(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る起伏ゲート1を示す側面図である。
図2は、起伏ゲート1を示す平面図である。
図3は、起伏ゲート1を前方から見た正面図である。起伏ゲート1は、浮体式の起伏ゲートである。起伏ゲート1は、例えば、堤防の開口部92において床面91(例えば、路面)上に設けられる。起伏ゲート1は、増水により開口部92から水が流入する際に、流入する水の圧力により起立して開口部92を遮蔽することにより、水が開口部92から生活空間等に流入することを抑制する。
図1に示す例では、床面91は略水平に(すなわち、重力方向に略垂直に)広がる。
【0017】
以下の説明では、起伏ゲート1において増水時に水が流入してくる側(すなわち、水の流入方向の上流側であり、例えば、起伏ゲート1よりも海や河川等の水辺側)を「前側」と呼び、起伏ゲート1における水の流入方向の下流側(例えば、起伏ゲート1よりも陸側)を「後側」と呼ぶ。すなわち、
図1および
図2中の左右方向が「前後方向」であり、
図1および
図2中の左側および右側がそれぞれ、「前側」および「後側」である。また、
図2中の上下方向および
図3中の左右方向を「幅方向」と呼ぶ。幅方向は前後方向に垂直であり、前後方向および幅方向は、上下方向に垂直である。
図1および
図3中の上下方向は、重力方向に略平行である。
【0018】
起伏ゲート1は、扉体2と、一対の戸当たり部11と、起伏補助部3とを備える。
図1ないし
図3に示す扉体2は、前後方向および幅方向に広がる略直方体状の部材である。
図1ないし
図3では、扉体2が床面91上に倒伏している状態を示す。以下の説明では、
図1中において実線にて示す扉体2の姿勢を「倒伏姿勢」と呼ぶ。倒伏姿勢の扉体2は、床面91に設けられている凹部93内に収容される。凹部93は、平面視において、倒伏姿勢の扉体2よりも少しだけ大きい。
【0019】
倒伏姿勢の扉体2の上面(以下、「第1主面21」と呼ぶ。)の上下方向における位置は、凹部93の周囲における床面91の上下方向の位置と略同じである。例えば、倒伏姿勢の扉体2の第1主面21上は、車両等が通過可能である。倒伏姿勢の扉体2の下面(以下、「第2主面22」と呼ぶ。)は、床面91の凹部93の底面に接触または近接している。なお、倒伏姿勢の扉体2の下端に板材(すなわち、前後方向および幅方向に広がる板材)が設けられていない場合、扉体2の第2主面22は、第1主面21から下方へと延びる桁部材等の下端面を意味する。
図1に示す例では、床面91の一部である凹部93の底面も略水平に広がる。
【0020】
扉体2の内部(すなわち、第1主面21と第2主面22との間)には、例えば、浮力部が設けられる。当該浮力部は、例えば、第1主面21と第2主面22との間の空間に配置された発泡樹脂等の浮力体を含む。また、浮力部は、第1主面21と第2主面22との間に設けられた水密の空間を含んでいてもよい。
【0021】
倒伏姿勢の扉体2の後端部23は、凹部93の内部において床面91に回動可能に取り付けられ、床面91により支持されている。以下の説明では、倒伏姿勢の扉体2の後端部23を「支持端部23」と呼ぶ。また、倒伏姿勢の扉体2の前端部24を「可動端部24」と呼ぶ。すなわち、倒伏姿勢の扉体2において、可動端部24は支持端部23よりも前側に位置する。以下の説明では、幅方向に垂直、かつ、扉体2の支持端部23と可動端部24とを結ぶ方向を、扉体2の「長手方向」という。倒伏姿勢の扉体2においては、扉体2の長手方向は、前後方向と同じ方向である。
【0022】
扉体2は、支持端部23において幅方向に略平行に延びる回転軸J1を中心として、
図1中における時計回りに回動することにより、可動端部24が床面91から上方へと離間して起立する。扉体2の支持端部23には、例えば、幅方向に離間して配列される複数の回動支持部25が設けられる。回転軸J1は、例えば、複数の回動支持部25の略中心を通って幅方向に延びる。
【0023】
図1に示す例では、二点鎖線にて示すように、扉体2は、可動端部24と支持端部23とが上下方向に並ぶ状態まで起立可能である。換言すれば、扉体2は、床面91との成す角度が約90度になるまで起立可能である。以下の説明では、
図1中に二点鎖線にて示す扉体2の姿勢を「最大起立姿勢」と呼ぶ。起伏ゲート1では、扉体2は、支持端部23を支点として回動することにより、倒伏姿勢と最大起立姿勢との間で姿勢を変更する。なお、最大起立姿勢の扉体2と床面91との成す角度は、90度よりも小さくてもよい。
【0024】
一対の戸当たり部11は、扉体2の幅方向の両側に配置される。
図1では、扉体2よりも手前側の戸当たり部11の図示を省略している。
図3に示すように、一対の戸当たり部11の間の空間が、上述の開口部92である。戸当たり部11は、例えば、略板状の構造物である。一対の戸当たり部11の幅方向外側には、例えば防潮堤が設けられる。一対の戸当たり部11は、当該防潮堤に固定される。
【0025】
戸当たり部11の幅方向内側の側面である扉体接触面111には、扉体2の側面が接触する。詳細には、扉体2の幅方向両側の側面には、扉体2の長手方向の略全長に亘って、図示省略のシール部材(例えば、水密ゴム)が設けられる。扉体2は、当該シール部材を介して戸当たり部11の扉体接触面111に接触する。当該シール部材により、扉体2と戸当たり部11との間が水密にシールされる。起伏ゲート1では、扉体2の姿勢に関わらず、扉体2の側面は扉体接触面111に接触しており、扉体2と戸当たり部11との間の水密性は維持される。
【0026】
起伏補助部3は、起立補助部4と、倒伏補助部5とを備える。起伏補助部3の起立補助部4および倒伏補助部5は、倒伏姿勢の扉体2の第1主面21の下側に配置される。換言すれば、平面視において、起伏補助部3は倒伏姿勢の扉体2と上下方向に重なる。
【0027】
起立補助部4は、2つの起立用弾性部材41を備える。2つの起立用弾性部材41は、前後方向の略同じ位置にて、幅方向に離間して配置される。2つの起立用弾性部材41は、同じ構造を有している。起立補助部4に含まれる起立用弾性部材41の数は、適宜変更されてよい。起立用弾性部材41の数は、例えば1であってもよく、3以上であってもよい。
【0028】
図4および
図5はそれぞれ、自然長の状態の起立用弾性部材41を示す正面図および縦断面図である。
図6および
図7はそれぞれ、上下方向に圧縮された状態の起立用弾性部材41を示す正面図および縦断面図である。
図5および
図7では、起立用弾性部材41の断面の平行斜線を省略している。起立用弾性部材41は、上下方向に延びる中心軸J2に沿って伸縮するコイルバネ(すなわち、弦巻バネ)である。当該コイルバネは、複数のバネ要素411,412,413と、接続部材414,415とを備える。
【0029】
バネ要素411は、中心軸J2を中心とする径方向(以下、単に「径方向」とも呼ぶ。)において、バネ要素412の内側に位置する。バネ要素412は、バネ要素413の径方向内側に位置する。バネ要素411とバネ要素412とは、接続部材414により直列に接続される。また、バネ要素412とバネ要素413とは、接続部材415により直列に接続される。接続部材414,415は、上下方向に実質的に伸縮しない部材である。
【0030】
図4ないし
図7に示す例では、接続部材414は、天蓋部414aと、筒部414bと、下部フランジ部414cとを備える。天蓋部414aは、中心軸J2を中心とする略円板状の部位である。天蓋部414aの下面には、バネ要素411の上端部が接続される。筒部414bは、中心軸J2を中心とする略円筒状の部位であり、天蓋部414aの外周部から下方に延びる。筒部414bは、径方向においてバネ要素411とバネ要素412との間に位置する。下部フランジ部414cは、中心軸J2を中心とする略円環板状の部位であり、筒部414bの下端部から径方向外方に広がる。下部フランジ部414cの上面には、バネ要素412の下端部が接続される。
【0031】
接続部材415は、上部フランジ部415aと、筒部415bと、下部フランジ部415cとを備える。上部フランジ部415aは、中心軸J2を中心とする略円環板状の部位である。上部フランジ部415aの下面には、バネ要素412の上端部が接続される。筒部415bは、中心軸J2を中心とする略円筒状の部位であり、上部フランジ部415aの外周部から下方に延びる。筒部415bは、径方向においてバネ要素412とバネ要素413との間に位置する。下部フランジ部415cは、中心軸J2を中心とする略円環板状の部位であり、筒部415bの下端部から径方向外方に広がる。下部フランジ部415cの上面には、バネ要素413の下端部が接続される。
【0032】
図4および
図5に示すように、起立用弾性部材41が自然長の状態では、バネ要素412の下端は、バネ要素411の上端と下端との間に位置し、バネ要素413の下端は、バネ要素412の上端と下端との間に位置する。
図6および
図7に示すように、起立用弾性部材41が圧縮された状態では、バネ要素412の下端およびバネ要素413の下端は、バネ要素411の下端と上下方向の略同じ位置に位置し、バネ要素412の上端およびバネ要素413の上端は、バネ要素411の上端と上下方向の略同じ位置に位置する。すなわち、非伸長状態の起立用弾性部材41において、複数のバネ要素411〜413は、中心軸J2に垂直な径方向に重なる。
【0033】
起立用弾性部材41の下端部(すなわち、バネ要素411の下端部)は、凹部93の底面に固定される。起立用弾性部材41の上端部(すなわち、バネ要素413の上端部)は、扉体2に固定されない自由端である。なお、
図4ないし
図7における起立用弾性部材41の上下は、床面91に取り付けられた際の上下とは必ずしも一致する必要はなく、図中の上下とは逆向きに取り付けられてもよい。
【0034】
扉体2が倒伏姿勢の状態では、各起立用弾性部材41は、扉体2の重量により上下方向に圧縮されており、
図6および
図7に示す圧縮状態である。
図1に示すように、起立用弾性部材41は、倒伏姿勢の扉体2の内部に位置する。換言すれば、起立用弾性部材41の上端は、上下方向において、倒伏姿勢の扉体2の第1主面21と第2主面22との間に位置する。
図1に示す例では、起立用弾性部材41のおよそ全体が、倒伏姿勢の扉体2の内部に位置する。
【0035】
倒伏補助部5は、倒伏用弾性部材51と、起立制限部材52とを備える。
図2に示す例では、2組の倒伏用弾性部材51および起立制限部材52が、前後方向の略同じ位置にて、幅方向に離間して配置される。2組の倒伏用弾性部材51および起立制限部材52は、同じ構造を有している。倒伏補助部5に含まれる倒伏用弾性部材51および起立制限部材52の数は、適宜変更されてよい。倒伏用弾性部材51および起立
制限部材
52の数は、例えば1であってもよく、3以上であってもよい。
【0036】
図8は、1組の倒伏用弾性部材51および起立制限部材52を示す側面図である。
図8中の倒伏用弾性部材51および起立制限部材52は、長手方向の中央部にて2つ折りにされた状態である。
図9は、1組の倒伏用弾性部材51および起立制限部材52を少し広げた状態で示す斜視図である。倒伏用弾性部材51は、長手方向に伸縮可能な紐状または帯状の弾性樹脂部材である。起立制限部材52は、長手方向に実質的に伸縮しない紐状または帯状の部材である。倒伏用弾性部材51は、例えば、ゴム製の帯状部材である。起立制限部材52は、例えば、合成繊維製の帯状部材である。
【0037】
倒伏用弾性部材51の長手方向の両端部は、起立制限部材52に固定される。
図8および
図9に示す例では、倒伏用弾性部材51の両端部は、起立制限部材52の両端部から長手方向に離れた位置に固定される。以下の説明では、倒伏用弾性部材51の端部と起立制限部材52とが固定された部位を、「接合部53」と呼ぶ。2つの接合部53間の起立制限部材52の長さは、倒伏用弾性部材51の自然長よりも長い。
【0038】
起立制限部材52の長手方向の両端部は、床面91および扉体2にそれぞれ固定される。起立制限部材52の端部と床面91との接続部は、回転軸J1から前方に離れた位置である。起立制限部材52の端部と扉体2との接続部は、回転軸J1から扉体2の長手方向に離れた位置である。倒伏用弾性部材51の長手方向の両端部は、起立制限部材52を介して、床面91および扉体2にそれぞれ間接的に固定される。すなわち、倒伏用弾性部材51は、両端部が床面91および扉体2にそれぞれ固定された紐状または帯状の弾性樹脂部材である。2つの起立制限部材52の長さは、個別に調節可能である。好ましくは、起立制限部材52の長さは、無段階に調節可能である。起立制限部材52の長さの調節は、紐状または帯状の部材の長さを調節する様々な方法により行われてよい。例えば、腰に着用するベルトのバックルと略同様の構造を有する長さ調節機構が、各起立制限部材52に設けられてもよい。
【0039】
扉体2が倒伏姿勢の状態では、倒伏用弾性部材51および起立制限部材52は、倒伏用弾性部材51を内側にして2つ折りにされた状態で、前後方向に略平行に配置される。
図1に示すように、倒伏用弾性部材51および起立制限部材52は、倒伏姿勢の扉体2の内部に位置する。なお、
図1では、倒伏用弾性部材51および起立制限部材52の厚さを実際よりも大きく描いている。倒伏姿勢の扉体2と床面91との間に間隙がある場合、倒伏用弾性部材51および起立制限部材52は、当該間隙に配置されてもよい。
【0040】
次に、
図10ないし
図14を参照しつつ、扉体2の起立の様子について説明する。
図15は、扉体2の姿勢と、扉体2に働くモーメントとの関係を示す図である。
図15中の横軸は、扉体2の床面91に対する角度(以下、単に「扉体2の角度」と呼ぶ。)を示す。扉体2の角度は、扉体2が倒伏姿勢である際に0度であり、扉体2が床面91に対して垂直に起立した際に90度である。
図15中の縦軸は、
図1中における反時計回りのモーメントを正として、扉体2に働く回転軸J1回りのモーメントを示す。すなわち、
図15中の正のモーメントは、扉体2を倒伏させる方向に働くモーメント(以下、「倒伏モーメント」と呼ぶ。)であり、負のモーメントは、扉体2を起立させる方向に働くモーメント(以下、「起立モーメント」と呼ぶ。)である。
【0041】
図15中の破線81は、扉体2の自重によるモーメントであり、実線82は、起立補助部4により扉体2に付与されるモーメントである。
図15中の実線83は、倒伏補助部5により扉体2に付与されるモーメントであり、太い実線84は、線81〜83を合計した合計モーメントである。扉体2の角度が0度である場合(すなわち、扉体2が倒伏姿勢である場合)、扉体2の自重による倒伏モーメントの絶対値は、圧縮状態の起立用弾性部材41による起立モーメントの絶対値よりも大きい。
【0042】
図10に示すように、起伏ゲート1に水90が流入すると、水90により扉体2に生じる浮力等により、扉体2に起立モーメントが付与され、扉体2の起立が開始される。このとき、扉体2には、水90による起立モーメント以外に、扉体2の自重による倒伏モーメント、および、起立用弾性部材41の復元力による起立モーメントが働く。
【0043】
起立用弾性部材41による起立モーメントは、扉体2の角度が0度から
図11に示す所定の第1角度になるまで、扉体2に対して継続的に働く。これにより、扉体2の起立が補助され、扉体2の起立速度が増大する。その結果、水90が扉体2を越えて開口部92から流入することを抑制することができる。以下の説明では、
図11に示す扉体2の姿勢を「第1姿勢」と呼ぶ。第1姿勢の扉体2と床面91(すなわち、凹部93の底面)との成す角度である第1角度は、0度よりも大きく、最大起立姿勢の扉体2と床面91との成す角度(上記例では、約90度)よりも小さい。換言すれば、第1姿勢は、倒伏姿勢と最大起立姿勢との間の姿勢である。第1角度は、例えば、5度以上かつ20度以下である。
図11に示す例では、第1角度は約10度である。
【0044】
扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態では、扉体2の角度が大きくなるに従って、圧縮状態の起立用弾性部材41の上下方向の長さは漸次増大し、起立用弾性部材41により扉体2に付与される起立モーメントの絶対値は漸次減少する。扉体2が第1姿勢まで起立すると、起立用弾性部材41の圧縮が解除され、起立用弾性部材41は略自然長となる。
【0045】
扉体2が第1姿勢よりも起立すると、起立用弾性部材41は扉体2から離れ、起立用弾性部材41から扉体2にモーメントは付与されない。なお、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態では、倒伏補助部5の倒伏用弾性部材51および起立制限部材52は弛んでおり、倒伏補助部5から扉体2にモーメントは実質的に付与されない。
【0046】
扉体2がさらに起立し、扉体2の角度が
図12に示す所定の第2角度になると、倒伏用弾性部材51が、自然長の状態で撓みなく直線状に延びる。以下の説明では、
図12に示す扉体2の姿勢を「第2姿勢」と呼ぶ。第2姿勢の扉体2と床面91との成す角度である第2角度は、第1角度よりも大きく、最大起立姿勢の扉体2と床面91との成す角度よりも小さい。換言すれば、第2姿勢は、第1姿勢と最大起立姿勢との間の姿勢である。第2角度は、例えば、20度以上かつ90度未満である。
図12に示す例では、第2角度は約45度である。
【0047】
扉体2が第1姿勢と第2姿勢との間に位置する状態では、倒伏用弾性部材51は自然長であり、倒伏用弾性部材51から扉体2にモーメントは実質的に付与されない。また、起立用弾性部材41は扉体2から離れており、起立用弾性部材41から扉体2にモーメントは付与されない。扉体2には、水90による起立モーメント、および、扉体2の自重による倒伏モーメントが働く。
【0048】
扉体2が第2姿勢よりも起立すると、
図13に例示するように、倒伏用弾性部材51が伸張されて自然長よりも長くなる。これにより、倒伏用弾性部材51の復元力による倒伏モーメントが扉体2に働く。扉体2が第2姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態では、扉体2の角度が大きくなるに従って、倒伏用弾性部材51の長さは漸次増大し、倒伏用弾性部材51により扉体2に付与される倒伏モーメントの絶対値は漸次増大する。
【0049】
扉体2が第2姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態では、扉体2には、水90による起立モーメント、扉体2の自重による倒伏モーメント、および、倒伏用弾性部材51による倒伏モーメントが働く。なお、起立用弾性部材41は扉体2から離れており、起立用弾性部材41から扉体2にモーメントは付与されない。また、起立制限部材52は弛んでいる。
【0050】
図14に示すように、扉体2が最大起立姿勢まで起立すると、起立制限部材52が撓みなく直線状に延びる。起立制限部材52は、上述のように実質的に伸縮しないため、扉体2が最大起立姿勢よりも後側に回動することが防止される。起伏ゲート1では、扉体2が第2姿勢から最大起立姿勢まで起立する間、倒伏用弾性部材51による倒伏モーメントが扉体2に働くことにより、扉体2の起立速度が抑制される。これにより、扉体2が最大起立姿勢になる際に起立制限部材52等に加わる力を低減することができる。なお、
図12に示すように、扉体2が第2姿勢まで起立した状態では、水90の水面は扉体2の可動端部24(すなわち、天端)よりも下方に位置するため、扉体2の起立速度が抑制されても、水90が扉体2の可動端部24を越えて開口部92から流入することはない。
【0051】
図14に示す状態から扉体2の前側の水位が下がり始めると、倒伏用弾性部材51による倒伏モーメントにより、扉体2の倒伏が開始される。扉体2の角度が90度未満になると、扉体2の自重による倒伏モーメントも働く。扉体2が最大起立姿勢から第2姿勢まで倒伏する間、扉体2の自重による倒伏モーメントに加えて、倒伏用弾性部材51による倒伏モーメントが扉体2に継続的に働く。これにより、扉体2の倒伏が補助され、水90の水位の低下開始後、速やかに扉体2の倒伏が開始される。これにより、水90の水位が大きく低下した後に扉体2の倒伏が開始されて扉体2が急速に倒伏することを防止することができる。
【0052】
扉体2が
図12に示す第2姿勢よりも倒伏すると、倒伏用弾性部材51が弛み、倒伏用弾性部材51によるモーメントは扉体2に付与されない。扉体2が
図11に示す第1姿勢まで倒伏すると、扉体2が起立用弾性部材41の上端部に接触し、起立用弾性部材41の圧縮が開始される。扉体2が第1姿勢から
図10に示す倒伏姿勢まで倒伏する間、起立用弾性部材41による起立モーメントが扉体2に継続的に働くことにより、扉体2の倒伏速度が抑制される。これにより、扉体2が倒伏姿勢になる際に床面91等に加わる力を低減することができる。また、倒伏用弾性部材51は、起立制限部材52と共に、長手方向の中央部にて2つ折りにされる。
【0053】
以上に説明したように、起伏ゲート1は、扉体2と、起伏補助部3とを備える。倒伏姿勢の扉体2において、扉体2の可動端部24は支持端部23よりも前側に位置する。扉体2は、支持端部23を支点として回動することにより、倒伏姿勢と最大起立姿勢との間で姿勢を変更する。起伏補助部3は、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢(すなわち、倒伏姿勢と最大起立姿勢との間の姿勢)との間に位置する状態においてのみ、扉体2に起立モーメントを付与する。また、起伏補助部3は、扉体2が最大起立姿勢と第2姿勢(すなわち、第1姿勢と最大起立姿勢との間の姿勢)との間に位置する状態においてのみ、扉体2に倒伏モーメントを付与する。これにより、扉体の姿勢に関わらず扉体に常時モーメントを付与する構造を設ける場合に比べて、起伏ゲート1の構造を簡素化することができる。その結果、水の流入時に迅速に起立開始可能、かつ、水位低下時に早期に倒伏開始可能な起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。
【0054】
起伏ゲート1では、起伏補助部3が、倒伏姿勢の扉体2の上面(すなわち、第1主面21)の下側に配置される。これにより、起伏補助部3を扉体2の側方(すなわち、扉体2よりも幅方向の外側)に配置する場合に比べて、起伏ゲート1を小型化することができる。その結果、起伏ゲート1の設置面積を小さくすることができる。
【0055】
起伏ゲート1では、起伏補助部3を、扉体2の両側部よりも幅方向の中央側に配置することができる。このため、扉体2に起立または倒伏を補助するモーメントを付与する際に扉体の可動端部の両側部のみに力を加える場合に比べて、起伏補助部3から扉体2に加える力を増大することができる。一方、扉体2に同程度の力を加える場合、扉体の可動端部の両側部のみに力を加える場合に比べて、扉体2の径間長(すなわち、扉体2の幅)を増大することができる。また、扉体2の可動端部24近傍の部材を小型化し、起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。
【0056】
上述のように、起伏補助部3は、倒伏姿勢の扉体2の内部に位置する。これにより、凹部93の底面(すなわち、床面91)に、起伏補助部3を収容するための穴等を設ける必要がない。また、上記穴等の排水設備等を設ける必要もない。したがって、起伏ゲート1の設置およびメンテナンスを容易とすることができる。
【0057】
起伏補助部3は、床面91に固定される起立用弾性部材41を備える。起立用弾性部材41は、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態において、上下方向に圧縮されている。これにより、起伏補助部3の起立補助部4の構造を簡素化することができる。その結果、起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。
【0058】
起伏補助部3では、起立用弾性部材41は、必ずしも床面91に固定される必要はない。例えば、起立用弾性部材41の上端部が、扉体2に固定されてもよい。この場合、起立用弾性部材41の下端部は、床面91に固定されない自由端である。すなわち、起立用弾性部材41は、床面91および扉体2の一方にのみ固定される。そして、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態において、当該起立用弾性部材41は上下方向に圧縮されている。起伏ゲート1では、起立用弾性部材41が扉体2に固定される場合であっても、上記と同様に、起伏補助部3の起立補助部4の構造を簡素化することができる。その結果、起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。
【0059】
上述のように、起立用弾性部材41は、中心軸J2に沿って伸縮するコイルバネである。当該コイルバネは、直列に接続される複数のバネ要素411〜413を備える。非伸縮状態の当該コイルバネにおいて、複数のバネ要素411〜413は、中心軸J2に垂直な方向に重なる。これにより、起立用弾性部材41による起立モーメントを必要な大きさとしつつ、圧縮状態の起立用弾性部材41の上下方向の高さを低くすることができる。その結果、倒伏姿勢の扉体2の内部に、起立用弾性部材41を容易に配置することができる。
【0060】
起伏補助部3は、一の起立用弾性部材41とは幅方向の異なる位置に配置された他の起立用弾性部材41をさらに備える。このように、複数の起立用弾性部材41を設けることにより、各起立用弾性部材41を小型化することができる。また、複数の起立用弾性部材41が幅方向に配列されることにより、扉体2の径間長をさらに増大することができ、また、扉体2の可動端部24近傍の部材をさらに小型化することもできる。その結果、起伏ゲート1の製造コストを、より一層低減することができる。
【0061】
起伏補助部3は、紐状または帯状の倒伏用弾性部材51と、紐状または帯状の起立制限部材52とを備える。倒伏用弾性部材51の両端部は、床面91および扉体2にそれぞれ固定される。倒伏用弾性部材51は、長手方向に伸縮可能な部材である。起立制限部材52の両端部は、床面91および扉体2にそれぞれ固定される。扉体2が第2姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態において、倒伏用弾性部材51は伸張されている。このように、起伏補助部3の倒伏補助部5では、倒伏用弾性部材51および起立制限部材52の2種類の部材を準備すればよく、また、両部材の両端部を床面91および扉体2にそれぞれ固定するだけで倒伏補助部5を構成することができる。したがって、倒伏補助部5の構造を簡素化することができる。その結果、起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。また、扉体2が最大起立姿勢である状態において、起立制限部材52が直線状に延びる。これにより、扉体2が最大起立姿勢を越える姿勢まで過剰に回動することを、簡素な構造にて防止することができる。
【0062】
起伏補助部3は、一の倒伏用弾性部材51とは幅方向の異なる位置に配置された他の倒伏用弾性部材51をさらに備える。このように、複数の倒伏用弾性部材51を設けることにより、各倒伏用弾性部材51を小型化することができる。また、複数の倒伏用弾性部材51が幅方向に配列されることにより、扉体2の径間長をさらに増大することができ、また、扉体2の可動端部24近傍の部材をさらに小型化することもできる。その結果、起伏ゲート1の製造コストを、より一層低減することができる。
【0063】
起伏補助部3は、一の起立制限部材52とは幅方向の異なる位置に配置された他の起立制限部材52をさらに備える。当該他の起立制限部材52は、両端部が床面91および扉体2にそれぞれ固定された紐状または帯状の部材である。扉体2が最大起立姿勢である状態において、当該他の起立制限部材52も直線状に延びる。上記一の起立制限部材52の長さ、および、当該他の起立制限部材52の長さは、個別に調節可能である。これにより、複数の起立制限部材52の長さを容易に同じとすることができる。その結果、扉体2が最大起立姿勢となる際に、複数の起立制限部材52に加わる力を略均等とすることができる。
【0064】
起伏ゲート1では、倒伏用弾性部材51の数と、起立制限部材52の数とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
図2に示す例では、倒伏用弾性部材51と起立制限部材52とは、幅方向の同じ位置に配置されるが、幅方向において異なる位置に配置されてもよい。この場合、倒伏用弾性部材51の長手方向の両端部は、起立制限部材52を介することなく、床面91および扉体2にそれぞれ直接的に固定される。なお、倒伏用弾性部材51の長手方向の端部は、起立制限部材52以外の他の部材を介して、床面91または扉体2に間接的に固定されてもよい。また、起立制限部材52の長手方向の端部も、他の部材を介して、床面91または扉体2に間接的に固定されてもよい。
【0065】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る起伏ゲート1aについて説明する。
図16は、起伏ゲート1aを示す側面図である。
図17は、起伏ゲート1aを示す平面図である。
図18は、起伏ゲート1aを前方から見た正面図である。起伏ゲート1aは、
図1ないし
図3に示す起伏ゲート1の各構成に加えて、カウンタウエイト機構6をさらに備える。起伏ゲート1aのカウンタウエイト機構6以外の構造は、上述の起伏ゲート1と略同様である。以下の説明では、起伏ゲート1aのカウンタウエイト機構6以外の構成に、起伏ゲート1の対応する構成と同符号を付す。
【0066】
カウンタウエイト機構6は、カウンタウエイト61と、紐状または帯状の接続部材であるロープ62とを備える。
図16ないし
図18に示す例では、2組のカウンタウエイト61およびロープ62が、カウンタウエイト機構6に設けられる。2つのカウンタウエイト61は、扉体2の幅方向両側において、扉体2の支持端部23よりも後側に配置される。カウンタウエイト61は、例えば、戸当たり部11の内部に配置される。カウンタウエイト61には、ロープ62の一方の端部が接続される。
【0067】
ロープ62は、前後方向に並ぶ2つの定滑車63を介して前方へと延びる。定滑車63は、例えば、戸当たり部11に固定されている。ロープ62の他方の端部は、前側の定滑車63の下方にて扉体2の可動端部24に接続される。例えば、ロープ62の当該他方の端部は、可動端部24において幅方向外方へと突出する突出部241に接続される。カウンタウエイト61は、ロープ62により吊り下げられており、床面91から上方に離間している。扉体2が倒伏姿勢である場合、扉体2の自重による倒伏モーメントの絶対値は、圧縮状態の起立用弾性部材41による起立モーメントとカウンタウエイト61の重量による起立モーメントとの合計の絶対値よりも大きい。
【0068】
次に、
図19ないし
図23を参照しつつ、起伏ゲート1aにおける扉体2の起立の様子について説明する。
図19に示すように、起伏ゲート1aに水90が流入すると、水90により扉体2に生じる浮力等により、扉体2に起立モーメントが付与され、扉体2の起立が開始される。このとき、扉体2には、水90による起立モーメント以外に、扉体2の自重による倒伏モーメント、起立用弾性部材41の復元力による起立モーメント、および、カウンタウエイト61による起立モーメント(すなわち、カウンタウエイト61に働く重力による起立モーメント)が働く。
【0069】
起立用弾性部材41による起立モーメント、および、カウンタウエイト61による起立モーメントは、扉体2が倒伏姿勢から
図20に示す第1姿勢になるまで、扉体2に対して継続的に働く。これにより、扉体2の起立が補助され、扉体2の起立速度が増大する。扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態では、扉体2の角度が大きくなるに従って、起立用弾性部材41による起立モーメントの絶対値、および、カウンタウエイト61による起立モーメントの絶対値は漸次減少する。
【0070】
扉体2が第1姿勢よりも起立すると、起立用弾性部材41は扉体2から離れ、起立用弾性部材41から扉体2にモーメントは付与されない。扉体2が第1姿勢よりも起立しても、カウンタウエイト61による起立モーメントは、扉体2に対して継続的に働く。そして、扉体2が
図21に示す第2姿勢になると、倒伏用弾性部材51が自然長にて直線状に延びる。
【0071】
本実施の形態では、扉体2が第2姿勢になると、側面視において、扉体2と、扉体2の可動端部24から前側の定滑車63へと延びるロープ62とが、一直線上に位置する。換言すれば、側面視において、扉体2の回転軸J1から前側の定滑車63の下部へと延ばした接線と、扉体2および上記ロープ62とが重なる。これにより、カウンタウエイト61から扉体2に付与されるモーメントが実質的にゼロになる。
図21に示すカウンタウエイト61の位置は、カウンタウエイト61の最下点である。最下点においても、カウンタウエイト61は、ロープ62により吊り下げられており、床面91から上方に離間している。
【0072】
カウンタウエイト61による起立モーメントは、扉体2が第1姿勢から第2姿勢になるまで、扉体2に対して継続的に働く。扉体2が第1姿勢と第2姿勢との間に位置する状態では、扉体2の角度が大きくなるに従って、カウンタウエイト61による起立モーメントの絶対値は漸次減少する。なお、カウンタウエイト61から扉体2に付与されるモーメントがゼロになる扉体2の姿勢は、必ずしも第2姿勢である必要はなく、例えば、第1姿勢と第2姿勢との間で適宜変更されてよい。
【0073】
扉体2が第2姿勢よりも起立すると、
図22に例示するように、倒伏用弾性部材51が自然長よりも伸張され、倒伏用弾性部材51による倒伏モーメントが扉体2に働く。また、カウンタウエイト61による倒伏モーメント(すなわち、カウンタウエイト61に働く重力による倒伏モーメント)も扉体2に働く。扉体2が第2姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態では、扉体2の角度が大きくなるに従って倒伏用弾性部材51による倒伏モーメントの絶対値、および、カウンタウエイト61による倒伏モーメントの絶対値は漸次増大する。
【0074】
図23に示すように、扉体2が最大起立姿勢まで起立すると、起立制限部材52が撓みなく直線状に延びる。起立制限部材52により、扉体2が最大起立姿勢よりも後側に回動することが防止される。起伏ゲート1aでは、扉体2が第2姿勢から最大起立姿勢まで起立する間、倒伏用弾性部材51による倒伏モーメント、および、カウンタウエイト61による倒伏モーメントが扉体2に働くことにより、扉体2の起立速度が抑制される。
【0075】
扉体2の前側の水位が下がり始めると、倒伏用弾性部材51による倒伏モーメント、および、カウンタウエイト61による倒伏モーメントにより、扉体2の倒伏が開始される。扉体2の角度が90度未満になると、扉体2の自重による倒伏モーメントも働く。扉体2が最大起立姿勢から
図21に示す第2姿勢まで倒伏する間、扉体2の自重による倒伏モーメントに加えて、倒伏用弾性部材51による倒伏モーメント、および、カウンタウエイト61による倒伏モーメントが扉体2に継続的に働く。これにより、扉体2の倒伏が補助され、水90の水位の低下開始後、速やかに扉体2の倒伏が開始される。
【0076】
扉体2が第2姿勢から
図20に示す第1姿勢まで倒伏する間、カウンタウエイト61による起立モーメントが扉体2に働くことにより、扉体2の倒伏速度が抑制される。また、倒伏用弾性部材51は弛み、倒伏用弾性部材51によるモーメントは扉体2に付与されない。扉体2が第1姿勢まで倒伏すると、扉体2が起立用弾性部材41の上端部に接触し、起立用弾性部材41の圧縮が開始される。扉体2が第1姿勢から
図19に示す倒伏姿勢まで倒伏する間、起立用弾性部材41による起立モーメント、および、カウンタウエイト61による起立モーメントが扉体2に継続的に働くことにより、扉体2の倒伏速度が抑制される。
【0077】
起伏ゲート1aでは、
図1ないし
図3に示す起伏ゲート1と同様に、起伏補助部3は、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態においてのみ、扉体2に起立モーメントを付与する。また、起伏補助部3は、扉体2が最大起立姿勢と第2姿勢との間に位置する状態においてのみ、扉体2に倒伏モーメントを付与する。これにより、カウンタウエイト61から扉体2に付与するモーメントの絶対値を小さくしつつ、水の流入時に迅速に起立開始可能、かつ、水位低下時に早期に倒伏開始可能な起伏ゲート1aを実現することができる。したがって、カウンタウエイト61を軽量化することができる。これにより、扉体2の径間長(すなわち、扉体2の幅)を増大することができる。また、扉体2の可動端部24近傍の部材を小型化し、起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。
【0078】
上述の起伏ゲート1,1aでは、様々な変更が可能である。
【0079】
例えば、起伏ゲート1,1aでは、凹部93の底面に穴等が設けられ、起立用弾性部材41の下部が当該穴等に収容されてもよい。また、床面91に凹部93は設けられず、倒伏姿勢の扉体2が、周囲と略同じ高さの平坦な床面91に設置されてもよい。
【0080】
上述のように、起立用弾性部材41では、3つのバネ要素411〜413が、2つの接続部材414,415により直列に接続されるが、起立用弾性部材41の構造は様々に変更されてよい。例えば、起立用弾性部材41に含まれるバネ要素の数は3には限定されず、2以上の範囲で適宜変更されてよい。また、複数のバネ要素を直列に接続する構造も、適宜変更されてよい。
【0081】
起立用弾性部材41は、複数のバネ要素411〜413が直列に接続されるコイルバネには限定されず、他の形状のコイルバネであってもよい。また、起立用弾性部材41は、コイルバネには限定されず、様々な構造を有する他の弾性部材であってもよい。例えば、起立用弾性部材41は、板バネまたはねじりコイルバネであってもよい。
【0082】
倒伏用弾性部材51は、紐状または帯状の弾性樹脂部材には限定されず、他の形状または他の構造を有する弾性部材であってもよい。例えば、
図9に示す帯状の倒伏用弾性部材51に代えて、コイルバネの両端部、または、ねじりコイルバネのアームの両端部が起立制限部材52に固定されてもよい。
【0083】
起伏補助部3では、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態においてのみ扉体2に起立モーメントを付与する構造と、扉体2が第2姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態においてのみ扉体2に倒伏モーメントを付与する構造とが兼用されてもよい。例えば、上述の床面91に固定された起立用弾性部材41の上端部が、実質的に伸縮しない紐状または帯状の接続部材54により、扉体2と接続されてもよい。この場合、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態においてのみ、圧縮状態の起立用弾性部材41から扉体2に起立モーメントが付与される。また、扉体2が第2姿勢よりも起立すると、
図24に例示するように、起立用弾性部材41が、接続部材54を介して扉体2により斜め上方に引っ張られて伸張する。これにより、扉体2が第2姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態においてのみ、伸張状態の起立用弾性部材41から扉体2に倒伏モーメントが付与される。
【0084】
起立補助部4は、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態においてのみ、扉体2に起立モーメントを付与するものであればよく、必ずしも起立用弾性部材41を備える必要はない。倒伏補助部5は、扉体2が第2姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態においてのみ、扉体2に倒伏モーメントを付与するものであればよく、必ずしも倒伏用弾性部材51および起立制限部材52を備える必要はない。
【0085】
起伏補助部3(すなわち、起立補助部4および倒伏補助部5)は、必ずしも倒伏姿勢の扉体2の上面の下側に配置される必要はない。例えば、起伏補助部3の一部または全部が、扉体2の側方に配置されてもよい。
【0086】
本発明の関連技術では、起伏補助部3から倒伏補助部5が省略されてもよい。この場合、起伏ゲート1,1aは、扉体2と、起立補助部4とを備える。上記と同様に、倒伏姿勢の扉体2において、扉体2の可動端部24は支持端部23よりも前側に位置する。扉体2は、支持端部23を支点として回動することにより、倒伏姿勢と最大起立姿勢との間で姿勢を変更する。起立補助部4は、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態においてのみ、扉体2に起立モーメントを付与する。起立補助部4は、倒伏姿勢の扉体2の上面の下側に配置されて床面91および扉体2の一方に固定される起立用弾性部材41を備える。起立用弾性部材41は、扉体2が倒伏姿勢と第1姿勢との間に位置する状態において、上下方向に圧縮されている。起立用弾性部材41は、中心軸J2に沿って伸縮するコイルバネである。当該コイルバネは、直列に接続される複数のバネ要素411〜413を備える。非伸縮状態の当該コイルバネにおいて、複数のバネ要素411〜413は、中心軸J2に垂直な方向に重なる。これにより、起立補助部4の構造を簡素化して、水の流入時に迅速に起立開始可能な起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。また、圧縮状態の起立用弾性部材41の上下方向の高さを低くすることができる。
【0087】
起伏ゲート1,1aでは、起伏補助部3から起立補助部4が省略されてもよい。この場合、起伏ゲート1,1aは、上述の扉体2と、倒伏補助部5とを備える。上記と同様に、倒伏補助部5は、扉体2が第2姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態においてのみ、扉体2に倒伏モーメントを付与する。倒伏補助部5は、倒伏姿勢の扉体2の上面の下側に配置される。倒伏補助部5は、紐状または帯状の倒伏用弾性部材51と、紐状または帯状の起立制限部材52とを備える。倒伏用弾性部材51の両端部は、床面91および扉体2にそれぞれ固定される。倒伏用弾性部材51は、長手方向に伸縮可能な部材である。起立制限部材52の両端部は、床面91および扉体2にそれぞれ固定される。扉体2が第2姿勢と最大起立姿勢との間に位置する状態において、倒伏用弾性部材51は伸張されている。また、扉体2が最大起立姿勢である状態において、起立制限部材52が直線状に延びる。これにより、倒伏補助部5の構造を簡素化して、水位低下時に早期に倒伏開始可能な起伏ゲート1の製造コストを低減することができる。また、扉体2が最大起立姿勢を越える姿勢まで過剰に回動することを、簡素な構造にて防止することができる。
【0088】
起伏ゲート1,1aの構造は、水圧により扉体2が自動的に起立する起伏ゲート(いわゆる、浮体式起伏ゲート)以外の起伏ゲートに適用されてもよい。例えば、手動で扉体2を起立させる起伏ゲート、または、油圧シリンダや電動ジャッキ等で扉体2を起立させる起伏ゲートに、上述の起伏ゲート1,1aの構造が適用されてもよい。
【0089】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0090】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。