【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、本発明は、液体物質で充填されたカートリッジの少なくとも1つの物理的または化学的なパラメータを測定するためのセンサに関する。典型的には、カートリッジには、液体薬剤で充填される。カートリッジは、たとえば中に含まれる液体物質に対して実質的に不活性なガラスまたはなにか他の材料で作られる、管状バレルを含むことができる。
【0012】
センサは、第1のセクションと第1のセクションから分離された第2のセクションとを有する平坦な可撓性箔を含む。換言すると、平坦な可撓性箔の第1および第2のセクションは重なり合わない。第1および第2のセクションは、完全に、互いに分離されている。さらに、第1および第2のセクションは、互いに対して所定の距離に配置される。センサは、可撓性箔に配置される少なくとも1つの測定電極をさらに含む。可撓性箔は、さらに、箔がカートリッジの外径と等しいまたはそれよりも大きな内径の少なくとも第1のラップを形成する、巻いたまたは渦巻き状の構成に、巻くまたは渦巻き状にすることができる。
【0013】
典型的には、可撓性箔は、中に管状カートリッジを受けるように管状構造または管状シースになるように巻くことができる。少なくとも第1のラップは、典型的には、カートリッジが長手方向に沿って前記第1のラップの内側に挿入可能なように曲げられるまたは巻かれる。前記長手方向は、管状の第1のラップの軸方向すなわち長手方向軸と一致する。
【0014】
センサは、可撓性箔の第1のセクションに配置される少なくとも1つの締結具をさらに含む。締結具は、可撓性箔を巻いた構成に保つために箔の第2のセクションに取り付けられるように構成される。第2のセクションへの取り付けのための締結具によって、可撓性箔の第1および第2のセクションは、可撓性箔が自然に広がるまたはほどけないように一緒に保たれる。締結具によって、単に平坦な可撓性箔を巻き第2のセクションに対して少なくとも1つの締結具を取り付けることによって、安定した自立管状シースが形成可能になる。
【0015】
少なくとも1つの締結具を用いて、管状シースを形成するように最初は平坦な可撓性箔および最初は平坦なセンサを巻くことができる。そうしたシースを形成した後、少なくとも1つの測定電極が上に配置されている巻いたセンサ、すなわち巻いた平坦な可撓性箔を、薬物送達デバイスのハウジング内に簡単に組み付け、配置することができる。送達デバイスのハウジングの対応する形状の管状レセプタクルへの巻いた可撓性箔の挿入は、かなり真っ直ぐな前進である。このため、薬物送達デバイス、具体的には、そのハウジングは、巻いた可撓性箔、すなわち巻いたセンサが内部に配置され固定される、対応する形状のレセプタクルを設けるだけでよい。
【0016】
したがって、少なくとも1つの締結具は、組み立てプロセスを容易にし、センサを、薬物送達デバイス内に組み付けられる前でも所定の幾何形状に保つ助けとなる。所定の幾何形状は、まさに、締結具の位置と、対応するように構成される箔の第1または第2のセクションの位置によって画成される。たとえば、巻いたまたは渦巻き状の可撓性箔を受ける薬物送達デバイスのレセプタクルに不可避な製作公差がある場合、可撓性箔がレセプタクル内に配置された後に広がろうとするので、恐らく、巻いた箔の直径は、少なくとも若干変わる。最初に曲げられたまたは巻かれた可撓性センサが若干であっても制御されないかたちで広がるまたはほどけることは、センサによって測定される信号の精密さおよび再現性に悪影響を与える恐れがある。締結具により、一連の同様に巻いたセンサは、高い再現性の程度および精度を備えることができるようになる。それによって、それぞれのセンサを用いて測定されるデータまたは信号の再現性ならびに精密さの向上が可能になる。
【0017】
さらに、少なくとも1つの締結具は、可撓性箔を巻いた構成に保つ働きをする。巻いた構成または渦巻き状の構成において、平坦な可撓性箔は、本質的に、向上した機械的安定性を示し、したがって、センサのための機械的支持構造として働く別個のキャリアを薬物送達デバイス内に設ける必要がもはやなくなる。このように、巻いた可撓性箔を受けて収容するために薬物送達デバイスに加えなければならない変更は最小限で済まされる。
【0018】
可撓性箔が巻かれまたは渦巻き状にされて巻いた構成になると、その第1のセクションおよび第2のセクションは、少なくとも部分的に重なり合う。したがって、平坦な可撓性箔の第1および第2のセクションは、径方向に重なり合うように選択され画成される。ここで、径方向は、管状のカートリッジまたは管状の巻いた可撓性箔の幾何形状を示す。径方向は、最初の平坦な箔の平面に対して実質的に垂直に延びる。したがって、第1および第2のセクションは、平坦な可撓性箔の明確な部分に配置され、平坦な可撓性箔がその巻いた構成に移行されるときにそれらの一部分が重なり合い直に接触する。平坦な可撓性箔は、典型的には、4つの側縁を含む矩形構造を有する。
【0019】
平坦な可撓性箔は、箔の側方側縁に対して平行に延びる、想像上の渦巻き体軸またはラップ軸に関して渦巻き状にするまたは巻くことができる。最初は平坦な可撓性箔は、長手方向および横方向に延びる。最終的に組み立てたとき、たとえばまたカートリッジを収納する薬物送達デバイスにおいて、巻いた可撓性箔の長手方向は、管状のカートリッジの長手方向すなわち軸方向に対して実質的に平行、すなわち同心(co−align)に延びる。平坦な可撓性箔の横方向は、カートリッジの管状側壁の外周に沿って延びる。換言すると、巻いた構成に巻かれると、可撓性箔の横方向は、カートリッジのバレルの管状側壁の周りの接線方向に延びる。
【0020】
一実施形態によれば、締結具は、可撓性箔の側方側縁に位置する。このように、横方向端、したがって渦巻き状または巻いた構成の可撓性箔の一端は、下に位置するラップに取り付けられる。側方側縁に締結具を設けることで、より閉じたコンパクトな構造の巻いたセンサを提供することができるようになる。可撓性箔の側方側縁であって下に位置する巻きまたはラップの上に曲げられるまたは渦巻き状にされる可撓性箔の最終縁である側方側縁にある締結具を使用すると、可撓性箔の巻いた構成、したがってセンサの巻いた構成は、外側に向く側壁または内側に向く側壁に実質的な径方向突出部のない、いくらか管状の形状になる。
【0021】
可撓性箔の厚さがかなり薄く、最初は平坦な可撓性箔が完全に渦巻き状になるまで形成されるラップまたは巻きの数がかなり少ない場合、最終的に得られる巻いた構成、たとえば、平坦な可撓性箔の管状渦巻き形態の構成は、かなり厚みのない側壁を含むことができ、それによって、薬物送達デバイス内でのスムーズかつ簡単なセンサの組み込みおよび組み付けが有効になる。
【0022】
他の実施形態によれば、第1のセクションに配置される締結具は、接着剤を含み、したがって、可撓性箔が巻いた構成にされたときに可撓性箔の第2のセクションに接着により取り付け可能である。具体的には、可撓性箔がその巻いた構成に移行されるときに最後に渦巻き状にされる可撓性箔の側方側縁に締結具が配置される場合、締結具が前記側方側縁全体に沿って長手方向すなわち軸方向に延び、締結具に全面的に接着剤が用意される場合に特に利点がある。このように、可撓性箔の側方側縁全体を、第2のセクション、したがって径方向の下に位置する箔のラップ、渦巻き体または巻きに取り付けることができる。このように、かなり滑らかな形状の外面の巻いたセンサを提供することができ、それは、長手方向に沿った薬物送達デバイスのハウジングのそれぞれのレセプタクルまたはコンパートメント内への渦巻き状センサのスムーズな組み付けおよび挿入の点で特に利点がある。
【0023】
他の実施形態によれば、第1のセクションに配置される締結具は、可撓性箔が巻いた構成にされるときに可撓性箔の第2のセクションに結合または溶着するための結合可能または溶着可能な構造を含む。ここで、締結具は、可撓性箔の側方側縁全体に沿って延びることができる特定の化学感受性または感熱性の材料またはそれぞれの材料ストリップを含むことができる。結合または溶着は、可撓性箔がその巻いた構成にされるときに化学薬品によっておよび/または熱エネルギーの適用によって引き起こされる。一般的に、平坦な可撓性箔のあらゆる任意のセクションが、巻いた構成が形成されるときに可撓性箔の重なり合う隣接して位置するセクションに結合されるまたは溶着されることが考えられる。
【0024】
このように、この特定の実施形態によれば、少なくとも1つの締結具は、平坦な可撓性箔のどこにでも配置することができる。一般的に、少なくとも1つの締結具は、所定のセクション、典型的には既に上述したような第2のセクションから構成されることが考えられる。巻かれたまたは渦巻き状の構成において第2のセクションが実質的に締結具に重なり合う場合、締結具、および場合により典型的には径方向の下に位置する第2のセクションは、溶着手順を受けることになってよく、それによってセンサおよびその可撓性箔の恒久的かつ解放不可能な渦巻き状または巻いた構成が形成される。
【0025】
さらなる一実施形態によれば、締結具および第2のセクションは、可撓性箔の両面に配置される。可撓性箔の最初の平坦構成において、締結具は、箔の上面に設けられ、その一方で、締結具に取り付け予定または連結予定の第2のセクションは、可撓性箔の反対側、したがってその下面に配置される。巻いた構成にあるとき、締結具は、巻いた箔の内向きの面に設けられ、その一方で、第2のセクションは、巻いた箔の外向きの面に設けられる。このように、管状の渦巻き体に形成されると、第1のセクションに配置された締結具は、第2のセクションに直接接触する。他の構成または実施形態では、締結具および第2のセクションが、可撓性箔内に配置される、または可撓性箔を通って延びることも考えられる。そうした実施形態の場合、締結具および第2のセクションは、巻いたまたは渦巻き状の可撓性箔が自然に広がるまたはほどけないようにするポジティブインターロック(positive interlock)を形成するように構成される。
【0026】
さらなる一実施形態によれば、締結具は、第1のセクションに配置され、可撓性箔の平面から突出している。それに対応して、第2のセクションは、可撓性箔が巻いた構成にされたときにその締結具を受ける凹部を含む。このように、突出した締結具と可撓性箔の凹部とのポジティブインターロックを得ることができる。典型的には、凹部および締結具は、少なくとも第1のラップの円周に対応する距離に横方向に間隔を置いて配置される。さらに、長手方向すなわち軸方向に関して、締結具および凹部は実質的に重なり合う。したがって、カートリッジの想像上の管状バレルの周りに巻かれるとき、突出した締結具は、少なくとも第1のラップが形成されるときに凹部に嵌る。このタイプのポジティブインターロックにより、巻いたまたは渦巻き状の可撓性箔は、自然に広がるまたはほどけないようになる。凹部に係合する少なくとも1つの締結具によって、薬物送達デバイスのハウジングの対応する形状のレセプタクルへの長手方向における挿入に特に適した、渦巻き状センサのかなり安定した自立構成が得られるようになる。
【0027】
可撓性箔の締結具と第2のセクションとの特定の取り付けに関わりなく、互いの締結は、たとえば巻いたセンサが長手方向に薬物送達デバイスのレセプタクルに挿入されるときの、たとえば第1のラップと、たとえば第2または第3のラップであるさらなるラップとの長手方向すなわち軸方向の互いの変位を防止する。したがって、第2のセクションに取り付けられた締結具によって得られるインターロックは、横方向だけでなく長手方向にも働く。
【0028】
他の実施形態では、センサは、少なくとも1つの測定電極に電気的に接続されるプロセッサをさらに含む。少なくとも1つの測定電極は、可撓性箔の感知ゾーンに配置される。典型的には、
センサは、プロセッサに両方とも電気的に接続される少なくとも2つの測定電極を含む。典型的にはマイクロコントローラまたは同様のデータ処理装置として実施されるプロセッサは、可撓性箔に取り付けられる。典型的には、プロセッサは、感知ゾーン内、または感知ゾーンの下方、典型的には可撓性箔の感知ゾーンの横方向境界領域内に配置される。
【0029】
それに加えて、さらなる一実施形態によれば、センサは、可撓性箔の通信ゾーンに配置されるアンテナをさらに含む。アンテナは、プロセッサに電気的に接続される。アンテナは、二重機能(two−fold function)を提供することができる。アンテナは、センサと、たとえばリーダ、またはスマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどのさらなるデータ処理装置との無線通信を可能にすることができる。さらに、アンテナは、無線周波数認識(RFID)装置として実装することができる。アンテナは、プロセッサおよび/または電極に電気エネルギーを供給するためにエネルギー源との無線接続を可能にするように、近距離無線通信(NFC)として実装することもできる。アンテナをRFIDまたはNFC構成要素として実装することによって、センサは、別個のエネルギー源を必要としない受動的なRFIDまたはNFC装置のように働くことができるようになる。このように、センサは、独自のエネルギー源がなくてよい。それによってそうしたセンサの低コストでスペースを節約した実装が有効になる。さらに、独自のエネルギー源がないことにより、センサの寿命全体が延び、エネルギー源の寿命にもはや依存しなくなる。
【0030】
第1および第2の電極は、感知ゾーンに配置されるだけでなく、その感知ゾーンの領域の可撓性箔に恒久的かつ固定的に取り付けられる。同様に、アンテナも、感知ゾーンから分離されている通信ゾーンにおいて箔に固定的に取り付けられる。電極ならびにアンテナの両方が1つの同じ可撓性箔に取り付けられる場合、可撓性箔は、センサの共通の支持部またはベースとして機能することになる。典型的には、少なくとも第1および第2の電極ならびにアンテナは、典型的には電気的に絶縁の可撓性箔の表面にプリントまたはコーティングされる。したがって、箔は、実際、第1および第2の電極ならびにアンテナの両方についての可撓性の平坦な基板または機械的な支持部として働く。1つの同じ可撓性箔における電極およびアンテナの両方の実装は、センサおよびカートリッジの組み立てプロセスにおいて利点がある。
【0031】
カートリッジに平坦な可撓性箔の感知ゾーンを配置するまたは取り付けるとき、アンテナは、自動的に、カートリッジに対して正しい位置になる。したがって、アンテナ組み付けの別個の工程、具体的には、第1および/または第2の電極とプロセッサおよび/またはアンテナとの互いの電気的な相互接続の確立は、不必要となる。さらに、両方、すなわち第1および第2の電極を平坦な可撓性箔にプリントまたは取り付ければ、少なくとも2つの電極は、本質的に、互いに対して正しい位置になる。可撓性箔とカートリッジの組み付けの間、第1および第2の電極の相対的な位置および/または向きは継続し、可撓性箔の幾何的な変形によって変わるだけである。
【0032】
他の実施形態によれば、センサは、可撓性箔に配置されプロセッサに電気的に接続される電気シールドをさらに含む。典型的には、電気シールドは、通信ゾーン全体にわたって延びる。電気シールドは、実質的に、アンテナに重なり合う、またはアンテナを完全に覆って囲繞する。典型的には、最終組み立て構成において、電気シールドは、感知ゾーンのためのクラッドとして機能するように感知ゾーンの周りに巻かれる。
【0033】
このように、感知ゾーン、したがってかなり敏感な電極は、センサ付近の電磁場のあらゆる潜在的な変動から効果的に保護され遮蔽される。さらに、電気シールドは、一種の接近センサまたはタッチセンサとして機能し働くことができ、それによって、センサ直近へのたとえば指などの物体の接近を検出することができる。このように、電気シールドは、EMI放射から第1および第2の電極を保護する機能を果たすだけでなく、センサ付近の誘電特性を変える恐れのある物体の接近に応答した第1および第2の電極の配置へのあらゆる悪影響を相殺するまたは打ち消す効果的な手段を提供する。
【0034】
他の実施形態によれば、電気シールドは、通信ゾーンに少なくとも部分的に配置されるまたは重なり合う。しかしながら、電気シールドは、アンテナから電気的に隔離される。電気シールドとアンテナは、さらに、可撓性箔の両面に配置される。可撓性箔は、電気的に絶縁であるから、単に、両面たとえば可撓性箔の上面と下面にアンテナと電気シールドを配置すれば、本質的に、その間に十分な電気絶縁が提供される。さらに、通信ゾーンが巻かれ管状のカートリッジの外周を受ける最終組み立て構成において、典型的には箔の外向きの部分に配置されるアンテナは、巻いたまたは渦巻き状の可撓性箔の内向きの部分に典型的には配置される電気シールドから、径方向に分離されている。可撓性箔がカートリッジの管状バレルの周りに巻かれる最終組み立て構成において、電気シールドは、典型的には、通信ゾーンと感知ゾーンとの間に径方向に挟まれる。
【0035】
他の実施形態によれば、箔は、実質的に透明である。箔は、典型的には透明なポリマーを含む、またはそれから作られる。箔は、ポリカーボネート、ポリイミドまたはポリ塩化ビニル(PVC)である材料のうちの少なくとも1つまたはその組み合わせを含むことができる。さらに、箔には、少なくとも第1および第2の電極、アンテナまたは電気シールドなどの導電構造がプリント可能またはコーティング可能である。さらに、第1および第2の電極、プロセッサ、アンテナならびに電気シールドは、箔に同時にプリントまたはコーティングされるいくつかの導電パスによって、電気的に接続される。導電パスは、アンテナ、シールドおよび/または電極と同じ材料で作ることができる。典型的には、アンテナ、シールド、第1または第2の電極および導電パスのうちの少なくとも1つは、金属の導電材料を含む、またはそうした導電材料からなる。
【0036】
導電構造は、スパッタリングおよび溶射被覆などの任意の適当な成膜技術によって、または様々な化学蒸着技術によって可撓性箔上に適用することができる。
【0037】
センサのすべての電気構成要素が1つの同じ平坦な可撓性箔に配置されることによって、プラグまたはセンサの電気構成要素間の他のコネクタなどの機械的なインターフェースが必要なくなる。箔および/または電極、導電パス、シールドもしくはアンテナが透明なことから、たとえばガラスカートリッジの内部を依然として視覚検査することが可能になる。センサの電子構成要素、すなわち第1および第2の電極、アンテナまたはシールドは、導電性の実質的に透明な酸化インジウムスズ(ITO)を含むまたはそれからなってよい。あるいは、電子構成要素は、類似の導電性の透明な材料を含むまたはそれからなってもよい。
【0038】
箔および/またはそれに取り付けられるもしくは埋め込まれる電子構造が透明なことから、依然として、透明なガラスカートリッジの中身を視覚検査することが可能である。カートリッジ内部の視覚検査ができることは、カートリッジの中身、具体的には液体薬剤が凝縮、凝集、またはいくつかの他の有害作用もしくは現象を受けている可能性があるかどうかの直感的な制御を可能にするために、特に重要である。
【0039】
さらなる一実施形態において、可撓性箔の感知ゾーンおよび通信ゾーンは、可撓性箔が巻いたまたは渦巻き状の構成にされるときに感知ゾーンが第1のラップを形成し、通信ゾーンがその第1のラップを囲む第2のラップを形成するように、横方向に隣接して配置される。少なくとも1つの測定電極および電気シールドが可撓性箔の同じ側に配置され、アンテナが電気シールドに重なり合う構成にあるが箔の反対側に配置される場合、電気シールドは、測定電極が第1すなわち内側ラップまたは渦巻き体の領域に径方向内側に向いて配置されるかたちでセンサが巻いた構成にされるとき、アンテナと測定電極との間に径方向に挟まれる。
【0040】
他の実施形態では、可撓性箔は、通信ゾーンに隣接して配置され、可撓性箔が巻いた構成にされるときに第2のラップを囲む第3のラップを形成するように構成される、保護ゾーンをさらに含む。このように、平坦な可撓性箔は、横方向に隣接して配置される少なくとも3つのゾーンを含む。典型的には、少なくとも3つのゾーンのそれぞれは、可撓性箔の長手方向延長部全体、したがって遠位側縁から近位側縁の方へと延びる。側方側縁から始めると、まず、少なくとも1つの測定電極を含む感知ゾーンが位置する。この側方側縁の反対側には、通信ゾーンが感知ゾーンの隣または隣接して位置し、さらに横方向に、保護ゾーンが続く。このように、通信ゾーンは、感知ゾーンと保護ゾーンとの間に横方向に挟まれる。
【0041】
渦巻き状または巻いた構成にあるとき、保護ゾーンは、まさに、下に位置する第1および第2のラップを機械的に保護する。アンテナは典型的には第2のラップの外側向きの面に配置されるので、保護ゾーンは、アンテナを機械的に保護するように構成される。巻いたセンサは長手方向すなわち軸方向において薬物送達デバイスのレセプタクル内に配置され挿入されるように構成され、そのように意図されるので、保護ゾーンは、引っ掻きなどの機械的な影響からアンテナを保護する。
【0042】
締結具が接着ストライプとしてまたは結合可能もしくは溶着可能な構造として構成される場合、締結具は、典型的には、巻かれる可撓性箔の横方向の自由端を形成する保護ゾーンの側方自由縁に配置される。この場合、第2のセクションは、実質的に、第2のラップと第3のラップとの間の移行領域に重なり合うが、少なくとも1つの接着剤、結合可能または溶着可能な締結具が配置される側に対して可撓性箔の反対側に配置される。
【0043】
一般的に、第1のラップを形成する感知ゾーン、第2のラップを形成する通信ゾーン、および第3のラップを形成する保護ゾーンはすべて、実質的に横方向の寸法が等しいことが考えられる。しかしながら、薬物送達デバイスおよび/またはカートリッジの特定の要求に応じて、感知ゾーン、通信ゾーンおよび保護ゾーンの横方向および/または長手方向の延長部は、若干または大幅に変わることも考えられる。
【0044】
さらなる一態様によれば、本発明は、さらに、典型的にはカートリッジに含まれる、液体薬剤の用量を設定し投薬する薬物送達デバイスに関する。薬物送達デバイスは、薬剤で充填されたカートリッジを受けて収容する管状のレセプタクルを有するハウジングを含む。薬物送達デバイスは、上述したようなセンサをさらに含む。センサは、巻いた構成にされてから、この特定のレセプタクル内に配置され固定される。このように、巻いたセンサは、第1のラップの内側においてカートリッジを受けるように構成される。渦巻き状または巻いたセンサは、薬物送達デバイスのレセプタクル内に配置されると、管状のレセプタクルの内側壁についてのある種のクラッドを形成する。カートリッジが前記レセプタクルの内側に配置される最終組み立て構成では、渦巻き状のセンサは、カートリッジと、レセプタクルの側壁との間に径方向に挟まれる。
【0045】
センサの渦巻き状または巻いた構成によって、カートリッジの存在に関係なく、レセプタクル内にセンサを配置することが可能になる。カートリッジがデバイスのレセプタクルしたがってセンサの内側ラップの内側に挿入されると、カートリッジおよび/またはその液体薬剤の少なくとも1つの物理的または化学的なパラメータが実際測定可能になる。センサ全体が薬物送達デバイスのハウジングの内部に組み付けられるので、所期の測定を実施するためにカートリッジに修正を加える必要はない。本明細書に記載のセンサは、典型的にはペン型注射デバイスを使用した薬剤の注射によく使用されるような、従来のカートリッジとともに動作するように構成される。
【0046】
薬物送達デバイス内にセンサを配置することは、カートリッジが空になったら交換されることを意図する再使用可能薬物送達デバイスについて、特に有利である。このように、電子構成要素ならびに少なくとも1つの測定電極を含むセンサのすべての構成要素は、多数回、すなわち一連のカートリッジとともに、使用することができる。実施予定の測定に対して、薬物送達デバイスにはさらなる修正は加えられない。センサが、ある種の受動的なRFIDラベル(label)またはRFIDタグとして実施される場合、測定はトリガ可能であり、測定結果は、さらに、RFIDまたはNFC対応スマートフォンまたはタブレットコンピュータなどの、単一の電子デバイスによって処理することができる。
【0047】
センサは、必ずしも受動的RFIDまたはNFCデバイスとして実施される必要はない。センサ全体が薬物送達デバイスのハウジングの内部に恒久的に配置されることを意図しているので、定期的または頻回の測定が、RFIDまたはNFC電子デバイスの存在とは関係なく独立した所定の測定スケジュールに従って実施可能となるように、センサのための追加の電源を設けることも考えられる。特に、電子式に実施される薬物送達デバイスの場合、センサについての受動的NFCまたは受動的RFIDによる電力管理ではなく能動的センサ設計を実施することができる。その場合、センサの動作のために、薬物送達デバイスの既存の電気エネルギー供給源を使用することができ、別個の電池のような追加の電力源は必要ない。
【0048】
さらなる一実施形態において、センサならびにカートリッジを受けて収容する薬物送達デバイスのレセプタクルは、ハウジングのカートリッジホルダ内に位置する。ここで、カートリッジホルダの近位端部は、実際、カートリッジを収容する。この実施形態では、カートリッジは、実際、薬物送達デバイス内に配置されその交換可能構成要素を形成する。カートリッジホルダは、さらに、ハウジングの本体の遠位端部と取り外し可能に連結することができる。典型的には、カートリッジホルダは、ハウジングの遠位部分を形成し、その一方で、本体はハウジングの近位部分を形成する。
【0049】
本体は、さらに、典型的にはピストンロッドを含む、駆動機構を収容する。駆動機構およびそのピストンロッドは、典型的には、カートリッジのピストンに遠位方向圧力を及ぼすように構成される。このピストンは、カートリッジの近位端を封止している。薬物送達デバイスの駆動機構は、具体的には、ピストンを遠位方向に駆動するためにカートリッジのピストンに圧力を及ぼすように遠位方向に前進し、それによってカートリッジの遠位出口から薬剤の所定量、したがって用量が排出されるように構成される。カートリッジの遠位出口は、典型的には、患者の生体組織に薬剤を投入(depositing)するための両頭注射針のようなニードルアセンブリと流体連通する。
【0050】
さらなる一実施形態において、薬物送達デバイス、具体的にはカートリッジホルダは、そのレセプタクル内に巻いたセンサを固定するための固定要素または固定構造を含む。たとえば、カートリッジホルダの近位端は、多数の掛止め要素またはクリップ機能を含み、それによって巻いたセンサは、カートリッジホルダのレセプタクル内に位置的に固定されることが考えられる。さらに、カートリッジホルダの固定要素または固定構造は、巻いたセンサの外径に適合する外径を有し内径を通るカートリッジの管状バレルを受けるのに十分な大きさの内径を有するねじ付き環状リングまたはフランジ様要素のような着脱可能クロージャを含むことが考えられる。このように、センサは、長手方向すなわち軸方向に関してレセプタクル内に固定可能であり、その一方でカートリッジは、前記レセプタクル内に着脱可能に配置可能である。
【0051】
本文脈において、遠位方向は、薬物送達デバイスの投薬端を示す。薬物送達デバイスが注射デバイスとして実施される場合、薬物送達デバイスの遠位端は、患者の注射部位の方に向けられる。近位端または近位方向は、デバイスの反対の長手方向に向く。ペン型注射器のような注射デバイスとして実施される場合、薬物送達デバイスの近位端は、注射手順を設計し、設定し、実施するように、使用者の手によって動作可能である。
【0052】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0053】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0054】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0055】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0056】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0057】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0058】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0059】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0060】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0061】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0062】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0063】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0064】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0065】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0066】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0067】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0068】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0069】
特許請求の範囲によって定められる本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を加えることができることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用されるいかなる参照数字も、本発明の範囲を限定するものとしてみなすべきではないことに留意されたい。
【0070】
以下において、図面を参照して、ディスプレイ装置(arrangement)、駆動機構および薬物送達デバイスの一実施形態を詳細に述べる。