(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、病院等の解体工事に伴う塵埃や真菌等を含む外気を、稼働中の病院などの建物側の吸気に影響を及ぼさないようにする外気供給装置である。工事中はフィルタを通過した清浄な空気を供給し、粉塵等が発生しない夜間などの工事休止中は清浄空気と未処理の空気の混合空気を稼動中の建物に供給できるので、工事に伴う塵埃や真菌等を含む外気が建物に取り込まれない装置である。なお、この特許出願では、病院を病棟や診療棟を含む棟単位の建物を指すこととする。
本発明の外気供給装置は、フィルタを備えた送風機と、送風機と建物の吸気口とを連結する外気取り入れ機構を備えている。外気取り入れ機構は、ダクトとダクトの中間に設けられた外気導入する外気導入部と送風調整ダンパを備え、この送風調整ダンパは、建物の吸気口に供給される清浄空気量と未処理外気量によって清浄空気送風路と外気導入部の開度を調整する機能を果たす。送風調整ダンパは、回転軸に回転フリーに取り付けられている板状体などで構成され、清浄空気の風圧と未処理外気の風圧によって、回転角度が変更される機構である。
建物に吸引される空気量は、建物側に備えられる空調機の吸気ファンによって決まり、送風機が供給する清浄空気量が、建物が必要とする空気量を上回れば、送風機からの送風で十分である。すなわち、供給される空気によって、吸気口との接続部の静圧が+となるように送風が維持されるようにする。しかし、送風機は、モータ音や振動音を発生し、夜間などには建物内の居住者に不快感を生ずることがある。特に、入院患者などは安静を保てない可能性があるので、夜間などは送風機の運転を低風量運転あるいは停止することが望ましく、不足する建物の吸気に必要な空気量は、未処理外気で補う必要がある。送風機の運転を停止した場合、送風口やフィルタの吹き出し側に外気に含まれる真菌が付着する恐れがあり、付着した真菌が増殖した状態で、送風機を再稼働すると建物に真菌を供給することとなり、逆効果となりかねない。そこで、送風機は夜間などは少なくとも低風量で運転とする必要があるが、不足風量を補うための外気は風速、風向が変動し、設置場所に依存する変動もあり得るため、外気導入量が一時的または一定時間過剰となり、逆流によるフィルタ下流面の汚染が懸念される。本発明は、低風量運転した場合に不足する、建物の吸気に必要な空気量を未処理外気で補う調整機構を開発したものである。そして、設置環境の影響などを受けて変動する可能性のある未処理外気による逆流の影響を防止し、フィルタ下面の汚染を防止できる機構を開発した。
カビなどの真菌はわずかな隙間でも侵入する可能性があるので、侵入防止機能を高めた調整機構を提案している。
本発明は、主に工事中の近隣にある稼動中の建物である、病院などの吸気に工事による悪影響を与えることのない外気供給装置である。本発明は塵埃・カビ除去手段を工事期間中は通常運転し、工事休止中に低風量運転する際に、変動する外気を導入して不足風量を補いながら、外気の逆流によるフィルタ下流面の汚染を防止してクリーンを維持できる機器である。
本発明は解体工事中に屋外に設置して仮設で用いる、塵埃・カビを除去して空気を供給する機器であり、コストを抑え、降雨や寒暖による故障が発生しにくい簡易な機構を実現している。
【0010】
送風機は、モータで駆動されるファンとフィルタを備えている。フィルタは、カビなどの真菌や細菌もろ過する精細なHEPAフィルタ、高性能フィルタ、バグフィルタなどを使用する。架台や筐体は振動を抑えるために、防振構造を用いた静穏タイプとするのが好ましい。
【0011】
外気取り入れ機構は、ダクトとダクトの中間に設けられた外気を導入する外気導入部と送風調整ダンパを備えている。
ダクトは板状体あるいは可撓性体で構成することができるが、調整ダンパを設ける中間部は板状体で形成する。ダクトの一端は送風機の吹き出し口に接続する機構を有し、他端は建物の吸気口に接続する機構を有する。接続機構はフランジを介したネジ止めやゴムバンドなど周知の手段を使用することができるが、パッキンなどを介して隙間ができないように密着させるのが好ましい。
【0012】
外気導入部は、ダクトの中間に開口を設けて形成する。その開口にさらに外気導入用のダクトをつなげることもできる。開口は側面あるいは底面に設ける。上面に設けた場合降雨の吹き込みや雨水の浸入が起こる恐れがあるので避ける。
【0013】
調整ダンパは、清浄空気送風路あるいは外気導入路を開閉できる機構である。
開閉手段は、それぞれの通風路を閉鎖できる大きさの板状体である風量制御板を回動する手段やスライドする手段を用いることができる。
回動手段は、例えば、回転軸と回転軸に自由に回転できるように取り付けられた板状体である風量制御板で構成される。回転軸は外気導入用の開口の上流辺に取り付けられており、風量制御板は清浄空気送風路と外気導入路を閉鎖できるように回動する。風量制御板は、高さは清浄空気送風路の同じ長さを基本とし、幅は清浄空気送風路と同じかやや長くして、送風路を完全に封鎖できる大きさとする。この大きさは外気導入路に対しても同様の関係になり、外気導入路が完全に封鎖できる形状に外気導入路は設計される。風量制御板は、回転軸に1枚あるいは2枚の板体を設置することができる。2枚の場合は、回転軸を中心に板状体を「へ」の字状に取り付ける。2枚の板状体の角度は90度以内とする。
また、回動手段では、分割した板体で送風路を開閉することもできる。
さらに、また、回動する板体を前後に設けて連動式で開閉する形式にすることもできる。
【0014】
風量制御板が送風路や外気導入路を閉鎖する箇所には、隙間ができないように密着する受け構造を設けることができる。この受け機構は風量制御板のストッパーの役割も果たす。
また、風量制御板には、送風機が低風量となった時に低風量を通過させる小開口を設けることができる。小開口に、逆流防止構造を設けるとさらに真菌侵入防止の安全性が向上する。逆流防止構造は、簡単には開口の下流側に小開口よりも大きな開閉板を設け、90°以上開かないようにすることで実現する。
【0015】
(実施態様1)
図1に外気供給装置の基本構成例を示す。
図1(a)は全体構成図、
図1(b)は外気取り入れ機構概略図、
図1(c)は送風機の機器構成の概略を示す。
外気供給装置は、送風機1と送風機1の吹き出し側に取り付けられる外気取り入れ機構2を備えている。外気取り入れ機構2はダクト状の形状をしており、一端31は送風機1側に取り付けられ、中間部には送風調整ダンパ5があり、他端32は、病院等の建物が外気を取り入れる吸気口110に接続される。外気取り入れ機構2は、筒状であり、断面は四角形あるいは円形であり、送風調整ダンパ部分は変形しない板状体で構成され、他は調整しやすいように可撓性であっても良い。送風機1から外気取り入れ機構2までの距離に応じて接続ダクトなどの調整機器が介在しても良い。外気取り入れ機構2は、ダクト3の内部は清浄空気送風路33とダクト3の中間部に送風調整ダンパ5が設けられ、送風調整ダンパ5には、風量制御板51と外部に通ずる外気導入部4に通ずる開口が設けられている。送風機1は基台12にモータ13、ファン14、フィルタ11を基本構成機器として備えている。モータ13やファン14は防振部材15を介して取り付けることが好ましい。
【0016】
図2は、
図1に示す外気取り入れ機構2の構造例を示す。
図2(a)は平面図を示し、
図2(b)は立体構造図を示す。
外気取り入れ機構2は、中間部にある送風調整ダンパ5より上流側に清浄空気送風路33があり、送風調整ダンパ5より下流側に供給風路36がある。清浄空気送風路33は、一端31からフィルタを通過した清浄空気が送り出されてくる部分であり、供給風路36は、清浄空気または未処理外気、あるいは両方の混合空気が通過して他端32から建物の吸気口110に外気を供給する部分である。
送風調整ダンパ5は、本例では側壁に沿って設けられた回転軸53に回転自由に設けられた風量制御板51を備えている。調整ダンパ5の清浄空気送風路33側には清浄空気側開口34がある。
回転軸53の下流側の側壁には未処理外気用開口35が設けられており、外気導入部4に続いている。風量制御板51は、清浄空気側開口34と未処理外気用開口35との間で回動することができ、両開口を封鎖できる大きさを有している。
清浄空気側開口34は、そのままの素通し、又は受部を設ける。受部は、パッキン付きの枠材付きストッパやスリット材、メッシュ材などを設けて、廻り止め機能と密着機能を付与することができる。パッキンなどを設けて密着機能を付与した場合は、隙間から真菌の侵入を防止する機能が向上する。未処理外気用開口35部にも廻り止め機能と密着機構を設けることができる。未処理外気用開口35は、そのまま外気に露出させることもできるが、この例では外気導入部4を通して外気に通じている。
【0017】
風量制御板51の回動位置によって、清浄空気側開口34からの空気と未処理外気用開口35からの空気が供給される。工事中は、建物が必要とする吸気量以上となる風量を送風機から大風量運転として送風し、清浄空気の空気圧によって調整ダクト内が高圧となるので、未処理外気開口は風量制御板51によって封鎖状態となる。
この平面図に示した外気取り入れ機構の立体構成を
図2(b)に示している。
平面図の説明に加えて、外気導入部4は、回転軸53の下流側の側壁に設けられている未処理外気用開口35からフード状に設けられており、この外気導入部4の下面に外気開口42が設けられている。また、供給風路36の下面または側面には過剰空気排気口37が設けられており、吸気口110が必要とする以上の風量はこの過剰空気排気口37から排気される。この過剰空気排気口37には、閉鎖方向に付勢されているなどの逆流防止機構が設けられており、この部分から外気が侵入することがない。このため変動外気が一時的または一定の時間過剰となって導入された場合にも、送風調整ダンパ5への逆流負荷を軽減することができる。
風量制御板51の下部側に小開口52が設けられている。小開口52を設ける位置は外気導入部4から導入された外気の風量制御板51に及ぼす影響が小さい位置が好ましい。すなわち、
図2(b)のように外気が下面から導入される場合には、外気の影響は風量制御板51の上部に大きく働くため、小開口52は下部側に設ける。この小開口52は、低風量時に清浄空気が通過する開口部分であり、逆流防止板である小開口開閉蓋52aを設けることが好ましい。小開口開閉蓋52aは単純には開口の下流側の上部に回転ヒンジを持つ板状蓋でも良い。板状蓋は弱い付勢を付与したり、90°以上開かないようにすることで逆流を防止することができる。
さらに、風量制御板51に清浄空気側開口34を閉鎖する方向に弱い付勢を付与する場合には、風量制御板51とダクトとの隙間から強めの風が吹くことになり、逆流防止が向上し、小開口52がある場合は、風量制御板51は清浄空気側開口34に密着することとなり、低風量は小開口からの吹き出しとなる。
【0018】
この
図1、2に記載された外気供給装置は、工事中は送風機を大風量運転することにより、清浄空気を建物の吸気口に十分な量を供給することができる。夜間など工事休止中は、送風機を低風量運転することにより、送風機が原因となる騒音の影響が小さくなり、入院患者などに対する静穏性を保つことができる。送風機から低風量では不足する分は、未処理外気用開口35から取り入れられる。風量制御板51が送風圧を受けて、バランスするところで回動が停止することになる。送風機側から供給される清浄空気は常に流れているので真菌が逆流して、吹き出し口やフィルタの吹きだし側に付着して増殖することが防止できる。さらに、清浄空気送風路33を閉鎖する方に風量制御板51に付勢を付けることにより、清浄空気の送風が強まり、逆流防止機能が強化され、また、風量制御板51に低風量通過用の小開口52を設けることにより、風量制御板51が清浄空気側開口34に密着することとなり、真菌が逆流して汚染されることを防止できる。
【0019】
(実施態様2)
外気供給装置の例2を
図3に示す。
図3に外気供給装置の例2構成概略図を示す。外気供給装置はファンとフィルタからなる送風機1、送風機からの清浄空気を送風するとともに逆流によるフィルタ下流面の汚染を防止する手段を備えた外気取り入れ機構2、および外気導入部4からなる。送風機1の浄化対象は塵埃・カビだけでなく、真菌、菌類、花粉やアレルゲンなども含まれる。外気取り入れ機構2と外気導入部4の間には未処理外気用開口35があり、未処理外気用開口35の送風機1側の端を回転軸53として回転できる風量制御板51が取り付けられている。風量制御板51は2枚の板51a(「清浄空気制御板」であるが省略して示す)と51b(「外気制御板」であるが省略して示す)が直角に配置された形状で、板51aはダクト3の送風路断面と同形状で可動できるぎりぎりのサイズであり小開口52が設けられ、板51bは外気導入部4の送風路断面と同形状で可動できるぎりぎりのサイズである。板51aと51bは90度で固定され角度は変わらない。小開口52は小開口と小開口開閉蓋52aを備え、小開口開閉蓋52aは小開口52を覆うサイズであり、送風機1からの送風方向と同じ方向にしか開かないようになっている。また90度以上開かないようになっている(無風状態では閉じている)。外気取り入れ機構2と外気導入部4との内壁には、それぞれ板51aと51bが90度以上回転しないように、制御板ストッパ34aと43が設けられている。また制御板ストッパ34aと43により板51aおよび51bと送風路断面との隙間が生じないようになっている。
外気取り入れ機構2の下流側に過剰空気排気口37を設ける場合がある。この過剰空気排気口37は小開口52と同様な構造で、ダクト3の内側から外側にのみ開口するようになっている。過剰空気排気口37の開口面積は小開口52よりも大きいほうが望ましい。
【0020】
<外気供給装置例2の動作>
外気供給装置の動作を説明する。例えば、2棟が隣接し、1棟は稼動中の病院であり、もう1棟は解体予定の病院という状況で適用する場合、病院解体前に稼働中の病院の吸気口110に外気供給装置を
図3に示すように設置する。送風機1からの大風量の給気量CAは稼働中の病院の吸気量DAをもとに設定し、運転を開始する。
解体工事が着工されると工事時間中は大風量を通常運転とし(
図3(a))、外気供給装置から供給される浄化された清浄空気が外気取り入れ機構2を通過して吸気口110に供給される。その際に風量制御板51は
図3(a)の位置であり、板51aは調整ダンパ5の空気流路と平行で空気流路を遮る方向へ稼動するような力は働いていない(圧力損失は上昇しない)。また板51bは外気導入部4の空気流路を遮る位置であるが、外気開口42が閉鎖状態であり外気導入部4側からの力は働いていない。
一方、夜間等の工事休止中は低風量運転に切り替えると同時に外気開口42を開口し(
図3(b))、送風機1から供給される低風量の給気量CAminが減少する分を外気量NAで補う。外気NAを導入し、外気量が増加するにつれて風量制御板51は
図3(b)に示すように板51aが調整ダンパ5に設けられた制御板ストッパ34aの位置で静止する。給気量CAminは吸気量CAよりも大幅に低下するため、
図3(b)の状態になった後も給気量CAmin+外気量NA=吸気量DAになるまで外気量が増加する。これで低風量運転状態となる。
【0021】
低風量運転中に過剰な外気NA導入が起こり風量制御板51に過負荷([外気NA量―病院の吸気量DA]>[送風機給気量CAmin])がかかったとしても、制御板ストッパ34aによってそれ以上回転しないため、過剰外気NAが逆流する可能性としては小開口52からのみとなる。
小開口52は[送風機給気量CAmin]>[外気量NA―病院の吸気量DA]の場合には小開口開閉蓋52aが開いて給気が通過し、[外気量NA―病院の吸気量DA] > [送付機からの給気量CAmin]の場合には小開口開閉蓋52aが速やかに閉じるため、外気NAの逆流は起こらないか、極わずかに小開口52から侵入する程度である。
外気NAが極わずかに侵入したとしても送風機1からの送風があるため、フィルタ下流までは到達しない。また風量制御板51が制御板ストッパ34aの位置から稼動(逆回転)するのは、[送風機からの給気量CAmin]>[外気量NA―病院の吸気量DA]の場合であるため、外気NAの逆流は起こらない。
外気NAの逆流をさらに確実に抑える場合には、過剰空気排気口37を設ける。これにより逆流が起こる状態になった場合には、過剰に流入した外気はまず過剰空気排気口37から屋外へ排気されるために、より逆流を防止できる。
工事開始前には送風機を通常運転に切り替えると同時に外気導入蓋44を閉鎖し、風量制御板51は
図3(a)の位置にもどり、板51bは外気導入部4のストッパ43の位置で静止する。なお、送風機1を大風量運転にすると、板51aは開となり、板51bがストッパ43に接触して、閉となるので、外気の侵入は停止されるので、その後に外気導入蓋44を閉めても良い。
このように送風機の送風量と外気導入部4を操作するだけで、通常運転と低風量運転の切り替え、および低風量運転時の外気NAの逆流によるフィルタ下流面の汚染を防止することができる。
【0022】
<外気供給装置の設置方法>
図1〜
図3に示す外気供給装置は、地上据え置き型を中心に説明したが、建物の吸気口の位置によって、送風機の設置位置も必要に応じて、屋上や中間階や高い仮設台にする必要がある。それに応じて、外気供給機構の形状は適宜設計変更される。
図9に示すように、送風機1に外気取り入れ機構2が直接取り付けられ、接続ダクトを介して吸気口110に接続する例や、吸気口の位置が低層階の外壁や屋上の機械室にある場合などが該当する。一方、吸気口の位置が高層階などであり、かつ送風機1を屋上に設置できない場合には、送風機1を地上に設置することになるが、外気取り入れ機構2も地上に設置すると吸気口との距離が長くなり過ぎる。このような場合には、
図9(c)(d)のように外気取り入れ機構2を吸気口の近傍に設置し、地上の送風機1と接続ダクトで接続する。この他、仮設台を設置して設置することも可能である。建物の吸気口の位置や周辺の環境に応じて適宜設定される。
【0023】
<外気供給装置の詳細および応用>
(風量制御板)
風量制御板51は回転軸53を軸として回転できるようになっており、通常運転では送風機1からの送風を妨げることなく外気導入部4の空気流路を閉鎖でき、低風量運転では外気導入部4の空気流路を妨げることなく清浄空気の送風路を閉鎖して外気の逆流を防止できる構造である。
例えば、
図4に各種の態様を示す。
図4(a)は、送風制御板51を直角に配置した板51aと51bで構成した例(2翼直角型)である。この例は、
図3に開示されている。調整ダンパ5の部分で清浄空気送風路と外気導入部の送風路を併設して、直角に配置された板51aと51bを備えた送風制御板が90度回転することにより、一方の送風路を開通させ、他方の送風路を閉鎖する構造である。
図4(b)は、清浄空気送風路33の断面よりも幅が広い板51aと外気導入部4の送風路断面よりも幅が広い板51bが90度未満の角度で固定された形状で構成された風量制御板51の例(2翼鋭角型)である。この断面が広いとは、回転方向の高さは回転が共用できるように送風路の高さとほぼ同程度であり、長さ方向が送風路よりも長いことを指している。
図4(c)は、回転軸53に1枚の板体で風量制御板51を構成した例(1翼直角型)である。この例では、清浄空気送風路33の閉鎖部と外気導入部4の閉鎖部が180度に配置した例である。なお、90度に配置した例は
図2に記載したとおりである。それに応じて、回転部位のダクト形状が設計されることとなる。
図4(d)は、
図4(b)に示す双方の送風路を1枚で構成した風量制御板51で開閉制御する構成である。
【0024】
風量制御板51の材質は任意であるが、稼動(回転)のタイミングや稼働に要する時間を迅速にする(逆流をより起こらなくする)ために、軽量な樹脂製が望ましい。さらに抗菌、防カビ加工を施すことが好ましい。金属製の場合、外気が通過することによる金属腐食の発生や金属音の問題が懸念されるため、その対策が必要となる。金属製の場合には、腐食しにくい材質とし、また金属音を防ぐための緩衝材を設ける。
風量制御板51と制御板ストッパ34a、43との接触時の音や衝撃を和らげるために、風量制御板51のストッパとの接触部またはストッパにパッキン性のある緩衝材を設けることが望ましい。この緩衝材もできれば抗菌、防カビ加工を施すことが好ましい。
風量制御板51が水平に稼動(回転)する例を示したが、樹脂などの軽量な材質であれば自重の影響が軽減できるため、垂直方向に稼動(回転)する方式とすることも可能である。この場合、外気導入部4はダクト3の上か下に配置される。
【0025】
(外気導入部)
外気導入部4は、ダクト3に設けられた未処理外気用開口35から先端部の外気開口42までの間に筒状に形成される。風量調整板51の当たり止めとなるストッパ43、外気開口42の蓋となる外気導入蓋44等を備えている。ダクト3に設けられた未処理外気用開口35手前の形状は任意であるが、圧力損失を抑える場合にはR形状が望ましい。未処理外気用開口35は
図4に示すように、2翼直角型や2翼鋭角型の場合には、低風量運転時に外気NAが供給できるように風量制御板51よりも広い開口を設ける。1翼直角型や1翼鋭角型の場合には、風量制御板51よりも広い開口であってもよいし、ぎりぎりのサイズであってもよい。
未処理外気用開口35に連なる部分で風量調整板51が回動する場所は、風量調整板が通過あるいは閉鎖できるように角形断面となり、それ以外の部分は丸ダクトなど任意のダクト形状とすることができる。
外気開口42は降雨の影響を避けるために底面に設けるか、側面に設ける場合にはウェザーカバーを設置する。また外気開口42には防鳥網を取り付けるのが望ましい。
【0026】
底面に外気開口42を設ける例では、
図5に示すように、外気導入蓋44が1枚、あるいは複数枚に分割して構成することができる。そして、それぞれの開閉手段は、一辺を回転軸として回転させる手段、スライド手段などを採用することができる。また、ダクト3に対して外気導入部4を、直角など角度をつけて配置する構成とすることもできる。各種例を
図5に示す。
図5(a)は蓋体が外側に回転して開く例、
図5(b)は蓋体が内側に回転して開く例、
図5(c)、(d)は蓋体が平行にスライドして開口する例、
図5(e)は1/4円筒体の内部で90度回転して開口する例、
図5(f)は横スライドして開口する例である。
図5(g)は、外気導入部4の先端形状をR形にした例である。この例では、外気の風量の影響を受けにくい場所に設置する場合に適している。蓋体は
図5(a)〜(f)に示される構造を採用できる。
図5(h)は複数板に分割した蓋体を回転させて開口する例、
図5(i)(j)はダクト3に対して角度をつけて外気導入部4を配置した例である。蓋体の構造や外気導入部4をR形にすることは
図5(a)〜(h)に示すように各種採用することができる。
【0027】
外気開口42の開口面積は、吸気量DAをすべて供給できる面積が望ましい。低風量運転時の外気開口42の開閉の調整は、より精度を高める場合には吸気口110の手前に風速センサーを設置し、その情報に基づいてCVA制御することができる。また、手動で開口し、風量制御板51によって制御することができる。この場合、外部開口42開口方式は、外気の流入方向と外気導入部4内の気流方向が一致しない
図5(c)(d)(f)(h)のような方式が望ましい。これは開口状態が維持されている状況で長時間強風が吹き込むような場合に、過剰な外気導入量の程度を和らげるためである。
風量制御板51および外気開口42の外気導入蓋44を樹脂などの軽い材質とした場合、低風量運転した際に吸気量DAに対して清浄空気風量CAminが不足し吸気口110の手前が負圧になることにより、外気導入蓋44が自然に開口して外気NAが流入し、風量制御板51によって制御され、不足風量を補うことが可能である。
ダクト3と外気導入部4が並列している例を各種紹介したが、両者を直角など角度をつけて配置することもできる。また、風量制御板51が、外気導入路4側に回動しなければ、外気導入路4の設置形状は、現地の状況に合わせて任意に設計できる。
【0028】
(実施態様3)
風量制御板を二重構造とした例を
図6に示す。
図6(a)は送風機を大風量運転したときの風量制御板の状態を示し、
図6(b)は送風機を低風量運転したときの風量制御板の状態を示す。
この装置は、低風量運転時に外気の逆流をさらに確実に防止するために、風量制御板51を二重にした例である。風量制御板51a、51bを直角に配置した2翼直角型の風量制御板とダクト3の上流側に小開口を有する上流側の風量制御板51cを設けた構成である。上流側の風量制御板51cの先端の上下と風量制御板51bの先端の上下を線状引っ張り部材56で繋いである。上流側の風量制御板51cの制御板ストッパ34b付近でダクト3の側壁部に中継穴57を設けて、線状引っ張り部材56を通してある。この構成により、直角に配置された風量制御板51a、51bと風量制御板51cは連動して開閉する。小開口が風量制御板51a、51cに設けられており、風流制御板51bには設けられていない。
【0029】
図6(a)は、工事中などに行う通常運転であり、大風量がダクト3を流れるので、上流側の風量制御板51cが大きな風圧を受け、回転軸53bを中心に回転して、送風路が開く方向に付勢され、線状引っ張り部材56が風量制御板51bを閉方向に引き、風量制御板51aは、大風量に曝されるので、一層、外気導入路4は、風量制御板51bによって封鎖されることとなる。
図6(b)は、夜間などに行われる低風量運転であり、送風機から供給される風量よりも未処理外気が未処理外気用開口35からダクト3側に流入する。それによって、風量制御板51a、51cが閉方向に動く。この場合、ダクト3側では風量制御板51aの閉鎖のタイミングでわずかに外気が逆流したとしても上流側の風量制御板51cによって遮られる。送風機側から供給される低風量は小開口から通風することができる。
図6(c)は、送風機から風量変化によって、3枚の風量制御板の動きを示している。「通常の大風量(CA)運転→夜間等の低風量(CAmin)運転切り替え時→夜間等の低風量(CAmin)運転時→工事開始時等の通常運転切り替え時」を示している。「CA」は送風機1からの大風量の給気量、「CAmin」は送風機1から供給される低風量の給気量、「NA」は吸引される外気量を示している。通常運転(CA)→低風量運転(CAmini)→通常運転(CA)のように切り替えると、風量制御板51a、51b、51c、線状引っ張り部材56が稼動し、通常運転の際には送風機からの給気を妨げることなく、低風量運転の際には風量制御板51a、51cがダクト3内で二重の障壁となる。この際に板51a、51cには小開口が設けてあるため、給気は通過できる。
【0030】
図7には、
図6に示した構成とは異なる二重に設けた風量制御板の構造を示している。
図7(a)は、2翼鋭角型の風量制御板の例、(b)は1翼直角型の例を示す。
図7(a)では、上流側の風量制御板51cの長さは、ダクト3の幅よりも長く、回転軸53bにより回転した場合、ダクト3の反対側の側壁に当接して、回転量は90°未満となる。また、下流側には外気導入部4の幅よりも長い長さをもつ風量制御板51bとダクト3の幅よりも長い長さを持つ風量制御板51aが回転軸53aに取り付けられている。風量制御板51a、51bの回転量も90°未満となる。風量制御板51cの先端と風量制御板51bの先端が線状引張部材56で繋がれていて、連動して回動する構造である。
図7(b)では、ダクト3と外気導入部4が直角に配置されている形式である。ダクト3の側壁に設けられている未処理外気用開口35は、ダクト3の断面よりも小さい。回転軸53bに上流側の風量制御板51cが配置され、回転軸53に下流側の風量制御板51dが配置されている。風量制御板51dはダクト3と未処理外気用開口35の双方を封鎖できる大きさである。上流側の風量制御板51cと下流側の風量制御板51dの先端は線状引張部材56で繋がれている。2つの風量制御板51c、51dは、送風機の大風量運転状態では、風量制御板51cが開いて、それに連動して風量制御板51dが未処理外気用開口35を封鎖する。送風機の低風量運転状態では、建物側の吸引によって、風量制御板51dが回転して未処理外気用開口35を開き、未処理外気がダクト内に導入される。それに従い、風量制御板51c、51dがダクト3を封鎖する方向に回動する。風量制御板51c、51dには、小開口が設けられていて、低風量の清浄空気が通過する。
【0031】
(実施態様4)
図8に外気取り入れ機構2としてダクト3と外気導入部4を直列に配置し、中間に建物側の吸気口110への接続端を設けた外気供給装置の例を示す。
ダクト3の送風機側に小開口を有する風量制御板51a、外気導入部4側に風量制御板51eを設け、風量制御板51a、51eの開閉側先端の上下2箇所に取り付けた線状引っ張り部材56を取付け、中継案内する引っ掛け部材57a、57bを通して両者を繋いでいる。
大風量の通常運転の際には
図8(a)に示すように、送風機1からの送風は、建物の吸気口110に供給される。低風量運転の際には
図8(b)に示すように、外気導入蓋44が開くと同時に風量制御板51eの開口と風量制御板51aの閉鎖が起こり、外気が導入されて吸気口110に供給され、逆流は抑えられる。風量制御板51および外気導入蓋44が樹脂などの軽い材質の場合、外気導入蓋44を上側開閉にすると、低風量運転した際に吸気口110の吸気によって、外気導入蓋44が引き上げられて、自然に開口して外気が流入することとなる。
【0032】
(実施態様5)
図9に外気供給装置の各種の設置例を示す。ビルディング建築物の病院には、高いところにも吸気口があるので、それらの吸気口にも対応する外気供給が必要になる。例えば、地上に配置した送風機から接続ダクトを伸ばす形態や、屋上に配置する形態が必要となる。また、一台の送風機から接続ダクトを分岐して複数の供給口へ接続する形態もある。
図9(a)に示すように、吸気口110が外壁の低層部にある場合には、送風機1、ダクト3および外気導入部4を連結して地上に設置し、吸気口110との間を接続ダクトで接続する。一方、吸気口110が外壁の高層部にある場合には、
図9(b)に示すように、送風機1、ダクト3および外気導入部4を連結して屋上に設置し、吸気口110との間を接続ダクトで接続するか、または
図9(c)に示すように、吸気口110の直近にダクト3および外気導入部4を設置し、地上に設置した送風機1との間を接続ダクトで接続する。
図9(d)に示すように、吸気口110の直近にダクト3と外気導入部4を離して設置し、地上に設置した送風機1との間を接続ダクトで接続することもある。また
図9(c)、(d)も送風機1を屋上に設置する場合もある。
【0033】
本発明は、吸気中の外気取り入れ口に対して、通常運転では塵埃・真菌(カビ)等を大幅に除去した空気を給気でき、低風量運転時には外気を導入して不足風量を補いながら、変動する外気導入量が一時的または一定の時間過剰となっても逆流によるフィルタ下流面の汚染を防止することができるため、通常運転と低風量運転を繰り返し行った場合においても、吸気量を確保しつつ、通常運転時には塵埃・カビを大幅に除去した空気を給気できる空気浄化システムである。
また、簡易な機構であるため低コストで実現でき、ファン以外には電気を使わずに実施可能であるため、降雨や寒暖の影響を受けにくい。
【0034】
本発明が適用される工事現場では、次のような状況に対応することが必要であって、本発明はこれらの要望に適した物である。
解体工事期間のみの仮設対応で、フィルタとファンを搭載した塵埃・カビ除去手段を外気取り入れ口の屋外側に設置し、ダクトなどで接続して清浄空気(塵埃・カビを大幅に除去した空気)を外気取り入れ口に供給する方法が考えられる。
塵埃・カビ除去手段はファンを搭載しているため、稼働時には本体からの直接的な騒音・振動とダクトを通じての間接的な騒音・振動が発生する。病院は長時間安静状態を保たなければならない患者を対象としているため、一般の建物よりも騒音や振動に対する配慮が求められ、検査や診察などの医療行為においても騒音や振動が支障をきたす場合がある。このような事情から、塵埃やカビが多く飛散する解体工事時間帯のみの対策が必要である。解体工事時間帯のみの対策であるため、塵埃・カビの飛散が少ない工事休止中での外気導入は許容される。ただし、低風量運転のため風量調整ダンパを絞ると、騒音や振動の問題の解決にはならないため、ファンの動力を抑えることによってモータやファンの騒音を抑える。
ファンを停止すると、病院に供給する風量を確保するために設ける開閉機構の開口部等から侵入してきたカビの胞子が、送風機のフィルタ下流面(通常運転で塵埃やカビを除去するフィルタ面とは反対の面)に付着し、特に雨天などの高湿度条件ではフィルタ表面で増殖する場合がある。この状態で通常運転すると汚染されたフィルタからカビを含んだ空気が供給されることになるため、ファンの停止は避ける必要がある(屋外での使用となるため、冬季などファンのON、OFFの切り替えによって結露が発生するリスクが増加することも懸念される)。
ファンを低風量運転すると、上記開閉機構の開口部において一時的または一定の時間外気導入量が過剰となった場合、導入外気の逆流が発生することによる、塵埃・カビ除去ユニットのフィルタ下流面の汚染のリスクが残る。本発明は、送風路を遮断する風量制御板に逆流防止機構つき小開口を設けることや、多重に風量制御板を設けるなど、カビや微生物汚染対策を施している。これらの対策により、塵埃・カビ除去手段を工事期間中は通常運転し、工事休止中に低風量運転する際に、変動する外気を導入して不足風量を補いながら、外気導入量が一時的または一定の時間過剰となっても逆流によるフィルタ下流面の汚染を防止する装置を実現している。