(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873981
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】モバイルFFRシミュレーション
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20210510BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20210510BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
A61B6/03 360G
A61B6/00 350D
A61B6/03 360J
A61B6/03ZDM
A61B5/055 380
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-516146(P2018-516146)
(86)(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公表番号】特表2018-529446(P2018-529446A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】EP2016072787
(87)【国際公開番号】WO2017060106
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年9月25日
(31)【優先権主張番号】15188699.1
(32)【優先日】2015年10月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ホルゲル
(72)【発明者】
【氏名】ハーセ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ニキッシュ ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】プレフルハル スヴェン
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/064702(WO,A2)
【文献】
国際公開第2015/082576(WO,A1)
【文献】
特開2007−075141(JP,A)
【文献】
特開2015−057103(JP,A)
【文献】
特開2008−178673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブルモバイルデバイスの作動方法であって、
表示ユニットが、前記狭窄を有する患者の関心領域の初期画像を表示するステップと、
前記ポータブルモバイルデバイスのカメラが、前記関心領域の表示された前記初期画像の写真データを得るステップと、
血管サイズ算出器が、前記写真データから血管サイズを算出するステップと、
輪郭決定器が、少なくとも前記血管及び前記狭窄の輪郭を抽出するステップと、
再構成器が、前記得られた写真データ及び前記検出された輪郭に基づいて、血管モデルを再構成するステップと、
シミュレータが、少なくとも前記血管モデル及び前記算出された血管サイズを使用して、前記狭窄の近位側及び遠位側の前記血管内の血圧値及び血流値をシミュレートするステップと、
計算器が、前記シミュレートされた血圧値及び血流値から、血流予備量比の値を計算するステップと、
表示ユニットが、前記計算された血流予備量比の値を表示するステップと、
を有する作動方法。
【請求項2】
前記関心領域の前記初期画像は、X線イメージングデータ、コンピュータトモグラフィイメージングデータ又は磁気共鳴イメージングデータを含むグループから選択される2D又は3D医療イメージングデータによって得られる、請求項1に記載の作動方法。
【請求項3】
表示ユニットが、前記血管を、前記狭窄の遮られないビューが表示されるような向きで表示する、請求項1又は2に記載の作動方法。
【請求項4】
前記写真データは、静止画像又は静止画像の連続を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作動方法。
【請求項5】
前記静止画像は、一連の静止画像から手動で又は自動的に選択される、請求項4に記載の作動方法。
【請求項6】
前記写真データは、前記写真データが得られた時間フレームに関する時間情報及び/又は前記写真データが得られた空間位置に関する位置情報を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の作動方法。
【請求項7】
前記血管サイズは、前記写真データ内の既知の構造を検出し、前記検出された既知の構造を、前記既知の構造の一般的な寸法と比較し、前記比較された寸法に基づいてスケールファクタを計算することによって、算出される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の作動方法。
【請求項8】
前記血管サイズは、ユーザ規定されるスケールファクタによって算出され又は影響を及ぼされる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の作動方法。
【請求項9】
輪郭決定器が、前記血管及び/又は前記狭窄の前記輪郭の手動入力を受け取る、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の作動方法。
【請求項10】
前記血管及び/又は前記狭窄の前記輪郭が、血管らしさフィルタによって自動的に決定される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の作動方法。
【請求項11】
前記計算された血流予備量比の値は、前記狭窄の遠位側に単一の値として、又は前記血管に沿ったカラーコード化された圧力勾配として、表示される、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の作動方法。
【請求項12】
表示ユニットが、他の検査の推奨を更に表示する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の作動方法。
【請求項13】
ポータブルモバイルデバイスは、
狭窄を有する血管の少なくともセクションの表示された初期画像データから、写真画像データを得るためのカメラと、
前記得られた写真画像データから血管サイズを算出する血管サイズ算出器と、
前記得られた写真画像データから前記血管及び前記狭窄の輪郭を検出する輪郭決定器と、
前記得られた写真画像データ及び前記検出された輪郭に基づいて血管モデルを再構成する再構成器と、
少なくとも前記血管モデル及び前記算出された血管サイズを使用して、前記狭窄の近位側及び遠位側の前記血管の血圧値及び血流値をシミュレートするシミュレータと、
前記シミュレートされた血圧値及び血流値から血流予備量比値を計算する計算器と、
前記計算された血流予備量比値を表示するディスプレイ、又は前記計算された血流予備量比値を表示する外部ディスプレイに対する接続部と、
を有するポータブルモバイルデバイス。
【請求項14】
移動電話、タブレットコンピュータ、拡張現実グラス若しくはバイザー、又はカメラを装備したデスクトップ若しくはラップトップコンピュータである、請求項10に記載のポータブルモバイルデバイス。
【請求項15】
狭窄を有する血管の狭窄情報を得るためのコンピュータプログラムであって、
ポータブルモバイルデバイスから、少なくとも狭窄を有する血管のセクションの表示された初期画像データを含む写真画像データを得るステップと、
前記得られた写真画像データから血管サイズを算出するステップと、
前記得られた写真画像データから前記血管及び前記狭窄の輪郭を検出するステップと、
少なくとも血管モデル及び前記算出された血管サイズを使用して、前記狭窄の近位側及び遠位側の前記血管内の血圧値及び血流値をシミュレートするステップと、
前記シミュレートされた血圧値及び血流値から血流予備量比の値を計算するステップと、
表示ユニットに、前記計算された血流予備量比の値を提供するステップと、
を実行するように適応されたソフトウェアコードを有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、狭窄を有する血管の狭窄情報を取得する方法、狭窄を有する血管の狭窄情報を取得するためのポータブルモバイルデバイス及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、狭窄(血管の狭小化を形成する病変)及び血流への狭窄の影響が、狭窄の前(近位側)及び狭窄の後ろ(遠位側)の血管内の圧力を測定するカテーテル処置によって検出される。圧力測定から、血流予備量比(FFR)が計算され、これは、機能的な狭窄の深刻さを決定するための最も多く使用されている特性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今日、非侵襲の画像ベースの狭窄検出及び特徴付け方法もまた利用できるようになっている。これらの画像ベースの方法は、3Dイメージング(例えばコンピュータトモグラフィ(CT)イメージング)によって得られる画像ボリュームから抽出される3D冠動脈モデルを使用して実施され、通常、シミュレートされたFFR値を提供する。
【0004】
知られている画像ベースのモデルは、高いコンピュータ計算努力を必要とし、場合によっては時間がかかる。
【0005】
本発明は、知られているFFR決定方法及びシステムに代わる、より簡単でより少ない時間を要する非侵襲の代替方法及び装置を提供することを試みる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による実施形態は、狭窄を有する血管の狭窄情報を得る方法に向けられる。本発明は、表示ユニットに、少なくとも狭窄を有する患者の関心領域の初期画像を表示するステップと、ポータブルモバイルデバイスのカメラを使用して、関心領域の表示された画像の写真データを得るステップと、写真データから血管サイズを算出するステップと、少なくとも血管及び狭窄の輪郭を検出するステップと、得られた写真画像データ及び検出された輪郭に基づいて血管モデルを再構成するステップと、少なくとも血管モデル及び算出された血管サイズを使用して、狭窄の近位側及び遠位側の血管内の血圧値及び血流値をシミュレートするステップ、シミュレートされた血圧値及び血流値から血流予備量比の値を計算するステップと、計算された血流予備量比の値を表示するステップと、を有する。言い換えると、表示された画像の写真が取得され、ポータブルモバイルデバイスが、画像を解析し及びFFR値を決定するために使用される。従って、狭窄情報は、ポータブルモバイルデバイスを使用することによって、低いコンピュータ計算努力で速く取得される。
【0007】
好適な実施形態は、関心領域の初期画像が、X線イメージングデータ、コンピュータトモグラフィイメージングデータ又は磁気共鳴イメージングデータを含むグループから好適に選択される2D又は3D医療イメージングデータによって得られることである。このようなイメージングデータは、高品質であり、狭窄情報を得るための良好な基礎を形成することができる。
【0008】
他の好適な実施形態は、血管が、狭窄の遮られていないビューが表示されるような向きで表示されることを含む。これは、狭窄データが正確であることを確実にする。
【0009】
他の好適な実施形態は、写真データが、静止画像又は静止画像の連続を有することを含む。静止画像は、静止画像の連続から手動で又は自動的に選択されることができる。
【0010】
他の好適な実施形態は、写真データが取得された時間フレームに関する時間情報、及び/又は写真データが取得された空間位置に関する位置情報を写真データが有することを含む。この付加のデータは、位置又は時間フレームに関してより正確な狭窄情報を得るために、再構成、モデリング又は計算アルゴリズムのための入力として使用されることができる。
【0011】
他の好適な実施形態は、血管サイズが、写真画像データ内の知られている構造を検出し、検出された知られている構造を知られている構造の一般的な寸法と比較し、比較された寸法に基づいてスケールファクタを計算する、ことによって算出される。これは、高速に実施されることができる自動化されたプロシージャである。
【0012】
他の好適な実施形態は、血管サイズがユーザ規定されるスケールファクタによって算出される又は影響されることを含む。ユーザは、医療画像を解釈する際に該ユーザの知識を使用することによって、サイズを規定し又は補正することができる。
【0013】
他の好適な実施形態は、好適には、血管らしさ(vesselness)フィルタによって、血管の輪郭及び/又は狭窄が自動的に決定されることを含む。代替として、輪郭は、ユーザによって手動で決定されることができ、又は自動の決定が、ユーザによって影響を及ぼされ又は補正されることができる。
【0014】
他の好適な実施形態は、計算された血流予備量比の値が、狭窄の遠位側の単一の値として、又は、血管に沿ったカラーコード化された圧力勾配として、表示される。
【0015】
他の好適な実施形態は更に、他の検査の推奨が更に表示されることを含む。
【0016】
他の対応する実施形態は、方法の適切なステップを実施するように構成されるポータブルモバイルデバイス及びコンピュータプログラム製品に向けられる。
【0017】
本発明の更に別の見地及び実施形態は、以下の詳細な説明を読み理解することで当業者によって理解されるであろう。多くの付加の利益及び利点は、好適な実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】初期画像として3Dコンピュータトモグラフィ画像を使用する、本発明の方法及び装置の一実施形態の概略図。
【
図2】初期画像として2D X線画像を使用する本発明の方法及び装置の一実施形態を示す概略図。
【
図3】本発明による方法の一実施形態を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、添付の図面によって説明される。
【0020】
本発明は、さまざまなコンポーネント及びコンポーネントの取り合わせ、並びにさまざまなプロセス動作及びプロセス動作の取り合わせの形を取ることができる。図面は、好適な実施形態を説明するためだけにあり、本発明を制限するものとして解釈されるべきでない。よりよく視覚化するために、特定の特徴が省かれることがあり、又は寸法が一定の縮尺に従わないことがある。
【0021】
放射線医学部門及び心臓学部門において、例えば3D X線、コンピュータトモグラフィ(CT)、磁気共鳴(MR)、ポジトロンエミッショントランスミッション(PET)、シングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ(SPECT)、超音波(US)又はそれらの組み合わせのようなイメージングシステムによってイメージングされる冠動脈のような血管が、狭窄の深刻さを測定する及び評価する意図でスクリーンに表示される。狭窄の深刻さを表現する最も一般的な方法は、血流予備量比(FFR)であり、これは、同じ血管内の正常最大流量に対する血管内の狭窄病変の遠位側の最大血流の比として規定される:FFR=Pd/Pa(Pdは、病変の遠位側圧力であり、Paは、病変の近位側圧力である)。
【0022】
血圧は、カテーテル処置を使用して動脈内で測定されることができるが、血圧は更に、イメージングデータを解析しシミュレートされたFFR(及び/又は他の関連する血流又は圧力)値を計算する高度なモデルを使用して、シミュレートされることもできる。使用されるモデル及び要求される正確さに依存して、FFR値の計算が、分から時間の間で行われることができる。しかしながら、処理時間は、より高度なコンピュータ計算能力及び他の改善されたモデルにより一層短縮される。
【0023】
通常、FFRは、3D画像データを使用してモデル化されるが、最近、造影剤強調の2D血管造影データのような2D画像データを使用することも可能になっている。正しい条件(例えば狭窄の遮られていないビュー及び血管の最適な向き)で、完全な冠動脈ツリーを抽出する必要なしに、ゆえに非常に小さいコンピュータ計算能力で、FFR計算が得られることができる。この洞察が本発明の基礎である。
【0024】
本発明は更に、2Dアプローチを採用し、ポータブルモバイルデバイス上でFFR値をシミュレートすることを提案し、ここで、ポータブルモバイルデバイスは、医療イメージング装置の任意の適切なディスプレイから、血管及び狭窄のジオメトリをキャプチャするために、それらの内蔵カメラを使用する。
【0025】
現在の3Dモデルは、複雑であり、高いコンピュータ計算能力及び元の3D画像データへの直接のアクセスを必要とする。従って、モデリング及びFFR計算を実施するために、イメージング装置に組み込まれ又はイメージング装置に直接接続される強力なコンピュータを使用することが、当然の選択である。当業者は、このタスクを実施するために小さいモバイル装置を使用したいと思ないであろうが、本発明の洞察は、2Dモデリングが、それが正しく実施される場合、コンピュータ計算能力の要求を低下させ、移動電話のようなあまり能力の高くないデバイスにも利用可能になることである。
【0026】
図1、
図2及び
図3は、本発明を及び本発明がどのように実現されることができるかを示す。当然ながら、当業者であれば、本発明は、同じ又は同様の結果を達成する別の異なる実施形態においても実現されることができることがわかる。
図1及び
図2は、3Dコンピュータトモグラフィ画像(
図1)及び2D X線画像(
図2)を初期画像として使用する本発明の一実施形態を示す概略図を示す。
図3は、本発明によるワークフローのフローチャートを示す。
【0027】
最初に、301において、心臓又は心臓動脈系のような臓器の画像、又はCTイメージャ10又はX線イメージャ(20)においてスキャンされた患者のセクションのような、初期画像が取得され、表示される。本例において、一実施形態において、イメージングされた心臓102は、例えばモニタのようなディスプレイ101上に3D様のビューで、例えばボリュームレンダリングされた画像で、表示され、狭窄した血管103が、ディスプレイ101上で可視である。別の実施形態において、心臓血管系202の一部の2D画像、例えば造影剤強調の2D血管造影像が、ディスプレイ201に視覚化される。更に、狭窄した血管203が、明確に存在している。提案された方法の正確さのために、病変の遮られていないビューを可能にする向きにおいて動脈を表示することが重要である。これは、2D画像の場合に特に重要である。複数の角度から画像を取得し、それから、手動で又は自動的に最良の画像を選択することが必要でありうる。
【0028】
次に、初期画像データ302の写真画像データが取得される。写真画像データは、ポータブルモバイルデバイス105、205に組み込まれるカメラを使用することによって取得される。ポータブルモバイルデバイス105、205は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、拡張現実(augmented reality)グラス、例えばウェブカメラを備えたコンピュータ又は一体型のウェブカメラを有するラップトップ、組み込まれた又は取り付けられたカメラ106、206を有するコンピュータ、又は適切なコンピュータプロセッサ及びカメラを組み込んだ任意の他のポータブルモバイルデバイスでありうる。カメラ106、206は、動画をキャプチャするためのフォトカメラ及び/又はカメラでありうる。写真画像データは、少なくとも、例えば冠動脈ツリーの重要な部分である狭窄を有する血管103、203の部分を含むセクション104、204を含むべきである。本発明の状況において、写真データは、単一の写真画像に制限されない。写真データは、例えばムービー、又は時間的に間隔を置かれた順次の画像の連続であってもよい。適切な追跡と組み合わせられる場合、一連の画像(アンギオグラフィにおける心拍、CTの回転)の記録は、改善された血管再構成を可能にする。代替として、ポータブルモバイルデバイス上のアプリケーションは、血管及び狭窄を表示するために、最も高い画像品質又は最も妥当な向きのフレームを簡単に選択することができる。
【0029】
写真画像データは、写真データが得られた時間フレームに関する時間情報及び/又は写真データが得られた空間位置に関する位置情報を含むこともできる。このデータは、後で述べられるアルゴリズム及びモデルへの付加の入力情報として使用されることができ、それらの正確さ及び/又は信頼性を改善することができる。
【0030】
血管及び狭窄は、それらの輪郭107、207を検出する(303)ことによって、写真画像データ上で識別される。輪郭107、207は、ユーザによって手動で描かれることができ、又は例えば血管らしさフィルタに基づいて、自動的に検出されることができる。アルゴリズムのこの部分は、2D X線血管造影像に基づくFFRシミュレーションと同じであり、例えばO. Wink, W.J. Niessen, M.A. Viergever, "Multi-scale vessel tracking", IEEE Transactions on Medical Imaging, vol. 23, no. 1, pp. 130-135, 2004に記述されている。
【0031】
写真画像データは、おそらくユーザによって保持されるポータブルモバイルデバイスを用いて得られるので、ディスプレイとカメラの間の距離及び/又は使用されるズーム比が、血管又は狭窄の実寸法を評価することを困難にする。従って、関心領域のジオメトリの現実的なモデルを組み立てるために血管サイズを評価する(304)ことは重要である。算出は、ユーザがスケールファクタを提供すること(304−4)によって、又は、知られている特徴を検出するために写真画像データを解析すること(304−1)によって、行われることができる。これは、自動的に行われ、又はユーザ規定され、又はユーザ支援されることができる。これらの知られている特徴のサイズは、心筋、骨、血管等の器官の一般的なサイズ及び長さと比較され(304−2)、関連付けられることができる。例えば、知られている器官の寸法のデータベースが参照されることができる。スケールファクタは、知られている特徴及びイメージングされた特徴の比較された寸法に基づいて、計算されることができる(304−3)。より多くの正確さのために、複数の特徴が比較されることができ、各々の特徴ごとにスケールファクタの(加重)平均が使用されることができる。
【0032】
次に、3D動脈モデルが、検出された輪郭及びスケールファクタを使用して、写真データから再構成される(305)。知られているアルゴリズムが、2Dデータから3Dモデルを再構成するために使用されることができる。3Dモデルは、輪郭ステップ中に得られる直径をもつ円形血管断面(O. Wink, W.J. Niessen, M.A. Viergever, "Multi-scale vessel tracking", IEEE Transactions on Medical Imaging, vol. 23, no. 1, pp. 130-135, 2004)を仮定して、又はビデオデンシトメトリに基づく方法(例えば、J. Haase et al., "Quantification of intracoronary volume by videodensitometry: Validation study using fluid filling of human coronary casts", Catheterization and Cardiovascular Diagnosis, vol. 33, no. 1, pp. 89-94, 1994)を使用して、構築されることができる。
【0033】
次のステップにおいて、血圧及び血流値が、例えばVan de Vosse, "Mathematical modelling of the cardiovascular system", Journal of Engineering Mathematics, vol. 47, pp. 175-183, 2003; Kim et al., "Patient-specific modeling of blood flow and pressure in human coronary arteries", Annals of Biomedical Engineering, vol. 38, no. 10, pp. 3195-3209、又はSmith et al., "An anatomically based model of transient coronary blood flow in the heart", SIAM Journal on Applied Mathematics, vol. 62, no. 3, pp. 990-1018に記述されるような、知られているアルゴリズムを使用して、狭窄の近位側及び遠位側でシミュレートされる(306)。
【0034】
ここでも、検出された輪郭及びスケールファクタが、これらのアルゴリズムの付加の入力として使用される必要がある。血圧及び血流値から、シミュレートされたFFR値が計算される(308)。
【0035】
FFR値は、ユーザに対し、好適にはポータブルモバイルデバイス105、205のディスプレイ上に、表示される(307)。これは、例えば、血管108、208に沿った圧力のカラーコード化された勾配として、及び/又は狭窄109、209の遠位側のロケーションに単一の値として、表示されることができる。
【0036】
他の情報が、同様に表示されることができる。例えば、FFR値が特定の閾値(例えば0.8)を下回ることを示す(例えば視覚的又は聴覚的な)警告標示は、狭窄が重度であり、処置が始められなければならないことを表す。付加的に又は代替として、FFR値が閾値を下回る又はその近くにある場合、ユーザは、潜在的に改善されたより多くの狭窄データを得るために、より従来の非侵襲の又は侵襲性のプロシージャを実施するように促されることができる。
【0037】
FFRデータをシミュレートし表示するために写真データをキャプチャするステップは、ポータブルモバイルデバイス105、205に、例えばアプリ又はコンピュータプログラムの形でロードされるソフトウェアコードに埋め込まれることができ、又は例えば移動電話のようなポータブルモバイルデバイスがワイヤレスに又は有線で接続されるリモートワークステーションにロードされることができる。
【0038】
本発明は、図面及び上述の記述に詳しく図示され説明されているが、このような図示及び説明は、制限的ではなく、例示的又は説明的なものであると考えられるべきである。本発明は、開示される実施形態に制限されない。
【0039】
例えば、本発明は、提示される実施形態にまったく制限されない。例えば、本発明は、MR、PET、SPECT、超音波のような任意の他の適切な技法、又は本発明に関して使用するのに適した画像を提供することができる任意の他のイメージングモダリティ、によって得られる狭窄した血管の任意の他の初期画像に適している。
【0040】
更に、FFRシミュレーションに加えて、他の血行動態尺度(例えばCFR、HSR)又はフロー速度又は心筋抵抗のようなパラメータが、ポータブルモバイルデバイス上で、流体力学シミュレーションから抽出されることができる。シミュレーションの正確さを改善するために、ポータブルモバイルデバイスは、同じディスプレイ又は他のディスプレイから大動脈圧力又は遠位圧力のような付加の測定値をキャプチャすることができ、シミュレーションにこれらの測定を含めることができる。
【0041】
開示される実施形態に対する他の変更例は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求項に記載の本発明を実施する際に当業者によって理解され達成されることができる。請求項において、「含む、有する(comprising)」という語は、他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に列挙されるいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。コンピュータプログラムは、例えば他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光学記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶され/分散されることができるが、他の形態で、例えばインターネット又は他のワイヤード又はワイヤレス通信システムを通じて、分散されることができる。請求項における任意の参照符号は、請求項の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。