特許 6874063 乗客コンベア

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6874063

(24)【登録日】2021年4月23日

(45)【発行日】2021年5月19日

(54)【発明の名称】乗客コンベア

(51)【国際特許分類】

   B66B 27/00 20060101AFI20210510BHJP

   B66B 31/00 20060101ALI20210510BHJP

   B66B 23/22 20060101ALI20210510BHJP

【ＦＩ】

   B66B27/00 C

   B66B31/00 A

   B66B23/22 G

【請求項の数】8

【全頁数】14

(21)【出願番号】特願2019-124172(P2019-124172)

(22)【出願日】2019年7月3日

(65)【公開番号】特開2021-8359(P2021-8359A)

(43)【公開日】2021年1月28日

【審査請求日】2019年7月3日

(73)【特許権者】

【識別番号】390025265

【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100076314

【弁理士】

【氏名又は名称】蔦田 正人

(74)【代理人】

【識別番号】100112612

【弁理士】

【氏名又は名称】中村 哲士

(74)【代理人】

【識別番号】100112623

【弁理士】

【氏名又は名称】富田 克幸

(74)【代理人】

【識別番号】100163393

【弁理士】

【氏名又は名称】有近 康臣

(74)【代理人】

【識別番号】100189393

【弁理士】

【氏名又は名称】前澤 龍

(74)【代理人】

【識別番号】100203091

【弁理士】

【氏名又は名称】水鳥 正裕

(72)【発明者】

【氏名】久下 敬輔

【審査官】 須山 直紀

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１７−０８１６６１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００９−１３７７４６（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１３−１３３２１７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１０−０９５３６１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１６−００５９８０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１５−０４８２０１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００７−２４６２６０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００４−３１５１３９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ６６Ｂ ２７／００

Ｂ６６Ｂ ２３／２２

Ｂ６６Ｂ ３１／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

無端状に連結された複数の踏段と、
前記踏段を走行させる駆動装置と、
少なくとも前記踏段の運転方向を乗客に視認可能に表示する表示部と、
前記表示部の視認可能な箇所に設置され、前記踏段の走行方向、起動、及び停止を少なくとも操作するための操作部と、
前記操作部の操作によって前記駆動装置を制御すると共に、前記表示部に少なくとも前記運転方向を表示する制御部と、
を有し、
前記操作部は、運転キースイッチを有し、前記運転キースイッチは、機械式自動復帰機能を有し、キーを前記運転キースイッチのシリンダの鍵穴に差し込んで、前記キーを、運転方向を指示する位置に回転させると、スプリングによって中立位置に前記シリンダが復帰し、
前記制御部は、乗客コンベアの運転状態を示す運行情報を記憶し、前記運転キースイッチの操作によって前記駆動装置を起動させ、また、前記運行情報を前記表示部に表示する、
乗客コンベア。

【請求項2】

前記踏段の両側に左右一対のスカートガードが設けられ、
左右一対の前記スカートガードから左右一対の欄干がそれぞれ立設され、
前記操作部が前記スカートガードの側面に設けられ、
前記表示部が前記スカートガードの正面に設けられている、
請求項１に記載の乗客コンベア。

【請求項3】

前記運行情報は、運転時間、運転回数、又は故障回数である、
請求項１に記載の乗客コンベア。

【請求項4】

前記制御部は、前記キーを、前記運転方向を指示する位置に回転させた状態が第１基準時間ａを超えないときは前記駆動装置を起動させ、また、前記第１基準時間ａを超えたときは、前記運行情報を前記表示部に表示する、
請求項１に記載の乗客コンベア。

【請求項5】

前記制御部は、前記キーを、前記運転方向を指示する位置に回転させた状態が第２基準時間ｂ（但し、ａ＜ｂである）を超えたときは、前記運行情報とは異なる運行情報を前記表示部に表示する、
請求項４に記載の乗客コンベア。

【請求項6】

前記操作部は、運転停止キースイッチを有し、
前記制御部は、前記運転停止キースイッチの操作によって前記駆動装置が停止、また、前記制御部に記憶された前記運行情報をリセットすると共に、前記運行情報をリセットする旨を前記表示部に表示する、
請求項１に記載の乗客コンベア。

【請求項7】

前記運転停止キースイッチは、機械式自動復帰機能を有し、前記キーを前記運転停止キースイッチのシリンダの鍵穴に差し込んで、停止を指示する位置に回転させると、スプリングによって中立位置に前記シリンダが復帰する、
請求項６に記載の乗客コンベア。

【請求項8】

前記制御部は、前記キーを前記運転停止キースイッチの前記シリンダの前記鍵穴に差し込んで、前記停止を指示する位置に回転させた状態が停止基準時間より長いときに、前記運行情報のリセットを実行する、
請求項７に記載の乗客コンベア。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。

【背景技術】

【0002】

従来、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいて、運転時間及び起動回数などの運行情報は、トラスの機械室内部にある制御盤に設けられたデジタルカウンタで表示している。乗客コンベアの管理者は、このような運行情報を知りたい場合には、乗客コンベアの乗降口にある乗降板を開け、機械室内部にある制御盤のデジタルカウンタを点検する必要がある。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２００５−１６２３８５号公報

【特許文献2】特開２００７−１６９０２３号公報

【特許文献3】特開２００９−１３７７４６号公報

【特許文献4】特開２０１１−０６３３８２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかし、運行情報を知るために、機械室内にある制御盤のデジタルカウンタを確認する作業は、非常に手間であるという問題点があった。

【0005】

そこで本発明の実施形態は、運行情報を簡単に確認できる乗客コンベアを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の実施形態は、無端状に連結された複数の踏段と、前記踏段を走行させる駆動装置と、少なくとも前記踏段の運転方向を乗客に視認可能に表示する表示部と、前記表示部の視認可能な箇所に設置され、前記踏段の走行方向、起動、及び停止を少なくとも操作するための操作部と、前記操作部の操作によって前記駆動装置を制御すると共に、前記表示部に少なくとも前記運転方向を表示する制御部と、を有し、前記操作部は、運転キースイッチを有し、前記運転キースイッチは、機械式自動復帰機能を有し、キーを前記運転キースイッチのシリンダの鍵穴に差し込んで、前記キーを、運転方向を指示する位置に回転させると、スプリングによって中立位置に前記シリンダが復帰し、前記制御部は、乗客コンベアの運転状態を示す運行情報を記憶し、前記運転キースイッチの操作によって前記駆動装置を起動させ、また、前記運行情報を前記表示部に表示する、乗客コンベアである。

【図面の簡単な説明】

【0007】

【図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータの側面説明図。

【図2】エスカレータの下階の斜視図。

【図3】操作盤の正面図。

【図4】運行情報を表示している表示器の説明図。

【図5】リセットを行っているときの表示器の説明図。

【図6】エスカレータのブロック図。

【図7】運行情報の表示処理の第１のフローチャート。

【図8】運行情報の表示処理の第２フローチャート。

【図9】運行情報のリセット処理の第１のフローチャート。

【図10】運行情報のリセット処理の第２のフローチャート。

【発明を実施するための形態】

【0008】

以下、本発明の一実施形態のエスカレータ１０を図１〜図９を参照して説明する。

【0009】

（１）エスカレータ１０
エスカレータ１０について、図１を参照して説明する。図１はエスカレータ１０を側面から見た説明図である。

【0010】

エスカレータ１０の枠組みであるトラス１２が、建屋１の上階と下階に跨がって支持アングル２，３を用いて支持されている。

【0011】

トラス１２の上端部にある上階側の機械室１４内部には、踏段３０を走行させる駆動装置１８、駆動第１スプロケット２３、駆動第１スプロケット２３と同軸に固定された左右一対の駆動側の第１踏段スプロケット２４，２４、左右一対のベルトスプロケット２７，２７が設けられている。駆動装置１８は、モータ２０と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた駆動第２スプロケット２１と、モータ２０の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。駆動第２スプロケット２１と、駆動第２スプロケット２１より大径の駆動第１スプロケット２３には、無端状の駆動チェーン２２が架け渡されている。モータ２０が回転すると駆動チェーン２２が走行し、第１踏段スプロケット２４が回転する。左右一対の第１踏段スプロケット２４，２４と左右一対のベルトスプロケット２７，２７とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室１４の内部には、モータ２０やディスクブレーキなどを制御する制御部５０が設けられている。

【0012】

トラス１２の下端部にある下階側の機械室１６内部には、左右一対の従動側の第２踏段スプロケット２６が設けられている。上階側の第１踏段スプロケット２４と下階側の第２踏段スプロケット２６との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン２８，２８が架け渡されている。そして、左右一対の踏段チェーン２８，２８には、複数の踏段３０の車輪３０１が等間隔で取り付けられている。踏段３０の車輪３０１はトラス１２に固定された不図示の案内レールに沿って走行すると共に、第１踏段スプロケット２４の外周部にある凹部と第２踏段スプロケット２６の外周部にある凹部に係合して上下に反転する。また、車輪３０２はトラス１２に固定された案内レール２５を走行する。

【0013】

トラス１２の左右両側には、左右一対のスカートガード４４，４４と左右一対の欄干３６，３６が立設されている。欄干３６の上部に手摺りレール３９が設けられ、この手摺りレール３９に沿って手摺りベルト３８が移動する。欄干３６の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード４０が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード４２が設けられ、正面スカートガード４０，４２から手摺りベルト３８の出入口であるインレット部４６，４８がそれぞれ突出している。スカートガード４４は、欄干３６の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード４４，４４の間を踏段３０が走行する。上下階のスカートガード４４の内側面には、操作盤５２，５６、スピーカ５４，５８がそれぞれ設けられている。

【0014】

手摺りベルト３８は、上階側のインレット部４６から正面スカートガード４０内に侵入し、案内ローラ群６４を介してベルトスプロケット２７に架け渡され、その後、案内ローラ群６６を介してスカートガード４４内を移動し、下階側のインレット部４８から正面スカートガード４２外に表れる。そして、手摺りベルト３８は、ベルトスプロケット２７が第１踏段スプロケット２４と共に回転することにより踏段３０と同期して移動する。また、回転するベルトスプロケット２７に走行する手摺りベルト３８を押圧するための押圧部材６８を有する。

【0015】

上階側の機械室１４の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板３２が水平に設けられ、下階側の機械室１６の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板３４が水平に設けられている。乗降板３２の先端には櫛歯状のコム６０が設けられ、このコム６０から踏段３０が進出、又は、侵入する。また、乗降板３４にも櫛歯状のコム６２が設けられている。

【0016】

上階の左右一対の正面スカートガード４０，４０には乗客から視認可能なように表示器７０，７０が設けられ、下階の左右一対の正面スカートガード４２，４２にも表示器７２，７２が乗客から視認可能なようにそれぞれ設けられ、表示器７０，７２は、エスカレータ１０の運転方向（上昇、下降）を矢印で示し、進入禁止を「×」で示す。

【0017】

（２）操作盤５２，５６
次に、操作盤５２，５６について図２〜図５を参照して説明する。上階の操作盤５２を操作している管理者から表示器７０が視認可能であり、また、下階の操作盤５６を操作している管理者から表示器７２が視認可能である。なお、上階と下階に設けられている操作盤５２と下階に設けられている操作盤５６の構造は同じ構造であるため、上階に設けられている操作盤５２について説明する。

【0018】

操作盤５２には、図３に示すように、運転キースイッチ７４と運転停止キースイッチ７６が並んで設けられている。

【0019】

図３に示すように、運転キースイッチ７４は、機械式自動復帰機能を有し、管理者が、運転キースイッチ７４のシリンダ７４ａの鍵穴７４ｂにキー４を差し込んで、上昇又は下降の位置にキー４を回転させることによりシリンダ７４ａが回転する。そして、キー４は中立の位置、すなわち鍵穴７４ｂが真っ直ぐ立つ位置に、スプリングバックによって自動的に復帰し、キー４も引き抜ける。制御部５０は、図２に示すように、エスカレータ１０が上昇しているときは上階の表示器７０には進入禁止を示す「×」を表示し、下階の表示器７２に上昇を意味する矢印のマークを表示する。逆に、エスカレータ１０が下降しているときは上階の表示器７０に下降を示す矢印を表示し、下階の表示器７２に進入禁止を示す「×」を表示する。

【0020】

管理者が、運転キースイッチ７４の鍵穴７４ｂにキー４を差し込んでシリンダ７４ａを左側に回転させ、その後に第１基準時間ａ（秒）以内に自動的に復帰させると、制御部５０は、モータ２０が上昇方向に回転させる。次に、管理者がキー４の位置を、第１基準時間ａ秒を超えて第２基準時間ｂ（秒）保持していると、図４に示すように、制御部５０は表示器７０，７２に運行情報１（運転時間）を表示する。次に、管理者が第２基準時間ｂ秒を超えてキー４の位置を第３基準時間ｃ（秒）保持すると、図４に示すように、制御部５０は運行情報２（運転回数）を表示する。次に、管理者が第３基準時間ｃ秒を超えてキー４の位置を第４基準時間ｄ（秒）保持すると、図４に示すように、制御部５０は運行情報４（故障回数）を表示する。但し、０＝＜ａ＜ｂ＜ｃ＜ｄである。

【0021】

図３に示すように、運転停止キースイッチ７６は、機械式自動復帰機能を有し、運転停止キースイッチ７６のシリンダ７６ａの鍵穴７６ｂにキー４を差し込んで、管理者が「ブザー」の方向に回転させ、その後に「停止」の位置に逆回転させる。そして、キー４は中立の位置にスプリングバックにより復帰し、キー４も引き抜ける。制御部５０は、運転停止キースイッチ７６が操作されると、スピーカ５４，５８から停止ブザーを鳴らした後、エスカレータ１０を停止させ、表示器７０，７２の表示を終了する。

【0022】

制御部５０は、運転停止キースイッチ７６の鍵穴７６ｂにキー４を差し込んでシリンダ７６ａを停止位置に回転させた場合には、モータ２０をまず停止させる。管理者がキー４をその停止位置で、停止確認時間ｘ（秒）保持した場合には、図５に示すように、表示器７０，７２に運行情報をリセットするかの確認を表示し、引き続き停止基準時間ｙ（秒）（但し、ｙ＞ｘである）保持した場合には運行情報のデータをリセット（削除）する。制御部５０は、表示器７０，７２にリセット完了を表示し、その後に消灯させる。

【0023】

（３）エスカレータ１０の電気的構成
次に、エスカレータ１０の電気的構成について図６のブロック図を参照して説明する。

【0024】

制御部５０には、運行情報を記憶する記憶部７８が設けられている。この記憶部７８は、メモリー、その他の記憶装置から構成されている。制御部５０には、モータ２０の駆動回路８０、安全装置８２、上階の操作盤５２、下階の操作盤５６、上階の表示器７０、下階の表示器７２、上階のスピーカ５４、下階のスピーカ５８が接続されている。

【0025】

安全装置８２としては、スカートガード４４に設けられたスカートガード挟まれ検出装置、インレット部４６，４８に設けられたインレット挟まれ検出装置、案内レール２５に設けられた踏段浮き上がり検出装置、踏段チェーン切断検出装置、非常停止ボタンなどである。スカートガード挟まれ検出装置とは、スカートガード４４と踏段３０の間に異物（例えば、服や荷物）が挟まれたことを検出する装置であり、インレット挟まれ検出装置とは、手摺りベルト３８が引き込まれるインレット部４６又はインレット部４８に異物（例えば、乗客の手や荷物）が手摺りベルト３８と同時に引き込まれたときに検出する装置である。

【0026】

（４）運行情報の表示処理
制御部５０が運行情報を表示する処理について図４と図７、図８のフローチャートを参照して説明する。なお、下記ではエスカレータ１０を上昇する場合について説明するが、下降する場合についても同様である。また、図４の表示器７０，７２の説明において、参考のためにフローチャートのステップ番号を記載している。

【0027】

ステップＳ１において、運転キースイッチ７４のシリンダ７４ａの鍵穴７４ｂにキー４が差し込まれ、上昇側に回されるとステップＳ２に進み（ｙの場合）、回されない場合にはステップＳ１の状態を続ける（ｎの場合）。

【0028】

ステップＳ２において、制御部５０が、内蔵しているタイマのカウントを開始する。そしてステップＳ３に進む。

【0029】

ステップＳ３において、制御部５０は、タイマカウントが第１基準時間ａ秒を超えたか否かを判断し、超えた場合にはステップＳ１０に進み（ｙの場合）、超えていない場合にはステップＳ４に進む（ｎの場合）。

【0030】

ステップＳ４において、キー４が中立の位置に戻っていればステップＳ５に進み（ｙの場合）、戻っていなければステップＳ３に戻る（ｎの場合）。

【0031】

ステップＳ５において、制御部５０は、タイマカウントを停止させ、カウントをリセットし、ステップＳ６に進む。

【0032】

ステップＳ６において、エスカレータ１０が、上昇運転中の場合には運行情報を表示する処理を終了するかステップＳ１に戻り（ｙの場合）、停止している場合にはステップＳ７に進む（ｎの場合）。

【0033】

ステップＳ７において、制御部５０は、停止中のため、全ての安全装置８２が正常な場合にはステップＳ８に進み（ｙの場合）、安全装置８２の１つが作動している場合には運行情報を表示する処理を終了するかステップＳ１に戻る（ｎの場合）。

【0034】

ステップＳ８において、全ての安全装置８２が正常なため、制御部５０は、エスカレータ１０の上昇運転を開始し、ステップＳ９に進む。

【0035】

ステップＳ９において、制御部５０は、下階の表示器７２に図２に示すように上昇を示す矢印を示し、上階の表示器７２に進入禁止の×マークを表示し、運行情報を表示する処理を終了するかステップＳ１に戻る。

【0036】

ステップＳ１０において、キー４が第１基準時間ａ秒以上保持されているため、制御部５０は、表示器７０，７２に運行情報１（上昇の運転時間）を表示し、ステップＳ１１に進む。すなわち、図４に示すように「ＵＰ Ｔｉｍｅ １２３４」と表示する。このときに、運転時間の桁数が多く、表示器７０，７２の１画面に表示しきれない場合には、スクロール表示又は文字を縮小して表示する。

【0037】

ステップＳ１１において、制御部５０のタイマカウントが第２基準時間ｂ秒を超えた場合にはステップＳ１５に進み（ｙの場合）、超えていない場合にはステップＳ１２に進む（ｎの場合）。

【0038】

ステップＳ１２において、キー４が中立に戻っている場合には、制御部５０は、ステップＳ１３に進み（ｙの場合）、中立に戻っていない場合にはステップＳ１１に戻る（ｎの場合）。

【0039】

ステップＳ１３において、制御部５０は、表示器７０，７２に表示されている運行情報１を消灯させ、ステップＳ１４に進む。すなわち、図４に示すように全て消灯する。

【0040】

ステップＳ１４において、制御部５０は、タイマカウントを停止してリセットし、運行情報を表示する処理を終了するかステップＳ１に戻る。

【0041】

ステップＳ１５において、キー４が第２基準時間ｂ秒以上保持されているため、制御部５０は、表示器７０，７２に運行情報２（上昇運転回数）を表示し、ステップＳ１６に進む。すなわち、図４に示すように「ＵＰ Ｃｏｕｎｔ ８９０」と表示する。このときに、運転回数の桁数が多く、表示器７０，７２の１画面に表示しきれない場合には、スクロール表示又は文字を縮小して表示する。

【0042】

ステップＳ１６において、制御部５０のタイマカウントが第３基準時間ｃ秒を超えた場合にはステップＳ２０に進み（ｙの場合）、超えていない場合にはステップＳ１７に進む（ｎの場合）。

【0043】

ステップＳ１７において、キー４が中立に戻っている場合には、制御部５０は、ステップＳ１８に進み（ｙの場合）、中立に戻っていない場合にはステップＳ１６に戻る（ｎの場合）。

【0044】

ステップＳ１８において、制御部５０は、表示器７０，７２に表示されている運行情報２を消灯させ、ステップＳ１９に進む。すなわち、図４に示すように全て消灯する。

【0045】

ステップＳ１９において、制御部５０は、タイマカウントを停止してリセットし、運行情報を表示する処理を終了するかステップＳ１に戻る。

【0046】

ステップＳ２０において、キー４が第３基準時間ｃ秒以上保持されているため、制御部５０は、表示器７０，７２に運行情報３（上昇運転中の故障回数）を表示し、ステップＳ２１に進む。すなわち、図４に示すように「ＥＲ Ｃｏｕｎｔ １６」と表示する。

【0047】

ステップＳ２１において、制御部５０のタイマカウントが第４基準時間ｄ秒を超えた場合にはステップＳ２５に進み（ｙの場合）、超えていない場合にはステップＳ２２に進む（ｎの場合）。

【0048】

ステップＳ２２において、キー４が中立に戻っている場合には、制御部５０は、ステップＳ２３に進み（ｙの場合）、中立に戻っていない場合にはステップＳ２１に戻る（ｎの場合）。

【0049】

ステップＳ２３において、制御部５０は、表示器７０，７２に表示されている運行情報３を消灯させ、ステップＳ２４に進む。すなわち、図４に示すように全て消灯する。

【0050】

ステップＳ２４において、制御部５０は、タイマカウントを停止してリセットし、運行情報を表示する処理を終了するかステップＳ１に戻る。

【0051】

ステップＳ２５において、制御部５０は、タイマのカウントａ秒に再セットし、ステップＳ３に戻る。これは、運転キースイッチ７４においてキー４が操作し続けられた状態であるため、表示を再び運行情報１に戻し、表示をループさせる。

【0052】

以上により、管理者が運転キースイッチ７４の鍵穴７４ｂにキー４を差し込んで、上昇側に回すことにより、エスカレータ１０を上昇運転させるだけでなく、回したキー４を保持した時間に応じて異なる運行情報を表示器７０，７２の表示させることができる。そして管理者は、操作盤５２，５６の側にある表示器７０，７２に運行情報が表示されているため、直ちにその情報を把握できる。

【0053】

（５）運行情報のリセット処理
制御部５０に記憶されている運行情報をリセット（削除）する場合について図５と図９、図１０のフローチャートを参照して説明する。運行情報のリセットを行うときに表示器７０，７２には、運行情報のリセットを行うことを表す「ＤＥＬ」と共に、その下方にプログレスバー７１が表示される。このプログレスバー７１は、リセットが実際に実行開始されるまでの残り時間を示し、図５においてはプログレスバー７１が全て黒色になるとリセットが実行開始されることを示す。

【0054】

ステップＳ１０１において、管理者によって運転停止キースイッチ７６の鍵穴７６ｂにキー４が差し込まれ、キー４が回された場合にはステップＳ１０２に進み（ｙの場合）、回されていない場合にはステップＳ１０１の状態を続ける（ｎの場合）。

【0055】

ステップＳ１０２において、エスカレータ１０が上昇又は下降運転中の場合にはステップＳ１０３に進み（ｙの場合）、停止している場合にはステップＳ１０５に進む（ｎの場合）。

【0056】

ステップＳ１０３において、制御部５０は、エスカレータ１０の運転を停止させ、ステップＳ１０４に進む。

【0057】

ステップＳ１０４において、制御部５０は、表示器７０，７２に表示している運転方向の矢印と進入禁止の×を消灯し、ステップＳ１０５に進む。

【0058】

ステップＳ１０５において、制御部５０は、エスカレータ１０が停止をしてから内蔵されているタイマのカウントを開始し、ステップＳ１０６に進む。このタイマは、管理者がエスカレータ１０の停止だけを目的としているのか、又はエスカレータ１０の停止と共に運行情報のリセットも目的としているかを確認するための停止確認時間ｘと停止基準時間ｙ（但し、ｙ＞ｘである）をカウントする。

【0059】

ステップＳ１０６において、制御部５０は、タイマカウントが停止確認時間ｘ秒超えた場合にはステップＳ１０９に進み（ｙの場合）、超えていない場合にはステップＳ１０７に進む（ｎの場合）。

【0060】

ステップＳ１０８において、キー４が中立に戻っていればステップＳ１０８に進み、戻っていなければステップＳ１０６に戻る（ｎの場合）。すなわち、キー４が中立に戻っていれば、管理者は、エスカレータ１０を単に停止させるだけで、運行情報をリセットする意志がないと判断できる。

【0061】

ステップＳ１０７において、管理者はエスカレータ１０を単に停止させるだけであり、既にエスカレータ１０は停止しているため、制御部５０は、タイマの停止確認時間のカウントを停止してリセットし、終了する。

【0062】

ステップＳ１０９において、タイマカウントが停止確認時間ｘ秒超えているため、タイマは引き続きカウントを続ける。このときに管理者は、エスカレータ１０を単に停止させるだけでなく運行情報もリセットする意志があると判断できるため、制御部５０は、表示器７０，７２に運行情報をリセット確認（データをリセットして良いか否かの確認）の画面を表示し、ステップＳ１１０に進む。このときに図５に示すように、「ＤＥＬ？」と表示し、また、この運行情報のリセット確認の画面と共にプログレスバーを表示し、運行情報のリセットが実行開始されるまでの時間を視覚的に表示する。すなわち、プログレスバー７１の黒色部分が多くなるほど、リセット実行までの時間が近づいていることを視覚的にわかるように表示している。

【0063】

ステップＳ１１０において、タイマのカウントが停止基準時間ｙ秒超えた場合にはステップＳ１１４に進み（ｙの場合）、超えていない場合にはステップＳ１１１に進む（ｎの場合）。タイマカウントが停止基準時間ｙ秒に到達するとプログレスバー７１は全て黒色部分となり、リセットの実行が開始されることを視覚的にわかるように表示している。

【0064】

ステップＳ１１１において、制御部５０は、キー４が中立に戻っていればステップＳ１１２に進み（ｙの場合）、戻っていなければステップＳ１１０に戻る（ｎの場合）。すなわち、キー４が中立に戻っていれば、管理者は、エスカレータ１０を単に停止させるだけで、運行情報をリセットする意志がないと判断できる
ステップＳ１１２において、キー４が中立に戻っているため制御部５０は表示器７０，７２のリセット確認の画面を消灯し、ステップＳ１１３に進む。すなわち、図５に示すように、全て消灯する。

【0065】

ステップＳ１１３において、制御部５０は、タイマカウントを停止してリセットし、終了する。

【0066】

ステップＳ１１４において、タイマカウントが停止基準時間ｙ秒超えているため、管理者は、エスカレータ１０を単に停止させるだけでなく、運行情報もリセットする意志があると判断できるので、制御部５０はタイマカウントを停止し、タイマカウントをリセットし、ステップＳ１１５に進む。なお、プログレスバー７１は全て黒色部分である。

【0067】

ステップＳ１１５において、制御部５０は、全ての運行情報のデータのリセット（削除）の実行を開始し、ステップＳ１１６に進む。図５に示すように運行情報のリセット実行の画面と共にプログレスバーが増加し、リセット完了までの残り時間を表示する。

【0068】

ステップＳ１１６において、表示器７０，７２によって、リセット完了の画面を表示しステップＳ１１７に進む。すなわち、図５に示すように、「ＤＥＬ！」と表示する。なお、プログレスバー７１は全て黒色部分のままである。

【0069】

ステップＳ１１７において、制御部５０はキー４が中立に戻っていればステップＳ１１８に進み（ｙの場合）、戻っていなければステップＳ１１７を続ける（ｎの場合）。

【0070】

ステップＳ１１８において、制御部５０は、キー４が中立に戻っているため、表示器７０，７２に表示されているリセット完了の画面を消灯し、終了する。すなわち、図５に示すように、全て消灯する。

【0071】

以上により、運行情報をリセットする場合には、運転停止キースイッチ７６をキー４で回転させ、まず、エスカレータ１０を停止させた後、その位置でキー４が保持されているときに限って、運行情報をリセットしてよいか否かを表示器７０，７２で表示し、その後さらに停止位置でキー４が保持されている場合にのみ運行情報をリセットし、表示器７０，７２にリセット完了の画面を表示させる。

【0072】

（６）効果
本実施形態によれば、管理者は、上昇又は下降している場合の運転時間、運転回数、故障回数を知るために、運転キースイッチ７４の鍵穴７４ｂにキー４を差し込み、上昇又は下降位置で所定時間以上保持させるだけで、表示器７０，７２に表示できる。この場合に、操作盤５２から管理者が視認可能な箇所には表示器７０、操作盤５６から管理者が視認可能な箇所には表示器７２があるため、運転キースイッチ７４を操作しながら管理者は表示器７０，７２を簡単に確認できる。

【0073】

また、上昇における運行情報と下降における運行情報をキー４の回転方向で簡単に切り換え表示できる。

【0074】

また、運行情報をリセットする場合には、運転停止キースイッチ７６にキー４を差し込んで、回転させ、停止確認時間以上保持していると、リセットをして良いかの確認を表示器７０，７２に表示され、その後さらにその位置でキー４を保持していると運行情報がリセットされる。そのため、誤って運行情報をリセットしない。また、簡単に運行情報をリセットすることができる。

【0075】

（７）変更例
上記実施形態では、運行情報として、上昇又は下降における運転時間、運転回数、故障回数を示したが、これ以外の運行情報を表示してもよい。

【0076】

また、上記実施形態では、運転時間をＴｉｍｅで表示し、運転回数をＣｏｕｎｔで表示しているが、両者の区別を文字の色の変更で表現してもよい。

【0077】

また、運行情報を表示器７０，７２で表示させるだけでなく、音声合成装置によりスピーカ５４，５８から出力してもよい。

【0078】

また、上記実施形態では、運行情報のリセットの確認画面を「ＤＥＬ？」で表示し、リセットの実行画面を「ＤＥＬ！」と表示しているが、両者の区別を文字の色の変更で行ってもよい。

【0079】

また、上記実施形態では、リセット実行までの残り時間は図５に示すようにプログレスバー７１で行ったが、これに代えて数字によるカウントダウンで表示してもよい。

【0080】

また、上記実施形態では、運行情報は、上階と下階の表示器７０，７２に同時に表示したが、これに代えてキーが操作された階（例えば上階）の表示器７０のみで表示を行ってもよい。

【0081】

また、上記実施形態では、３つの運行情報を表示させたが、これに代えて４つ以上の運行情報を表示する場合には、ステップＳ１０〜ステップＳ１４の処理を、ステップＳ２４に続けて行えば任意の数の表示画面に対応できる。

【0082】

また、上記実施形態では、運行情報の表示処理において、キー４を中立に戻すことで表示中の運行情報の表示を消灯しているが、中立に戻した後の数秒間は表示を継続させてもよい。

【0083】

また、上記実施形態では、制御部５０にのみ運行情報を記憶させていたが、これに加えて記憶部７８の運行情報を無線で管理人などの携帯端末へ送信する機能を持たせてもよい。この場合の送信のタイミングとしては、例えば運行情報の表示処理を行っているときに管理者が持っている携帯端末に送信することが考えられる。

【0084】

また、上記実施形態では、エスカレータ１０で説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。

【0085】

上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

【符号の説明】

【0086】

１０・・・エスカレータ、２０・・・モータ、４０・・・正面スカートガード、４２・・・正面スカートガード、４４・・・スカートガード、５０・・・制御部、５２・・・操作盤、５６・・・操作盤、７０・・・表示器、７２・・・表示器、７４・・・運転キースイッチ、７６・・・運転停止キースイッチ、７８・・・記憶部、８０・・・駆動回路、８２・・・安全装置

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】