特許第6874090号(P6874090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874090
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】組織修復のための改善された把持
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-188546(P2019-188546)
(22)【出願日】2019年10月15日
(62)【分割の表示】特願2017-532775(P2017-532775)の分割
【原出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2020-32197(P2020-32197A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年11月1日
(31)【優先権主張番号】14/577,852
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507135788
【氏名又は名称】アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エフ・ウェイ
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−514307(JP,A)
【文献】 特表2002−520125(JP,A)
【文献】 特表2008−517732(JP,A)
【文献】 特表2008−538937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61B 17/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁の弁葉を固定するための装置であって、
遠位端を有する送達カテーテルと、
前記遠位端に着脱可能に取り付けられた固定インプラントと
を備え、
前記固定インプラントは、
開位置と閉位置との間で移動可能な第1および第2の遠位要素であって、各遠位要素は、開位置において前記固定インプラントの中心から外向きに延在する、第1および第2の遠位要素と、
前記第1の遠位要素に連結され、前記開位置において前記固定インプラントの中心に向かって内向きに延びる第1の保持要素と、
前記第2の遠位要素に連結され、前記開位置において前記固定インプラントの中心に向かって延びる第2の保持要素と、
記第1の保持要素との間で前記心臓弁の第1の弁葉を捕捉するように移動可能な第1の近位要素と、
記第2の保持要素との間で前記心臓弁の第2の弁葉を捕捉するように移動可能な第2の近位要素と
を備え、
前記第1および第2の遠位要素は、前記閉位置で前記第1および第2の保持要素を覆うように構成されており、
前記第1の保持要素は、前記第1の遠位要素に回動的に連結され、前記第2の保持要素は、前記第2の遠位要素に回動的に連結される、心臓弁の弁葉を固定するための装置。
【請求項2】
前記第1の保持要素は、前記第1の遠位要素の中間点の遠位側位置まで少なくとも延在し、前記第2の保持要素は、前記第2の遠位要素の中間点の遠位側位置まで少なくとも延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の保持要素は、前記第1の遠位要素に対して180度まで回動するように構成され、前記第2の保持要素は、前記第2の遠位要素に対して180度まで回動するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
各近位要素が少なくとも1つのかえしを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1および第2の近位要素を上下させるように構成された少なくとも1つの縫い糸をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1および第2の遠位要素は、それぞれ、凹面を有する少なくとも一部を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1および第2の遠位要素の各々の前記凹面は、前記閉位置において中央部分を取り囲むように構成される、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年12月19日付けで出願された、米国特許出願第14/577,852号に対する優先権の利益を主張する。同出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般的には、医療的方法、装置、及びシステムに関する。特に、本発明は、身体組織の血管内、経皮的、又は低浸襲的な外科処置、例えば、組織接合又は弁修復のための方法、装置、及びシステムに関する。とりわけ、本発明は、心臓弁及び静脈弁の修復、並びに、低浸襲法による僧帽弁修復コンポーネントを取り除き、又は、同コンポーネントを無効にするための装置及び方法に関する。
【0003】
身体組織の外科的修復は、多くの場合、組織接合及び接合した配置でのこのような組織の固定を含む。弁を修復する場合には、組織接合は、弁の弁葉を、例えば、弁葉を固定し又は固着することにより維持され得る治療的配置に接合することを含む。このような接合は、僧帽弁に最も一般的に発生する弁閉鎖不全を治療するのに用いることができる。
【0004】
僧帽弁の弁閉鎖不全は、左心室から不全僧帽弁を通して、心臓の左心房への逆流により特徴付けられる。心臓収縮(心収縮期)の正常なサイクル中に、僧帽弁は、酸素化血液が左心房内に逆流するのを防止するためのチェック弁として機能する。この方法では、酸素化血液は、大動脈弁を通して、大動脈内に送られる。僧帽弁の弁閉鎖不全は、心臓のポンプ効率を著しく低下させ、患者を重篤で進行性の心不全のリスクにさらすおそれがある。
【0005】
僧帽弁の弁閉鎖不全は、僧帽弁又は左心室壁における数多くの種々の機械的異常により生じ得る。弁の弁葉、乳頭筋に弁葉を結合させている弁腱、乳頭筋自体、又は左心室壁が、傷害される、又は、他の状態で機能不全になるおそれがある。一般的には、僧帽弁輪は、傷害され、広げられ、又は弱められ、左心室の高圧に対して十分に閉じる僧帽弁の能力を制限してしまうおそれがある。
【0006】
僧帽弁の弁閉鎖不全に最も一般的な処置は、弁の置換又は弁葉の修復および弁輪の再構築による。後者は、一般的には、弁輪形成術と呼ばれる。対向する弁の弁葉の隣接する部分同士を縫合することによる僧帽弁修復のための1つの技術は、「ボウ−タイ」又は「エッジ−ツー−エッジ」技術と呼ばれる。これら全ての技術は効果的であり得るが、これらは、通常、患者の胸が典型的には胸骨切開術により開かれ、患者が心肺バイパスに置かれる開胸手術による。胸を開き、患者をバイパスに置くことの両方の必要性は、外傷的であり、高い死亡率及び疾病率に関連している。
【0007】
一部の患者では、固定装置が、低浸襲技術を使用して、心臓内に導入され得る。固定装置は、対向する弁の弁葉同士の隣接する部分を保持することができ、僧帽弁の弁閉鎖不全を減少させることができる。僧帽弁の前尖及び後尖の弁葉同士をクリップ留めするのに使用される1つのこのような装置は、Abbott Vascular,Santa Clara,California,USAにより販売されている、MitraClip(R)固定装置である。
【0008】
背景技術の説明
処置部位において組織及び臓器を接合させ、修復するための多くの技術が存在する。例えば、僧帽弁の弁閉鎖不全を処置するために、僧帽弁の弁葉を固定し、修正するための低浸襲性及び経皮的な技術は、国際公開第98/35638号パンフレット;国際公開第99/00059号パンフレット;国際公開第99/01377号パンフレット;及び国際公開第00/03759号パンフレット;国際公開第2000/060995号パンフレット;国際公開第2004/103162号パンフレットに記載されている。Maisano et al.(1998)Eur.J.Cardiothorac.Surg.13:240−246;Fucci et al.(1995)Eur.J.Cardiothorac.Surg.9:621−627;及びUmana et al.(1998)Ann.Thorac.Surg.66:1640−1646には、弁閉鎖不全を減らすために対向する弁の弁葉の端部同士が縫合される「エッジ−ツー−エッジ」又は「ボウ−タイ」の僧帽弁修復を行うための開胸手術が記載されている。Dec and Fuster(1994)N.Engl.J Med.331:1564−1575及びAlvarez et al.(1996)J.Thorac.Cardiovasc.Surg.112:238−247は、広がった心筋症の性質及び同心筋症の処置を議論したレビュー文献である。
【0009】
僧帽弁輪形成術は、下記刊行物:Bach and Bolling(1996)Am.J.Cardiol.78:966−969;Kameda et al.(1996)Ann.Thorac.Surg.61:1829−1832;Bach and Bolling(1995)Am.Heart J.129:1165−1170;及びBolling et al.(1995)109:676−683に記載されている。僧帽弁修復のための直線的な部分弁輪形成術は、Ricchi et al.(1997)Ann.Thorac.Surg.63:1805−1806に記載されている。三尖弁の弁輪形成術は、McCarthy and Cosgrove(1997)Ann.Thorac.Surg.64:267−268;Tager et al.(1998)Am.J.Cardiol.81:1013−1016;及びAbe et al.(1989)Ann.Thorac.Surg.48:670−676に記載されている。
【0010】
経皮的経管心臓修復術は、Park et al.(1978)Circulation 58:600−608;Uchida et al.(1991)Am.Heart J.121:1221−1224;及びAli Khan et al.(1991)Cathet.Cardiovasc.Diagn.23:257−262に記載されている。血管内心臓弁置換は、米国特許第5840081号明細書;米国特許第5411552号明細書;米国特許第5554185号明細書;米国特許第5332402号明細書;米国特許第4994077号明細書;及び米国特許第4056854号明細書に記載されている。米国特許第3671979号明細書には、人工心臓弁の一時的な置換のためのカテーテルが記載されている。
【0011】
他の経皮的及び血管内心臓修復術は、米国特許第4917089号明細書;米国特許第4484579号明細書;及び米国特許第3874338号明細書;並びに国際公開第91/01689号パンフレットに記載されている。
【0012】
胸腔鏡下及び他の低浸襲性心臓弁修復及び置換術は、米国特許第5855614号明細書;米国特許第5829447号明細書;米国特許第5823956号明細書;米国特許第5797960号明細書;米国特許第5769812号明細書;及び米国特許第5718725号明細書に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第98/35638号
【特許文献2】国際公開第99/00059号
【特許文献3】国際公開第99/01377号
【特許文献4】国際公開第2000/03759号
【特許文献5】国際公開第2000/060995号
【特許文献6】国際公開第2004/103162号
【特許文献7】米国特許第5840081号明細書
【特許文献8】米国特許第5411552号明細書
【特許文献9】米国特許第5554185号明細書
【特許文献10】米国特許第5332402号明細書
【特許文献11】米国特許第4994077号明細書
【特許文献12】米国特許第4056854号明細書
【特許文献13】米国特許第3671979号明細書
【特許文献14】米国特許第4917089号明細書
【特許文献15】米国特許第4484579号明細書
【特許文献16】米国特許第3874338号明細書
【特許文献17】国際公開第91/01689号
【特許文献18】米国特許第5855614号明細書
【特許文献19】米国特許第5829447号明細書
【特許文献20】米国特許第5823956号明細書
【特許文献21】米国特許第5797960号明細書
【特許文献22】米国特許第5769812号明細書
【特許文献23】米国特許第5718725号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Maisano et al.(1998)Eur.J.Cardiothorac.Surg.13:240−246
【非特許文献2】Fucci et al.(1995)Eur.J.Cardiothorac.Surg.9:621−627
【非特許文献3】Umana et al.(1998)Ann.Thorac.Surg.66:1640−1646
【非特許文献4】Dec and Fuster(1994)N.Engl.J Med.331:1564−1575
【非特許文献5】Alvarez et al.(1996)J.Thorac.Cardiovasc.Surg.112:238−247
【非特許文献6】Bach and Bolling(1996)Am.J.Cardiol.78:966−969
【非特許文献7】Kameda et al.(1996)Ann.Thorac.Surg.61:1829−1832
【非特許文献8】Bach and Bolling(1995)Am.Heart J.129:1165−1170
【非特許文献9】Bolling et al.(1995)109:676−683
【非特許文献10】Ricchi et al.(1997)Ann.Thorac.Surg.63:1805−1806
【非特許文献11】McCarthy and Cosgrove(1997)Ann.Thorac.Surg.64:267−268
【非特許文献12】Tager et al.(1998)Am.J.Cardiol.81:1013−1016
【非特許文献13】Abe et al.(1989)Ann.Thorac.Surg.48:670−676
【非特許文献14】Park et al.(1978)Circulation 58:600−608
【非特許文献15】Uchida et al.(1991)Am.Heart J.121:1221−1224
【非特許文献16】Ali Khan et al.(1991)Cathet.Cardiovasc.Diagn.23:257−262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示には、血管内送達を目的とし、ヒトの患者における僧帽弁異常を処置するのに使用するための装置が記載されている。ヒトの心臓の僧帽弁は、心房側、心室側、前尖の弁葉、後尖の弁葉、及び弁葉間の開口を有する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一実施形態において、装置は、本体と、一対の近位要素と、一対の遠位要素とを含み得る。各近位要素は、第1端において、本体に、本体の反対側において連結しており、第2自由端を有する。各近位要素は、その第1端と第2端との間に、近位係合面を有する。各近位係合面は、心房側において、僧帽弁の隣接する弁葉の一部を接合させ、係合するように構成されている。各近位係合面は、組織が近位要素の第1端に向かって動き、近位要素の第1端から離れる組織の動きに抵抗することを可能にするように構成されている近位保持要素も有する。
【0017】
各遠位要素は、第1端において、本体に、本体の反対側において回動的に連結しており、第2自由端を有する。各遠位要素は、その第1端と第2端との間に、遠位係合面を有する。各遠位係合面は、心室側において、僧帽弁の隣接する弁葉の一部を接合させ、係合するように構成されている。
【0018】
近位要素の第1端は、遠位要素の第1端と共同して、それらの間に前尖弁葉の一部を受容するための空間を形成している。近位要素の第2端は、遠位要素の第2端と共同して、それらの間に後尖弁葉の一部を受容するための空間を形成している。このような各空間は、開端と閉端とを有し、閉端は、頂点を形成している。
【0019】
装置は、遠位要素を、遠位要素が装置を送達するために折り畳まれた低輪郭の構成にある第1の位置と、遠位要素が装置を僧帽弁に対して位置させるための拡張された構成にある第2の位置と、遠位要素が心室側において僧帽弁の隣接する弁葉の一部に対する位置に固定されている第3の位置との間で選択的に動かすためのアクチュエータを含む。
【0020】
また、装置は、近位要素を、近位要素が装置を送達するために折り畳まれた低輪郭の構成にある第1の位置と、近位要素が心房側において僧帽弁の隣接する弁葉の一部に係合するために拡張された構成にある第2の位置との間で選択的に動かすためのアクチュエータも含む。
【0021】
また、各遠位要素は、遠位係合面に沿って位置している遠位保持要素を含むこともできる。各遠位保持要素は、装置が僧帽弁に対して位置した場合、対応する近位保持要素と共同して、僧帽弁の弁葉の自由端を捕捉するように構成されている。各保持要素は、摩擦要素と共同して、弁葉の主要な自由端が本体に向かう第1の方向に抵抗若しくは制限がほとんどなく又は抵抗若しくは制限なしに動き、本体から離れる反対方向への弁葉の自由端の動きに抵抗し又は同動きを防止するのを可能にするように構成されている。
【0022】
本開示のこれら及び他の目的及び特徴は、下記説明及び添付の特許請求の範囲から、より完全に明らかとなるであろうし、又は、以下で説明された本発明の実施形態の実施により習得されてもよい。
【0023】
本開示の上記及び他の利益及び特徴を更に明確にするために、本発明のより特定の説明が、添付の図面に例示されたその具体的な実施形態への言及によりなされるであろう。これらの図は、本発明の単なる例示的な実施形態を示すため、その範囲を限定すると考えられるものではないことが理解される。更なる細目及び詳細を有する本発明の実施形態は、添付の図面を使用して記載され、説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】正常に接合した僧帽弁の弁葉の自由端を例示する。
図2】逆流接合における自由端を例示する。
図3A】固定装置による弁葉の把持を例示する。
図3B】固定装置の遠位要素の反転を例示する。
図3C】固定装置の取外しを例示する。
図4】弁葉に対して所望の向きにある固定装置を例示する。
図5】シャフトに連結している例示的な固定装置を例示する。
図6A】治療法を行うために、身体内に装置を導入及び配置する間の、種々の可能性のある位置にある固定装置を例示する。
図6B】治療法を行うために、身体内に装置を導入及び配置する間の、種々の可能性のある位置にある固定装置を例示する。
図7A】治療法を行うために、身体内に装置を導入及び配置する間の、種々の可能性のある位置にある固定装置を例示する。
図7B】治療法を行うために、身体内に装置を導入及び配置する間の、種々の可能性のある位置にある固定装置を例示する。
図8】治療法を行うために、身体内に装置を導入及び配置する間の、種々の可能性のある位置にある固定装置を例示する。
図9A】板バネを有する固定装置の実施形態を例示する。
図9B】板バネを有する固定装置の実施形態を例示する。
図10】固定装置の別の実施形態の一部の拡大図を例示する。
図11A】固定装置の別の実施形態の一部の拡大図を例示する。
図11B】固定装置の別の実施形態の一部の拡大断側面図をそれぞれ例示する。
図11C】固定装置の別の実施形態の一部の拡大断側面図をそれぞれ例示する。
図11D】固定装置の別の実施形態の一部の拡大断横方向図をそれぞれ例示する。
図11E】固定装置の別の実施形態の一部の拡大断横方向図をそれぞれ例示する。
図12】固定装置の別の実施形態の一部の拡大図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I. 諸言
A.心臓生理学
図1に示されたように、僧帽弁(MV)は、自由端(FE)を有する一対の弁葉(LF)を含む。正常な心臓の構造及び機能を有する患者において、一対の弁葉は、接合線(C)に沿って閉じるように一様に接している。弁葉(LF)は、弁輪(AN)と呼ばれる環状領域に沿って周囲の心臓構造に結合している。弁葉(LF)の自由端(FE)は、左心室LVの下側部分に、腱索(又は「腱」)により固定されている。
【0026】
心臓の左心室が収縮する(「心収縮期」と呼ばれる)際に、左心室から左心房への僧帽弁(MV)を通した血流(「僧帽弁逆流」と呼ばれる)は、通常、僧帽弁により防止される。
【0027】
逆流は、弁の弁葉が適切に閉じず、左心室から左心房への漏れが可能となった場合に発生する。数多くの心臓構造の異常が、僧帽弁逆流を引き起こすおそれがある。図2に、ギャップ(G)により逆流を生じる異常を有する僧帽弁を示す。
【0028】
II.僧帽弁固定技術の概要
異常な僧帽編を修復し、又は、置き換えるための幾つかの方法が存在している。僧帽弁における異常の幾つかは、血管内処置により治療され得る。この場合、介在性ツール及び装置が、血管を通って、心臓に導入され、心臓から取り出される。特定の僧帽弁異常を修復する1つの方法は、特定の位置において、僧帽弁組織の一部を保持するための固体装置の血管内送達を含む。1つ以上の介在性カテーテルが、固定装置を僧帽弁に送達し、それをそこに、僧帽弁逆流を処置するためのインプラントとして導入するのに使用されてもよい。
【0029】
図3Aは、送達シャフト12及び固定装置14を有する介在性ツール10の概略を例示する。ツール10は、僧帽弁MVに心房側からアプローチし、弁葉LFを把持している。
【0030】
固定装置14は、介在性ツール10のシャフト12に、シャフト12の遠位端において着脱可能に取り付けられている。本願では、装置を説明する場合、「近位」は、患者の身体の外側のユーザにより操作される装置の端部に向かう方向を意味し、「遠位」は、処置部位に位置しており、ユーザから離れた、装置の作業端に向かう方向を意味する。僧帽弁を説明する場合、近位は、弁葉の心房側を意味し、遠位は、弁葉の心室側を意味する。
【0031】
固定装置14は、それらの間に弁葉を捕捉し又は保持するために、示されたように、外向きに放射状に突出しており、弁葉LFの反対側に位置することができる、近位要素16及び遠位要素18を含む。固定装置14は、シャフト12に連結機構17により連結可能である。
【0032】
図3Bは、遠位要素18が矢印40の方向において、反転位置に移動し得ることを例示する。図3Cに示されたように、近位要素16は立ち上がってもよい。反転位置において、装置14は、再配置されてもよく、ついで、図3Aにおけるように、弁葉に対する把持位置に戻されてもよい。あるいは、固定装置14は、図3Cに示されたように、弁葉から引き抜かれてもよい(矢印42に示す)。このような反転は、弁葉に対する外傷を減らし、周囲の組織との装置の何らかのもつれを最少化する。
【0033】
図4は、弁葉LFに対して所望の向きにある固定装置14を例示する。僧帽弁MVを、心房側から見ているため、近位要素16は、実線で示され、遠位要素18は、破線で示されている。近位要素16及び遠位要素18は、接合線Cに対して実質的に垂直に配置されている。拡張期の間(血液が左心房から左心室に流れている間)、固定装置14は、図4に示されたように、拡張圧勾配により生じる開口又は開口部Oにより取り囲まれた要素16、18間の位置において、弁葉LFを保持している。
【0034】
弁葉が所望の配置で接合されると、固定装置14は、シャフト12から取り外され、インプラントとして残される。
【0035】
A.例示的な固定装置
図5は、例示的な固定装置14を例示する。固定装置14は、介在性ツール10を形成するために、シャフト12に連結して示される。固定装置14は、連結部材19と、一対の対向近位要素16と、一対の対向遠位要素18とを含む。
【0036】
遠位要素18は、細長いアーム53を含む。各アームは、連結部材19に回転可能に連結している近位端52と、自由端54とを有する。好ましくは、各自由端54は、2つの軸、アーム53の長手方向軸に垂直な軸66及び軸66又はアーム53の長手軸に垂直な軸67を中心とする湾曲を画定する。
【0037】
アーム53は、係合面50を有する。アーム53及び係合面50は、アーム53の長手方向軸に沿って、約4〜10mm、及び好ましくは、約6〜8mmの組織を係合するように構成されている。アーム53は、複数の開口を更に含む。
【0038】
近位要素16は、好ましくは、遠位要素18に向かって弾性的に付勢されている。図5に例示されたように、固定装置14が開位置にある場合、各近位要素16は、アーム53の近位端52近くで係合面50から離され、自由端54近くで係合面50に向かって傾斜し、近位要素16の自由端は、係合面50と接触している。
【0039】
近位要素16は、組織上でのそのグリップを増大させるために、複数の開口63及び波形の側端61を含む。近位要素16は、場合により、弁葉を把持するのを支援するために、1つ又は複数の摩擦要素を含む。摩擦要素は、係合面50に向かって伸びている先細に尖った先端を有するかえし60を含んでもよい。任意の適切な摩擦要素、例えば、尖った先、屈曲、バンド、かえし、溝、チャネル、隆起、表面荒れ、半融、高摩擦パッド、外被、コーティング、又はこれらの組み合わせが使用されてもよい。
【0040】
近位要素16は、布又は他の可撓性材料により覆われてもよい。好ましくは、布又はカバーがかえし又は他の摩擦形体との組み合わせで使用される場合、このような形体は、近位要素16により係合された任意の組織と接触するために、このような布又は他のカバーから突出するであろう。
【0041】
固定装置14は、アクチュエータ又は作動機構58も含む。作動機構58は、2つのリンク部材又はレッグ68を含む。各レッグ68は、リベットジョイント76において遠位要素18の一方と回転可能に連結している第1端70と、スタッド74と回転可能に連結している第2端72とを有する。作動機構58は、基部69にそれぞれ移動可能に連結している2つのレッグ68を含む。あるいは、各レッグ68は、別箇のリベット又はピンにより、スタッド74に個々に取り付けられてもよい。スタッド74は、シャフト12を通って伸びており、スタッド74を移動させるために軸方向に伸長可能かつ後退可能なアクチュエータロッドと連結可能である。これにより、レッグ68は、遠位要素18を、閉位置、開位置、及び反転位置の間で回転させる。スタッド74の固定によりレッグ68は適所に保持され、これにより、遠位要素18は、所望の位置に保持される。スタッド74は、ロック機構により適所にロックされてもよい。このアクチュエータロッド及びスタッドアッセンブリは、遠位要素を、遠位要素が装置を送達するために折り畳まれた低輪郭の構成にある第1の位置と、遠位要素が装置を僧帽弁に対して位置させるために拡張された構成にある第2の位置と、遠位要素が心室側において僧帽弁の隣接する弁葉の一部に対する位置に固定されている第3の位置との間で選択的に動かすための第1の手段と考えられてもよい。
【0042】
図6A図6B図7A図7B、及び図8は、図5の固定装置14の種々の可能性のある位置を例示する。図6Aは、カテーテル86を通して送達された介在性ツール10を例示する。カテーテル86は、ガイドカテーテル又はシースの形式をとってもよい。介在性ツール10は、シャフト12に連結している固定装置14を含む。固定装置14は、閉位置で示される。
【0043】
図6Bは、より大きな図において、図6Aの装置に類似する装置を例示する。閉位置において、対向する一対の遠位要素18は、係合面50が互いに向き合うように位置している。各遠位要素18は、アーム53が共にシャフト12を取り囲むように、カップ状又は窪んだ形状を有する細長いアーム53を含む。これにより、固定装置14について、低輪郭が提供される。
【0044】
図7A図7Bは、開位置にある固定装置14を例示する。開位置において、遠位要素18は、係合面50が第1の方向に面するように、回転される。アクチュエータロッドのシャフト12に対する遠位方向の前進、及びこれにより、スタッド74の連結部材19に対する遠位方向の前進は、遠位要素18に力を加え、遠位要素18は、ジョイント76周囲を回転し始める。遠位要素18のこのような外向きの放射状の回転及び運動は、ジョイント80を中心に、レッグ68を回転させる。これにより、レッグ68は、わずかに外側に向く。スタッド74は、遠位要素18の所望の分離に関連して、任意の所望の距離に前進されてもよい。開位置において、係合面50は、シャフト12に対して急角度で配置されており、好ましくは、互いに90〜180度の角度にある。開位置において、アーム53の自由端54は、約10〜20mm、通常、約12〜18mm、及び好ましくは、約14〜16mmのそれらの間の長さを有してもよい。
【0045】
近位要素16は、典型的には、アーム53に向かって外向きに付勢されている。近位要素16は、シャフト12に向かって内向きに動かされ、シャフト12に対して、近位要素ライン90の助けを借りて保持される。近位要素ライン90は、縫い糸、ワイヤ、ニチノールワイヤ、ロッド、ケーブル、ポリマーラインの形式、又は他の適切な構造であり得る。近位要素ライン90は、送達カテーテル300のシャフト302を通って伸び、近位要素16と結合している。近位要素16は、近位要素ライン90の操作により上下される。装置が適切に位置し、配置されると、近位要素ラインは、カテーテルを通して装置を引っ張り、装置10の近位端から外すことにより取り外され得る。近位要素ライン90は、近位要素を、近位要素が装置を送達するために折り畳まれた低輪郭の構成にある第1の位置と、近位要素が心房側において僧帽弁の隣接する弁葉の一部に係合するために拡張された構成にある第2の位置との間で選択的に動かすための第2の手段と考えられてもよい。
【0046】
開位置において、固定装置14は、接合され、又は、処置されるべき組織を係合し得る。介在性ツール10は、左心房から左心室に向かって、僧帽弁を通って前進される。ついで、遠位要素18は、アクチュエータロッドをシャフト12に対して前進させることにより、遠位要素18を接合ラインに対して垂直に再度向けることにより配置される。ついで、アッセンブリ全体が、近位に引っ張られ、係合面50が弁の弁葉の心室表面と接触するように配置されることにより、弁葉の左心室側表面と係合する。近位要素16は、弁葉が近位要素と遠位要素との間にあるように、弁の弁葉の心房側にあるままである。介在性ツール10は、弁葉が適切に接触され、又は、所望の位置で把持されるように、固定装置14を再配置させるために、繰返し操作されてもよい。再配置は、開位置にある固定装置について達成される。一部の例では、装置14が開位置にある間に、逆流が調査されてもよい。逆流が十分に減少されていない場合、装置は、再配置されてもよく、逆流は、所望の結果が達成されるまで、再度調査されてもよい。
【0047】
固定装置14を再配置し、又は、取り外すのに役立つように、固定装置14の遠位要素18を反転させるのが望ましい場合もある。図8は、反転位置にある固定装置14を例示する。アクチュエータロッドのシャフト12に対する、及びこのため、スタッド74の連結部材19に対する更なる前進により、遠位要素18は、係合面50が外向きに面し、自由端54が遠位に向くように、更に回転される。ここで、各アーム53は、シャフト12に対して鈍角を形成する。
【0048】
装置が反転される際のアーム53間の角度は、好ましくは、約270〜360度の範囲にある。スタッド74の更なる前進は、遠位要素18をジョイント76周囲で更に回転させる。遠位要素18のこの放射状で外向きの回転及び運動は、ジョイント80のまわりにレッグ68の回転を生じさせる。これにより、レッグ68は、互いに概ね平行に、その最初の位置に向かって戻る。スタッド74は、遠位要素18の所望の反転に関連して、任意の所望の距離を前進されてもよい。好ましくは、完全に反転された位置において、自由端54間の長さは、約20mm以下、通常、約16mm未満、及び好ましくは、約12〜14mmである。かえし60は、(近位要素16の自由端から離れる)遠位方向にわずかに角度を有する。これにより、固定装置が引っ張られる際に、かえしが、組織に引っ掛り、又は、同組織を傷付けるであろうリスクを低減する。
【0049】
固定装置14の遠位要素18が弁の弁葉の左心室側面に対する所望の位置に配置されると、弁葉は、近位要素16と遠位要素18との間で捕捉されることができる。近位要素16は、近位要素ライン90からの張力を解放することで、近位要素16を解放することにより、係合面50に対して下げられる。これにより、ついで、近位要素16内に形成された内部バネ付勢力に応答して、近位要素16は、拘束された折り畳み位置から拡張された配置位置に自由に動き、弁葉は、近位要素16と遠位要素18との間に保持される。逆流が十分に減少されていない場合には、近位要素16は上昇されてもよく、遠位要素18は、固定装置14を再配置するために調節され、又は、反転されてもよい。
【0050】
弁葉が近位要素16と遠位要素18との間に所望の配置で捕捉された後に、遠位要素18は、弁葉LFをこの位置で保持するようにロックされてもよく、又は、固定装置14は、閉位置に戻ってもよいし、閉位置に向かってもよい。これは、連結部材19に対して近位にスタッド74を後退させることにより達成される。これにより、作動機構58のレッグ68が上向きの力を遠位要素18に加え、次に、遠位要素18を回転させる。これにより、再度、係合面50が互いに面する。遠位要素18に向かって外向きに付勢されている解放された近位要素16は、同時に、遠位要素18によって内向きに向けられる。ついで、固定装置14は、この閉位置において、弁葉を保持するようにロックされてもよい。ついで、固定装置14は、シャフト12から解放されてもよい。
【0051】
固定装置14は、場合により、装置14を特定の位置、例えば、開位置、閉位置、若しくは反転位置、又はそれらの間の任意の位置にロックするためのロック機構を含む。
【0052】
ロック機構は、解放ハーネスを含んでもよい。解放ハーネルに張力を加えることにより、ロック機構がロック解除されてもよい。
【0053】
ロックライン92は、ロック機構106をロックし、ロック解除するために、ロック機構106の解放ハーネス108に係合している。ロックライン92は、送達カテーテル300のシャフト302を通って伸びている。シャフトの近位端に取り付けられたハンドルは、固定装置14を操作し、連結を外すのに使用される。
【0054】
このような固定装置14に関する更なる開示は、国際公開第2004/103162号パンフレット及び米国特許出願第14/216787号明細書に見出され得る。これらの文献の両開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
B.改善された把持機構
固定装置14が必要に応じて組織を接合させ、又は、修復するように、組織を固定装置14内に捕捉し、又は、保持するのが困難である場合がある。弁葉の挿入は、固定装置14を導入するプロセス全体を通して評価されることがあるが、同挿入は、良好及び不十分な弁葉の挿入及び保持を区別するのが困難である場合がある。例えば、固定装置14が血管内又は低浸襲法で使用された場合、組織の捕捉又は保持の可視化が困難である場合がある。
【0056】
固定装置14を導入するプロセス中の時点で、近位要素16と遠位要素18との間に捕捉され、又は、保持されるのが望まれる組織は、実際には、部分的にのみ捕捉され、又は、不安定に捕捉された場合でも、しっかりと捕捉され、又は、保持されているようである場合がある。結果として、弁葉組織LFの自由端FEがその後に固定装置14から外れ、ついで、固定装置14が、組織を適切に接着し、接合させ、又は修復することができない場合がある。画像化法によって組織が固定装置に補足された際に可視化するのを可能にした場合でも、レビュアーが、しっかり捕捉された組織と不安定に捕捉された組織との間を区別することができないおそれがある。例えば、カラードプラエコーは、逆流が減少していることを示すことができるが、弁葉LFに沿って、固定装置14が組織を捕捉している正確な詳細及びしっかり捕捉されているかどうかを提供することはできない場合がある。
【0057】
弁葉が近位要素16と遠位要素18との間で不十分に把持された場合、最終的には、弁葉LFは、固定装置14から外れる可能性がある。これにより、固定装置14が弁葉LFの一方のみに取り付けられ、又は、両方の弁葉LFから外れ、もはや、希望通りに機能しないことが生じるおそれがある。
【0058】
装置14が取り付けられる際の装置14の画像化又は可視化から生じる困難性に加えて、組織を固定装置14内に捕捉し、又は、保持するのにおける困難性も、捕捉され、又は、保持されるのが望まれる組織の性質によっても生じるおそれがある。例えば、僧帽弁の弁葉LF同士を固定して、僧帽弁逆流を停止させ、又は、減少させるために固定装置14を使用する場合、弁葉LFは、心拍と同様に一定に動いている。
【0059】
図9図12は、固定装置14’が固定装置14’の配置中に弁葉LFの自由端FEを捕捉し、保持するのに役立つことが意図されている、種々の実施形態を例示する。そのために、これらの実施形態は、各遠位要素18’の近位側に位置している保持要素400の追加を含む。保持要素400は、摩擦要素、例えば、かえし410及び近位要素16’の下端において組み合わさって、その最初の挿入時に、弁葉の自由端FEを捕捉し、それがそこで、近位要素及び遠位要素が完全に配置されるまで保持するのに役立つ。近位要素16’の下端は、スタッド74’に対して最も近い端部である。
【0060】
保持要素400及びかえし410は共同して、弁葉LFの自由端FEが、容易に又は自由に、各近位要素16’と対応する遠位要素18’との間に形成された頂点430に向かう第1の方向に動くが、同時に、頂点430から離れる反対方向への弁葉組織LFの自由端FEの動きに抵抗し、又は、同動きを防止するのを可能にするように構成されている。この方法において、保持要素400は、かえし410と共同して、装置が弁葉LFに対して位置している間、かつ、近位要素16’及び遠位要素18’が完全に配置される前に、弁葉LFを装置14’中に保持するのに役立つ。
【0061】
保持要素400は、能動的にされる必要なく、弁葉組織LFを保持する、受動的な捕捉機構として機能してもよい。例えば、保持要素400は、長さ約4〜10mm、及び好ましくは、約6〜8mmの組織が遠位要素18’の長手方向軸に沿って位置している場合、弁葉組織LFを装置14’に保持してもよい。保持要素400は、例示された実施形態に示されたように、遠位要素18’上に位置してもよいし、又は、保持要素400は、近位要素16’上に位置してもよいし、又は、保持要素400は、遠位要素18’及び近位要素16’の両方に位置してもよい。保持要素400は、固定要素18’及び把持要素16’を近づけることなく、弁葉LFを適所に保持することができる。
【0062】
図9A図9Bに示されたように、一実施形態において、保持要素400は、固定装置14’内に挿入された弁葉LFを保持するバネ要素402でもよい。バネ要素402は、十分な挿入深さであると判断された遠位要素18’に沿った所定の点を通過して挿入する任意の弁葉LFを捕捉し、又は、保持するのに役立ち得る。
【0063】
再度図9A図9Bを参照して、バネ要素402は、遠位要素18’上にある。各遠位要素18’は、遠位要素18’内に組み込まれ、又は、遠位要素18’に取り付けられたバネ要素402を有する。バネ要素402は、スタッド74’に取り付けられた遠位要素18’の第1端404と遠位要素18’の自由端406との間の中間点414において、遠位要素18’内に組み込まれ、又は、遠位要素18’に取り付けられてもよい。また、各遠位要素18’の自由端406近く、又は、各遠位要素18’の第1端404近くで、バネ要素402は、遠位要素18’内に組み込まれ、又は、遠位要素18’に取り付けられてもよい。図9A図9Bに示されたように、バネ要素402の固定端412は、遠位要素18’の中間点414と自由端406との間に位置している。加えて、保持要素400のバネ要素402は細長く、遠位要素18’及び関連する遠位係合面の実質的に長さ全体に沿って、伸長する様式で伸びることができる。あるいは、保持要素400は、第1端404近く若しくは第1端404に隣接する位置から、遠位要素18’の遠位係合面の中間点の遠位側位置に向かって、又は、第2端406近く若しくは第2端406に隣接する位置から、遠位要素18’の遠位係合面の中間点の遠位側位置に向かって、伸長する様式で伸びることができる。
【0064】
バネ要素402は、バネ要素402を弁葉LFに向かって押し、摩擦要素又はかえし410が弁葉LF内により深く挿入されるのを助長するため、遠位要素18’が更に閉じられるまで、弁葉LFが完全に着座された状態にあるように付勢されている、低力板バネ408を含んでもよい。例示されたように、かえし410は、頂点430に向かう角度に方向づけられている。その方向に向いたかえし410により、弁葉組織LFの主要な端部LEは、制限若しくは抵抗がほとんどなく、又は、制限若しくは抵抗なしに、頂点430に向かう第1の方向に動くのが可能になる。弁葉組織の主要な端部LEが頂点430に向かって動くと、バネ要素402は、弁葉組織LFを、かえし410に向かわせ、又は、付勢し、かえし410と接触させる。弁葉組織LFがかえし410と接触し、かえし410と係合すると、かえし410の角度を有する向きにより、かえし410が弁葉組織LF内に貫入し、ついで、頂点430から離れる反対方向への弁葉組織LFの動きを制限し、又は、防止する。このため、保持要素400とかえし410との組み合わせは、弁葉組織LFがほとんど抵抗なく若しくは抵抗なしに、頂点430に向かう第1の方向に動き、一方で、頂点430から離れる第2の方向又は反対方向における弁葉組織LFの動きを制限し若しくは防止するのを可能にする、方向性捕捉として効果的に機能する。
【0065】
板バネ408は、1つ以上のローブ又は部分的なローブを有してもよい。板バネ408は、それが挿入される際に、弁葉LFに対してほとんど抵抗がなく又は抵抗がないのを可能にするように付勢されてもよい。板バネ408は、表面形体部、尖った端部、又は、弁葉LFが後退するのを困難にする抵抗を生じさせる他の要素を有してもよい。このような表面形体部は、例えば、ディンプル、隆起、リッジ、又はギザギザを含んでもよい。
【0066】
例えば、図9A図9Bに示されたように、バネ要素402の自由端416は、組織LFが捕捉された際に、(図9Aに示されたように)遠位要素18’に向かって湾曲するように構成されていてもよいし、組織LFが解放された際に、(図9Bに示されたように)遠位要素18’から離れるように湾曲するように構成されていてもよい。弁葉が遠位要素18’と近位要素16’との間に捕捉されると、バネ要素402の自由端416は、遠位要素18’に対して平坦になるように構成されていてもよい。
【0067】
保持要素400は、近位要素16’が上昇し、遠位要素18’が部分的に開いたままである場合に、固定装置14が組織を捕捉するのに役立つ。保持要素400は、弁葉組織を近位要素16上のかえし410に付勢するように構成されていてもよい。保持要素400は、組織が入ることができるが、出ることができない一方向機構、例えば、ラチェット又はラチェットに類似するものでもよい。
【0068】
固定装置14’を再配置し、再把持することが必要である場合があるため、一方向機構は、弁葉組織LFが外れることができる方法を有するべきである。保持要素は、特定の状況下で、例えば、図9Bに示されたように遠位要素18’が約180°に開いているか、又は、図8に示されたように反転位置にも更に開いている場合に、組織が外れるのを可能にするように設計され得る。あるいは、近位要素16’が上昇する場合、弁葉組織LFは、再把持を可能にするように解放されてもよい。
【0069】
弁葉LFが適切に固定装置14’内に把持されるのを確保するために、保持要素400、例えば、遠位要素18’及び近位要素16’の各セット近くに位置しているバネ要素402を有する装置を使用する1つの方法は、まず、一方又は両方の弁葉LFをバネ要素402内に捕捉することである。バネ要素は、その最初の挿入時に弁葉LFの自由端FEを捕捉し、それがそこに、近位要素16及び遠位要素18が完全に配置されるまで、保持するのに役立つために、近位要素16’の下端において、弁葉LFをかえし410に付勢する。
【0070】
1つ以上の弁葉LFが画像化法、例えば、カラードプラエコーに基づいて捕捉されるのを確認することが可能である場合がある。弁葉LFがバネ要素402とかえし410との間で捕捉された場合には、近位要素16’は、弁葉LFがそれらの間に保持されるように、遠位要素18’の表面50’に向かって下げられてもよく、遠位要素18’は、弁葉LFをこの位置で保持するようにロックされてもよく、又は、固定装置14’は、閉位置に戻り若しくは閉位置に向かってもよい。
【0071】
別の実施形態では、図10に示されたように、保持要素400は、アーム417を含む。各遠位要素18’は、遠位要素18’内に組み込まれ、又は、遠位要素18’に取り付けられたアーム417を有する。アーム417は、固定端415において、スタッド74’に取り付けられた遠位要素18’の第1端404と遠位要素18’の自由端406との間の中間点414において、遠位要素18’内に組み込まれてもよいし、又は、遠位要素18’に取り付けられてもよい。また、各遠位要素18’の自由端406近く、又は、各遠位要素18’の第1端404近くで、バネ要素402は、遠位要素18’内に組み込まれ、又は、遠位要素18’に取り付けられてもよい。図10に示されたように、アーム417の固定端415は、遠位要素18’の中間点414と自由端406との間に位置している。
【0072】
アーム417は、弁葉LFを適所に保持するのを支援するのに適した形状及びサイズの1つ以上の突起418を有する。これらの突起418は、アーム417に対向して位置する鋭い先端、又は、その先端とアーム417との間に鋭い端部を有してもよい。突起418は、先細の尖った先端を有するかえし、波形端部、尖った先、屈曲、バンド、溝、チャネル、隆起、表面荒れ、半融、高摩擦パッド、外被、コーティング、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。図10に示されたように、これらの突起は、表面50’から離れるように向いていてもよいし、遠位要素18’の自由端406から離れるように角度を有してもよい。また、突起418は、自由端406に向いていてもよいし、又は、表面50’に対して垂直であってもよい。突起は、固定装置14’が閉じている場合、遠位要素18’に向かって曲がってもよいし、又は、折り畳まれていてもよく、固定装置14’が開いている場合、固定された角度で曲がってもよい。例えば、突起418は、係合面50’から固定された角度に向かって付勢されてもよいが、遠位要素18’がシャフト12周囲に近づく場合、遠位要素18’に対して平らに押されてもよい。
【0073】
固定装置は、弁葉LFが遠位要素18’上の突起418を通過して容易に挿入されるために、近位要素16’と遠位要素18’との間に十分な空間を有するように構成されるべきである。腱で繋がれた弁葉LFは、固定装置14’によって、遠位要素18’及び近位要素16’が閉じる直前に、軽く引っ張られてもよい。また、腱で繋がれた弁葉LFは、遠位要素18’及び近位要素16’が閉じる前に、装置14’にしっかり固定されてもよい。
【0074】
一実施形態において、アーム417は、固定端415で回動し、近位要素16’と遠位要素18’との間に位置している、可撓性の板バネでもよい。また、アーム417は、組織が遠位要素18’と近位要素16’との間に入り、組織LFの後退を防止するのを可能にするように角度を有する突起418のシステムも含む。示されたように、突起418及び板バネ417は、同じ構造中に組み合わせられてもよい。加えて、保持要素400のアーム417は細長く、遠位要素18’及び関連する遠位係合面の実質的に長さ全体に沿って、伸長する様式で伸びることができる。あるいは、保持要素400は、第1端404近く若しくは第1端404に隣接する位置から、遠位要素18’の遠位係合面の中間点の遠位側位置に向かって、又は、第2端406近く若しくは第2端406に隣接する位置から、遠位要素18’の遠位係合面の中間点の遠位側位置に向かって、伸長する様式で伸びることができる。
【0075】
図11に示されたように、別の実施形態では、保持要素400は、1つ以上の突起420を含んでもよい。1つ以上の突起420は、係合面50’上において、遠位要素18’のヒンジ点近くに位置してもよい。弁葉LFが突起420を通過して挿入されると、突起420は、固定装置14’の配置に基づいて、弁葉LFを対向する近位要素16’に位置している把持表面又はかえし410との接触に向かわせ、又は、同接触に付勢することにより、弁葉の外れを減少させてもよい。突起形体部420は、スタッド74’に取り付けられている遠位要素18’の第1端404と遠位要素18’の自由端406との間の中間点414近くに位置してもよい。また、各遠位要素18’の自由端406近く、又は、各遠位要素18’の第1端404近くで、突起形体部420は、遠位要素18’内に組み込まれ、又は、遠位要素18’に取り付けられてもよい。突起形体部420は、遠位要素18’の係合面50’に固定される材料の剛直な部品でもよく、弁葉LFを向かわせ、又は、付勢するのに役立ち、一方、弁葉LFに対して最少の傷害を生じさせる、例えば、弁葉LFを貫通せず、又は、穿孔しないように、非外傷的でもよい。突起形体部は、1つ以上の任意の生体適合性材料、例えば、ポリマー、ニチノール、若しくは他の合金、又は、生体吸収性材料から構成されていてもよい。
【0076】
遠位要素18’の突起形体部420は、弁葉組織LFが十分に装置14’内に挿入されると、弁葉組織LFと受動的に係合してもよい。あるいは、突起形体部420は、弁葉組織を係合し、近位要素16’が下がり、弁葉組織LFを固定する際の位置で、弁葉組織を固定するのに役立つように構成されていてもよい。突起形体部420は、突起形体部420と近位要素16’の把持面との間に、組織を捕捉するのに役立ってもよい。形体部420は、組織LFをかえし410に付勢してもよい。
【0077】
突起形体部420が全体的に湾曲し又は半球状の外側表面を含むように例示されているが、種々の他の表面方向づけが、非外傷的及び弁葉LFを向かわせ又は付勢するのに役立つ能力を維持していれば、適切であると理解されるであろう。例えば、図11B図11Eに例示されたように、突起形体部420は、(i)第1端404から第2端406に向かう方向、(ii)第1端404から第2端406に向かう方向とは逆に、横方向に、若しくは斜め方向、又は(iii)両方で、対称的又は非対称的である湾曲面を有し得る。このため、突起形体部420は、少なくとも1つの軸、少なくとも2つの軸、又は3つ全ての軸において、対称的であり得る。あるいは、突起形体部420は、少なくとも1つの軸、少なくとも2つの軸、又は3つ全ての軸において、非対称的であり得る。
【0078】
図12に示される別の実施形態では、保持要素400は、遠位要素18’の表面50’に取り付けられたヒンジ422を含んでもよい。ヒンジ422は、遠位要素18’に向かってスイングし、遠位要素18’から離れるようにスイングし得るアーム424に連結している。図12に示されたように、アーム424は、各遠位要素18’の第1端404に向かって付勢してもよい。アーム424は、遠位要素18’の第1端404に向きながら、表面50’に平行又は表面50’に対して平坦であることができてもよい。アーム424は、遠位要素18’の自由端406に向きながら、表面50’に平行又は表面50’に対して平坦であることができてもよいため、180°回転することができる。ヒンジ422は、例えば、アーム424が遠位要素18’の第1端404に向きながら、表面50’に平行にのみあり、約90°回転されるように、アーム424とヒンジ422の下の遠位要素18’の一部との間に形成された角度が、90°以下であることができるように、アーム424の動きを制限してもよい。また、ヒンジ422は、回動要素であってもよい。
【0079】
また、遠位要素18’上に複数のアーム424が存在してもよい。例えば、2つのアームが存在してもよく、それぞれ、端部404と406との間の同じ距離に位置しており、係合面50’上で隣同士に配置されている。複数の保持要素400、例えば、複数のアーム424又は複数のバネ要素402が存在する場合、これらは、近位要素上のかえし410の両側に位置するように構成されていてもよい。1つ以上の保持要素400は、近位要素16’上に複数のかえし410が存在する場合、近位要素16’上のかえし410間に位置するように配置されてもよい。加えて、保持要素400のアーム424は細長であり、遠位要素18’及び関連する遠位係合面の実質的に長さ全体に沿って、伸長する様式で伸びることができる。あるいは、保持要素400及び関連するアーム424は、第1端404近く若しくは第1端404に隣接する位置から、遠位要素18’の遠位係合面の中間点の遠位側位置に向かって、又は、第2端406近く若しくは第2端406に隣接する位置から、遠位要素18’の遠位係合面の中間点の遠位側位置に向かって、伸長する様式で伸びることができる。
【0080】
遠位要素18は、布又は他の可撓性材料により覆われてもよい。好ましくは、布又はカバーが突起418との組み合わせで使用される場合、このような形体は、弁葉組織LFと接触するように、このような布又は他のカバーから突出するであろう。
【0081】
機械的な歯止めと同様に、保持要素400の偏り、角度、及び方向は、全く抵抗なしに、弁葉がスタッド74’に向かって落ち、又は、より深くスライドするのを可能にしてもよく、戻るように動く弁葉LFの能力を制限できる。弁葉LFが固定装置14’に容易に入るのを可能にし、固定装置14’から容易に外れるのを可能にしないことにより、保持要素400は、弁葉LFを完全に挿入された状態で捕捉するのに役立ち得る。
【0082】
上記された実施形態では、保持要素400は、受動要素である。ただし、保持要素400は、能動要素を含んでもよい。これにより、一片の弁葉組織LFが保持要素400の一部を超えて進むか、又は、保持要素400に接している場合に、保持要素400は、組織LFを適所に保持するような方法で、自動的に弾いてもよく又は配置してもよい。
【0083】
別の実施形態では、固定装置14又は14’は、弁葉が遠位要素18’に近づく前及び固定装置14又は14’の配置前の装置内に適切に挿入される場合、機械的若しくは物理的センサ又は一部の視覚的インジケータを含んでもよい。例えば、触覚センサが、各遠位要素の第1端404近くに埋め込まれてもよい。各触覚センサは、弁葉LFがセンサに触れた際に、シグナル又は表示を提供してもよく、センサは、弁葉が適切に捕捉されない限り、弁葉LFがセンサに触れることができない又は触れる可能性がないように位置されてもよい。
【0084】
弁葉LFの固定装置14又は14’への配置及び保持を向上させる更に別の機構は、各近位要素16又は16’及び各遠位要素18又は18’の作動を互いに独立して促進することである。両弁葉LFについての近位要素16又は16’が、同時に作動され、各弁葉LFについての遠位要素18又は18’も、同時に作動される場合、両方の弁葉を捕捉するのが難しくなる場合がある。両方を同時に捕捉する必要があるためである。すなわち、近位要素16又は16’両方の作動が対称的であり、遠位要素18又は18’両方の作動が対称的である場合、固定装置14又は14’は、まず一方の弁葉を把持し、ついで、他方を把持することができない。カテーテル又は固定装置14若しくは14’が適切に配置されない場合、又は、いずれかの弁葉LFが冗長若しくは緩んだ長さを有する場合、固定装置14又は14’は、弁葉を各遠位固定要素18又は18’と近位把持要素16又は16’との間に完全に着座させることができない場合がある。
【0085】
一実施形態において、各近位要素16若しくは16’及び/又は各遠位要素18若しくは18’は、互いに独立して作動されてもよい。例えば、各近位要素16又は16’について別個の近位要素ラインが存在してもよい。同様に、シャフト12から伸びている、2つのアクチュエータロッド64が存在してもよい。それらはそれぞれ、1つの各遠位要素18又は18’を作動させるように構成されていてもよい。
【0086】
僧帽弁を修復するのに使用されるのに加えて、これらの装置は、血管内、低浸襲的、及び切開外科的処置を含む、各種の治療法に使用されることができ、腹部、胸部、心血管、腸、消化管、呼吸器、及び泌尿器系を含む、種々の解剖領域、並びに他の系及び組織に使用されることができる。本発明は、組織の装置内への捕捉を改善することにより、組織をさらに首尾よく接合させ、修復することができる装置、システム、及び方法を提供する。
【0087】
本発明は、その精神又は必須の特徴から逸脱することなく、他の具体的な形式において具現化されてもよい。記載された実施形態は、全ての観点において、単なる例示であり、限定的なものではないと考えられる。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によるのではなく、添付の特許請求の範囲により示される。特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内にある全ての変更は、その範囲内に包含される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12