特許第6873996号(P6873996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873996ポリエーテルポリオールを含むアクリルポリウレタンコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873996
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリオールを含むアクリルポリウレタンコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20210510BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20210510BHJP
   C08G 18/78 20060101ALI20210510BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20210510BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20210510BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20210510BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C09D175/04
   C09D175/08
   C08G18/78 031
   C08G18/79 020
   C08G18/62 016
   C08G18/48
   C08G18/40 063
   C08G18/48 054
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-527100(P2018-527100)
(86)(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公表番号】特表2019-504136(P2019-504136A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】US2016064111
(87)【国際公開番号】WO2017105835
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年11月20日
(31)【優先権主張番号】62/268,602
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エス・レトコ
(72)【発明者】
【氏名】アンバー・マリー・スティブンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エヌ・アルギュロポウロス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・クリール
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−169434(JP,A)
【文献】 特開2009−096942(JP,A)
【文献】 特開昭54−153900(JP,A)
【文献】 特開2009−286883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリウレタンコーティング組成物であって、
少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートトリマーまたはビウレットを含むイソシアネート成分と、
イソシアネート反応混合物
を含み、
前記イソシアネート反応混合物が、前記アクリルポリウレタンコーティング組成物の総重量に基づいて、25重量%〜80重量%のアクリルポリオール、及び1重量%〜30重量%のポリエーテルポリオールを含み、前記アクリルポリオールが、前記アクリルポリオールの総重量に基づいて、少なくとも50重量%の固形分を有し、前記ポリエーテルポリオールが、250mgKOH/g〜450mgKOH/gのヒドロキシル価、25℃で300〜360mPa*s未満の粘度、及び300超かつ700未満の数平均分子量を有するトリオールである、前記アクリルポリウレタンコーティング組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート反応混合物が、前記アクリルポリウレタンコーティング組成物の総重量に基づいて、40重量%〜60重量%の前記アクリルポリオール、及び3重量%〜10重量%の前記ポリエーテルポリオールを含む、請求項1に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
【請求項3】
前記アクリルポリオールが、固体ベースで、350〜550g/モル当量のヒドロキシル当量を有する、請求項1または2に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート反応混合物の総重量に基づいて、22重量%未満の量で有機溶媒をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルポリオールが、ポリオキシブチレンポリオールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテルポリオールが、ポリオキシプロピレンポリオールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
【請求項7】
前記イソシアネート反応混合物が、カルボン酸源をさらに含み、2.5mgKOH/g〜8.0mgKOH/gの酸価値を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
【請求項8】
前記アクリルポリオールの前記ポリエーテルポリオールに対する比率が、5〜15である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
【請求項9】
前記イソシアネート成分が、前記アクリルポリウレタンコーティング組成物に基づいて15重量%〜40重量%の量で存在し、前記イソシアネート反応混合物が、前記アクリルポリウレタンコーティング組成物に基づいて25重量%〜60重量%の量で存在し、
前記アクリルポリウレタンコーティング組成物が、50%超の固形分を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物からアクリルポリウレタンコーティング形成する方法であって、
前記イソシアネート成分及び前記イソシアネート反応混合物を混合するステップを含む前記方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月17日に出願された米国仮特許出願第62/268,602号の優先権を主張し、その全体が参照により組み込まれている。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、反応性希釈剤を含むアクリルポリウレタンコーティング及びそのようなコーティングの作製方法に関し、具体的には、高い固形分を有し、ポリエーテルポリオールを反応性希釈剤として含む二成分ポリウレタンコーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
二成分ポリウレタンコーティングは、様々な用途に使用される。これらの用途のうちのいつかでは、コーティングは、スプレーガンによって基材に塗布される。スプレー塗布は、典型的には、コーティング組成物の粘度をスプレーガンに対応する範囲に低減するための溶媒添加剤の使用を必要とする。残念ながら、高レベルの溶媒添加剤は、結果として得られるポリウレタンコーティング中の揮発性有機化合物(VOC)レベルを増加させる場合があり、コーティングの毒性に関する懸念が増加し得る。特に、VOCは、通常の室温(または低い沸点)で高い蒸気圧を有する有機化学物質であり、多数の分子がコーティングから蒸発または昇華され、周囲の空気に入る場合がある。VOCは、典型的には、法によって規制されている。
【0004】
したがって、このような溶媒添加剤の使用を低減し、所望のコーティング特性(例えば、硬度及びUV耐候性)を提供しながら、結果として得られるコーティング中のVOCレベルの増加を提供するポリウレタンコーティング組成物が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態によると、ポリウレタンコーティング組成物は、少なくとも1つのポリイソシアネートトリマーまたはビウレットを含むイソシアネート成分と、イソシアネート反応混合物とを含む、アクリルポリウレタンコーティング組成物を含み、該イソシアネート反応混合物は、アクリルポリウレタンコーティング組成物の総重量に基づいて、25重量%〜80重量%のアクリルポリオール、及び1重量%〜30重量%のポリエーテルポリオールを含み、該アクリルポリオールは、アクリルポリオールの総重量に基づいて、少なくとも50重量%の固形分を有し、該ポリエーテルポリオールは、25℃で500mPa*s未満の粘度、及び300超かつ700未満の数平均分子量を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と組み合わせて読み取った場合に最適に理解され得る。
【0007】
図1】アクリルポリオールと混合した異なる濃度のポリオール希釈剤、及びアクリルポリオールと混合したカプロラクトン希釈剤を含む比較例の濃度(x軸)の関数として粘度(y軸)を図示する。
図2】別のアクリルポリオールと混合した異なる濃度のポリオール希釈剤、及びアクリルポリオールと混合したカプロラクトン希釈剤を含む比較例の濃度(x軸)の関数として粘度(y軸)を図示する。
図3】ポリオール希釈剤を使用して調製された4つのアクリルポリウレタンコーティング組成物の例、及び添加された希釈剤を一切使用せずに調製された1つの比較例について、時間(x軸)の関数として光沢保持率(y軸)を図示する。
図4】ポリオール希釈剤を使用して調製された4つのアクリルポリウレタンコーティング組成物の例、及び添加された希釈剤を一切使用せずに調製された1つの比較例について、時間(x軸)の関数として光沢保持率(y軸)を図示する。
図5】様々な濃度の触媒を有する一連のアクリルポリウレタンコーティング組成物の例(x軸)について、乾燥時間(y軸)を図示する。
図6】様々な濃度の触媒を有するアクリルポリウレタンコーティング組成物の例について、時間(x軸)の関数として粘度(y軸)を図示する。
図7】10重量%のポリオール希釈剤の含量を有するアクリルポリウレタンコーティング組成物、及びポリオール希釈剤を含まない比較例について、時間(x軸)の関数として粘度(y軸)を図示する。
図8】20重量%のポリオール希釈剤の含量を有するアクリルポリウレタンコーティング組成物、及びポリオール希釈剤を含まない比較例について、時間(x軸)の関数として粘度(y軸)を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態は、イソシアネートと、1つ以上の高固形分のアクリルポリオール及び1つ以上の低分子量/低粘度ポリエーテルポリオールを反応性希釈剤(ポリオール希釈剤とも呼ばれる)として含むイソシアネート反応混合物との反応から生成されるアクリルポリウレタンコーティングに関する。反応性希釈剤とは、ポリエーテルポリオールがアクリルポリウレタンコーティングのマトリックス中に組み込まれてもよいことを意味する。そのため、反応性希釈剤は、非反応性の希釈剤で典型的であり得るように、コーティングからの蒸発の影響を受けやすくなることを本質的に避ける場合がある。反応性希釈剤を使用して作製された結果的なアクリルポリウレタンコーティングは、コーティング中の揮発性有機化合物(VOC)含量の増加を提供する典型的な溶媒添加物の使用を低減し、かつ所望のコーティング特性(例えば、硬度及びUV耐候性)を依然として得ながら、アクリルポリウレタンコーティング(及び結果的なコーティング)の形成のための組成物中の高固形分(約50重量%超)を依然として提供し得る。
【0009】
様々な実施形態では、高固体の二成分アクリルポリウレタンコーティングを生成するための配合物が提供される。一般的に、配合物は、イソシアネート成分と、イソシアネート成分と反応するポリオールを含むイソシアネート反応混合物とを含む。イソシアネート成分は、様々な実施形態では、脂肪族ポリイソシアネートトリマーまたはビウレットであり得る。様々な実施形態によると、イソシアネート反応混合物は、少なくともアクリルポリオール及びポリエーテルポリオールを含む。ポリエーテルポリオールは、25℃で500mPa*s未満の粘度を有し、300g/モル超、かつ700g/モル未満の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、得られたポリウレタンコーティングは、50%超の固形分を有する。
【0010】
様々な実施形態では、ポリウレタンコーティング組成物は、ポリウレタンコーティング組成物の重量に基づいて、約25重量%〜約85重量%、約30重量%〜約80重量%、またはさらには約40重量%〜約78重量%のイソシアネート反応混合物を含み得る。さらなる実施形態では、ポリウレタンコーティング組成物は、ポリウレタンコーティング組成物の重量に基づいて、約25重量%〜約70重量%のイソシアネート反応混合物を含む。
【0011】
さらなる実施形態では、イソシアネート反応混合物は、ポリウレタンコーティング組成物の重量に基づいて、約1重量%〜約20重量%のポリエーテルポリオール、または約2重量%〜約15重量%のポリエーテルポリオール、または約3重量%〜約10重量%のポリエーテルポリオールを含み得る。イソシアネート反応混合物は、イソシアネート反応混合物の重量に基づいて、約5重量%〜約20重量%のポリエーテルポリオール、または約6重量%〜約15重量%のポリエーテルポリオール、またはさらには約6.5重量%〜約14重量%のポリエーテルポリオールを含み得る。
【0012】
ポリエーテルポリオールについて、様々な分子量が企図される。当業者によって理解されるように、ポリエーテルポリオールは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、及び/またはブチレンオキシドなどの1つ以上のアルキレンオキシドから得ることができる。例えば、ポリエーテルポリオールは、重合触媒の存在下で、1つ以上のアルキレンオキシドを、2〜10個の活性水素を有する1つ以上の開始剤と反応させることによって調製され得る。ポリエーテルポリオールは、約400g/モル〜約700g/モルの数平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、分子量は、約400g/モル 超または約450g/モル超である。他の実施形態では、分子量は、約700g/モル未満、約650g/モル未満、または約600g/モル未満であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、約425g/モル〜約650g/モル、または約450g/モル〜約600g/モルの分子量を有する。好適なポリエーテルポリオールの例としては、VORAPEL(商標)の商標の下で市販されているもの、例えば、VORAPEL(商標)T5001(275mgKOH/gのヒドロキシル価、及び25℃で約300〜約360mPa*sの粘度を有する)、ならびにVORANOL(商標)の商標の下で市販されているもの、例えば、VORANOL(商標)CP450(370〜390mgKOH/gのヒドロキシル価、及び25℃で約300〜約360mPa*sの粘度、及び3の平均官能価を有する)が挙げられるがこれらに限定されず、これらはどちらもDow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0013】
例えば、ポリエーテルポリオールは、重合触媒の存在下で、エポキシドによる三官能性開始剤のアルコキシル化によって生成されたポリエーテルトリオールであり得る。例えば、1つ以上のアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、及び/またはブチレンオキシド)と開始剤としてのグリセリンとの反応混合物は、グリセリン開始ポリエーテルトリオールを形成し得る。開始剤の例としては、数ある中で、グリセリン、トリメチルオートロプロパン、トリエタノールアミン、1,2,6−ヘキサントリオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルピペラジンが挙げられる。重合触媒の例としては、二重金属シアン化物錯体(DMC)触媒及び水酸化アルカリ触媒(例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム)が挙げられる。
【0014】
さらなる例示的な実施形態では、イソシアネート反応混合物は、1重量%〜約20重量%のポリオキシブチレンポリオール(例えば、約2重量%〜約15重量%、約3重量%〜約10重量%など)を含む。ポリオキシブチレンポリオールは、アルキレンオキシドの総重量に基づいて、100重量%のブチレンオキシドから得ることができる。他の例示的な実施形態では、イソシアネート反応混合物は、1重量%〜約20重量%のポリオキシプロピレンポリオール(例えば、約2重量%〜約15重量%、約3重量%〜約10重量%など)を含む。ポリオキシプロピレンポリオールは、アルキレンオキシドの総重量に基づいて、100重量%のプロピレンオキシドから得ることができる。
【0015】
本明細書で使用される場合、ヒドロキシル価は、1グラムのポリオールまたは他のヒドロキシル化合物中のヒドロキシル含有量に相当する水酸化カリウムのミリグラムである。いくつかの実施形態では、得られたポリエーテルポリオールは、約225mgKOH/g〜約475mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。なお他の実施形態では、得られたポリエーテルポリオールは、約275mgKOH/g〜約400mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。例示的な実施形態では、ポリエーテルポリオールはトリールであり、250mgKOH/g〜450mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。ポリエーテルポリオールは、約3以上(例えば、3〜6、3〜5、3〜4、または3)の公称ヒドロキシル官能価を有し得る。ポリエーテルポリオールは、約2.5〜約4.5(例えば、2.5〜3.5)の平均全体ヒドロキシル官能価を有し得る。本明細書で使用される場合、ヒドロキシル官能価(公称及び平均全体)は、分子上のイソシアン反応性部位の数であり、ポリオールの総モル数で除したOHの総モル数として計算され得る。
【0016】
得られたポリエーテルポリオールの粘度は、ASTM D4878によって測定した場合、概して、25℃で500mPa*s未満である。いくつかの実施形態では、粘度は25℃で、100mPa*s〜500mPa*s、200mPa*s〜400mPa*s、または300mPa*s〜360mPa*sである。
【0017】
様々な実施形態では、イソシアネート反応混合物は、少なくとも1つのアクリルポリオールをさらに含む。アクリルポリオールは、アクリルポリオールの総重量に基づいて少なくとも50重量%、例えば、60重量%〜80重量%、69重量%〜79重量%などの固形分を有する。アクリルポリオールは、約400〜約1000g/モル当量のヒドロキシル当量を有し得る。例えば、アクリルポリオールは、固体ベースで、350〜550g/モル当量のヒドロキシル当量を有し得る。アクリルポリオールは、固体ベースで、5,000g/モル〜15,000g/モル、例えば、6,000g/モル〜11,000g/モル、6,900g/モル〜10,900g/モルなどの数平均分子量を有し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、アクリルポリオールは、ASTM D4878によって測定した場合、25℃で約4,000mPa*sを超える粘度(供給された)、4,500mPa*sを超える粘度、またはさらには5,000mPa*sを超える粘度を有する。様々な実施形態では、アクリルポリオールの粘度は、20,000mPa*s未満である。したがって、アクリルポリオールは、4,000mPa*s〜20,000mPa*s、または4,500mPa*s〜15,000mPa*sの粘度を有し得る。アクリルポリオールは、固体ベースで2.5mgKOH/g〜3.5mgKOH/gの酸価を有し得る。
【0019】
様々な実施形態では、イソシアネート反応混合物は、ポリウレタンコーティング組成物の重量に基づいて、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、または少なくとも約40重量%のアクリルポリオールを含み得る。イソシアネート反応混合物は、ポリウレタンコーティング組成物の重量に基づいて、84重量%未満、80重量%未満、70重量%未満のアクリルポリオールを含み得る。さらに、イソシアネート反応混合物は、ポリウレタンコーティング組成物の重量に基づいて、約20重量%〜約80重量%のアクリルポリオール、または約30重量%〜約70重量%のアクリルポリオール、または約40重量%〜約60重量%のアクリルポリオールを含み得る。ポリエーテルポリオールのポリエーテルポリオールに対する重量比は、5〜15、例えば、6〜14、7〜14などであってもよい。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応混合物は、カルボン酸源を含み、2.5mgKOH/g〜8mgKOH/gの酸価をもたらす。カルボン酸源は、添加剤として、またはカルボン酸官能基を有するアクリルポリオールの手段のいずれかによってイソシアネート反応混合物に含まれてもよい。
【0020】
様々な組成物がイソシアネート成分に好適であると考えられる。イソシアネート成分は、1つ以上のポリイソシアネート(ポリイソシアヌレートと呼ばれる交換可能)を含み、1つ以上のポリイソシアネート由来の1つ以上のイソシアン末端プリポリマーを任意に含み得る。様々な実施形態では、イソシアネート成分は、少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートトリマーまたはビウレットを含む。イソシアネート成分の量は、用途によって異なる場合がある。いくつかの実施形態では、ポリウレタンコーティング組成物は、ポリウレタンコーティング組成物の重量に基づいて、約15重量%〜約40重量%、約20重量%〜約35重量%、またはさらには約22重量%〜約30重量%のイソシアネートを含み得る。様々な実施形態では、イソシアネート成分は、約100〜約250の範囲の総当量を有する。
【0021】
例示的なポリイソシアネートには、芳香族、脂環式、及び脂肪族ポリイソシアネートが含まれる。様々な実施形態では、イソシアネート成分は、約2超、及び/または約1.5〜約5.5(例えば、2.5〜5.5、2.8〜5.5、2.9〜4.5、2.9〜4.0、2.9〜3.7など)の計算された合計イソシアネート官能価を有する。当業者によって理解されるように、計算されたイソシアネート官能価とは、イソシアネート官能価が、イソシアネート成分中のイソシアネート含有成分の各々のイソシアネート官能価に基づいて、かつイソシアネート成分中のかかる成分の重量に基づいて計算されていることを意味する。
【0022】
例示的な実施形態では、イソシアネート成分は、本明細書においてポリイソシアネートトリマー及び/またはポリイソシアヌレートトリマーとも称され得る、予備成形されたイソシアヌレートトリイソシアネートを含む。例えば、イソシアネート成分は、1つ以上の予備成形された脂肪族イソシアネート系ポリイソシアネートトリマー、1つ以上の予備成形された脂環式イソシアネート系ポリイソシアネートトリマー、またはそれらの組み合わせを含み得る。予備成形とは、イソシアネート成分の調製の前、及び/またはポリイソシアネートトリマーをその内部に組み込むコーティングを作製する前に、ポリイソシアネートトリマーが調製されることを意味する。したがって、イソシアヌレートトリイソシアネートは、コーティングの形成中にインサイチュ三量化を介して調製されない。
【0023】
特に、ポリイソシアネートトリマーを調製する1つの方法は、ポリウレタンポリマーの形成プロセス中に、好適な三量化触媒の存在下で、イソシアネート基のインサイチュ三量化を達成することである。例えば、インサイチュ三量化は、概略図(a)に関連していかに示されるように行われ、ウレタン触媒及び三量化(すなわち、イソシアネート官能基由来のイソシアヌレート部分の形成を促進する)触媒の両方の存在下で、ジイソシアネートをジオール(例としてのみ)と反応させる。結果として得られたポリマーは、以下の概略図(a)に示すように、ポリウレタンポリマー及びポリイソシアヌレートポリマーの両方を含む。
【0024】
【化1】
【0025】
対照的に、上記の概略図(b)を参照すると、実施形態では、予備成形されたポリイソシアネートトリマーは、別個の予備成形されたポリイソシアヌレートポリイソシアネート成分として提供され、すなわち、これは、ポリウレタンポリマーの形成プロセス中にインサイチュで主に形成されない。予備成形されたポリイソシアネートトリマーは、モノマーの形態でコーティングを形成するための混合物に提供され、コーティングの形成中にポリイソシアネートモノマーから由来する形態では提供されない。例示的な実施形態では、イソシアネート成分は、イソシアネート成分の総量に基づいて、80重量%〜100重量%(例えば、90重量%〜100重量%、99重量%〜100重量%など)のポリイソシアネートトリマーを含む。
【0026】
例えば、いくつかの実施形態では、イソシアネート成分は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(その修飾、誘導体、及びブレンド)、メチレンジクロロヘキシルジイソシアネート(その修飾、誘導体、及びブレンド)、ならびに/またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)(その修飾、誘導体、及びブレンド)から得られたポリイソシアネートトリマーを含み得る。例えば、ビウレット、尿素、カルボジイミド、アロフォネート(allophonate)、及び/またはイソシアヌレート基を含有する、前述のポリイソシアネート基のいずれかの修飾及び誘導体を使用してもよい。使用され得る(が、実施形態の範囲に関して限定的ではない)多くの他の脂肪族及び脂環式ポリイソシアネートは、米国特許第4,937,366号に記載される。これらのポリイソシアネートトリマーのいずれにおいても、脂肪族及び脂環式イソシアネートの両方を使用して、予備成形されたハイブリッドイソシアヌレートトリイソシアネートを形成することができ、「脂肪族イソシアネート系イソシアヌレートトリイソシアネート」という用語が使用される場合には、そのようなハイブリッドも含まれることを理解されたい。例えば、イソシアネート成分は、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/またはイソホロンジイソシアネート由来の予備成形されたポリイソシアネートトリマーを含み得る。
【0027】
脂肪族ポリイソシアネートビウレットも、イソシアネート成分として使用され得る。例えば、これらのビウレットは、当業者に既知であるように、ヘキサメチレンジイソシアネートを水で処理することによって作製され得る。特に、ビウレット含有オリゴマーは、水、ある特定のアミン化合物、N,N−ジアルキル尿素化合物などの一置換尿素、ギ酸、及び第三級アルコールとの反応を介して、ポリイソシアネート出発物質中に導入される。水は、その低コストのため、かつそれが大量の不要な副産物を形成せずにきれいに反応する傾向にあるため、好ましいビウレット試薬である。水は、2つのポリイソシアネート基と反応して尿素構造を生成し、第3のポリイソシアネート分子とのこの尿素構造のさらなる反応は、ビウレット基を生成する。
【0028】
イソシアネート成分は、その他のポリイソシアネート、またはそのような他のポリイソシアネートに由来するイソシアネート末端プレポリマーを含み得る。そのようなポリイソシアネートの例としては、メタンジフェニルジイソシアネート(MDI)、その修飾、及びブレンド(例えば、ポリマーまたはモノマーMDIブレンド)の4,4´、2,4´、及び2,2´異性体、ならびにトルエン−ジイソシアネート(TDI)(例えば、その修飾及びブレンド)の2,4及び2,6異性体が挙げられる。例えば、ビウレット、尿素、カルボジイミド、アロフォネート(allophonate)、及び/またはイソシアヌレート基を含有する、前述のポリイソシアネート基のいずれかの修飾及び誘導体を使用してもよい。
【0029】
本配合物は、添加剤または他の修飾剤をさらに含んでもよい。例えば、有機溶媒及び触媒が用いられ得る。触媒としては、アミン触媒、スズ触媒などが例として挙げられるが、これらに限定されない。触媒の量は、当業者に理解されるように、イソシアネートの性質によって、かつ/またはその触媒が担体中に提供されるかどうかによって、ポリウレタンコーティング組成物の約0.005重量%〜5重量%であり得る。いくつかの実施形態では、ポリウレタンコーティング組成物は、ポリウレタンコーティング組成物の重量に基づいて約1重量%〜約2重量%の触媒を含む。スズ触媒は、カルボン酸の第一スズ塩などのスズ塩を含み得る。1つの特定の実施形態では、触媒は、ジブチルスズジラウレートである。アミン触媒としては、第三級アミン触媒が例として挙げられるが、これに限定されない。第三級アミン触媒には、少なくとも1つの第三級窒素原子を含有し、イソシアネート成分とイソシアネート反応混合物との間のヒドロキシル/イソシアネート反応を触媒することができる有機化合物が含まれる。
【0030】
ポリウレタンコーティング組成物の粘度をさらに調節するために、有機溶媒をポリウレタンコーティング組成物に添加してもよい。例示的な実施形態では、そのような有機溶媒の使用は、ポリオール希釈剤の使用に基づいて最小化され得る。有機溶媒としては、エステルと反応しない有機溶媒などが含まれ得る。いくつかのある特定の実施形態では、有機溶媒には、メチルイソブチルケトン、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸プロピル、及びそれらの組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態は、好適な有機溶媒としてプロトン性または環状エーテルをはっきりと除外する。様々な実施形態では、25℃で、約1mPa*s〜約70mPa*s、約20mPa*s〜約65mPa*s、またはさらには約50mPa*s〜約60mPa*sの粘度を有するポリウレタンコーティング組成物を達成するのに十分な有機溶媒の量が用いられる。有機溶媒は、ある特定の実施形態のポリウレタンコーティング組成物の重量に基づいて、約1重量%〜約40重量%、約5重量%〜約30重量%、または約5重量%〜約20重量%の量で含まれ得る。
【0031】
配合物はまた、ポリウレタンコーティング中の使用について当業者に既知である添加剤などの他の添加剤を含んでもよい。添加剤の例としては、充填剤、鎖延長剤、除湿剤、離型剤、消泡剤、接着促進剤、硬化剤、pH中和剤、UV安定剤、抗酸化剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤、火炎抑制剤、煙抑制剤、抗菌剤、脱泡剤、及び/または色素/染料が挙げられる。例えば、二酸化チタン及び/またはカーボンブラックなどの色素は、ポリウレタンコーティング組成物に色特性を付与するために使用され得る。色素は固体の形態であるか、または固体は、ポリウレタンコーティング組成物に追加される前に樹脂担体内に予め分散されてもよい。
【0032】
様々な実施形態では、ポリウレタンコーティング組成物は、室温(例えば、または室温よりわずかに高い温度、例えば、約20℃〜約27℃)で、イソシアネート反応混合物、有機溶媒、触媒、及びイソシアネート成分を含む反応成分を混合することによって調製される。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応混合物及び有機溶媒は、イソシアネート成分の添加前または添加時に混合され得る。触媒などの他の添加剤は、イソシアネート成分の添加前に、イソシアネート反応混合物に添加され得る。混合は、スプレー装置、混合ヘッド、または容器内で行われ得る。混合後、混合物を基材上に噴霧するか、または別の様式で堆積してもよい。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、基材に塗布される直前に混合される。基材としては、アルミニウムまたは鋼鉄などの金属基材、ポリマー基材、木材、または別の好適な種類の基材を例としての挙げることができるが、これらに限定されない。
【0033】
反応後、混合物は、基材に付着してポリウレタンポリマーを生成し、次いで、部分的または完全に硬化し得る。ポリウレタンコーティング組成物の硬化を促進するための好適な条件は、約15℃〜約150℃の温度を含む。いくつかの実施形態では、アクリルポリウレタンコーティング組成物は、室温に近い温度、例えば、約15℃〜約30℃で硬化可能であり得る。いくつかの実施形態では、硬化は、約20℃〜約75℃の温度で実施される。他の実施形態では、硬化は、約20℃〜約60℃の温度で実施される。様々な実施形態では、硬度のために選択される温度は、その温度でポリウレタンコーティング組成物がゲル化及び/または硬化するために必要とする時間に少なくともある程度基づいて選択され得る。硬化時間はまた、例えば、特定の成分(例えば、触媒及びその数量)ならびにコーティングの厚さを含む他の要因に依存することになる。実施形態によっては、コーティングは、約0.2ミリ〜約10ミリ、または約0.75ミリ〜約7.5ミリの厚さを有してもよい。1つの特定の実施形態では、コーティングは、約0.2ミリ〜約5ミリの厚さを有する。
【0034】
ポリウレタンコーティングに関するさらなる洞察は、以下の特性によって提供され得る。本実施形態のポリウレタンコーティング組成物は、50%超の固形分を含む。いくつかの実施形態は、ASTM D4752に従って測定した場合、50超、さらには200超のメチルエチルケトン(MEK)ダブルラブを呈する。光学的には、以下の実施例にさらに記載されるように、ポリウレタンコーティング組成物は、ASTM D523に従って測定した場合、38℃で100%の湿度に96時間曝露した後、周囲条件で1時間及び24時間の両方で回復した後、20℃で測定された約90%超の光沢保持率を有する。ポリウレタンコーティング組成物は、ASTM 4587に従って測定した場合、5,000時間のQUV−Aサイクリング期間にわたって約80%超の光沢保持率をさらに呈し得る。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、様々な実施形態を示すために提供されるものであり、特許請求の範囲の限定することを意図するものではない。特に指示がない限り、全ての割合及びパーセントは重量に基づく。様々な実施例、比較例、ならびに実施例及び比較例に使用される材料に関して、大体の特性、特質、パラメータなどが以下に提供される。さらに、実施例に使用される原料の説明は以下の通りである。
【0036】
PARALOID(商標)AU−830は、メチルn−アミルケトン(MAK)溶媒中に分散した77重量%の固体、固体ベースで500g/モル当量のヒドロキシル当量、固体ベースで3mgKOH/gの酸価、固体ベースで7,000g/モルの数平均分子量、及び25℃で15,000mPa*sの供給された状態の粘度を有するアクリルポリオールであり、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0037】
PARALOID(商標)AU−1453は、酢酸n−ブチル溶媒中に分散した70重量%の固体、固体ベースで460g/モル当量のヒドロキシル当量、固体ベースで2mgKOH/g未満の酸価、固体ベースで10,000g/モルの数平均分子量、及び25℃で4500mPa*sの供給された状態の粘度を有するアクリルポリオールであり、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0038】
VORAPEL(商標)T5001は、3の公称ヒドロキシル官能価、275mgKOH/gのヒドロキシル価、600g/モルの数平均分子量、及び25℃で322mPa*sの粘度を有するポリエーテルポリオールであり、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0039】
VORANOL(商標)CP450は、3の公称ヒドロキシル官能価、370〜396mgKOH/gのヒドロキシル価、450g/モルの数平均分子量、及び25℃で300〜360mPa*sの粘度を有するポリエーテルポリオールであり、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0040】
VORANOL(商標)2070は、3の公称ヒドロキシル官能価、238mgKOH/gのヒドロキシル価、700g/モルの数平均分子量、及び25℃で238mPa*sの粘度を有するポリエーテルポリオールであり、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0041】
CAPA(商標)3050は、540g/モルの分子量を有するポリエステルポリオール(ポリカプロラクトン)であり、Perstorp Polyols,Inc.から入手可能である。
【0042】
Desmodur(登録商標)N3390は、酢酸ブチル(90%固体)中に供給されるヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)由来の予備成形されたポリイソシアネートトリマーであり、Bayer Corporationから入手可能である。
【0043】
DBTDLは、酢酸ブチル中1重量%の固体として入手可能なジブチルスズジラウレートである。
【0044】
以下の表1は、ポリエステルポリオールに対してポリエーテルポリオールの使用による全体粘度への効果を示すために、反応性希釈剤としてポリエーテルポリオールを含む本配合物の4つの実施形態の例である実施例1〜4、ならびにポリエーテルポリオールの代わりにポリエステルポリオールを含む比較例1及び2を列挙する。
【0045】
表1の組成物は、アクリルポリオール(PARALOID(商標)AU−830またはPARALOID(商標)AU−1453)を、ポリオール希釈剤(VORAPEL(商標)T5001、VORANOL(商標)CP450、またはCAPA(商標)3050)と合わせ、1700rpmで1分間混合することによって調製した。
【0046】
【表1】
【0047】
図1及び2は、反応性希釈剤ポリオールのそれぞれの濃度(x軸)の関数としての粘度(y軸)を示す。特に、図1は、PARALOID(商標)AU−830に添加された反応性希釈剤ポリオールの粘度対濃度のプロットであり、図2は、PARALOID(商標)AU−1453に添加された反応性希釈剤ポリオールの粘度対濃度のプロットである。図1及び2に示すように、実施例1〜4は、比較例1または2と比較してコーティング組成物の粘度が低下する。したがって、コーティング組成物へのポリエーテルポリオールの添加は、カプロラクトンポリエステルポリオール(CAPA(商標)3050)の添加と比較して、コーティング組成物の粘度を大きく低下させる。
【0048】
次に、表2及び3の組成物は、アクリルポリオール(PARALOID(商標)AU−830またはPARALOID(商標)AU−1453)を、ポリオール希釈剤(VORAPEL(商標)T5001、VORANOL(商標)CP450、またはCAPA(商標)3050)と合わせ、1700rpmで1分間混合することによって調製した。次いで、溶媒ブレンド(メチルイソブチルケトン(MIBK)、プロピオン酸ブチル、及びプロピオン酸プロピル[1:1:1]−重量比)を溶液に添加し、次いで、これを再度1500rpmで1分間撹拌した。次に、酢酸ブチル中、ジブチルスズジラウレートの1重量%溶液をポリオール溶液に添加し、1500rpmで1分間混合した。次いで、予備成形されたポリイソシアネートトリマー(Desmodur(登録商標)N3390)を溶液に添加し、1500rpmで1分間混合した。ドローダウンスクエア(draw down square)を使用して、得られた組成物をAL−412(アルミニウム)及びQD−412(鋼鉄)Qパネル上にすぐにコーティングして、3.0〜4.5ミリの乾燥した厚さを得た。フィルムをヒュームフード中で1日硬化させ、その後、測定に進む前に、周囲条件下でさらに6日間、カウンタートップ上で硬化させた。
【0049】
実施例5〜8、及び比較例3〜7は、以下の配合に従って調製した。特に、実施例5〜8は、数平均分子量が300超かつ700未満である実施形態によるポリエーテルポリオールを含む。比較例3は、任意の希釈剤ポリオールを除外する。比較例4及び5は、ポリエーテルポリオールの代わりにポリエステルポリオールを含む。比較例6及び7は、700の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールを含む。
【0050】
【表2】
【0051】
実施例9〜12及び比較例8〜12は、以下の配合に従って調製した。特に、実施例9〜12は、数平均分子量が300超かつ700未満である実施形態によるポリエーテルポリオールを含む。比較例8は、任意の希釈剤ポリオールを除外する。比較例9及び10は、ポリエーテルポリオールの代わりにポリエステルポリオールを含む。比較例6及び7は、700の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールを含む。
【0052】
【表3】
【0053】
得られたコーティングの特性の比較を、以下の表4及び5に示す。
【0054】
表4及び5の特性を参照すると、クロスハッチ接着は、ASTM試験法D3359に従って測定された。MEKダブルラブは、ASTM試験法D5402に従って測定した。ケーニッヒ硬度は、ASTM試験法D4366に従って測定された。鉛筆硬度(破れ(gouge)及びひっかきの両方)は、ASTM試験法D3363に従って測定された。光沢は、ASTM試験法D523に従って、20°、60°、及び85°で測定された。直接衝撃及び間接衝撃は、ASTM試験法D2794に従って測定された。
【0055】
【表4】
【0056】
表4を参照すると、アクリルポリオールPARALOID(商標)AU−1453を用いる実施形態に従うポリエーテルポリオールの使用が、反応性希釈剤を含まない比較例3より改善していないものの、それと類似したコーティング特性を提供することが示される。さらに、実施例5〜8におけるポリエーテルポリオールの使用は、より高い分子量のポリエーテルポリオールの使用と比較して、改善した硬度を提供する。
【0057】
【表5】
【0058】
上記と同様に、表5も、高粘度アクリルポリオールPARALOID(商標)AU−830を用いる実施形態に従うポリエーテルポリオールの使用が、反応性希釈剤を含まない比較例8より改善していないものの、それと類似したコーティング特性を提供することを示す。さらに、実施例9〜12におけるポリエーテルポリオールの使用は、より高い分子量のポリエーテルポリオールの使用と比較して、改善した硬度を提供する。
【0059】
したがって、表4及び5の結果は、ポリエーテルポリオールが、硬度、耐溶剤性を含むコーティング特性に悪影響を及ぼすことなく(MEKダブルラブ及び光沢によって示されるように)、アクリルポリウレタンコーティング組成物中に組み込まれ得ることを示す。
【0060】
耐湿性に関して、湿度試験は、疎水性ポリオールであるVORAPEL(商標)T5001を使用して調製した試料について、ASTM試験法D4585に従って測定された。特に、光沢保持率は、38℃で100%の湿度に96時間曝露された後、20°で測定された。測定は、周囲条件で、1時間の回復後、及び24時間の回復後に行った。結果を、表6に報告する。
【0061】
【表6】
【0062】
表6に示すように、ポリエーテルポリオールを含む組成物は、1時間の回復後及び24時間の回復後の両方に、ポリオール希釈剤(比較例3及び8)またはポリエステルポリオール希釈剤(比較例4、5、9、及び10)を含まない組成物の光沢保持特性と類似した光沢保持特性を呈した。驚くべきことに、光沢保持試験は、水に対する引力を示さず、したがって当該技術分野で予測された耐湿性の減少を示さなかった。
【0063】
さらに、光沢保持率に関連して、(反応性希釈剤を含まない)実施例5〜12、ならびに比較例3及び8について、組成物のUV耐候性を試験した。特に、光沢保持率は、組成物のそれぞれについて、ASTM試験法D4587を使用して、8時間のUV曝露及び4時間の湿度曝露の5,000時間のQUV−Aサイクリング期間にわたって測定された。特に、試料を、QUVチャンバ内に設置し、そこで60℃で8時間、QUV−Aバルブによる発光に曝露する。8時間後、光を遮断し、試料を、50℃で4時間、湿度100%に曝露する。これらのサイクルを、500時間の試験にわたって繰り返す。各試料の光沢測定は、ASTM試験法D523を使用して、約250時間の間隔で取得される。光沢測定は、約250時間の間隔で取得される。結果を図3及び4に示す。
【0064】
図3及び4に示すように、ポリエーテル成分の含有による光沢の顕著な低下を予測したにもかかわらず、ポリエーテルポリオールを含む全ての組成物(実施例5〜12)について、光沢保持率は80%より高いままであった。
【0065】
理論によって拘束されることなく、より高い濃度のポリオール及びイソシアネートが反応速度を促進させるため、典型的には、より高い固体はポットライフに悪影響を及ぼすことになる。本明細書で使用される場合、「ポットライフ」とは、室温で初期混合粘度が2倍になるまでにかかる時間を指す。当業者であれば、少なくとも30分のポットライフが望ましいが、少なくとも1時間のポットライフ値がより好ましく、2時間超のポットライフ値が最も好ましいことを理解するであろう。
【0066】
したがって、以下の実施例について、25℃で50〜60mPa*sの範囲内の初期粘度を達成するように、固体含量を調節した。溶媒ブレンド(MIBK、プロピオン酸ブチル、及びプロピオン酸プロピル[1:1:1](重量比))の部分を、所望の粘度が達成されるまで、配合物中に滴定した。特に、比較例3の固体含量を53%に調節することで、25℃で約52mPa*sの粘度がもたらされたことに留意されたい。
【0067】
図5を参照すると、53%の固体を有し、かつ様々なレベルのDBTDL触媒を含有する様々なコーティング組成物を調製し、乾燥時間測定によって分析した。乾燥時間は、BYK乾燥時間レコーダー(BYK−Gardnerから入手可能)を使用して測定した。乾燥時間は、ASTM試験法D5895に従って測定され、指触乾燥時間及びタックフリー時間の両方を図5に示す。
【0068】
特に、図5において、様々な組成物のBYK−2(タックフリー時間)及びBYK−3(硬化乾燥時間)を示す。0.025%DBTDLを含む組成物のBYK−3乾燥時間は、その配合物が6時間の実験ウィンドウ内で硬化乾燥しなかったため、図5に示していない。0.025%の触媒レベルは、約3時間のBYK−2時間を示し、これは、1.4時間のターゲット値の約2倍であった。図5に示すように、DBTDLの濃度を0.05%に倍増することにより、1.5時間のBYK−2及び3.6時間のBYK−3がもたらされ、これらはそれぞれ、1.4時間及び3.0時間のターゲット値に近い。触媒レベルの増加は、ターゲット値よりはるかに速い乾燥時間を示し続けた。
【0069】
図6を参照すると、上記から0.05%DBTDL及び0.025%DBTDLを(53%の固体分で)含む両方の組成物を、ポットライフについてさらに分析した。特に、図6は、0.05%DBTDL及び0.025%DBTDLを53%の固形分で含む療法の組成物のポットライフ測定を示すグラフである。図6に示すように、触媒濃度を倍増すると、ポットライフが50%減少した。具体的には、0.05%DBTDLを含む組成物のポットライフは、1時間10分であった。
【0070】
表7を参照すると、表2の組成物について粘度上昇を測定した。粘度上昇を測定する前に、溶媒ブレンド(MIBK、プロピオン酸ブチル、及びプロピオン酸プロピル[1:1:1](重量比))を添加することによって、表2の組成物のそれぞれの固形分を調節して、50mPa*s〜60mPa*sの初期粘度を得た。粘度測定は、20rpmに設定したS61スピンドルセットを有するブルックフィールド粘度計を使用して行った。全ての成分を混合することで測定された初期粘度は、表7に報告される。
【0071】
【表7】
【0072】
表7から見られるように、ポリエーテルポリオール希釈剤の低粘度は、固形分を、対照(比較例3)の53%の固形分に対して最大5%増加させる。
【0073】
表7の組成物について、ポットライフ値を測定した。結果を図7及び8に示す。図7及び8に示されるように、固形分の増加によって、より高い濃度のポリオール希釈剤及びイソシアネート成分のポットライフが短くなる。理論によって拘束されることなく、類似した固形分で測定したポットライフ時間について観察された差異は、ポリオール希釈剤が、親配合物の反応性を調整する場合があることを示す。例えば、10重量%のアルキレンオキシドポリオール(図7に示される)の含量で、ポットライフ値は、48〜51分間の範囲で測定された。希釈剤ポリオールの含量を20重量%に増加させる(図8に示される)と、47〜48分間のポットライフが得られ、これは、より高い濃度のポリオール及びイソシアネート成分によってポットライフがわずかに短くなることを示す。
【0074】
表8を参照すると、0.05%DBTDLを触媒として、及びPARALOID(商標)AU−1453をアクリルポリオールとして含むポリオール希釈剤配合物の粘度調節された組成物のそれぞれについて、ASTM試験標準D5895に従って乾燥時間を測定した。BYK乾燥時間レコーダーを使用して測定した乾燥時間、ならびに組成物のそれぞれのポリオール希釈剤及び固形分は、表8に報告される。
【0075】
【表8】
【0076】
VORANOL(商標)CP450、VORAPEL(商標)T5001、及びCAPA(商標)3050をポリオール希釈剤として用いる組成物間のポットライフ値は類似することが見出されたが、乾燥時間は、よりポリオール性質に依存するようであった。表8に示すように、ポリエーテルポリオール(VORANOL(商標)CP450及びVORAPEL(商標)T5001)を含む組成物に関連する乾燥時間は、対照組成物及びポリエステルポリオール(CAPA(商標)3050)を含む組成物の乾燥時間に匹敵した。とりわけ、ポリエーテルポリオールを用いた組成物は、カプロラクトンポリエステルポリオール(CAPA(商標)3050)を用いた組成物より低い可能性があるBYK−1乾燥時間(指触乾燥)を示した。VORAPEL(商標)T5001を含む組成物が、最も遅いBYK−1時間を示すことが見出された。理論によって拘束されることなく、より遅いBYK−1時間は、ポリオール中のいくらか立体障害のある第二級アルコールのより遅い反応速度に起因し得る。驚くべきことに、20重量%のVORANOL(商標)CP450を含有する試料は、VORANOL(商標)CP450中の第二級ヒドロキシルの含有にもかかわらず、対照とほとんど同一の挙動を示した。
【0077】
さらに、ポリエーテルポリオールを含む組成物は、比較組成物と等しいか、またはそれより多い量の固体を含み、これは、希釈剤としてのポリエーテルポリオールの使用が、乾燥時間を変えることなく配合物の固形分を上昇させるために有効であることを示す。
【0078】
より高い固体の配合物について測定したより短いポットライフ値を、乾燥時間を著しく変えることなく延長させることが望ましい。より高い固形の配合物のポットライフ値の延長に向けた1つのルートは、酸源の添加を伴う。酸源は、例えば、カルボン酸を含んでもよい。酸源は、添加剤として配合物中に組み込まれるか、またはアクリルポリオールのコモノマーとして存在してもよい。
【0079】
より高い固体の配合物のポットライフ延長は、安息香酸(配合物の総質量に対して0.4重量%及び0.8重量%含量)を、表8に示される20%のVORANOL(商標)CP450配合物(57%固体)に添加することによって評価した。配合物について、ポットライフ値を測定した。粘度測定は、30rpmに設定したS61スピンドルセットを有するブルックフィールド粘度計を使用して行った。ポットライフ値は、安息香酸を含まない場合の48分間から、0.4重量%の安息香酸の存在下で112分間に、及び0.8重量%の安息香酸の存在下で155分間に延長することが見出された。
【0080】
表9を参照すると、安息香酸を含有する試料のそれぞれについて、乾燥時間を測定した。驚くべきことに、ポットライフ値が少なくとも2倍に延長されたにもかかわらず、乾燥時間値は大幅に延長されなかった。理論によって拘束されることなく、これらの結果は、ポリオール希釈剤を使用して固形分を上昇させることによって生じたより短いポットライフ値をオフセットするために、様々な酸が使用され得ることを示す。
【0081】
【表9】
【0082】
従来、製造業者は、他の望ましい特性を犠牲にすることなくポリウレタンコーティング組成物の粘度を調節するための反応性希釈剤としてポリエステル及びカプロラクトンポリオールの使用に限定されてきた。具体的には、ポリエーテルポリオールの使用が、耐湿性、UV耐候性、または耐溶剤性などの1つ以上の望ましい特性を犠牲にすることが必要であると従来は考えられてきた。しかしながら、本明細書に示すように、ポリエステルポリオールを含む組成物から形成されたアクリルポリウレタンコーティングは、高い固形分も維持しながら、望ましいコーティング特性、及び様々な用途に望ましい乾燥時間値を示す。
【0083】
さらに、「好ましくは」、「一般的に」、「通常」、及び「典型的に」などの用語は、本明細書において、特許請求される発明の範囲を限定するか、または特許請求される発明nの構造または機能についてある特定の特徴が必須、本質的、もしくはさらには重要であることを示唆するために用いられるものではないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、本開示の特定の実施形態で利用される可能性のある代替または追加の特徴を強調することを単に意図したものである。
【0084】
添付の特許請求の範囲に定義された本開示の範囲から逸脱することなく、変更及び修正が可能であることが明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様が、好ましいかまたは特に有利であるものとして本明細書において特定されているものの、本開示が必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。
なお、本発明には、以下の態様が含まれることを付記する。
〔態様1〕
アクリルポリウレタンコーティング組成物であって、
少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートトリマーまたはビウレットを含むイソシアネート成分と、
イソシアネート反応混合物であって、前記イソシアネート反応混合物が、前記アクリルポリウレタンコーティング組成物の総重量に基づいて、25重量%〜80重量%のアクリルポリオール、及び1重量%〜30重量%のポリエーテルポリオールを含み、前記アクリルポリオールが、前記アクリルポリオールの総重量に基づいて、少なくとも50重量%の固形分を有し、前記ポリエーテルポリオールが、25℃で500mPa*s未満の粘度、及び300超かつ700未満の数平均分子量を有する、イソシアネート反応混合物と、を含む、アクリルポリウレタン組成物。
〔態様2〕
前記ポリエーテルポリオールが、トリオールであり、250mgKOH/g〜450mgKOH/gのヒドロキシル価を有する、態様1に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
〔態様3〕
前記アクリルポリオールが、固体ベースで、350〜550g/モル当量のヒドロキシル当量を有する、態様1または態様2に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
〔態様4〕
前記イソシアネート反応混合物の総重量に基づいて、22重量%未満の量で有機溶媒をさらに含む、態様1〜3のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
〔態様5〕
前記ポリエーテルポリオールが、ポリオキシブチレンポリオールである、態様1〜4のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
〔態様6〕
前記ポリエーテルポリオールが、ポリオキシプロピレンポリオールである、態様1〜4のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
〔態様7〕
前記イソシアネート反応混合物が、カルボン酸源をさらに含み、2.5mgKOH/g〜8.0mgKOH/gの酸価値を有する、態様1〜6のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
〔態様8〕
前記アクリルポリオールの前記ポリエーテルポリオールに対する比率が、5〜15である、態様1〜7のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
〔態様9〕
前記イソシアネート成分が、前記ポリウレタンコーティング組成物に基づいて15重量%〜40重量%の量で存在し、前記イソシアネート反応混合物が、前記ポリウレタンコーティング組成物に基づいて25重量%〜60重量%の量で存在し、
前記ポリウレタンコーティング組成物が、50%超の固形分を有する、態様1〜8のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物。
〔態様10〕
態様1〜9のいずれか一項に記載のアクリルポリウレタンコーティング組成物の前記イソシアネート成分及び前記イソシアネート反応混合物を可能にすることを含む、アクリルポリウレタンコーティングの形成方法。
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