ポリメタクロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウム硫酸エチル塩、重量平均分子量120,000、四級化率99%
(a1−2):ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリン縮合物、重量平均分子量20,000、EPA−03、四日市合成(株)製、四級化率10%
(a1−3):ジメチルアミン/アンモニア/エピクロルヒドリン縮合物、重量平均分子量15,000、PDA−2、四日市合成(株)製、四級化率84%
(a1−4):ジメチルアミン/アンモニア/エピクロルヒドリン縮合物、重量平均分子量20,000、PDA−3、四日市合成(株)製、四級化率80%
(a1−5):ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、重量平均分子量30,000、PAS−H−5L、ニットーボーメディカル(株)製、四級化率100%
(a1−6):ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、重量平均分子量200,000、PAS−H−10L、ニットーボーメディカル(株)製、四級化率100%
(a1−7):ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート重合体、重量平均分子量37,000、PAS−24、ニットーボーメディカル(株)製、四級化率100%
(a1−8):ポリオキシエチレン(以下、EOという)を付加した四級化ポリエチレンイミンの塩化物、重量平均分子量7,300、常法による合成品、四級化率99%
(a1−9):EOを付加した四級化ポリエチレンイミンの塩化物、重量平均分子量2,500、常法による合成品、四級化率99%
【0232】
(A1’)成分((A1)成分の比較成分)
(a1’−1):EOを付加した四級化ポリエチレンイミンの塩化物、重量平均分子量3,000、PAE−01、四日市合成(株)製、四級化率2%
(a1’−2):ジメチルアミン/トリメチルアミン/エピクロルヒドリン縮合物、重量平均分子量1,000、PDT−2、四日市合成(株)製、四級化率95%
(a1’−3):ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、四級化率99%、重量平均分子量348
【0233】
(A1)成分及び(A1’)成分の四級化率は、下記の測定法においてpH4の時に求めたカチオン当量(以下、Q4という)(meq/g)およびpH10の時に求めたカチオン当量(以下、Q10という)(meq/g)を用いた以下の計算式によって求めた。
[四級化率の算出]
四級化率は下記の式に従って算出した。
四級化率(%)=Q10(meq/g)×100/Q4(meq/g)
【0234】
[カチオン当量の測定]
カチオン当量Q4(meq/g)、Q10は、pH4及び10の二点において、以下の方法によって測定し、算出した。
測定試料100gを200mLのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら徐々に0.5重量%硫酸水溶液を加え、pHを調整する。次にトルイジンブルー指示薬(TB指示薬)を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2mL/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、赤紫色が30秒間保持される時点を終点とする。
[空試験]
測定試料の代わりにイオン交換水100gを用いる以外はカチオン当量の測定と同様の操作を行う。
[計算方法]
カチオン当量値(meq/g)=(1/2)
×(試料の滴定量−空試験の滴定量)×(N/400PVSKの力価)
【0235】
(B1)成分
(b1−1):メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート重合体(カッコ内は平均付加モル数、以下同様)(モル比73/27)、単量体(B12)/単量体(B11)=73/27(モル比)、重量平均分子量50,000
(b1−2):メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(46)モノメタクリレート/アクリル酸(モル比45/26/29)、単量体(B12)/単量体(B11)=74/26(モル比)、重量平均分子量35,000
【0236】
(B1’)成分((B1)成分の比較成分)
(b1’−1):ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:重量平均分子量15,000、花王株式会社製、マイテイ HS
【0237】
<実施例1x及び比較例1x>
(1)モルタル配合
下記にモルタル配合を示した。W/Pは、水/水硬性粉体の比(質量%)である。
【0238】
*モルタルの配合
セメント(P):400g(太平洋セメント(株)製の普通ポルトランドセメントと住友大阪セメント(株)製の普通ポルトランドセメントの1:1混合物、比重3.16)
水道水(W):120g((A1)成分、(A1’)成分、(B1)成分、及び消泡剤を含む)
W/P:30質量%
砂:700g(京都府城陽産 表乾比重2.50g/cm
消泡剤:フォームレックス797、日華化学(株)製、セメントに対して、0.01質量%添加
なお、水道水中の(A1)成分、(A1’)成分、(B1)成分、及び消泡剤は、それらの成分の量がモルタル配合に対して微量であるため、水道水の量に算入してW/Pを計算した。
【0239】
(2)モルタル調製
表1の添加量となるように(A1)成分、(A1’)成分、(B1)成分、消泡剤及び水を含有する組成物を調製した。前記モルタル配合材料の水(W)に前記組成物を添加し、他のモルタル配合材料と共に調製した。モルタルは、JISR 5201に規定されるモルタルミキサーを使用して配合成分を混練(60rpm、60秒の後、120rpm、120秒)して調製した。
【0240】
(3)モルタル流動性の評価
混練直後のモルタルを、JIS R 5201に記載のフローコーン(上径70mm×下径100mm×高さ60mm)に充填し、モルタルフローを測定した。結果を表1に示す。
【0241】
(4)耐スラッジ性の評価
(3)の通り測定したモルタルフローを、比較例1x−1の(B1)成分のみを添加して測定したモルタルフローと比較し、コンクリート試験によりスラッジ抑制性の指標となると示唆された下記の計算式より導出されるモルタルフロー抑制率(%)を算出することによって、耐スラッジ性の評価を行った。結果を表1に示す。モルタルフロー抑制率が大きいほど、耐スラッジ性に優れ、遠心成形に際しての成形性に優れたモルタルを得ることができる。
【0242】
モルタルフロー抑制率(%)={(比較例1x−1のモルタルフロー)−(各実施例、比較例のモルタルフロー)}×100/(比較例1x−1のモルタルフロー)
【0243】
【表1】
【0244】
表1中、(A1)成分、(B1)成分の添加量は水硬性粉体100質量部に対する添加量(質量部)であり、固形分(有効分)の添加量である。また(A1)成分に代えて、(A1’)成分を用いる場合、(A1’)成分は、便宜上、(A1)成分の欄に記載し、質量比(B1)/(A1)は、(A1)成分を(A1’)成分に置き換えて計算した値である。
【0245】
表1中、(B1)成分のポリカルボン酸系分散剤のみ含有する水硬性組成物である比較例1x−1に対して、(A1)成分と(B1)成分を含有する水硬性組成物である実施例1x−1〜1x−12は、耐スラッジ性の指標となるモルタルフロー抑制率が高く、水硬性粉体粒子を効果的に凝集させていることが示唆され、耐スラッジ性に優れることが分かる。一方、(A1)成分の代わりに(A1’)成分を用いた比較例1x−2〜1x−5は、耐スラッジ性の指標となるモルタルフロー抑制率が低く、耐スラッジ性能が劣ることが分かる。
【0246】
<実施例2x及び比較例2x>
(1)コンクリート配合
下記にコンクリート配合を示した。W/Pは、水/水硬性粉体の比(質量%)であり、水硬性粉体の量(P)は、早強セメント(P)と無機早強剤(P)との合計量である。
【0247】
*コンクリート配合
早強セメント(P):12.6kg(太平洋セメント(株)製、比重3.16)
無機早強剤(P):1.00kg(非晶質シリカ/無水石膏=80/20質量%の混合品、比重2.45)
水道水(W):表2、3に記載の量((A1)成分、(A1’)成分、(B1)成分、及び(B1’)成分を含む)
W/P:表2、3に記載砂:18.88kg(甲賀バラス砕砂、滋賀県甲賀産、密度2.58g/cm
砂利:28.35kg(砕石、兵庫県家島産、密度2.61g/cm
なお、水道水中の(A1)成分、(A1’)成分、(B1)成分、及び(B1’)成分は、それらの成分の量がモルタル配合に対して微量であるため、水道水の量に算入してW/Pを計算した。
【0248】
(2)コンクリート調製
表2、3の添加量となるように(A1)成分、(A1’)成分、(B1)成分、(B1’)成分、及び水を含有する組成物を調製し、前記コンクリート配合材料の水(W)に前記組成物を添加し、撹拌して調製した。コンクリートは、強制2軸型ミキサー(KYC社製)に、砂利、約半量の砂、早強セメントと無機早強剤の混合物、残部の砂の順に投入し、空練りを30秒間行い、次いで、すばやく前記調製した水を添加し、240秒間練り混ぜてコンクリートを得た。
【0249】
(3)スランプの評価
混練直後のコンクリートについて、JIS A 1101、及びJIS A 1150に基づいてスランプを測定した。結果を表2、3に示す。
【0250】
(4)遠心成形コンクリートの評価
混練から10分後のコンクリートを遠心成形型枠(内径20cm、外径25cm、高さ40cm)に入れて、初速が1Gで2分間、二速が3Gで2分間、三速が7Gで2分間、四速が15Gで3分間、五速が25Gで3分間の条件で遠心締め固めを行った。その後、20℃で4時間前置き養生した後、20℃/時間の割合で70℃まで昇温し、70℃で4時間、蒸気養生を行った。その後、20℃まで自然冷却し、脱型後大気中で養生を、上記養生と合わせて計7日間行い、筒状のコンクリート硬化体(内径12cm、外径20cm、高さ30cm)を得た。また、得られた遠心成形体の材齢7日の圧縮強度(7日強度)をJISA 1108に基づいて測定した。結果を表2、3に示す。
【0251】
筒状のコンクリート硬化体の上端面の厚み(mm)を、対角に4箇所、下端面の厚み(mm)を、対角に4箇所、計8か所測定し、8箇所の厚みの標準偏差を算出し、結果を表2、3に示した。標準偏差は小さいほど筒状の硬化体の厚みの変動が小さく、遠心成形性に優れることを表している。目視で成形性が良好と判断できる上限値は1.5(mm)であり、表2、3には、厚み(mm)の標準偏差に応じて、以下の基準で記号を付して示した。
評価基準
○:筒状の硬化体の8箇所の厚み(mm)の標準偏差が1.5未満
×:筒状の硬化体の8箇所の厚み(mm)の標準偏差が1.5以上
【0252】
【表2】
【0253】
【表3】
【0254】
表2、3中、(A1)成分、(B1)成分の添加量は水硬性粉体100質量部に対する添加量(質量部)であり、固形分(有効分)の添加量である。また(A1)成分に代えて、(A1’)成分を用いる場合、(A1’)成分は、便宜上、(A1)成分の欄に記載し、質量比(B1)/(A1)は、(A1)成分を(A1’)成分に置き換えて計算した値である。また(B1)成分に代えて、(B1’)成分を用いる場合、(B1’)成分は、便宜上、(B1)成分の欄に記載した。また比較例2x−2、実施例2x−2は、便宜上、表2、表3の両方に記載した。
【0255】
表2中、(B1)成分のポリカルボン酸系分散剤のみ含有する水硬性組成物である比較例2x−1〜2x−2に対して、(A1)成分と(B1)成分を含有する水硬性組成物である実施例2x−1〜2x−4は、水硬性組成物の幅広い水量で優れた成形性を有することが分かる。また(B1)成分に代えて、比較成分として、ナフタレン系分散剤のみを含有する水硬性組成物である比較例2x−3は、比較例2x−2と同一の条件では、フレッシュコンクリートの調整を行うことができず、成形性や7日強度の評価を行うことができなかった。
また表3中、(B1)成分のポリカルボン酸系分散剤のみ含有する水硬性組成物である比較例2x−2、2x−4〜2x−5に対して、(A1)成分と(B1)成分を含有する水硬性組成物である実施例2x−2、2x−5〜2x−11は、水硬性組成物の幅広い分散剤添加量で優れた成形性を有することが分かる。
さらに表3中、(A1)成分の比較成分として、分子量を満足し、4級化率を満足しない比較成分である(A1’)成分を含有する水硬性組成物である比較例2x−7、分子量を満足せず、4級化率のみを満足する比較成分である(A1’)成分を含有する水硬性組成物である比較例2x−8では、本発明の効果である遠心成形性の向上効果が確認できないことが分かる。
【0256】
表4〜6に示した(A2)成分、(A2’)成分((A2)成分の比較成分)、(B2)成分及び(B2’)成分((B2)成分の比較成分)は、以下のものを用いた。
【0257】
(A2)成分
(a2−1):ポイズ530(アクリル酸重合体、花王(株)製、重量平均分子量5,000、重合体中のカルボキシル基が中和、すなわち塩である化合物)の重合体中のカルボキシル基を未中和(すなわちカルボキシル基が塩ではない)にした化合物
(a2−2):ポイズ520(アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸/マレイン酸=70/30(モル比)、花王(株)製、重量平均分子量5,000、重合体中のカルボキシル基が中和、すなわち塩である化合物)の重合体中のカルボキシル基を未中和(すなわちカルボキシル基が塩ではない)にした化合物
【0258】
(A2’)成分((A2)成分の比較成分)
(a2’−1):(a2−1)の化合物を48%水酸化ナトリウム水溶液(試薬:和光純薬工業株式会社製)で中和して、重合体中のカルボキシル基をナトリウム塩とした化合物
【0259】
(B2)成分
(b2−1):メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート重合体(カッコ内は平均付加モル数、以下同様)(モル比73/27)、単量体(B22)/単量体(B21)=73/27(モル比)、重量平均分子量50,000、重合体中のカルボキシル基が未中和、すなわち塩ではない化合物
【0260】
(B2’)成分((B2)成分の比較成分)
(b2’−1):(b2−1)の化合物を48%水酸化ナトリウム水溶液(試薬:和光純薬工業株式会社製)で中和して、重合体中のカルボキシル基をナトリウム塩とした化合物
(b2’−2):ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:重量平均分子量15,000、花王株式会社製、マイテイ HS
【0261】
<実施例1y及び比較例1y>
(1)分散剤組成物の調製
表4に記載の添加量となるように各成分を含有する分散剤組成物を調製した。調製方法は、(A2)成分または(A2’)成分と(B2)成分または(B2’)成分を表4に記載の割合とする40%水溶液として調製後、表4の割合となるように水を添加し、No.8のマルエムスクリュー管に100g、20℃でマグネティックスターラーを用いて調製した。
【0262】
(2)外観評価
調製した分散剤組成物の外観について、3か月の間20℃で静置して保存した後、目視観察し、下記の評価基準で判定した。結果を表4に示す。
均一:均一透明を維持している。
分層:二層に分層しているのが確認される。
【0263】
【表4】
【0264】
表4中、(A2)成分に代えて、(A2’)成分を用いる場合、(A2’)成分は、便宜上、(A2)成分の欄に記載した。また(B2)成分に代えて、(B2’)成分を用いる場合、(B2’)成分は、便宜上、(B2)成分の欄に記載した。また(A2)成分、(A2’)成分、(B2)成分、(B2’)成分の添加量は、固形分(有効分)の添加量である。
【0265】
表4中、カルボキシル基が中和、すなわちカルボキシル基が塩の化合物である、(a2’−1)また(b2’−1)のいずれかを用いた比較例1y−1〜1y−3の場合、その調整した分散剤組成物は保存後に二層に分層しているのが確認された。一方、共に未中和の(a2−1)と(b2−1)を混合した実施例1y−1の場合には、上記保存後でも均一安定で一液化を保てることが分かった。
【0266】
<実施例2y及び比較例2y>
(1)モルタル配合
下記にモルタル配合を示した。W/Pは、水/水硬性粉体の比(質量%)である。
【0267】
*モルタルの配合
セメント(P):400g(太平洋セメント(株)製普通ポルトランドセメントと住友大阪セメント(株)製普通ポルトランドセメントの1:1混合物、比重3.16)
水道水(W):120g((A2)成分、(B2)成分、及び消泡剤を含む)
W/P:30質量%
砂:700g(京都府城陽産 表乾比重2.50g/cm
消泡剤:フォームレックス797、日華化学(株)製、セメントに対して、0.01質量%添加
なお、水道水中の(A2)成分、(B2)成分、及び消泡剤は、それらの成分の量がモルタル配合に対して微量であるため、水道水の量に算入してW/Pを計算した。
【0268】
(2)モルタル調製
表5の添加量となるように(A2)成分、(B2)成分、消泡剤及び水を含有する組成物を調製した。前記モルタル配合材料の水(W)に前記組成物を添加し、他のモルタル配合材料と共に調製した。モルタルは、JISR 5201に規定されるモルタルミキサーを使用して配合成分を混練(60rpm、60秒の後、120rpm、120秒)して調製した。
【0269】
(3)モルタル流動性の評価
混練直後のモルタルを、JIS R 5201に記載のフローコーン(上径70mm×下径100mm×高さ60mm)に充填し、モルタルフローを測定した。結果を表5に示す。
【0270】
(4)耐スラッジ性の評価
(3)の通り測定したモルタルフローを、比較例2y−1の(B2)成分のみを添加して測定したモルタルフローと比較し、コンクリート試験によりスラッジ抑制性の指標となると示唆された下記の計算式より導出されるモルタルフロー抑制率(%)を算出することによって、耐スラッジ性の評価を行った。結果を表5に示す。モルタルフロー抑制率が大きいほど、耐スラッジ性に優れ、遠心成形に際しての成形性に優れたモルタルを得ることができる。
【0271】
モルタルフロー抑制率(%)={(比較例2y−1のモルタルフロー)−(各実施例のモルタルフロー)}×100/(比較例2y−1のモルタルフロー)
【0272】
【表5】
【0273】
表5中、(A2)成分、(B2)成分の添加量は水硬性粉体100質量部に対する添加量(質量部)であり、固形分(有効分)の添加量である。
【0274】
表5中、(B2)成分のポリカルボン酸系分散剤のみ含有する水硬性組成物である比較例2y−1に対して、(A2)成分と(B2)成分を含有する水硬性組成物である実施例2y−1〜2y−4は、耐スラッジ性の指標となるモルタルフロー抑制率が高く、水硬性粉体粒子を効果的に凝集させていることが示唆され、耐スラッジ性に優れることが分かる。
【0275】
<実施例3y及び比較例3y>
(1)コンクリート配合
下記にコンクリート配合を示した。W/Pは、水/水硬性粉体の比(質量%)であり、水硬性粉体の量は、早強セメント(P)と高強度混和剤(P)との合計量である。
【0276】
*コンクリート配合
早強セメント(P):12.6kg(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
高強度混和剤(P):1.00kg(非晶質シリカ/無水石膏=80/20質量%の混合品、比重2.45)
水道水(W):表6に記載の量((A2)成分、(B2)成分、及び(B2’)成分を含む)
W/P:表6に記載
砂:18.88kg(甲賀バラス砕砂、滋賀県甲賀産、密度2.58g/cm
砂利:28.35kg(砕石、兵庫県家島産、密度2.61g/cm
なお、水道水中の(A2)成分、(B2)成分、及び(B2’)成分は、それらの成分の量がコンクリート配合に対して微量であるため、水道水の量に算入してW/Pを計算した。
【0277】
(2)コンクリート調製
表6の添加量となるように(A2)成分、(B2)成分、(B2’)成分、及び水を含有する組成物を調製し、前記コンクリート配合材料の水(W)に前記組成物を添加し、撹拌して調製した。コンクリートは、強制2軸型ミキサー(KYC社製)に、砂利、約半量の砂、早強セメントと無機早強剤の混合物、残部の砂の順に投入し、空練りを30秒間行い、次いで、すばやく前記調製した水を添加し、240秒間練り混ぜてコンクリートを得た。
【0278】
(3)スランプの評価
混練直後のコンクリートについて、JIS A 1101、及びJIS A 1150に基づいてスランプを測定した。結果を表6に示す。
【0279】
(4)遠心成形コンクリートの評価
<実施例2x及び比較例2x>の(4)遠心成形コンクリートの評価と同様の方法で、得られた筒状のコンクリート硬化体の材齢7日の圧縮強度(7日強度)を測定し、該硬化体の8箇所の厚みを測定して、標準偏差を算出し、同様の基準で成形性を評価した。結果を表6に示す。
【0280】
【表6】
【0281】
表6中、(A2)成分、(B2)成分の添加量は水硬性粉体100質量部に対する添加量(質量部)であり、固形分(有効分)の添加量である。また(B2)成分に代えて、(B2’)成分を用いる場合、(B2’)成分は、便宜上、(B2)成分の欄に記載した。
【0282】
表6中、(B2)成分のポリカルボン酸系分散剤のみ含有する水硬性組成物である比較例3y−1〜3y−2に対して、(A2)成分と(B2)成分を含有する水硬性組成物である実施例3y−A1〜3y−A2、3y−B1〜3y−B2は、水硬性組成物の幅広い水量で優れた成形性を有することが分かる。また(B2)成分に代えて、比較成分として、ナフタレン系分散剤のみを含有する水硬性組成物である比較例3y−3は、比較例3y−2と同一の条件では、フレッシュコンクリートの調製を行うことができず、成形性や7日強度の評価を行うことができなかった。
【0283】
表7〜10に示した(A3)成分、(B1)成分及び(B1’)成分((B1)成分の比較成分)、(C)成分は、以下のものを用いた。
【0284】
(A3)成分
(a3−1):アクリル酸重合体、ポイズ530、花王(株)製、重量平均分子量5,000、重合体中のカルボキシル基が中和、すなわち塩である化合物
(a3−2):アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポイズ520、アクリル酸/マレイン酸=70/30(モル比)、花王(株)製、重量平均分子量5,000、重合体中のカルボキシル基が中和、すなわち塩である化合物
【0285】
(B1)成分
(b1−3):アクリル酸/ポリエチレングリコール(60)イソプレニルエーテル重合体(カッコ内は平均付加モル数、以下同様)(モル比75/25)、単量体(B12)/単量体(B11)=75/25(モル比)、重量平均分子量40,000、重合体中のカルボキシル基が中和、すなわち塩である化合物
(b1−4):メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート重合体(カッコ内は平均付加モル数、以下同様)(モル比73/27)、単量体(B12)/単量体(B11)=73/27(モル比)、重量平均分子量50,000、重合体中のカルボキシル基が中和、すなわち塩である化合物
(b1−5):メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(120)モノメタクリレート重合体(カッコ内は平均付加モル数、以下同様)(モル比80/20)、単量体(B12)/単量体(B11)=80/20(モル比)、重量平均分子量60,000、重合体中のカルボキシル基が中和、すなわち塩である化合物
【0286】
(B1’)成分((B1)成分の比較成分)
(b1’−1):ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物:重量平均分子量15,000、花王株式会社製、マイテイ HS
【0287】
(C)成分
表7〜10に示した化合物を用いた。
【0288】
<実施例1z及び比較例1z>
(1)分散剤組成物の調製
表7に記載の添加量となるように各成分を含有する分散剤組成物を調製した。調製方法は、(A3)成分と(B1)成分を表7に記載の割合とする水溶液として調製後、表4の割合となるように水を添加し、No.8のマルエムスクリュー管に100g、20℃でマグネティックスターラーを用いて調製した。続いて(C)成分を表7に記載の割合となるように添加して、20℃におけるpHが表7に記載の値となるように調整した。なおpHはJIS K 3362;2008の項目8.3に従って測定した。
【0289】
(2)外観評価
調製した分散剤組成物の外観について、3か月の間20℃で静置して保存した後、目視観察し、下記の評価基準で判定した。結果を表7に示す。
均一:均一透明を維持している。
分層:二層に分層しているのが確認される。
【0290】
【表7】
【0291】
表7中、(A3)成分、(B1)成分、(C)成分の添加量は、固形分(有効分)の添加量である。
【0292】
表7中、(A3)成分及び(B1)成分において、カルボキシル基が中和、すなわち塩の化合物を含有し、pHが5を超える比較例1z−1〜1z−2の場合、その調製した分散剤組成物は上記保存後に二層に分層しているのが確認された。一方、(A3)成分及び(B1)成分において、カルボキシル基が中和、すなわち塩の化合物を含有しても、(C)成分を含有して、pHを5以下に調整した実施例1z−1〜1z−19の分散剤組成物の場合には、上記保存後でも均一安定で一液化を保てることが分かる。
【0293】
<実施例2z〜4z、及び比較例2z〜4z>
(1)コンクリート配合
下記にコンクリート配合を示した。W/Pは、水/水硬性粉体の比(質量%)であり、水硬性粉体の量は、早強セメント(P)と高強度混和剤(P)との合計量である。
【0294】
*コンクリート配合
早強セメント(P):12.6kg(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
高強度混和剤(P):1.00kg(非晶質シリカ/無水石膏=80/20質量%の混合品、比重2.45)
水道水(W):表8〜10に記載の量((A3)成分、(B1)成分、(B1’)成分、及び(C)成分を含む)
W/P:表8〜10に記載
砂:18.88kg(甲賀バラス砕砂、滋賀県甲賀産、密度2.58g/cm
砂利:28.35kg(砕石、兵庫県家島産、密度2.61g/cm
なお、水道水中の(A3)成分、(B1)成分、(B1’)成分、及び(C)成分は、それらの成分の量がコンクリート配合に対して微量であるため、水道水の量に算入してW/Pを計算した。
【0295】
(2)コンクリート調製
表8〜10の添加量となるように(A3)成分、(B1)成分、(B1’)成分、(C)成分、及び水を含有する組成物を調製し、前記コンクリート配合材料の水(W)に前記組成物を添加し、撹拌して調製した。コンクリートは、強制2軸型ミキサー(KYC社製)に、砂利、約半量の砂、早強セメントと無機早強剤の混合物、残部の砂の順に投入し、空練りを30秒間行い、次いで、すばやく前記調製した水を添加し、240秒間練り混ぜてコンクリートを得た。
【0296】
(3)スランプの評価
混練直後のコンクリートについて、JIS A 1101、及びJIS A 1150に基づいてスランプを測定した。結果を表8〜10に示す。
【0297】
(4)遠心成形コンクリートの評価
<実施例2x及び比較例2x>の(4)遠心成形コンクリートの評価と同様の方法で、得られた筒状のコンクリート硬化体の材齢7日の圧縮強度(7日強度)を測定し、該硬化体の8箇所の厚みを測定して、標準偏差を算出し、同様の基準で成形性を評価した。結果を表8〜10に示す。
【0298】
【表8】
【0299】
【表9】
【0300】
【表10】
【0301】
表8〜10中、(A3)成分、(B1)成分、(C)成分の添加量は水硬性粉体100質量部に対する添加量(質量部)であり、固形分(有効分)の添加量である。また(B1)成分に代えて、(B1’)成分を用いる場合、(B1’)成分は、便宜上、(B1)成分の欄に記載した。
【0302】
表8中、(B1)成分のポリカルボン酸系分散剤のみ含有する水硬性組成物である比較例2z−1〜2z−2に対して、(A3)成分と(B1)成分を含有する水硬性組成物である実施例2z−1〜2z−2は、水硬性組成物の幅広い水量で優れた成形性を有することが分かる。また(B1)成分に代えて、比較成分として、ナフタレン系分散剤のみを含有する水硬性組成物である比較例2z−3は、比較例2z−1と同程度の条件では、フレッシュコンクリートの調整を行うことができず、成形性や7日強度の評価を行うことができなかった。
【0303】
また表9中、(B1)成分のポリカルボン酸系分散剤のみ含有する水硬性組成物である比較例3z−1〜3z−3に対して、(A3)成分と(B1)成分を含有する水硬性組成物である実施例3z−1〜3z−2は、水硬性組成物の幅広い水量で優れた成形性を有することが分かる。
【0304】
また表10中、(B1)成分のポリカルボン酸系分散剤のみ含有する水硬性組成物である比較例4z−1〜4z−3に対して、(A3)成分と(B1)成分を含有する水硬性組成物である実施例4z−1〜4z−2は、水硬性組成物の幅広い水量で優れた成形性を有することが分かる。