特許第6874154号(P6874154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6874154塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874154
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/03 20060101AFI20210510BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C08J3/03CEV
   C08L27/06
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-557761(P2019-557761)
(86)(22)【出願日】2018年3月21日
(65)【公表番号】特表2020-517794(P2020-517794A)
(43)【公表日】2020年6月18日
(86)【国際出願番号】KR2018003299
(87)【国際公開番号】WO2018199477
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年10月24日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0055673
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ラン・シン
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヨン・ジャン
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−532360(JP,A)
【文献】 特開平06−087997(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/036173(WO,A1)
【文献】 特開平11−080473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックスと、固体状のスチレン/アクリル系樹脂を混合して混合物を準備する段階と、
前記混合物に塩基性添加剤を添加する段階とを含み、
前記スチレン/アクリル系樹脂を前記塩化ビニル系樹脂ラテックス中の塩化ビニル系樹脂を含む固形分100重量部に対して2〜50重量部の含有量で混合する、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項2】
前記スチレン/アクリル系樹脂はアルカリ可溶性樹脂である、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項3】
前記スチレン/アクリル系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体が60:40〜80:20の重量比で重合した共重合体である、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項4】
前記スチレン/アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が1,000〜20,000g/molである、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項5】
前記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体および塩化ビニル/アクリル共重合体からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項6】
前記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニル単量体と酢酸ビニル単量体が9:1〜3:7の重量比で重合したものである、請求項5に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項7】
前記塩化ビニル/アクリル共重合体は、塩化ビニル単量体とアクリル系単量体が9:1〜5:5の重量比で重合したものである、請求項5に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項8】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスの平均粒径(D50)が0.1〜1μmである、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項9】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスの重量平均分子量が45,000〜300,000g/molである、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項10】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは塩化ビニル単独重合体を含み、重量平均分子量が45,000〜150,000g/molであり、平均粒径(D50)が0.1〜0.7μmである、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項11】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、塩化ビニル単量体と酢酸ビニル単量体が8:2〜3:7の重量比で重合した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体を含み、重量平均分子量が45,000〜150,000g/molであり、平均粒径(D50)が0.1〜0.7μmである、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項12】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、塩化ビニル単量体とアクリル系単量体が8:2〜5:5の重量比で重合した塩化ビニル/アクリル共重合体を含み、重量平均分子量が45,000〜200,000g/molであり、平均粒径(D50)が0.1〜0.7μmである、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項13】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックス中の塩化ビニル系樹脂を含む固形分の含有量が30〜60重量%である、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項14】
前記塩基性添加剤は、アンモニア、アミン系化合物および水酸化物からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項15】
前記塩基性添加剤の添加は40℃〜90℃の温度で行われる、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【請求項16】
前記塩基性添加剤は、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物のpHが7〜9になるようにする量で添加される、請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年4月28日付の韓国特許出願第10−2017−0055673号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、機械的安定性が大きく改善された塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニルペースト樹脂(Polyvinyl Chloride Paste Resin、以下、‘PSR’という)は、建築用資材類、壁紙類、人造革、織布類、シート、フィルムなど、日常生活用品および産業用として広範囲に使用される汎用樹脂の一種である。
【0003】
塩化ビニル系ペースト樹脂は、塩化ビニル単量体と一緒に重合開始剤、乳化剤(界面活性剤)、触媒およびその他添加剤を含む重合系から乳化重合またはシード乳化重合によってラテックスが製造され、これを乾燥することにより粉体状の樹脂として得られる。
【0004】
ラテックスは、重合結果で生成された塩化ビニル樹脂と水を混合したエマルジョン状態で、残留する塩化ビニル単量体の含有量や乳化剤の種類および含有量などの多様な要因によりその安定性が変わる。
【0005】
ラテックスの機械的安定性が不良である場合、ミキシングまたは加工のためのせん断力が加わるとラテックス中の塩化ビニル樹脂の凝集が起こり、その結果、流動性が低下することによって使用し難いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来技術の問題点を解決するため、本発明は、機械的安定性が大きく改善した塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、
塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックスと、固体状のスチレン/アクリル系樹脂を混合して混合物を準備する段階と、
前記混合物に塩基性添加剤を添加する段階とを含み、
前記スチレン/アクリル系樹脂を前記塩化ビニル系樹脂ラテックス中の塩化ビニル系樹脂を含む固形分100重量部に対して2〜50重量部の含有量で混合する、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法を提供する。
【0008】
さらに、本発明の他の一実施形態によれば、前記製造方法によって製造され、塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックス、スチレン/アクリル系樹脂および塩基性添加剤を含み、前記スチレン/アクリル系樹脂は、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス中の塩化ビニル系樹脂を含む固形分100重量部に対して2〜50重量部の含有量で含まれる、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法によれば、塩化ビニル系樹脂ラテックスに対して固体状のスチレン/アクリル系樹脂を混合することによって、塩化ビニル系樹脂自体を改質せずにラテックスの凝集が防止されて、改善された機械的安定性を有する塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物を製造することができる。
【0010】
これによって、前記製造方法により製造された塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物は、PVC系レザーまたは織物用接着剤、壁紙用グラビアインキバインダー、インクジェット用紙またはフィルムの吸収層、木材または外壁パネル用不燃ペイント、不織布、エアフィルターまたは自動車カーペットなどに対する不燃コーティング剤などの用途に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で製造した水性の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を7,000rpmでミキシングの際、ミキシング時間2時間であるときの状態を観察した写真である。
図2】比較例2で製造した水性の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を7,000rpmでミキシングの際、ミキシング時間20分であるときの状態を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をもっと具体的に説明する。また、本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるが、特定の実施形態を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むことが理解されなければならない。
【0013】
また、本明細書で使用される‘含む’の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0014】
以下、本発明の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物およびその製造方法などについてより詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施形態による塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法は、
塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックスと、固体状のスチレン/アクリル系樹脂を混合して混合物を準備する段階(段階1)と、
前記混合物に塩基性添加剤を添加する段階(段階2)とを含み、
この際、前記スチレン/アクリル系樹脂を前記塩化ビニル系樹脂ラテックス中の塩化ビニル系樹脂を含む固形分100重量部に対して2〜50重量部の含有量で混合する。
【0016】
本発明において、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物は、エマルジョン形態の組成物を意味し、塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックス中に固体状のスチレン/アクリル系樹脂が溶解して含まれるか、または塩化ビニル系樹脂とスチレン/アクリル系樹脂に形成したコアシェル構造の構造体が分散して含まれたものでありうる。
【0017】
以下、本発明の一実施形態による塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法を各段階別により詳細に見てみると、前記第1段階は、塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックスと、固体状のスチレン/アクリル系樹脂の混合物を準備する段階である。
【0018】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、塩化ビニル系樹脂を含む0.1μm〜数μm程度の塩化ビニル系樹脂ラテックスの1次粒子が水またはイオン交換水(Deionized water)に分散している水分散液またはエマルジョン(emulsion)形態を有する。
【0019】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスにおいて前記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単量体を単独重合した単独重合体であるか、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体を共重合した(共)重合体でありうる。
【0020】
前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体を重合反応させて製造できるが、この際、重合方法は特に制限されず、微細懸濁重合、乳化重合またはシード乳化重合など本発明の属する技術分野で知られている通常の重合方法により行うことができる。
【0021】
一例として、前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物、そして選択的に乳化剤および重合開始剤を水性溶媒中で添加して均質化した後、微細懸濁重合することによって製造することができ、または、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物を水性媒体中で乳化剤および水溶性重合開始剤と混合した後、乳化重合またはシード(seed)乳化重合することによって製造することもできる。
【0022】
前記塩化ビニル単量体と共重合可能な共単量体としては、具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテルなどのアルキル基を有するビニルエーテル(viny ether)類;塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸およびこれらの酸無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジルなどの不飽和カルボン酸エステル(ester)類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;エチレンまたはプロピレンなどのオレフィン類;またはジアリルフタレートなどの架橋性単量体などが挙げられ、これらのうちの1つまたは2つ以上の混合物を使用することができる。その中でも、塩化ビニル単量体との相溶性に優れており、また、重合後、重合体とスチレン/アクリル系樹脂との相溶性を向上させることができる点から、前記共単量体はビニルエステル類、または(メト)アクリル酸およびそのエステル類であってもよく、より具体的には、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの混合物であってもよい。
【0023】
より具体的には、前記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単量体が単独重合した単独重合体であるか、または塩化ビニル単量体と、共単量体として酢酸ビニル系化合物(例えば、酢酸ビニルなど)またはアクリル系化合物(例えば、アクリル酸など)が共重合した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体または塩化ビニル/アクリル共重合体でありうる。これら重合体は成形時のゲル化挙動が良好で、樹脂の溶融粘度の調整が容易である。
【0024】
また、前記塩化ビニル系樹脂が塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体を含む場合、前記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニル単量体と酢酸ビニル単量体を9:1〜3:7、具体的には8:2〜3:7、より具体的には7:3〜5:5の重量比で重合反応させて製造されたものでありうる。
【0025】
また、前記塩化ビニル系樹脂が塩化ビニル/アクリル共重合体を含む場合、前記塩化ビニル/アクリル共重合体は、塩化ビニル単量体とアクリル系単量体を9:1〜5:5、より具体的には8:2〜5:5の重量比で重合反応させて製造されたものでありうる。
【0026】
このような共重合体を構成する単量体の含有量比が前記条件を満たす場合、樹脂のゲル化挙動および溶融粘度の調整が容易である。
【0027】
また、前記重合反応の際、重合条件の制御を通じてより優れた分散性を示すことができるように塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の大きさ、塩化ビニル樹脂の重合度または重量平均分子量などを調節することができる。
【0028】
具体的には、本発明で使用可能な塩化ビニル系樹脂ラテックスは、0.1μm〜数μm、具体的には0.1μm〜1μmの平均粒径(D50)を有し得る。このような平均粒径を有する場合、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物中で塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子同士の凝集に対する恐れなく優れた分散性を示すことができ、その結果として、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の機械的安定性を向上させることができる。また、このように塩化ビニル系樹脂ラテックス粒子の大きさの制御による効果の顕著性を考慮して、前記塩化ビニル系樹脂粒子は、より具体的には0.1μm〜0.5μmの平均粒径(D50)を有し得る。
【0029】
一方、本発明において前記塩化ビニル系樹脂ラテックスの平均粒径(D50)は、光学顕微鏡観察法、光散乱測定法などの通常の粒子の大きさの分布測定方法により測定することができ、具体的にはMalvern社のZetasizerあるいはMaster Sizerを用いて測定できる。
【0030】
また、本発明で使用可能な塩化ビニル系樹脂ラテックスは、重量平均分子量(Mw)が45,000〜300,000g/molであってもよい。このような範囲の重量平均分子量を有する場合、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物中の分散性に優れて機械的安定性を向上させることができる。本発明において、塩化ビニル系樹脂ラテックスの重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値である。
【0031】
前記のように前記塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物中の塩化ビニル系樹脂の種類、重量平均分子量と平均粒径の制御による溶融粘度の改善、分散性改善などの樹脂ラテックス組成物に対する改善効果の顕著性を考慮して、前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは塩化ビニル単独重合体を含み、重量平均分子量が45,000〜150,000g/molであり、平均粒径(D50)が0.1〜0.7μmであることができる。
【0032】
また、前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、塩化ビニル単量体と酢酸ビニル単量体が具体的には8:2〜3:7、より具体的には7:3〜5:5の重量比で重合した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体を含み、重量平均分子量が45,000〜150,000g/molであり、平均粒径(D50)が0.1〜0.7μmであることができる。
【0033】
また、前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは、塩化ビニル単量体とアクリル系単量体が8:2〜5:5の重量比で重合した塩化ビニル/アクリル共重合体を含み、重量平均分子量が45,000〜200,000g/molであり、平均粒径(D50)が0.1〜0.7μmであることができる。
【0034】
また、重合方法により異なるが、前記塩化ビニル系樹脂ラテックスは塩化ビニル系樹脂を含む固形分の含有量が30〜60重量%、より具体的には40〜60重量%である。
【0035】
一方、前記塩化ビニル系樹脂ラテックスと混合するスチレン/アクリル系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体が重合した共重合体スチレン/アクリル系共重合体樹脂であって、本発明による塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造時に添加されて塩化ビニル系樹脂の凝集を防止し、その結果として、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の機械的安定性を向上させる役割を果たす。
【0036】
また、前記スチレン/アクリル系樹脂はアルカリ可溶性樹脂であって、前記塩化ビニル系樹脂ラテックスとの混合時は固体状の形態で混合するが、後続段階で投入した塩基性添加剤によって溶解して、均質な溶液状を形成することになる。その結果、加工などのための工程で塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物に対してせん断力が加わっても塩化ビニル系樹脂ラテックスの凝集を抑制して、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の機械的安定性を向上させることができる。
【0037】
前記固体状のスチレン/アクリル系樹脂は、その形態が特に限定されるものではなく、球状、楕円形、ロッド状、角形、鱗片状、板状または繊維状などの多様な形態を有し得る。
【0038】
前記スチレン/アクリル系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体を通常の方法で重合して製造でき、具体的には、バルク重合または乳化重合によって製造できる。この際、前記単量体物質の種類および含有量の制御を通じて前記スチレン/アクリル系樹脂の使用に伴う効果をさらに向上させることができる。
【0039】
具体的には、本発明で使用可能な前記スチレン/アクリル系樹脂はその重合の際、スチレン系単量体とアクリル系単量体が60:40〜80:20の重量比で重合した共重合体でありうる。このような重量比で単量体が重合して製造されたスチレン/アクリル系樹脂は、分散性により優れており、また塩化ビニル系樹脂との相溶性に優れて、塩化ビニル系樹脂の凝集防止およびこれに伴う塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の機械的安定性の改善効果がもっと大きい。このような効果の顕著性を考慮して、前記スチレン/アクリル系樹脂は、より具体的にはスチレン単量体とアクリル系単量体が60:40〜70:30の重量比で重合した共重合体でありうる。
【0040】
一方、前記スチレン/アクリル系樹脂の製造に使用可能なスチレン系単量体としては、具体的にはスチレンを単独で使用、またはスチレンと共にα−メチルスチレンなどのα−アルキルスチレン単量体を使用することができる。また、前記スチレン単量体としてスチレンとα−アルキルスチレン単量体の混合物を使用する場合、スチレンとα−アルキルスチレンは50:50〜90:10の重量比で混合できる。前記混合比で混合して使用する場合、塩化ビニル樹脂に対してより優れた相溶性を示す。
【0041】
また、前記アクリル系単量体としては、具体的にはアクリル酸を単独で使用するか、またはアクリル酸と共にアルキルアクリレートを使用することができる。また、前記アクリル系単量体としてアクリル酸とアルキルアクリレートとの混合物を使用する場合、アクリル酸とアルキルアクリレートは80:20〜90:10の重量比で混合する。このような混合比で混合して使用するとき、塩化ビニル樹脂に対してより優れた相溶性を示す。また、前記アルキルアクリレートにおいてアルキルは、メチル、エチルなど炭素数1〜20の直鎖または分枝状アルキル基でありうる。
【0042】
また、前記重合反応時の重合条件の制御を通じてより優れた塩化ビニル系樹脂の凝集防止効果を示すことができるように、スチレン/アクリル系樹脂の重合度または重量平均分子量を調節することができる。
【0043】
具体的には、前記スチレン/アクリル系樹脂の重量平均分子量は1,000〜20,000g/molでありうる。このような重量平均分子量を有すると、スチレン/アクリル系樹脂は塩化ビニル系樹脂との相溶性がより優れて塩化ビニル系樹脂の凝集を防止でき、その結果として塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の機械的安定性をさらに向上させることができる。このような効果の顕著性を考慮して、前記スチレン/アクリル系樹脂の重量平均分子量は、具体的には1,500〜15,000g/mol、より具体的には5,000〜14,000g/molでありうる。
【0044】
上記のようなスチレン/アクリル系樹脂は、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス中の塩化ビニル系樹脂を含む固形分100重量部に対して2〜50重量部の含有量で混合することができる。スチレン/アクリル系樹脂の含有量が2重量部未満であればスチレン/アクリル系樹脂の添加による塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の機械的安定性の改善効果が微小であり、せん断力印加の際、数分内に塩化ビニル系樹脂の凝集が起こることになる。また、スチレン/アクリル系樹脂の含有量が50重量部を超えれば過度に存在するスチレン/アクリル系樹脂同士の凝集および分散性低下により塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の機械的安定性が低下するか、または粘度の上昇、または溶解せずに固体状で存在する恐れがあり、これによって成形品の外観特性が低下する恐れがある。スチレン/アクリル系樹脂の含有量の制御による効果の顕著さを考慮して、前記スチレン/アクリル系樹脂は、具体的には前記塩化ビニル系樹脂ラテックス中の塩化ビニル系樹脂を含む固形分100重量部に対して2〜20重量部、より具体的には2〜10重量部の含有量で混合できる。
【0045】
次に、本発明の一実施形態による塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の製造方法における第2段階は、前記段階1で準備した塩化ビニル系樹脂ラテックスとスチレン/アクリル系樹脂の混合物に、塩基性添加剤を添加して塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物を製造する段階である。
【0046】
上記塩基性添加剤としては、具体的にはアンモニア、DMEA(dimethylethanolamine)、MEA(monoethanolamine)などのアミン系化合物、または水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水酸化物などが挙げられ、これらのうちいずれか1つまたは2つ以上の混合物を使用することができる。その中でも塩基性添加剤の使用に伴う優れた改善効果を考慮して、アンモニアを使用することができる。
【0047】
前記塩基性添加剤は、塩化ビニル系樹脂ラテックスとスチレン/アクリル系樹脂の混合物に添加の際、スチレン/アクリル系樹脂を中和させる役割を果たすものであり、前記スチレン/アクリル系樹脂の酸価および量によりその添加量を決定する。
【0048】
また、前記塩基性添加剤は、粉末などの固体状で前記段階1で製造した混合物中に添加されてもよいが、塩基性添加剤の混合物中の均質混合およびこれに伴うスチレン/アクリル系樹脂の溶解度増加などを考慮して溶液状で添加されてもよい。具体的には、前記塩基性添加剤は、水中に1〜30%の濃度(W/V)に溶解した水溶液状態で添加されてもよい。このような範囲内の濃度を有する水溶液を使用する場合、適切な使用量で最大のスチレン/アクリル系樹脂の溶解度を示すことができる。
【0049】
また、前記塩基性添加剤は、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物が中性〜弱アルカリ性、具体的にはpHが7〜9になるようにする量で添加されてもよい。
【0050】
また、前記塩基性添加剤の添加は40℃〜90℃の温度で行うことができる。このような温度範囲で塩基性添加剤が添加されるとき、スチレン/アクリル樹脂の溶解度をさらに向上させることができる。仮に、温度が40℃未満であればスチレン/アクリル樹脂の溶解が十分でない恐れがあり、90℃を超過すれば反応物質の分解などの副反応発生の恐れがある。より具体的には60℃〜80℃の温度で行うことができる。
【0051】
また、このような温度条件を達成するために、前記段階1で製造した混合物に対して加熱工程を選択的にさらに行うこともできる。この際、加熱工程は通常の方法によって行うことができる。
【0052】
前記塩基性添加剤および選択的にその他添加剤の添加後には混和性を高めるために、攪拌工程を選択的にさらに行うことができる。
【0053】
前記攪拌工程は通常の混合方法を用いて行うことができ、攪拌条件は特に限定されないが、一例として、500〜3,000rpmで数分〜数時間行うことができる。
【0054】
前記段階2の結果として、塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックスにスチレン/アクリル樹脂が含まれている水性の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物が製造される。
【0055】
前記方法により製造された塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物は、固体状で投入されたスチレン/アクリル樹脂が塩化ビニル系樹脂の凝集を防止することによって顕著に改善された機械的安定性を示すことができる。これによって、PVC系レザーまたは織物用接着剤、壁紙用グラビアインキバインダー、インクジェット用紙またはフィルムの吸収層、木材または外壁パネル用不燃ペイント、不織布、エアフィルターまたは自動車カーペットなどに対する不燃コーティング剤などの用途に有用に使用できる。
【0056】
本発明の他の一実施形態によれば、前記製造方法によって製造された塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物が提供される。
【0057】
具体的には、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物は、塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックス、スチレン/アクリル系樹脂、および塩基性添加剤を含み、前記スチレン/アクリル系樹脂は、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して2〜50重量部で含まれる。この時、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス、スチレン/アクリル系樹脂および塩基性添加剤は、先に説明したとおりである。
【0058】
また、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物は、塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックス中にスチレン/アクリル系樹脂が溶解した均質な溶液状であってもよく、または前記塩化ビニル系樹脂およびスチレン/アクリル系樹脂がコアシェル構造を形成した構造体が分散したエマルジョンであってもよい。
【0059】
また、前記塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物は、塩基性添加剤の投入で中性〜弱アルカリ性、具体的にはpH7〜9であることができる。
【0060】
以下、本発明による実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、本発明の権利範囲はこれによって決定されない。
【実施例】
【0061】
<塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物の製造>
実施例1
高圧反応器に脱イオン水76kg、塩化ビニル単量体39.55kgおよび酢酸ビニル単量体16.95kgを混合投入した後、高圧反応器の温度70℃下で乳化重合して塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックスを製造した(製造した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックスのMw=55,000g/mol、平均粒径(D50)=0.18μm、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂を含む固形分の含有量=43重量%)。
【0062】
前記製造した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して、スチレン/アクリル系樹脂(ASR)粉末(Solury 60LTM、Hanwha chemical(Thailand)社製、Mw=6,500g/mol)8.6重量部を添加した(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 20重量部に該当)。ASRが添加された塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックスを70℃で加熱しながら、そこに28%アンモニア水0.8重量部をさらに添加した。以降、2〜3時間、300rpmで高速攪拌して、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0063】
実施例2
前記実施例1で、ASR粉末を塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して4.3重量部添加し(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 10重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.4重量部添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0064】
実施例3
前記実施例1でのASR粉末を塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して0.86重量部添加し(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 2重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.1重量部添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0065】
比較例1
前記実施例1でASR粉末および28%アンモニア水を添加する後工程なしに、塩化ビニル単量体と酢酸ビニル単量体を乳化重合して製造した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックスをそのまま使用した。
【0066】
比較例2
ASR粉末(Solury 60LTM、Hanwha chemical(Thailand)社製、Mw=6,500g/mol)30重量部をイオン交換水67重量部と混合した後、80℃で加熱しながら、28%アンモニア水3重量部を2〜3回に分けて添加した。以降、2〜3時間、300rpmで高速攪拌して、ASR溶液を製造した。
【0067】
前記実施例1でのASR粉末の代わりに、前記製造したASR溶液を塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して28.6重量部で添加(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 20重量部に該当)したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行い、ASRが含まれている塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0068】
比較例3
前記実施例1でのASR粉末を塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して0.43重量部添加し(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 1重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.04重量部添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0069】
比較例4
前記実施例1で、ASR粉末を塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して23.65重量部添加し(塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 55重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.4重量部添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0070】
<塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス組成物の製造>
実施例4
高圧反応器に脱イオン水68kg、塩化ビニル単量体45.2kg、アクリル系単量体として2−エチルヘキシルアクリレート単量体11.3kgを混合投入した後、高圧反応器の温度68℃下で乳化重合して、塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックスを製造した(製造された塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックスのMw=157,000g/mol、平均粒径(D50)=0.17μm、塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂を含む固形分の含有量=43重量%)。
【0071】
前記製造した塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して、ASR粉末(Solury 60LTM、Hanwha chemical(Thailand)社製、Mw=6,500g/mol)8.6重量部を添加した(塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 20重量部に該当)。ASRが添加された塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックスを70℃で加熱しながら、そこに28%アンモニア水0.8重量部をさらに添加した。以降、2〜3時間、300rpmで高速攪拌して、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0072】
実施例5
前記実施例4で、ASR粉末を塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して4.3重量部添加し(塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 10重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.4重量部添加したことを除いては、前記実施例4と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0073】
実施例6
前記実施例4でのASR粉末を塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して0.86重量部添加し(塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 2重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.1重量部添加したことを除いては、前記実施例4と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0074】
比較例5
ASR粉末および28%アンモニア水を添加する後工程なしに、前記実施例4で製造した塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックスをそのまま使用した。
【0075】
比較例6
ASR粉末(Solury 60LTM、Hanwha chemical(Thailand)社製、Mw=6,500g/mol)30重量部をイオン交換水67重量部と混合した後、80℃で加熱しながら、28%アンモニア水3重量部を2〜3回に分けて添加した。以降、2〜3時間、300rpmで高速攪拌して、ASR樹脂溶液を製造した。
【0076】
前記実施例4でのASR粉末の代わりに、前記製造したASR溶液を塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して28.6重量部添加(塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 20重量部に該当)したことを除いては、前記実施例4と同様の方法で行い、ASRが含まれている塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0077】
比較例7
前記実施例4でのASR粉末を塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して0.43重量部添加し(塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 1重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.04重量部添加したことを除いては、前記実施例4と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0078】
比較例8
前記実施例4で、ASR粉末を塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス100重量部に対して23.65重量部添加し(塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 55重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.4重量部添加したことを除いては、前記実施例4と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0079】
<塩化ビニル重合体樹脂ラテックス組成物の製造>
実施例7
高圧反応器に脱イオン水78kgおよび塩化ビニル単量体87kgを混合投入した後、高圧反応器の温度53.5℃下で乳化重合して、塩化ビニル重合体樹脂ラテックスを製造した(製造された塩化ビニル重合体樹脂ラテックスのMw=110,000g/mol、平均粒径(D50)=0.45μm、塩化ビニル単独重合体樹脂を含む固形分の含有量=45重量%)。
【0080】
前記製造した塩化ビニル重合体樹脂ラテックス100重量部に対して、ASR粉末(Solury 60LTM、Hanwha chemical(Thailand)社製、Mw=6,500g/mol)9重量部を添加した(塩化ビニル重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 20重量部に該当)。ASRが添加された塩化ビニル重合体樹脂ラテックスを70℃で加熱しながら、そこに28%アンモニア水0.6重量部をさらに添加した。以降、2〜3時間、300rpmで高速攪拌して、ASRが含まれている水性の塩化ビニル重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0081】
実施例8
前記実施例7で、ASR粉末を塩化ビニル重合体樹脂ラテックス100重量部に対して4.5重量部添加し(塩化ビニル重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 10重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.4重量部添加したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0082】
実施例9
前記実施例7でのASR粉末を塩化ビニル重合体樹脂ラテックス100重量部に対して0.9重量部添加し(塩化ビニル/アクリル共重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 2重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.1重量部添加したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0083】
比較例9
ASR粉末および28%アンモニア水を添加する後工程なしに、前記実施例7で製造した塩化ビニル重合体樹脂ラテックスをそのまま使用した。
【0084】
比較例10
ASR粉末(Solury 60LTM、Hanwha chemical(Thailand)社製、Mw=6,500g/mol)30重量部をイオン交換水67重量部と混合した後、80℃で加熱しながら、28%アンモニア水3重量部を2〜3回に分けて添加した。以降、2〜3時間、300rpmで高速攪拌して、ASR樹脂溶液を製造した。
【0085】
前記実施例7でのASR粉末の代わりに、前記製造したASR溶液を塩化ビニル重合体樹脂ラテックス100重量部に対して28.6重量部添加(塩化ビニル重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 20重量部に該当)したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で行い、ASRが含まれている塩化ビニル重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0086】
比較例11
前記実施例7でのASR粉末を塩化ビニル重合体樹脂ラテックス100重量部に対して0.45重量部添加し(塩化ビニル重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 1重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.04重量部添加したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0087】
比較例12
前記実施例7でのASR粉末を塩化ビニル重合体樹脂ラテックス100重量部に対して24.75重量部添加し(塩化ビニル重合体樹脂ラテックス中の固形分100重量部に対してASR 55重量部に該当)、また、28%アンモニア水を0.04重量部添加したことを除いては、前記実施例7と同様の方法で行い、ASRが含まれている水性の塩化ビニル重合体樹脂ラテックス組成物を製造した。
【0088】
実験例
機械的安定性が劣ると配合および加工過程でミキシングなど、せん断力が加わるときに凝集が起こり、使用が難しくなる。
そこでHomo disper Mixerを用いて、前記実施例および比較例で製造した塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物150gを7,000rpmでミキシングしながら、機械的安定性が崩れて凝集が起こるまでの時間を測定した。その結果を下記表1〜3、図1および図2にそれぞれ示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
また、図1は、実施例1で製造した水性の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を7,000rpmでミキシングするとき、ミキシング時間2時間での塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物の状態を観察した写真であり、図2は、比較例2で製造した水性の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂ラテックス組成物を同じ条件でミキシングするとき、ミキシング時間20分で発生した凝集状態を観察した写真である。
【0093】
実験の結果、粉末状のASR樹脂を添加した実施例1〜9の塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物は、ASRなしに塩化ビニル系樹脂ラテックスだけを含む比較例1、5および9、並びに同じ塩化ビニル系樹脂ラテックスを含むものの、溶液状のASRを添加した比較例2、6および10と比べて顕著に改善された機械的安定性を示した。また、固体状のASRを添加しても、その含有量の範囲が塩化ビニル系樹脂を含む固形分100重量部に対して2重量部未満であるか、または50重量部を超える比較例3、4、7、8、11および12の場合、実施例1〜9と比べて顕著に低下した機械的安定性を示した。
【0094】
このような結果から、塩化ビニル系樹脂ラテックスに対して粉末状のASR樹脂を最適な含有量範囲で混合する場合、塩化ビニル系樹脂ラテックス組成物の機械的安定性が顕著に改善されることが分かる。
図1
図2