特許第6874124号(P6874124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6874124副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを含む薬学組成物及び生体材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874124
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを含む薬学組成物及び生体材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/29 20060101AFI20210510BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20210510BHJP
   A61P 5/18 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 27/06 20060101ALI20210510BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20210510BHJP
   C07K 14/635 20060101ALN20210510BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   A61K38/29ZNA
   A61K47/64
   A61P5/18
   A61P19/02
   A61P19/10
   A61P19/08
   A61P1/02
   A61K9/08
   A61K9/48
   A61K9/70
   A61K9/107
   A61L27/54
   A61L27/36 110
   A61L27/12
   A61L27/56
   A61L27/40
   A61L27/22
   A61L27/24
   A61L27/20
   A61L27/18
   A61L27/06
   !C07K19/00
   !C07K14/635
   !C07K14/47
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-511701(P2019-511701)
(86)(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公表番号】特表2019-534243(P2019-534243A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】KR2017013749
(87)【国際公開番号】WO2019066140
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2019年2月27日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0126876
(32)【優先日】2017年9月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517150618
【氏名又は名称】ナイベク カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】パク,ユンチョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,チョンピョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュヨン
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−523671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 41/00−45/08
A61K 48/00
A61K 50/00−51/12
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)又は配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むその断片に配列番号1〜3からなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列で表示される骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを有効成分として含む、骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記融合ペプチドは骨組織形成を誘導することを特徴とする、請求項1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記副甲状腺ホルモンは配列番号4のアミノ酸配列で表示されることを特徴とする、請求項1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記骨組織選択性ペプチドは骨シアロタンパク質I来由であることを特徴とする、請求項1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記融合ペプチドは、副甲状腺ホルモン又は配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むその断片のC末端に骨組織選択性ペプチドのN末端が結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記骨疾患は、骨粗鬆症、骨形成不全症、高カルシウム血症、骨軟化症、パジェット病(Paget’s disease)、癌による骨消失及び骨壊死症、骨関節炎、リウマチ関節炎、歯周疾患及び骨折からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項7】
静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、口腔、歯周ポケット、心臓内、骨髓内、硬膜内、経皮、腸管、皮下、舌下又は局所投与用に剤形化されることを特徴とする、請求項1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項8】
注射剤、口腔粘膜投与剤、カプセル剤、フィルム、パッチ、経皮剤及びゲル剤からなる群から選択されるいずれか一つに剤形化されることを特徴とする、請求項1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記融合ペプチドの含量が10〜100μgであることを特徴とする、請求項1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項10】
副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)又は配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むその断片に配列番号1〜3からなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列で表示される骨組選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが結合された、生体材料。
【請求項11】
前記融合ペプチドは骨組形成を誘導することを特徴とする、請求項10に記載の生体材料。
【請求項12】
前記副甲状腺ホルモンは配列番号4のアミノ酸配列で表示されることを特徴とする、請求項10に記載の生体材料。
【請求項13】
前記融合ペプチドは副甲状腺ホルモン又は配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むその断片のC末端に骨組織選択性ペプチドのN末端が結合されていることを特徴とする、請求項10に記載の生体材料。
【請求項14】
前記生体材料は、骨移植材、遮蔽膜、インプラント及び高分子支持体からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項10に記載の生体材料。
【請求項15】
前記骨移植材は、生物由来の骨ミネラル粉末及びその多孔性ブロック、合成ヒドロキシアパタイト粉末及びその多孔性ブロック、リン酸三カルシウム粉末及びその多孔性ブロック又はヒドロキシアパタイトとリン酸三カルシウムの混合粉末及びその多孔性ブロックを主成分として含むことを特徴とする、請求項14に記載の生体材料。
【請求項16】
前記遮蔽膜は、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、ポリラクチド、ポリラクチドグリコリド及びポリカプロラクトンからなる群から選択されるいずれか一つから製造されることを特徴とする、請求項14に記載の生体材料。
【請求項17】
前記インプラントは、チタン合金(Titanium alloy)、酸化チタン(Titanium oxide)及びジルコニア(Zirconia)からなる群から選択されるいずれか一つから製造されることを特徴とする、請求項14に記載の生体材料。
【請求項18】
前記融合ペプチドは、生体材料の単位重量当たり(1g)1〜10mgが含有されることを特徴とする、請求項10に記載の生体材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は副甲状ホルモン(parathyroid hormone、PTH)又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを含む骨疾患予防又は治療用薬学組成物及び生体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
副甲状ホルモン(parathyroid hormone、PTH)は副甲状から分泌される84個のアミノ酸からなったペプチドホルモンである。主な作用部位は副腎皮質であり、副腎皮質膜に結合してcAMPとIP3(イノシトールトリホスフェート)、DAG(ジアシルグリセロール)の生産を増加させる生理活性物質である。PTHはカルシウムの骨吸収及び腎臓吸収を増加させることによって血液のカルシウム濃度を増加させる。また、間欠的に投与するPTHは造骨細胞を刺激して骨形成を誘導する。
【0003】
エストロゲン、カルシトニン、ビスフォスフォネートなどの骨粗鬆症治療剤は骨吸収を抑制する機転を持っている反面、PTHは骨形成を促進する機転を持っている。骨吸収を抑制する薬剤のみでは既に進行した骨粗鬆症患者の骨量を増加させるのに充分ではないが、PTHは骨形成を直接的に促進する機転を持っているから、骨再形成が減少した第2型骨粗鬆症又は既に進行した骨粗鬆症患者に有利である。現在、骨形成機転の骨粗鬆症治療剤として許可を受けた製品としては、Eli Lilly社のForteoがあり、PTHの84個のアミノ酸のうちN末端の34個のアミノ酸からなったペプチドを用いる。しかし、半減期が1時間以下と短くて1日1回の皮下注射で投与しているので、患者の順応度が低い。また、副作用として高カルシウム血症(hypercalcemia)を引き起こすことがあり、2年以上長期間使えば、骨肉腫(osteosarcoma)が発生する可能性が高いため、2年以上の使用を禁止している。
【0004】
PTHの安全性を増加させるため、PTHにPEG(アメリカ特許第6,506,730号)又はアルブミン(PCT国際特許公開第WO2010/092135号)を結合させて血中で長い循環(long circulation)を誘導するか、アミノ酸を置換する方法(大韓民国特許登録第10−1183262号)で酵素による分解を減少させる方法で安全性を増加させようとする研究があった。
【0005】
また、歯科又は整形外科領域で使われる医療機器の骨再生及び骨融合を向上させるために、生理活性因子を導入しようとする試みがあった。歯科又は整形外科の領域で使われる医療機器としては、骨移植材、遮蔽膜、コラーゲンが含有された複合材料、金属インプラント、スクリューなどがある。しかし、生理活性因子が表面で遊離して分解されるから、その効果が大きくなかった。
【0006】
したがって、本発明者は前記のような従来技術の問題点を解決するために鋭意研究努力した結果、PTH又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを含む薬学組成物及び生体材料を開発した。前記融合ペプチドを含む薬学組成物が骨粗鬆症、骨折のような骨再生治療に効果があることを確認し、前記融合ペプチドを歯科及び整形外科用医療機器の表面に結合させてから移植することによって骨再生効果を向上させることができることを確認し、本発明を完成した。
【0007】
この背景技術部分に記載した前記情報はただ本発明の背景に対する理解を向上させるためのものであり、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に既に知られた先行技術をなす情報を含まないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】アメリカ特許第6506730号明細書
【特許文献2】PCT国際特許公開第WO2010/092135号明細書
【特許文献3】大韓民国特許登録第10−1183262号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、安全性、骨組織に対する選択性及び骨再生効果が向上した融合ペプチドを有効成分として含む骨疾患予防又は治療用薬学組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、安全性、骨組織に対する選択性及び骨再生効果が向上した融合ペプチドを有効成分として含む組成物を投与する段階を含む骨疾患の予防又は治療方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、安全性、骨組織に対する選択性及び骨再生効果が向上した融合ペプチドを有効成分として含む組成物を骨疾患の予防又は治療に使う用途を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、安全性、骨組織に対する選択性及び骨再生効果が向上した融合ペプチドが結合された生体材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、副甲状ホルモン(parathyroid hormone、PTH)又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを有効成分として含む骨疾患予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、副甲状ホルモン又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを有効成分として含む組成物を投与する段階を含む骨疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、副甲状ホルモン又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを有効成分として含む組成物を骨疾患の予防又は治療に使う用途を提供する。
【0016】
また、本発明は、副甲状ホルモン又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが結合された生体材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)は皮下注射した場合、(B)は静脈注射した場合、PTH及びPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの時間による血液内濃度を示したグラフである(■はPTH、●はPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチド)。
【0018】
図2】(A)は骨粗鬆症誘発マウスにPTH及びPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを注入した後の大腿骨のマイクロシーティー(microCT)イメージ、(B)は骨ミネラル密度(BMD)の測定結果である(■は無処理、●はPTH、▲はPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチド)。
【0019】
図3】骨粗鬆症誘発マウスにPTH及びPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを注入した後の血液内カルシウム濃度の測定結果である(■は無処理、●はPTH、▲はPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチド)
【0020】
図4】兎の頭蓋骨にPTH及びPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが結合された骨移植材を移植した後、新生骨の組織学的観察結果と組織計測学的結果である。
【0021】
図5】蛍光で標識したPTH及びPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドのインプラントの周囲骨組織への分布結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
他に定義しない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する技術分野で熟練した専門家によって通常的に理解されるものと同一の意味を有する。一般に、この明細書で使用された命名法は当該技術分野でよく知られており、通常的に使われるものである。
【0023】
本発明の一実施例において、副甲状ホルモン又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを含む薬学組成物を骨粗鬆症誘発マウスに注入することにより、副甲状ホルモンより骨密度が増加し、骨再生効果が向上したことを確認した。
【0024】
したがって、本発明は、一観点で、副甲状ホルモン(parathyroid hormone、PTH)又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを有効成分として含む骨疾患予防又は治療用薬学組成物に関する。
【0025】
本発明は、他の観点で、副甲状ホルモン又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを有効成分として含む組成物を投与する段階を含む骨疾患の予防又は治療方法に関する。
【0026】
本発明は、さらに他の観点で、副甲状ホルモン又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを有効成分として含む組成物を骨疾患の予防又は治療に使う用途に関する。
【0027】
本発明において、前記融合ペプチドは骨組織形成を誘導することを特徴とすることができる。
【0028】
本発明において、前記PTHは配列番号4のアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができる。
【0029】
本発明において、前記断片は配列番号5のアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができる。
【0030】
配列番号4:SVSEIQLMH NLGKHLNSME RVEWLRKKLQ DVHNFVALGA PLAPRDAGSQ RPRKKEDNVL VESHEKSLGE ADKADVNVLT KAKSQ
【0031】
配列番号5:SVSEIQLMHNLGKHLNSMERVEWLRKKLQDVHNF
【0032】
本発明において、前記PTH又はその断片は大腸菌又は酵母で発現した組み換えPTH、PTH関連ペプチド(PTHrp)又はペプチド合成(peptide synthesis)方法で製造されたものを使うことができる(Hefti et al., Clinical Science, 62, 389-396(1982); Liu et al., J. Bone Miner. Res., 6: 10, 1071-1080(1991); Hock et al., J. Bone. Min. Res., 7: 1. 65-71(1992))。
【0033】
本発明において、前記骨組織選択性ペプチドは配列番号3のアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができる。
【0034】
本発明において、前記骨組織選択性ペプチドは骨シアロタンパク質I来由であることを特徴とすることができるが、これに制限されるものではない。
【0035】
本発明において、前記PTHに骨組織選択性を付与するペプチドは骨の主要構成成分であるコラーゲンとの結合力を有するペプチドである。骨組織はコラーゲン纎維にミネラル成分が沈着した構造を成している。よって、骨組織選択性ペプチドによってPTHの骨組織内への移動を増加させる。
【0036】
本発明の一実施例において、使用した骨組織選択性を付与するペプチドは細胞外基質を構成するタンパク質から活性部位のアミノ酸配列を分離抽出したものであり、抽出後に化学的修飾によって活性構造を維持するようにした。具体的に、前記ペプチドは人の骨シアロタンパク質I 149−169位置のアミノ酸配列YGLRSKS(配列番号1)、KKFRRPDIQYPDAT(配列番号2)、YGLRSKSKKFRRPDIQYPDAT(配列番号3)のいずれか一つのアミノ酸配列を必須に含むようにした。化学的にPTHに結合しやすくするために、前記アミノ酸配列の中で選択されたアミノ酸配列のN末端部位にシステインをCGG−又はCGGGGG−スペーサーの形態として付け加え、化学的に合成させることによってペプチドを製造した。
【0037】
本発明において、前記融合ペプチドはPTH又はその断片のC末端に骨組織選択性ペプチドのN末端が結合されていることを特徴とすることができる。
【0038】
前記PTH又はその断片のC末端に骨組織選択性ペプチドを固相ペプチド合成法(solid phase peptide synthesis)又は化学架橋剤を用いて連結することができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明において、前記PTH又はその断片のC末端と骨組織選択性ペプチドのN末端を連結するために、化学架橋剤を使うことができる。ここで、ペプチド末端のシステインと結合することができる官能基、例えばSH基を導入するかアミン(Amine、NH2)が形成されるように処理することで、今後の架橋剤による架橋反応に円滑に適用されるようにすることができる。
【0040】
前記化学的架橋剤は、1,4−bis−maleimidobutane(BMB)、1,11−bis−maleimidotetraethyleneglycol(BM[PEO]4)、1−ethyl−3−[3−dimethyl aminopropyl]carbodiimide hydrochloride(EDC)、succinimidyl−4−[N−maleimidomethylcyclohexane−1−carboxy−[6−amidocaproate]](SMCC)及びそのスルホン化塩(sulfo−SMCC)、succinimidyl 6−[3−(2−pyridyldithio)−propionamido]hexanoate](SPDP)及びそのスルホン化塩(sulfo−SPDP)、m−maleimidobenzoyl−N−hydroxysuccinimide ester(MBS)及びそのスルホン化塩(sulfo−MBS)、succimidyl[4−(p−maleimidophenyl)butyrate](SMPB)及びそのスルホン化塩(sulfo−SMPB)などを使うことができるが、これに制限されるものではない。
【0041】
PTHと骨組織選択性ペプチドの結合反応後に架橋剤を除去するために、限外濾過のような精製過程を経なければならなく、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドは純度が90%以上、より好ましくは純度98%以上でなければならない。
【0042】
本発明において、前記骨疾患は、骨粗鬆症、骨形成不全症、高カルシウム血症、骨軟化症、パジェット病(Paget’s disease)、癌による骨消失及び骨壊死症、骨関節炎、リウマチ関節炎、歯周疾患及び骨折からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とすることができるが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明において、前記骨疾患予防又は治療用薬学組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、口腔、歯周ポケット、心臓内、骨髓内、硬膜内、経皮、腸管、皮下、舌下又は局所投与用に剤形化することを特徴とすることができるが、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明において、前記骨疾患予防又は治療用薬学組成物は、注射剤、口腔粘膜投与剤、カプセル剤、フィルム、パッチ、経皮剤及びゲル剤からなる群から選択されるいずれか一つに剤形化することを特徴とすることができるが、これに制限されるものではない。前記薬学組成物は局所、皮下注射、静脈注射又は非経口で投与されることができ、一般的に活性成分として本発明によるPTH又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを治療有効量で含むことを特徴とすることができる。
【0045】
本発明において、前記薬学組成物は薬学的に許容される不活性無機又は有機賦形剤を使う公知の方法で製造することができる。注射液の製造において賦形剤としては、水、アルコール、グリセロール、ポリオール、植物性オイルなどがあるが、これに制限されるものではない。注射剤は保存剤、無痛化剤、可溶化剤及び安定化剤を混合して使うことができる。局所投与用製剤の場合には、ゲル形又はフィルム形に製造することができ、ゲル基材としては、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、プロピレングリコール、プロピレングリコールアルギン酸、ポロキサマー、コンドロイチン硫酸などを使うことが好ましい。
【0046】
本発明において、前記薬学組成物は、前記融合ペプチドの含量が10〜100μgであることを特徴とすることができる。PTH又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを10〜100μgの容量で1回に使われる皮下注射又は静脈注射に使うことができる。
【0047】
本発明の一実施例において、PTH又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが結合された骨移植材を用いて骨再生効果を確認した。
【0048】
したがって、本発明は、さらに他の観点で、副甲状ホルモン(parathyroid hormone、PTH)又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが結合された生体材料に関する。
【0049】
本発明において、前記融合ペプチドは骨組織形成を誘導することを特徴とすることができる。
【0050】
本発明において、前記PTHは配列番号4のアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができる。
【0051】
本発明において、前記断片は配列番号5のアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができる。
【0052】
本発明において、前記骨組織選択性ペプチドは配列番号3のアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができる。
【0053】
本発明において、前記融合ペプチドはPTH又はその断片のC末端に骨組織選択性ペプチドのN末端が結合されていることを特徴とすることができる。
【0054】
本発明において、前記PTH又はその断片と骨組織選択性ペプチドは架橋剤によって結合されることを特徴とすることができる。前記架橋剤は、1,4−bis−maleimidobutane(BMB)、1,11−bis−maleimidotetraethyleneglycol(BM[PEO]4)、1−ethyl−3−[3−dimethyl aminopropyl]carbodiimide hydrochloride(EDC)、succinimidyl−4−[N−maleimidomethylcyclohexane−1−carboxy−[6−amidocaproate]](SMCC)及びそのスルホン化塩(sulfo−SMCC)、succinimidyl 6−[3−(2−pyridyldithio)−propionamido]hexanoate](SPDP)及びそのスルホン化塩(sulfo−SPDP)、m−maleimidobenzoyl−N−hydroxysuccinimide ester(MBS)及びそのスルホン化塩(sulfo−MBS)、succimidyl[4−(p−maleimidophenyl)butyrate](SMPB)及びそのスルホン化塩(sulfo−SMPB)からなる群から選択されることを特徴とすることができるが、これに制限されるものではない。
【0055】
本発明において、前記生体材料は、骨移植材、遮蔽膜、インプラント及び高分子支持体からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とすることができる。当該分野で使う全ての種類及び形態の骨移植材、遮蔽膜、インプラント、高分子支持体を使うことができる。
【0056】
前記骨移植材は、好ましくは自己骨、牛骨及び豚骨から起因する生物由来の骨ミネラル粉末及びその多孔性ブロック、合成ヒドロキシアパタイト粉末及びその多孔性ブロック、リン酸三カルシウム粉末及びその多孔性ブロック又はヒドロキシアパタイトとリン酸三カルシウムの混合粉末及びその多孔性ブロックを主成分として含むことを特徴とすることができる。
【0057】
前記遮蔽膜は、好ましくはコラーゲン、キトサン、ゼラチン、ポリラクチド、ポリラクチドグリコリド又はポリカプロラクトンから製造することができるが、これに制限されるものではない。
【0058】
前記インプラントは、チタン合金(Titanium alloy)、酸化チタン(Titanium oxide)又はジルコニア(Zirconia)から製造されることを特徴とすることができるが、これに制限されるものではない。歯科用インプラント及び整形外科用インプラントを含み、整形外科用インプラントは、骨節合用板(orthopaedic fixation plate)、骨節合用ネジ(orthopaedic bone screw)、骨髓内固定棒(orthopaedic bone nail)などを含む。
【0059】
本発明において、前記融合ペプチドの容量は生体材料の単位重量当たり(1g)1〜10mgが含有されることを特徴とすることができる。より好ましくは、生体材料の単位重量当たり2〜8mgが含有されることを特徴とすることができる。
【0060】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例はただ本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されるものと解釈されないことは当該分野で通常の知識を有する者に明らかであろう。
【0061】
製造例1:固相ペプチド合成によるPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの製造
【0062】
N末端から順に骨組織選択性ペプチド(配列番号3)とPTH断片(配列番号5)を連結してF−moc固相化学合成方法でペプチドを合成した。合成されたペプチド配列はレジンから切断し、洗浄過程を経て凍結乾燥した後、液体クロマトグラフィーによって分離精製した。精製されたペプチドはMALDI−TOF分析によって分子量を確認した。
【0063】
対照例1:PTH断片の製造
【0064】
PTH断片(配列番号5)を連結してF−moc固相化学合成方法でペプチドを合成した。合成されたペプチド配列はレジンから切断し、洗浄過程を経て凍結乾燥した後、液体クロマトグラフィーによって分離精製した。精製されたペプチドはMALDI−TOF分析によって分子量を確認した。
【0065】
製造例2:架橋反応によるPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの製造
【0066】
PTH断片(配列番号5)1mgを共役反応バッファー(100mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、0.02%アジ化ナトリウム、1mM EDTA)1mlに溶解した。Sulfo−SMCC(Thermo Scientific、4.8mg/ml)溶液40μlをPTHに少量ずつ加え、常温で1時間又は2時間遮光して反応させた。分画分子量500kDaのメンブレインで限外濾過を実施して未反応のsulfo−SMCCを除去した。これに配列番号3のペプチドを1mg/mlで共役バッファーに溶かした溶液を加え、4〜8時間遮光して反応させた。PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを分画分子量3000kDaのメンブレインで限外濾過して未反応の配列番号3のペプチドを除去した。MALDI−TOFとSDS−PAGEを用い、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの分子量を確認した。PTH断片の分子量4117.8、骨組織選択性ペプチドの分子量2365、Sulfo−SMCCによって増加する分子量219.09を考慮するとき、理論的な分子量は6701.89以上でなければならない。
【0067】
製造例3:PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを含む薬学組成物の製造
【0068】
製造例2のPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを有効成分として含む薬学組成物を製造した(表1)。
【0069】
【表1】

【0070】
対照例2:PTHを含む薬学組成物の製造
【0071】
対照例1のPTHを有効成分として含む薬学組成物を製造した(表2)。
【0072】
【表2】

【0073】
製造例4:PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを結合させた骨移植材の製造
【0074】
牛骨来由の骨移植材1gをヘキサンに溶解した3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−aminopropyl ethoxysilane、APTES、1%)に放置した後、ヘキサンで3回洗浄した。これによって表面にアミン残基が形成され、これに架橋剤BMBを添加して結合させた。架橋剤が結合された骨移植材粒子1gを製造例2のPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチド20mgと12時間反応させた後、メタノールで3回洗浄し、精製水で10回洗浄することにより、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが固定された骨移植材を得た。
【0075】
対照例3:PTHを結合させた骨移植材の製造
【0076】
牛骨来由の骨移植材1gをヘキサンに溶解した3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−aminopropyl ethoxysilane、APTES、1%)に放置した後、ヘキサンで3回洗浄した。これによって表面にアミン残基が形成され、これに架橋剤BMBを添加して結合させた。架橋剤が結合された骨移植材粒子1gを対照例1のPTH20mgと12時間反応させた後、メタノールで3回洗浄し、精製水で10回洗浄することにより、PTHが固定された骨移植材を得た。
【0077】
製造例5:PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドのゲル型組成物の製造
【0078】
製造例2のPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチド20mgと2%コラーゲン溶液1mlを均一に混合し、注射器に充填した。
【0079】
対照例4:PTHのゲル型組成物の製造
【0080】
対照例1のPTH20mgと1〜3%コラーゲン溶液1mlを均一に混合し、注射器に充填した。
【0081】
実施例1:PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの半減期確認試験
【0082】
対照例2のPTHを含む組成物と製造例3のPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを含む組成物をSD(Spraugue−Dawley)雄性ラット(体重300〜350g)に100μg/kgの濃度で皮下投与し、0、2、5、10、20、30、60、180、360、720、1440分に血液を採取した。また、100μg/kgの濃度で頚静脈に投与し、0、5、10、15、30、60、90、120、180及び360分に血液を採取し、14,000rpmで10分間遠心分離して血漿を分離した。PTHの濃度は酵素免疫分析法(enzyme−linked immunosorbent assay(ELISA)technique(Immutopics,Inc.,San Clemente,CA)を用いて測定した。
【0083】
図1はPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの時間による血液内濃度を示した結果である。皮下注射した場合、PTHは360分後には測定されなかったが、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドは1440分まで測定された。静脈注射した場合、PTHは180分後には測定されなかったが、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドは360分まで測定された。これは、PTHよりはPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの半減期が増加したことを意味する。
【0084】
実施例2:PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの骨粗鬆症動物における効能試験
【0085】
6週齢のICRマウスの大腿部にキシラジン(Rompun(登録商標)、Bayer社、大韓民国)10mg/kg、ケタミン(Ketalar(登録商標)、柳韓洋行、大韓民国)100mg/kgを混合して筋肉注射で全身痲酔した後、両側腎臓の下方に存在する卵巣を用心深く除去した。通常の方法で縫合し、ゲンタマイシン(gentamycin、中外製薬、大韓民国)3mg/kgを筋肉注射した。
【0086】
卵巣切除3ヶ月後、骨消失有無を確認し、対照例2のPTHを含む薬学組成物は20μg/kgで毎日3ヶ月間投与し、製造例3のPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを含む薬学組成物は80μg/kgで週1回6ヶ月間投与した。骨粗鬆症は誘発したが、治療しなかった群に比べ、以後に起こる骨密度の変化を評価した。
【0087】
図2は骨粗鬆症誘発マウスにPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを注入した後、大腿骨のマイクロシーティー(microCT)イメージと骨ミネラル密度(BMD)の測定結果である。卵巣切除後に治療しなかった群(no treatment)では有意的な骨消失によって骨密度が減少した。PTHを処理した群よりは、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを処理した群では骨密度が増加したように見えた(図2(A))。全体大腿骨頭内のミネラル含有量である骨ミネラル密度(BMD、Bone Mineral Density)の変化量を測定した結果(図2(B))、卵巣切除後に治療しなかった群(no treatment)でBMDの変化量は減少することが分かった。PTH処理群は1ヶ月までBMD変化量が増加してから2ヶ月から減少した。PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドは6ヶ月までBMD値が増加することが分かった。これは、PTHよりは、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが骨再生にもっと効果があることを意味する。
【0088】
図3は骨粗鬆症誘発マウスにPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを注入した後、血液内カルシウムの濃度変化を測定した結果である。血中カルシウム濃度はQuantiChromTM Calcium Assay Kit(Bioassay Systems、Hayward、CA)を用いて測定した。PTHは1ヶ月にカルシウム濃度を増加させたが、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドは血中カルシウム濃度を増加させなかった。PTHが全身に影響を与える作用の一つが骨及び腎臓に影響を与えて血中カルシウム濃度を増加させることである。よって、PTHを長期間投与する場合、高カルシウム血症(hypercalcemia)を誘発する副作用を引き起こす。しかし、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドは腎臓には影響がなく、骨組織にだけ影響を与えて、血中カルシウム濃度を増加させる作用をしないことを確認した。
【0089】
実施例3:PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの骨再生試験
【0090】
痲酔させた兎(Newzealand White rabbit、種名:cuniculus)の頭蓋骨部位に直径10mmの円形骨欠損部を形成させ、前記骨欠損部に製造例4及び対照例3で製造された骨移植材100mgを移植し、骨膜と皮膚を二重縫合した。移植3週後に動物を犠牲させ、採取した標本はホルマリン溶液に入れて固定させた後、組織を包埋して厚さ20μmの試片に製作した。製作された試片はヘマトキシリンエオジン(ヘマトキシリンエオジン)で染色して非脱灰標本を製作した。製作された標本は光学顕微鏡で観察して写真撮影を実施した。
【0091】
図4は兎の頭蓋骨にPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが結合された骨移植材を移植した後、新生骨の組織学的観察結果と組織計測学的結果である。PTHよりはPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの骨再生効果が増加した。したがって、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを表面に結合した骨移植材がPTHを結合した骨移植材より骨再生効果が高いと期待される。
【0092】
実施例4:PTHとPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの骨移行確認試験
【0093】
製造例2のPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドにシアニン5.5を結合させ、未反応のシアニン5.5を除去した。シアニン5.5が標識されたPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを製造例5の方法で製造した。対照例1のPTHをシアニン5.5と結合させ、未反応のシアニン5.5を除去した。対照群ではシアニン5.5が標識されたPTHを対照例4の方法で製造した。
【0094】
ビーグル犬の歯牙を抜歯してから8週後、インプラントを移植し、手術部位にシアニン5.5が標識されたPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを含むコラーゲンゲル100μLを注入し、縫合した。移植3週後に動物を犠牲させ、採取した標本はホルマリン溶液に入れて固定させた後、組織を包埋して厚さ20μmの試片に製作した。製作された試片はヘマトキシリンエオジンで染色して非脱灰標本を製作した。製作された標本は共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)で観察して写真撮影を実施し、インプラントの周囲の一定面積当たり蛍光強度を測定した。
【0095】
図5は蛍光で標識したPTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドのインプラントの周囲骨組織への分布を示す。PTHを移植したときは周辺骨組織に蛍光がほとんど観察されなかったが、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドの場合、周辺の骨組織に分布された蛍光が多く観察された。これは、PTHと比較するとき、PTHに骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが骨組織と選択的に結合することを証明するものである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、PTH又はその断片に骨組織選択性を有するペプチドを導入して骨組織に対する選択性を増加させ、骨再生効果を増加させることができる。また、PTHの半減期を増加させ、結果的に投与間隔を増加させることにより、患者の順応度を増加させることができる骨疾患予防又は治療用薬学組成物を開発することができる。また、歯科又は整形外科領域で使われる生体材料に骨組織選択性ペプチドが結合されているPTHを適用して骨再生効果をもっと増加させるのに有用である。
【0097】
以上で本発明内容の特定部分を詳細に記述したが、当該分野で通常の知識を有する者にとってこのような具体的記述はただ好適な実施様態であるだけ、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかであろう。よって、本発明の実質的な範囲は添付の請求範囲及びその等価物によって定義されると言える。
本発明は、一態様において以下を提供する。
[項目1]
副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドを有効成分として含む、骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目2]
前記融合ペプチドは骨組織形成を誘導することを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目3]
前記副甲状腺ホルモンは配列番号4のアミノ酸配列で表示されることを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目4]
前記断片は配列番号5のアミノ酸配列で表示されることを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目5]
前記骨組織選択性ペプチドは配列番号3のアミノ酸配列で表示されることを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目6]
前記骨組織選択性ペプチドは骨シアロタンパク質I来由であることを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目7]
前記融合ペプチドは、副甲状腺ホルモン又はその断片のC末端に骨組織選択性ペプチドのN末端が結合されていることを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目8]
前記骨疾患は、骨粗鬆症、骨形成不全症、高カルシウム血症、骨軟化症、パジェット病(Paget’s disease)、癌による骨消失及び骨壊死症、骨関節炎、リウマチ関節炎、歯周疾患及び骨折からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目9]
静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、口腔、歯周ポケット、心臓内、骨髓内、硬膜内、経皮、腸管、皮下、舌下又は局所投与用に剤形化されることを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目10]
注射剤、口腔粘膜投与剤、カプセル剤、フィルム、パッチ、経皮剤及びゲル剤からなる群から選択されるいずれか一つに剤形化されることを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目11]
前記融合ペプチドの含量が10〜100μgであることを特徴とする、項目1に記載の骨疾患予防又は治療用薬学組成物。
[項目12]
副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)又はその断片に骨組織選択性ペプチドが結合されている融合ペプチドが結合された、生体材料。
[項目13]
前記融合ペプチドは骨組織形成を誘導することを特徴とする、項目12に記載の生体材料。
[項目14]
前記副甲状腺ホルモンは配列番号4のアミノ酸配列で表示されることを特徴とする、項目12に記載の生体材料。
[項目15]
前記断片は配列番号5のアミノ酸配列で表示されることを特徴とする、項目12に記載の生体材料。
[項目16]
前記骨組織選択性ペプチドは配列番号3のアミノ酸配列で表示されることを特徴とする、項目12に記載の生体材料。
[項目17]
前記融合ペプチドは副甲状腺ホルモン又はその断片のC末端に骨組織選択性ペプチドのN末端が結合されていることを特徴とする、項目12に記載の生体材料。
[項目18]
前記生体材料は、骨移植材、遮蔽膜、インプラント及び高分子支持体からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、項目12に記載の生体材料。
[項目19]
前記骨移植材は、生物由来の骨ミネラル粉末及びその多孔性ブロック、合成ヒドロキシアパタイト粉末及びその多孔性ブロック、リン酸三カルシウム粉末及びその多孔性ブロック又はヒドロキシアパタイトとリン酸三カルシウムの混合粉末及びその多孔性ブロックを主成分として含むことを特徴とする、項目18に記載の生体材料。
[項目20]
前記遮蔽膜は、コラーゲン、キトサン、ゼラチン、ポリラクチド、ポリラクチドグリコリド及びポリカプロラクトンからなる群から選択されるいずれか一つから製造されることを特徴とする、項目18に記載の生体材料。
[項目21]
前記インプラントは、チタン合金(Titanium alloy)、酸化チタン(Titanium oxide)及びジルコニア(Zirconia)からなる群から選択されるいずれか一つから製造されることを特徴とする、項目18に記載の生体材料。
[項目22]
前記融合ペプチドの容量は、生体材料の単位重量当たり(1g)1〜10mgが含有されることを特徴とする、項目12に記載の生体材料。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]