特許第6874122号(P6874122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6874122-積層体の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874122
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20210510BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20210510BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   B32B27/00 D
   B32B27/32 E
   B32B27/32 103
   !B65D65/40 D
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-509652(P2019-509652)
(86)(22)【出願日】2018年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2018011344
(87)【国際公開番号】WO2018180862
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-64999(P2017-64999)
(32)【優先日】2017年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】前田 峻宏
(72)【発明者】
【氏名】小川 慶之
【審査官】 鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−143903(JP,A)
【文献】 特開2002−326660(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/093805(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
B65D 65/00 − 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記要件(1)〜()を満たし、
80〜140℃の温度条件下で5〜120分間熱処理する熱処理工程を含む、
ポリプロピレン系接着層(I)と基材層(II)とを有する積層体の製造方法。
(1)前記接着層(I)が、プロピレン共重合体(A)およびブテン由来の構造単位を有する共重合体(B)の合計100重量%に対し、前記共重合体(A)を97〜70重量%、前記共重合体(B)を3〜30重量%含む
(2)前記共重合体(A)は、示差走査熱量計によって測定される融点が70〜120℃であり、ブテン由来の構造単位の含量が1モル%未満である
(3)前記共重合体(B)は、示差走査熱量計によって測定される融点が130℃以下であり、ブテン由来の構造単位の含量が1モル%以上である
(4)前記接着層(I)が、不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のグラフトモノマーに由来する構造単位を有する重合体(C)を含む
(5)前記基材層(II)がポリエステル系樹脂を含む
(6)前記接着層(I)を形成する接着剤のASTM D1238(230℃、2.16kg荷重)に基づくMFRが0.1〜9.2g/10分である
(7)前記共重合体(A)が、プロピレンと炭素数2または5〜24のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィン含量が10〜30モル%である共重合体である
【請求項2】
前記熱処理工程が水を含む環境下で行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記重合体(C)におけるグラフトモノマーのグラフト量が、前記グラフトモノマーに由来する構造単位を除いた構造単位100重量部に対して、0.001〜5重量部である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記共重合体(B)が、ブテン由来の構造単位を10〜99モル%含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記積層体が、さらに、エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物およびポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むガスバリア層を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記基材層(II)が延伸工程を含む方法で得られた層である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記基材層(II)が表面に無機物層を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記基材層(II)がポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記接着層(I)が、80℃のノルマルデカン可溶成分を5〜30質量%含有し、
前記可溶成分がブテン由来の構造単位を1モル%以上含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関し、具体的には、新規な接着層を含む積層体に関する。さらに詳しくは、本発明の一実施形態は、初期接着性に優れ、熱履歴後の接着力にも優れる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装資材用フィルムとしては、ガスバリア性を有する、エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリアミド(PA)またはポリエステル(例:ポリエチレンフタレート(PET))などの極性ポリマーからなる層と、水蒸気バリア性、耐油性に優れるポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などの樹脂からなる層との多層フィルムが使用されている。
【0003】
この極性ポリマーと反応し、接着するための接着層として、グラフト変性されたPPやPEが使用されている。これらの中でも、PPは、剛性、耐熱性、透明性などに優れる熱可塑性成形材料として広く利用されているが、柔軟性に劣るため、接着剤として用いる際は通常、PPに軟質ゴム成分を配合している。このようにPPに軟質ゴム成分を配合すると、EVOHやPAと、グラフト変性部との反応性が良好となり、接着性が改善されたポリプロピレン系接着剤が得られるが(例えば、特許文献1および特許文献2)、一方で40℃以上の熱履歴を加えると、接着性が低下してしまうという問題点も知られている。
【0004】
この問題点を解決するために、軟質ゴム成分として最適化されたプロピレン・エチレン共重合体を加えることで、熱履歴後の接着性にも優れるポリプロピレン系接着剤が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−111069号公報
【特許文献2】特開平4−300933号公報
【特許文献3】国際公開第2007/086425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献3に記載の接着剤から得られる接着層は、PETなどのポリエステル系樹脂からなる基材との接着性の点で改良の余地があり、特にレトルトやボイルなどの熱履歴時や熱履歴後の安定した接着性能の点で改良の余地があった。
【0007】
本発明の一実施形態は、ポリエステル系樹脂を含む基材に対する接着性に優れ、特に、レトルトやボイルなどの熱処理後であっても安定した接着性能を有する積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記構成例によれば、前述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0009】
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、
少なくとも下記要件(1)〜(5)を満たし、
80〜140℃の温度条件下で5〜120分間熱処理する熱処理工程を含む、
ポリプロピレン系接着層(I)と基材層(II)とを有する積層体の製造方法である。
(1)前記接着層(I)が、プロピレン共重合体(A)を97〜70重量%、ブテン由来の構造単位を有する共重合体(B)を3〜30重量%(但し、共重合体(A)および(B)の合計を100重量%とする)含む
(2)前記共重合体(A)は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点(TmA)が70〜120℃であり、ブテン由来の構造単位の含量が1モル%未満である
(3)前記共重合体(B)は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点(TmB)が130℃以下であり、ブテン由来の構造単位の含量が1モル%以上である
(4)前記接着層(I)が、不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のグラフトモノマーに由来する構造単位を有する重合体(C)を含む
(5)前記基材層(II)がポリエステル系樹脂を含む
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、ポリエステル系樹脂を含む基材との初期接着性(熱処理前の接着性)に優れるとともに、ボイル、レトルトまたはアニールなどの熱処理を経ても柔軟性の変化が少なく、安定した接着性能を維持する積層体を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1で得られた接着剤を用いて作成したシートおよび該シートを121℃で30分間、空気環境下で加熱処理したシートの貯蔵弾性率(E')のグラフである。
図2図2は、比較例1で得られた接着剤を用いて作成したシートおよび該シートを121℃で30分間、空気環境下で加熱処理したシートの貯蔵弾性率(E')のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪積層体の製造方法および積層体≫
本発明の一実施形態に係る、ポリプロピレン系接着層(I)と基材層(II)とを有する積層体の製造方法(以下「本方法」ともいう。)は、
少なくとも前記要件(1)〜(5)を満たし、
80〜140℃の温度条件下で5〜120分間熱処理する熱処理工程を含む。
【0013】
このような本方法によれば、ポリエステル系樹脂を含む基材との初期接着性に優れるとともに、ボイル、レトルトまたはアニールなどの熱処理を経ても柔軟性の変化が少なく安定した接着性能を維持する積層体を容易に得ることができる。
特に、従来は、前記のような熱処理後には、接着性が初期に比べ低下すると考えられていたが、予想に反し、本発明の一実施形態によれば、熱処理後の接着性が、初期に比べ、むしろ高い積層体も得ることができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る積層体は、
少なくとも下記要件(1)〜(5)を満たし、ポリプロピレン系接着層(I)と基材層(II)とを含む。
(1)前記接着層(I)が、プロピレン共重合体(A)を97〜70重量%、ブテン由来の構造単位を有する共重合体(B)を3〜30重量%(但し、共重合体(A)および(B)の合計を100重量%とする)含む
(2)前記共重合体(A)は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点(TmA)が70〜120℃であり、ブテン由来の構造単位の含量が1モル%未満である
(3)前記共重合体(B)は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点(TmB)が130℃以下であり、ブテン由来の構造単位の含量が1モル%以上である
(4)前記接着層(I)が、不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のグラフトモノマーに由来する構造単位を有する重合体(C)を含む
(5)前記基材層(II)がポリエステル系樹脂を含む
【0015】
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は特に制限されず、従来公知の方法であってもよいが、初期接着性および熱処理後の接着性に優れる積層体を容易に製造できる等の点から、本方法であることが好ましい。
この本発明の一実施形態に係る積層体および前記本方法で得られる積層体を併せて、以下「本積層体」ともいう。
【0016】
本積層体は、初期接着性および熱処理後の接着性に優れるため、本積層体の用途に応じて要求される熱処理を行っても、十分な接着性を有し、内容物の漏れ等の起こりにくい耐久性に優れる積層体である。
このため、本積層体は、食品、液体、気体等を保存、運搬等するため容器、特にレトルト食品用パウチ包材等として、好適に使用することができる。
【0017】
<ポリプロピレン系接着層(I)>
前記ポリプロピレン系接着層(I)は、97〜70重量%のプロピレン共重合体(A)と、3〜30重量%のブテン由来の構造単位を有する共重合体(B)とを用いて得られる(但し、共重合体(A)および(B)の合計を100重量%とする)。
接着層(I)に含まれる共重合体(A)は、1種でも2種以上でもよく、接着層(I)に含まれる共重合体(B)も、1種でも2種以上でもよい。
本積層体は、このような接着層を含むため、ポリエステル系樹脂を含む基材との接着性、特に、初期接着性および熱処理後の接着性に優れる。
【0018】
前記接着層(I)のポリエステル系樹脂を含む基材との接着力(T−ピール法、引張試験機、23℃、クロスヘッドスピード:50mm/min)は、好ましくは1.7〜5.0N/15mm、より好ましくは1.8〜3.5N/15mmである。
該接着力が前記範囲にある積層体は、初期接着性に優れる積層体といえる。
【0019】
前記接着層(I)とポリエステル系樹脂とを含む積層体を121℃の熱水下で30分間レトルト処理した後の、前記接着層(I)のポリエステル系樹脂を含む基材との接着力(T−ピール法、引張試験機、23℃、クロスヘッドスピード:50mm/min)は、好ましくは1.1〜5.0N/15mm、より好ましくは1.5〜4.0N/15mmである。
該接着力が前記範囲にある積層体は、熱処理後の接着性に優れる積層体といえる。
【0020】
前記接着層(I)は、初期接着性および熱処理後の接着性に優れる接着層を容易に得ることができる等の点から、80℃のノルマルデカン可溶成分を含むことが好ましく、該可溶成分の含有量は、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
前記可溶成分は、ブテン由来の構造単位を1モル%以上含むことが好ましく、10〜90モル%含むことがより好ましい。
【0021】
前記接着層(I)の厚みは、特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、十分な接着性を有する積層体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜400μmである。
【0022】
[プロピレン共重合体(A)]
前記プロピレン共重合体(A)としては、特に制限されないが、プロピレンと炭素数2または5〜24のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。なお、前記共重合体(A)は、下記重合体(C)とは異なる重合体である。
該α−オレフィンは、1種でもよく、2種以上でもよい。
前記α−オレフィンとしては、ポリエステル系樹脂を含む基材との接着性に優れる積層体を容易に得ることができる等の点から、エチレンが好ましい。
なお、前記共重合体(A)は、ブテン由来の構造単位の含量が1モル%未満の重合体である。
【0023】
前記共重合体におけるα−オレフィン含量は特に限定されないが、ポリエステル系樹脂を含む基材との接着性に優れる積層体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは5〜30モル%であり、熱処理工程後の接着性が高い積層体を容易に得ることができる等の点から、より好ましくは10〜30モル%であり、特に好ましくは15〜25モル%である。
【0024】
共重合体(A)のDSCにより測定した融点(TmA)は、ポリエステル系樹脂を含む基材との接着性に優れる積層体を容易に得ることができる等の点から、70〜120℃であり、好ましくは70〜110℃である。
TmAは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
共重合体(A)のASTM D1238(230℃、2.16kg荷重)に基づくMFRは、特に限定されないが、成形性に優れる接着層(I)を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.5〜50g/10分である。
【0026】
共重合体(A)のJIS K7112に基づき測定した密度は、好ましくは0.80〜0.91g/cm3であり、より好ましくは0.85〜0.90g/cm3である。
【0027】
共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜5.0、より好ましくは1.8〜4.0である。
【0028】
共重合体(A)の製造方法としては、特に限定されず、チーグラ・ナッタ触媒、メタロセン系触媒等の周知の触媒を用いた周知の方法にて製造できる。また、共重合体(A)は、結晶性の重合体が好ましく、前記プロピレンとα−オレフィンとの共重合体の場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。さらに、成形性を満足し、得られる積層体が使用に耐えうる強度を有するような共重合体が好ましく、本発明の効果を損なわない範囲において、立体規則性や分子量に特段の制限はない。
市販の樹脂をそのまま利用することも可能である。
【0029】
前記ポリプロピレン系接着層(I)に含まれる共重合体(A)の量は、共重合体(A)および(B)の合計100重量%に対し、97〜70重量%であり、好ましくは95〜75重量%、より好ましくは95〜80重量%、特に好ましくは90〜80重量%である。
共重合体(A)の含量が前記範囲にあることで、初期および熱処理後の接着性にバランスよく優れる積層体を容易に得ることができる。
【0030】
[ブテン由来の構造単位を有する共重合体(B)]
前記共重合体(B)としては、ブテン由来の構造単位を有すれば特に制限されないが、ブテンと炭素数2〜24のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。なお、前記共重合体(B)は、下記重合体(C)とは異なる重合体である。
該α−オレフィンは、1種でもよく、2種以上でもよい。
前記α−オレフィンとしては、共重合体(A)との相溶性に優れ、ポリエステル系樹脂を含む基材との接着性に優れる積層体を容易に得ることができる等の点から、プロピレンが好ましい。
なお、前記共重合体(B)は、ブテン由来の構造単位の含量が1モル%以上の重合体である。前記共重合体(B)におけるブテン由来の構造単位の含量は特に限定されないが、好ましくは10〜99モル%であり、熱処理後の接着性により優れる等の点から、より好ましくは12〜90モル%、さらに好ましくは15〜85モル%、特に好ましくは20〜80モル%である。
【0031】
共重合体(B)のDSCにより測定した融点(TmB)は、ポリエステル系樹脂を含む基材との接着性に優れる積層体を容易に得ることができる等の点から、130℃以下であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは55〜110℃である。
TmBは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0032】
共重合体(B)のASTM D1238(230℃、2.16kg荷重)に基づくMFRは、特に限定されないが、成形性に優れる接着層(I)を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.5〜50g/10分である。
【0033】
共重合体(B)のJIS K7112に基づき測定した密度は、好ましくは0.87〜0.91g/cm3であり、より好ましくは0.88〜0.90g/cm3である。
【0034】
共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜5.0、より好ましくは1.8〜4.0である。
【0035】
共重合体(B)の製造方法としては、特に限定されず、チーグラ・ナッタ触媒、メタロセン系触媒等の周知の触媒を用いた周知の方法にて製造できる。また、共重合体(B)は、結晶性の重合体が好ましく、前記ブテンとα−オレフィンとの共重合体の場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。さらに、成形性を満足し、得られる積層体が使用に耐えうる強度を有するような共重合体が好ましく、本発明の効果を損なわない範囲において、立体規則性や分子量に特段の制限はない。
市販の樹脂をそのまま利用することも可能である。
【0036】
前記ポリプロピレン系接着層(I)に含まれる共重合体(B)の量は、共重合体(A)および(B)の合計100重量%に対し、3〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%であり、特に好ましくは10〜20重量%である。
共重合体(B)の含量が前記範囲にあることで、初期および熱処理後の接着性にバランスよく優れる積層体を容易に得ることができる。
【0037】
[グラフトモノマーに由来する構造単位を含む重合体(C)]
前記ポリプロピレン系接着層(I)は、不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のグラフトモノマーに由来する構造単位を含む重合体(C)を含む。
ポリプロピレン系接着層(I)が重合体(C)を含むことで、ポリエステル系樹脂を含む基材との接着性に優れる積層体を容易に得ることができる。
接着層(I)に含まれる重合体(C)は、1種でも2種以上でもよい。
【0038】
前記グラフトモノマーと共重合する重合体(以下「幹重合体」ともいう。該幹重合体は、グラフトモノマーに由来する構造単位を除いた構造単位でもある。)としては、炭素数2〜24のα−オレフィンのホモポリマー、2種以上の炭素数2〜24のα−オレフィンのコポリマー、1種以上の炭素数2〜24のα−オレフィンと該オレフィンと共重合可能な化合物とのコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ホモポリプロピレン、前記共重合体(A)および前記共重合体(B)等が好ましい。
なお、前記コポリマーは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。また、前記幹重合体は、本発明の効果を損なわない範囲において、立体規則性や分子量に特段の制限はない。
前記幹重合体の製造方法は、特に限定されず、チーグラ・ナッタ触媒、メタロセン系触媒等の周知の触媒を用いた周知の方法が挙げられる。また、市販の樹脂をそのまま利用することも可能である。
【0039】
前記グラフトモノマーとしては、カルボン酸基を1つ以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する不飽和カルボン酸化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1つ以上有する不飽和化合物(例えば、不飽和ジカルボン酸の無水物)等が挙げられる。
不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基等が挙げられる。
前記グラフトモノマーとしては、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。
前記グラフトモノマーは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を使用することもできる。
【0040】
重合体(C)におけるグラフトモノマーのグラフト量(重合体(C)における不飽和カルボン酸および/またはその誘導体に由来する構造単位の量)は、前記幹重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3.5重量部である。
グラフト量が前記範囲にあると、成形性と接着性とのバランスに優れる接着層を容易に得ることができる。
【0041】
グラフトモノマーをグラフトさせる方法については特に限定されず、溶液法、溶融混練法等、従来公知のグラフト重合法を採用することができる。例えば、前記幹重合体を溶融し、そこにグラフトモノマーを添加してグラフト反応させる方法、または、前記幹重合体を溶媒に溶解して溶液とし、そこにグラフトモノマーを添加してグラフト反応させる方法等が挙げられる。
【0042】
ポリプロピレン系接着層(I)に含まれる重合体(C)の量は、ポリエステル系樹脂を含む基材との接着性に優れる積層体を容易に得ることができる等の点から、共重合体(A)および(B)の合計100重量部に対し、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは3〜10重量部である。
【0043】
[その他の成分]
前記接着層(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、剛性を調整する等の目的で、プロピレン単独重合体、前記共重合体(A)〜(C)以外の共重合体、またはスチレン系エラストマーなどを適宜含有していてもよい。また、成形性を調整する等の目的で、低密度ポリエチレン(LDPE)などを適宜含有していてもよい。
【0044】
その他、酸化防止剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、粘着付与剤、臭気吸着剤、抗菌剤、顔料、無機質または有機質の充填剤、種々の合成樹脂などの公知の添加剤を、必要に応じて含有していてもよい。
【0045】
[接着層(I)の形成方法]
前記接着層(I)の形成方法としては特に制限されないが、前記重合体(A)〜(C)および必要により前記その他の成分を含む接着剤を調製し、該接着剤を用いて、従来公知の積層体の製造方法(例:本積層体を構成する各層の原料を共押出する方法;前記接着剤を接着層(I)で接着させたい2つの層の一方または両方の上に設け、該2つの層を接着剤を介して接するように配置し、ホットプレス等する方法;前記接着剤から予めフィルムまたはシート状などに成形した接着層(I)を形成し、該接着層(I)と基材層(II)とを接触させた状態で該接着層(I)を溶融させる方法)により、接着層を形成する方法等が挙げられる。
【0046】
前記接着剤の調製方法としては、前記重合体(A)〜(C)を種々公知の方法、例えば、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練する方法が挙げられる。なお、必要により、前記混合で得られた混合物や溶融混錬で得られた溶融混練物を造粒または粉砕してもよい。
【0047】
前記接着剤のASTM D1238(230℃、2.16kg荷重)に基づくMFRは、特に限定されないが、接着層(I)の成形性に優れる接着剤となる等の点から、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.5〜50g/10分である。
【0048】
前記接着剤のJIS K7112に基づき測定した密度は、好ましくは0.85〜0.91g/cm3であり、より好ましくは0.86〜0.89g/cm3である。
【0049】
<基材層(II)>
前記基材層(II)は、ポリエステル系樹脂を含めば特に制限されず、該基材層(II)を形成する原料の組成を調整して、印刷性や易接着性、蒸着性を付与した層であってもよい。
【0050】
前記ポリエステル系樹脂としては、具体的には、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などのジカルボン酸やオキシカルボン酸(例:p−オキシ安息香酸)と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる樹脂等が挙げられる。
前記ジカルボン酸、オキシカルボン酸および脂肪族グリコールはそれぞれ、1種または2種以上を用いることができる。
【0051】
前記ポリエステル系樹脂の代表例としては、PET、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。また、該樹脂は、ホモポリマーの他に、30モル%以下の第三成分を含有するコポリマーであってもよい。
【0052】
前記基材層(II)は、所望の用途に応じて、延伸工程を含む方法で得られた層であってもよい。
【0053】
前記基材層(II)の厚みは、特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは2〜500μm、より好ましくは5〜300μmである。
【0054】
<他の層>
本積層体は、前記接着層(I)と基材層(II)とを含めば特に制限されないが、本発明の効果をより発揮できる等の点から、前記接着層(I)が基材層(II)と接していることが好ましい。
本積層体は、通常、前記基材層(II)と接着層(I)と層Xとをこの順で含む積層体であり、さらに、前記基材層(II)の接着層(I)とは反対側、前記層Xの接着層(I)とは反対側に、別の層Yを有していてもよい。
本積層体は、接着層(I)、基材層(II)、層Xおよび層Yを、それぞれ1層含んでいてもよく、2層以上含んでいてもよい。
【0055】
前記層XおよびYとしては特に制限されず、基材層(II)と積層したい層であればよいが、熱可塑性樹脂層、ガスバリア層、無機物層等が挙げられる。
【0056】
前記熱可塑性樹脂層としては、下記ガスバリア層以外の種々の熱可塑性樹脂からなる層、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル、ポリウレタンからなる層が挙げられ、これらの中でも、本発明の効果をより発揮できる等の点から、プロピレン系樹脂層が好ましい。
なお、前記熱可塑性樹脂層として、ポリエステルからなる層を用いる場合には、前記基材層(II)と同様の層であってもよい。
【0057】
前記ガスバリア層としては、ガスバリア性を有する種々公知の樹脂、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリアミド樹脂(PA)、または、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのバリア性に優れる樹脂からなる層が挙げられる。
【0058】
前記EVOHとしては、好ましくは、エチレン含有率15〜70モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるケン化度90〜100%の重合体が挙げられる。
【0059】
前記PAとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、MXDナイロン、アモルファスナイロン、共重合ナイロンが挙げられる。
【0060】
前記無機物層は、前記基材層(II)の表面に配置することが好ましい。
前記無機物層は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、金(Au)、銅(Cu)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、錫(Sn)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)および珪素(Si)などの元素を1つ以上含む金属からなる層、該元素を1つ以上含む酸化物、窒化物、窒酸化物、硫化物、リン化物、リン酸化物、リン窒化物およびリン窒酸化物などの無機化合物からなる層が挙げられる。前記無機物としては、金属および金属酸化物等が好ましい。
【0061】
前記金属としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタン等が好ましく、金属酸化物としては、これらの酸化物等が好ましい。
【0062】
片面が無機物層で被覆された基材層(II)を用いる場合、前記接着層(I)は、基材層(II)の無機物蒸着面に接していてもよく、基材層(II)に接していてもよいが、基材層(II)に接していることが好ましい。
【0063】
無機物層を積層体の外側に配置する場合には、保護層を一層以上積層してもよい。
【0064】
<本積層体の製造方法>
本積層体の製造方法は、従来公知の積層体の製造方法で行えばよく、例えば、本積層体を構成する各層の原料を共押出する方法、前記接着剤を接着層(I)で接着させたい2つの層の一方または両方の上に設け、該2つの層を接着剤を介して接するように配置し、ホットプレス等する方法、前記接着剤から予めフィルムまたはシート状などに成形した接着層(I)を形成し、該接着層(I)と基材層(II)とを接触させた状態で該接着層(I)を溶融させる方法が挙げられる。
【0065】
本積層体の製造方法としては、溶融押出成形が好ましく、一般に工業的に行われているキャスト法、インフレーション法、熱ラミネーション、押出ラミネーション法、押出サンドラミネーション、アンカーコート材を併用したドライラミネーション等が挙げられる。
【0066】
本積層体の形状は特に制限されず、シート状、膜状、管状、袋状などのいずれの形状であってもよく、所望の用途に応じて適宜選択すればよい。
本積層体の厚みも特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは10μm〜1000μm、より好ましくは20μm〜700μmである。
【0067】
<熱処理工程>
本方法は、得られた積層体を80〜140℃で5〜120分間熱処理する工程を含み、具体的には、積層体を殺菌するための公知の熱水処理工程、成形時の残留応力を緩和するために行われるアニール処理工程等が挙げられる。
本積層体は、熱処理後の接着性に優れ、特に初期接着性に比べ熱処理後の接着性を高くすることもできるため、本積層体の用途に応じて要求されるこのような熱処理を行っても、十分な接着性を有し、内容物の漏れ等が起こりにくく耐久性に優れる。
【0068】
熱水処理としては、レトルト処理、ボイル処理等が挙げられる。レトルト処理としては、一般に食品等を保存するために、カビ、酵母、細菌などの微生物を加圧殺菌する方法等が挙げられる。具体的には、例えば、通常のレトルト釜を使用し、処理温度は、内容物や用いる容器(積層体)により異なり一概には言えないが、一般的には105〜140℃、0.15〜0.3MPaで、10〜120分の条件で加圧殺菌処理する方法が挙げられる。
【0069】
ボイル処理としては、食品等を保存するため湿熱で殺菌する方法等が挙げられる。ボイル処理としては、内容物にもよるが、食品等を包装した積層体を大気圧下、60〜100℃で10〜120分間殺菌処理する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例になんら制約されない。
【0071】
[初期接着力]
実施例および比較例で得られた、熱処理前のポリプロピレン/接着層/PETの3層積層体を、常温で1週間保管した後、PET層と接着層との間の層間接着力(初期接着力)をT−ピール法にて評価した。評価は引張試験機を用いて23℃の雰囲気下で行った。クロスヘッドスピードは50mm/minとした。
【0072】
[熱処理後接着力]
熱処理前の積層体の代わりに、熱処理後の積層体の層間接着力(熱処理後接着力)を測定した以外は、初期接着力と同様の方法で接着力を測定した。
【0073】
[メルトフローレート(MFR)]
ASTM D1238に従い、230℃、2.16kg荷重の下、MFRを測定した。
【0074】
[密度]
JIS K7112に準拠して密度を測定した。
【0075】
[融点(Tm)]
下記方法により示差走査熱量測定することで、下記接着剤の原料のTmを測定した。
試料5mg程度を専用アルミパンに詰め、(株)パーキンエルマー製DSCPyris1またはDSC7を用い、30℃から200℃まで320℃/minで昇温し、200℃で5分間保持した後、200℃から30℃まで10℃/minで降温し、30℃でさらに5分間保持し、次いで10℃/minで昇温する際の吸熱曲線より融点を求めた。
測定時に、複数のピークが検出される場合は、最も高温側で検出されるピーク温度を融点(Tm)と定義した。
【0076】
[ポリマーの組成]
下記接着剤の原料として用いた共重合体中のプロピレンから導かれる構造単位およびα−オレフィンから導かれる構造単位の含量は、13C−NMRにより以下の装置および条件にて測定した。
プロピレンおよびα−オレフィン含量の定量化は、日本電子(株)製JECX400P型核磁気共鳴装置を用い、溶媒として重オルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒を用い、試料濃度を60mg/0.6mL、測定温度を120℃、観測核を13C(100MHz)、シーケンスをシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅を4.62μ秒(45°パルス)、繰り返し時間を5.5秒、積算回数を8000回、29.73ppmをケミカルシフトの基準値とする条件下で測定した。
【0077】
[グラフトモノマーに由来する構造単位の量]
グラフトモノマーに由来する構造単位の量(グラフト量)は、赤外線吸収分析装置により、該構造単位に由来するピーク(無水マレイン酸を用いた場合は1790cm-1)の強度を測定し、予め作成した検量線を用いて定量した。
【0078】
[重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)]
下記接着剤の原料として用いた共重合体のMwおよびMw/Mnは、東ソー(株)製TSKgelGMH6−HT×2本およびTSKgelGMH6−HTL×2本(カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mm)を直列接続したカラムを用い、液体クロマトグラフィー(Waters社製、Alliance/GPC2000型)を用いて測定した。移動相媒体は、0.025重量%の酸化防止剤(ブチルヒドロキシトルエン、武田薬品工業(株)製)含有o−ジクロロベンゼンを用い、試料濃度を0.15%(V/W)、流速を1.0mL/分、温度を140℃とする条件下で測定を行った。標準ポリスチレンは、分子量が500〜20,600,000の場合については東ソー(株)製を用いた。
得られたクロマトグラムはWaters社製データ処理ソフトEmpower2を用い、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、数平均分子量(Mn)、MwおよびMw/Mnを算出した。
【0079】
[固体粘弾性 温度分散測定]
実施例1および比較例1で得られた接着剤を、200℃で5分間加熱した後、1分間冷却して作成したシートを用いて測定を行った。装置としてはRSA−III(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて引張モードで測定した。測定は、周波数を1Hzとし、窒素環境下で、−70℃から150℃まで3℃/minで昇温しながら貯蔵弾性率(E')[Pa]を測定した。
また、加熱処理による影響を確認するため、前記と同様にして作成したシートを121℃で30分間、空気環境下で加熱処理したシートを用いた以外は前記と同様にして、貯蔵弾性率(E')を測定した。
【0080】
(使用したポリオレフィン)
実施例および比較例において使用したポリオレフィンを以下に示す。なお、特に断らない限り、これらポリオレフィンは、いずれも常法に従い重合を行い調製した。
【0081】
[プロピレン共重合体(A)]
・PER−1:プロピレン・エチレンランダム共重合体
(MFR=1.4g/10分、密度=0.86g/cm3、エチレン含量=21mol%、ブテン含量=0mol%、融点=108℃、Mw/Mn=2.1)
・PER−2:プロピレン・エチレンランダム共重合体
(MFR=8.0g/10分、密度=0.86g/cm3、エチレン含量=12mol%、ブテン含量=0mol%、融点=77℃、Mw/Mn=2.2)
・PER−3:プロピレン・エチレンランダム共重合体
(MFR=8.0g/10分、密度=0.86g/cm3、エチレン含量=5mol%、ブテン含量=0mol%、融点=108℃、Mw/Mn=2.2)
【0082】
[ブテン由来の構造単位を有する共重合体(B)]
・BPR−1:ブテン・プロピレンランダム共重合体
(MFR=9.0g/10分、密度=0.89g/cm3、ブテン含量=74mol%、融点=58℃、Mw/Mn=2.2)
・BPR−2:ブテン・プロピレンランダム共重合体
(MFR=3.0g/10分、密度=0.90g/cm3、ブテン含量=99mol%、融点=110℃、Mw/Mn=2.2)
・PBR−1:プロピレン・ブテンランダム共重合体
(MFR=7.0g/10分、密度=0.88g/cm3、ブテン含量=26mol%、融点=75℃、Mw/Mn=2.2)
・PBR−2:プロピレン・ブテンランダム共重合体
(MFR=7.0g/10分、密度=0.89g/cm3、ブテン含量=15mol%、融点=98℃、Mw/Mn=2.2)
【0083】
[グラフトモノマーに由来する構造単位を含む重合体(C)]
・変性PP:変性アイソタクティックホモポリプロピレン
(MFR=100g/10分、 密度0.90g/cm3、無水マレイン酸グラフト量=3.0wt%)
【0084】
[実施例1]
<プロピレン系接着剤の製造>
PER−1(80重量%)とBPR−1(15重量%)と、変性PP(5重量%)とを、1軸押出機を用いて230℃で溶融混練し、プロピレン系接着剤を得た。得られたプロピレン系接着剤のMFRは2.3g/10分であり、密度は0.87g/cm3であった。
【0085】
<3層積層体の製造>
以下に示した構成からなる各層を、下記の条件で共押出して、3層積層体を成形した。
【0086】
[内層]
ポリエステル樹脂(以下「PET」という。)として、三井化学(株)製J125(ホモペット)を、直径40mm、L/D=28のスクリューを用いて275℃で押出した。
【0087】
[外層および中間層]
外層として、市販のポリプロピレン((株)プライムポリマー製F327、MFR:7g/10分)、および、中間層として、得られたプロピレン系接着剤を直径50mm、有効長さL/D=28のスクリューを用いて230℃で押出した。
【0088】
[熱処理した積層体の成形条件]
外層、内層および中間層用として押し出された樹脂を、フィードブロック内で内層、中間層、外層の順に積層した。ダイス温度は275℃であり、厚さ約50μmのフィルム状に共押出された各樹脂の積層体を、チルロールで冷却し、20m/分の速さで引き取った。各層の厚さは外層(ポリプロピレン)/中間層(接着剤)/内層(PET)=20μm/10μm/20μmであった。
得られた積層体を常温で1週間保管し、次いで、121℃の熱水下で30分間レトルト処理(熱処理)を行うことで積層体を製造した。
得られた接着剤および積層体の物性を表1に示す。
【0089】
[実施例2〜8]
表1に示す配合処方に変更した以外は実施例1と同様にしてプロピレン系接着剤を調製し、実施例1と同様の方法で3層積層体を製造した。得られた接着剤および積層体の物性を表1に示す。
【0090】
[比較例1]
PER−2(95重量%)と変性PP(5重量%)とを用いた以外は実施例1と同様にして接着剤を調製し、実施例1と同様の方法で3層積層体を製造した。得られた接着剤および積層体の物性を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
また、実施例1で得られた接着剤を用いて作成したシートの貯蔵弾性率(E')のグラフを図1に示し、比較例1で得られた接着剤を用いて作成したシートの貯蔵弾性率(E')のグラフを図2に示す。なお、図1および図2において、実線は、前記で得られたシートを用いた場合のグラフであり、点線は、121℃で30分間、空気環境下で加熱処理したシートを用いた場合のグラフである。
実施例1で得られた接着剤を用いた場合、貯蔵弾性率(E')の曲線は、熱処理前と熱処理後でほぼ同様の挙動を示した。このことから、実施例1で得られた接着剤は、熱処理後でも安定した接着力を有していることが分かる。一方、比較例1で得られた接着剤を用いた場合、熱処理後のシートの貯蔵弾性率(E')は、約50〜100℃付近において、急激に低下しており、比較例1で得られた接着剤は、安定した接着力を示さなかった。
図1
図2