特許第6874195号(P6874195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6874195
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】監視装置、監視プログラム及び監視方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20210510BHJP
   F28C 1/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F28F27/00 501Z
   F28C1/00
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-117359(P2020-117359)
(22)【出願日】2020年7月7日
【審査請求日】2020年10月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594162308
【氏名又は名称】西日本技術開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛史
(72)【発明者】
【氏名】中内 誠
(72)【発明者】
【氏名】川副 聖規
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第107478069(CN,A)
【文献】 特公昭56−013257(JP,B2)
【文献】 特開平10−205754(JP,A)
【文献】 特開昭61−219456(JP,A)
【文献】 特開平11−118742(JP,A)
【文献】 特開平07−055332(JP,A)
【文献】 特開2019−100662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
F28C 1/00 − 1/16
G01K 11/00 − 11/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象を冷却する冷却塔の内部の温度に基づく信号を取得するインタフェースと、
前記インタフェースから前記信号を取得して前記冷却塔の内部の温度分布を算出する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記冷却塔が通常運転中の温度分布をリファレンスデータとして取得し、
算出した温度分布を前記リファレンスデータに基づいて補正し、
補正した温度分布に基づいて、前記冷却塔の異常発生部位を解析する、
監視装置。
【請求項2】
前記冷却塔は、前記冷却対象を通過させる複数の充填体を含み、
前記制御部は、前記温度分布に基づいて、前記複数の充填体のうち少なくとも一部の充填体を異常発生部位として解析する、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記冷却塔は、前記冷却対象を前記充填体に向けて噴射する複数のシャワーノズルを更に含み、
前記制御部は、前記温度分布に基づいて、前記充填体又は前記シャワーノズルの少なくとも一方を異常発生部位として解析する、請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記温度分布の履歴を記憶する記憶部を更に備え
前記制御部は、前記温度分布の履歴に基づいて、前記充填体の交換時期又は前記シャワーノズルのメンテナンス時期のうち少なくとも一方の時期を推定する、請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記インタフェースは、前記冷却塔の複数の箇所それぞれを通るように敷設されているファイバにパルス光を入射し、かつ、前記パルス光が前記ファイバの内部でラマン散乱されて生じたラマン散乱光を、前記冷却塔の複数の箇所それぞれにおける温度に基づく信号として取得する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1からまでのいずれか一項に記載の監視装置として機能させる監視プログラム。
【請求項7】
冷却対象を冷却する冷却塔の内部の温度に基づく信号を取得して前記冷却塔の内部の温度分布を算出するステップと、
前記冷却塔が通常運転中の温度分布をリファレンスデータとして取得するステップと、
算出した温度分布を前記リファレンスデータに基づいて補正するステップと、
補正した温度分布に基づいて、前記冷却塔の異常発生部位を解析するステップと
を含む監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視装置、監視プログラム及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却塔性能監視用の監視器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−64383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却塔の性能が低下した場合に、性能を回復するメンテナンス作業の負荷を減らすために、メンテナンスの対象となる異常発生部位を特定することが求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、冷却塔の異常発生部位を簡便に特定できる監視装置、監視プログラム及び監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る監視装置は、冷却対象を冷却する冷却塔の内部の温度に基づく信号を取得するインタフェースと、前記インタフェースから前記信号を取得して前記冷却塔の内部の温度分布を算出する制御部とを備える。前記制御部は、前記冷却塔が通常運転中の温度分布をリファレンスデータとして取得する。前記制御部は、算出した温度分布を前記リファレンスデータに基づいて補正する。前記制御部は、補正した温度分布に基づいて、前記冷却塔の異常発生部位を解析する。このようにすることで、冷却塔内における充水バランス可視化が簡便に実現される。その結果、冷却塔内の異常発生部位が簡便に特定される。また、このようにすることで、冷却塔の性能低下が早期に把握される。その結果、設備が保全されやすくなる。設備の保全によって、設備の効率の向上、又は、維持の少なくとも一方が実現される。
【0007】
一実施形態に係る監視装置において、前記冷却塔は、前記冷却対象を通過させる複数の充填体を含んでよい。前記制御部は、前記温度分布に基づいて、前記複数の充填体のうち少なくとも一部の充填体を異常発生部位として解析してよい。このようにすることで、充填体の検査及び充填体の不要な交換が避けられる。その結果、冷却塔の保全作業の負荷が低減される。また、設備の保全によって、設備の効率の向上、又は、設備の維持の少なくとも一方が実現される。
【0008】
一実施形態に係る監視装置において、前記冷却塔は、前記冷却対象を前記充填体に向けて噴射する複数のシャワーノズルを更に含んでよい。前記制御部は、前記温度分布に基づいて、前記充填体又は前記シャワーノズルの少なくとも一方を異常発生部位として解析してよい。このようにすることで、シャワーノズルの検査及びシャワーノズルの不要なメンテナンスが避けられる。その結果、冷却塔の保全作業の負荷が低減される。また、設備の保全によって、設備の効率の向上、又は、設備の維持の少なくとも一方が実現される。
【0009】
一実施形態に係る監視装置は、前記温度分布の履歴を記憶する記憶部を更に備えてよい。前記制御部は、前記温度分布の履歴に基づいて、前記充填体の交換時期又は前記シャワーノズルのメンテナンス時期のうち少なくとも一方の時期を推定してよい。このようにすることで、冷却塔の保全計画が立案されやすくなる。その結果、設備が保全されやすくなる。
【0010】
幾つかの実施形態に係る監視プログラムは、コンピュータを、前記監視装置として機能させてよい。このようにすることで、冷却塔内における充水バランス可視化が簡便に実現される。その結果、冷却塔内の異常発生部位が簡便に特定される。また、このようにすることで、冷却塔の性能低下が早期に把握される。その結果、設備が保全されやすくなる。設備の保全によって、設備の効率の向上、又は、設備の維持のうち少なくとも一方が実現される。
【0011】
幾つかの実施形態に係る監視方法は、冷却対象を冷却する冷却塔の内部の温度に基づく信号を取得して前記冷却塔の内部の温度分布を算出するステップと、前記冷却塔が通常運転中の温度分布をリファレンスデータとして取得するステップと、算出した温度分布を前記リファレンスデータに基づいて補正するステップと、補正した温度分布に基づいて、前記冷却塔の異常発生部位を解析するステップとを含む。このようにすることで、冷却塔内における充水バランス可視化が簡便に実現される。その結果、冷却塔内の異常発生部位が簡便に特定される。また、このようにすることで、冷却塔の性能低下が早期に把握される。その結果、設備が保全されやすくなる。設備の保全によって、設備の効率の向上、又は、設備の維持のうち少なくとも一方が実現される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、冷却塔の異常発生部位を簡便に特定できる監視装置、監視プログラム及び監視方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】監視対象となる冷却塔の構成例を示す図である。
図2】比較例に係る監視方法を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係る監視装置の構成例を示す図である。
図4】冷却塔内におけるファイバの設置態様の一例を示す図である。
図5】各段におけるファイバの敷設態様の一例を示す平面図である。
図6】通常運転中の冷却塔内の温度分布の例を示す図である。
図7】2ブロックを遮蔽している冷却塔内の温度分布の例を示す図である。
図8】4ブロックを遮蔽している冷却塔内の温度分布の例を示す図である。
図9】1ブロックを遮蔽している冷却塔内の温度分布の例を示す図である。
図10】1つのノズルを停止している冷却塔内の温度分布の例を示す図である。
図11】温度分布の補正例を示す図である。
図12】一実施形態に係る監視方法の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に例示されるように、本開示に係る監視装置10は、冷却塔100の状態を監視できる。冷却塔100は、水を冷却対象として、水を冷却する。冷却対象は、水に限られず、他の液体であってもよい。
【0015】
冷却塔100は、冷却前の冷却対象を内部に取り入れる配管150と、配管150から取り入れた冷却対象を噴射するシャワーノズル130と、冷却後の冷却対象を外部に取り出す配管160とを備える。冷却塔100は、配管150の側から配管160の側に向かう方向に冷却対象を通過させる充填体140を更に備える。冷却塔100は、配管160の側から配管150の側に向かう方向、つまり冷却対象が通過する方向の逆方向に空気を送るファン110を更に備える。また、冷却塔100は、冷却対象が空気によってファン110の方に流されないように、冷却対象の移動を妨げるエリミネータ120を更に備える。
【0016】
冷却塔100において、冷却対象は、重力を受けて上から下に向けて落下する。一方で冷却対象を冷却する空気は、下から上に向けて流れる。冷却塔100は、充填体140によって冷却対象の落下速度又は落下流量を制御することによって、冷却対象が空気によって冷却されやすくできる。
【0017】
充填体140は、冷却対象の落下速度又は落下流量を制御できるように、粗いトタン状又はメッシュ状に構成される。充填体140は、異物等によって目詰まりを生じることがある。充填体140の目詰まりは、冷却対象の落下速度又は落下流量に影響を及ぼす。例えば、充填体140の目詰まりが生じている箇所における冷却対象の落下速度又は落下流量は、それ以外の箇所における冷却対象の落下速度又は落下流量よりも低下する。つまり、冷却対象の落下速度又は落下流量に分布が生じる。具体的には、充填体140の目詰まりが生じている箇所において、冷却対象の落下速度又は落下流量が小さくなることがある。一方で、目詰まりが生じていない箇所において、冷却対象の落下速度又は落下流量が変わらなかったり大きくなったりすることがある。
【0018】
また、シャワーノズル130において、異物等による詰まり又は他の原因によって、シャワーノズル130からの冷却対象の噴射量が低下することがある。シャワーノズル130からの冷却対象の噴射量の低下は、冷却対象の落下速度又は落下流量に影響を及ぼす。例えば、あるシャワーノズル130からの噴射量が低下している場合、そのシャワーノズル130の位置の付近における冷却対象の落下速度又は落下流量は、他の位置における冷却対象の落下速度又は落下流量よりも低下する。つまり、冷却対象の落下速度又は落下流量に分布が生じる。
【0019】
冷却対象の落下速度又は落下流量に分布が生じることによって、冷却塔100全体として冷却対象の冷却効率が低下する。つまり、冷却塔100の性能が低下する。また、冷却塔100内における充水バランスが崩れることによって、冷却塔100の性能が低下する。
【0020】
冷却塔100は、例えば地熱発電所に設置される。冷却塔100の性能は、発電出力に大きい影響を及ぼす。例えば、複数の冷却塔100それぞれの間の水バランスの不具合は、発電出力に影響を及ぼす。例えば、冷却塔100内の水バランスの不具合は、発電出力に影響を及ぼす。例えば、冷却塔100における、充填体140の劣化又はシャワーノズル130の詰まりは、発電出力に影響を及ぼす。冷却塔100は、発電所に限られず、例えば製鉄所等の他の種々の施設に設置されてよい。
【0021】
冷却塔100の性能を維持するために、冷却塔100内における充水バランスの監視が求められる。
【0022】
以下、冷却塔100を監視するための監視装置10及び監視方法の実施形態が、比較例と対比しながら説明される。
【0023】
(比較例)
比較例に係る監視方法は、冷却塔100の管理主体によって実行される。冷却塔100の管理主体は、例えば、図2に示されるフローチャートの手順を監視方法として実行することがある。
【0024】
管理主体は、充填体140を取り外す(ステップS91)。
【0025】
管理主体は、取り外した充填体140の重量を測定する(ステップS92)。
【0026】
管理主体は、充填体140の重量が所定値以上であるか判定する(ステップS92)。充填体140の重量は、充填体140が異物等で目詰まりすることによって重くなる。管理主体は、充填体140の重量によって充填体140の目詰まりの度合いを判定できる。
【0027】
管理主体は、充填体140の重量が所定値以上である場合(ステップS92:YES)、充填体140が所定の程度以上に目詰まりしていると判定し、新たな充填体140を取り付ける(ステップS93)。つまり、管理主体は、充填体140を交換する。
【0028】
管理主体は、充填体140の重量が所定値以上でない場合(ステップS92:YES)、充填体140が所定の程度以上に目詰まりしていないと判定し、取り外した充填体140をそのまま取り付ける(ステップS94)。つまり、管理主体は、充填体140を交換せずに元に戻す。
【0029】
管理主体は、以上の手順を各充填体140に対して実行することによって、冷却塔100の機能を維持できる。しかし、充填体140を取り外してその重量を測定するための作業が負担になる。
【0030】
管理主体は、充填体140を目視によって検査して、異常がある充填体140を交換してもよい。しかし、異常を発見する精度にばらつきが生じる。
【0031】
管理主体は、充填体140を検査せずに単に充填体140を順番に交換してもよい。しかし、交換しなくてもよい充填体140が交換されてしまったり、交換する必要がある充填体140の交換が遅れたりする可能性がある。
【0032】
また、管理主体は、シャワーノズル130を目視によって検査して、異常があるシャワーノズル130の清掃又は交換等を実施してもよい。しかし、シャワーノズル130が冷却対象を噴射しているときに目視してシャワーノズル130の異常を発見することは困難である。全てのシャワーノズル130を定期的に清掃したり交換したりすることは負担になる。
【0033】
以上述べてきたように、比較例に係る監視方法は、種々の課題を有している。
【0034】
そこで、冷却塔100のメンテナンス作業の負担を低減できるように、本開示において、冷却塔100の異常発生部位を簡便に特定できる監視装置10が説明される。
【0035】
(本開示の一実施形態)
本開示の一実施形態に係る監視装置10は、冷却塔100内部の温度分布を監視することによって冷却塔100において性能が低下した箇所を特定できる。このようにすることで、性能が低下した箇所が簡便に特定される。具体的には、充填体140の劣化、又は、ノズル若しくは充填体140の詰まりが簡便に特定される。性能が低下した箇所は、異常発生部位とも称される。
【0036】
図3に示されるように、一実施形態に係る監視装置10は、制御部20と、インタフェース30と、出力部40とを備える。
【0037】
制御部20は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成されてよい。制御部20は、プロセッサに所定のプログラムを実行させることによって所定の機能を実現してもよい。制御部20は、記憶部を備えてもよい。記憶部は、制御部20の動作に用いられる各種情報、又は、制御部20の機能を実現するためのプログラム等を格納してよい。記憶部は、制御部20のワークメモリとして機能してよい。記憶部は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部は、制御部20に含まれてもよいし、制御部20と別体として構成されてもよい。
【0038】
インタフェース30は、第1ファイバ51と、第2ファイバ52と、第3ファイバ53と、第4ファイバ54とに接続可能に構成される。第1ファイバ51、第2ファイバ52、第3ファイバ53及び第4ファイバ54は、単にファイバとも総称される。ファイバの数は、4本に限られず、3本以下であってもよいし、5本以上であってもよい。インタフェース30は、制御部20が出力する電気信号を光信号に変換してファイバに対して送信するとともに、ファイバから受信した光信号を電気信号に変換して制御部20に出力する。
【0039】
出力部40は、制御部20から取得した情報を出力する。出力部40は、直接又は外部装置等を介して、文字、図形、又は画像等の視覚情報を出力することによってユーザに情報を通知してよい。出力部40は、表示デバイスを備えてもよいし、表示デバイスと有線又は無線で接続されてもよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。出力部40は、直接又は外部装置等を介して、音声等の聴覚情報を出力することによってユーザに情報を通知してもよい。出力部40は、スピーカ等の音声出力デバイスを備えてもよいし、音声出力デバイスと有線又は無線で接続されてもよい。出力部40は、視覚情報又は聴覚情報だけでなく、直接又は外部装置等を介して、ユーザが他の感覚で知覚できる情報を出力することによってユーザに情報を通知してもよい。
【0040】
制御部20は、インタフェース30を介してファイバにパルス光を送信する。ファイバに入射したパルス光は、ファイバの種々の位置においてラマン散乱によって散乱される。ラマン散乱によって散乱されて生じる光は、ラマン散乱光とも称される。ラマン散乱光の少なくとも一部は、ファイバの入射側に戻る。制御部20は、ファイバの入射側に戻ってくるラマン散乱光に基づく信号を取得する。
【0041】
ラマン散乱光は、入射したパルス光の波長から長波長側にシフトしたストークス光と、入射したパルス光の波長から短波長側にシフトしたアンチストークス光とを含む。ラマン散乱光の各成分の強度は、ラマン散乱が起こった位置におけるファイバの温度に依存する。制御部20は、反射によって戻ってきたラマン散乱光を解析することによってその光信号が散乱された位置におけるファイバの温度を算出できる。また、制御部20は、光信号を送信してから反射によって光信号が戻ってくるまでの時間に基づいて、受信した光信号が反射された位置を算出できる。したがって、制御部20は、ファイバの各位置におけるファイバの温度を算出できる。
【0042】
図1及び図4に例示されるように、第1ファイバ51、第2ファイバ52、第3ファイバ53及び第4ファイバ54は、冷却塔100の内部に敷設される。冷却塔100は、エリミネータ120と、3層の充填体140とを備える。図4において、エリミネータ120は、1段目と称される。また、3層の充填体140はそれぞれ、2段目、3段目及び4段目と称される。第1ファイバ51は、1段目であるエリミネータ120の上部に敷設される。第2ファイバ52、第3ファイバ53及び第4ファイバ54はそれぞれ、2段目、3段目及び4段目の充填体140の下部に敷設される。図1及び図4に例示されるファイバの敷設の態様は、一例にすぎない。ファイバは、他の種々の態様で敷設されてよい。
【0043】
制御部20は、第1ファイバ51にパルス光を入射し、第1ファイバ51からラマン散乱光を受信することによって、1段目であるエリミネータ120の上部の温度を取得できる。制御部20は、第2ファイバ52にパルス光を入射し、第2ファイバ52からラマン散乱光を受信することによって、2段目の充填体140の下部の温度を取得できる。制御部20は、第3ファイバ53にパルス光を入射し、第3ファイバ53からラマン散乱光を受信することによって、3段目の充填体140の下部の温度を取得できる。制御部20は、第4ファイバ54にパルス光を入射し、第4ファイバ54からラマン散乱光を受信することによって、4段目の充填体140の下部の温度を取得できる。
【0044】
各ファイバは、冷却塔100の各段において、例えば図5に示されるように敷設されるとする。冷却塔100の各段は、6×6の36個のブロックに分けられるとする。各ブロックに1番から36番までの番号が付されている。各番号は、本実施形態において説明されている構成を特定するための符号を意味するものではない。ファイバは、各ブロックを番号順に通るように敷設されつつ、各ブロック内で少なくとも1回巻かれて各ブロック内でリング状に敷設されている。
【0045】
ファイバの一端は、監視装置10に接続されている。1番の番号が付されているブロックから引き出されるファイバは、監視装置10のCh1と表される端子に接続される。ファイバの他の一端は、監視装置10に接続されてもよいし接続されていなくてもよい。図5の例において、36番の番号が付されているブロックから引き出されるファイバは、監視装置10のCh2と表される端子に接続される。監視装置10は、Ch1及びCh2それぞれからパルス光をファイバに入射してもよい。監視装置10は、Ch1だけからパルス光をファイバに入射してもよい。
【0046】
監視装置10は、ラマン散乱が生じる位置を、ファイバ上におけるCh1又はCh2からの距離として特定できる。ファイバ上におけるCh1又はCh2からの距離は、ブロックの番号に対応づけられる。したがって、監視装置10は、ラマン散乱光を解析することによって、各ブロックの温度を算出できる。監視装置10は、各ブロックの温度を算出することによって、冷却塔100の各段を平面視したときの温度分布を取得できる。
【0047】
図6に、通常運転中の冷却塔100の各段の温度分布の一例が示される。白抜きで表されるブロックの温度は、最も低い。斜線格子縞のハッチングの縞の間隔が狭いほど、そのハッチングで表されるブロックの温度は高い。例えば、図6に示される1段目の温度分布において、左から1番目かつ上から1番目のブロックの温度は、最も高い。左から5番目かつ上から1番目のブロックの温度は、最も低い。
【0048】
ここで、少なくとも一部の充填体140で目詰まりが発生したり少なくとも一部のシャワーノズル130で噴射量の異常が発生したりすることによって、冷却塔100の少なくとも一部において、温度分布が発生したり増大したりする。
【0049】
例えば、冷却塔100の2段目に位置する充填体140において、左から4番目かつ上から5番目及び6番目に位置する2つのブロックで目詰まりが発生したと仮定する。この仮定における温度分布を取得するために、2段目の左から4番目かつ上から5番目及び6番目に位置する2つのブロックが人為的に遮蔽された。この場合、図7に示されるように温度分布が変化する。図7において、2段目において太い実線で囲まれているブロックは、目詰まりが発生したと仮定された2つのブロックに対応する。1段目、3段目及び4段目において太い破線で囲まれているブロックは、2段目において目詰まりが発生したと仮定されたブロックに対して垂直方向に並んで位置するブロックに対応する。図7の温度分布を、通常運転中の温度分布を表す図6と比較した場合、目詰まりが発生したと仮定されたブロック、及び、そのブロックに対して垂直方向に並んで位置するブロックの温度が高くなっている。つまり、目詰まりが発生したと仮定されたブロック、及び、そのブロックに対して垂直方向に並んで位置するブロックにおいて、周囲のブロックとの温度差が増大している。
【0050】
また、例えば、冷却塔100の2段目に位置する充填体140において、左から4番目及び5番目かつ上から5番目及び6番目に位置する4つのブロックで目詰まりが発生したと仮定する。この仮定における温度分布を取得するために、2段目の左から4番目及び5番目かつ上から5番目及び6番目に位置する4つのブロックが人為的に遮蔽された。この場合、図8に示されるように温度分布が変化する。図8において、2段目において太い実線で囲まれているブロックは、目詰まりが発生したと仮定された4つのブロックに対応する。1段目、3段目及び4段目において太い破線で囲まれているブロックは、2段目において目詰まりが発生したと仮定されたブロックに対して垂直方向に並んで位置するブロックに対応する。図8の温度分布を、通常運転中の温度分布を表す図6と比較した場合、目詰まりが発生したと仮定されたブロック、及び、そのブロックに対して垂直方向に並んで位置するブロックの温度が高くなっている。つまり、目詰まりが発生したと仮定されたブロック、及び、そのブロックに対して垂直方向に並んで位置するブロックにおいて、周囲のブロックとの温度差が増大している。
【0051】
また、例えば、冷却塔100の2段目に位置する充填体140において、左から4番目かつ上から5番目に位置する1つのブロックで目詰まりが発生したと仮定する。この仮定における温度分布を取得するために、2段目の左から4番目かつ上から5番目に位置する1つのブロックが人為的に遮蔽された。この場合、図9に示されるように温度分布が変化する。図9において、2段目において太い実線で囲まれているブロックは、目詰まりが発生したと仮定された1つのブロックに対応する。1段目、3段目及び4段目において太い破線で囲まれているブロックは、2段目において目詰まりが発生したと仮定されたブロックに対して垂直方向に並んで位置するブロックに対応する。図9の温度分布を、通常運転中の温度分布を表す図6と比較した場合、目詰まりが発生したと仮定されたブロック、及び、そのブロックに対して垂直方向に並んで位置するブロックの温度が高くなっている。つまり、目詰まりが発生したと仮定されたブロック、及び、そのブロックに対して垂直方向に並んで位置するブロックにおいて、周囲のブロックとの温度差が増大している。
【0052】
図6から図9までに例示された温度分布によれば、制御部20は、通常運転中の温度分布と、取得した温度分布とを比較することによって、各段を平面視したときに充填体140のどの位置で目詰まりが生じているか推定できる。
【0053】
また、例えば図8及び図9に例示された温度分布によれば、2段目の目詰まりが発生したと仮定されたブロックの温度は、3段目及び4段目において垂直方向に並んで位置するブロックの温度よりも高い。制御部20は、このような温度分布に基づいて、2段目で目詰まりが発生したと推定できる。つまり、制御部20は、どの段で目詰まりが発生したか推定することもできる。
【0054】
例えば、冷却塔100は、図10に示されるように、平面視において4行4列で配列される16個のシャワーノズル130を備えると仮定する。ここで、左から3番目かつ上から4番目に位置するシャワーノズル130の噴射量が低下していると仮定する。停止されたシャワーノズル130は、図10においてシャワーノズル131として表されるとする。この仮定における温度分布を取得するために、シャワーノズル131が人為的に停止された。
【0055】
この場合、図10に示されるように温度分布が変化する。1段目から4段目までの温度分布において、左から4番目かつ上から6番目に位置するブロックの温度が高くなっている。これらのブロックの温度は、周囲のブロックの温度よりも高くなっている。このことから、制御部20は、左から4番目かつ上から6番目に位置するブロックに対応して配置されているシャワーノズル131において、詰まりの発生等の原因によって、その噴射量が減少していると推定できる。また、制御部20は、各段で共通して温度が高くなっているブロックの存在を検出することによって、温度分布の原因が充填体140の目詰まりではなく、シャワーノズル130の異常であると推定することができる。つまり、制御部20は、冷却塔100の温度分布の原因が充填体140であるかシャワーノズル130であるかを推定することもできる。
【0056】
上述してきたように、制御部20は、通常運転中の温度分布と、取得した温度分布を比較することによって温度分布の原因を推定してもよい。制御部20は、図11に例示されるように、通常運転中の温度分布をリファレンスデータとして、取得した温度分布を補正し、補正後の温度分布に基づいて原因を推定してもよい。具体的には、制御部20は、取得した温度分布を補正前データとして、リファレンスデータに基づいて補正し、補正後データを算出する。制御部20は、例えば、補正前データからリファレンスデータを差し引くことによって補正後データを算出してよい。制御部20は、他の種々の方法によって補正後データを算出してよい。
【0057】
図11の例において、補正後データは、左から5番目及び6番目のブロックの温度が通常運転中よりも高くなっていることを示している。制御部20は、補正後データに基づいて、左から5番目及び6番目のブロックに対応する位置における充填体140又はシャワーノズル130の異常が温度分布の原因となっていると推定できる。
【0058】
制御部20は、温度分布の原因の推定結果を、出力部40によって冷却塔100の管理主体に報知してよい。制御部20は、充填体140の交換を促す情報を出力部40に出力させてもよい。制御部20は、シャワーノズル130の清掃等のメンテナンスを促す情報を出力部40に出力させてもよい。
【0059】
制御部20は、温度分布の変化を監視することによって、充填体140の交換時期、又は、シャワーノズル130のメンテナンス時期のうち少なくとも一方の時期を推定してもよい。制御部20は、温度分布の履歴を取得することによって、温度分布の変化を監視してもよい。温度分布の履歴は、記憶部に記憶されていてもよい。制御部20は、推定した時期を出力部40に出力させてもよい。このようにすることによって、冷却塔100の管理主体は、冷却塔100の保全計画を立案しやすくなる。さらに、上述の交換時期又はメンテナンス時期の推定のために、機械学習が用いられてもよい。機械学習において、例えば、温度分布の変化と、交換時期又はメンテナンス時期との相関関係が用いられてもよい。機械学習に係るアルゴリズムは、Convolutional Neural Network(CNN)、Recurrent Neural Network(RNN)又はディープラーニング等の任意のアルゴリズムを含んでよい。
【0060】
(監視方法のフローチャートの一例)
監視装置10の制御部20は、図12に例示されるフローチャートの手順を含む監視方法を実行してもよい。監視方法は、制御部20等のプロセッサに実行させる監視プログラムとして実現されてもよい。監視プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。監視プログラムは、監視プログラムを実行するコンピュータを監視装置10として機能させることができる。
【0061】
制御部20は、温度データを取得する(ステップS1)。具体的には、制御部20は、インタフェース30を介してファイバにパルス光を送信して、ファイバから戻ってくるラマン散乱光を受信する。制御部20は、受信したラマン散乱光に基づいて、冷却塔100の各段の各位置における温度、つまり冷却塔100内の温度分布を算出する。
【0062】
制御部20は、異常発生部位を解析する(ステップS2)。具体的には、制御部20は、冷却塔100内の温度分布に基づいて、充填体140の少なくとも一部で目詰まりが発生しているかを推定したり、どの充填体140で目詰まりが発生しているかを推定したりしてよい。制御部20は、目詰まりが発生していると推定される充填体140を異常発生部位として解析してよい。制御部20は、冷却塔100内の温度分布に基づいて、少なくとも一部のシャワーノズル130の噴射量が低下しているかを推定したり、どのシャワーノズル130の噴射量が低下しているかを推定したりしてもよい。制御部20は、噴射量が低下しているシャワーノズル130を異常発生部位として解析してよい。
【0063】
制御部20は、異常発生部位が存在するか判定する(ステップS3)。制御部20は、異常発生部位が存在しない場合(ステップS3:NO)、図12のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0064】
制御部20は、異常発生部位が存在する場合(ステップS3:YES)、異常発生部位を表示する(ステップS4)。具体的には、制御部20は、解析した異常発生部位に関する情報を出力部40に表示させる。制御部20は、表示に限られず、音声等の他の態様によって出力部40に情報を出力させてもよい。制御部20は、ステップS4の手順の実行後、図12のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0065】
以上述べてきたように、本実施形態に係る監視装置10及び監視装置10が実行する監視方法によれば、冷却塔100内における充水バランス可視化が簡便に実現される。このようにすることで、冷却塔100を運転したままで冷却塔100内の異常発生部位が解析される。また、冷却塔100内を目視で検査することなく冷却塔100内の異常発生部位が解析される。その結果、冷却塔100内の異常発生部位が簡便に特定される。また、冷却塔100の性能低下が早期に把握される。その結果、設備が保全されやすくなる。設備の保全によって、設備の効率の向上、又は、設備の維持のうち少なくとも一方が実現される。
【0066】
また、本実施形態に係る監視装置10は、ファイバから戻ってくるラマン散乱光の解析によって温度分布を取得できる。このようにすることで、大規模な冷却塔100の内部の温度を検出する構成が簡略化され得る。
【0067】
また、本実施形態に係る監視装置10及び監視装置10が実行する監視方法によれば、充填体140が異常発生部位であるか解析される。このようにすることで、充填体140の検査及び充填体140の不要な交換が避けられる。また、本実施形態に係る監視装置10及び監視装置10が実行する監視方法によれば、シャワーノズル130が異常発生部位であるか解析される。このようにすることで、シャワーノズル130の検査及びシャワーノズル130の不要なメンテナンスが避けられる。その結果、冷却塔100の保全作業の負荷が低減される。
【0068】
以上説明されてきた実施形態において、監視装置10及び監視方法による監視対象となる冷却塔100は、カウンターフローで冷却対象を冷却する縦型の構成を有する。監視対象となる冷却塔100は、クロスフローで冷却対象を冷却する横型の構成を有してもよい。
【0069】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 監視装置(20:制御部、30:インタフェース、40:出力部)
51〜54 第1〜第4ファイバ
100 冷却塔(110:ファン、120:エリミネータ、130:シャワーノズル、140:充填体、150:配管、160:配管)
【要約】
【課題】冷却塔の異常発生部位を簡便に特定できる監視装置、監視プログラム及び監視方法を提供する。
【解決手段】監視装置10は、冷却対象を冷却する冷却塔100の内部の温度に基づく信号を取得するインタフェース30と、インタフェース30から信号を取得して冷却塔100の内部の温度分布を算出する制御部20とを備える。制御部20は、温度分布に基づいて、冷却塔100の異常発生部位を解析する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12