(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸上げパイプは、前記吸上げパイプにおける前記第2端から前記第1端に向かう方向が、重力の方向と同一の方向であるように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の溶融金属吐出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている外面防食管の製造方法では、互いに異なる材料から構成された2種の線材を用いてアーク溶射するため、2種の線材を保持するためのものが必要となり、アーク溶射するための機構が複雑になる。また、アーク溶射に際しては、騒音、ヒューム、光などが発生するため、溶射装置や被溶射物などを囲むブース、集塵設備などの多くの周辺設備が必要になる。このように、特許文献1に開示されている外面防食管の製造方法には、改善の余地がある。本発明の一態様は、簡易な機構にて溶融金属を対象物に吐出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る溶融金属吐出装置は、溶融金属を貯留する溶融槽と、前記溶融槽に貯留された前記溶融金属に挿入された第1端から前記溶融金属を吸上げて、前記溶融槽の外部に露出している、前記第1端とは反対側の第2端から前記溶融槽の外部に前記溶融金属を導く吸上げパイプと、前記吸上げパイプの前記第2端に向かって気体を吹付けることにより、前記第2端の近傍に負圧を発生させ前記吸上げパイプ内において前記溶融金属の吸上げ力を発生させるとともに、前記第2端の外部に導かれた前記溶融金属を吐出するための吹付けパイプと、を備える。
【0006】
前記構成によれば、吸上げパイプの第2端に向かって気体が吹付けられることにより第2端の近傍に負圧が生じるため、吸上げパイプによって溶融金属を吸上げて溶融槽の外部に溶融金属を吐出することができる。よって、簡易な機構にて溶融金属を吐出することができる。
【0007】
前記吹付けパイプにおける気体の吹付け口は、前記第2端に形成された前記溶融金属の吐出口と対向する側から見て、前記吐出口よりも後方に配置されていてもよい。前記構成によれば、吹付けパイプの吹付け口からの気体が、吸上げパイプの吐出口の端面に吹き付けられることを防ぐことができる。これにより、吸上げパイプの吐出口の端面が気体によって冷やされることを抑制し、吸上げパイプの第2端の近傍で溶融金属が固まることを抑制することができる。また、このように吹付け口を配置することで第2端の近傍に負圧を安定して確実に生じさせることができる。
【0008】
前記吸上げパイプは、前記吸上げパイプにおける前記第2端から前記第1端に向かう方向が、重力の方向と同一の方向であるように構成されていてもよい。前記構成によれば、気体の吹付けを止めることにより溶融金属の吐出を止めたとき、吸上げパイプ内において溶融金属が重力に従って下に移動することにより吸上げパイプ内の溶融金属が溶融槽に戻る。これにより、吸上げパイプ内で溶融金属が固まることを抑制することができ、溶融金属吐出装置のメンテナンスを行い易くすることができる。
【0009】
前記溶融金属吐出装置は、前記吸上げパイプを加熱する加熱手段をさらに備えてもよい。前記構成によれば、吸上げパイプ内の溶融金属も加熱されることになるため、吸上げパイプ内の溶融金属が固まることを防ぐことができる。
【0010】
前記溶融金属吐出装置は、前記溶融槽に貯留された前記溶融金属と前記溶融槽との合計重量を測定する荷重計と、前記吸上げパイプ及び前記吹付けパイプに対する前記溶融槽の相対位置を変更するために前記溶融槽と、前記吸上げパイプ及び前記吹付けパイプと、の少なくとも一方を移動させる移動部と、前記荷重計によって測定された前記合計重量の単位時間当たりの減少量が所定の範囲内に収まるように、前記移動部を制御する制御装置と、をさらに備えてもよい。
【0011】
前記構成によれば、吐出される溶融金属の吐出量を略一定にすることができる。このため、例えば、回転している対象物に溶融金属を吐出する場合、対象物に対して均一に溶融金属を付着させることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る皮膜形成装置は、対象物としての管の外面に皮膜を形成する皮膜形成装置であって、前記管を回転させる回転部と、前記回転部により回転されている前記管の外面に対して前記皮膜を形成するための前記溶融金属を吐出する前記溶融金属吐出装置と、を備えてもよい。前記構成によれば、溶融金属を管の外面に吐出することにより管の外面に皮膜を形成する皮膜形成装置を簡易な機構によって実現することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る溶融金属吐出方法は、溶融槽に溶融金属を貯留する工程と、前記溶融槽に貯留された前記溶融金属に挿入された第1端から前記溶融金属を吸上げて、前記溶融槽の外部に露出している、前記第1端とは反対側の第2端から前記溶融槽の外部に前記溶融金属を導く吸上げパイプを準備する工程と、吹付けパイプを用いて前記吸上げパイプの前記第2端に向かって気体を吹付けることにより、前記第2端の近傍に負圧を発生させ前記吸上げパイプ内において前記溶融金属の吸上げ力を発生させるとともに、前記第2端の外部に導かれた前記溶融金属を吐出する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、簡易な機構にて溶融金属を吐出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態1〕
(溶融金属の吐出の原理について)
まず、溶融金属の吐出の原理について、
図1に基づいて説明する。
図1は、参考例としての皮膜形成装置100Rの構成を示す模式図である。
図1から
図5において、実線矢印は、気体の流れを示しており、点線矢印は、溶融金属M1の流れを示している。皮膜形成装置100Rは、
図1に示すように、溶融金属吐出装置1Rと、回転ローラC1,C2(回転部)と、を備えている。溶融金属吐出装置1Rは、溶融槽10Rと、吸上げパイプ20Rと、吹付けパイプ30Rと、を備えている。
【0017】
図1に示すように、吹付けパイプ30Rの吹付け口31Rから吸上げパイプ20Rの吐出口21Rの端面に向かって気体を吹付けることにより、吐出口21Rの端面の近傍に負圧が発生する。これにより、吸上げパイプ20R内において溶融金属M1の吸上げ力が発生し、溶融槽10Rに貯留された溶融金属M1が吸上げパイプ20Rに吸上げられる。吐出口21Rから吐出された溶融金属M1は、吹付けパイプ30Rからの気体によって、回転ローラC1,C2により回転されている管T1の外面に対して吹付けられる。管T1としては、例えば、ダクタイル鋳鉄管(金属管の一例)が挙げられる。
【0018】
(皮膜形成装置100の構成)
皮膜形成装置100の構成について、
図2に基づいて説明する。
図2は、本発明の実施形態1に係る皮膜形成装置100の構成を示す模式図である。
図2において、点線L1で囲まれた図は、皮膜形成装置100の正面図であり、点線L2で囲まれた図は、溶融金属吐出装置1の平面図である。また、
図2における点線L1で囲まれた図において、溶融金属吐出装置1から管T1に向かう方向を上方向とする。
【0019】
皮膜形成装置100は、対象物としての管T1の外面に皮膜を形成する装置である。皮膜形成装置100は、
図2に示すように、溶融金属吐出装置1と、回転ローラC1,C2と、を備えている。溶融金属吐出装置1は、溶融金属吐出装置1よりも上に配置され、回転ローラC1,C2により回転されている管T1の外面に対して溶融金属M1を吐出する装置である。
【0020】
ただし、本発明は、管T1の外面に対して溶融金属M1を吐出する装置に適用範囲が限定されるものではない。本発明は、溶融金属M1を吐出することによって溶融金属M1の粉末を生成する装置にも適用されるものである。
【0021】
溶融金属吐出装置1は、溶融槽10と、吸上げパイプ20と、吹付けパイプ30A,30Bと、荷重計40と、移動部50と、制御装置60と、を備えている。回転ローラC1,C2は、少なくとも1つが駆動ローラで、残りは従動ローラであり、管T1と接触しながら回転することにより管T1を管軸心回りに回転させる。回転ローラC1,C2は、地面からの所定の高さに配置されるように、支持台(図示せず)によって支持されている。
【0022】
なお、回転ローラC1,C2は、管T1を回転させることが可能な部材または機構に代替することもできる。例えば、管T1の中心に回転軸を設け、当該回転軸をベルトまたはチェーンにより回転させてもよい。
【0023】
管T1の全長にわたって溶融金属M1を吐出させるため、回転ローラC1,C2または、管支持部材を備える基台(図示せず)を管軸方向に走行させてもよい。あるいは、溶融金属吐出装置1を管軸方向に走行させてもよい。または、回転ローラC1,C2の全ての回転軸心を管軸に対して傾斜させて配置することで、管T1の回転に従って管T1が管軸心方向に走行するように(管T1を管軸心方向に走行させるように)回転ローラC1,C2に管走行機能を持たせてもよい。もちろん、管回転装置と溶融金属吐出装置1の両方を管軸方向に走行させることでもよい。
【0024】
以上のように、皮膜形成装置100は、溶融金属吐出装置1、管回転部の他に、管回転装置と溶融金属吐出装置1の少なくとも一方を管軸方向に走行させる走行部(図示せず)を備えていてもよい。
【0025】
溶融槽10は、その上方が開放されており、溶融金属M1を貯留する(溶融金属を貯留する工程)。溶融槽10及び吸上げパイプ20の材質は、溶融金属M1によって侵されないものであることが好ましく、例えば、SUS316Lであることが好ましい。なお、溶融槽10、吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bは、金属製であるが、これに限定されず、アルミナ、カーボン、炭化ケイ素またはシリカ等の非金属製であってもよい。
【0026】
溶融槽10の周囲には、溶融槽10を加熱する加熱手段として、ヒーター等の加熱器(図示せず)が設けられていてもよい。この場合、溶融槽10の壁部は、2枚の板部(図示せず)の間に前記加熱器が挟み込まれた構造からなる。これにより、溶融槽10内の溶融金属M1が固まることを抑制することができる。また、溶融金属吐出装置1は、溶融槽10を加熱する加熱手段として、前記加熱器に代えてガスバーナーまたは加熱されたエアーを吐出する機構等を備えていてもよい。
【0027】
溶融金属M1は、管T1の外面に形成される皮膜を形成するための材料である。溶融金属M1の原料としては、Zn(亜鉛)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)等の低融点の金属のうち少なくとも1つの金属を含むことが好ましい。また、溶融金属M1の融点は、溶融金属M1と接触する溶融槽10及び吸上げパイプ20の融点より低いことが好ましい。溶融金属M1は、2種類以上の金属からなる合金であってもよい。
【0028】
なお、溶融金属M1の原料が低融点の金属である場合、溶融金属M1の原料を容易に溶解することができ、溶融槽10に貯留される溶融金属M1を容易に生成することができる。また、溶融金属M1の原料は、溶融槽10で溶解されてもよく、溶融金属M1の原料を溶解するための溶解炉で溶解された後に溶融槽10に貯留されてもよい。
【0029】
吸上げパイプ20の第1端22は、溶融槽10に貯留された溶融金属M1に挿入されている。吸上げパイプ20における第1端22とは反対側の第2端23は、溶融槽10の外部に露出している。つまり、第2端23は、溶融槽10の上端よりも上に配置されている。
【0030】
吸上げパイプ20は、第1端22から溶融金属M1を吸上げて、第2端23から溶融槽10の外部に溶融金属M1を導く。吸上げパイプ20は、治具(図示せず)によって支持されていることにより、その位置が固定されている。なお、
図2において、溶融金属吐出装置1は、1本の吸上げパイプ20を備えているが、2本以上の吸上げパイプ20を備えていてもよい。溶融金属の吐出処理を行う際には、このような吸上げパイプ20を準備する(吸上げパイプを準備する工程)。
【0031】
吸上げパイプ20は、吸上げパイプ20における第2端23から第1端22に向かう方向D1が、重力の方向G1と同一の方向であるように構成されている。前記構成によれば、気体の吹付けを止めることにより溶融金属M1の吐出を止めたとき、吸上げパイプ20内において溶融金属M1が重力に従って下に移動することにより吸上げパイプ20内の溶融金属M1が溶融槽10に戻る。これにより、吸上げパイプ20内で溶融金属M1が固まることを抑制することができ、溶融金属吐出装置1のメンテナンスを行い易くすることができる。
【0032】
吹付けパイプ30A,30Bは、それぞれ、溶融槽10よりも上方に配置されており、吹付けパイプ30A,30B内に気体を供給する気体供給装置(図示せず)に接続されている。前記気体供給装置によって吹付けパイプ30A,30B内に気体が供給されることにより、吹付けパイプ30A,30Bは、それぞれ、吸上げパイプ20の第2端23に向かって気体を吹付けることができる。
【0033】
吹付けパイプ30A,30Bが第2端23に向かって気体を吹付けることにより、第2端23の近傍に負圧を発生させ吸上げパイプ20内において溶融金属M1の吸上げ力を発生させる。吹付けパイプ30A,30Bは、それぞれ、第2端23の外部に導かれた溶融金属M1を対象物としての管T1に吐出するためのものである。つまり、溶融金属M1の吐出処理を行う際には、吹付けパイプ30A,30Bを用いて溶融金属M1を管T1に吐出する(溶融金属を吐出する工程)。
【0034】
吹付けパイプ30A,30Bの両方から吐出される気体の合計量は、管T1に対して吐出される溶融金属M1に係る単位時間当たりの体積の1000倍以上の体積の気体に相当する量であることが好ましい。これにより、溶融金属M1を霧状にさせることができる。
【0035】
また、吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bの位置関係と、吹付けパイプ30A,30Bの両方から吐出される気体の合計量とは、吹付けパイプ30A,30Bから気体が吐出されたとき、第2端23の近傍に負圧が発生するように適宜決定される。
【0036】
吹付けパイプ30A,30Bのそれぞれにおける気体の吹付け口31A,31Bは、それぞれ、第2端23に形成された溶融金属M1の吐出口21と対向する側から見て、吐出口21よりも後方に配置されている。換言すると、吹付け口31A,31Bは、それぞれ、管T1から溶融槽10に向かう方向D2から見て、吐出口21よりも後方に配置されている。
【0037】
前記構成によれば、吹付けパイプ30A,30Bの吹付け口31A,31Bからの気体が、吸上げパイプ20の吐出口21の端面に吹き付けられることを防ぐことができる。これにより、吸上げパイプ20の吐出口21の端面が気体によって冷やされることを抑制し、吸上げパイプ20の第2端23の近傍で溶融金属M1が固まることを抑制することができる。また、このように吹付け口31A,31Bを配置することで第2端23の近傍に負圧を安定して確実に生じさせることができる。
【0038】
吹付けパイプ30A,30Bは、それぞれ、途中で湾曲した形状を有する。つまり、吹付けパイプ30A,30Bは、それぞれ、溶融槽10に向かって延伸し、途中で湾曲することにより、吐出口21に向かって延伸する。これにより、吹付けパイプ30A,30Bを溶融槽10に接触しないように配置することができる。
【0039】
吹付けパイプ30A,30Bの内径は、吸上げパイプ20の内径以下であることが好ましい。これは、吹付けパイプ30A,30B内を流れる気体の量と、吸上げパイプ20内を流れる溶融金属M1の量と、を考慮する場合に、溶融金属吐出装置1を設備的に実現しやすくなるためである。なお、
図2において、溶融金属吐出装置1は、2本の吹付けパイプ30A,30Bを備えているが、1本または3本以上の吹付けパイプを備えていてもよい。
【0040】
荷重計40は、溶融槽10の下側に設けられており、溶融槽10に貯留された溶融金属M1と溶融槽10との合計重量を測定する。荷重計40としては、例えば、ロードセルを使用することができる。移動部50は、吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bに対する溶融槽10の相対位置を変更するために溶融槽10を移動させる。前記相対位置は、重力の方向G1(鉛直方向)に沿った相対位置である。
【0041】
吸上げパイプ20と吹付けパイプ30A,30Bとの位置関係は、吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bを支持する治具(図示せず)によって固定されている。移動部50としては、例えば、電動モータを含む電動シリンダを使用することができる。移動部50は、荷重計40の下側と接続されている。
【0042】
制御装置60は、荷重計40によって測定された前記合計重量の単位時間当たりの減少量が所定の範囲内に収まるように、移動部50を制御する。具体的に以下に説明する。制御装置60は、荷重計40と電気的に接続されており、荷重計40によって測定された前記合計重量の減少量を、管T1に吐出される溶融金属M1の吐出量として算出する。また、制御装置60は、溶融金属M1の吐出量が、別途、設定部(図示せず)によって設定された単位時間当たりの吐出量設定値となるように、移動部50による溶融槽10の移動量を制御する。
【0043】
前記構成によれば、対象物としての管T1に吐出される溶融金属M1の吐出量を略一定にすることができる。このため、例えば、回転している対象物としての管T1に溶融金属M1を吐出する場合、対象物としての管T1に対して均一に溶融金属M1を付着させることができる。
【0044】
なお、移動部50は、溶融槽10を移動させることが好ましいが、本発明は、溶融槽10を移動させる装置に適用範囲が限定されるものではなく、吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bを移動させる装置にも適用されるものである。また、本発明は、吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bと、溶融槽10と、の両方を移動させる装置にも適用されるものである。つまり、移動部50は、吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bに対する溶融槽10の相対位置を変更するために、溶融槽10と、吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bと、の少なくとも一方を移動させるものである。
【0045】
移動部50が吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bを移動させるものである場合、移動部50は、吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bを支持する治具(図示せず)に接続される。また、この場合、制御装置60は、溶融金属M1の吐出量が所定の値となるように、移動部50による吸上げパイプ20及び吹付けパイプ30A,30Bの移動量を制御する。
【0046】
以上により、溶融金属吐出装置1の構成によれば、吸上げパイプ20の第2端23に向かって気体が吹付けられることにより第2端23の近傍に負圧が生じるため、吸上げパイプ20によって溶融金属M1を吸上げて溶融槽10の外部に溶融金属M1を吐出することができる。よって、簡易な機構にて溶融金属M1を対象物に吐出することができる。
【0047】
また、溶融金属M1の吐出と気体の吹付けとが同時に行われるため、溶融金属M1と気体とが混合しやすくなり、溶融金属M1を微細化しやすくすることができる。さらに、溶融金属M1を管T1の外面に吐出することにより管T1の外面に皮膜を形成する皮膜形成装置100を簡易な機構によって実現することができる。
【0048】
(変形例)
次に、溶融金属吐出装置1の変形例について、
図3に基づいて説明する。
図3は、
図2に示す皮膜形成装置100が備える溶融金属吐出装置1の変形例の構成を示す模式図である。
図3では、移動部50及び制御装置60を省略している。ここで、
図3に示す溶融金属吐出装置1の変形例を溶融金属吐出装置1Aと称する。溶融金属吐出装置1Aは、
図3に示すように、溶融金属吐出装置1と比べて、ヒーター70(加熱手段)を備える点が異なる。
【0049】
ヒーター70は、吸上げパイプ20の側面の少なくとも一部を覆っている。ヒーター70は、吸上げパイプ20を加熱する。前記構成によれば、吸上げパイプ20内の溶融金属M1も加熱されることになるため、吸上げパイプ20内の溶融金属M1が固まることを防ぐことができる。ヒーター70は、溶融金属M1に接触しないように、吸上げパイプ20に対して配置されることが好ましい。
【0050】
溶融金属吐出装置1Aは、吸上げパイプ20を加熱する加熱手段として、ヒーター70に代えて、ガスバーナーまたは加熱されたエアー(気体の一例)を吐出する機構等を備えていてもよい。ガスバーナー及び加熱されたエアーを吐出する機構は、吸上げパイプ20の周囲の気体の温度を上昇させることにより、吸上げパイプ20を加熱するものである。
【0051】
また、溶融金属吐出装置1Aは、ヒーター70に代えて、吸上げパイプ20の少なくとも一部及び吹付けパイプ30A,30Bの少なくとも一部を包囲する箱状の包囲部(図示せず)を備えていてもよい。この場合、前記包囲部の内部に、ガスバーナーまたは加熱されたエアーを吐出する機構等で高温の気体を供給することにより、吸上げパイプ20を加熱する。
【0052】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、
図4に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図4は、本発明の実施形態2に係る溶融金属吐出装置1Bの構成を示す模式図である。
図4では、移動部50及び制御装置60を省略している。
図4において、点線L3で囲まれた図は、溶融金属吐出装置1Bの正面図であり、点線L4で囲まれた図は、溶融金属吐出装置1Bの平面図である。また、
図4における点線L3で囲まれた図において、溶融槽10から吹付けパイプ30Cに向かう方向を上方向とする。
【0053】
溶融金属吐出装置1Bは、
図4に示すように、溶融金属吐出装置1と比べて、吸上げパイプ20が吸上げパイプ20Aに変更されている点と、吹付けパイプ30A,30Bがそれぞれ吹付けパイプ30C,30Dに変更されている点と、が異なる。吸上げパイプ20Aは、途中で湾曲した形状を有する。つまり、吸上げパイプ20Aは、その第1端22Aから上方向に向かって延伸し、途中で湾曲する。これにより、吸上げパイプ20Aの湾曲箇所と、第1端22Aとは反対側の第2端23Aとの間の部分は、溶融金属M1を吐出する対象物である管T1に向かって延伸する。
【0054】
吹付けパイプ30C,30Dのそれぞれの吹付け口31C,31Dは、第2端23Aに向かうように配置されている。吹付けパイプ30C,30Dは、重力の方向G1と垂直な平面に沿って延伸している。また、吹付けパイプ30C,30Dは、
図4における点線L4で囲まれた図に示すように、上から見て、吹付けパイプ30C,30Dの延伸方向が、吸上げパイプ20Aの湾曲箇所と第2端23Aとの間の部分の延伸方向D3から傾斜するように配置されている。
【0055】
さらに、吹付けパイプ30C,30Dは、横方向から見て、第2端23Aに形成された溶融金属M1の吐出口21Aの中心位置と、吹付け口31C,31Dの中心位置とが一致するように配置されている。
【0056】
吸上げパイプ20Aの第2端23Aからの溶融金属M1は、管T1に対して吐出される。よって、溶融金属吐出装置1Bの構成では、管T1に対して溶融金属M1を横方向から吐出することができる。横方向とは、重力の方向G1と垂直な平面に沿った方向である。
【0057】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、
図5に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図5は、本発明の実施形態3に係る溶融金属吐出装置1Cの構成を示す模式図である。
図5では、移動部50及び制御装置60を省略している。
図5において、点線L5で囲まれた図は、溶融金属吐出装置1Cの正面図であり、点線L6で囲まれた図は、溶融金属吐出装置1Cの平面図である。また、
図5における点線L5で囲まれた図において、溶融槽10から吹付けパイプ30Eに向かう方向を上方向とする。
【0058】
溶融金属吐出装置1Cは、
図5に示すように、溶融金属吐出装置1と比べて、吸上げパイプ20が吸上げパイプ20Bに変更されている点と、吹付けパイプ30A,30Bがそれぞれ吹付けパイプ30E,30Fに変更されている点と、第2吹付けパイプ32を備えている点と、が異なる。
【0059】
吸上げパイプ20Bは、その第1端22Bから斜め上方向に延伸し、第1端22Bとは反対側の第2端23Bの端面が、上方向に延伸している。吸上げパイプ20Bの延伸方向と重力の方向G1とのなす角度は、例えば、45°である。つまり、第2端23Bの端面は、吸上げパイプ20Bの延伸方向に対して45°でカットされた端面である。吹付けパイプ30E,30Fは、重力の方向G1と垂直な平面に沿って延伸している。また、吹付けパイプ30E,30Fは、第2端23Bに対して、前述した吹付けパイプ30C,30Dと同様に配置されている。
【0060】
第2吹付けパイプ32は、吸上げパイプ20B及び吹付けパイプ30E,30Fよりも上方に配置されている。第2吹付けパイプ32の延伸方向は、
図5における点線L5で囲まれた図に示すように、水平方向から見て、吹付けパイプ30E,30Fの延伸方向と同一である。また、第2吹付けパイプ32の延伸方向は、
図5における点線L6で囲まれた図に示すように、上から見て、吸上げパイプ20Bの延伸方向と同一である。
【0061】
第2吹付けパイプ32は、溶融金属M1を吐出する対象物である管T1に向かって延伸する。第2吹付けパイプ32の吹付け口33は、管T1と対向している。これにより、溶融金属M1の広がりを抑え、溶融金属M1を管T1に十分に付着させることができる。このように、溶融金属吐出装置1Cの構成では、管T1に対して溶融金属M1を横方向から吐出することができる。横方向とは、重力の方向G1と垂直な平面に沿った方向である。
【0062】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。